説明

鍔付き発光被り物

【課題】発光被り物に装着されている発光ダイオードを、単に他者に着用者の存在を喚起する視認装置としてだけではなく、着用者が照明装置として使用し得るようにする。
【解決手段】鍔付き被り物の鍔11の周縁12の表裏間の周側面25に輝点13を配置して発光ダイオード14を鍔11に装着する。発光ダイオードを点滅させる電子回路基板15と電池16とスイッチ17は、鍔11に装着することが出来る。鍔11を透明プラスチックによって構成し、発光ダイオード14を鍔11の周縁12から離れて被り物本体26に接近した部位に装着すると、発光ダイオード14の光が透明プラスチックの鍔11の内部を透過して鍔11の周縁全体12に現われ発光し、更に、その透明プラスチックに成る鍔11に凹部33を設けると、発光ダイオード14の光が凹部33において屈折し、付飾的輝点を構成するので、デザイン的に新規で付加価値の高い発光被り物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置を具備する帽子、サンバイザー、ヘルメット、笠等の発光被り物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光被り物の発光装置には発光ダイオード(LED素子)が使用されており、被り物の頭頂部(例えば、特許文献1参照)、外周部(例えば、特許文献2、3参照)、後頭部(例えば、特許文献4、5、6参照)、前頭部(例えば、特許文献7、8、9参照)に発光ダイオードの輝点が配置されている。
【0003】
【特許文献1】実開昭59−189834号公報
【特許文献2】特開平11−329003号公報
【特許文献3】登録実用新案第3026398号公報
【特許文献4】特開平06−057511号公報
【特許文献5】特開平09−302516号公報
【特許文献6】特開平10−008319号公報
【特許文献7】特開平08−100318号公報
【特許文献8】実開昭61−176224号公報
【特許文献9】実開昭64−007224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の発光被り物は、頭部を包む被り物本体の外面に発光ダイオードの輝点が配置されているので、その着用者の存在を示す視認装置としての機能を十分に発揮しているものと認められる。
しかし、発光ダイオードを一種の照明装置として見るとき、従来の発光被り物は、その着用者にとっては照明装置にはなり難い。
即ち、被り物本体の頭頂部や外周部、或いは、後頭部が発光しても、それを着用する者にとっては格別周囲が照明されることにはならない。
【0005】
その点、輝点を前頭部に配置した発光被り物(上記特許文献7、8、9参照)は、着用者にとっても照明装置として機能するかのように見える。
しかし、その発光被り物には鍔が付いているので、見ようとする対象物に目を近付けて見るときは、その対象物が鍔の陰に隠れて発光ダイオードに照らし出されず、その発光ダイオードは、照明装置としての機能を格別発揮することにはならない。
【0006】
そこで本発明は、発光ダイオードが照明装置としての機能を有する点に着目し、発光被り物を単に他者に着用者の存在を喚起する視認装置としてだけではなく、着用者にとって照明装置として使用し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光被り物は、鍔付き被り物の鍔11の周縁12の表裏間の周側面25に輝点13を配置して発光ダイオード14を鍔11に装着したことを第1の特徴とする。
【0008】
本発明に係る発光被り物の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、発光ダイオード14を点滅させる電子回路基板15と電池16とスイッチ17が鍔11に装着されている点にある。
【0009】
本発明に係る発光被り物の第3の特徴は、上記第1および第2の何れかの特徴に加えて、鍔11が表面材18と芯材19と裏面材20の順に重なった積層構造を成し、その芯材19に電子回路基板15が組み込まれている点にある。
【0010】
本発明に係る発光被り物の第4の特徴は、上記第1、第2および第3の何れかの特徴に加えて、鍔11が透明プラスチックによって構成されており、発光ダイオード14が鍔11の周縁12から離れて被り物本体26に接近した部位に装着されており、発光ダイオード14の光が透明プラスチックの鍔11の内部を透過して鍔11の周縁12に輝点13を構成している点にある。
【0011】
本発明に係る発光被り物の第5の特徴は、上記第1、第2、第3および第4の何れかの特徴に加えて、多数条の骨桿27が放射状に配置された骨枠28によって鍔11が構成されており、骨桿27の放射状配置の中心部に発光ダイオード14が配置されている点にある。
【0012】
本発明に係る発光被り物の第5の特徴は、上記第1、第2、第3、第4および第5の何れかの特徴に加えて、透明プラスチックに成る鍔11に凹部33が設けられており、その凹部33が付飾的輝点を構成している点にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、発光ダイオード14の輝点13を鍔11の周縁12の表裏間の周側面25に配置したので、輝点13の光23が、着用者の目21に直接入ることがなく、着用者を眩惑させない。
その光23は、着用者の左右の視線22・22が交わる前方に向けて直進し、その直進方向に位置する対象物24を映し出すので、対象物24は着用者にはっきりと捕らえられる。
輝点13は、目21から離れた鍔11の周縁12に位置するので、輝点13を対象物24に極く接近させても、対象物24と目21が触れ合うことはなく、目21の焦点を対象物24に合わせることが出来る。
そのように、輝点13を対象物24に極く接近させて見ることが出来るので、発光ダイオード14には光量が微弱なものも使用することが出来る。
【0014】
鍔11は被り物の中でも最も硬い部分であり、又、鍔11を硬くしても硬くし過ぎることはなく、発光ダイオード14を装着したが故に鍔11が硬くなっても何ら不都合は生じない。
却って、鍔11を硬くすれば、発光ダイオード14が鍔11に確り保護されることになり、従って、発光ダイオードが破損しないように保護するための補強・保護材が不要となり、その補強・保護材を使用したが故に、鍔11が不格好なものになったり、発光被り物が着用し難いものになることもコスト高になることもなく、通常の被り物と同様に体裁が整って商品価値があり、着用し易く、耐用寿命の長い発光被り物を経済的・効率的に得ることが出来る。
【0015】
又、鍔11が被り物の中でも最も硬い部分なので、電子回路基板15や電池16、スイッチ17等の発光装置の部材を鍔11に装着することが出来る。
そして、鍔11は、被り物の着脱時や向きを変える時など、着用者の手が最も触れ易い部位であるから、鍔11にスイッチ17を装着すれば、極く自然にスイッチ17を操作することが出来、スイッチ17の操作において煩わしさを感じさせることもない。
【0016】
更に、鍔11が被り物の中でも最も硬い部分なので、鍔11を表面材18と芯材19と裏面材20の順に重なった積層構造にすると、電子回路基板15を芯材19に代用することが出来、発光ダイオードの適用によって被り物の部品点数の増加を招かず、発光被り物のコスト低減を図ることが出来る。
【0017】
本発明では、鍔11を透明プラスチックによって構成し、発光ダイオード14を鍔11の周縁12から離れて被り物本体26に接近した部位に装着したので、発光ダイオード14の光が透明プラスチックの鍔11の内部を透過して鍔11の周縁12に現われ、鍔11の周縁全体が発光する発光被り物が得られる。
【0018】
本発明では、鍔11を多数条の骨桿27が放射状に配置された透明プラスチックの骨枠28によって構成し、その骨桿27の放射状配置の中心部に発光ダイオード14を配置したので、発光ダイオード14の光が各骨桿27・27・27………の先端に現われ、その骨桿27の条数に応じた多数の輝点13が鍔11の周縁12に沿って点在する発光被り物が得られる。
【0019】
本発明では、透明プラスチックに成る鍔11に設けた凹部33において、発光ダイオード14の光が屈折して現われ、その凹部33が付飾的輝点を構成するので、斬新で人目を惹き易く、デザイン的に新規で付加価値の高い発光被り物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発光ダイオード14は周縁12から離れて被り物本体26に接近した部位に配置し、発光ダイオード14と輝点13の間を光ファイバーで繋ぐことが出来る。即ち、光ファイバーの先端をもって輝点13とすることが出来る。
鍔11にアクリル樹脂やスチロール樹脂等の透光性の高い透明プラスチックを適用する場合は、鍔自体に光ファイバーの機能が付与されるので、光ファイバーは不要となる。
鍔11に透明プラスチックを使用する場合、発光ダイオード14を被り物本体26に接近させて装着することが出来、周縁全体12を輝点13(発光面)とすることが出来る。即ち、周縁全体12が発光面となる。
【0021】
勿論、鍔11に透明プラスチックを使用する場合、図3に示すように、鍔11を多数条の骨桿27が放射状に配置された団扇の骨枠28のように構成することによって、周縁12に複数箇所に輝点13を点在させることも出来る。
その複数条の骨桿27・27・27………を、プラスチック射出成形機を使用して骨枠28として一体成形する場合、その放射状に配置されて隣り合う骨桿27と骨桿27の分岐点に発光ダイオード14からの光が当たると、その光は分岐点において屈折して骨枠28の表面に現われるので、その分岐点も輝点30を構成することになる。
又、隣り合う骨桿27と骨桿27の間を補強桿31で繋ぐ場合、その補強桿31と骨桿27との交点でも光が屈折して骨枠28の表面に現われるので、その交点も輝点32を構成することになる。
更に、窪みや貫通孔、或いは、溝等の凹部33を骨桿27に設けるときは、その凹部33の内部壁面でも光が屈折し、その凹部33も輝点(33)を構成することになる。
【0022】
骨桿27や補強桿31に囲まれる凹部や空隙35にはスペーサーを嵌め込むことが出来る。
骨枠28の表裏には、表面材18や裏面材20を貼り合わせることが出来る。
しかし、骨枠28は、その骨桿27や補強桿31に囲まれる凹部や空隙35にはスペーサーを嵌め込むことなく、そのまま鍔11として使用することも出来る。
そのように、透明プラスチックによって鍔11を形成する場合は、骨桿27や補強桿31、或いは、凹部33を模様状に配置することによって、斬新で人目を惹き易く、デザイン的に新規で付加価値の高い発光被り物を得ることが出来る。
被り物本体26は、骨桿27や補強桿31に囲まれる凹部や空隙35のある骨枠28と同様に、鍔11と一体成形することも出来る。
【0023】
発光ダイオードは、鍔11の周縁12に沿って複数個装着することも出来る。
従って、光量の微弱な発光ダイオードでも本発明に適用することが出来る。
市販の発光ダイオード14は半球形や球形を成し、その外径は2〜4mmになっている。一方、在来の被り物の鍔11の厚みtは、概して2〜4mmになっている。
従って、発光ダイオード14を装着しても、鍔11が異様に厚くなることはない。
又、多数の発光ダイオードを適用するとしても、それらは鍔11の周縁12に沿って配置されるので、発光被り物が嵩張って見映えの悪いものになったり、着用し難くなるようなこともない。
【0024】
本発明において、発光ダイオード14は、両眼の視線22・22が交わる前方を照明するものであるから、多数の発光ダイオードを装着するとしても、少なくとも1個の発光ダイオードは鍔の中央部に配置される。
【0025】
本発明では、発光ダイオードを鍔に装着するので、帽子やヘルメットのように頭部全体を覆う被り物の他に、頭部を覆う部分のないサンバイザーにも適用することが出来、鍔があるのであれば、八巻にも本発明を適用することが出来る。
鍔11は、三日月形を成すものに限らず、麦藁帽子や三度笠、花笠等のように円形を成し、被り物本体26の全周を囲むものであってもよい。
【0026】
夜釣り用や警備用のように水に濡れ易い状況下で使用される発光被り物では、適宜防水処理が施される。
発光ダイオードは、鍔11の他に被り物本体26の後頭部にも装着し、他者に着用者の存在を喚起する視認性を高めることも出来る。
【0027】
本発明は、鍔11の周縁12の表裏間の周側面25に輝点13を配置することを必須の要件とし、鍔11を表面材18と芯材19と裏面材20との積層構造とし、芯材19に電子回路基板15と電池16とスイッチ17を装着することを好ましい実施態様とする。
しかし、電子回路基板15や電池16、スイッチ17等の付属品は、鍔の裏面に装着することも出来、又、鍔以外の被り物本体26の部分に装着することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る発光被り物の斜視図である。
【図2】図1に示す発光被り物の一部切截拡大斜視図である。
【図3】本発明に係る発光被り物の鍔の平面図である。
【符号の説明】
【0029】
11:鍔
12:周縁
13:輝点
14:発光ダイオード
15:電子回路基板
16:電池
17:スイッチ
18:表面材
19:芯材
20:裏面材
21:目
22:視線
23:光
24:対象物
25:周側面
26:被り物本体
27:骨桿
28:骨枠
30:輝点(分岐点)
31:補強桿
32:輝点(交点)
33:輝点(凹部)
35:凹部・空隙
t :厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍔付き被り物の鍔(11)の周縁(12)の表裏間の周側面(25)に輝点(13)を配置して発光ダイオード(14)を鍔(11)に装着したことを特徴とする鍔付き発光被り物。
【請求項2】
発光ダイオード(14)を点滅させる電子回路基板(15)と電池(16)とスイッチ(17)が鍔(11)に装着されている前掲請求項1に記載の鍔付き発光被り物。
【請求項3】
鍔(11)が表面材(18)と芯材(19)と裏面材(20)の順に重なった積層構造を成し、その芯材(19)に電子回路基板(15)が組み込まれている前掲請求項2に記載の鍔付き発光被り物。
【請求項4】
鍔(11)が透明プラスチックによって構成されており、発光ダイオード(14)が鍔(11)の周縁(12)から離れて被り物本体(26)に接近した部位に装着されており、発光ダイオード(14)の光が透明プラスチックの鍔(11)の内部を透過して鍔(11)の周縁(12)に輝点(13)を構成している前掲請求項1と2と3の何れかに記載の鍔付き発光被り物。
【請求項5】
多数条の骨桿(27)が放射状に配置された骨枠(28)によって鍔(11)が構成されており、骨桿(27)の放射状配置の中心部に発光ダイオード(14)が配置されている前掲請求項4に記載の鍔付き発光被り物。
【請求項6】
透明プラスチックに成る鍔(11)に凹部(33)が設けられており、その凹部(33)が付飾的輝点を構成している前掲請求項4と5の何れかに記載の鍔付き発光被り物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−24283(P2009−24283A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189324(P2007−189324)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(506008434)株式会社クラフト (5)
【Fターム(参考)】