説明

鋼板の積層方法

【課題】付帯作業を少なくして、作業効率を向上させることができる鋼板の積層方法を提供すること。
【解決手段】平板状の鋼板1を板厚方向に積み重ねる鋼板の積層方法であって、鋼板1の上に、別の鋼板1を板厚方向に積み重ねていく際、別の鋼板1を積み重ねる前に、丸棒状の部材2を、下方に位置する鋼板1の表面上に、鋼板1の長手方向と直交する方向に、間隔をあけて少なくとも二本置き、その上に別の鋼板1を積み重ねて、丸棒状の部材2の中央部をU字状になるようにして折り曲げ、その上にさらに別の鋼板1を積み重ねるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の鋼板を板厚方向(垂直方向)に積み重ねる鋼板の積層方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平板状の鋼板を板厚方向に積み重ねる鋼板の積層方法としては、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−226823号公報
【特許文献2】特開平9−216656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に開示されている積層鋼板梱包体は、(客先となる)所定の工場等に運び込まれて開梱される。そして、図9に示すように、板厚方向に隙間なく積み重ねられた鋼板1は、例えば、リフティングマグネットを用いて上から一枚ずつ水平方向(例えば、鋼板の長手方向)にズラされ、クランプによる掴み代が確保された後、当該掴み代にクランプが取り付けられて、当該クランプを天井クレーンで吊り上げるようにして、一枚ずつ所定の場所に搬送(運搬)あるいは収納されるようになっていた。
このように、板厚方向に隙間なく積み重ねられた鋼板1を天井クレーンで吊り上げて所定の場所に搬送(運搬)あるいは収納するには、例えば、リフティングマグネットを用いて上から一枚ずつ水平方向にズラし、クランプによる掴み代を確保する必要があった。そのため、付帯作業が多くなり、作業効率が悪くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、付帯作業を少なくして、作業効率を向上させることができる鋼板の積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る鋼板の積層方法は、平板状の鋼板を板厚方向に積み重ねる鋼板の積層方法であって、鋼板の上に、別の鋼板を板厚方向に積み重ねていく際、別の鋼板を積み重ねる前に、丸棒状の部材を、下方に位置する鋼板の表面上に、鋼板の長手方向と直交する方向に、間隔をあけて少なくとも二本置き、その上に別の鋼板を積み重ねて、丸棒状の部材の中央部をU字状になるようにして折り曲げ、その上にさらに別の鋼板を積み重ねるようにした。
【0007】
本発明に係る鋼板の積層方法によれば、(客先となる)所定の工場等に運び込まれて開梱された後、丸棒状の部材の中央部に形成されたU字部分を切断工具(例えば、ニッパー)で切断して、U字部分が切断された丸棒状の部材をころ(転)として利用することにより、リフティングマグネットを用いることなく、作業員の手だけで鋼板が上から一枚ずつ水平方向にズラされ、クランプによる掴み代が確保されることになる。
これにより、付帯作業を少なくして、作業効率を向上させることができる。
【0008】
本発明に係る鋼板の積層方法は、平板状の鋼板を板厚方向に積み重ねる鋼板の積層方法であって、鋼板の上に、別の鋼板を板厚方向に積み重ねていく際、別の鋼板を積み重ねる前に、中央部でU字状になるようにして折り曲げられた丸棒状の部材を、下方に位置する鋼板の表面上に、鋼板の長手方向と直交する方向に、間隔をあけて少なくとも二本置き、その上に別の鋼板を積み重ねるようにした。
【0009】
本発明に係る鋼板の積層方法によれば、(客先となる)所定の工場等に運び込まれて開梱された後、丸棒状の部材の中央部に形成されたU字部分を切断工具(例えば、ニッパー)で切断して、U字部分が切断された丸棒状の部材をころ(転)として利用することにより、リフティングマグネットを用いることなく、作業員の手だけで鋼板が上から一枚ずつ水平方向にズラされ、クランプによる掴み代が確保されることになる。
【0010】
本発明に係る挿入具は、平板状の鋼板を板厚方向に積み重ねる際に使用される挿入具であって、鋼板と、この鋼板のすぐ上に積み重ねられる別の鋼板との間に挟み込まれる第1の丸棒状または円筒状の部材と、前記別の部材と、この別の部材のすぐ上に積み重ねられるさらに別の鋼板との間に挟み込まれる第2の丸棒状または円筒状の部材と、前記第1の丸棒状または円筒状の部材と前記第2の丸棒状または円筒状の部材とを、着脱可能に連結するU字状の部材とを備えている。
【0011】
本発明に係る挿入具によれば、(客先となる)所定の工場等に運び込まれて開梱された後、U字状の部材を第1の丸棒状または円筒状の部材および第2の丸棒状または円筒状の部材から取り外して、第1の丸棒状または円筒状の部材および第2の丸棒状または円筒状の部材をころ(転)として利用することにより、リフティングマグネットを用いることなく、作業員の手だけで鋼板が上から一枚ずつ水平方向にズラされ、クランプによる掴み代が確保されることになる。
また、第1の丸棒状または円筒状の部材および第2の丸棒状または円筒状の部材を何度も利用する(再利用する)ことができ、資源の無駄を省くことができる。
【0012】
本発明に係る挿入具は、平板状の鋼板を板厚方向に積み重ねる際に使用される挿入具であって、鋼板と、この鋼板のすぐ上に積み重ねられる別の鋼板との間に挟み込まれる第1の丸棒状または円筒状の部材および第2の丸棒状または円筒状の部材と、前記第1の丸棒状または円筒状の部材と前記第2の丸棒状または円筒状の部材とを、着脱可能に連結するU字状の部材とを備えている。
【0013】
本発明に係る挿入具によれば、(客先となる)所定の工場等に運び込まれて開梱された後、U字状の部材を第1の丸棒状または円筒状の部材および第2の丸棒状または円筒状の部材から取り外して、第1の丸棒状または円筒状の部材および第2の丸棒状または円筒状の部材をころ(転)として利用することにより、リフティングマグネットを用いることなく、作業員の手だけで鋼板が上から一枚ずつ水平方向にズラされ、クランプによる掴み代が確保されることになる。
また、第1の丸棒状または円筒状の部材および第2の丸棒状または円筒状の部材を何度も利用する(再利用する)ことができ、資源の無駄を省くことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鋼板の積層方法によれば、付帯作業を少なくして、作業効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鋼板の積層方法を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図2】(客先となる)所定の工場等に運び込まれて開梱された後、丸棒状の部材の中央部に形成されたU字部分を切断工具で切断して、U字部分が切断された丸棒状の部材をころ(転)として利用し、鋼板を上から一枚ずつ水平方向にズラしていく状態を示す斜視図である。
【図3】図2を一側方から見た側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る鋼板の積層方法を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る鋼板の積層方法を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係る鋼板の積層方法を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る挿入具を示す平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る挿入具を示す平面図である。
【図9】従来の鋼板の積層状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る鋼板の積層方法について、図1を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る鋼板の積層方法を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る鋼板の積層方法では、(平板状の)鋼板1の上に、別の鋼板1を板厚方向(図1(b)において上下方向)に積み重ねていく際、別の鋼板1を積み重ねる前に、丸棒状の部材(例えば、直径2mmの針金)2を、下方に位置する鋼板1の表面上に、鋼板1の長手方向(図1(b)において紙面に垂直な方向)と(略)直交する方向に、(所定の)間隔をあけて少なくとも二本置き、その上に別の鋼板1を積み重ねて、丸棒状の部材2の中央部をU字状になるようにして折り曲げ、その上にさらに別の鋼板1を積み重ねるようにしている。
【0018】
本実施形態に係る鋼板の積層方法によれば、(客先となる)所定の工場等に運び込まれて開梱された後、図2および図3に示すように、丸棒状の部材2の中央部に形成されたU字部分を切断工具(例えば、ニッパー)3で切断して、U字部分が切断された丸棒状の部材2をころ(転)として利用することにより、リフティングマグネットを用いることなく、作業員の手だけで鋼板1が上から一枚ずつ水平方向にズラされ、クランプによる掴み代が確保されることになる。
これにより、付帯作業を少なくして、作業効率を向上させることができる。
【0019】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係る鋼板の積層方法について、図4を参照しながら説明する。
図4は本実施形態に係る鋼板の積層方法を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【0020】
図4に示すように、本実施形態に係る鋼板の積層方法では、(平板状の)鋼板1の上に、別の鋼板1を板厚方向(図1(b)において上下方向)に積み重ねていく際、別の鋼板1を積み重ねる前に、中央部でU字状になるようにして折り曲げられた丸棒状の部材(例えば、直径2mmの針金)4を、下方に位置する鋼板1の表面上に、鋼板1の長手方向(図4(b)において紙面に垂直な方向)と(略)直交する方向に、(所定の)間隔をあけて少なくとも二本置き、その上に別の鋼板1を積み重ねるようにしている。
【0021】
本実施形態に係る鋼板の積層方法によれば、(客先となる)所定の工場等に運び込まれて開梱された後、上述した第1実施形態と同様、丸棒状の部材4の中央部に形成されたU字部分を切断工具(例えば、ニッパー)3(図3参照)で切断して、U字部分が切断された丸棒状の部材4をころ(転)として利用することにより、リフティングマグネットを用いることなく、作業員の手だけで鋼板1が上から一枚ずつ水平方向にズラされ、クランプによる掴み代が確保されることになる。
これにより、付帯作業を少なくして、作業効率を向上させることができる。
【0022】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更実施可能である。
例えば、図5または図6に示すように、各鋼板1の外側に、丸棒状の部材2の中央部に形成されたU字部分が、(所定の)間隔をあけて少なくとも二つ存するようにして、鋼板1が積み重ねられていくとさらに好適である。
このように積み重ねていくことにより、上から二番目、三番目・・・に位置する丸棒状の部材2の中央部に形成されたU字部分を切断工具(例えば、ニッパー)3(図3参照)で順次切断していった場合でも、鋼板1を上から一枚ずつ水平方向にズラしていくことができ、作業効率を向上させることができる。
なお、図1に示す第1実施形態のものでは、上から二番目、三番目・・・に位置する丸棒状の部材2の中央部に形成されたU字部分を切断工具(例えば、ニッパー)3(図3参照)で順次切断していった場合、当該丸棒状の部材2の上にあった鋼板1、および当該丸棒状の部材2に挟み込まれていた鋼板1が(二枚)同時にズレてしまう(移動してしまう)おそれがある。
【0023】
また、丸棒状の部材2,4の代わりに、図7に示すような挿入具5を用いるようにしてもよい。
挿入具5は、直線状に形成された二本の丸棒状の部材(例えば、直径2mmの針金)6,7と、一方の(第1の)丸棒状の部材6の一端部と他方の(第2の)丸棒状の部材7の一端部とを連結(結合)するU字状の部材8とを備えている。また、U字状の部材8の一端部には、必要に応じて作業員の手で丸棒状の部材6の一端部を挟み込んで拘束状態にしたり、丸棒状の部材6の一端部との連結を解いて解放状態にすることのできるクリップ9が設けられており、U字状の部材8の他端部には、必要に応じて作業員の手で丸棒状の部材7の一端部を挟み込んで拘束状態にしたり、丸棒状の部材7の一端部との連結を解いて解放状態にすることのできるクリップ10が設けられている。
これにより、丸棒状の部材6,7を何度も利用する(再利用する)ことができ、資源の無駄を省くことができる。
【0024】
また、丸棒状の部材2,4の代わりに、図8に示すような挿入具10を用いるようにしてもよい。
挿入具10は、直線状に形成された二本の円筒状の部材(例えば、外径○mm、内径○mmのパイプ)11,12と、一方の(第1の)円筒状の部材11の一端部と他方の(第2の)円筒状の部材12の一端部とを連結(結合)するU字状の部材13とを備えている。U字状の部材13は、二本のL字状の部材14,15と、一本のI字状の部材16とを備えている。また、円筒状の部材11,12の一端部、およびI字状の部材16の両端部には、バネ(図示せず)によって付勢されるロックピン17がそれぞれ設けられ、L字状の部材14,15の両端部には、ロックピン17を受け入れる(ロックピン17が嵌合する)貫通穴18がそれぞれ設けられており、必要に応じて作業員の手でロックピン17を貫通穴18に嵌合させて、円筒状の部材11,12をU字状の部材13に対して拘束状態にしたり、必要に応じて作業員の手でロックピン17を押し込んで、円筒状の部材11,12とU字状の部材13との連結を解いて解放状態にすることができるようになっている。
これにより、円筒状の部材11,12を何度も利用する(再利用する)ことができ、資源の無駄を省くことができる。
【0025】
なお、鋼板1の板厚が、図1から図6に示すものよりも厚いもの、あるいは薄いものにも対応し得るよう、長さの異なるU字状の部材8、I字状の部材16を状況に応じて予め用意しておくとさらに好適である。
【符号の説明】
【0026】
1 鋼板
2 丸棒状の部材
4 丸棒状の部材
5 挿入具
6 (第1の)丸棒状の部材
7 (第2の)丸棒状の部材
8 U字状の部材
10 挿入具
11 (第1の)円筒状の部材
12 (第2の)円筒状の部材
13 U字状の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の鋼板を板厚方向に積み重ねる鋼板の積層方法であって、
鋼板の上に、別の鋼板を板厚方向に積み重ねていく際、別の鋼板を積み重ねる前に、丸棒状の部材を、下方に位置する鋼板の表面上に、鋼板の長手方向と直交する方向に、間隔をあけて少なくとも二本置き、その上に別の鋼板を積み重ねて、丸棒状の部材の中央部をU字状になるようにして折り曲げ、その上にさらに別の鋼板を積み重ねるようにしたことを特徴とする鋼板の積層方法。
【請求項2】
平板状の鋼板を板厚方向に積み重ねる鋼板の積層方法であって、
鋼板の上に、別の鋼板を板厚方向に積み重ねていく際、別の鋼板を積み重ねる前に、中央部でU字状になるようにして折り曲げられた丸棒状の部材を、下方に位置する鋼板の表面上に、鋼板の長手方向と直交する方向に、間隔をあけて少なくとも二本置き、その上に別の鋼板を積み重ねるようにしたことを特徴とする鋼板の積層方法。
【請求項3】
平板状の鋼板を板厚方向に積み重ねる際に使用される挿入具であって、
鋼板と、この鋼板のすぐ上に積み重ねられる別の鋼板との間に挟み込まれる第1の丸棒状または円筒状の部材と、
前記別の部材と、この別の部材のすぐ上に積み重ねられるさらに別の鋼板との間に挟み込まれる第2の丸棒状または円筒状の部材と、
前記第1の丸棒状または円筒状の部材と前記第2の丸棒状または円筒状の部材とを、着脱可能に連結するU字状の部材とを備えていることを特徴とする挿入具。
【請求項4】
平板状の鋼板を板厚方向に積み重ねる際に使用される挿入具であって、
鋼板と、この鋼板のすぐ上に積み重ねられる別の鋼板との間に挟み込まれる第1の丸棒状または円筒状の部材および第2の丸棒状または円筒状の部材と、
前記第1の丸棒状または円筒状の部材と前記第2の丸棒状または円筒状の部材とを、着脱可能に連結するU字状の部材とを備えていることを特徴とする挿入具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−81996(P2012−81996A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230765(P2010−230765)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】