説明

鏡器具

【課題】日常から自己の健康状態を管理することのできる鏡を提供する。
【解決手段】鏡器具1は、光の反射を利用して対象物(例えば、人間の舌)を映す領域4を有する鏡2と、その領域4に映る対象物(人間の舌)と対比できるように領域4の周辺に設けられた複数の参照体5であるシールとを有している。複数の参照体5のそれぞれには、対象物である人間の舌の種々の状態、例えば、舌の色が「青」、「淡白」、「淡紅」、「深紅」の状態や、数ヶ月前の自身の舌の状態が表示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡器具に関し、特に、継続して自己の健康状態を把握することができる健康補助器具としての鏡器具に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自分の健康は自分で管理する意識が浸透してきている。検診や健康診断を待つまでもなく、体重、体脂肪、血圧、尿糖などがチェックできる健康補助器具や検査薬などが普及しているので、これらを利用して日常から体調を管理することができる。継続して自己の健康状態を把握することができる健康補助器具として、例えば、体重計、体脂肪計、血圧計が用いられている。
【0003】
このような体重計などの他に日常生活に欠くことのできないものとして、手鏡、鏡台、洗面台などの鏡器具がある。鏡は、光の反射を利用して対象物を映すものであり、身だしなみはもちろんのこと、顔などの身体が病気、怪我の有無を判断することができるため健康補助器具としての役割をも有するものであるといえる。
【0004】
ところで、東洋医学には舌診という診断法があり、舌及び苔(舌乳頭)の色や形から、体質や体調の偏りを総合的に診断することができる。舌には全身の健康状態の変化が表れやすく、舌は全身の健康状態を写す鏡と言われている。すなわち、舌の組織は血管が多くあり、その表面には角質層が無く粘膜で覆われていることから、舌の色は血液や体液の色を如実に反映する。また、舌は、人体の上部消化器官の入口に位置しているため、消化器系の状態も反映することになる。
【0005】
特許2763989号(特許文献1)には、舌の病態変化を識別し得る比較舌診システムとして、患者の舌像を投影する光学系と、前もって診断分類された資料の標準の各状態の舌像を投影する投影系とを備え、患者の舌像と標準舌像を比較可能に接近して投影し、その患者の病態変化を認識することができる技術が開示されている。
【特許文献1】特許2763989号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した舌診は医師、薬剤師、鍼灸師などが自身の診療経験に基づいて目視で行うのが一般的であり、定量化された診断手法は未だ確立されていない。このため診断に医師などの主観が介入して個人差が生じ易く、診断結果の体系的な記録や伝達が困難である。前記特許文献1に記載の技術を用いることによって、診断結果の体系的な記録や伝達ができると思われる。しかしながら、そのためのシステムを有する設備を個人で所有することは場所、費用で負担を強いること、日常的に用いることも困難であることが考えられる。
【0007】
また、同じ舌の状態であっても人によって健康状態が異なるものである。言い換えると、同一人物であっても健康状態によって舌の状態が異なるものである。その一方で、舌は粘膜質で体表に露出していないことから、日焼けなどによる影響を受けず、普遍的な判断が可能であるという特徴もある。
【0008】
本発明の目的は、日常から自己の健康状態を管理することのできる鏡器具を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
本発明における鏡器具は、光の反射を利用して対象物を映す領域を有する鏡と、前記領域の周辺に設けられた複数の参照体とを有し、前記複数の参照体のそれぞれには、前記対象物の種々の状態が表示されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0013】
本発明によれば、前記領域に映る前記対象物の状態と、前記複数の参照体で示される前記対象物の種々の状態とを対比して、前記対象物の変化を把握することによって、日常から自己の健康状態を管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態では、手鏡に適用した場合について図1および図2を参照して説明する。図1は本実施の形態における手鏡1を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。また、図2は図1(a)に示す手鏡1の要部の拡大図である。
【0016】
手鏡1は、板状の鏡2と、その鏡2を嵌め込んで固定し、かつ、その外周で突出する取手を有する枠部3とを含んで構成されている。板状の鏡2は、例えば、ガラス板を主体として構成され、光の反射を利用して対象物が映し出される表面側とは反対の裏面側に水銀が塗布されている。また、光の反射を利用して対象物を映すことができる鏡2として、水銀を塗布したガラス板の他に、例えば、金属板、金属を蒸着したフィルムも適用することができる。枠部3は、手鏡1として軽量なものが良く、一般に用いられる例えば、プラスチック、木から構成されている。
【0017】
図2には、手鏡1に映す対象物の一例として人間の舌が鏡2の領域4(破線で囲まれている)に映し出されている。その領域4に映る人間の舌(対象物)と対比できるように、鏡2の領域4の周辺には複数の参照体5(5a〜5f)が設けられている。本実施の形態では、参照体5はシールで構成されており、鏡2の表面上にシール(写真)が貼り付けられた状態となっている。
【0018】
ここで、舌を観察することによる健康状態について説明する。例えば、舌の色は、「青」、「淡白」、「淡紅」、「深紅」の順に、「青」に近い程、身体が冷えている状態であり、「深紅」に近くなる程、身体に熱がこもっている状態であると判断することができる。そこで、本実施の形態では、参照体5aに「青」の舌の状態、参照体5bに「淡白」の舌の状態、参照体5cに「淡紅」の舌の状態、参照体5dに「淡紅」の舌の状態、参照体5eに「深紅」の状態を示している。この参照体5a〜5eを構成するシールは、例えば医師などの監修による写真を基に作製することができる。
【0019】
また、経時変化による自己の健康状態について説明する。例えば、一年前、六ヶ月前、三ヶ月前、一ヶ月前、一週間前と時系列による舌の状態に変化がなければ、健康状態も変化がないと判断することができる。そこで、本実施の形態では、参照体5fに例えば一ヶ月前の舌の状態を示している。この参照体5fを構成するシールは、例えば自身の舌をカメラによって撮影した写真を基に作製することができる。
【0020】
なお、本実施の形態では、参照体5に、医師などの監修による写真を基に作製したシールと、自身の舌をカメラによって撮影した写真を基に作製したシールを用いた場合について説明しているが、参照体5の全てが医師などの監修による写真を基に作製したシールであっても良く、あるいは参照体5の全てが自身の舌をカメラによって撮影した写真を基に作製したシールであっても良い。
【0021】
このように、本実施の形態では、光の反射を利用して対象物として人間の舌を映す領域4を有する鏡2と、領域4に映る人間の舌(対象物)と対比できるように領域4の周辺に設けられた複数の参照体5であるシールや写実物(写実性のある印刷物)とを有している。この複数の参照体5のそれぞれには、対象物である人間の舌の種々の状態、例えば、舌の色が「青」、「淡白」、「淡紅」、「深紅」の状態や、数ヶ月前の自身の舌の状態を示すものである。これにより、日常から自己の健康状態を管理することができる。言い換えると、本実施の形態における手鏡1を用いることによって、自己の健康状態を知ることができる。さらに、その自己の健康状態の結果に疑いがある場合には、医者にかかるなどすれば早期発見、早期治療にもつなげることができる。
【0022】
また、本実施の形態では、参照体5をシールで構成しているので、貼り付け換えることができる。このため、複数の参照体5のそれぞれには、対象物である人間の舌のより多くの状態を示すことができる。
【0023】
また、本実施の形態では、対象物である人間の舌が映される領域4のすぐ又はごく周辺に複数の参照体5を設けているので、映された舌の状態と、参照される舌の状態との対比をより容易に行うことができる。
【0024】
さらに、図3に示すように、手鏡1の背面側、すなわち枠部3において鏡2が固定される側とは反対側にコメント部6を設けても良い。図3は本実施の形態における手鏡1を模式的に示す図であり、(a)は裏面図、(b)は側面図である。
【0025】
図3に示すコメント部6は、裏蓋で開閉することができるようになっており、手鏡1の背面(コメント部6)を開くと、例えば参照体5a〜5fごとに舌の状態の標準的な注意事項などのコメントが現れるようになっている。図3(a)ではコメント部6において、裏蓋が開いた状態、図3(b)では裏蓋が閉じた状態を示している。このコメント部6に記載されている注意事項は、例えば、参照体5と同様にコメント部6に貼り付けられたシールで構成されている。なお、本実施の形態では裏蓋を用いたコメント部6を示しているが、手鏡1の背面に直接シールを貼り付けた場合でも良い。
【0026】
このため、領域4に映る現在の自分の舌の状態に対して、複数の参照体5が示す舌の状態のうち類似した時点の参照体5の番号(例えば参照体5a)を、裏蓋を開けてその参照体5の番号が示す注意事項(例えば参照体5aでは身体が冷えているなど)と照合することができる。
【0027】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では参照体にシールを用いた場合について説明したが、本実施の形態では参照体に写実物(写実性のある印刷物)を用いた場合について図4を参照して説明する。図4は本実施の形態における手鏡11を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。なお、参照体の構成が前記実施の形態1と相違する他は、重複するのでその説明は省略する場合がある。
【0028】
図4に示すように、手鏡11は、鏡2に映す対象物(例えば人間の舌)が映し出される鏡2の領域4(破線で囲まれている)を有している。その領域4に映る対象物(人間の舌)と対比できるように、鏡2の領域4の周辺には複数の参照体12が設けられている。複数の参照体12のそれぞれには、対象物である人間の舌の種々の状態、例えば、舌の色が「青」、「淡白」、「淡紅」、「深紅」の状態が表示されている。本実施の形態では、参照体12aに「青」の舌の状態、参照体12bに「淡白」の舌の状態、参照体12cに「淡紅」の舌の状態、参照体12dに「淡紅」の舌の状態、参照体12eに「深紅」の状態を示している。
【0029】
前記実施の形態1で説明したように、舌の状態を対比することにより、日常から自己の健康状態を管理することができる。言い換えると、本実施の形態における手鏡11を用いることによって、自己の健康状態を知ることができる。さらに、その自己の健康状態の結果に疑いがある場合には、医者にかかるなどすれば早期発見、早期治療にもつなげることができる。
【0030】
また、本実施の形態における参照体12は、例えば印刷機を用いて鏡2の表面に印刷されて構成されている。例えば、板状の鏡2の表面に参照体12を印刷した後、その鏡2を枠部3に嵌め込むことで手鏡11を製造することができる。印刷技術を用いることによって、手鏡11を大量に製造することができる。
【0031】
なお、前記実施の形態1で示したシールと、本実施の形態で示した写実物を組み合わせて、参照体を構成しても良い。
【0032】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0033】
例えば、前記実施の形態では、手鏡に適用した場合について説明したが、鏡台、洗面台などの鏡器具にも適用することができる。これらも日常生活で用いられるものであるため、日常から自己の健康状態を管理することができる。
【0034】
また、例えば、前記実施の形態では、鏡に映す対象物として、人間の舌に適用した場合について説明したが、人間の唇、顔(肌の色)など身体にも適用することができる。例えば人間の唇の種々の状態を複数の参照体に示すことによって、日常の健康状態を管理することができる。また、同一人物であっても健康状態によってそれら顔、唇の色の状態が変化することが考えられるので、普段と異なる状態を気づくことによっても同様に病気の早期発見などに役立てることができる。
【0035】
また、例えば、前記実施の形態では、日常の自己の健康状態を管理するための鏡器具として説明した場合について説明したが、人間の顔に塗る白粉や、唇に塗る口紅などの化粧用としても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、鏡器具、特に、健康補助器具としての鏡器具に幅広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態における手鏡を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】図1(a)に示す手鏡の要部の拡大図であり、対象物として人間の舌が映されている。
【図3】本発明の一実施の形態における手鏡を模式的に示す図であり、(a)は背面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態における手鏡を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 手鏡
2 鏡
3 枠部
4 領域
5、5a、5b、5c、5d、5e、5f 参照体(シール)
6 コメント部
11 手鏡
12、12a、12b、12c、12d、12e 参照体(写実物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の反射を利用して対象物を映す領域を有する鏡と、
前記領域の周辺に設けられた複数の参照体とを有し、
前記複数の参照体のそれぞれには、前記対象物の種々の状態が表示されていることを特徴とする鏡器具。
【請求項2】
請求項1記載の鏡器具において、
前記複数の参照体は、シールで構成されていることを特徴とする鏡器具。
【請求項3】
請求項1記載の鏡器具において、
前記複数の参照体は、写実物で構成されていることを特徴とする鏡器具。
【請求項4】
請求項1記載の鏡器具において、
前記複数の参照体は、シールおよび写実物で構成されていることを特徴とする鏡器具。
【請求項5】
請求項1記載の鏡器具において、
前記対象物は人間の舌または人間の皮膚であり、
前記複数の参照体のそれぞれには、人間の舌の状態または人間の皮膚の状態が種々表示されていることを特徴とする鏡器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−82151(P2010−82151A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254087(P2008−254087)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(397055436)
【Fターム(参考)】