説明

鋸などの利器の鞘

【課題】 簡便、軽量な構成でありながら、使い勝手のよく、安定した安全性を有するようにした鋸などの利器の鞘を提供する。
【解決手段】 鋸の刃部側面を沿わせ得る基板面11の長手両側に正背面両側に立設した側面部12を形成し、先端部には鋸先端部の差込み部2を形成し、元端部側には係合部材3を正背面いずれからも着脱自在とした係合受け部16を形成し、該係合受け部は、基板面延長部分に貫通開口部14を形成し、撓み可能な側面部12aに係止孔15を設けて鞘本体を形成し、該係合部材は、鋸の柄を嵌合離脱でき、上記開口部に嵌合可能な弾性側面を有する抱持形状とし、外側部に上記係止孔に係合可能な係合突起35を形成し、係合部材からさらに元方向に保持部5を延設して鞘を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋸やナタなどの腰に提げると便利な利器類を収納する鞘に関する。
【背景技術】
【0002】
実用化されている鞘は筒状の鞘であって、開口端部から筒内に鋸などを差込む形態のものであるが、鞘全体が嵩張って重く、開口端に鋸などの先端を合わせて差込む操作が煩わしいなど、不都合な点が多かった。これに対し、特許文献1には、鞘の先端部のみを筒状の先受け部とし、鞘全体は正面側を開放して、鋸の長手側面を沿わせるように構成し、鞘の元部には鋸刃の付け根部付近を圧嵌させるための受け止め部を一体形成させた構成のものが示されている。また、特許文献2には、上記受け止め部に代えて、鋸の柄部の背金或いは刃部を直接磁着させるように、鞘面に磁石を固着した構成のものが示されている。
【特許文献1】実開平5−80472号公報
【特許文献2】実開平6−83287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献に示された構成のように、正面側を開放し、鋸の刃を開放面に沿わせるように構成すれば、鞘全体は軽量化されるので好ましいといえる。しかしながら、文献1のように、弾性挟着には、鋸が何かに触れて脱落してしまうおそれが生じないように、適当な強さを持たせる必要があることから、薄い鋸刃の元部を挟着するようにした場合は、ばねに抗しての嵌め込みと離脱にかなりの抵抗が加わり、鋸の着脱操作が円滑に行いにくく、鋸使用の簡便性を阻害することになってしまうものである。また、文献2のように、鋸刃を直接磁着させた場合、最大磁着力に抗して薄い刃を剥ぎ取らなければならず、鋸の離脱操作が行いにくく、鋸使用の簡便性を阻害することになってしまうものである。
【0004】
本発明者は、従来の考え方には上記のような問題点があることを究明したものであり、これを踏まえて問題点を解消し、簡便、軽量な構成でありながら、使い勝手のよく、安定した安全性を有するようにした鋸などの利器の鞘を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、利器の刃部側面を沿わせ得る基板面を有し、基板面の長手両側に刃乃至背を保護するように立設した側面部を形成し、基板面の先端部には利器先端部の差込み部を形成し、元端部側には係合部材を着脱自在とした係合受け部を形成し、該係合部材は、利器の柄部を嵌合離脱できる抱持部と上記係合受け部との係合部を有して形成して鋸などの利器の鞘を構成したことを特徴とする。
また、本発明は、利器の刃部側面を沿わせ得る基板面を有し、基板面の長手両側に刃乃至背を保護するように正背面両側に立設した側面部を形成し、基板面の先端部には利器先端部の差込み部を形成し、元端部側には係合部材を正背面いずれからも着脱自在とした係合受け部を形成し、該係合部材は、利器の柄部付近を嵌合離脱できる抱持部と上記係合受け部との係合部を有して形成して鋸などの利器の鞘を構成したことも特徴とする。
【0006】
上記において、係合受け部は、基板の延長部分に貫通した開口部を形成し、側面部に係止部を形成してなり、係合部材は上記開口部に嵌合可能な弾性側面を有する断面C形状の如き抱持部とし、その外側部に上記係止部に係合可能な係合部を形成した構成とすることができる。
また、上記鞘は、係合部材からさらに元方向に保持部を延設した構成とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、基板面と側面部により、正背面の外側面が開放された鞘となり、先端の差込み部に利器の先端部を差込んで、利器を基板面に沿わせるだけで保持できる軽量簡便な鞘を提供することができる。この鞘は、形成してある係合受け部に係合部材を着脱自在に係止できるので、利器に適合させてものを着脱でき、柄を嵌合離脱しやすくし、かつ柄を確実に保持し利器の保持が安定したものとなり、使い勝手がよいものとなる。
特に、基板面の正背面両側に利器を沿わせて保持し得るように、着脱自在な係合部材を正背面いずれかに逆向きに係止することにより、左右いずれの腰にも装着でき、左右いずれの利き手の人にも使用することができるものとなり、また、片側が塞がれてしまう作業環境などでは、開放側に所望に応じて装着でき、使い勝手が著しく向上する。係合部材は断面を柄の抱持形状とすることにより、安定した保持と着脱容易さが一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を好適な一実施例として示した図面によって説明する。
本発明の鞘は、鞘本体1の先端部に利器(以下では鋸を例に説明する)の先端部を差込む差込み部2を形成し、元端部側に鋸の柄部を嵌合離脱できる係合部材3を装着した構成を有している。材質は問わないが、製造の簡便性から例えばプラスチックス製とするのが好ましく、また、各部材を異なった材質としてもよい。
【0009】
鞘本体1は、鋸4の刃部41の略全長に亘る刃部側面を沿わせ得る基板面11を有し、基板面11の幅は刃から背(峰)に至る刃部を収め得る幅とし、その長手両側に刃乃至背を保護するように刃部の厚み分よりも高く正背面両側に立設した側面部12を設けて、断面I乃至H形状の如く形成してある。基板面11に肉抜きのための孔部を形成するのは任
意である。また、図示しないが基板面11に補強リブ条などを設けるのも、側面部12の高さ内に刃部が収まるように形成すれば任意である。
【0010】
基板面11の先端部には差込み部2を装着する固着縁13を形成し、固着縁13の両側には側面部12を延設し、基板面11の元端部側は、基板面を貫通切欠した開口部14を設け、該開口部の両側には弾性撓み可能な側面部12a,12aを延設し、該側面部12aの正背方向中央部に係止孔15を形成することにより、この元端部側に係合受け部16を形成してある。
また、側面部12乃至12aの先端部寄りと元端部寄り部位には一側外方又は両側外方に紐通し孔付き補強リブ17,18を突設してある。
【0011】
先端部に形成する差込み部2は、刃部41の先端部を差込み可能な適宜長さの袋形状であって、基板面12の延長面に相当する基板21と、先端を閉塞し元端側を拡開開口する正面側への膨出面22を有し、基板の正背両面側から元端方向に突出して、鞘本体の固着縁13を挟着可能な係止突起23、24を形成してある。
この差込み部2は、基板21が基板面12の先端に延長するように、係止突起23,24を固着縁13に挟着させ、ネジ止めなどして固着し、鞘本体1の先端部を形成するものである。
なお、正背面方向を逆にして、鞘本体の背面側に差込み部が形成されるように装着することができる。
【0012】
上記係合受け部16に係合する係合部材3は、開口部14に嵌まり込む断面C形状(乃至断面コの字形状)の如き抱持部を有し、その内側に鋸4の柄42の先端部(刃の付け根側)付近を嵌め込む構成とし、抱持部の底面31の内側には、柄を嵌め込んだ状態において刃部41が基板面11に沿うように高さ調節した内底31aを設け、抱持部の両側面32,32は、柄42の厚み相当分だけ内底から立ち上がった側面対向部位に、抱持形状内方に折曲突出させたV状乃至拡開U状の弾圧部33を設け、弾圧部から上方の側面先端部は柄の嵌め込み案内部を兼ねた拡開傾斜面34として形成し、この両側面32,32の内側中間部には、鋸の柄に形成した凹凸条43と係合する上下方向の凹凸条34を形成し、上記両側面の弾圧部よりも下の側面部の外側中間部には、係合受け部16の係止孔15に嵌合離脱可能に係合する係合突起35を形成してある。
なお、図示しないが、係合受け部16の係止孔15に代えて係合突起を形成し、係合部材3の係合突起35に代えて係止孔を形成するようにしてもよい。
【0013】
上記係合部材3には、上記底面31の外側中間部から折曲筋51を介して保持部5を延設してある。延設した保持部5は、上記折曲筋51で係合部材3に対して略直角まで折曲することができ、成形時或いは分解時などでは図7〜9に示すように、折曲しない延長状態として扱い、係合受け部16に係合する使用時などには、図9に矢視する如く、直角状に折曲しロックした状態として使用するようにすることができる。
なお、上記に係わらず、折曲状態で成形し、使用するように形成してもよい。
【0014】
保持部5は、折曲筋51から適宜長さの板部52を延設し、その付け根部付近に、係合部材底面31の一部に穴状に形成した係止部19に略直角折れ状態で係合可能なロック用突起53を形成し、板面中間部を凹凸条などによる可撓自在部54となし、板部の先端方向にベルト通し部55を延設して形成してある。なお、保持部5の構成は任意である。
【0015】
上記構成の鞘は、鞘本体1の先端に差込み部2を形成し、差込み部2はその差込み開口部が基板面11の正面側になるように設置し、係合部材3を係合受け部16に係合し、係合部材3はその抱持形状が正面方向に開口するように設置し、係合部材3の元方向に保持部5を延設したものとなる。この状態において、鋸の刃部41は基板面11の正面側に収まる。一方、差込み部2を背面側に装着し、係合部材3を背面側から係合受け部16に係合し、係合部材が背面側に開口するように設置すれば、鋸の刃部41は基板面11の背面側に収まり、鋸は鞘の背面側に収納される。こうして、鞘は左右いずれの腰にも装着でき、また、同腰であっても鋸の刃を前後いずれの向きに収めるようにも装着できる。
【0016】
いずれにおいても、厚みのある鋸の柄42の先端部付近を係合部材3に係合して弾性抱持させるので、抱持状態が安定すると同時に、着脱が容易かつ簡便なものとなる。
ベルト通し部55をベルトに通し、補強リブ17,18の紐通し孔に通した紐を腰ないし太腿部に巻き付けた状態において、保持部5の可撓自在部54が可撓して、鞘を体に楽に沿わせることができる。
なお、上記実施形態の構成は、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨を達成する範囲での各構成部分の変更は本発明に含まるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る鞘を分解し、一例としての鋸とともに示した分解斜視図である。
【図2】鞘を組立て、鋸を装着する前の状態を示した斜視図である。
【図3】鞘を組立て、鋸を装着した状態を示す正面側斜視図である。
【図4】図3の背面側斜視図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】差込み部の開口側斜視図である。
【図7】保持部を延設した係合部材の側面図である。
【図8】図7の背面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 鞘本体、 2 差込み部、 3 係合部材、
4 鋸、 5 保持部、
11 基板面、 12 側面部、 12a 側面部、
13 固着縁、 14 開口部、 15 係止孔、
16 係合受け部、 17,18補強リブ、 19 係止部、
21 基板、 22 膨出面、 23,24 係止突起、
31 底面、 31a 内底、 32 側面、
33 弾圧部、 34 凹凸条、 35 係合突起、
41 刃部、 42 柄、 43 凹凸条、
51 折曲筋、 52 板部、 53 ロック用突起、
54 可撓自在部、 55 ベルト通し部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
利器の刃部側面を沿わせ得る基板面を有し、基板面の長手両側に刃乃至背を保護するように立設した側面部を形成し、基板面の先端部には利器先端部の差込み部を形成し、元端部側には係合部材を着脱自在とした係合受け部を形成し、該係合部材は、利器の柄部を嵌合離脱できる抱持部と上記係合受け部との係合部を有して形成した構成を特徴とする鋸などの利器の鞘。
【請求項2】
利器の刃部側面を沿わせ得る基板面を有し、基板面の長手両側に刃乃至背を保護するように正背面両側に立設した側面部を形成し、基板面の先端部には利器先端部の差込み部を形成し、元端部側には係合部材を正背面いずれからも着脱自在とした係合受け部を形成し、該係合部材は、利器の柄部付近を嵌合離脱できる抱持部と上記係合受け部との係合部を有して形成した構成を特徴とする鋸などの利器の鞘。
【請求項3】
係合受け部は、基板の延長部分に貫通した開口部を形成し、側面部に係止部を形成してなり、係合部材は上記開口部に嵌合可能な弾性側面を有する断面C形状の如き抱持部とし、その外側部に上記係止部に係合可能な係合部を形成してなる請求項1又は2に記載の鋸などの利器の鞘。
【請求項4】
係合部材からさらに元方向に保持部を延設した構成を有する請求項1〜3のいずれかに記載の鋸などの利器の鞘。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−54408(P2007−54408A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244736(P2005−244736)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(391057889)株式会社アグリス (7)
【Fターム(参考)】