説明

鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造、及び鋼管杭付きベタ基礎工法

【課題】 液状化を防ぎつつも、液状化により地盤が不同沈下を生じた場合であっても、コストを抑えて基礎を水平に修正可能な鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造、及び鋼管杭付きベタ基礎工法を提供すること。
【解決手段】 建物の柱や耐力壁の下端に沿って設けられた立上がり部2と、この立上がり部2の底部と連続して建物の全建築面に亘って設けられた底板部3と、を有するベタ基礎において、底板部3の下方に複数の鋼管杭5を設置し、底板部3に液状化により地盤が不同沈下した際に薬液を注入する注入孔30を設けるとともに、注入した薬液が基礎から外部へ漏れ出さないように基礎外周に沿って底板部3から下方に突出する下がり壁部4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、戸建木造住宅などの小規模建築物における鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造、及び鋼管杭付きベタ基礎工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一部報道によれば、戸建住宅は、今回の東日本大震災により17,000戸が液状化の影響を受け、関東において同様の大地震が起きた場合、33,000戸を上回る液状化の被害を受けるという試算もあるとのことである。
主な原因は、このような戸建住宅などの小規模建築物の基礎は、法規上、液状化のおそれがある軟弱地盤に建てられる場合であっても、支持層となる強固な地盤まで到達する杭を構築することが求められず直接基礎で構わないこととなっているからであるが、小規模建築物にこのような支持層まで達する杭の構築を義務化するのは費用面から妥当でない。
そのため、今回の大震災を受け、戸建住宅などの小規模建築物でも安価で実効性のある液状化対策可能な基礎構造の提案が急務となっている。
【0003】
従来、小規模建築物の基礎の不同沈下対策(液状化対策)として、バックホウなどの掘削重機で軟弱地盤の表層部分を一度掘削し、セメント系などの固化材と混ぜ合わせて埋め戻す地盤改良を行ってから直接基礎を構築することが知られているが、建築する範囲全面を地盤改良する場合、工期が長期化するとともに、固化材の材料費などが嵩むため、コストダウンが求められていた。
【0004】
そこで、本出願人は、建築範囲を全面的に地盤改良するのではなく、軟弱地盤を碁盤の目状、かつ鉛直断面が溝底面より上方に向けて次第に大きくなるように地盤改良するとともに、その上にベタ基礎を構築する安定材付きベタ基礎工法(特許文献1参照)を提案した。
【0005】
しかし、このような地盤改良+ベタ基礎工法では、せいぜい地表から2m程度までしか地盤改良することができず、埋立地などの軟弱地盤が数m以上分布する地盤の液状化対策には採用できなかった。
【0006】
また、特許文献2には、液状化により地盤とともに(相対的に)沈下した建物の沈下部分を基礎と一緒にジャッキアップし、このジャッキアップにより生じた基礎と地盤との隙間に、モルタルやグラウト等の流動固化材を充填して固化することにより基礎の傾きを矯正する不同沈下を生じた建物の矯正方法及び矯正装置(いわゆるジャッキアップ工法)が開示されている(特許文献2の図1等参照)。
【0007】
しかし、特許文献2に記載の不同沈下を生じた建物の矯正方法では、ジャッキアップするためのジャッキの設置箇所が限られており、ジャッキアップにより基礎に不均等な想定外の力が加わり損傷してしまうという問題があった。特に、ベタ基礎の場合、ジャッキの設置箇所が建物の外周部分に限られているため前記問題が顕著となっていた。
【0008】
そして、特許文献3には、建物11の基礎地盤の表層部分に設けられる表層改良工法による基盤層12と、基盤層12の中央部分12aを支持して基礎地盤中に設けられる複数の柱状改良工法(ソイルセメント工法)による支持杭13と、基盤層12の上方に重ねて配置されるベタ基礎14とからなり、基盤層12は、支持杭13によって支持される中央部分12aが一段高くなっていて、ベタ基礎14の中央部分14aが載置されると共に、中央部分12a,14aの周囲の基盤層12とベタ基礎14との間の隙間15には、調整砂16が充填されており、軟弱地盤の上方に建築される建物11に不同沈下が生じた際に、建物11の傾きを修正できるようにした軟弱地盤おける建物11の基礎構造10が開示されている(特許文献3の図1等参照)。
【0009】
しかし、特許文献3に記載の軟弱地盤おける建物の基礎構造は、地表面付近の地盤改良とソイルセメント工法による地盤改良とを併用することで多少、液状化に抵抗できるものの、今回のような大震災に耐えられるものではなく、液状化により地盤が不同沈下し、基礎が傾斜した場合は、従来のジャッキアップ工法とあまり相違はなく、ジャッキアップによる基礎の損傷という問題を解決することができていない。
【0010】
更に、特許文献4には、一端部10a側から他端部10b側に向けて外径が縮径したテーパー形状部分16を有する複数のテーパー杭10を、上層部分13に液状化層14を含む建物17の基礎地盤11の表層部分15に、外径の小さな他端部10b側を下方に向けて圧入用重機18を用いて地中に圧入又は回転圧入することにより、群杭を形成するように所定のピッチで格子状に設置して、基礎地盤11の表層部分15を締め固める建物の基礎地盤の液状化対策構造が開示されている(特許文献4の図1等参照)。
【0011】
しかし、特許文献4に記載の建物の基礎地盤の液状化対策構造は、基本的に群杭を圧入する際の地盤の締め固め効果により、液状化を防ぐものであり、今回のような大震災に耐えられるものか不明であり、液状化により地盤に不同沈下が起こり、基礎が傾斜した場合に対処できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−060290号公報
【特許文献2】特開2000−008398号公報
【特許文献3】特開2007−120240号公報
【特許文献4】特開2008−190116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、この発明は、前記従来の技術の問題を解決し、液状化を防ぎつつも、液状化により地盤が不同沈下を起こした場合であっても、コストを抑えて基礎を水平に修正可能な鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造を提供すること、及び液状化対策の鋼管杭付きベタ基礎工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、建物の柱や耐力壁の下端に沿って設けられた立上がり部と、この立上がり部の底部と連続して建物の全建築面に亘って設けられた底板部と、を有するベタ基礎において、前記底板部の下方に複数の鋼管杭を設置し、前記底板部に液状化により地盤が不同沈下した際に薬液を注入する注入孔を設けるとともに、注入した薬液が基礎から外部へ漏れ出さないように基礎外周に沿って前記底板部から下方に突出する下がり壁部を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造において、前記注入孔には、この注入孔内面に形成されたネジ溝と螺合して薬液を封止する封止キャップが取り付けられている。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造において、前記複数の鋼管杭は、前記底板部に定着されていない群杭である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、建物の柱や耐力壁の下端に沿った立上がり部と、建物の全建築面に亘る鉄筋コンクリートのスラブからなる底板部と、を構築するベタ基礎工法において、地盤に群杭となる複数の鋼管杭を貫入する工程と、前記底板部の外周に沿って下がり壁部を構築するために基礎底面となる地盤を掘り下げる工程と、液状化により地盤が不同沈下した際に薬液を注入する注入孔となるパイプを設置する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明によれば、建物の柱や耐力壁の下端に沿って設けられた立上がり部と、この立上がり部の底部と連続して建物の全建築面に亘って設けられた底板部と、を有するベタ基礎において、前記底板部の下方に複数の鋼管杭を設置し、前記底板部に液状化により地盤が不同沈下した際に薬液を注入する注入孔を設けるとともに、注入した薬液が基礎から外部へ漏れ出さないように基礎外周に沿って前記底板部から下方に突出する下がり壁部を設けたので、鋼管杭を貫入する際の振動で地盤を締め固めるとともに、鋼管杭の摩擦支持力により、液状化により基礎が傾くのを防ぎつつも、液状化により地盤が不同沈下を起こした場合であっても、沈下した基礎の注入孔から薬液を注入してその圧力で基礎の沈下部分を浮上させて基礎を水平にすることができ、従来のジャッキアップ工法のように、沈下部分の基礎の下を掘り下げてジャッキを設置する必要がなくコストを抑えて短時間で基礎を水平に修正可能であるとともに、ジャッキアップ時に基礎にかかる局所的な力を底板部全面にかかる均等な力でリフトアップすることができ、リフトアップ時に基礎にかかる負担を低減することができる。また、この基礎を水平に戻す工事は、建物に居住したまま行なえるため、工事期間中のクライアントの支出も削減することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造において、前記注入孔には、この注入孔内面に形成されたネジ溝と螺合して薬液を封止する封止キャップが取り付けられているので、前記作用効果に加え、薬液注入の際に、薬液を注入する注入孔以外の注入孔から薬液が逆流噴射することがなく、室内を養生したりする必要がなく、薬液の無駄もない。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造において、前記複数の鋼管杭は、前記底板部に定着されていない群杭であるので、前記作用効果に加え、薬液注入により基礎をリフトアップする際に、鋼管杭ごと持ち上げる必要がなく、より基礎にかかる負担を低減することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、建物の柱や耐力壁の下端に沿った立上がり部と、建物の全建築面に亘る鉄筋コンクリートのスラブからなる底板部と、を構築するベタ基礎工法において、地盤に群杭となる複数の鋼管杭を貫入する工程と、前記底板部の外周に沿って下がり壁部を構築するために基礎底面となる地盤を掘り下げる工程と、液状化により地盤が不同沈下した際に薬液を注入する注入孔となるパイプを設置する工程と、を有するので、鋼管杭を貫入する際の振動で地盤を締め固めるとともに、鋼管杭の摩擦支持力により、液状化を防ぎつつも、液状化により地盤が不同沈下を起こした場合であっても、沈下した部分の注入孔から薬液を注入してその圧力で基礎の沈下部分を浮上させて基礎を水平にすることができ、従来のジャッキアップ工法のように、沈下部分の基礎の下を掘り下げてジャッキを設置する必要がなくコストを抑えて短時間で基礎を水平に修正可能であるとともに、ジャッキアップ時に基礎にかかる局所的な力を底板部全面にかかる均等な力でリフトアップすることができ、リフトアップ時に基礎にかかる負担を低減することができる。また、この基礎を水平に戻す工事は、建物に居住したまま行なえるため、工事期間中のクライアントの支出も削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎の基礎伏図である。
【図2】同上の鋼管杭付きベタ基礎の外周部分を主に示す鉛直断面図である。
【図3】実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎の注入孔を示す鉛直断面図である。
【図4】同上の注入孔の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0024】
先ず、図1〜図4を用いて、この発明の実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎ついて説明する。
図中の符号1が、この発明の実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎であり、この鋼管杭付きベタ基礎1は、建物の外周及び平面内部の建物の柱や耐力壁の下端に沿って設けられた立上がり部2と、この立上がり部2の底部と連続して建物の全建築面に亘って設けられた底板部3と、基礎外周に沿って設けられ、この底板部3から下方に突出する下がり壁部4と、底板部3及び下がり壁部4の下方の地中に貫入された鋼管杭5と、から主に構成されている。
【0025】
立上がり部2は、構造設計に応じた所定の配筋がなされた鉛直断面が縦長な長方形(図2参照)からなる鉄筋コンクリートの構造物であり、基礎に所定の曲げ剛性を与えて建物の荷重を底板部3に伝達する機能を有している。
【0026】
底板部3は、構造設計に応じた所定の配筋がなされた鉄筋コンクリートスラブからなる構造物であり、建物の荷重を地盤に均等に伝達する機能を有している。また、この底板部3には、液状化により地盤が不同沈下した際に薬液を注入する注入孔30が、均等となるように所定の割合で複数個設けられている。
【0027】
この注入孔30は、図3に示すように、PVC樹脂(ポリ塩化ビニル)からなる直径50mm(VP50)程度のパイプ31と、このパイプ31の内周面に形成されたネジ溝と螺合するABS樹脂(アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合合成樹脂)からなるキャップ32とから主に構成され、薬液圧入時に注入を行なわない注入孔30から薬液が逆流して噴出するのを防ぐ機能を有している。また、図4に示すように、キャップ32の上面には、パイプ31にネジ込む際の把手32aが上方に向け突設され、パイプ31とキャップ32との間には、薬液を密閉するニトリルゴム(NBR)などの合成ゴムからなるOリング33が嵌着されている。
【0028】
下がり壁部4は、構造設計に応じた所定の配筋がなされた鉄筋コンクリートの構造物であり、液状化により地盤が不同沈下した場合に注入孔30から注入される薬液が基礎の外部へ漏れ出さないようにする機能を有している。なお、底板部3の下方の基礎内部には、型枠を設置できない関係上、図2に示すように、鉛直断面が逆台形となっているが、地盤を鉛直に掘削しても崩れない場合は、鉛直断面を矩形状としても構わない。
【0029】
鋼管杭5は、一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G 3444 STK400以上)からなる鋼管の厚さが4.2mm〜5.7mm程度、外径がφ101.6mm〜φ165.2mm程度の小口径の鋼管杭であり、図1、図2に示すように、立上がり部2の下方であって、杭の上部は基礎には定着されず、底板部3又は下がり壁部4の下端に鋼管杭5の天端が当接するよう設置され、複数の鋼管杭5が群杭として地盤との摩擦により基礎及び建物の荷重を支える機能を有している。
【0030】
次に、実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎1を生産する方法であるこの発明の実施の形態に係る鋼管杭付きベタ基礎工法について図1及び図2を用いて工程順に説明する。
【0031】
(鋼管杭圧入)
先ず、図1に示す所定の位置に、圧入機で鋼管杭5に振動を与えながら圧力をかけることで、天端(上端)が所定の深さに達するまで地盤に鋼管杭5を圧入する。実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎1の場合は、建物外周に位置する下がり壁部4の下方に設置される鋼管杭5が、下がり壁部4の高さ分深く設置され、平面上内側に位置する底板部3の下方に設置される鋼管杭5が、浅く設置される。
なお、このとき、振動を与えながら鋼管杭5を圧入するので、周囲の地盤も圧密されて締め固められるので、地盤が改良され、液状化に対抗できるようになる。
【0032】
(外周掘り下げ)
次に、前述の鋼管杭5の天端が露出する深さまで建物外周に沿って下がり壁部4となる部分を掘り下げ、必要に応じて、掘り下げた部分の底面に、型枠設置位置の墨出し用に捨てコンクリートを打設する。なお、捨てコンクリートを打設する場合は、その厚さ分深く掘削する必要がある。
【0033】
(基礎配筋)
そして、基礎の構造設計に応じて、立上がり部2、底板部3、下がり壁部4の所定の配筋を行い、注入孔30の位置(図1参照)には、前述のパイプ31をセットする。
【0034】
(型枠設置、コンクリート打設)
次に、掘り下げた部分に下がり壁部4の外周に沿って型枠を設置し、底板部3の天端までコンクリートを打設する。コンクリートの硬化後、立上がり部2の両面の型枠を設置し、立上がり部2の天端までコンクリートを再度打設し、硬化後型枠を払して、掘り下げた基礎外周を設計GLまで埋め戻すことで本実施の形態に係る鋼管杭付きベタ基礎工法が完了する。
【0035】
なお、立上がり部2の高さが低い場合は、コンクリートを2段階に分けて打設するのではなく、下がり壁部4の下端から立上がり部2の天端までの高さの型枠を基礎外周に沿って設置し、内側の型枠、内部の通りの型枠を浮かし型枠として、立上がり部2の天端まで一体としてコンクリートを打設することも可能である。
【0036】
次に、地震の際の液状化により地盤が不同沈下した場合の実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎1の修正方法について図1及び図2を用いて説明する。
先ず、基礎天端の高さを計測し、基礎の沈下している部分、及びリフトアップすべき高さ等を割り出す。
【0037】
そして、割り出した値から薬液を注入する注入孔30の位置、個数を特定して、その使用する注入孔30のキャップ32を外し、それ以外の注入孔30は、キャップ32を締めたままの状態で、圧力ポンプなどで薬液を徐々に圧入し、基礎の沈下部分を基礎が水平となるまでリフトアップする。
【0038】
このとき、実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎1によれば、薬液の注入圧力を底板部3全体で均等に受けてリフトアップするので、従来のジャッキアップ工法のように、基礎に局所的な力が掛からず、基礎が損傷するおそれが少ない。また、使用しない注入孔30には、キャップ32が螺合されているので、薬液圧入の際に、注入孔から薬液が逆流して噴射することがない。このため、室内を養生したりする手間が省けるだけでなく、薬液の無駄も発生しない。
【0039】
なお、注入する薬液は、セメント系、水ガラス系、樹脂系などの硬化前が流動体で、硬化後に所定の支持力を得ることができるものであれば使用可能であるが、本実施例では、いわゆる「水ガラス」製造用の原料であるNaO/nSiO又はKO/nSiOと、その硬化剤である無機塩類、有機塩類、金属酸化物、金属水酸化物、無機酸、有機酸、酸性塩、金属酸化物、金属水酸化物、塩基性塩等を組み合わせて調整したものが用いられる。
【0040】
以上の説明した実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造によれば、鋼管杭を貫入する際の振動で地盤を締め固めるとともに、鋼管杭の摩擦支持力により、液状化により基礎が傾くのを防ぎつつも、液状化により地盤が不同沈下を起こした場合であっても、沈下した部分の注入孔から薬液を注入してその圧力で基礎の沈下部分を浮上させて基礎を水平にすることができ、従来のジャッキアップ工法のように、沈下部分の基礎の下を掘り下げてジャッキを設置する必要がなくコストを抑えて短時間で基礎を水平に修正可能であるとともに、ジャッキアップ時に基礎にかかる局所的な力を底板部全面にかかる均等な力でリフトアップすることができ、リフトアップ時に基礎にかかる負担を低減することができる。また、この基礎を水平に戻す工事は、建物に居住したまま行なえるため、工事期間中のクライアントの支出も削減することができる。
【0041】
以上のように、この発明の実施例に係る鋼管杭付きベタ基礎、及び鋼管杭付きベタ基礎工法を説明したが、鋼管杭、注入孔の設置位置及び個数等は、あくまでも一例を示したに過ぎず、建物の間取りなどにより変化するものである。また、基礎の形状等の鋼管杭付きベタ基礎の図示形態も、一例を示したものであり、特許請求の範囲に記載した範囲内で変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 ベタ基礎
2 立上がり部
3 底板部
30 注入孔
31 パイプ
32 キャップ
4 下がり壁部
5 鋼管杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の柱や耐力壁の下端に沿って設けられた立上がり部と、この立上がり部の底部と連続して建物の全建築面に亘って設けられた底板部と、を有するベタ基礎において、
前記底板部の下方に複数の鋼管杭を設置し、前記底板部に液状化により地盤が不同沈下した際に薬液を注入する注入孔を設けるとともに、注入した薬液が基礎から外部へ漏れ出さないように基礎外周に沿って前記底板部から下方に突出する下がり壁部を設けたことを特徴とする鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造。
【請求項2】
前記注入孔には、この注入孔内面に形成されたネジ溝と螺合して薬液を封止する封止キャップが取り付けられている請求項1に記載の鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造。
【請求項3】
前記複数の鋼管杭は、前記底板部に定着されていない群杭である請求項1又は2に記載の鋼管杭付きベタ基礎の液状化対策構造。
【請求項4】
建物の柱や耐力壁の下端に沿った立上がり部と、建物の全建築面に亘る鉄筋コンクリートのスラブからなる底板部と、を構築するベタ基礎工法において、
地盤に群杭となる複数の鋼管杭を貫入する工程と、前記底板部の外周に沿って下がり壁部を構築するために基礎底面となる地盤を掘り下げる工程と、液状化により地盤が不同沈下した際に薬液を注入する注入孔となるパイプを設置する工程と、を有することを特徴とする鋼管杭付きベタ基礎工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79549(P2013−79549A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220997(P2011−220997)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【特許番号】特許第5179636号(P5179636)
【特許公報発行日】平成25年4月10日(2013.4.10)
【出願人】(595117286)コングロエンジニアリング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】