説明

錠剤用の包装容器

【課題】垂直方向の緩衝性を向上させる。
【解決手段】外容器10に緩衝性の内容器20を内装し、内容器20は、胴部21の下部に下向きドーム状の底部23を形成するとともに、断面山形の中空の突条23aを介して外容器10の底面13上に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、割れたり欠けたりし易い錠剤を好適に収納して保護することができる錠剤用の包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的な衝撃によって割れたり欠けたりし易い錠剤を収納するために、緩衝用の二重容器が提案されている(特許文献1)。
【0003】
二重容器は、剛性が高い外容器に緩衝用の内容器を内装して構成されている。内容器は、薄肉の変形可能なプラスチック製であって、内部を負圧にして収縮させることにより外容器の口部から外容器内に挿入し、外容器内においてエアを吹き込んで膨ませ、必要十分な内容積を確保する。なお、内容器は、円筒状の底付きの胴部に上向きの開口部を形成し、開口部の上端の外フランジを外容器の口部の上端に載せて外容器のキャップで挟み込むとともに、胴部の下面の板状のスペーサを介して外容器の底面上に支持されている。また、胴部の外面には、多数のクッション性の縦リブが等間隔に形成されており、胴部は、水平方向の衝撃を受けると、縦リブを介して外容器の内壁面に当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−345709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、内容器は、外容器のキャップにより上端の外フランジを外容器の口部の上端に挟み込んで保持し、クッション性のない板状のスペーサを介して胴部の下端を外容器の底面上に支持するため、垂直方向の緩衝性に改善の余地があり、キャップの気密性が損われるおそれがあるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、内容器の上端の外フランジを外容器の口部内にフリーに解放するとともに、クッション性の突部を介して下向きドーム状の底部を外容器の底面上に支持することによって、垂直方向の緩衝性を向上させ、キャップの気密性の問題を生じることがない錠剤用の包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、上向きの口部を有する有底角筒状の外容器と、外容器に内装する緩衝用の内容器とを備えてなり、内容器は、外容器の各側壁に対応する4面を有する胴部と、胴部の下部の下向きドーム状の底部と、胴部の上部に形成する円形の開口部とを有し、胴部の各面は、それぞれクッション性の複数の突部を介して外容器の各側壁の内面に当接し、底部は、クッション性の突部を介して外容器の底面に当接し、開口部は、上端の外フランジを介して口部の内周との間に小さな隙間を形成することをその要旨とする。ただし、ここでいう小さな隙間とは、収納対象の錠剤が入り込んだり挟まったりするおそれがない小さな寸法の隙間をいう。
【0008】
なお、胴部の各面は、上下方向の凹溝を介して区切ることができる。
【0009】
また、胴部の各面の突部は、円錐状の突起、断面山形の突条の少なくとも一方により構成してもよく、底部の突部は、断面山形の突条により構成してもよい。
【0010】
さらに、開口部には、口部に内接する複数の円弧部と、平坦な切欠部とを周方向に交互に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
かかる発明の構成によるときは、内容器は、上端の外フランジが外容器の口部内において口部の内周との間に小さい隙間を形成してフリーに解放されているため、キャップの気密性を損なうおそれがない。また、内容器は、クッション性の突部を介して胴部の下部の下向きドーム状の底部が外容器の底面上に支持されているため、たとえば全体を落下させるなどの原因により大きな上下方向の衝撃を受けても、ドーム状の底部、クッション性の突部の一方または双方が弾性変形して効果的に衝撃を吸収し、内部の錠剤を保護することができ、垂直方向の緩衝性を向上させることができる。なお、内容器は、水平方向の衝撃を受けても、クッション性の複数の突部を介して胴部の各面が外容器の各側壁の内面に当接しているため、同様に内部の錠剤を有効に保護することができる。
【0012】
ただし、外容器は、十分な剛性を有するキャップ付きの密閉容器である。また、内容器は、負圧を加えることにより収縮可能な薄肉のプラスチック製であって、外容器の口径より小さく収縮させて外容器に挿入し、エアを吹き込んで膨らませることにより、外容器内において所定の形状に復帰させる。かかる内容器は、たとえばポリエチレン樹脂を薄肉にブロー成形して一体成形することができる。
【0013】
胴部の各面は、上下方向の凹溝を介して区切ることにより、内部を負圧にして内容器の全体を円滑に収縮させることができる。なお、各凹溝は、90°前後の角度で外側にV字状に開く形態に形成することが好ましい。
【0014】
胴部の各面の突部は、クッション性と、成形上の便宜とを考慮して、円錐状の突起、断面山形の突条を適宜使い分けることが好ましい。たとえば、成形用の割り型の分離方向に平行な2面には、パーティングライン上に円錐状の突起を設けることができるが、それ以外の場所には、割り型の分離方向に延びる断面山形の突条を設けるものとする。また、割り型の分離方向と直交する2面には、円錐状の突起を任意の位置に配置することができる。底部の突部についても、同様である。ただし、底部の突部は、必要十分に大きなクッション性を実現するために、1条または2条以上の断面山形の突条を割り型の分離方向に配置することが好ましい。
【0015】
開口部の周方向に複数の円弧部と平坦な切欠部とを交互に形成すれば、円弧部を介して内容器の開口部を外容器の口部内に安定に位置決めすることができ、各切欠部と口部の内周との間に形成される隙間を介し、外容器内において内容器を膨らませる際に外容器内のエア抜きをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】使用状態を示す全体構成図
【図2】図1のX−X線矢視相当断面図
【図3】内容器の全体斜視図
【図4】内容器の構成説明図(1)
【図5】内容器の構成説明図(2)
【図6】要部構成説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0018】
錠剤用の包装容器は、有底角筒状の外容器10と、外容器10に内装する緩衝用の内容器20とを備えてなる(図1、図2)。なお、内容器20内には、錠剤T、T…が収納される。
【0019】
外容器10の胴部11は、四隅部を円弧状に丸めた角筒状に形成されている。胴部11の上端には、円形の口部12が上向きに開口され、胴部11の下端には、底面13が形成されている。口部12の外周には、キャップ30用の雄ねじ12aが形成されており、雄ねじ12aの下方には、リブ12bが全周に形成されている。なお、外容器10は、剛性が高い硬質のプラスチック材料により一体成形されている。
【0020】
キャップ30は、外容器10側の雄ねじ12aに適合する雌ねじ31を有するねじ式の着脱キャップである。キャップ30の天面には、パッキン32、ホルダ33を介して乾燥剤Dが保持されており、乾燥剤Dは、キャップ30を気密に閉じることにより、内容器20内の錠剤T、T…を乾燥雰囲気に保つことができる。ただし、乾燥剤Dは、必要に応じて設ければよく、これを省略してもよい。キャップ30の外周には、滑り止め用の粗いローレット34、34…が形成されている。
【0021】
内容器20は、中間の胴部21と、胴部21の上部に形成する円形の開口部22と、胴部21の下部の下向きドーム状の底部23とを有する(図3)。胴部21は、上下方向の断面V字状の凹溝24、24…を介し、外容器10の胴部11の各側壁に対応する4面21a、21a、21b、21bに区切られている(図2、図3)。各凹溝24は、胴部21の上下の肩部25、底部23にまで延びており、外側に向けて90°に近い角度に開いている。また、胴部21の一方の相対向する2面21a、21aには、それぞれ上下の水平方向の突条21c、21cと中央部の円錐状の突起21dとが形成され、他方の相対向する2面21b、21bには、それぞれ4隅部の円錐状の突起21d、21d…と中央部の突起21dとが形成されている。
【0022】
開口部22の上端には、外フランジ22aが形成されている(図3、図4(A))。なお、図4(A)、(B)は、それぞれ図3の上面図、下面図である。
【0023】
外フランジ22aの下方には、開口部22の全周に及ぶ凹溝22bが形成されており、凹溝22bの下方には、円弧部22c、22c…と、平坦な切欠部22d、22d…とが交互に周方向に形成されている。ただし、各円弧部22cの下部には、水平方向のリブ22eが突設されている。
【0024】
底部23の最下部には、突条23aが形成されている(図3、図4(B))。突条23aは、胴部21の突条21c、21c…と同方向に配置されている。
【0025】
内容器20の各突条21cは、断面山形の中空に形成されている(図5(A))。また、円錐状の各突起21dも、中空に形成されている(図5(A)、(B))。さらに、底部23の突条23aも、断面山形の中空に形成されている。ただし、図5(A)、(B)は、それぞれ図3のX1 、X2 矢視相当の半断面図である。
【0026】
内容器20は、変形可能な薄肉に一体成形されている。そこで、内容器20は、開口部22から吸引して内部を負圧にすると、凹溝24、24…を基点にして屈曲するようにして収縮し、口部12を介して外容器10内に挿入することができる。ただし、各面21a、21bの有効幅wは、口部12の内径より大きくてもよく、小さくてもよいものとする(図2)。また、内容器20は、外容器10内においてエアを吹き込むと、元の正規の形状に復帰する。ただし、外容器10内の内容器20は、各面21a、21a、21b、21bを外容器10の胴部11の各側壁に正しく対面させるものとする。
【0027】
外容器10内において、内容器20は、一方の2面21a、21aがそれぞれ上下の突条21c、21c、中央の突起21dを介して外容器10の側壁の内面に当接し、他方の2面21b、21bが突起21d、21d…を介して外容器10の側壁の内面に当接する。また、底部23は、突条23aを介して外容器10の底面13に当接し(図1)、開口部22は、外フランジ22aを介して外容器10の口部12の内周との間に小さな隙間dを形成する(図6(A))。すなわち、外フランジ22aは、口部12内にフリーに解放されている。
【0028】
また、このとき、開口部22の周囲の円弧部22c、22c…は、口部12に内接して開口部22を口部12内に位置決めし(図6(A)、(B))、各円弧部22cの下部のリブ22e、22e…は、口部12の下方のリブ12b側に突出して内容器20を抜け止めする。一方、平坦な切欠部22d、22d…は、それぞれ口部12の内周との間に隙間gを形成し、隙間g、g…は、外容器10内において内容器20を膨らませる際のエア抜きとして作用する。ただし、図6(A)は、図1の要部拡大図であり、図6(B)は、同図(A)のX3 −X3 線矢視相当全体断面図である。
【0029】
内容器20の中空の突条21c、21c…、突起21d、21d…は、外容器10の各側壁の内面に当接することにより、水平方向の衝撃を吸収する。また、下向きドーム状の底部23、中空の突条23aは、垂直方向の衝撃を吸収する。そこで、突条21c、21c…、23a、突起21d、21d…は、それぞれクッション性の突部となっており、内容器20の緩衝性を実現している。ただし、各突条21c、23a、各突起21dは、それぞれ錠剤Tが挟まったり、入り込んで抜け出なくなったりしないように、適切な大きさ、形状に形成するものとする。
【0030】
なお、内容器20を成形する際のパーティングラインは、たとえば突条21c、21c側の2面21a、21aの中央を上下に走るように、すなわち2分割の割り型の分離方向を2面21b、21の方向(図4(A)の矢印K1 、K1 方向)に定めるのがよい。
【0031】
以上の説明において、内容器20の底部23の突条23aは、2条以上を平行に設けてもよく、必要なクッション性が得られる限り、複数の中空の突起に代え、または、突条と突起とを併用してもよい。また、胴部21の各面21a、21bの突条21c、突起21dについても、同様に任意の組合せ形態に代えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、輸送中、保管中などに生じる機械的な衝撃から内部の錠剤T、T…を有効に保護する用途に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
d…隙間
10…外容器
12…口部
20…内容器
21…胴部
21a、21b…面
21c…突条
21d…突起
22…開口部
22a…外フランジ
22c…円弧部
22d…切欠部
23…底部
23a…突条
24…凹溝

特許出願人 伸晃化学株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上向きの口部を有する有底角筒状の外容器と、該外容器に内装する緩衝用の内容器とを備えてなり、該内容器は、前記外容器の各側壁に対応する4面を有する胴部と、該胴部の下部の下向きドーム状の底部と、前記胴部の上部に形成する円形の開口部とを有し、前記胴部の各面は、それぞれクッション性の複数の突部を介して前記外容器の各側壁の内面に当接し、前記底部は、クッション性の突部を介して前記外容器の底面に当接し、前記開口部は、上端の外フランジを介して前記口部の内周との間に小さな隙間を形成することを特徴とする錠剤用の包装容器。
【請求項2】
前記胴部の各面は、上下方向の凹溝を介して区切ることを特徴とする請求項1記載の錠剤用の包装容器。
【請求項3】
前記胴部の各面の突部は、円錐状の突起、断面山形の突条の少なくとも一方により構成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の錠剤用の包装容器。
【請求項4】
前記底部の突部は、断面山形の突条により構成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の錠剤用の包装容器。
【請求項5】
前記開口部には、前記口部に内接する複数の円弧部と、平坦な切欠部とを周方向に交互に形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の錠剤用の包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−285157(P2010−285157A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137896(P2009−137896)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】