説明

錠剤製造装置

【課題】均一な形状の錠剤を効率よく製造することができる錠剤製造装置を提供する。
【解決手段】内部に湿潤粉体を詰め込み保持する複数の粉体保持筒8を、その外径より大なる間隔を存して配列して設ける。粉体保持筒8の内径と同径の複数の型穴4を各粉体保持筒8の下方に対向する位置に備えるテーブル2を設ける。粉体保持筒8に対向する型穴4に粉体保持筒8の内部から湿潤粉体Wを充填ロッド12で押し出して型穴の内部に加圧充填する。粉体保持筒8及びテーブル2を移動手段により相対移動させ、粉体保持筒8の先端縁により型穴4の湿潤粉体Wを擦り切る。粉体保持筒が互いに隣り合う型穴の各間隔内に位置したとき、昇降手段により粉体保持筒8をテーブル2から離間させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤製造装置に関し、詳しくは湿潤粉体を所定の錠剤形状に成形して湿製錠剤を製造する錠剤製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の錠剤製造装置として、互いに接触した状態で相対移動する第1テーブルと第2テーブルとを備え、第1テーブルに形成された複数の保持穴に保持された湿潤粉体を、第2テーブルに形成された複数の型穴に向かって押し出し充填するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、先ず、各保持穴に湿潤粉体を供給し、次いで、第1テーブルの保持穴に第2テーブルの型穴を一致させる。そして、充填ピンにより保持穴から湿潤粉体を押し出して型穴に加圧充填し、第1テーブルと第2テーブルとを相対移動させることで型穴の湿潤粉体を擦り切る。第1テーブルと第2テーブルとは互いに接触した状態にあるので、このときの相対移動によって保持穴に残留する湿潤粉体が第2テーブルの上面で型穴の湿潤粉体から分離され、効率よく擦り切りが行えるようになっている。
【特許文献1】特開平8−19588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、より多くの錠剤を製造する場合には、例えば、多数の保持穴と多数の型穴ととが同時に一致するように第1テーブルと第2テーブルとを構成し、多数の型穴への湿潤粉体の充填と、その擦り切りとを一挙に行うようにすることが考えられる。これによれば、多数の型穴による湿潤粉体の錠剤成形が一度に行えるので、錠剤の製造効率を一層向上させることができる。
【0005】
しかし、接触状態の第1テーブルと第2テーブルとを相対移動させて多数の型穴の湿潤粉体を一挙に擦り切ると、一つの型穴を擦り切った保持穴が、摺り切り後の他の型穴上を通過する。このとき、保持穴内に残留する湿潤粉体が、他の型穴内の湿潤粉体の擦り切り面と干渉するため、当該擦り切り面が荒されて各型穴内の湿潤粉体の量が不均一となるおそれがある。しかも、型穴から擦り切って保持穴内に残留する湿潤粉体が比較的長い距離にわたって第2テーブルの上面に摺接されることから、保持穴から脱落した湿潤粉体が第1テーブルと第2テーブルとの間に侵入し、これによっても、型穴内の湿潤粉体の擦り切り面が荒されるおそれがある。そして、各型穴内の湿潤粉体の量が不均一になると、各型穴によって得られる錠剤の形状が均一に形成されなくなる不都合がある。
【0006】
かかる不都合を解消して、本発明は、均一な形状の錠剤を効率よく製造することができる錠剤製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明は、湿潤粉体を所定の錠剤形状に成形して湿製錠剤を製造する錠剤製造装置において、内部に湿潤粉体を詰め込み保持する粉体保持筒と、複数の粉体保持筒を、該粉体保持筒の外径より大なる間隔を存して配列し且つ一体的に昇降自在に支持する支持体と、前記粉体保持筒の内径と同径の複数の型穴を各粉体保持筒の下方に対向する位置に備えるテーブルと、各粉体保持筒に設けられ、夫々の粉体保持筒に対向する型穴に向かって各粉体保持筒の内部から湿潤粉体を押し出して各型穴の内部に加圧充填する充填ロッドと、前記粉体保持筒及び前記型穴の配列方向を移動方向として前記支持体及びテーブルを相対移動させ、各粉体保持筒の先端縁により各型穴の湿潤粉体を擦り切る移動手段と、各粉体保持筒が夫々対応する型穴に対向するときに前記支持体を下降させて各粉体保持筒をテーブル上に当接させ、各粉体保持筒が互いに隣り合う型穴の各間隔内に位置したときに前記支持体を上昇させて各粉体保持筒をテーブルから離間させる昇降手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、支持体に支持された各粉体保持筒がテーブルの各型穴に対向した状態で、昇降手段により各粉体保持筒をテーブル上に当接させ、各粉体保持筒の充填ロッドによって各粉体保持筒内の湿潤粉体を押し出すことにより、一挙に各型穴内に湿潤粉体が充填される。次いで、移動手段が支持体とテーブルとを相対移動させることにより、各粉体保持筒がテーブル上に当接した状態を維持して各粉体保持筒と各型穴との対向位置がずらされ、これによって各粉体保持筒の先端縁が各型穴の湿潤粉体を一挙に擦り切る。そして、各粉体保持筒が互いに隣り合う型穴の各間隔内に位置したとき、昇降手段によって各粉体保持筒が上昇されてテーブルの上方に離間する。
【0009】
互いに隣り合う型穴の各間隔は、各粉体保持筒間の間隔に対応しているため、粉体保持筒の外径より大となっている。従って、一つの型穴の湿潤粉体を擦り切った粉体保持筒は、他の型穴上を摺接状態で通過することなく各型穴の間隔内で上昇する。これによって、粉体保持筒内に残留する湿潤粉体が、他の型穴の擦り切り面に干渉することを確実に防止することができる。しかも、粉体保持筒とテーブルとの摺接距離も極めて短いので、粉体保持筒内に残留する湿潤粉体のテーブル上への付着や飛散を低減することができる。
【0010】
このように、本発明によれば、型穴内に充填された湿潤粉体の擦り切り面が荒されることなく型穴内の湿潤粉体の量が一定に保たれるので、均一な形状の錠剤を精度良く製造することができる。
【0011】
また、前記支持体は、前記粉体保持筒を平面視縦横方向に複数配列して支持し、前記テーブルは、該支持体に配列支持された各粉体保持筒に対向する位置に配列された複数の型穴を備え、少なくとも前記移動手段による移動方向に沿って互いに隣り合う粉体保持筒同士及び型穴同士が、該粉体保持筒の外径より大なる間隔を存することが好ましい。
【0012】
支持体が、粉体保持筒を平面視縦横方向に複数配列して支持し、それに対応して型穴を平面視縦横方向に複数配列することにより、多数の型穴への湿潤粉体の充填を擦り切りを一挙に行うことができるので、錠剤の製造効率を飛躍的に向上させることができる。しかも、移動手段による移動方向に沿って互いに隣り合う粉体保持筒同士及び型穴同士が、該粉体保持筒の外径より大なる間隔を存しているので、擦り切りを完了した粉体保持筒を各型穴の間隔内で前記昇降手段によりテーブルから離間させることができるので、粉体保持筒内に残留する湿潤粉体は、型穴の擦り切り面に干渉することがなく、型穴が多数であっても各型穴への湿潤粉体の充填量を均一に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の錠剤製造装置の概略構成を示す説明的平面図、図2は粉体保持筒及び型穴を示す説明図、図3は本実施形態の錠剤製造装置による製造工程を模式的に示す説明図、図4は図3に続く工程を模式的に示す説明図、図5は図4の後工程を模式的に示す説明図である。
【0014】
本実施形態の錠剤製造装置1は、薬効成分に賦形剤や結合剤等の添加剤と水やエタノール等の湿潤剤とを添加して練り合わせた湿潤粉体から錠剤を製造するものであり、図1に示すように、周状に複数(本実施形態では8枚)のテーブル2が連結されて各テーブル2を搬送方向に間欠的に回転移動させる搬送手段3と、搬送手段3の各テーブル2に形成された複数の型穴4に湿潤粉体を充填する充填手段5と、各テーブル2の各型穴4内に充填された湿潤粉体を所定の錠剤形状に成形する成形手段6と、湿潤粉体から成形された錠剤を各型穴4内から排出する排出手段7とによって構成されている。
【0015】
前記充填手段5は、平面視縦横方向に配列された複数の粉体保持筒8を備えている。各粉体保持筒8は、支持体9により一体に支持されている。支持体9は、間欠回転する回転支柱10の外周に複数(本実施形態では4つ)連結されており、夫々の支持体9は、昇降手段11(図2参照)によって各別に回転支柱10の軸線に沿って昇降されるようになっている。各粉体保持筒8は、下端部が開放されてその内部に湿潤粉体を詰め込み保持する。各粉体保持筒8には、充填ロッド12(図4参照)が摺動自在に内挿されている。充填ロッド12は、詳しくは図示しないが、バネ等により上方に付勢され、その付勢に抗して押圧手段が押圧することにより粉体保持筒8の内部に保持された湿潤粉体が下方に押し出されるようになっている。
【0016】
各支持体9は、回転支柱10の周りに回転し、そのうちの一つが搬送手段3のテーブル2に重なり、他の一つが供給トレー13上に重なる。供給トレー13は円形状に形成されて回転軸14に支持されている。回転軸14は図示しない駆動手段により回転駆動される。供給トレー13の一部には湿潤粉体を投入する投入口15が設けられており、投入口15から投入された湿潤粉体は供給トレー13の回転により各粉体保持筒8の下方に送られる。このとき、図示しない櫛状の均し部材により湿潤粉体は供給トレー13内で平坦に均される。また、図示しないが、供給トレー13は各粉体保持筒8に対向する位置で開放されている。
【0017】
前記搬送手段3の各テーブル2は、その回転軌道の一部で一つの支持体9に支持された各粉体保持筒8の下方に重なり、この重なった位置で各テーブル2が一時的に停止するように図示しない移動手段によって回転駆動される。このとき、各テーブル2に形成された各型穴4が各粉体保持筒8に対向する。各型穴4は、粉体保持筒8の内径と同径であり、テーブル2を貫通して形成されている。そして、図2(a)及び図2(b)に示すように、テーブル2が各粉体保持筒8の下方に重なる位置には、テーブル2の下面に摺動自在に当接して各型穴4の下方側の開放端を閉塞する閉塞板16が設けられている。
【0018】
テーブル2に形成されている型穴4の配列と、支持体9に支持された粉体保持筒8の配列とは互いに対応しており、図2(a)に示すように、移動方向(搬送方向)に沿う側に隣り合う粉体保持筒8間の間隔と、型穴4間の間隔とは、共に粉体保持筒8の外径よりも大きく形成されている。なお、移動方向に直交する側に隣り合う粉体保持筒8間の間隔と、型穴4間の間隔とは、図2(b)に示すように狭くても良く、これによって多数の粉体保持筒8を配列させることができる。
【0019】
前記成形手段6は、充填手段5の下流側に回転されたテーブル2の各型穴4内の湿潤粉体を上下から押圧して所定形状の錠剤を成形する。各型穴4内の湿潤粉体の押圧は、後述する上下の押圧ピン17,18(図5(a)参照)により行なわれる。また、前記排出手段7は、成形手段6の下流側に設けられており、型穴4内の錠剤を型穴の下方の開放端から落下させる。排出手段7は、各型穴4の上方の開放端から挿入して錠剤を下方の開放端から押し出す押出しピン19(図5(b)参照)を備えており、その下方には、錠剤の落下位置に上流側が臨むようにして排出方向に延設された排出コンベア20が設けられている。
【0020】
次に、本実施形態の錠剤製造装置1による錠剤の製造工程の要部を図3乃至図5を参照して説明する。先ず、図3(a)に示すように、粉体保持筒8を供給トレー13上に位置させ、図3(b)に示すように、粉体保持筒8を供給トレー13内に向かって下降させる。このとき、供給トレー13に収容されている湿潤粉体Wが粉体保持筒8の先端(下端)からその内部に詰め込まれる。そして、図3(c)に示すように、粉体保持筒8を上昇させる。これにより、湿潤粉体Wは粉体保持筒8に保持された状態となる。
【0021】
続いて、湿潤粉体Wを保持した粉体保持筒8が、テーブル2の上方に移動され、粉体保持筒8の下方にテーブル2の型穴4が対向すると、テーブル2が停止して図4(a)に示すように、粉体保持筒8が下降する。これにより、粉体保持筒8の先端がテーブル2上に当接し、粉体保持筒8の内部と型穴4が連通した状態となる。次いで、粉体保持筒8の充填ロッド12により粉体保持筒8内の湿潤粉体Wを型穴4に向かって押し出し、これによって、図4(b)に示すように、湿潤粉体Wが型穴4に充填される。そして、図4(c)に示すように、テーブル2が搬送方向に移動する。これによって、粉体保持筒8の先端により型穴4の湿潤粉体Wが擦り切られ、型穴4の湿潤粉体Wを擦り切った粉体保持筒8は互いに隣り合う型穴4の間隔内に位置する。そしてこの位置で、図4(d)に示すように、粉体保持筒8を上昇させる。こうすることにより、型穴4の湿潤粉体Wを擦り切った後の粉体保持筒8は、型穴4の湿潤粉体Wの擦り切り面と干渉することはなく、型穴4の湿潤粉体Wの量は一定量に保たれる。なお、図3及び図4においては配列状態にあるうちの一部の粉体保持筒8のみが示されているが、実際には一つの支持体9に複数配列状態で支持された全ての粉体保持筒8が一体に作動する。
【0022】
その後、型穴4に充填された湿潤粉体Wがテーブル2の回転移動により成形手段6の位置に搬送される。成形手段6は、図5(a)に示すように、型穴4に充填された湿潤粉体Wを上下方向から一対の押圧ピン17,18によって押圧し、所定の錠剤形状に成形する。このとき、錠剤形状に成形された湿潤粉体Wが押圧ピン17,18に付着して損傷しなように、押圧ピン17,18と湿潤粉体Wとの間に離型フィルム21を供給し、離型フィルム21を介して押圧ピン17,18による押圧が行われる。このようにして、錠剤形状に成形された湿潤粉体Wは、押圧ピン17,18の押圧が解除されることにより所定形状の錠剤Xとなる。
【0023】
続いて、錠剤Xは型穴4に保持された状態で、テーブル2の回転移動により排出手段7の位置に搬送される。排出手段7は、図5(b)に示すように、押出しピン19を型穴4の上方から挿入して型穴4内の錠剤Xを下方に押し出して落下させる。そして、型穴4から落下した錠剤Xは排出コンベア20上に載置され、排出コンベア20によって排出方向に搬送される。なお、図5においては、配列状態にあるうちの一つの型穴4のみが示されているが、実際には一つのテーブル2に複数形成された全ての型穴4で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の錠剤製造装置の概略構成を示す説明的平面図。
【図2】粉体保持筒と型穴との関係を示す説明図。
【図3】本実施形態の錠剤製造装置による製造工程を模式的に示す説明図。
【図4】図3に続く工程を模式的に示す説明図。
【図5】図4の後工程を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0025】
1…錠剤製造装置、2…テーブル、4…型穴、8…粉体保持筒、9…支持体、11…昇降手段、12…充填ロッド、W…湿潤粉体、X…錠剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤粉体を所定の錠剤形状に成形して湿製錠剤を製造する錠剤製造装置において、
内部に湿潤粉体を詰め込み保持する粉体保持筒と、
複数の粉体保持筒を、該粉体保持筒の外径より大なる間隔を存して配列し且つ一体的に昇降自在に支持する支持体と、
前記粉体保持筒の内径と同径の複数の型穴を各粉体保持筒の下方に対向する位置に備えるテーブルと、
各粉体保持筒に設けられ、夫々の粉体保持筒に対向する型穴に向かって各粉体保持筒の内部から湿潤粉体を押し出して各型穴の内部に加圧充填する充填ロッドと、
前記粉体保持筒及び前記型穴の配列方向を移動方向として前記支持体及びテーブルを相対移動させ、各粉体保持筒の先端縁により各型穴の湿潤粉体を擦り切る移動手段と、
各粉体保持筒が夫々対応する型穴に対向するときに前記支持体を下降させて各粉体保持筒をテーブル上に当接させ、各粉体保持筒が互いに隣り合う型穴の各間隔内に位置したときに前記支持体を上昇させて各粉体保持筒をテーブルから離間させる昇降手段とを備えることを特徴とする錠剤製造装置。
【請求項2】
前記支持体は、前記粉体保持筒を平面視縦横方向に複数配列して支持し、
前記テーブルは、該支持体に配列支持された各粉体保持筒に対向する位置に配列された複数の型穴を備え、
少なくとも前記移動手段による移動方向に沿って互いに隣り合う粉体保持筒同士及び型穴同士が、該粉体保持筒の外径より大なる間隔を存することを特徴とする請求項1記載の錠剤製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−148922(P2008−148922A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340020(P2006−340020)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(306046069)有限会社アサクサ錠剤研究所 (4)
【Fターム(参考)】