説明

鋼板せん断装置

【課題】尾端せん断後のシャー下刃上の尾端クロップ残りの有無を確実に検出することができ、尾端クロップ残りに適切に対処することができる鋼板せん断装置を提供する。
【解決手段】鋼板1を搬送する鋼板搬送手段と、シャー上刃8とシャー下刃9とを有してシャー下刃9に対してシャー上刃8が下降して搬送された鋼板1をせん断するシャー3と、シャー3によりせん断された尾端クロップをスクラップコンベア4へ蹴り落すキッカ5とを備える鋼板せん断装置において、シャー下刃9の上部を左右に横切るエリアビームで監視するエリアセンサ10と、エリアセンサ10の出力結果に基づきシャー下刃9上の尾端クロップ残りを検出する検出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延された鋼板を製品サイズにせん断するための鋼板せん断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャー上刃とシャー下刃とを有してシャー下刃に対してシャー上刃が下降して鋼板の前端や尾端をせん断するシャーを備える鋼板せん断装置がある。まず、鋼板のせん断点がシャー下刃によるせん断位置となるように鋼板の搬送停止制御を行う。そして、鋼板停止後、シャー上刃が下降して鋼板のせん断を行う。ついで、シャー上刃が上部待機位置に戻った後に、せん断された尾端クロップをキッカでスクラップコンベア(或いは、スクラップシュート)へ蹴り落す。蹴り落された尾端クロップはスクラップコンベア等によってスクラップバックに回収される。なお、前端クロップは、せん断されることによりそのままスクラップコンベア上に落下して回収される。
【0003】
ここで、回収される先端クロップや尾端クロップがスクラップコンベア両側のサイドガイドに引っかかってコンベア上で詰まってしまうことがある。詰り時にはコンベア等の設備の破壊を防ぐためにコンベアを停止させてオペレータに手作業でクロップをコンベア上から除去させる必要がある。そこで、クロップが所定タイミングで実際にスクラップバッグに落下して回収されたかを検出する輝度検知用カメラ、シグナルチェーン、振動センサ等のセンサを設けることで、コンベア上でのクロップ詰りの有無を検出するようにした提案例がある(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−4925号公報
【特許文献2】実開昭55−71619号公報
【特許文献3】特公昭51−35182号公報
【特許文献4】実開昭57−131222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンベア上に詰まっていなくてもスクラップバッグに回収されない場合がある。例えば、鋼板の反りによりキッカでは尾端クロップをコンベア上に蹴り落しきれず、尾端クロップがシャー下刃上に残ってしまう場合がある。特に、板厚が5mm以下の薄物鋼板であって、尾端に下向きの反りがある場合には、シャー下刃上に残ってしまうことがある。この場合、手作業で尾端クロップをコンベア上に落すが、自動的に検出されないため、対処するのに時間を要することとなる。また、シャー下刃上に尾端クロップが残ったことに気づかない場合には、次鋼板の搬送を継続してさせてしまうことで、次鋼板の前端と残った尾端クロップとが衝突し、設備破壊を引き起こすこともある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、尾端せん断後のシャー下刃上の尾端クロップ残りの有無を確実に検出することができ、尾端クロップ残りに適切に対処することができる鋼板せん断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋼板せん断装置は、鋼板を搬送する鋼板搬送手段と、シャー上刃とシャー下刃とを有して前記シャー下刃に対して前記シャー上刃が下降して搬送された前記鋼板をせん断するシャーと、該シャーによりせん断された尾端クロップをスクラップ搬送手段へ蹴り落すキッカとを備える鋼板せん断装置において、前記シャー下刃の上部を左右に横切るエリアビームで監視するエリアセンサと、該エリアセンサの出力結果に基づき前記シャー下刃上の尾端クロップ残りを検出する検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る鋼板せん断装置は、前記検出手段により前記シャー下刃上の尾端クロップ残りが検出された場合に前記鋼板搬送手段による次鋼板の搬送を停止させるインターロック手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る鋼板せん断装置によれば、尾端せん断後のシャー下刃上の尾端クロップ残りの有無を確実に検出することができ、尾端クロップ残りに適切に対処することができる鋼板せん断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施の形態の鋼板せん断装置の概略構成例を示す斜視図である。
【図2】図2は、エリアセンサ等を示す斜視図である。
【図3】図3は、エリアビームの寸法等を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る鋼板せん断装置の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。図1は、本実施の形態の鋼板せん断装置の概略構成例を示す斜視図である。鋼板せん断装置は、せん断対象となる鋼板1を搬送する複数の搬送ローラ2と、鋼板1の前端と尾端とをせん断するシャー3と、シャー3によりせん断された尾端クロップを回転およびスライドによってスクラップコンベア4へ蹴り落すキッカ5と、スクラップコンベア4により搬送される前端クロップや尾端クロップを回収するスクラップバッグ6とを備える。
【0012】
搬送ローラ2は、駆動モータ7(図2参照)とともに鋼板搬送手段を構成し、圧延された鋼板1を図1中右側から左側へ搬送する。シャー3は、鋼板搬送路途中において鋼板搬送路を挟んで上下に配置されたシャー上刃8とシャー下刃9とからなり、シャー下刃9に対してシャー上刃8が下降することで鋼板1の前端や尾端をせん断する構成とされている。したがって、シャー下刃9の上面は、鋼板搬送路の一部を構成している。スクラップコンベア4は、スクラップ搬送手段を構成するベルトコンベアで、シャー下刃9付近のせん断位置下部にて鋼板搬送路と直交する左右方向に配設され、スクラップバッグ6上に連絡されている。スクラップコンベア4に代えて、スクラップシュート等の搬送手段を用いてもよい。キッカ5は、シャー下刃9よりも搬送方向上流側位置にて鋼板搬送路に対向させて設けられたもので、せん断後に尾端クロップをシャー下刃9上からスクラップコンベア4に向けて蹴り落すように動作する。前端クロップや尾端クロップを回収するスクラップバッグ6には、これらクロップの落下回収をオペレータがモニタするための図示しない工業用テレビが付設されている。
【0013】
さらに、シャー下刃9の左右両端付近には、エリアセンサ10が設けられている。エリアセンサ10は、シャー下刃9の上部を横切るエリアビーム11で該上部の状態を監視するためのもので、シャー下刃9の一側から他側に向けてシャー下刃9の上部を横切るように指向性をもつ3次元のエリアビーム11を発する投光器12と、シャー下刃9の他側に配設されて投光器12から発せられたエリアビーム11を受光する受光器13とからなる。図2は、エリアセンサ10等を示す斜視図であり、図3は、エリアビーム11の寸法等を示す側面図である。図3中、寸法Aはビーム幅を示し、寸法Bはビーム高さを示し、寸法Cはシャー下刃9の上面との距離を示している。ビーム幅を示す寸法Aは、クロップせん断時のブレを保障し得る距離であるが、尾端クロップはシャー下刃9の下流部に下流側の部分が載るため、シャー下刃9の最下流部を基準とする寸法とされる。ビーム高さを示す寸法Bは、任意でよい。シャー下刃9の上面との距離を示す寸法Cは、せん断する鋼板1の最小厚さ未満とされる。
【0014】
さらに、受光器13の出力側には、検出回路14と制御部15とが順に接続されている。検出回路14(検出手段)は、エリアセンサ10における受光器13の出力結果である検出出力に基づきシャー下刃9上に尾端クロップ残りがあるか否かを判定するためのものである。検出回路14は、尾端クロップ残りによりエリアビーム11の一部が遮断されることで受光器13の検出出力が所定量以下に低減している場合には尾端クロップ有りと判定し、受光器13の検出出力が低減していない場合には尾端クロップ無しと判定する。制御部15(インターロック手段)は、検出回路14によりシャー下刃9上の尾端クロップ残りが検出された場合に鋼板搬送手段による次鋼板1の搬送を停止させるように駆動モータ7にインターロックをかけるとともに、ブザー、表示器等を介してオペレータに尾端クロップ残りが検出された旨の警告を発し、尾端クロップの除去を促す。
【0015】
このような構成において、まず、鋼板1のせん断点がシャー下刃9によるせん断位置となるように鋼板1の搬送停止制御を行う。そして、鋼板1停止後、シャー上刃8が下降して鋼板1のせん断を行う。ついで、シャー上刃8が上部待機位置に戻った後に、せん断された尾端クロップをキッカ5でスクラップコンベア4へ蹴り落す。蹴り落された尾端クロップはスクラップコンベア4によってスクラップバック6に回収される。なお、前端クロップは、せん断されることによりそのままスクラップコンベア4上に落下してスクラップバック6に回収される。
【0016】
ここで、せん断後のタイミングで、投光器12はエリアビーム11を発して受光器13に受光させることで、シャー下刃9の上部の状態を監視する。ここで、シャー下刃9の上面に尾端クロップ残りがなければ、エリアビーム11は遮断されず受光器13の検出出力が低減しないため、検出回路14は尾端クロップ残り無しと判定する。一方、下向き反り等によりキッカ5により蹴り落されずシャー下刃9の上面に尾端クロップ残りがある場合には、エリアビーム11の一部は尾端クロップ残りによって遮断され受光器13の検出出力が所定量以上低減するため、検出回路14は尾端クロップ残り有りと判定する。このように検出回路14によりシャー下刃9上の尾端クロップ残り有りが検出された場合には、制御部15は、駆動モータ7にインターロックをかけて次鋼板1の搬送を停止させるとともに、オペレータに尾端クロップ残り有りが検出された旨の警告を発し、尾端クロップの除去を促す。これにより、オペレータは、残った尾端クロップをシャー下刃9上からスクラップコンベア4上に落下させる作業を行うことで対処する。よって、せん断完了時に尾端クロップがシャー下刃9上に残っていれば、次鋼板1の搬入が許可されないので、設備保護を図ることができる。
【0017】
ところで、オペレータは、前端クロップや尾端クロップのスクラップバッグ6への回収状況を工業用テレビを通じてモニタする。ここで、これらクロップのスクラップバッグ6への落下回収がなかった場合において制御部15により警告が発せられたときにはシャー下刃9上の尾端クロップ残りによるものであると判断される。一方、これらクロップのスクラップバッグ6への落下回収がなかった場合において制御部15により警告も発せられていないときにはスクラップコンベア4上でのクロップ詰りと判断され、スクラップコンベア4上からのクロップの除去作業が行われる。したがって、シャー下刃9上での尾端クロップ残りの有無を監視することにより、尾端クロップ残りとスクラップコンベア4上でのクロップ詰りとを判別することも簡単にできる。
【符号の説明】
【0018】
1 鋼板
3 シャー
4 スクラップコンベア
5 キッカ
8 シャー上刃
9 シャー下刃
10 エリアセンサ
11 エリアビーム
14 検出回路
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を搬送する鋼板搬送手段と、シャー上刃とシャー下刃とを有して前記シャー下刃に対して前記シャー上刃が下降して搬送された前記鋼板をせん断するシャーと、該シャーによりせん断された尾端クロップをスクラップ搬送手段へ蹴り落すキッカとを備える鋼板せん断装置において、
前記シャー下刃の上部を左右に横切るエリアビームで監視するエリアセンサと、
該エリアセンサの出力結果に基づき前記シャー下刃上の尾端クロップ残りを検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする鋼板せん断装置。
【請求項2】
前記検出手段により前記シャー下刃上の尾端クロップ残りが検出された場合に前記鋼板搬送手段による次鋼板の搬送を停止させるインターロック手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の鋼板せん断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125906(P2012−125906A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282176(P2010−282176)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】