説明

鏡板の成形方法

【課題】鏡板の膨出部をその底部からの位置精度を高精度に成形することができる成形方法を提供する。
【解決手段】鏡板Kを、開口部の内径が基部よりも大径に形成された型内に挿入して保持せしめた後、型と鏡板とを一体的に回転させた状態で、第1押圧ローラの外周面を鏡板の開口端部内周面に押し当てて、鏡板Kの開口端部を型の内周面に押し付け、この開口端部を外広がりのテーパ状に拡径させる第1工程と、鏡板Kの外底面Kaを基準面27に押し当てた状態で鏡板Kを回転させるとともに、突条部36a及び縮径部36bを有する型ローラ36を鏡板Kの拡径部内周面に当接させ、ついで、第2押圧ローラの外周面を鏡板Kの拡径部外周面に押し当てて、この鏡板Kの拡径部を型ローラ36の外周面に押し付け、当該拡径部を型ローラ36の縮径部36bに沿わせてテーパ状に縮径させる第2工程とを順次実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端が開口した円筒状の胴部の前記両端部にそれぞれ固着されて、閉塞した中空のタンクを構成する椀状の鏡板であって、更に詳しくは、前記胴部内に差し込まれる縮径部と、前記胴部の内径よりも大径の外径を有し、前記胴部の端面に当接する膨出部とをその開口端部に備えた鏡板において、その前記縮径部及び膨出部を成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の鏡板としては、従来、例えば特開2009−183963号公報に開示されるような、給湯器用の貯湯タンクを構成するものが知られている。
【0003】
図4に示すように、この貯湯タンク100は、両端が開口した円筒状の胴部101と、この胴部101の両開口部にそれぞれ固着される2つの鏡板102,102とからなる。各鏡板102,102は、それぞれ胴部101内に差し込まれるテーパ状の縮径部102a,102aと、胴部101の内径よりも大径の外径を有し、胴部101の端面に当接する膨出部102b,102bとを備えており、縮径部102a,102aが胴部101内に差し込まれ、且つ膨出部102b,102bがそれぞれ胴部101の端面に当接した状態で、当該当接部103,103が溶接によって接合される。
【0004】
そして、このような、鏡板102の縮径部102a及び膨出部102bを成形する方法としては、従来、プレス加工によるものが知られている。このプレス加工による成形方法は、図5に示すように、椀状をした鏡板102の外底面の形状に一致する凹部111を備えた下型110と、開口部に向けて拡径し、当該開口部の内径がプレス加工前の鏡板102の開口部外径よりも大径となったテーパ穴116を有する上型115とを上下に対向配置し、前記加工前の鏡板102を、その底部側を下にして前記凹部111内に収納し、この状態で前記上型115を下方に移動させ、その内周面で鏡板102の開口端部を押打することにより、図5において2点鎖線で示すように塑性変形させ、前記縮径部102aと膨出部102bとを成形するというものである。
【0005】
尚、図4及び図5において、胴部101及び鏡板102の断面部分へのハッチングは、これを省略している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−183963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した従来のプレス加工による成形では、鏡板102の開口端部における自由度が高いため、成形される膨出部102bの、前記外底面からの位置にバラツキを生じるという問題があった。このバラツキは、加工される複数の鏡板102の相互間でも生じ、また、1個の鏡板102においても、膨出部102bの各部でその外底面からの位置が異なっていた。
【0008】
このため、後工程の自動溶接工程において、胴部101の端面と膨出部102bとの当接部の溶接を適切に行うことができないという溶接不良が多発していた。即ち、前記自動溶接は、図4に示すように、上下の鏡板102,102をそれぞれ胴部101内に嵌め込んだ起立状態で行われるが、上記のように、外底面からの膨出部102bの位置にバラツキを生じると、胴部101の端面と膨出部102bとの当接部103の高さ位置に変動をきたすため、溶接位置が定位置に設定された自動溶接では、当接部103と溶接位置とが一致せず、溶接不良となるのである。また、1個の鏡板102において膨出部102bの高さ位置が変動している場合にも、同様に、当接部と溶接位置とが一致していない箇所において溶接不良となる。そして、このような溶接不良が生じると、高い液密性が要求される貯湯タンクの基本的な機能が確保されない。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、鏡板の縮径部及び膨出部を成形する方法において、膨出部の底部からの位置精度を高精度に成形することができる成形方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、両端が開口した円筒状の胴部の前記両端部にそれぞれ固着されて、閉塞した中空のタンクを構成する椀状の鏡板であって、
前記胴部内に差し込まれる縮径部と、前記胴部の内径よりも大径の外径を有し、前記胴部の端面に当接する膨出部とをその開口端部に備えた鏡板の前記縮径部及び膨出部を成形する方法において、
一方が開口した円筒状を有し、且つ該開口部の内径が基部よりも大径に形成された型内に、前記鏡板を、その外底面が前記型の内底面に当接するように前記開口部から挿入して保持せしめた後、前記型と鏡板とを一体的にその軸心を中心に回転させた状態で、軸中心に回転可能な第1押圧ローラの外周面を前記鏡板の開口端部内周面に押し当てて、該鏡板の開口端部を前記型の内周面に押し付け、該開口端部を外広がりのテーパ状に拡径させる第1工程と、
前記鏡板の外底面を基準面に押し当てた後、該鏡板をその軸心を中心に回転させるとともに、外周部に周方向に沿って外側に突出した突条部を有し、外径が該突条部から端面に向けてテーパ状に縮径した型ローラを、前記拡径後の鏡板内で、前記テーパ部が該鏡板の開口側に位置するように配置し、且つ該鏡板の開口端部内周面と当接可能な位置であって、前記基準面から予め設定された距離だけ離れた位置に位置決めし、ついで、軸中心に回転可能な第2押圧ローラの外周面を該鏡板の開口端部外周面に押し当てて、該鏡板の開口端部を前記型ローラの外周面に押し付け、該開口端部をテーパ状に縮径させる第2工程とを順次実施するようにした鏡板の成形方法に係る。
【0011】
この発明によれば、まず、前記第1工程が実施される。即ち、鏡板を前記型内に挿入して、当該型内に保持させた後、鏡板を前記型と共に一体的に回転させる。そして、このようにして回転させた状態で、鏡板の開口端部内周面に第1押圧ローラの外周面を押し当て、鏡板の開口端部を型の内周面に押し付ける。斯くして、これにより、鏡板の開口端部が拡径され、外広がりのテーパ状に成形される。
【0012】
次に、第2工程において、拡径後の鏡板の当該拡径部を縮径する成形を行う。即ち、まず、拡径後の鏡板の外底面を所定の基準面に押し当てた後、該鏡板を、その軸心を中心に回転させるとともに、前記型ローラを、そのテーパ部が鏡板の開口側に位置するように配置し、且つ鏡板の開口端部内周面と当接可能な位置であって、前記基準面から予め設定された距離だけ離れた位置に位置決めする。
【0013】
ついで、軸中心に回転可能な第2押圧ローラの外周面を該鏡板の開口端部外周面に押し当てて、拡径後の鏡板の開口端部を型ローラの外周面に押し付ける。これにより、当該鏡板の開口端部に、型ローラの外周面に応じた形状、即ち、周方向に沿って外方に突出した膨出部と、この膨出部から端面に向けてテーパ状に縮径した縮径部とが成形される。
【0014】
このように、本発明によれば、鏡板の膨出部及び縮径部が、第1工程の型及び第2工程の型ローラによって成形されるので、その形状精度が極めて高精度なものとなる。また、第2工程の型ローラを鏡板の外底面に対して所定位置に位置決めするようにしているので、外底面に対する膨出部の位置を、加工される複数の鏡板相互間で均一にすることができ、同時に、1個の鏡板においても、その膨出部各部の外底面からの位置を一定にすることができる。
【0015】
したがって、上下の鏡板をそれぞれ胴部内に嵌め込んだ起立状態で行う後工程の自動溶接工程において、胴部端面と膨出部とが当接する高さ位置を一定にすることができ、当該当接部と溶接位置とを一致させることができる。このため、自動溶接であっても、当該当接部を確実に溶接することができ、液密性の高いタンクを製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、外底面を基準とした膨出部の位置を、加工される複数の鏡板相互間で均一にすることができ、また、1個の鏡板においても、その膨出部各部の外底面を基準とした位置を一定にすることができる。したがって、後工程の自動溶接工程において、胴部端面と膨出部との当接部を確実に溶接することができ、液密性の高いタンクを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る第1工程の内容を説明するための説明図であり、当該第1工程を実施するためのスピニング加工機の要部を示した平面図である。
【図2】本実施形態に係る第2工程の内容を説明するための説明図であり、当該第2工程を実施するためのスピニング加工機の要部を示した平面図である。
【図3】図2に示したスピニング加工機の正面図である。
【図4】本発明に係る鏡板を説明するための正断面図である。
【図5】従来の鏡板の成形方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態に係る鏡板の成形方法について説明する。本実施形態に係る成形方法は、椀状をした鏡板Kの開口端部を拡径する第1工程と、拡径した前記開口端部に膨出部と縮径部とを成形する第2工程とからなる。尚、図1には、第1工程を実施するためのスピニング加工機の主要部を示し、図2には、第2工程を実施するためのスピニング加工機の主要部を示している。以下、各工程の詳細について説明する。
【0019】
1.第1工程
図1に示すように、第1工程を実施するためのスピニング加工機1は、その主軸2にこれと同軸に装着される円筒状をした型3と、心押台(図示せず)に装着される挟持機構10と、送り台(図示せず)に装着される押圧機構15とを備える。
【0020】
前記型3は、主軸2に装着される側とは反対側が開口しており、その円筒内周面4の内径は、鏡板Kの外径よりも僅かに大きく、当該鏡板Kをしっくりと挿入できる大きさとなっている。また、その内端面(内底面)には、鏡板Kの外底面Kaが当接する当該外底面Kaに一致する凹曲面状の当り面5が形成され、更に、当該内端面中心部には盗み穴6が形成されている。また、開口端部の内周面4にはその外端面に向けてテーパ状に拡径する拡径部7が形成されている。
【0021】
前記挟持機構10は、フランジ11とこれに連結された軸部13とからなり、当該軸部13が、軸中心に回転自在に前記心押台(図示せず)に支持された心押軸(図示せず)に固着され、前記主軸2に対して進退する心押軸(図示せず)の動作によって、当該挟持機構10が前記主軸2に対して進退する。尚、フランジ11の前端面12は、鏡板Kの内底面Kbに一致する凸曲面状に形成されている。
【0022】
前記押圧機構15は、そろばん珠状をした押圧ローラ(第1押圧ローラ)16と、支持軸18及びこれに外嵌されたベアリングを介して、前記押圧ローラ16をその中心軸を中心に回転自在に支持するフォーク状をしたホルダ17とからなる。そして、このホルダ17は、押圧ローラ16の軸線が主軸2の軸線を含む水平面内に位置するように、前記送り台(図示せず)に固着されている。尚、送り台(図示せず)は主軸2の軸線に沿った方向とこれに直行する方向(半径方向)の直交2軸方向に駆動される。また、図示するように、この押圧機構15は、主軸2の軸線に対し交差するように配設されており、押圧ローラ16の突出した外周面が、鏡板Kの開口端部内周面に当接するようになっている。
【0023】
斯くして、この第1工程では、まず、挟持機構10及び押圧機構15を後方に後退させた状態で、鏡板Kを、その開口部が型3の開口側に位置し、その外底面Kaが型3の当り面5に当接するように型3内に挿入する。
【0024】
ついで、挟持機構10を前進させ、フランジ11の前端面12によって鏡板Kの内底面Kaを押圧することにより、型3及びフランジ11によって鏡板Kを挟持する。そして、このようにして鏡板Kを挟持した状態で主軸2を回転させ、型3及び鏡板Kを主軸2と共に回転させる。その際、鏡板Kを押圧している挟持機構10も共に回転する。
【0025】
次に、押圧機構15を前進させて、押圧ローラ16を、その突出した外周面が、型3の内周面4と拡径部7との境界部内側に位置するように移動させ、ついで、図1において、一点鎖線の矢印で示すように、押圧ローラ16を、その前記突出外周面が鏡板Kの開口端部内周面を押圧するように半径方向に移動させ、しかる後、押圧ローラ16による押圧が維持されるように、当該押圧ローラ16を半径方向外側に向けた移動と後退する移動とを合成した斜め方向に移動させる。
【0026】
これにより、鏡板Kの開口端部が型3の拡径部7に押し付けられ、当該拡径部7に倣って外広がりのテーパ状に拡径される。その際、押圧ローラ16は、回転自在に支持されているので、鏡板Kの内周面に当接すると自体回転し、これにより押圧ローラ16と鏡板Kとの摺接が回避され、鏡板Kに滑り摩擦による過大な負荷が作用するのが回避される。
【0027】
次に、このようにして、押圧ローラ16が鏡板3の開口端部内周面を押圧し、同部を拡径させた後、当該鏡板Kから離れると、押圧機構15及び挟持機構10を後退させて原位置に復帰させると共に、主軸2の回転を停止して、型3及び鏡板Kの回転を停止する。そして、回転停止後、成形後の鏡板Kを型3内から取り外す。
【0028】
第1工程では、以上のようにして、鏡板Kの開口端部を、外広がりのテーパ状に拡径した形状に成形する。
【0029】
2.第2工程
図2及び図3に示すように、第2工程を実施するためのスピニング加工機20は、その主軸22にこれと同軸に装着される円筒状をした保持部材25と、主軸22の軸線方向に沿って前後動する心押台(図示せず)に装着される挟持機構30と、第1送り台(図示せず)に装着される押圧機構45と、主軸22の軸線を境として、前記押圧機構45と同じ領域に配設される第1支え機構35と、前記押圧機構45とは反対側の領域に設けられる第2送り台(図示せず)に装着される切断機構50と、この切断機構50と同じ領域に設けられる第2支え機構40と、制止機構55とを備える。
【0030】
前記保持部材25は、主軸22に装着される側とは反対側が開口しており、その円筒内周面26の内径は、鏡板Kの外径よりも僅かに大きく、当該鏡板Kをしっくりと挿入できる大きさとなっている。また、その内端面(内底面)には、鏡板Kの外底面Kaが当接する当該外底面Kaに一致した凹曲面状の当り面27が形成され、更に、当該内端面中心部には盗み穴28が形成されている。
【0031】
前記挟持機構30は、フランジ31とこれに連結された軸部33とからなり、当該軸部33が、前記心押台(図示せず)に支持された心押軸(図示せず)に固着され、心押軸(図示せず)の進退動作によって、当該挟持機構30が前記主軸2に対して進退する。また、フランジ31は、ベアリング34を介して回転自在に軸部33に装着され、その前端面32は、鏡板Kの内底面Kbに一致する凸曲面状に形成されている。斯くして、この挟持機構50は、心押軸(図示せず)が前進することによりこれとともに前進して、保持部材25内に挿入された鏡板Kの内端面Kbをフランジ31の前端面32によって押圧し、当該鏡板Kを挟持する。
【0032】
前記押圧機構45は、概略形状が円錐台状をなし、その大径側端部に周方向に沿って外側に突出した突条部46aを有する押圧ローラ(第2押圧ローラ)46と、支持軸48及びこれに外嵌されたベアリングを介して、前記押圧ローラ46をその軸心に回転自在に支持するフォーク状をしたホルダ47とを備える。そして、ホルダ47は、押圧ローラ46の軸線が主軸22の軸線を含む水平面内に位置するとともに、主軸22の軸線と平行になり、且つ当該ホルダ47から突出した突条部46aが主軸22の軸線側に位置するように、第1送り台(図示せず)に固設されている。
【0033】
尚、前記第1送り台(図示せず)は、適宜駆動手段により、水平面内で主軸22の軸線に沿った方向とこれに直行する方向(半径方向)の直交2軸方向に駆動されて、同水平面内で移動可能になっており、前記押圧機構45はかかる第1送り台(図示せず)とともに移動して、その前記突条部46aが、保持部材25内に挿入された鏡板Kの開口端部外周面に当接可能となっている。
【0034】
前記第1支え機構35は、外周部に周方向に沿って外側に突出した突条部36a、及び外径が当該突条部36aから一方の端面に向けてテーパ状に縮径した縮径部36bを有する型ローラ36と、支持軸38及びこれに外嵌されたベアリングを介して、前記型ローラ36をその軸中心に回転自在に支持するフォーク状をしたホルダ37とを備えている。そして、ホルダ37は、型ローラ36の縮径部36bとは反対側の端面が前記保持部材25側に面し、当該型ローラ36の軸線が主軸22の軸線を含む水平面内に位置するとともに、当該主軸22の軸線と平行になり、且つ当該型ローラ36が前記押圧機構35側に位置するように、前記軸部33の外周面に固設されている。
【0035】
前記切断機構50は、円錐台状をなし、大径側のエッジが切れ刃51aとなったカッタ51と、支持軸53及びこれに外嵌されたベアリングを介して、前記カッタ51をその軸心に回転自在に支持するフォーク状をしたホルダ52とを備える。そして、ホルダ52は、カッタ51の軸線が主軸22の軸線を含む水平面内に位置するとともに、主軸22の軸線と平行になり、且つ当該カッタ51が主軸22の軸線側に位置するように、前記第2送り台(図示せず)に固設されている。
【0036】
尚、この第2送り台(図示せず)も同様に、適宜駆動手段によって、水平面内で主軸22の軸線に沿った方向とこれに直行する方向(半径方向)の直交2軸方向に駆動されて、同水平面内で移動可能になっており、前記切断機構50はかかる第2送り台(図示せず)とともに移動して、その前記カッタ51の切れ刃51aが、保持部材25内に挿入された鏡板Kの開口端部外周面に当接可能となっている。
【0037】
第2支え機構40は、外周部に周方向に沿って外側に突出した突条部41a、及び外径が当該突条部41aから一方の端面に向けてテーパ状に縮径した縮径部41bを有する支えローラ41と、支持軸43及びこれに外嵌されたベアリングを介して、前記支えローラ41をその軸中心に回転自在に支持するフォーク状をしたホルダ42とを備えている。そして、ホルダ37は、支えローラ41の縮径部41bとは反対側の端面が前記保持部材25側に面し、当該支えローラ41の軸線が主軸22の軸線を含む水平面内に位置するとともに、当該主軸22の軸線と平行になり、且つ当該支えローラ41が前記切断機構50側に位置するように、前記軸部33の外周面に固設されている。
【0038】
尚、支えローラ41の外周面の形状は、その縮径部41bの幅が、型ローラ36の縮径部36bよりも狭い点を除いて、当該型ローラ36の外周面形状と同一の形状を有している。そして、支えローラ41と型ローラ36とは、主軸22の軸線を中心として線対称に配置されている。
【0039】
図3に示すように、前記制止機構55は、前記軸部33から下方に垂下するように当該軸部33に固設されたアーム56と、アーム56の下端部における主軸22側の面に、これから突出するように固設されたピン57と、基台29上に固設された制止部材58とからなる。同図3に示すように、前記挟持機構50が主軸22側に前進して、そのフランジ31の前端面32が鏡板Kの内端面Kbに当接する位置で、前記ピン57が制止部材58に形成された貫通孔58aに嵌挿され、この係合関係によって、前記軸部33がその軸中心に回転するのが制止される。
【0040】
斯くして、以上の構成を備えた第2工程のスピニング加工機20では、以下のようにして、当該第2工程が実施される。
【0041】
即ち、まず、第1工程を終えた鏡板Kを第1工程と同様にして、その開口部が保持部材25の開口側に位置し、その外底面Kaが保持部材25の当り面27に当接するように当該保持部材25内に挿入する。尚、その際、挟持機構30及びこれに支持される第1支え機構35,第2支え機構40、並びに押圧機構45及び切断機構50は、いずれも後退位置に位置している。
【0042】
ついで、挟持機構30を前進させ、そのフランジ31の前端面32によって鏡板Kの内底面Kbを押圧することにより、保持部材25との間で鏡板Kを挟持する。このとき、前記型ローラ36の突条部36a及び支えローラ41の突条部41aが、それぞれ鏡板Kの拡径部内周面に当接し、また、制止機構55のアーム56に設けたピン57が制止部材58の貫通孔58aに嵌挿され、これによって軸部33の回転が制止される。
【0043】
次に、このようにして鏡板Kを挟持した状態で主軸22を回転させ、保持部材25と鏡板Kを主軸22と共に回転させる。その際、鏡板Kを押圧しているフランジ31は、軸部33によって回転自在に支持されているので、軸部33が静止した状態で当該フランジ31が鏡板Kと共に回転する。また、前記型ローラ36及び支えローラ41も鏡板Kの回転によってそれぞれ回転する。
【0044】
次に、押圧機構45を前進させて、押圧ローラ46の突条部46aが型ローラ36の突条部36aと対峙する位置に移動させ、ついで、前記突条部46aが鏡板Kの拡径部外周面を押圧するように半径方向に移動させ、しかる後、この押圧ローラ46による押圧を維持しつつ、当該押圧機構45を半径方向内側に向けた移動と後退する移動とを合成した斜め方向に移動させる。
【0045】
これにより、鏡板Kの開口端部が型ローラ36の突条部36a及び縮径部36bに押し付けられ、当該突条部36a及び縮径部36bに倣った形状に成形され、突条部36aに対応した膨出部と縮径部36bに対応した縮径部とが成形される。その際、押圧ローラ46は、回転自在に支持されているので、鏡板Kの外周面に当接すると自体回転し、これにより押圧ローラ46と鏡板Kとの摺接が回避され、鏡板Kには滑り摩擦による過大な負荷が作用することがない。
【0046】
ついで、このようにして、押圧ローラ46が鏡板3の拡径部外周面を押圧して成形した後、当該押圧ローラ46が鏡板Kから離れると、当該押圧機構45を後退させて原位置に復帰させる。そして、これと同時に、切断機構50を前進させ、そのカッタ51が鏡板Kの外方に位置し、その切れ刃51aが前記支えローラ41の縮径部41bの端面41cと対峙する位置にこれを位置決めする。
【0047】
ついで、切断機構50を半径方向内側に移動させて、カッタ51により鏡板Kの開口先端部を切断する。この後、切断機構50を後方に後退させて原位置に復帰させ、ついで、挟持機構30を後退させて原位置に復帰させると共に、主軸22の回転を停止して、保持部材25及び鏡板Kの回転を停止する。そして、回転停止後、成形後の鏡板Kを保持部材25内から取り外す。
【0048】
第2工程では、以上のようにして、鏡板Kの開口端部に膨出部と縮径部とを成形する。
【0049】
以上詳述したように、本例の成形方法によれば、鏡板Kの膨出部及び縮径部が、第1工程の型3及び第2工程の型ローラ36の形状に倣った形状に成形されるので、その形状精度が極めて高精度なものとなる。また、第2工程の型ローラ36を鏡板Kの外底面Kaに対して所定位置に位置決めするようにしているので、外底面Kaに対する膨出部の位置を、加工される複数の鏡板K相互間で均一にすることができ、同時に、1個の鏡板Kにおいても、その膨出部各部の外底面Kaからの位置を一定にすることができる。
【0050】
したがって、上下の鏡板Kをそれぞれ胴部内に嵌め込んだ起立状態で行う後工程の自動溶接工程において、胴部端面と膨出部とが当接する高さ位置を一定にすることができ、当該当接部と溶接位置とを一致させることができる。このため、自動溶接であっても、当該当接部を確実に溶接することができ、液密性の高いタンクを製造することができる。
【0051】
尚、図1乃至図3において、鏡板Kの断面部分へのハッチングは、これを省略している。
【0052】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は何らこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 スピニング加工機
2 主軸
3 型
5 当り面
7 拡径部
10 挟持機構
11 フランジ
15 押圧機構
16 押圧ローラ
20 スピニング加工機
22 主軸
25 保持部材
27 当り面
30 挟持機構
31 フランジ
35 第1支え機構
36 型ローラ
36a 突条部
36b 縮径部
40 第2支え機構
41 支えローラ
41a 突条部
41b 縮径部
45 押圧機構
46 押圧ローラ
50 切断機構
51 カッタ
55 制止機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した円筒状の胴部の前記両端部にそれぞれ固着されて、閉塞した中空のタンクを構成する椀状の鏡板であって、
前記胴部内に差し込まれる縮径部と、前記胴部の内径よりも大径の外径を有し、前記胴部の端面に当接する膨出部とをその開口端部に備えた鏡板の前記縮径部及び膨出部を成形する方法において、
一方が開口した円筒状を有し、且つ該開口部の内径が基部よりも大径に形成された型内に、前記鏡板を、その外底面が前記型の内底面に当接するように前記開口部から挿入して保持せしめた後、前記型と鏡板とを一体的にその軸心を中心に回転させた状態で、軸中心に回転可能な第1押圧ローラの外周面を前記鏡板の開口端部内周面に押し当てて、該鏡板の開口端部を前記型の内周面に押し付け、該開口端部を外広がりのテーパ状に拡径させる第1工程と、
前記鏡板の外底面を基準面に押し当てた後、該鏡板をその軸心を中心に回転させるとともに、外周部に周方向に沿って外側に突出した突条部を有し、外径が該突条部から端面に向けてテーパ状に縮径した型ローラを、前記拡径後の鏡板内で、前記テーパ部が該鏡板の開口側に位置するように配置し、且つ該鏡板の開口端部内周面と当接可能な位置であって、前記基準面から予め設定された距離だけ離れた位置に位置決めし、ついで、軸中心に回転可能な第2押圧ローラの外周面を該鏡板の開口端部外周面に押し当てて、該鏡板の開口端部を前記型ローラの外周面に押し付け、該開口端部をテーパ状に縮径させる第2工程とを順次実施するようにしたことを特徴とする鏡板の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245490(P2011−245490A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117969(P2010−117969)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(505433828)株式会社国誉アルミ製作所 (7)