説明

鍵付きスナップホック

【課題】小型、軽量で、かつ操作性、安全性、利便性に優れ、必要時にロックを行なうことができる鍵付きスナップホックを提供する。
【解決手段】雌ホック1は、雄ホック2のタボ4が挿入される凹状空間部を有する回転部材9と、タボの着脱を規制する開口部を有するロック片24とを有し、回転部材は、その表側面に露出するように鍵当接部を有し、回転可能な様に上部ケース8の開口部内に嵌装され、ロック片は回転部材の回転と協動する様にされており、雄ホックのタボは、長軸と短軸とを有する先端拡大部がロック片の開口部を貫通して回転部材の凹状空間部に装嵌できるようになっており、鍵20による回転部材の回転によりロック片の開口部が雄フックのタボの開放位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの解錠ができ、ロック片の開口部が雄フックのタボのロック位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックの施錠がロックされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施錠、解錠が容易な、小型化、軽量化された鍵付きスナップホックに関し、特にかばん類製品、衣類製品、介護用製品、その他留め具を必要とする製品として有用な鍵付きスナップホックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハンドバック、手提げかばん、ショルダーバック、ポーチ、セカンドバック、その他のかばん類製品や、財布などの携帯品、衣服製品類などにおいて、例えば、これらの二つの部材、部品、あるいは布地等を開かないように留める留め具として、ダボを有する雄ホックと、当該ダボが嵌合する凹状部を有する雌ホックとからなるスナップホックが広く使用されている。このようなスナップホックとしては、その使用形態との関係から大きさに制限があり、鍵をかけて不特定の人が自由に開けられないような製品は、実用化されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、必要に応じて鍵をかけて不特定の人が自由に開けられないようにされる、小型化が可能で、その鍵の施錠、解錠の操作が容易で、かつ利便性に優れたスナップホック、及びこのような鍵付きスナップホックを備えたかばん類製品、携帯品、衣類製品、介護用製品、日用品類を含むその他の施錠、解錠が必要とされる各種製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。即ち、本発明は、下記の鍵付きスナップホック、及び、特に当該鍵付きスナップホックを備えたかばん類製品、携帯品、衣類製品、介護用製品、日用品を含むその他の施錠、解錠が必要とされる各種製品を提供するものである。
(1)錠部を有する雌ホックと、ダボを有する雄ホックとからスナップホックであって、
前記雌ホックは、雄ホックのタボが挿入される凹状空間部を有する回転部材と、回転部材が挿入される開口部を有するスナップホックの表側に位置する上部ケースと、雄ホックのタボが挿入される開口部を有するスナップホックの裏側に位置する下部ケースと、挿入されるタボの着脱を規制する開口部を有するロック片とを有しており、前記回転部材は、その表側面に露出するように鍵当接部を有し、かつ回転可能な様に上部ケースの開口部内にクリックばねを介して嵌装されており、回転部材の底部はスナップリング及びロック片を介して底部ケースに支承されるように、かつロック片は回転部材の回転と協動する様にされており、
一方、前記雄ホックのタボは、凸タボ台座と、中間軸部と、その先端方向に長軸と短軸を有する先端拡大部とを有し、当該先端拡大部はロック片の開口部を貫通して回転部材の凹状空間部に装嵌できるようになっており、
前記回転部材の回転によりロック片の開口部が、雄フックのタボの開放位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの解錠ができるようになっており、前記回転部材の回転によりロック片の開口部が、雄フックのタボの規制位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックの施錠がロックされるように構成されていることを特徴とする鍵付きスナップホック。
【0005】
(2)回転部材の鍵当接部の表面部は、鍵の鍵先部に形成された凸状及び/又は凹状のパターンに合致する、凹状及び/又は凸状のパターンを有していることを特徴とする上記(1)に記載の鍵付きスナップホック。
(3)雄ホックのタボの先端拡大部の横断面の形状は、長軸と短軸とを有する長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の鍵付きスナップホック。
(4)ロック片の開口部の形状は、雄ホックのタボの先端拡大部の横断面に対応する、長軸と短軸とを有する長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鍵付きスナップホック。
(5)雄ホックのタボの中間軸部は、ロック片の開口部内を回転自在に遊嵌されるように構成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鍵付きスナップホック。
【0006】
(6)前記回転部材の回転によりロック片の長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状の開口部の長軸側が、長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状の雄ホックのタボの先端拡大部の長軸側に合致したとき、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの解錠ができるようになっており、一方、前記回転部材の回転によりロック片の長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状の開口部の長軸側が、長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状の雄ホックの先端拡大部の長軸側と交差したとき、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの施錠がロックされるように構成されていることを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載の鍵付きスナップホック。
【0007】
(7)回転部材の90度の回転により、ロック片の開口部が、雄フックのタボの開放位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの解錠ができるようになっており、又前記回転部材の90度の回転によりロック片の開口部が、雄フックのタボの規制位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックの施錠がロックされるように構成されていることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の鍵付きスナップホック。
【0008】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の鍵付きスナップホックを備えた施錠、解錠機構を有する製品。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の鍵付きスナップホックを備えたかばん類製品。
(10)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の鍵付きスナップホックを備えた衣類製品。
(11)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の鍵付きスナップホックを備えた介護用製品
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のスナップホックの機能を維持し、更に、必要時、スナップホックの雌ホックと雄ホックの施錠を任意に行なうことができ、更に部品点数も少なく、小型化、軽量化することができ、又意匠性、ファッション性の高い鍵付きスナップホック、及びかかる鍵付きスナップホックを備えたかばん類製品、携帯品、衣類製品、介護用製品、日用品を含むその他の施錠、解錠が必要とされる各種製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係わる鍵付きスナップホックの雌ホック1と雄ホック2とが嵌着する状態の概略断面図。
【図2】本発明の鍵付きスナップホックのダボの概略を示す斜視図。
【図3】本発明の鍵付きスナップホックのダボの一例の概略を示す側面図。
【図4】本発明の鍵付きスナップホックのロック片の一例の概略を示す平面図。
【図5】本発明の鍵付きスナップホックの底部ケースの一例の概略を示す平面図。
【図6】本発明の鍵付きスナップホックの雌ホックの一例の概略を示す分解図。同図において、(a)〜(g)は各部品の縦断面図を示し、(a´)〜(g´)は各部品の平面図を示す。
【図7】本発明の一例の鍵付きスナップホックの施錠、解錠の操作を示す説明図。
【図8】本発明に係わる鍵付きスナップホックを使用したかばん類製品の正面図。
【図9】本発明に係わる鍵付きスナップホックを使用した介護用寝間着の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の鍵付きスナップホックを図1〜7の図面に基づいて具体的に説明する。図面は本発明の好ましい実施形態を例示したものであり、本発明は例示の図面とその説明に限定されない。また、図面の同一機能を有する部品には、理解を容易にするため同一符号を付して説明する。
図1は本発明に係る鍵付きスナップホックの好ましい実施形態の一つで、雌ホック1と雄ホック2とが嵌着する状態の断面図を示している。雌ホック1は、スナップリング3を具備し、雄ホック2はダボ4を有しており、雌ホック1と雄ホック2は離脱しないように、ダボ4がスナップリング3により係止されるようになっている。
【0012】
前記雌ホック1は、止め鋲5によりかばん類製品、衣類製品、その他各種製品の基材6に取り付けられる上部ケース8と底部ケース7とを具備し、上部ケース8と底部ケース7との間に、スナップリング3、回転部材9及びクリックばね10を組み込んで錠部が構成されており、雄ホック2のダボ4に係合したスナップリング3を回転部材9で係止し、さらにこの係止が開放されないように回転部材9をクリックばね10で付勢している。
一方、雄ホック2は、ダボ4がそのダボ台座11とダボ裏座12によって基材6に取り付けられるようになっており、該ダボ4に雌ホック1のスナップリング3が係合するようになっている。
【0013】
雄ホック2のタボ4は、図2、3に示されるように、タボ台座11の上方向に延びる中間軸部41と、その先端方向に長軸と短軸を有する先端拡大部42とを有している。当該先端拡大部42は後述するロック片24の開口部30を貫通して回転部材9の凹状空間部に装嵌できるようになっている。又、先端拡大部42の下端の周縁には、スナップリング3を係合するための係合凹部43がその全周に形成されている。
タボ4の先端拡大部42の形状は、当該ダボの先端拡大部の横断面図を示す図2の(b)に示されるように、長軸Aと短軸Bとを有し、その横断面の形状は、長円形状、楕円形状、あるいは4つの角部に丸みが形成された長方形状であって、その長軸に対し左右対称の形状とされるのが好ましい。又、タボ4の中間軸部41の横断面の形状は、底部ケース7及びロック片24の開口部30の短軸側が遊嵌すればよく、代表的には円形とするのが好ましい。先端拡大部42の短軸Bの部分は中間軸部41の延長状となっており、その短軸Bの長さは、中間軸部41の直径の長さと同じか、同程度とするのが好ましい。
ダボ4の材質としては、例えば真鍮やステンレス鋼などの金属が好ましく用いられる。
【0014】
雌ホック1の表側の構成部材の一つである上部ケース8は、図6の(b)に示されるように、天部13を有し、天部13の中央部には回転部材9の円形状の天部14が貫通する円形状の開口部15が設けられており、天部13の周りに周側部16を有するキャップ状体である。上部ケース8の材料としては、各種金属、高強度プラスチックなどの材料、例えば、18−8ステンレス鋼、真鍮、亜鉛、アルミニウムなどの非磁性の金属材料で形成されるのが好ましい。
【0015】
回転部材9は、図6の(a)に示されるように、その天部14が上部ケース8の開口部15に嵌入されるようになっており、この開口部15内で回転部材9の天部14は回転できるようにされている。一方、回転部材9の下方中央部を囲む領域には、凹状空間部17が形成されており、凹状空間部17を囲む裾部18の外周部は底部ケース7の略円筒部28内において摺動回転可能な様に装嵌されている。又、回転部材9は、回転可能な様に上部ケース8の開口部15内にクリックばね10を介して嵌装されており、回転部材9の底部はスナップリング3及びロック片24を介して底部ケース8に支承されている。又、回転部材9の上部の側面部と上部ケース8との間には、クリックばね10が装着され、クリックばね10のばね部32により回転部材9を付勢するようになっている。クリックばね10は、雌ホック1と雄ホック2とが係止されている状態では、付勢する弾性力で回転部材9の動作を拘束し、回転部材9がスナップリング3に対する係止を保持する役割を有している。
【0016】
又、前記回転部材9は、天部14において、その表側面に露出するように鍵当接部19が設けられている。当該回転部材9の鍵当接部19の表面部は、鍵20の鍵先部21に形成された凸状及び/又は凹状の鍵パターン22に合致する、凹状及び/又は凸状の反転鍵パターン23を有している。例えば、図1の様に、鍵20の鍵先部21に形成された凸状の所定文字、図柄、模様、記号等の鍵パターン22(即ち、雄型鍵パターン)に対応し、合致するように、回転部材9の鍵当接部19の表面部には、凹状の所定文字、図柄、模様、記号等の反転鍵パターン23(即ち、雌型鍵パターン)が形成されている。図1に例示した反転鍵パターン23はT字状の雌型鍵パターンを形成した例である。勿論、鍵の鍵先部に形成された凹状の鍵パターン(即ち、雌型鍵パターン)に対応し、合致するように、回転部材の鍵当接部の表面部に、凸状の反転鍵パターン(即ち、雄型鍵パターン)が形成されてもよい。あるいは又、鍵の鍵先部の鍵パターンを凹状及び凸状とを組み合わせたパターンとし、鍵当接部19の反転鍵パターンを当該鍵パターンに合致する凸状及び凹状とを組み合わせたパターンとしてもよい。かかる鍵パターン及び反転鍵パターンは、デザイン、意匠性、ファッション性、利便性、差別化等の面を考慮して所望のパターンを選択することができる。
【0017】
本例の回転部材9は、円環状のスナップリング3を内側の下方に納めることができるような略円錐台状に形成されており、略円錐台状の裾部18側であって、その内側の内周方向に沿ってスナップリング3用の係合受け部27が設けられている。このように、回転部材9にスナップリング3の係合受け部27を設けると、回転部材9でスナップリング3を確実に係止できる。
【0018】
ロック片24は、底部ケース7の略円筒状部25の内周側の雄ホック側において、回転部材9の裾部18の下方に配されたスナップリング3と、底部ケース部7の開口部26の縁部屈曲部28との間に配され、回転部材9が回転したとき、回転部材9と協動して回転するようになっている。ロック片24の形状は、図6の(d)に示されるように、底部29に開口部30を有するキャップ状の形状を有している。
ロック片24の開口部30の形状は、ダボ4の先端拡大部42が貫通することができるように、先端拡大部42の形状と相応し、その最大の長軸、短軸の長さより僅かに大きい寸法とされるのが好ましい。例えば、雄ホックのタボの先端拡大部の横断面の形状が、長軸と短軸とを有する長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状であって、その長軸に対し左右対称の形状である場合には、このタボ4の先端拡大部の長軸と短軸とを有する長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状に対応した形状であって、僅かに大き目の形状にされるのが好ましい。
【0019】
即ち、図4に示されるように、ロック片24の開口部30の長軸の長さA‘は、ダボ4の先端拡大部42の長軸Aの長さよりも僅かに長い長さとされ、又、ロック片24の開口部30の短軸の長さB‘は、ダボ4の先端拡大部42の短軸Bの長さよりも僅かに長い長さとされる。又、ロック片24は、ダボ4の中心軸を中心として回転できるように底部ケース7の略円筒状部25に納められている。ロック片24が回転し、ロック片24の開口部の長軸側が、ダボ4の先端拡大部42の長軸側と合致したときが、ダボ4の開放位置であり、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの解錠ができるようになっており、又ロック片24が回転し、ロック片24の開口部30の長軸側が、ダボ4の先端拡大部42の短軸側と交差したとき(即ち、ダボ4の先端拡大部42がロック片42の開口部から抜けなくなった位置)が、ダボ4の規制位置、即ちロック位置である。
【0020】
例えば、図7(a)に示すように、前記回転部材9の90度の回転によりロック片24が協動・回転して、ロック片24の開口部30が、雄フック2のタボ4の規制位置(即ちロック位置)に位置したとき、雄ホック2と雌ホック1の施錠がロックされ、又、図7(b)に示すように、更に回転部材が90度回転し、ロック片24が協動してその開口部30が、雄フックのタボの開放位置(即ちオープン位置)に位置したとき、ロック片24の開口部30と底部ケース7の開口部26からダボ4の先端拡大部42が抜け、雄ホックと雌ホックとが解錠できるようになっている。
なお、図7において、(1)は、回転部材9の平面説明図であり、ロック位置とオープン位置を説明し、(2)は、ダボ4の長軸側を示した概略断面を説明し、(3)は、底部ケース7に対するロック片24の開口部の向きを示している。図7の(3)において、線lはロック片24の開口部30の内周縁を示し、mはダボ4の中間軸部41の外周を示している。
上記したように、ロックの解錠、施錠が90度毎の回転部材9の施錠位置、及び解錠位置を分かりやすくし、その位置が振動、衝撃などで容易にずれないように、上部ケース8の所望の位置には、回転部材の位置を保持するクリック装置を付するのが好ましい。
【0021】
底部ケース7は、前記した上部ケース8と組み合わさって雌ホック1の底部(即ち、雄ホック側)を構成する部品で、当該底部ケース7は、内部にスナップリング3等を組み込むための空間部を確保するための略円筒状部25を有しており、該略円筒状部25の底部には開口部26が設けられており、該開口部26から雄ホック2のダボ4の中間軸部41と先端拡大部42が、略円筒状部25に出し入れできるようになっている。したがって、開口部26の開口部の寸法は、雄ホック2のダボ4の先端拡大部42の横断面の寸法より僅かに大きいことが好ましい。
即ち、図5に示されるように、底部ケース7の開口部26の長軸の長さA’’は、ダボ4の先端拡大部42の長軸Aの長さよりも僅かに長い長さとされ、又、底部ケース7の開口部26の短軸の長さB’’は、ダボ4の先端拡大部42の短軸Bの長さよりも僅かに長い長さとされる。なお、本発明の鍵付きスナップホックの底部ケース7としては、各種金属、高強度プラスチックなどの材料が使用できる。
【0022】
底部ケース7は、基材6に止め鋲5を利用して取り付けられ、固定される。底部ケース7の略円筒状部25内においてロック片24は回転できるように収納されており、前述したように、ロック片24の回転により、ロック片24の開口部30と底部ケースの開口部26の長軸同士が一致したり、直交、交差したりするようになっている。即ち、ロック片24の開口部30と底部ケースの開口部26の長軸同士を一致させると、ダボ4の先端拡大部42が、両方の開口部26及び30を貫通して回転部材9の凹状空間部17に納まるようになっており、この先端拡大部42が納まった状態でロック片24の開口部30と底部ケースの開口部26の長軸同士を直交させると、この先端拡大部42がロック片24の開口部30から抜けなくなり、ロック状態となる。
【0023】
スナップリング3としては、弾性リング、即ちリング状ばねが使用されている。雄ホック2のダボ4が雌ホック1に挿入され、ダボ4がスナップリング3に挿入されたとき、該ダボ4の係合凹部43に嵌入して、雌ホックと雄ホックとを係止する機能を持っている。
雄ホック2のダボ4の係合凹部43に前記スナップリング3が係合した状態で、外方向に広がらないように、回転部材9の係合受け部27でスナップリング3を係止し、更にクリックばね10を回転部材9に付勢させて、この係止が開放されないようにし、雄ホック2のダボ4がスナップリング3から離脱するのを防止している。
【0024】
前記スナップリング3は雄ホック2のダボ4に形成されている係合凹部43の最小径とほぼ同じ径と適度の弾性を持っているので、ダボ4でスナップリング3を押し広げながら係合凹部43に係合できる。この係合の際、上部ケース8と回転部材9との間にクリックばね10が介在されているので、クリックばね10の付勢によって回転部材9が押し上げられるのを防ぐことができる。
【0025】
止め鋲5は、前記上部ケース8及び底部ケース7を基材6に取り付けるための部品で、止め鋲5の中央は、前記上部ケース8及び底部ケース7が挿通できる所定の大きさに開口しており、かつ該開口の周縁に円筒状の止め片31がほぼ直立して形成されており、該止め片31の円筒内部に前記底部ケース7の略円筒状部25が好ましく嵌合できるようになっている。この止め鋲5は、例えば真鍮板を所定の形状に切り抜き、これをプレス成形加工することにより得ることができる。
【0026】
この止め鋲5で底部ケース7及び上部ケース8を基材6に取り付けるには、基材の雌ホック3を取り付ける箇所に予め止め鋲5の止め片31の大きさに合わせて孔を明け、該孔に基材の裏側から止め鋲5の止め片31を通して該止め鋲5の止め片31内に底部ケース7の略円筒状部25を嵌合し、さらに上部ケース8を重ね合わせ、止め片31の先端部と底部ケース7及び上部ケース8の縁部とを重ね合わせた状態で一緒に折り曲げることにより得られる。この場合、止め鋲5の止め片31の先端部を図示のように波形に加工しておくと、前記折り曲げが容易となる。しかし、雌ホック1の基材への取り付け方法は、汎用のホックや留め具で実施されている方法でもよく限定されない。
【0027】
本発明の鍵付きスナップホックにおいては、雌ホックと雄ホックとの施錠、ロック、解錠は、例えば次のようにして行なわれる。
即ち、回転部材9を回転させ、ロック片24を開放位置(オープン位置)にセットし、雄ホック2のダボ4を、雌ホック1の錠部を構成する回転部材9の凹状空間部17に挿入して、ダボ4の係合凹部43に雌ホック1の下部に位置するスナップリング3を係合させ、更にダボ4を押し上げてスナップリング3を回転部材9の裾部18の係合受け部27と係合させ、雌ホック1と雄ホック2とを施錠させる。この施錠をロックしようとする場合には、回転部材9の天部14の鍵当接部19を利用して、回転部材9を回転させ、ロック片24を規制位置にセットさせることにより施錠のロックが完了する。
雌ホック1と雌ホックとがロックされた施錠を解除するには、回転部材9の天部14の鍵当接部19に鍵20を当接し、鍵20を利用して回転部材9を回転させることにより、ロック片24を開放位置(オープン位置)にセットすれば、雌ホック1と雌ホックを解錠することができ、雌ホック1と雌ホックとを引っ張り、両者を引きはがすことができる。
【0028】
特に、前記回転部材9の天部14の鍵当接部19を凹状の雌型鍵パターンとし、一方、鍵20の鍵先部21を、前記雌型鍵パターンと合致する凸状の雄型鍵パターンとすれば、鍵先部21と鍵当接部19とを合わせる操作が容易、かつ確実に行なうことができ、雌ホックと雌ホックとの施錠、解錠、ロックの操作を容易、かつ確実に行なうことができる。
【0029】
図8は、本発明の鍵付きスナップホック50を適用したかばん51の一例を示したものであり、必要時に応じて、雌ホックのロック機能を働かした状態にしておけば、鍵で解錠しない限り、かばん51の蓋を開けることができない。一方、雌ホックのロック機能を解除した状態にしておけば、鍵なしで、かばん51の蓋を開けることができる。
図9は、本発明の鍵付きスナップホック60を適用した介護用寝間着61の一例を示したものであり、必要時に応じて、雌ホックのロック機能を働かすかした状態にしておけば、鍵で解錠しないと、介護用寝間着61のファスナー62を開けることができない。一方、雌ホックのロック機能を解除した状態にしておけば、鍵なしで、介護用寝間着61のファスナー62を開けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の鍵付きスナップホックは、操作性、安全性、利便性に優れ、かつ小型化、軽量化が可能であり、更に意匠性、ファッション性を高めることができるので、かばん、ハンドバック、ショルダーバック、リュックサック、ポーチ、各種バック等のかばん類製品や、各種衣類製品、介護用寝間着・手袋/衣服等の介護用製品、各種日用品を含むその他鍵付きスナップホックを必要とする各種製品に対し、好適な鍵付きスナップホックとして使用することができ、又この鍵付きスナップホックを使用することにより、操作性、安全性、利便性に優れたかばん類製品、各種衣類製品、介護用製品、各種日用品を含むその他各種の製品を提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
1:雌ホック 2:雄ホック 3:スナップリング
4:ダボ4 5:止め鋲 6:基材
7:底部ケース 8:上部ケース 9:回転部材
10:クリックばね 11:ダボ台座
13:天部 14:天部 15:開口部
16:周側部 17:凹状空間部 18:裾部
19:鍵当接部 20:鍵 21:鍵先部
22:鍵パターン 23:反転鍵パターン 24:ロック片
25:略円筒状部 26:開口部 27:係合受け部
28:縁部屈曲部 29:底部 30:開口部
31:止め片 32:ばね部
41:中間軸部 42:先端拡大部 43:係合凹部
50、60:鍵付きスナップホック 51:かばん
61:介護用寝間着 62:ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠部を有する雌ホックと、ダボを有する雄ホックとから留め具であって、
前記雌ホックは、雄ホックのタボが挿入される凹状空間部を有する回転部材と、回転部材が挿入される開口部を有する、スナップホックの表側に位置する上部ケースと、雄ホックのタボが挿入される開口部を有する、スナップホックの裏側に位置する下部ケースと、挿入されるタボの着脱を規制する開口部を有するロック片とを有しており、前記回転部材は、その表側面に露出するように鍵当接部を有し、かつ回転可能な様に上部ケースの開口部内にクリックばねを介して嵌装されており、回転部材の底部はスナップリング及びロック片を介して底部ケースに支承されるように、かつロック片は回転部材の回転と協動する様にされており、
一方、前記雄ホックのタボは、凸タボ台座と、中間軸部と、その先端方向に長軸と短軸を有する先端拡大部とを有し、当該先端拡大部はロック片の開口部を貫通して回転部材の凹状空間部に装嵌できるようになっており、
前記回転部材の回転によりロック片の開口部が、雄フックのタボの開放位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの解錠ができるようになっており、前記回転部材の回転によりロック片の開口部が、雄フックのタボの規制位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックの施錠がロックされるように構成されていることを特徴とする鍵付きスナップホック。
【請求項2】
回転部材の鍵当接部の表面部は、鍵の鍵先部に形成された凸状及び/又は凹状のパターンに合致する、凹状及び/又は凸状のパターンを有していることを特徴とする請求項1に記載の鍵付きスナップホック。
【請求項3】
雄ホックのタボの先端拡大部の横断面の形状は、長軸と短軸とを有する長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鍵付きスナップホック。
【請求項4】
ロック片の開口部の形状は、雄ホックのタボの先端拡大部の横断面に対応する、長軸と短軸とを有する長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鍵付きスナップホック。
【請求項5】
雄ホックのタボの中間軸部は、ロック片の開口部内を回転自在に遊嵌されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鍵付きスナップホック。
【請求項6】
前記回転部材の回転によりロック片の長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状の開口部の長軸側が、長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状の雄ホックのタボの先端拡大部の長軸側に合致したとき、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの解錠ができるようになっており、一方、前記回転部材の回転によりロック片の長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状の開口部の長軸側が、長円形状、楕円形状、あるいは角部に丸みが形成された長方形状の雄ホックの先端拡大部の長軸側に交差したとき、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの施錠がロックされるように構成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の鍵付きスナップホック。
【請求項7】
回転部材の90度の回転により、ロック片の開口部が、雄フックのタボの開放位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックとの施錠、又は雄ホックと雌ホックとの解錠ができるようになっており、又前記回転部材の90度の回転によりロック片の開口部が、雄フックのタボの規制位置に位置したとき、雄ホックと雌ホックの施錠がロックされるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鍵付きスナップホック。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鍵付きスナップホックを備えた施錠、解錠機構を有する製品。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鍵付きスナップホックを備えたかばん類製品。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鍵付きスナップホックを備えた衣類製品。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鍵付きスナップホックを備えた介護用製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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