説明

錠剤用滑沢剤、錠剤の製造方法及び錠剤

【課題】滑沢性及び流動性に優れ、かつ崩壊性が良好な錠剤を得ることができる滑沢剤、その滑沢剤を使用した錠剤の製造方法及びこのような方法によって製造された錠剤を提供する。
【解決手段】数平均粒径が3〜20μmであり、比表面積が0.1〜10m/gである金属石鹸粒子からなる錠剤用滑沢剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤用滑沢剤、錠剤の製造方法及び錠剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉粒体の圧縮成型物である錠剤は、医薬品、食品等の分野において汎用されており、通常、臼部と杵部を有する圧縮成型装置により打錠することによって製造されている。しかし、このような打錠法においては、臼や杵に成型物が付着して脱型が良好に行われず、錠剤表面に割れや欠けが生じやすく、不良品の割合が高いという問題があった。
【0003】
このような問題を改善するために、滑沢剤を使用することが行われている。滑沢剤は、上述したような錠剤の欠陥の発生を抑制するための添加剤であり、原料粉末の流動性を向上させることによって、打錠機の臼に一定量の粉末が連続的に充填できるようにし、打錠時においては滑沢性を発揮して不具合の発生を抑制する。
【0004】
公知の滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、植物硬化油等を挙げることができる。例えば、特許文献1には、炭素数10〜22脂肪酸と、重合度が2〜15のポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、水酸基価が50未満であるポリグリセリン脂肪酸エステルを主成分とする打錠用滑沢剤が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ステアリン酸マグネシウムと、食品用乳化物及び/又は植物抽出多糖類を含有することにより、打錠性、硬度、崩壊性を改善した打錠用改質剤が開示されている。特許文献3には、粒径300μm以下のプロラミン蛋白粒子を有効成分とすることにより、錠剤の硬度、崩壊性、滑沢性等の打錠性が一定した打錠用基剤が開示されている。特許文献4には、ステアリン酸マグネシウムを微細にすることで打錠時の障害が抑制されることが開示されている。ステアリン酸マグネシウムを主体とする脂肪酸金属塩からなり、融点が145〜165℃のものである錠剤用滑沢剤が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの滑沢剤は、錠剤の収率を向上させる効果が充分ではなく、更に優れた滑沢性をもつ滑沢剤が要望されていた。また、錠剤においては崩壊性を調整することが必要とされる場合がある。例えば、錠剤を医薬品として使用する場合は、溶解速度を調整することで服用後の最適な時間での薬効を得る事が望まれる場合があり、食品として使用する場合には、口の中で溶けることで食味や食感を充分に感じるように調整することが好ましい。しかし、特に溶解速度が速い錠剤を製造しようとすると、打錠性を良好に維持することが困難となる。
【0007】
【特許文献1】特開昭60−105632号公報
【特許文献2】特開2004−123648号公報
【特許文献3】特開2002−322098号公報
【特許文献4】特開2004−131398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、滑沢性及び流動性に優れ、かつ崩壊性が良好な錠剤を得ることができる滑沢剤、その滑沢剤を使用した錠剤の製造方法及びこのような方法によって製造された錠剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、数平均粒径が3〜20μmであり、比表面積が0.1〜10m/gである金属石鹸粒子からなることを特徴とする錠剤用滑沢剤である。
上記金属石鹸粒子は、かさ比重が0.15〜0.30g/mlであることが好ましい。
上記金属石鹸粒子は、タップ密度が0.3〜0.6g/mlであることが好ましい。
上記金属石鹸粒子は、タップ密度/かさ比重の比が2以上であることが好ましい。
上記金属石鹸粒子は、マグネシウム塩又はカルシウム塩であることが好ましい。
上記金属石鹸粒子は、植物由来の脂肪酸を原料として製造されたものであることが好ましい。
上記金属石鹸粒子は、脂肪酸と金属酸化物及び/又は金属水酸化物とを反応温度70〜100℃で反応させて得られたものであることが好ましい。
本発明は、上述した錠剤用滑沢剤を含有する粉粒体組成物を圧縮成型する工程からなることを特徴とする錠剤の製造方法でもある。
本発明は、上記錠剤の製造方法により得られた錠剤でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、上述したような特定の粒径及び比表面積を有する金属石鹸粒子からなる滑沢剤であり、錠剤製造時における割れや欠けの発生を低減することができ、崩壊性が良好な錠剤を高収率で得ることができる。金属石鹸粒子を滑沢剤として錠剤の製造に使用することは公知であるが、本発明においては特定の粒径及び比表面積を有する金属石鹸粒子を使用することによって、特に不良品率が低下し、高い収率で打錠することができるものである。
【0011】
上記金属石鹸粒子は、数平均粒径が3〜20μmである。上記数平均粒径が3μm未満であると、粒径が小さくなりすぎ、流動性を損なう。20μmを超えると、粗粒分が多くなり原料粉末との均一性が保てず、結果として滑沢性を損なう。より好ましくは、5〜18μmである。なお、上記数平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製 LA−500)を用いた粒度分布測定法にて得られる値である。具体的には、試料0.5mgを100mlポリカップに入れ、エタノールを約30ml加えて超音波ホモジナイザー(日本精械製作所社製US−600)で2分間分散させる。そして、ブランク測定を行った後、分散液をバッチセルに入れ、光透過率が装置の適正範囲にあることを確認して測定する。
【0012】
上記金属石鹸粒子は、比表面積が0.1〜10m/gである。0.1m/g未満であると、一部が融解した粗粒子が含まれていることを示し、滑沢性が低下するという問題を生じる。10m/gを超えると、微細粒子が凝集していることを示し、使用時に微粉化するという問題を生じる。上記比表面積は、1〜8m/gであることが好ましく、3〜5m/gであることがより好ましい。上記比表面積は、試料0.7gを専用の空セルに入れ、脱気装置(micromeritics社製FrowPrep060)にて100℃で40分脱気を行い、脱気した試料を比表面積・細孔分布測定装置(micromeritics社製、比表面積・細孔分布測定装置GEMINI2360)を用いて約40分間自動測定することにより得られる値である。
【0013】
本発明においては、数平均粒子径と比表面積が同時に上記範囲にある金属石鹸粒子を使用することが重要である。このような特定の数平均粒子径及び比表面積を有することによって、金属石鹸粒子の形状がより真球に近いものになる。このように粒子の大きさ及び形状を制御することによって、圧縮成形時における打錠欠陥の発生を抑制することができると推測される。よって、数平均粒子径又は比表面積のうち一方のみが上記数値範囲を満たすものであっても、本発明の目的を達成することはできない。
【0014】
また、上記金属石鹸粒子は、かさ比重が0.15〜0.30g/mlであることが好ましい。上記かさ比重が、0.15g/ml未満であると、粒子が細かいか、微細粒子が凝集していることを示し、流動性を損なうおそれがある。0.30g/mlを超えると、粒子が粗いか、一部融解していることを示し、滑沢性を損なうおそれがある。なお、上記かさ比重は、JIS K 6720 4.3に従って測定して得られる値である。
【0015】
上記金属石鹸粒子は、タップ密度が0.3〜0.6g/mlであることが好ましい。上記タップ密度が0.3g/ml未満の場合は、結果として粒子が細かいことを意味し、混合粉の流動性を損なうおそれがある。タップ密度が0.6g/mlを超える場合は、粒子が粗くなりすぎていることとなり、原料粉末との均一性が保てなくなり、滑沢性を損なうおそれがある。上記タップ密度は、0.3〜0.55g/mlであることがより好ましい。
【0016】
なお、上記タップ密度は、具体的には、以下の方法により得られる値である。すなわち、直径約31mm、高さ約200mmの目盛り(最小目盛り1ml)付きガラス管に、上記金属石鹸粒子を20g投入し、密充填カサ密度測定器(筒井理化学器械社製、密充填カサ密度測定器 TPM−3P型)にセットする。600回タッピングを行った後、上記金属石鹸の容量を読み、次式にて算出する。
金属石鹸量(20g)/タップ後容量(ml)=タップ密度(g/ml)
【0017】
上記金属石鹸粒子は、上記タップ密度と上記かさ比重の数値の比(タップ密度/かさ比重)が2以上であることが好ましい。上記かさ比重は、粉体層内の空隙部分も固体又は粉体の体積とみなして得られる値であり、上記タップ密度は、充填密度を上げるために一定の振動(タッピング)を与えた場合の体積を元に得られる値である。従って、上記タップ密度/かさ比重の比は、粒子形状を特定する数値と考えることができる。例えば、形状が板状である従来の金属石鹸粒子では1〜2であり、上記比の値がそれより大きいものである本発明において使用する金属石鹸は、真球に近いものであると推測することができる。上記比が2未満であると、成分との混合性が悪く、流動性や滑沢性を損なうおそれがある。
【0018】
上記金属石鹸は、高級脂肪酸のアルカリ塩以外の金属塩である。上記金属石鹸の種類は、特に限定されないが、医薬品又は食品添加物としてその添加が許可されていることが好ましく、少量で滑沢性や流動性、崩壊性を好適に錠剤に付与できる点で、炭素数12〜22の高級飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸のマグネシウム塩又はカルシウム塩であることが好ましい。
【0019】
上記脂肪酸は、複数の脂肪酸からなるものであってもよく、植物由来のものであることが好ましい。植物由来のものは、食品等に使用される場合は特に臭味の影響が少ない点で好ましい。また、近年牛海綿状脳症(BSE)が問題となっており、牛等の動物由来の原料が使用制限されている点でも、植物由来のものを使用することが好ましい。上記植物由来の脂肪酸としては、パーム、菜種、ひまわり、とうもろこし、大豆、米、紅花、綿実、米ぬか等由来の脂肪酸を挙げることができる。なかでも、ステアリン酸やパルミチン酸の金属石鹸は錠剤用滑沢剤としての性質に優れることから、ステアリン酸及びパルミチン酸を主成分とする脂肪酸であることがより好ましい。
【0020】
上記ステアリン酸及びパルミチン酸を主成分とする脂肪酸である場合、ステアリン酸/パルミチン酸の組成比は、30/70〜90/10であることが好ましい。30/70未満であると、充分な滑択性が得られないおそれがあり、90/10を超えると、経済的に不利である。上記組成比は、40/60〜80/20であることがより好ましい。
【0021】
上記ステアリン酸/パルミチン酸の組成比が40/60〜80/20である脂肪酸により得られる金属石鹸における金属の含有率は、理論当量でほぼ決まるが、例えば、上記脂肪酸のマグネシウム塩の場合、マグネシウムの含有率は4.0〜5.0%であることが好ましい。また、上記脂肪酸のカルシウム塩の場合、カルシウムの含有率は6.4〜7.1%であることが好ましい。上記範囲外であると、金属化合物や脂肪酸が過剰となり不純物が多くなる。
【0022】
上記金属石鹸の融点は、90〜165℃であることが好ましい。化合物由来の標準的な温度としては、例えば、上記ステアリン酸/パルミチン酸の組成比が40/60〜80/20である脂肪酸のマグネシウム塩では、130〜150℃であり、上記脂肪酸のカルシウム塩は135〜165℃である。上記金属石鹸は、滑沢性に優れることから、90〜100℃程度の温度で軟化を示す脂肪酸のマグネシウム塩や脂肪酸のカルシウム塩がより好ましい。なお、ここでの融点は、柳本製作所製MP−SZ型融点測定装置(昇温速度1〜2℃/分)により測定した値を指す。上記軟化温度も同様にして測定した値を指す。
【0023】
上記金属石鹸は、直接法又は交換法により製造することができる。上記直接法は、脂肪酸と金属酸化物や金属水酸化物等の難溶性金属塩とを水中(湿式法)又は水の無い状態(乾式法)で直接反応させる方法である。上記交換法は、水溶性金属塩と脂肪酸又は脂肪酸塩とを水中に溶解又は懸濁させて反応させる方法である。錠剤の用途は医薬品や食品であることから、副生物が発生しないという点で、上記直接法が好ましい。
【0024】
特定の粒径及び比表面積を有する上記金属石鹸粒子は、脂肪酸と金属酸化物及び/又は金属水酸化物とを反応温度70〜100℃で水中にて直接法によって反応させることにより製造することができ、このような方法によって得られるものであることがより好ましい。その他の製造方法としては、金属石鹸を粉砕、分級等することによって、所定の粒子径及び比表面積を有するものとする方法等を挙げることができる。
【0025】
上記金属石鹸の原料である上記金属酸化物及び金属水酸化物としては、金属石鹸の製造に使用されるものであれば、特に限定されないが、食品添加物として認可されているマグネシウム塩又はカルシウム塩が求められることから、反応時に不純物が発生しない水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等が好ましい。
【0026】
上記反応は、反応温度70〜100℃で行うことが好ましい。水中での金属石鹸の合成においては、ミセルを形成した金属石鹸が固体として析出することによって粒子化する。反応温度が低温であると、析出した微細な金属石鹸粒子が凝集することとなるため、真球状に近い粒子を得ることが困難になる。上述したような比較的高い温度にて反応させることにより、ミセルが成長することによって粒子径が大きくなるため、微細粒子の凝集による不規則な形状の粒子ではなく、真球状に近い金属石鹸粒子を得ることができると推測される。
【0027】
上記反応温度が70℃未満であると、微細な金属石鹸粒子が優先されて生成されるおそれがあり、100℃を超えると一部が融解し、粗粒子が生成されるおそれがある。上記反応温度は、75〜95℃であることがより好ましい。上記反応時間は、30分〜3時間であることが好ましい。
【0028】
上記反応後、必要に応じて、凝集した粒子を分散させるための粉砕や、所望の粒径を有する粒子を得るための分級を行ってもよい。上記粉砕や分級は、公知の方法を用いるとよい。
【0029】
上記金属石鹸を滑沢剤として使用する場合の添加量は、錠剤100質量部中0.01〜10.0質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、充分な滑沢性が得られないおそれがあり、10.0質量部を超えると、撥水性が強くなり、崩壊性が悪くなるおそれがある。好ましくは、0.05〜5.0質量部である。
【0030】
本発明の錠剤用滑沢剤を含有する錠剤の製造方法としては、上記滑沢剤を含有する粉粒体組成物を圧縮成型する工程からなる方法を挙げることができる。上記粉粒体組成物は、本発明の滑沢剤の他に、一般に医薬品や食料品として使用される錠剤・錠菓に一般に含有される成分を必要に応じて含有してもよく、上記他の成分としては、例えば、結合剤、賦形剤、崩壊剤、充填剤等を挙げることができる。上記結合剤としては、結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を挙げることができる。
【0031】
上記賦形剤としては、砂糖、乳糖、ブドウ糖、オリゴ糖、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、マルトース、マルチトール等の糖類、トウモロコシ澱粉、小麦粉澱粉、ポテト澱粉等の澱粉、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム等のリン酸誘導体等を挙げることができる。
【0032】
上記崩壊剤としては、澱粉グリコールナトリウム、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。上記成分の混合は、特に限定されず、公知の方法を用いるとよい。
【0033】
上記圧縮成型としては、上記金属石鹸及び必要に応じて他の成分を混合してなる粉粒体組成物を通常の打錠操作によって錠剤を形成する方法が挙げられる。上記打錠法としては、上記粉粒体組成物を打錠成形機によって直接打錠(直打)する方法、あるいは上記粉粒体組成物を押出造粒や流動層造粒等によって造粒物とした後に、打錠成形機を使用して打錠する方法、即ち、湿式造粒法や乾式造粒法等を利用することができる。また、本発明の滑沢剤を含有する錠剤の製造方法においては、造粒操作を必要としない直接打錠法を適用することができる。上記打錠成形機としては、単発式やロータリー式等通常のものを使用することができる。このような錠剤の製造方法も本発明の一つである。
【0034】
上記錠剤の製造方法により製造される錠剤は、上述した成分及び活性成分を混合した組成物を圧縮されて成形されるものであり、流動性や滑沢性が良好であるため、圧縮後に固形錠形が完全なままに維持されており、錠剤のワレや欠けがなく製品としての回収率が良好なものである。また、飲食時又は服用時において容易に崩壊することができる。上記製造方法により得られる錠剤の活性成分には、特に制限はなく、例えば、食品成分、医薬品成分、飼料成分等が挙げられるが、食品成分には、ビタミンやミネラル等の機能性成分も使用可能である。上述した錠剤用滑沢剤を使用して製造された錠剤も本発明の一つである。
【0035】
本発明の錠剤用滑沢剤は、特定の粒径及び比表面積を有する金属石鹸粒子からなるものであり、流動性や滑沢性が良好であるため錠剤製品を効率良く得ることができ、かつ使用環境において好適に崩壊する錠剤を製造することができるものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明の錠剤の製造方法は、上記構成からなるものであるため、滑沢性及び流動性に優れ、かつ崩壊性が良好な錠剤を高収率で得ることができる。従って、本発明の錠剤用滑沢剤は、医薬品や機能性食品用の錠剤の製造に好適に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
製造例1 滑沢剤 金属石鹸Aの製造
あらかじめ80℃に加熱した10リットルの温水に攪拌下で混合脂肪酸(ステアリン酸/パルミチン酸=40/55)500gを融解させ、攪拌を続けながら水酸化カルシウム70gを徐々に添加し、80℃のまま3時間反応させる。反応後、ろ過、乾燥、粉砕の後、分級を行い、それぞれ数平均粒径が2.1、8.7、16.4、及び23.0μmである白色粉末の金属石鹸Aを得た。
【0039】
製造例2 滑沢剤 金属石鹸aの製造
水酸化カルシウム70gを水酸化マグネシウム60gに変更し、それ以外は製造例1と同様に操作し、それぞれ数平均粒径が1.7、9.1、15.9、及び21.9μmである白色粉末の金属石鹸aを得た。
【0040】
製造例3 滑沢剤 金属石鹸Bの製造
あらかじめ80℃に加熱した10リットルの温水に攪拌下で混合脂肪酸(ステアリン酸/パルミチン酸=40/55)500gを融解・分散させ、75gの水酸化ナトリウムを溶解した水溶液を添加して混合脂肪酸ナトリウム塩とする。その後、105gの塩化カルシウムを溶解した水溶液を添加し、最終の液量を20リットルとして、80℃で1時間反応させ、ろ過、乾燥、粉砕したところ、数平均粒径が3.5μmである白色粉末の金属石鹸Bを得た。
【0041】
製造例4 滑沢剤 金属石鹸bの製造
105gの塩化カルシウムを260gの硫酸マグネシウムに変更し、それ以外は製造例3と同様に操作し、数平均粒径が2.8μmである白色粉末の金属石鹸bを得た。
【0042】
製造例5 滑沢剤 金属石鹸cの製造
あらかじめ65℃に加熱した10リットルの温水に攪拌下で混合脂肪酸(ステアリン酸/パルミチン酸=40/55)500gを融解させ、攪拌を続けながら酸化マグネシウム37gを徐々に添加し、65℃のまま3時間反応させる。反応後、ろ過、乾燥、粉砕し、数平均粒径が2.6μmである白色粉末の金属石鹸cを得た。
【0043】
上記で得られた滑沢剤の数平均粒径、比表面積、かさ比重及びタップ密度について、上述した方法で測定した。結果を表1及び2に示す。
【0044】
実施例1〜6、比較例1〜12
滑沢剤として、上記製造例1及び製造例3で製造した滑沢剤、又は、ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬株式会社製DKエステルF−20W)を用いて、表1に示す処方で粉体を混合し、ロータリー式打錠機HT−9(畑鉄工所製)を用いて、打錠径8mmφ、打錠圧5kNの条件で直接打錠法により打錠し、錠菓を調製した。
【0045】
実施例7〜12、比較例13〜24
上記製造例2、4及び5で製造した滑沢剤を用いて、表2に示す処方で粉体を混合し、ロータリー式打錠機HT−9(畑鉄工所製)を用いて、打錠径15mmφ、打錠圧3kNの条件で直接打錠法により打錠し、錠菓を調製した。
【0046】
打錠前の混合粉末の流動性を打錠時に目視により下記の基準にて評価し、また、得られた錠菓については、硬度、良好打錠率、崩壊性について下記の方法にて評価した。結果を表1及び表2に示す。
(流動性)
打錠機内での混合粉末の流動性を目視にて判定した。
◎:ホッパー内は良好で臼への流入も問題ない状態
○:ホッパー内は良好だが、臼への流入の際、脈動が確認される状態。
△:ホッパー内でブリッジ現象が見られ、臼への流入にも脈動が確認される状態
(硬度)
モンサント硬度計を用いて硬度を測定し、錠剤10錠の平均硬度(kg)を求めた。
(良好打錠率)
完全な形で成型できた錠剤の生成率(%)を算出した。
(崩壊性)
日局14改正に準じて試験を行い、錠剤が完全に溶け終わるまでの時間(分)を測定した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表1及び表2より、滑沢剤として数均粒径が3〜20μmであり、かつ比表面積が0.1〜10m/gである金属石鹸を含有させると、混合粉の流動性が上がり、打錠機内の臼へ混合粉が安定的に供給されることから、成形収率が良好となる。また、この特定の粒径の金属石鹸を使用すれば、出来た錠剤は過剰な撥水性を示さない為、崩壊性の遅延がなく、薬効速度や食感が損なわれない錠剤を製造することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の滑沢剤は、滑沢性及び流動性に優れ、硬度が高くかつ崩壊性が良好な錠剤を得ることができるものであり、医薬品、食品等の分野における錠剤の製造に好適に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均粒径が3〜20μmであり、比表面積が0.1〜10m/gである金属石鹸粒子からなることを特徴とする錠剤用滑沢剤。
【請求項2】
金属石鹸粒子は、かさ比重が0.15〜0.30g/mlである請求項1記載の錠剤用滑沢剤。
【請求項3】
金属石鹸粒子は、タップ密度が0.3〜0.6g/mlである請求項1又は2記載の錠剤用滑沢剤。
【請求項4】
金属石鹸粒子は、タップ密度/かさ比重の比が2以上である請求項2又は3記載の錠剤用滑沢剤。
【請求項5】
金属石鹸粒子は、マグネシウム塩又はカルシウム塩である請求項1、2、3又は4記載の錠剤用滑沢剤。
【請求項6】
金属石鹸粒子は、植物由来の脂肪酸を原料として製造されたものである請求項1、2、3、4又は5記載の錠剤用滑沢剤。
【請求項7】
金属石鹸粒子は、脂肪酸と金属酸化物及び/又は金属水酸化物とを反応温度70〜100℃で反応させて得られたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の錠剤用滑沢剤。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の錠剤用滑沢剤を含有する粉粒体組成物を圧縮成型する工程からなることを特徴とする錠剤の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の錠剤の製造方法により得られた錠剤。

【公開番号】特開2007−204402(P2007−204402A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23587(P2006−23587)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】