説明

錠菓

【課題】 打錠がし易く、かつ、舌ザラツキ感が生じない錠菓を提供する。
【解決手段】 本発明の錠菓は、ソルビトールと、二酸化ケイ素と、ショ糖脂肪酸エステルとを含有する錠菓において、ソルビトールの嵩密度が0.3〜0.6g/mlであり、比表面積が0.7〜1.5m2/gであり、二酸化ケイ素の含有量が0.5〜1.5重量%であり、ショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.5〜1.5重量%であることを特徴とする。本発明の錠菓は、噴霧乾燥法により製造された嵩密度が0.3〜0.6g/mlであり、比表面積が0.7〜1.5m2/gのソルビトールを用い、0.5〜1.5重量%の二酸化ケイ素および0.5〜1.5重量%のショ糖脂肪酸エステルを含有しているので、打錠がし易く、かつ、舌ザラツキ感を生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルビトールを主原料として含有する錠菓に関する。
【背景技術】
【0002】
錠菓は、錠剤の形をした固体の菓子類等であり、粉末または顆粒状のショ糖などの甘味料、クエン酸、ビタミン類などを、ブドウ糖、デンプン糖等とともに混合し、この混合物を圧縮打錠することにより成型し、製品としていた。
【0003】
近年、健康志向が高まる中、低カロリーであり、且つ、抗う触性である糖アルコール類を従来の糖類に替えて用いることが注目されており、各種の糖アルコールの製法や用途の開発がなされている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
糖アルコール類としては、例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチノール、イソマルトール等が知られているが、中でも特にソルビトールは、他の糖アルコール類と比較して、打錠した際の錠剤硬度が高く、ソルビトールを含有する錠菓が、例えば、特許文献3に記載されている。
【特許文献1】特開平11−113525号公報
【特許文献2】特表2001−504342
【特許文献3】特開2003−250450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソルビトールを主原料として錠菓を打錠する際、打錠が困難であるという問題がある。このような問題を解消するために、二酸化ケイ素およびショ糖脂肪酸エステルをさらに配合することが考えられるが、二酸化ケイ素及びショ糖脂肪酸エステルの配合量が高くなると、口内に入れたときに、舌にザラツキ感が生じ、食感上好ましくない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、打錠がし易く、かつ、舌ザラツキ感が生じない錠菓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、糖アルコール類として、噴霧乾燥法により製造された嵩密度が0.3〜0.6g/ml、比表面積が0.7〜1.5m2/gのソルビトールを主原料とし、かつ、これに、0.5〜1.5重量%の二酸化ケイ素および0.5〜1.5重量%のショ糖脂肪酸エステルを配合することにより、打錠がし易く、かつ、舌ザラツキ感を生じないようにすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の錠菓は、ソルビトールと、二酸化ケイ素と、ショ糖脂肪酸エステルとを含有する錠菓において、ソルビトールが噴霧乾燥法により製造された嵩密度が0.3〜0.6g/mlであり、比表面積が0.7〜1.5m2/gのものであり、二酸化ケイ素の含有量が0.5〜1.5重量%であり、ショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.5〜1.5重量%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の錠菓は、噴霧乾燥法により製造された嵩密度が0.3〜0.6g/mlであり、比表面積が0.7〜1.5m2/gのソルビトールを用い、0.5〜1.5重量%の二酸化ケイ素および0.5〜1.5重量%のショ糖脂肪酸エステルを含有しているので、打錠がし易く、かつ、舌ザラツキ感を生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の錠菓を詳細に説明する。
【0011】
本発明の錠菓は、嵩密度が0.3〜0.6g/mlであり、比表面積が0.7〜1.5m2/gのソルビトールを含有している。このようなソルビトールとしては、例えば、メルク社製のソルビトールが挙げられる(例えば、特公平5−1247号公報参照)。当該ソルビトールは、例えば、公知の噴霧乾燥法により製造することができ、例えば、グルコースを含有する溶液に対して、170℃より低い温度でグルコースの水素添加を行うことによりソルビトール溶液を製造し、そして、得られたソルビトール溶液を、生成物の含水率が1%未満となるように140〜170℃の温度で噴霧乾燥することにより得られる。ソルビトールの含有量は、90〜99重量%であることが好ましい。ソルビトールの含有量が90重量%に満たないと、他の原料の影響を受けやすく、打錠しにくくなったり、ザラツキを生じやすくなる傾向にある。ソルビトールの含有量が99重量%を超えると、ショ糖脂肪酸エステル、二酸化ケイ素の配合量が少なくなり、錠菓として成形することができないという問題がある。
【0012】
また、本発明の錠菓は、二酸化ケイ素を含有している。本発明に含有の二酸化ケイ素は微粒二酸化ケイ素が望ましい。微粒二酸化ケイ素とは、平均粒子径が15μm以下のものをいう。この二酸化ケイ素の含有量は、0.5〜1.5重量%である。二酸化ケイ素の含有量が0.5重量%に満たないと、錠菓として成形することができないという問題があり、二酸化ケイ素の含有量が1.5重量%を超えると、打錠後の錠菓を口に入れた際に舌にザラツキ感が生じるという問題がある。
【0013】
また、本発明の錠菓は、ショ糖脂肪酸エステルを含有している。このショ糖脂肪酸エステルの含有量は、0.5〜1.5重量%である。ショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.5%未満であると、ショ糖脂肪酸エステルが少なすぎて錠菓として成形することができない。また、1.5重量%を超えると、打錠後の錠菓を口に入れた際に舌にザラツキ感が生じる。ショ糖の水酸基とエステル結合してショ糖脂肪酸エステルを形成する脂肪酸は特に限定されることはないが、例えば、炭素数16〜18のものが挙げられる。また、HLBは3〜5のものが好ましい。
【0014】
本発明の錠菓は、さらに他の成分を含んでいてもよく、例えば、香料、色素、酸味料、甘味料、ビタミン類、機能性物質等を含んでいてもよい。
【0015】
香料としては、粉末香料製造に際して既に用いられているものであればいかなるものも用いることができるが、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等のシトラス系香料、アップル、バナナ、グレープ、ピーチ、ストロベリー、パイナップル等のフルーツ系香料、ペパーミント、スペアミント等のミント系香料、ペッパー、シンナモン、ナツメグ、クローブ等のスパイス系香料、バニラ、コーヒー、ココア、ヘーゼルナッツ等のナッツ系香料、紅茶、緑茶等の茶系香料、ビーフ、チキン、サーモン、クラブ等の畜肉・水産系香料、ミルク、チーズ等のデイリー系香料等が挙げられる。また、香料の種類としては、調合することにより製造される調合香料、有効成分を抽出して得られる精油等を用いることができる。また、シトラール、ゲラニオール、1−メントール、バニリン等の合成系香料も使用することができる。さらに、水蒸気蒸留、超臨界流体抽出により得られたコーヒー、紅茶等、鰹節等、天然の果汁等からの香気成分も使用することができる。また、ここで挙げた香料は複数種を混合して用いることもできる。
【0016】
色素としては、β−カロチン、パプリカ色素、アナトー色素、クロロフィル等の油溶性天然色素類、ウコン色素、カラメル色素、コチニール色素、ブドウ果皮抽出物等の天然色素類等を使用することができる。ここで挙げた色素は複数種を混合して用いることもできる。
【0017】
酸味料としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、フマル酸の粉末化物等、柑橘系果実等から得られた果汁の粉末化物等が挙げられる。ここで挙げた酸味料は複数種を混合して用いることもできる。
【0018】
糖質或いは甘味料としては、例えば、アスパルテーム、パラチノース、ラフィノース、トレハロース、エリトリトール、キシリトール等が挙げられる。ここで挙げた甘味料は複数種を混合して用いることもできる。
【0019】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンP等が挙げられる。ここで挙げたビタミン類は複数種を混合して用いることもできる。
【0020】
機能性物質としては、例えば、シソエキス、ソバ等のポリフェノール、プロポリス、ロイヤルゼリー、DHA、EPA等の魚油、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。ここで挙げた機能性物質は複数種を混合して用いることもできる。
【0021】
本発明の錠菓は、上記に挙げた噴霧乾燥法により製造された嵩密度:0.3〜0.6g/mlで、比表面積:0.7〜1.5m2/gのソルビトールと、二酸化ケイ素、とショ糖脂肪酸エステルを含有し、さらに必要に応じて、香料、酸味料、甘味料、ビタミン類、機能性物質等を含有するものであるが、このような成分を含有する本発明の錠菓の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の錠菓の製造方法を適用することができる。具体的には、本発明の錠菓は、上記各成分を混合した後、打錠することにより製造することができる。
【0022】
以下、本発明を具体的に説明するために、本発明の実施例およびこれとの比較を示すための比較例をいくつか挙げる。ただし、本発明の錠菓は、下記実施例によって制限されるものではない。
【実施例】
【0023】
下記表1に示す成分を混合し、粉末組成物を得た。この粉末組成物を菊水製作所のバーゴ小型回転式錠剤機を用いて、9.00kNの打錠圧の条件にて打錠し、直径8mm、厚さ4.0〜4.2mm、重量200mg/錠、打錠直後の硬度10〜15kgの錠剤を製造した。
【0024】
(実施例1)
嵩密度:0.3〜0.6g/mlで、比表面積:0.7〜1.5m2/gの噴霧乾燥法により製造したソルビトール(メルク社製)が100重量%、カープレックスCS‐500(DSL.ジャパン株式会社製の二酸化ケイ素)が1重量%、DKエステルF−20W(第一工業製薬株式会社製のショ糖脂肪酸エステル)が1.2重量%、その他ミントオイル(小川香料株式会社)が2重量%で各成分を混合し、その後、この混合物を打錠することにより錠菓を製造した。
【0025】
(実施例2)
嵩密度:0.3〜0.6 g/mlで、比表面積:0.7〜1.5m2/gの噴霧乾燥法により製造したソルビトール(メルク社製)が97重量%、カープレックスCS‐500(DSL.ジャパン株式会社)が0.5重量%、DKエステルF−20W(第一工業製薬株式会社)が0.5重量%、その他ミントオイル(小川香料株式会社)が2重量%で各成分を混合し、その後、この混合物を打錠することにより錠菓を製造した。
【0026】
(実施例3)
嵩密度:0.3〜0.6g/mlで、比表面積:0.7〜1.5m2/gの噴霧乾燥法により製造したソルビトール(メルク社製)が95重量%、カープレックスCS‐500(DSL.ジャパン株式会社)が1.5重量%、DKエステルF−20W(第一工業製薬株式会社)が1.5重量%、その他ミントオイル(小川香料株式会社)が2重量%で各成分を混合し、その後、この混合物を打錠することにより錠菓を製造した。
【0027】
(比較例1)
DKエステルF−20Wを加えず、嵩密度:0.3〜0.6g/mlで、比表面積:0.7〜1.5m2/gの噴霧乾燥法により製造したソルビトール(メルク社製)が97重量%、カープレックスCS‐500(DSL.ジャパン株式会社)が1.0重量%、その他ミントオイル(小川香料株式会社)が2重量%で各成分を混合し、その後、この混合物を打錠することにより錠菓を製造した。
【0028】
(比較例2)
カープレックスCS−500を加えず、嵩密度:0.3〜0.6g/mlで、比表面積:0.7〜1.5m2/gの噴霧乾燥法により製造したソルビトール(メルク社製)が96.8重量%、DKエステルF−20W(第一工業製薬株式会社)が1.2重量%、その他ミントオイル(小川香料株式会社)が2重量%で各成分を混合し、その後、この混合物を打錠することにより錠菓を製造した。
【0029】
(比較例3)
結晶化法により製造したD−ソルビットDパウダー(東和化成社製)が95.8重量%、カープレックスCS−500が1重量%、DKエステルF−20Wが1.2量%で各成分を混合し、その後、この混合物を打錠することにより錠菓を製造した。
【0030】
(比較例4)
嵩密度:0.3〜0.6g/mlで、比表面積:0.7〜1.5m2/gの噴霧乾燥法により製造したソルビトール(メルク社製)が94.4重量%、カープレックスCS500が1.8重量%、DKエステルF−20Wが1.8量%で各成分を混合し、その後、この混合物を打錠することにより錠菓を製造した。
【0031】
(比較例5)
嵩密度:0.3〜0.5g/mlで、比表面積:0.7〜1.5m2/gの噴霧乾燥法により製造したソルビトール(メルク社製)が97.6重量%、カープレックスCS−500が0.2重量%、DKエステルF−20Wが0.2量%で各成分を混合し、その後、この混合物を打錠することにより錠菓を製造した。
【0032】
上記実施例1〜3および比較例1〜5の各成分量および評価を下記表1に示す。
【0033】
ザラザラ感の評価基準は下記表2に示す通りである。打錠性の評価基準は、◎は非常に良好、○は良好、×は不良を示す。
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
表1を参照して明らかなように、実施例1〜3では、打錠性およびザラツキ感のいずれについても良好な結果が得られた。これに対して、カープレックスCS500(二酸化ケイ素)またはDKエステルF−20W(ショ糖脂肪酸エステル)のいずれかを含んでいない比較例1、2では良好な打錠性は得られなかった。また、結晶化法により製造されたソルビトールを用いた比較例3においても良好な打錠性は得られなかった。他方、カープレックスCS500、DKエステルF−20Wの含量が1.5重量%を超える比較例4では打錠性およびザラツキ感のいずれも不良であった。また、カープレックスCS500、DKエステルF−20Wの含量が0.5重量%に満たない比較例5では、良好な打錠性は得られなかった。
【0036】
したがって、打錠性およびザラツキ感の両方で良好な結果を得るためには、実施例1〜3のように、嵩密度が0.3〜0.6g/mlであり、比表面積が0.7〜1.5m2/gでああるソルビトールを用い、二酸化ケイ素の含有量を0.5〜1.5重量%、ショ糖脂肪酸エステルの含有量を0.5〜1.5重量%にすることが必要であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルビトールと、二酸化ケイ素と、ショ糖脂肪酸エステルとを含有する錠菓において、
ソルビトールの嵩密度が0.3〜0.6g/mlであり、比表面積が0.7〜1.5m2/gであり、二酸化ケイ素の含有量が0.5〜1.5重量%であり、ショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.5〜1.5重量%であることを特徴とする錠菓。

【公開番号】特開2006−280288(P2006−280288A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105475(P2005−105475)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】