説明

鏡映蛍光光度計

【課題】天然又は工業プロセスもしくは系を観測する分光蛍光光度計に関し、プロセス試料を取り替えずに、単一の装置を用いて数種のプロセス試料を観測できる蛍光光度計、及び不透明媒体において蛍光シグナルを測定できる蛍光光度計を提供する。
【解決手段】一つ又はそれ以上の試料34に対し集光した円錐状の励起光17を照射することができるように位置されている回転鏡24を有し、試料34中の発蛍光団から放射される蛍光シグナルが検出される蛍光光度計10、天然又は工業用水システムからの試料34からの一つ又はそれ以上の発蛍光団から放射される蛍光シグナルを検出するための鏡映蛍光光度計10を使用する方法、制御装置と接続されることにより製紙プロセスを含む工業プロセス又はシステムを観測及び、必要によっては制御することができる蛍光光度計10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、天然又は工業プロセスもしくは系を観測し及び、必要に応じて制御する分析装置及び方法に関する。より具体的には、本発明は、天然又は工業プロセスもしくは系からの試料に存在する一つ又はそれ以上の発蛍光団により発せられる蛍光シグナルを検出できる蛍光光度計に関する。この蛍光光度計を用いることにより、プロセス及び系を観測し、及び必要に応じて制御することができる。
【背景技術】
【0002】
蛍光光度計は、典型的には、光源、所定の励起波長領域を選択できる手段、試料セル、所定の発光波長領域を選択できる手段、及び検出器を備えた分析装置である。
【0003】
分光蛍光光度計は、励起及び/又は発光波長領域の選択手段が、格子により実行される特定型式の分光光度計である。格子は、光の連続体をその成分に分散するように作用する。分光蛍光光度計は、励起源及び/又は発光に応じた格子の位置に基づいて波長スペクトルを走査する機械的手段を用いる装置である走査型分光光度計(これは、標準的な実験室型の蛍光光度計を示している。)、又は格子が発光ごとに固定されている固定型分光蛍光光度計に、さらに分類することができる。発光(蛍光発光)は、次に、検出器のアレイに導かれる。検出器のアレイは電荷結合素子であってもよく、これは一般的に「CCD」と略される。また、検出器のアレイは光ダイオードであってもよい。検出器は、次に適切な波長単位に較正される。この種類の装置で市販のものは、(株)ドリスデールアンドアソシエイツ(オハイオ州シンシナティー45244、私書箱44055、(513)831-9625)より入手可能である。この種類の固定型分光蛍光光度計は、走査、格子、又はフィルターのような、適切な励起波長選択装置をさらに必要とする。
【0004】
現場条件に最も適した蛍光光度計は、格子分光蛍光光度計ではなく、むしろフィルター式の蛍光光度計である。フィルター式の蛍光光度計は選択した波長領域以外の全ての波長を排除するためにフィルターを使用する。一般的に、現在入手可能で、よく知られているフィルター式の蛍光光度計は、一つのチャンネルを有しており、このチャンネルは光学的に適切なセルを含んでいる。
【0005】
光源及び任意の励起フィルターは、光学的に適切なセルの一方側に設置されており、発光検出器及び発光フィルターは光学的に適切なセルの反対側に設置されている。場合によっては、基準検出器を設けることもできる。蛍光は等方性であることから、多くの蛍光光度計は、誤った励起光の収集を最小限にするために、発蛍光団から発せられる蛍光を光源から90度の角度で検出する。
【0006】
励起フィルターは、選択した励起波長領域の光が、フィルターを通り抜けてセルに到達するのを許容する。オフラインバッチ試験を行う場合には、例えば、天然又は工業用水システムからの試料水が、光学的に適切なセルの中に設置され保持される。オンライン試験を行う場合には、試料水は光学的に適切なセルの中を流れることができる。光は試料水に存在する発蛍光団により吸収され、次に、励起光と同一又はそれより長波長の蛍光(以下、蛍光シグナルともいう。)を発する。発光フィルターは、発光検出器と光学的に適切なセルとの間に設置されるが、これは発蛍光団から発せられた光(発蛍光団の蛍光シグナル)のみがフィルターを通して発光検出器へ導かれるように選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な工業用水システム又は水文学における発蛍光団の知られた利用法の一つとして、工業用水システムにおける水圧損失を決定するための不活性蛍光トレーサーの使用がある。さらに、再循環又は貫流式冷却水システムへの添加物又は生産物の添加量を調整するための蛍光トレーサーの利用法も知られている(米国特許No.4783314参照)。この方法において、蛍光トレーサーは、一つ又はそれ以上の添加物と、添加物に対するトレーサーの既知の割合で組み合わされ、その後その混合物は冷却システムの水に添加される。その後、蛍光光度計は冷却水中の蛍光トレーサーの存在及び濃度を検出するために用いられ、その結果、添加物の存在及び濃度が検出される。現在入手可能な蛍光光度計の限界とは、一般的には、これらが単一のプロセス試料の蛍光を測定する光学セルを有する一つの経路しか有していないこと(すなわち、ワンチャンネル試料蛍光光度計であること)である。現在入手可能な蛍光光度計のもう一つの限界とは、既知の蛍光光度計の大部分のものは、例えば、不透明スラリー、不透明コロイド及びある種の不透明な金属加工油等の不透明媒体の蛍光シグナルを測定するのには不適当なことである。
【0008】
プロセス試料を取り替えずに、単一の装置を用いて数種のプロセス試料を観測できる蛍光光度計、及び不透明媒体において蛍光シグナルを測定できる蛍光光度計が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本請求の範囲に記載した発明における第一の態様は、励起光の平行ビームを発生する励起光源、前記励起光源からの光の平行ビームを受けることができ、そして一つ又はそれ以上の試料に対し集光した円錐状の励起光を照射することができるように位置されている回転鏡、それぞれのチャンネルが試料の入った光学セルを保持することが可能な、一つ又はそれ以上のチャンネルを有する試料ホルダー、及び前記一つ又はそれ以上の試料に存在する発蛍光団からの蛍光シグナルを検出することができる検出器、を含む蛍光光度計である。
【0010】
本請求の範囲に記載した発明における第二の態様は、励起光の平行ビームを発生する励起光源、前記励起光源からの光の平行ビームを受けることができ、そして一つ又はそれ以上の試料に対し集光した円錐状の励起光を照射することができるように位置されている回転鏡、それぞれのチャンネルが試料の入った光学セルを保持することが可能な一つ又はそれ以上のチャンネルを有する試料ホルダー、前記一つ又はそれ以上の試料に存在する発蛍光団からの蛍光シグナルを検出できる検出器、及び、試料が採取された天然又は工業プロセスを観測及び/又は制御するために前記蛍光光度計により検出された蛍光シグナルを用いる制御装置、を含む蛍光光度計である。
【0011】
本請求の範囲に記載した発明における第三の態様は、a)本請求の範囲に記載した発明における第一の態様及び第二の態様において述べた蛍光光度計の提供、b)天然又は工業プロセスにおける流水からの一つ又はそれ以上の試料の提供、及び、c)前記試料中の前記発蛍光団の蛍光シグナルを検出するための前記蛍光光度計の使用、からなる工程を含む、一つ又はそれ以上の試料に存在する発蛍光団を蛍光的に検出する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、単一試料において蛍光シグナルを測定することができる、本発明に沿って作成された蛍光光度計を示す側面透視図である。
【図2】図2は、単一試料において蛍光シグナルを測定することができる、本発明に沿って作成された蛍光光度計を示す上面透視図である。
【図3】図3は、複数試料において蛍光シグナルを測定することができる、本発明に沿って作成された蛍光光度計を示す上面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本特許出願明細書を通して、以下の語句はそれぞれ指示された意味を有している。
「ビーム」とは、多重光線の円筒形の投射をいう。
「平行」とは、光線が互いに平行であることをいう。
「円錐形」とは、多重光線の一つの焦点への投射をいう。
「集光する」とは、同じ焦点に達する又は導かれる光線をいう。
「発散する」とは、一点から発生して、同じ焦点に導かれることなく、そして平行な線を進むことがない光線をいう。
「扇形」とは、一点の光源から180度までの角度での、多重光線の投影をいう。
【0014】
「発蛍光団」とは、電子を分子の電子基底状態(S)から電子励起状態(S又はS又はS)へ励起し、続いて励起状態の最低振動順位Sに緩和する結果をもたらすような光子のエネルギー(hν)の吸収に際し、吸収したものよりもエネルギーが低い(波長は長い)エネルギー「E」(hν)の光子を放射する分子である。ここで留意すべきは、この関係は、E(吸収)>E(蛍光)の式で表すことができることである。このエネルギーの放出は、分子の電子状態を基底状態(S)に戻す結果をもたらす。全体の過程では、等方的分布で蛍光光子を放出している結果となる。本請求の範囲に記載した蛍光光度計により検出できる発蛍光団は、約200nmから約1200nmの波長の励起光を吸収し、励起光よりも長い波長においてそれを放射することができる。
【0015】
「不活性」とは、不活性発蛍光団が、天然あるいは工業プロセスにおけるいかなる化学反応によっても、又は、例えば、金属成分、微生物的活性、生物毒(biocide)、濃度、熱変化、全体の熱含量によっても、感知できるほど又は大きく影響されないという事実を意味している。「感知できるほど又は大きく影響されない」の意味を定量化すると、これは不活性発蛍光団が、天然又は工業プロセスにおいて通常遭う条件において、その蛍光シグナルが10%以上の変化を示さないことである。天然又は工業プロセスにおいて通常遭う条件は、天然又は工業プロセスの分野での通常の技術を有する人々に知られている。
【0016】
「等方的」とは、仮にある部分を点源とし、その部分に励起光を向けると、蛍光は2πステラジアンに渡って等しく放射され、その結果、三次元の球体を形成することをいう。蛍光の等方的分布のため、実際には蛍光シグナルの収集は、例えば、励起(光子)源に起因して収集される光子(光)を最小限にするために、励起(光子)源に対し90°の位置で行うことができる。これはまた光の散乱を最小限にする役割も果たす。
【0017】
「Nalco」とは、オンデオナルコカンパニー、イリノイ州、ネイパービル、ウエストディールロード、オンデオナルコセンター、1601、(630)305-1000のことである。
「nm」とは、ナノメーターのことであり、これは10−9メーターである。
【0018】
本発明は、一つ又はそれ以上の試料に存在する発蛍光団から発せられる蛍光を観測、検出又は測定できる蛍光光度計を提供する。この蛍光光度計は、回転鏡を有し、この鏡は光源からの平行ビームを受けることができるように設置されており、この回転鏡は、集光した又は収束した励起光のビームをそれぞれの試料に順々に又は一つずつ投射する。存在する発蛍光団から発せられた集光した円錐状の励起光は、回転鏡によって受け止められる。この鏡は、励起光の平行ビームを、試料にどんな発蛍光団が存在していても選択した波長において蛍光シグナルを検出する検出器に投射する。その後、検出された蛍光シグナルは、蛍光光度計がプロセス又は系を観測し及び場合によっては制御するのに用いられることができるように、さらに処理される。
【0019】
回転鏡は、蛍光光度計の使用及び操作を容易にすること、また、与えられた試験期間において複数の試料を蛍光的に観測することが必要とされる場合において、特にこれらを容易にすることが発見された。本発明の蛍光光度計は、与えられた試験期間において試験する一つ又はそれ以上の試料を保持するように構成されている試料ホルダーを含んでいる。試料が試料ホルダーに設置されたならば、集光ビームを一つの試料から次の試料へと、試料ホルダー内の試料の全て又は一部が試験されるまで動かし及び投射するために鏡を回転させることにより、それぞれの試料は別々に又は個別に試験又は分析される。
【0020】
図1又は図2に、本発明の第一の態様が示されている。単一試料鏡映蛍光光度計10は、励起光の平行ビーム17を発生させるために、一連のフィルター及びレンズを通して励起光15を発振することができる、励起光源12を含んでいる。フィルターは、選択した波長域の励起光以外のものを除去又は除外するために用いられる。レンズは、鏡、フィルター、検出器などのような蛍光光度計の構成部品の大きさ及び寸法についての要求に適合するように光の焦点を合わせるために、又は光を平行にするために用いられる。
【0021】
もし励起光源のスペクトル域が十分に狭い又は単色性であったならば、あるいは発蛍光団のストークスシフトが著しく大きいため光源の励起光スペクトルと発蛍光団の発光スペクトルとの間にスペクトルの重複が無かったならば、励起フィルターを使用することは、任意的であることを理解しておく必要がある。
【0022】
どのような数、種類及び構成の励起光源、レンズ及びフィルターであっても励起光の平行ビーム17を発生させるのに用いることができる。本発明の全ての態様において、図1、図2及び図3に示すように、励起光源12は、励起光のビーム15を、非球面レンズ16及び励起フィルター18を通して、励起二色性フィルター14に送る。励起光17の平行ビームは、その後さらに両凹レンズ20及び平凸レンズ22を通して、指向性の鏡26に送られる。指向性の鏡26は、励起光の平行ビーム17を回転鏡24に向ける。両凹レンス20及び平凸レンズ22は、励起光の平行ビーム17が回転鏡24に送られる前に、励起光の平行ビーム17の大きさを調整するため(ここで「調整する」とは、「増やす」を意味する。)に用いられる。
【0023】
図1、図2及び図3においてさらに図示されているように、指向性の鏡26は励起光の平行ビーム17を回転鏡24に向けるために備えられている。指向性の鏡26は、例えば平面鏡等の適切な鏡であれば、どのようなものであってもよい。指向性の鏡の必要性は任意であり、それは蛍光光度計の構成に依存するということを認識する必要がある。また、本発明は、指向性の鏡26の大きさ、種類、形及び回転鏡24に対する位置によって制限されないということも認識する必要がある。
【0024】
励起光の平行ビーム17は、回転鏡24の一面に当たる。励起光の平行ビーム17の一つの光線が回転鏡24に当たる一点を図示するために、特定の交点65を図1及び図2に示す。回転鏡24はその後、集光した円錐状の励起光32を前方に投射し、励起光32は、試料34に当たり、試料中の発蛍光団を励起する。試料34中の発蛍光団はその後、扇状に発散した放出光33の状態で蛍光を発光する。この扇状に発散した放出光33は、試料34から出て回転鏡24の一面に当たる。発散した放出光33の光線が回転鏡24に当たる一つの点を図示するために、特定の交点67を図1及び図2に示す。回転鏡24は、その後、放出された蛍光の平行ビーム35を指向性の鏡26へと前方に投射する。放出された蛍光の平行ビーム35は、その後平凸レンズ22、両凹レンズ20及び放射2色性フィルター46を通って進む。
【0025】
試料は、試料中の一つ又はそれ以上の発蛍光団の存在に起因して、蛍光を発する。本発明の蛍光光度計により検出可能な発蛍光団の説明に関して、本発明の蛍光光度計により検出可能であるためには、発蛍光団は約200nm〜約1200nmの波長において光を吸収する必要があり、そして少しだけ長い波長において光を発する必要があるということに注意する必要がある。好ましくは、発蛍光団は約350nm〜約800nmの波長で光を吸収する。
【0026】
発光二色性フィルター46は、光を発光帯に分離するように働く。それぞれの発光帯は、別個の放射フィルター48又は50を通り抜け、別個の平凸レンズ52又は54を通り抜け、そして別個の検出器56又は58へ至る。それぞれの検出器56又は58は、蛍光発光帯の強度を表す蛍光シグナルとして知られている出力シグナルを発生する。出力シグナルはその後それぞれの増幅器60又は62により処理される。増幅器60及び増幅器62は図1においてのみ示されている。増幅器60及び増幅器62ともに任意的である。増幅器は、検出前に蛍光シグナルを強めることが必要であるか、又は望ましい場合にのみ用いられる。
【0027】
図3に示される本発明の別の態様では、回転鏡24は、図3に示すように、集光した円錐状の励起光32a、集光した円錐状の励起光32b、集光した円錐状の励起光32cを、それぞれ第一試料38、第二試料41及び第三試料43に動かし、また投射するために、回転鏡24が回転することができるように、サンプルホルダー30の開口部28中に配されている。回転鏡24には様々に
異なる大きさ、寸法及び種類の鏡が含まれる。好ましくは、回転鏡24は、軸外放射面鏡を含むものである。この種類の鏡は、集光した円錐状の励起光32aを、回転鏡24に対して軸外の位置において、試料34に投射し、それゆえ、試料に投射される集光した円錐状の励起光32aの量が最大化される。
【0028】
回転鏡24は、手動又は自動等のいかなる好適な機構によっても回転させることができる。鏡は自動的に回転させるのが好ましい。これにより回転をより正確に、的確に制御することができる。鏡の回転の自動化は、例えば入手可能なステッピングモーター機構のような、いかなる好適な方法によって実施されてもよい。ステッピングモーター機構は、以下で述べるように、機内に搭載の、又は外部の制御装置によって制御することができる。
【0029】
回転鏡24は、約360度回転するように、又は一周(すなわち360度)よりも少ない角度で回転するように製作される。一つの実施態様においては、おのおのの試料に集光した円錐状の励起光32を動かし、また投射するために、鏡が360度完全に回転する必要がないように、試料は回転鏡24を完全には取り囲んではいない。
【0030】
上述したように、本発明の回転鏡24により、それぞれの試験毎に試料を取り替える必要なしに数種類の試料を試験することができる。回転鏡24は、蛍光を検出する前に、発光又は蛍光に対する散乱光の比率を最小化することを容易にすることもできる。反射蛍光光度法において、散乱された励起光は、特に不透明な試料において問題である。散乱された励起光は、反射された蛍光発光よりも数倍強い。したがって、散乱光をできるだけ抑制することが望ましい。
【0031】
光学セル及び試料からの望ましくない励起光の反射(すなわち散乱光)は、回転鏡24の焦点を、反射した光の大部分が鏡の収集容量(collection volume)の外側に投射されるように、光学セル上に好適に位置づけることにより最小化することができる。所望の蛍光発光は等方性であるので、それは最大効率で収集でき、それゆえ散乱に対する発光の割合を増加させることができる。
【0032】
特に、図1に示すように光学セルが円形(すなわち円筒型)のガラス管34の場合に、この結果は起こる。このような円形管においては、管上に、光の励起ビームと管表面の接面との間の角度が、集光した散乱光が最小になり集光した放射光が最高になるような、二つの位置(対称的に位置している)が存在する。
【0033】
検出器に送られる散乱光の量を減らすことにより、ノイズ(「ノイズ」とは、例えば、散乱光の検出に相当する蛍光シグナルのことである。)に対するシグナル(「シグナル」とは、蛍光の検出に相当する蛍光シグナルである。)は、最大となる。これにより、ノイズを打ち消したり最小化するために検出器の出力シグナルを処理することなしに、測定された蛍光の、より正確かつ厳密な分析を行うことができる。
【0034】
回転鏡24は、試料に対して、どの好適な部分に位置していてもよく、特に鏡がおのおのの試料へ集光した円錐状の励起光を適切に投射することができるのであれば、試料ホルダー30(図3参照)の開口部28に関して、どの好適な部分に位置していてもよい。
【0035】
試料ホルダー30には、様々な好適な構成のものが含まれる。図3に示すように、試料ホルダー30は開口部28を有する円形あるいはカルーセル形状であり、この開口部をとおして回転鏡24が位置されている。試料(第一試料38、第二試料41及び第三試料43)は、開口部28の外側に位置しているそれぞれのチャンネル36によって保持されている光学セル(図3には示されていない。)中に設置されている。光学セルは、例えば、円筒状、長方形等、どのような好適な形状のものであってもよい。光学セルは、前述したように好ましくは円筒状である。
【0036】
光学セルは、オンライン試験において用いられるフローセル(図示していない。)として構成することもできる。フローセルは、どのような好適な態様によっても構成し、使用することができる。好ましい態様は、もし蛍光光度計が反転されると、液体が蛍光光度計中を適切に流れないようにさせる球体を有するフローセルである。しかしながら、重力とは関係ないフロー制御装置が用いられていたなら、蛍光光度計が完全に反転し、又は0度から360度の間のいずれの角度において傾いていたとしても、蛍光光度計は依然として機能することができる。このようなフローセル制御装置は、この分野においてよく知られたものである。
【0037】
フローセルの構成を備えた蛍光光度計は、工業用水システム等を含む系の一つ又はそれ以上の工程の流れから得られた数種の試料を検出又は試験するために用いることができる。試料は、工程の流れに沿った様々な箇所で採取することもできる。蛍光光度計は、特にオンライン試験用に構成される場合に、工業用あるいは天然の水系のようなプロセス又は系を観測するための、及び必要によっては制御をするための制御装置と通信できるように、適合させることができる。
【0038】
もし用途によって、試験中の試料に対して攪拌、加熱、冷却、通気又は他の有効な操作をすることを必要とするならば、蛍光光度計は、そのような操作を行えるように適応させることもできる。
【0039】
図3は、複数の試料を測定する場合の、蛍光光度計の構成を図示したものである。図3において、回転鏡24は、まず集光した円錐形の励起光32aを第一試料38に導き、この試料は、蛍光40を発散した扇状の放出光として発光する。蛍光40は、次に回転鏡24により集められ、先に詳細に説明した一つ又はそれ以上の検出器に送られる。第一試料38の試験が終わった後、回転鏡24は、集光した円錐形の励起光32bを第二試料41上に動かし、投射するために回転し、今度は第二試料41が、蛍光42を発散した扇状の放出光として発光する。第二試料41の試験後、回転鏡24は、集光した円錐形の励起光32cを第二試料43上に動かし、投射するために回転し、今度は第三試料43が、蛍光44を発散した扇状の放出光として発光する。回転鏡24は、試料の一部又は全てを分析するために、その回転軸にそって、どんな好適な順序及び方向にも回転することができる。
【0040】
試料ホルダー30は、どのような好適な数の試料でも保持するように構成され得ることを認識しておく必要がある。好ましくは、試料ホルダーは、16又はそれ以下の試料を保持するように構成される。この試料の数の制限は、例えば鏡、試料ホルダー、光学的セル等の大きさによるコストのような、実際的な限界を含むものである。試料の数が増えるにつれ、より長い焦点距離を有する鏡が必要とされることを認識しておく必要がある。しかしながら、分析する試料の数が増えても回転鏡の焦点距離内に試料が位置できるように、光学セルの大きさを小さくする必要もある。
【0041】
上述したように、回転鏡24は試料から発せられた蛍光を集める。これは、その後、様々な方法で一つ又はそれ以上の検出器に放出された光を送る。図1、2及び3において図示したように、回転鏡24は、蛍光が検出器に届く前に、蛍光を一連のレンズ及びフィルターを通して送る。レンズは、試料からの反射光のビームの大きさを調整するために用いられる。反射光は、蛍光発光に加えて、例えば散乱光等のような望ましくない光を含んでいる。フィルターは、上記したように、それぞれの発蛍光団からの蛍光シグナルが、より正確に、また厳密に検出されるように、全ての、又は少なくとも望ましくない反射光の一部を、除去又は排除するために用いられる。
【0042】
図1〜3に示すように、回転鏡24は反射光を指向性鏡26に送り、指向性鏡は、反射光を平凸レンズ22、両凹レンズ20及び励起二色性フィルター14を通して、発光二色性フィルター46に導く。発光二色性フィルター46は、検出するために蛍光発光を二つの選択した蛍光発光帯に分割することに用いられる。それぞれの発光帯は、検出器56又は58により検出される前に、別々の発光フィルター48又は50及び平凸レンズ52又は54に通される。それぞれの検出器56又は58は、蛍光発光帯の強度を表す出力又は蛍光シグナルを発生する。出力シグナルは、その後それぞれの増幅器60又は62により処理される。増幅器60及び増幅器62の両方とも、任意的に、この蛍光光度計に含まれるものである。増幅器は、蛍光シグナルをその検出前に増幅することが必要であったり、望ましい場合にのみ用いられる。
【0043】
二つの異なる蛍光発光帯を検出する能力は、種々の異なる適用例において望ましいものである。例えば、蛍光光度計は、種々の工業プロセス及びシステム中の発蛍光団の蛍光シグナルを検出するために用いられる。蛍光光度計の一つの適用例は、例えば、製紙プロセス、工業用水システム等の工業プロセス又はシステムにおいて微生物学的活性を観測することである。
【0044】
本発明は、単一試料からの二つの発光帯を検出することには限定されない。例えば、より簡易に設計したものを、発光ダイオード(LED)、レーザーのような、単色性励起光源によって引き起こされる単一波長励起からの、単一波長発光を検出するのに用いることができる。単一波長検出蛍光光度計が、反射光を二つの発光帯に互いに直角で分離するのに用いられる第二の二色性フィルター(すなわち、発光二色性フィルター)を含んでいないという点を除いては、単一波長発光を検出するための蛍光光度計の構造は、二つの蛍光発光帯を検出できる蛍光光度計の構造に基本的に類似している。
【0045】
本発明は、多波長走査反射蛍光光度計として設計することもできる。この構成においては、蛍光光度計はスペクトル域において蛍光発光を検出することができる。これにより、蛍光光度計は、異なる励起光及び発光帯の光を吸収し、発光する一つ又はそれ以上の発蛍光団を検出及び/又は観測することができる。
【0046】
ある態様においては、回転鏡に到達する前にモノクロメーター又は格子を通して送信又は走査されるスペクトル域の励起光を発生するために、キセノンランプ等の多色性励起光源が用いられる。集められた光(すなわち、回転鏡により集められた試料からの反射光)は、所望の蛍光発光を分離するためにモノクロメーターによって同様に処理される。または、集められた光は、光ファイバー上に集光され、光ファイバー分光計又はモノクロメーターに送られる。言い換えれば、蛍光光度計が、各試料に存在する数種の異なる発蛍光団から出る蛍光発光スペクトルを検出できるように、励起光及び発光の両方が走査される。
【0047】
鏡、レンズ、フィルター、検出器、増幅器及び励起光源には、種々の好適な市販されている又は既知の製品が含まれるということを認識する必要がある。例えば、平面鏡(部品番号 01MFG013/23)、軸外放物面鏡(部品番号 02P0A013)、大凸面鏡(部品番号 01LPX129)、両凹レンズ(部品番号 01LDK007)、非球面レンズ(部品番号 01LAG111)及び平凸レンズ(部品番号 01LPX061)が、メレスグリオ社(92614カリフォルニア州、アーバイン、ケターリングストリート、1770、 (714)261-5600)から市販されている。励起フィルター(部品番号 535DF35)、励起二色性フィルター(部品番号 560DRLP)、発光二色性フィルター(部品番号 630DRLP)、発光フィルター(部品番号 580DF35)及び発光フィルター(部品番号 635DF55)が、オメガオプティカル社(05302バーモント州、ブラトレボロ、私書箱573、 (802)254-2690)から市販されている。増幅器(部品番号 Burr-Brown AFC2101)は、バーブラウン社(85706アリゾナ州、タクソン、タクソンビル、6730S、 (520)746-1111)の市販の二重電流インテグレーター(dual current integrator)である。光ダイオード(S2386-5K)等の検出器は、ハママツ社(08807ニュージャージー、ブリッジウォーター、フットヒルロード360)から市販されている。
【0048】
本発明は、処理制御、観測及び自動化を最適化するために、種々の異なる、付加的な構成部品を含むことができる。本発明の第二の態様においては、蛍光光度計は、それぞれが好適で既知の構成において(図示しない。)、制御装置に接続したプリント基板アセンブリを含むものである。例えば、本発明の第二の態様において使用するのに適した市販の制御装置は、テクノバ社(60031イリノイ州、ガーニー、セントポールアヴェニュー1486、(847)662-6260)から購入できる。
【0049】
本発明の第二の観点の蛍光光度計に好適なプリント基板(PCB)アセンブリは、制御装置又は蛍光光度計の構成部品である他のデバイス(例えば、回転鏡のモーター、励起源のドライバー並びに電流−電圧変換及び光検出器からのシグナル増幅を実行する増幅器を含む。)により動力供給するように組み立てられるべきである。シグナルを操作し、シグナルの大きさを伝達するための回路もまた、PCBにとっては不可欠である。温度及び/又はフロースイッチの状態を測定する付加的な回路が含まれていてもよい。
【0050】
蛍光光度計は、前記したように、さらに蛍光光度計の部品を制御するために、制御装置が蛍光光度計と電気的に通信できる通信ケーブルによって、制御装置に接続されていてもよい。好適な通信プロトコルは、蛍光光度計を操作する観点から、選択されるべきである。好適な標準的通信プロトコルは、RS−232、IC、CAN、TCP/IP及び標準RS−485シリアル通信プロトコルを含むが、これらに限定されない。好ましい通信プロトコルは、標準RS-485シリアル通信プロトコルである。また、蛍光光度計と制御装置との間で、ワイヤレス通信プロトコルを用いることも可能である。そのような好適なワイヤレス通信プロトコルの一つは、ブルートゥースである。
【0051】
制御装置は、分離した、多数のアナログ入力を含んでいる。これらの入力は、4〜20mAの通信を通して、それらのシグナルの大きさに基づく情報を提供する。シグナルは、アナログ入力によって読まれる。これは、例えば、工業用水システムに対して、付加的なレベルの制御を提供するための制御装置のロジックを制御するためである。好ましい態様においては、制御装置は20個の別個のアナログ入力を有している。
【0052】
前の段落で述べたように、制御装置は、4〜20mAの通信ラインにおいて利用可能なシグナルを処理することができる。これらのシグナルは、他の分析装置に加え、蛍光光度計から発生したものであってもよい。それゆえ制御装置は、以下に挙げるものを含むシステムの要素を測定するための、分析装置からのシグナルを処理することができる。ただし、システムの要素は以下に挙げるものに限定されるものではない:
pH、
伝導性、
酸化還元電位又は「ORP」、
カルシウム、マグネシウム、全硬度、鉄、銅、塩化物、硫酸塩、マグネシウム、アルミニ
ウム、シリカ、アルカリ度及びアンモニア等の化学的観測、
分散性ポリマー、亜鉛、モリブデン酸塩、リン酸塩、濃縮無機リン酸塩、ホスホン酸塩及
びトリアゾール誘導体等の処理活性物の付加的な化学的観測、
濁度、
全懸濁物、
処理における漏れ、
遊離残留物及び全酸化剤/ハロゲン/塩素、
水温、
システムにおける種々の場所での処理側の温度、
水側及び/又は処理側の液体流速、
液体速度、
流体圧力及び水側及び/又は処理側の圧力差、
化学物質リスト/用法、
化学的汲み上げ速度、
ブローダウン速度、
補給水速度、
腐食観測、
付着物/沈殿物観測、
微生物標識、及び
水中物質の吸光度。
【0053】
アナログ入力に加えて、制御装置は、蛍光光度計以外の他の装置を制御することができるように、十分な数のアナログ出力を有している。このようにして、制御装置は、工業用水システム、製紙プロセス等の全体のプロセス又はシステムを操作することができる。
【0054】
工程の自動化、本発明の蛍光光度計又は数種の蛍光光度計を使用するシステムの制御及び観測を容易化するために、種々の異なるそして複数の制御装置を用いることができるということを認識しておく必要がある。例えば、第二の制御装置は、例えば、本発明の蛍光光度計によって観測される工業用水システムの処理水に加えられる付加的化学物質の割合を制御するために、任意的に使用することができる。第二の制御装置をもし用いるとしたならば、上記制御装置と接続されていてもよい。好ましくは、第二の制御装置は、不活性TRASAR(登録商標)システムを制御する。この不活性TRASAR(登録商標)システムは、Nalcoから市販されている。
【0055】
前記したように、本発明の蛍光光度計は、自然水システム、工業用水システム、製紙プロセスのようなものを含む、適切なプロセス又はシステムから取り除かれる試料中の一つ又はそれ以上の発蛍光団の存在を観測及び検出するために用いられる。試料としては、例えば、懸濁液又はスラリー等の不透明光散乱物質を有する、製紙プロセスの原材料又は被覆試料を含む。
【0056】
工業用水システムには、冷却塔水システム(開放循環系、閉鎖系、および貫流系を含む);油井、穴(downhole)形成、地熱井及び他の石油分野の用途;給湯タンク及び給湯水システム、鉱物洗浄を含む鉱物処理水、遊離選鉱及びベネファクション(benefaction);製紙用蒸解剤、洗浄機、漂白設備及び白濁水(white water)システム;パルプ工業における黒液蒸留器;ガス洗浄器及び空気洗浄器:冶金工業における連続鋳造プロセス;エアーコンディショニング及び冷蔵システム;工業用及び石油プロセス水;低温殺菌水のような、間接接触冷却及び加熱水;水処理及び精製システム;膜ろ過水システム;食物処理システム(肉、野菜、砂糖ビート、サトウキビ、穀物、鶏肉、果物及び大豆);浄化槽、液体−固体アプリケーション、下水処理、および工業用水あるいは水道水系におけるものの他の、汚水処理システム、が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の蛍光光度計によって分析するのに適した不透明媒体には、例えば、鉱物処理工業において使用され、パルプ及び紙工業において使用され、セラミック工業において使用され、塗装工業において使用され、及び天然又は工業プロセスにおいて使用される他の不透明懸濁液又は不透明コロイド又は不透明金属加工油等の本発明の方法により処理可能な特定の懸濁液、コロイド、及び金属加工油が含まれる。
【0058】
本発明の蛍光光度計を用いて一連の試料を試験する場合には、ワンチャンネル試料の蛍光光度計(すなわち、試料が試験された後、次の試料が試験される前に、試料を物理的に取り除き、次の試料に取り替えることが必要な蛍光光度計)に比べて、操作者は、より少ない時間、より少ない努力、より少ない操作しか必要としない。この点において、本発明の蛍光光度計は、薄いフィルムや層をなした懸濁液等の脆い又は混合に過敏な物質を試験するのによく適している。さらに、複数試料を試験するための本発明の蛍光光度計の操作を簡易にすることにより、本発明は、現場への応用に望ましい及び/又は適したものである。
【0059】
本発明の蛍光光度計は、許容できる構成の態様において種々の部品を含んでいてもよい。本発明の蛍光光度計は、例えば、分析される試料の数、励起光及び発光の波長領域、データ収集の速度、試料表面の一次元走査、散乱強度に対する蛍光の比率の最適化等を含む、特定の応用に適合するように複数の特別の構成をとることができる。
【0060】
本発明の蛍光光度計は、例えば以下の米国特許出願において開示されている種々の工業用水システムへの適用において使用することができる。
【0061】
本発明の蛍光光度計及び制御装置は、「冷却水システム制御用制御マトリックスの使用」という名称で、2000年5月1日に出願され、現在係属中である米国特許出願09/562,397(この全体が参考文献として組み込まれている。)において記載及びクレームされている冷却水システムを制御するために機能することができる。
【0062】
本発明の蛍光光度計及び制御装置は、「給湯タンクの制御のための制御マトリックスの使用」という名称で、2000年5月1日に出願され、現在係属中である米国特許出願09/563,085、「給湯タンクの制御のための制御マトリックスの使用」という名称で、2000年12月13日に出願され、現在係属中である米国特許出願09/737,257(これらの全体が参考文献として組み込まれている。)において記載及びクレームされている給湯タンクを制御するために機能することができる。
【0063】
上記の方法に加えて、本発明の蛍光光度計は、継続中で、出願番号が09/475,585であり、1999年12月30日に出願された、米国特許出願「工業用水システムにおける定着性及びプランクトン微生物学的活性の測定及び制御」(これらの全体が参考文献として組み込まれている。)に記載及びクレームされた方法を実施するのに用いることができる。米国特許出願09/475,585において記載及びクレームされている方法を実施するために本発明の蛍光光度計を使用する時には、未反応の蛍光性色素及び反応した蛍光性色素の蛍光的シグナルが両方とも測定され、必要な比率を計算するために使用されるように、蛍光光度計が構成される必要がある。
【0064】
本発明の蛍光光度計は、例えば、不透明懸濁液又は不透明コロイド又はある種の不透明金属加工油等の不透明媒体の微生物学的活性を観測及び任意的に制御するために用いることができる。
【0065】
ある種の不透明媒体は、製紙のプロセスの流れから発生するプロセス流を含んでいる。例えば、蛍光光度計は、製紙プロセスの原料又は被覆試料の微生物学的活性を検出するのに用いられる。これは、原料又は被覆試料が、プロセスにおいて用いることができない、又は使用前に処理が必要であるというレベルの、微生物学的活性を示しているかどうかを決定するために用いられる。
【0066】
実施態様としては、蛍光性色素は微生物学的活性を観測するのを容易化するのに用いることができる。蛍光性色素は、上記したように活性を観測するために蛍光的に測定できる、レザルリン及びレゾルフィン等の複数の要素を含むことができる。
【0067】
本発明の蛍光光度計は、「不透明媒体における微生物学的活性の蛍光測定」とう名称で共に出願した米国特許出願、この特許出願と同時に2001年6月28日に出願した代理人明細書5689(これらの全体が参考文献として組み込まれている。)に記載及びクレームした方法において用いることができる。
【0068】
以下の実施例は、本発明の説明に役に立つものとして示したものであり、本発明の製造方法及び使用方法を当業者に教示するため示したものである。この実施例は、決して発明の範囲又は権利範囲を制限を意図するものではない。
【実施例】
【0069】
本発明の蛍光光度計が、微生物学的活性を、特に製紙プロセスの原料又は被覆試料の微生物学的活性を観測するのに用いることができることを実証するために、実験室的試験が行われた。そのようなプロセスをシュミレートするために、九つの不透明媒体の試料が、製紙プロセスの原料又は被覆サンプルの不透明光散乱特性をシュミレートするために準備された。それぞれのサンプルは、10ミリリッター(mL)の円筒型のガラス管に入れられた。それぞれの試料には、25ppmの蛍光性染料が加えられた。先に組み込んだ参考文献である「懸濁液又はコロイド中の微生物学的活性の蛍光的測定」という発明の名称の米国特許出願において記載及びクレームされたように、サンプル中の蛍光性染料として、種々の微生物的活性レベルをシュミレートするために、量を変えて、既知の量のレザズリン及びレゾルフィンを含ませた。データは下記の表1に記載されている。
【0070】
準備すると直ぐに、それぞれの試料は、色素成分の存在を検出するために鏡映蛍光光度計に入れられる。使用された蛍光光度計は、図1及び2において示した蛍光光度計のように構成されたものである。この種類の構成は、単一試料中のレサズリン及びレゾルフィンの両方の存在を検出するのに適している。レサズリン及びレゾルフィン共に、約525nmの励起光の平行ビームによって励起される。レサズリン及びレゾルフィンは、蛍光を異なる発光帯において放射する。特に、20mAの電流で、約525nmに発光中心がある発光ダイオードが用いられる。加えて、二色性発光フィルターが、635nmにおいて発光するレサズリン蛍光と、580nmにおいて発光するレゾルフィン蛍光とを分離選択するために使用される。それぞれの蛍光シグナル発光の大きさは、別個の検出器によって検出され測定される。
【0071】
下記の表1に示すように、強度比すなわちレサズリン発光の強度(「I635」)(代理人明細書5689からの「蛍光性色素」)に対するレゾルフィン発光の強度(「I580」)(代理人明細書5689では、別名「反応した蛍光性色素」)の比率は、色素中のレゾルフィンの量が増加するに従い増加する。
【0072】
【表1】

【0073】
表1の上記結果は、レゾルフィンの濃度変化に対して、強度比の変化の間に相互関係があることを示している。このように、レゾルフィン及びレサズリンの蛍光発光を測定することにより、生物学的活性の量を定量化することができる。
【0074】
前記したように、微生物の存在下において、レサズリンはレゾルフィンに変換されるため、微生物学的活性の量が増加するに従いレゾルフィンの量が増加する。このように、強度比の増加はレゾルフィンがより多く存在することを示し、すなわち生物学的活性が増加したことを示している。
【0075】
これらの結果に基づいて、本発明の蛍光光度計は、一つ又はそれ以上の試料の微生物学的活性を検出又は観測するために用いることができる。
【0076】
ここで述べた現在好ましい態様に対する種々の変更及び修正は、当業者にとって明白であるということを理解する必要がある。そのような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から離れずに、そして付随する利点を減少せずに、行うことができる。そのため、そのような変更及び修正についても、添付した特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光の平行ビームを発生する励起光源、
前記励起光源からの光の平行ビームを受けることができ、そして一つ又はそれ以上の試料に対し集光した円錐状の励起光を照射することができ、一つ又はそれ以上の試料から発光される未反射の蛍光を受けることができるように位置されている回転鏡、
それぞれのチャンネルが試料の入った光学セルを保持することが可能な、一つ又はそれ以上のチャンネルを有する試料ホルダー、及び
前記一つ又はそれ以上の試料に存在する発蛍光団からの等方的蛍光シグナルを検出することができる検出器、
を含む蛍光光度計であって、
前記等方的蛍光シグナルは前記回転鏡を介して前記検出器に到達することを特徴とする蛍光光度計。
【請求項2】
前記鏡が、360度回転することができる請求項1に記載の蛍光光度計。
【請求項3】
前記鏡が、軸外放物面鏡である請求項1に記載の蛍光光度計。
【請求項4】
前記試料ホルダーが、開口部を有しており、この開口部を通して励起光の平行ビームを光学セルに照射することができるように前記鏡が位置されている請求項1に記載の蛍光光度計。
【請求項5】
前記光学セルが、円筒状のガラス管を含んでいる請求項4に記載の蛍光光度計。
【請求項6】
前記光学セルが、オンライン試験用のフローセルを含んでいる請求項4に記載の蛍光光度計。
【請求項7】
回転する前記回転鏡上へ、前記励起光の平行ビームを向けるように位置されている指向性鏡をさらに含む、請求項1に記載の蛍光光度計。
【請求項8】
前記励起光源が、単色性光源又は多色性光源を含む請求項1に記載の蛍光光度計。
【請求項9】
前記試料が、製紙プロセスの原料又は被覆試料から得られる請求項1に記載の蛍光光度計。
【請求項10】
前記光学セルが、オンライン観測及び必要に応じた制御のための、フローセルを含む請求項1に記載の蛍光光度計。
【請求項11】
励起光の平行ビームを発生する励起光源、
前記励起光源からの光の平行ビームを受けることができ、そして一つ又はそれ以上の試料に対し集光した円錐状の励起光を照射することができ、一つ又はそれ以上の試料から発光される未反射の蛍光を受けることができるように位置されている回転鏡、
それぞれのチャンネルが試料の入った光学セルを保持することが可能な、一つ又はそれ以上のチャンネルを有する試料ホルダー、
前記一つ又はそれ以上の試料に存在する発蛍光団からの蛍光シグナルを検出することができる検出器、及び
試料が採取された天然又は工業プロセスを観測及び、必要に応じて制御するために、前記蛍光光度計によって検出された蛍光シグナルを使用する制御装置、
を含む蛍光光度計であって、
前記蛍光シグナルは前記回転鏡を介して前記検出器に到達することを特徴とする蛍光光度計。
【請求項12】
工業用水システムを観測及び、必要に応じて制御するために、蛍光シグナル及び他のアナログ入力を前記制御装置が使用できるように、前記制御装置が一つ又はそれ以上の分離したアナログ入力及び出力を含む請求項11に記載の蛍光光度計。
【請求項13】
製紙プロセスから得られた原料又は被覆試料の微生物学的活性を観測及び、必要に応じて制御するために、前記制御装置が蛍光シグナルを処理することを特徴とする請求項12に記載の蛍光光度計。
【請求項14】
(a)励起光の平行ビームを発生する励起光源、
前記励起光源からの光の平行ビームを受けることができ、そして一つ又はそれ以上の試料に対し集光した励起光のビームを照射することができ、一つ又はそれ以上の試料から発光される未反射の蛍光を受けることができるように位置されている回転鏡、
それぞれのチャンネルが試料の入った光学セルを保持することが可能な、一つ又はそれ以上のチャンネルを有する試料ホルダー、
前記一つ又はそれ以上の試料に存在する発蛍光団からの蛍光シグナルを検出することができる検出器、を含む蛍光光度計であって、前記蛍光シグナルは前記回転鏡を介して前記検出器に到達することを特徴とする蛍光光度計の提供、
(b)天然又は工業的プロセス流れからの一つ又はそれ以上の試料の提供、及び
(c)前記試料中の前記発蛍光団の蛍光シグナルを検出するための前記蛍光光度計の使用、
からなる工程を含む、一つ又はそれ以上の試料に存在する発蛍光団を蛍光的に検出する方法。
【請求項15】
前記検出した蛍光シグナルが、製紙プロセスからの原料中又は被覆試料中に存在する発蛍光団のものである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
任意で試料が採取された天然又は工業プロセスを観測及び必要に応じて制御するために、前記蛍光光度計によって検出された蛍光シグナルを使用する制御装置を提供する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−47949(P2011−47949A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232619(P2010−232619)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願2003−508910(P2003−508910)の分割
【原出願日】平成14年5月3日(2002.5.3)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】