説明

長尺シートの方向転換装置

【課題】圧縮空気の使用量が少なくとも安定した浮上力が得られ、かつフィルター類を使用せずともクリーンな環境に外乱気流を与えることが少ない長尺シートの方向転換装置を提供することを目的とする。
【解決手段】柱状の有孔容器1と、有孔容器1の孔2を覆う多孔質樹脂層3とを有する長尺シート6の方向転換装置4を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺シートの走行方向を転換(変換)する装置に関するものであり、より詳細には、表面から空気を吹き出す柱状の有孔容器を用い、走行中の長尺シートを浮揚させた状態としながら走行方向を変える方向転換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行する長尺シートの走行方向を転換させるターンバーと呼ばれる中空柱状の有孔容器が従来から知られている。このターンバーは、有孔容器内部に供給された空気が、有孔容器の孔から長尺シートに向かって吹き出し、有孔容器から長尺シートを浮き上がらせた状態に保ちながら長尺シートを走行させ、有孔容器を転換点として長尺シートの走行方向を変えるものである。
【0003】
特許文献1には、走行する長尺シート(長尺状基材)の走行方向を転換する方向転換装置(ターンロール)であって、ターンロール内部の空洞にエアーを供給するエアー供給口と、ターンロール周面に設けられたエアー吹き出し孔を備えたターンロールが記載されている。特許文献1では、エアー吹き出し孔からの吹き出し量をターンロールの幅方向で調整するために、ターンロール内部の空洞をターンロール幅方向に分割する仕切りを設け、かつ仕切りにより分割されたターンロール内部の各空洞にエアー供給量が調節できる独立したエアー供給口を設けることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、長尺シート(フィルム状物)を流体によって浮揚させつつ搬送する方向転換装置(物体浮揚装置)であって、外部から供給される流体の通路となる流体孔を備えた複数の薄板によって積層面が形成され、積層面の近傍に流体の搬送面が形成され、薄板間には流体孔から搬送面に向かう流体の流路が形成されている積層型の物体浮揚装置が記載されている。
【0005】
特許文献3には、走行する長尺シート(フィルム)の走行方向を転換する方向転換装置(フィルム浮揚方向転換装置)であって、フィルム搬送面に複数の気体噴出孔を穿設し、横長の中空体を形成してなり、両軸端を装置本体に固着し、少なくとも一方の軸端の中空体内に圧縮流体を供給する供給管を接続し、フィルム搬送面の気体噴出孔からエアーを吹き出し、非接触状態でフィルムを搬送するものであり、特に、フィルムの浮揚搬送用の搬送ガイドの方向転換部分に配置する方向転換部材の断面形状が半楕円、楕円弧または半円、円弧面の隅角状とした形状で、かつフィルム搬送体の進入側表面と脱離側表面がフィルム搬送方向と平行な直線面を形成したフィルム浮揚方向転換装置が記載されている。また、特許文献3には、方向転換部分の複数の気体噴出孔を備えた薄板の表面のフィルム搬送面に一定間隔を設けて紐状物を巻回して表面に一定ピッチの螺旋状間隙を形成することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−193508号公報
【特許文献2】特開2000−016648号公報
【特許文献3】特開平8−245028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の方向転換装置は、有孔容器の表面から吹き出す空気を長尺シートに高速で当てることによって長尺シートを浮揚させるものである。したがって、特許文献1〜3には、基本的には、吹き出す空気の流速を高めるために吹き出し孔の開口面積を小さくする技術内容が記載されている。
【0008】
しかしながら、空気の流速を高めることを目的にすると有孔容器内部の気圧を高めるために大掛かりな高圧発生装置を使用することが必要となってしまう。また、空気中には微小パーティクル(ダスト)が含まれているため、高い流速で方向転換装置を使用すると室内の空気の清浄度が低下してしまうという問題があった。さらに、大量の空気が室内に放出されることにより、既に室内に溜まっているダストを巻き上げ、まき散らし、ダスト汚染を拡大するという問題があった。したがって、クリーンルーム等、空気の高清浄度が要求される分野では従来の方向転換装置は適さなかった。
【0009】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであって、有孔容器内の内圧が低くても使用可能であり、かつ有孔容器から放散される空気の量を低減することにより、室内の微小パーティクルの量を低減できる方向転換装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、長尺シートを有孔容器の表面から確実に浮かすという課題と、有孔容器から放散される空気の量を減少させるという課題とが相反する中で、これらの課題を同時に解決し得る方向転換装置の実現を目指して鋭意研究を重ねてきた。研究の過程では、方向転換装置に多孔質セラミックス焼結体を用いることも検討したが、多孔質セラミックス焼結体では、長尺シートを確実に浮かそうとすると大容量の圧縮空気が必要となり、圧縮空気の供給設備の設置コストおよびランニングコストが高くなってしまうことが懸念される。また、焼結体の微粒子が空気中に舞い上げられるために空気清浄度の低下を起こしてしまうことも懸念される。さらに研究を進めた結果、有孔容器の孔を覆うようにして多孔質樹脂層を形成することにより、有孔容器内部の気圧を比較的低くしても方向転換装置の表面から長尺シートを確実に浮かすことができるという知見を得た。
【0011】
上記課題を解決し得た本発明の長尺シートの方向転換装置は、柱状の有孔容器と、該有孔容器の孔を覆う多孔質樹脂層とを有するものである。
【0012】
上記方向転換装置において、前記多孔質樹脂層が多孔質樹脂膜の積層構造を含む形態とすることが推奨される。
【0013】
上記方向転換装置において、前記多孔質樹脂層が多孔質樹脂膜の巻回構造を含む形態が推奨される。
【0014】
上記方向転換装置において、前記多孔質樹脂層の厚さを0.1〜20mmとすることが好ましい。
【0015】
上記方向転換装置において、前記多孔質樹脂層の外面は、少なくとも一部に円柱曲面を有する形態が推奨される。
【0016】
上記方向転換装置において、前記多孔質樹脂層の通気係数を100〜15000mL/(cm・分・MPa)とすることが好ましい。
【0017】
上記方向転換装置において、前記多孔質樹脂層の通気係数の変動係数を30%以下とすることが好ましい。
【0018】
上記方向転換装置において、前記多孔質樹脂膜を多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜とする形態が推奨される。
【0019】
上記方向転換装置において、前記有孔容器と前記多孔質樹脂層の間、または、前記多孔質樹脂層中に、補強膜が形成されている形態が推奨される。
【0020】
上記方向転換装置において、前記補強膜の一部が前記多孔質樹脂層に固着されている形態が推奨される。
【0021】
上記方向転換装置において、前記多孔質樹脂層の表面に撥液剤が添加されている形態が推奨される。
【0022】
上記方向転換装置において、前記有孔容器の表面積20cmに対して、内径1mm以上の穴が1個以上形成されていることが好ましい。
【0023】
上記方向転換装置において、前記有孔容器に圧縮気体供給装置が接続されている形態が推奨される。
【0024】
上記方向転換装置において、前記有孔容器内に水蒸気発生装置が接続されており食品搬送に用いる形態にて実施することが可能である。
【0025】
上記課題を解決し得た本発明の長尺シートの方向転換装置は、柱状の有孔容器と、該有孔容器の孔を覆う多孔質樹脂層とを有する物体浮揚部材を並列に複数並べて構成されるものである。
【0026】
上記方向転換装置において、前記多孔質樹脂層上に更に多孔質樹脂膜が着脱可能に設けられている構成とすることが好ましい。
【0027】
本発明の物体浮揚装置は、柱状の有孔容器と、該有孔容器の孔を覆う多孔質樹脂層とを有する物体浮揚部材を並列に複数並べて構成されるものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の方向転換装置では、有孔容器の孔を覆うように多孔質樹脂層を形成することにより、有孔容器の内部を比較的低圧としながらも多孔質樹脂層から長尺シートを確実に浮かせることができる。また、方向転換装置から放散する空気量が少ないため、方向転換装置を運転する室内の空気清浄度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態における方向転換装置の形成過程を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における方向転換装置の形成過程を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における方向転換装置の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における方向転換装置の使用例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における他の方向転換装置の使用例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における物体搬送装置を示す図である。
【図7】本発明の実施例における方向転換装置の試験装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を用いて本発明の方向転換装置について説明する。図1および2は、本発明の実施の形態における方向転換装置の形成過程を示す図であり、図3は、完成した方向転換装置の斜視図である。まず、図1に示すように中空の柱状をなし、側面に孔2が形成された有孔容器1を準備する。次に、図2に示すように有孔容器1の孔2を覆うようにして多孔質樹脂層3を形成する。これにより、図3に示すように柱状の有孔容器1と、この有孔容器1の孔2を覆う多孔質樹脂層3とを有する方向転換装置が形成される。多孔質樹脂層3は、単層の多孔質樹脂膜で構成してもよいが、多孔質樹脂膜の積層構造(巻回構造を含む)とすることにより、後述する好ましい厚みを確保することができる。
【0031】
本発明の実施の形態における方向転換装置の有孔容器1の内部に加圧気体を送り込むと、加圧気体が孔2を通り抜け、さらに多孔質樹脂層3を通過して方向転換装置外に放散される。この際の多孔質樹脂層3表面の気流状態や気圧分布については完全には解明できていないが、非常に細かな気流が多孔質樹脂層3の垂直方向だけでなく様々な方向に等方的に発生していると考えられる。従来の方向転換装置の如くの高速多量の気流発生は認められないが、多孔質樹脂層3の表面付近では、非常に滑らかな物体浮揚力が働いている。
【0032】
このような多孔質樹脂材料の特質は、本発明者らが同時に検討を進めてきた多孔質セラミックス焼結体等では見られなかった。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態における方向転換装置の使用例を示す図である。図4において、上記の方向転換装置の半周にわたって長尺シート(例えば物品の搬送ベルトとして用いられるもの)を引っ掛け、その状態で有孔容器1の内部に加圧気体を送り込むことにより多孔質樹脂層3の表面から空気が放散し、これにより長尺シートが浮揚するので長尺シートが滑らかに走行する。
【0034】
多孔質樹脂層3を構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン等、それらの混合物、積層物など様々な樹脂製の多孔性フィルムが使用できる。特に、超高分子量のオレフィン類やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は溶融粘度が高いため、多孔質樹脂層3の作製後に多少の熱が加えられても孔の形態が大きく変化しないので好適である。
【0035】
なかでも、ポリテトラフルオロエチレンは溶融粘度が大きく、耐熱性も高く、かつ発ガス・発塵量が少ないため、方向転換装置をクリーンルーム等の用途に用いる場合はより好適である。また、ポリテトラフルオロエチレンは表面の離型性に優れているため、長尺シートの走行中に停電等の影響で有孔容器1内部への加圧気体の送給が停止したとしても、多孔質樹脂層3と長尺シートとが接触しながらも比較的滑らかに摺滑する。そのため、装置系全体の急な停止による長尺シートの損傷を最小限に抑えることができる。したがって、多孔質樹脂層3を構成する材料としてポリテトラフルオロエチレンを用いることは、加圧気体の送給状態であっても非送給状態であっても非常に有利な効果をもたらす。
【0036】
また、多孔質樹脂層3の材料としてPTFEを用いれば、マイナス100℃の極低温から260℃の高温までの温度範囲で方向転換装置を使用することができる。熱容量の高い加熱水蒸気を有孔容器1内に送給するための蒸気発生装置を接続することにより、食品を調理しながら搬送することも可能である。
【0037】
多孔質樹脂層3を構成する多孔質樹脂膜は、相分離法で多孔構造とした膜、造孔剤で多孔構造とした膜、延伸加工で多孔構造とした膜などを用いることができる。造孔剤を使用する場合、造孔剤であるフィラーの含有量が多いと、孔径分布が広くなってしまうこと、及び、フィラーの脱落が起こりやすくなることから、フィラーの含有率は50質量%以下とすることが望ましい。
【0038】
多孔質樹脂膜を、ポリテトラフルオロエチレン材料を用いて延伸加工で形成する場合は、PTFEファインパウダーと潤滑剤の混合物を押し出し成型体(ペースト成型体)とし、潤滑剤を除去した後に延伸することにより得ることができる。延伸に供するペースト成型体は、未焼成体、半未焼成体、焼成体のいずれも利用が可能であるが、自己融着性が良好な未焼成体を用いたものがより好ましい。延伸方法としては、PTFEの融点以下で行う1軸延伸、2軸同時延伸、逐次2軸延伸のいずれも適用が可能である。詳細には、特公昭56−45773号公報、特公昭56−17216号公報、特公昭53−55378号公報、特公昭55−55379号公報、特開昭59−109534号公報、特開昭61−207446号公報等に記載された方法が参考になる。
【0039】
多孔質樹脂膜の空孔率は、例えば、40%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上)、95%以下(好ましくは93%以下、より好ましくは90%以下)とすることが推奨される。多孔質樹脂膜の空孔率は、延伸倍率によって適宜調整することができる。上記のような空孔率が推奨されるのは、空孔率が低すぎると多孔質樹脂層3の通気抵抗が高くなり、長尺シートを浮揚させるために高圧の加圧気体が必要となってしまうからである。一方、空孔率の上限に特に制限は無いが、高すぎると有孔容器1の個々の孔2からの気流を多孔質樹脂層3で均一化しきれないため上記範囲が推奨される。
【0040】
多孔質樹脂膜の空孔率は、多孔質フッ素樹脂膜の質量Wと、空孔部を含む見かけの体積Vとを測定することによって求まる見かけ密度D(D=W/V:単位はg/cm)と、全く空孔が形成されていないときの真密度(PTFEの場合2.2g/cm)を用い、下記式(1)に基づいて算出できる。なお、体積Vを算出する際の厚みは、ダイヤルシックネスゲージで測定(テクロック社製「SM−1201」を用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定)した平均厚みとすることができる。
空孔率(%)=[(2.2−D)/2.2)]×100 (1)
【0041】
多孔質樹脂膜の1枚の厚みは特に限定されないが、多孔質樹脂層3の総厚(単層の場合は1枚の厚さであり、複数枚積層した場合には合計厚さを指す)は、例えば、0.1mm以上、好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは1mm以上とする。多孔質樹脂層3の総厚が小さすぎると、加圧気体の圧力により、多孔質樹脂層3が有孔容器1から離れて外側に膨れてしまう現象が起こるためである。また、有孔容器1の個々の孔2からの気流を均一化しきれない。なお、多孔質樹脂膜の孔径は0.2〜10μm程度、好ましくは0.2〜5μm程度である。
【0042】
一方、多孔質樹脂層3の総厚が大きくなりすぎると多孔質樹脂層3の側面方向への加圧気体の漏れを止めるのが困難になる。また、多孔質樹脂層3の通気抵抗が高くなることにより長尺シートを浮揚させるために非常に高圧の加圧気体が必要となってしまう。そのため、多孔質樹脂層3の総厚は、例えば、20mm以下、好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下とする。
【0043】
多孔質樹脂膜の積層形態としては、例えば複数枚の多孔質樹脂膜を有孔容器1に同心円状に巻き付けることができる。特に、複数積層した多孔質樹脂膜のうち、有孔容器1側に近いものほど空孔率が高いものを用いることが好ましい。空孔率が低い多孔質樹脂膜は、空気の均一な放散に有効である一方で空気中のダストによる目詰まりを起こしやすく長期間の安定駆動性に欠ける場合がある。したがって、方向転換装置の有孔容器1側に、目詰まりを起こしにくい空孔率の高いものを用い、方向転換装置の表側に、空気の均一な放散に有効である空孔率の低いものを用いることが有効である。例えば、有孔容器1側に最も近い側の多孔質樹脂膜の空孔率を、方向転換装置の最表面側の多孔質樹脂膜の空孔率の1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。
【0044】
多孔質樹脂膜の他の積層形態としては、有孔容器1に1枚の多孔質樹脂膜を巻回する形態が考えられる。巻回の場合、多孔質樹脂膜を有孔容器1に巻回した後に多孔質樹脂膜を加熱収縮させることにより、多孔質樹脂膜が有孔容器1に強固に固定されるので好ましい。長尺シート6を浮揚させるにあたっては、多孔質樹脂層3の表面近傍は重要な部分であるため、この部分は何も配置しない空間として確保しておく必要がある。そのため、多孔質樹脂層3よりも外側に何らかの器具を用いて多孔質樹脂層3を固定することは望ましくない。したがって、上記の巻回による積層は、多孔質樹脂膜の加熱収縮を利用した固定手段として有効であり、本発明の方向転換装置の形態として非常に好ましい。巻回の好ましい周回数は、例えば、有孔容器1の2周以上、より好ましくは5周以上、さらに好ましくは7周以上である。周回数の上限は特にないが、方向転換装置の製造効率の点からみて、例えば、100周以下、好ましくは50周以下とする。
【0045】
多孔質樹脂膜の積層に際しては層間に存在する空気を抜くため、方向転換装置を加熱処理前に真空処理することが有効である。必要があれば多孔質樹脂膜の層間接着に熱可塑性樹脂の微粉末やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂等の接着剤を使用することも可能である。接着剤は、単に多孔質樹脂膜の表面に塗布する手法だけでなく、例えば多孔質樹脂膜の孔部分に熱硬化性樹脂の接着剤を含浸し乾燥させることにより半硬化(Bステージ化)させ、これを積層し加熱処理する手法を採用することも可能である。
【0046】
多孔質樹脂層3の通気係数(K:通気抵抗を示す指標。単位はmL/(cm・分・MPa)。以下、単位の表示は省略することがある。)は、100〜15000とすることが望ましい。通気係数(K)を100以上とすることにより、長尺シートをいっそう確実に浮揚させることができるためである。また、通気係数(K)が100未満である場合には、多孔質樹脂層3の表面平滑度を非常に高めなければならない場合があり、不経済である。
【0047】
一方、通気係数(K)を15000超にすると、大容量の圧縮空気が必要となり、圧縮空気の供給設備の設置コストおよびランニングコストが高くなってしまう恐れがある。また、多孔質樹脂層3の表面である作用面に浮揚対象の長尺テープ6を置いたとき、長尺テープ6の下の孔から圧縮空気の放散が大きく妨げられ、安定性が得られなくなる。したがって、通気係数(K)を15000以下とすることが望ましい。通気係数(K)は、より好ましくは300〜10000、さらに好ましくは500〜7000とする。
【0048】
通気係数(K)は、次のようにして測定することができる。まず、有孔容器1に一定圧力(MPa)の圧縮空気を供給し、多孔質樹脂層3の表面である浮揚作用面に放散される空気量(mL/分)を測定する(堀場エステック社製の高精度精密膜流量計SF−1Uを用いる)。次に、測定された放散空気量の値を測定面積(cm)で除して単位面積当たりの通気量V(mL/cm・分)を求める。さらに、有孔容器1に供給する圧縮空気の圧力P(MPa)を種々変化させて同様の測定を行う。そして、供給圧力(P)を横軸、通気量(V)を縦軸としたグラフに各測定値をプロットし、得られた直線の傾きを通気係数(K)とする。すなわち、次の各式(2)および(3)が得られ、通気係数(K)を特定することができる。
V(mL/cm・分)=KP ・・・(2)
K(mL/(cm・分・MPa))=V/P ・・・(3)
【0049】
通気係数(K)の値は、多孔質樹脂層3の異なる領域間であまりばらつかないことが望ましい。長尺シート6をバランス良く安定して浮揚させるためである。そのため、通気係数の変動係数を好ましくは30%以下、より好ましくは15%以下とする。変動係数(C)が30%超の場合、浮揚力の安定性が悪くなる恐れがあり、特に長尺テープ6の幅が狭い場合に浮揚の安定性に欠けたものとなる可能性がある。
【0050】
変動係数(C)は、次のようにして測定することができる。まず、多孔質樹脂層3の表面である浮揚作用面を等分に5区画に分けける。各区画を代表して1点の測定点について通気係数(K)を測定し、各5区画の5測定値の平均値(Km)と標準偏差(σ)の値を用い、下記式(4)に従い通気係数(K)の変動係数(C)を計算することができる。
C(%)=(σ/Km)・100 ・・・(4)
【0051】
有孔容器1と多孔質樹脂層3の間、または、多孔質樹脂層3中に、補強膜が形成されていることが好ましい。多孔質樹脂層3が加圧気体の圧力により有孔容器1から離れて外側に膨れてしまう現象を防止するためである。例えば、積層する多孔質樹脂膜の間に補強膜を入れることができる。補強膜の材料としては、ガラス繊維織物、炭素繊維織物、不織布、アラミドやテフロン(登録商標)などのスーパーエンプラ繊維製の織物、ステンレスメッシュなど、通気性を損なわず、強度・剛性を有する材料を用いることができる。補強膜を設置する位置は、有孔容器1側に近い方、有孔容器1から遠い方、或いはその中間の位置のいずれでもよいが、有孔容器1側に近い方に設置すれば、加圧気体を多孔質樹脂層3の全体に分配する機能と圧力を軽減する緩衝機能を期待することができる。有孔容器1から遠い方に設置する場合は、多孔質樹脂層3の表面に補強膜の凹凸の影響が出るのを防止するため(すなわち多孔質樹脂層3の表面から放散される加圧気体の層流性を乱さないため)、最外層の多孔質樹脂膜の厚さは100μm以上、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上とする。
【0052】
多孔質樹脂膜同士の接着、或いは、多孔質樹脂層(膜)と補強膜との接着を行う場合は、多孔質樹脂層(膜)の一部においてのみ接着されることが望ましい。気体の透過を阻害しないためである。通気性と融着性のある補強膜を用いて融着する場合は、全面融着してもよい。
【0053】
なお、補強膜の材料としてフェノールやポリイミド等の熱硬化性樹脂を用いることも可能であるが、これらの材料は自己融着加工ができないことから接着剤が必要となり、接着剤による孔の目詰まりを起こすおそれがある。そのため、このような樹脂材料を利用するには、樹脂を完全硬化させる前の半硬化(Bステージ化)の状態で多孔質樹脂膜との積層加工を行うのが望ましい。
【0054】
多孔質樹脂層3の表面には、帯電防止処理をすること、或いは、防水防汚のために撥液剤(例えば撥液性ポリマー)を添加することが好ましい。帯電防止処理の方法としては、例えば、第4級アンモニウム系界面活性剤を含む帯電防止剤、シリケートやカーボンナノチューブやカーボンナノファイバー等の導電性微粉末を含む帯電防止剤で処理することができる。防水防汚処理の方法としては、例えば、多孔質樹脂層3の表面を撥水撥油性ポリマーで被覆しておくことができる。この処理により、機械油、水滴などの様々な汚染物が、多孔質樹脂層3の細孔内に浸透若しくは保持されるのを防止できる。これらの汚染物質は、多孔質樹脂層3の通気特性を低下させる原因となる。なお、特許請求の範囲及び本明細書において「撥液剤」とは、液体をはじく性質乃至は機能を有する物質を指すものであるとし、「撥液剤」には、「撥水剤」、「撥油剤」、「撥水撥油剤」等を含むものとする。
【0055】
有孔容器1の材料には特に制限はなく、ステンレス材、樹脂材のものを使用することができる。有孔容器1の表面には、表面積20cmに対して、内径1mm以上の穴を1個以上形成することが望ましい。
【0056】
なお、本発明者らは上記のように多孔質樹脂材料との対比において多孔質セラミックス焼結体についても同時に検討を進めてきたので、これによる知見を念のため記しておく。多孔質セラミックス焼結体の孔構造は、原料の微粉末の粒径と形状及び焼結方法によって決定されるが、孔のサイズを均一化すること、孔の方向を揃えることは極めて困難でコストがかかる。本発明では、孔構造を制御しやすい多孔質樹脂材料を使用するものである。このことにより、多孔質樹脂膜の厚さ方向の孔の分布や方向が非常に均一となるため、多孔質樹脂膜の表面に放散する加圧気体のベクトルが揃い、浮揚対象物を均一に支えて浮揚させることが可能である。すなわち、ミクロン単位、サブミクロン単位の孔径の孔が均一にかつ方向が揃って高密度に分布しているので静圧特性に優れた気体層流を低圧の加圧気体より得ることができる。これに対して多孔質セラミックス焼結体は、孔構造が立体的に等方性であるので浮揚対象物に対向する面以外の面(端面)からも加圧気体が放散されてしまう。例えば、端面に熱硬化性樹脂等を塗布し硬化させて、端面を封止するがこれは非常に時間のかかる作業である。本発明の場合、多孔質樹脂が柔らかい構造のものであるため、端面を機械的に圧縮する又は加熱圧縮するだけで封止を容易に行うことができる。また、多孔質セラミックス焼結体は、一般に大きなバルク物で形成し、必要な形状に切削加工するか、或いは、金型による焼結加工成型で必要な形状加工されるが、切削工程或いは金型作成工程により製造工程が複雑化してしまうというデメリットがある。この点、本発明の方向転換装置は製造が容易であることもメリットの一つである。
【0057】
図5は、本発明の実施の形態における他の方向転換装置の使用例を示す図である。図5において、柱状の有孔容器1と、この有孔容器1の孔2を覆う多孔質樹脂層3とを有する物体浮揚部材13を並列に複数並べて方向転換装置が構成されている。上記の方向転換装置の約半周にわたって長尺シート6を引っ掛け、その状態で各々の有孔容器1の内部に加圧気体を送り込むことにより多孔質樹脂層3の表面から空気が放散し、これにより長尺シート6が浮揚するので長尺シート6が滑らかに走行する。
【0058】
図5の例では、物体浮揚部材13は円形状に並べられているが、複数の物体浮揚部材13が並列に(すなわち物体浮揚部材が同一の方向に向くように)並べられていればよく、楕円状等であってもよい。
【0059】
以上説明した本発明の実施の形態における方向転換装置において、多孔質樹脂層3上に更に多孔質樹脂膜(図示せず)が着脱可能に設けられている構成とすることが好ましい。方向転換装置の運転中に多孔質樹脂膜に液体や粘着物等が付着した場合でも多孔質樹脂膜を別の多孔質樹脂膜に取り換えることにより、方向転換装置のメンテナンスが非常に容易になるためである。多孔質樹脂膜の材料としては、多孔質樹脂層3中の多孔質樹脂膜と同様のものを用いることができ、多孔質PTFE材料を用いることが最も好ましい。
【0060】
図6は、本発明の方向転換装置から派生して考案した物体浮揚装置を示すものである。図6に示すように、有孔容器1の表面に多孔質樹脂層3を設けた物体浮揚部材13を並列に並べることにより、搬送物体12を浮揚させて搬送することができる。搬送物体12が重い場合には、有孔容器1を角柱形状とすることにより、多孔質樹脂層3の表面と搬送物体12とが対向する面積が増え、浮揚力を増すことができる。また、有孔容器1の径を小さくして多数敷き詰めることによっても浮揚力を増すことができる。本発明の物体浮揚装置は、長尺シートの走行方向を転換させる本発明の方向転換装置とは、浮揚対象物が異なるものであるが、採り得る有孔容器1と多孔質樹脂層3のバリエーションや享受できる作用効果は同じであるので詳細な説明は省略する。
【0061】
図6の例では、物体浮揚部材13は同一平面上に並べられているが、複数の物体浮揚部材13が並列に並べていればよく、物体浮揚部材13が曲面状に並べていてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例、参考例を挙げて本発明の実施例における方向転換装置を説明する。もちろん、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
1.評価装置
図7は、本発明の実施例における方向転換装置の試験装置を示すである。図7において、試験台5上には方向転換装置4とガイドレール9が固定されている。有孔容器1と多孔質樹脂層3を備えた方向転換装置4には、一端部に固定バー8、他端部に錘7が取り付けられた長尺シート6を引っ掛けた。長尺シート6として粘着テープを使用し、粘着テープの粘着剤側を長尺シート6に向けた。方向転換装置4には気体送給ホース10により圧縮気体供給装置(例えばコンプレッサー)11を接続した。圧縮気体供給装置11から送給される加圧気体を方向転換装置4に導入し、これによって長尺シート6を浮揚させた。この状態で固定バー8をガイドレール9に沿って水平方向に動かすことにより長尺シート6である粘着テープを方向転換装置4上で90度方向転換させた。
【0064】
(実施例1)
有孔容器1として、ステンレスパイプの中央部に5mmφの穴を円周方向に等間隔に4個設けたものを用いた。ステンレスパイプは、外径34mm、内径28mm、長さ150mmであり、両端を厚さ2mmのステンレス板で溶接封止し、片端に気体送給ホース10のコネクターを取り付けられるように穴開け加工した。
【0065】
多孔質樹脂膜として、2軸延伸多孔質PTFEフィルム(ジャパンゴアテックス社製、フィルム厚さ:125μm、見掛け密度:0.436)を用いた。この2軸延伸多孔質PTFEフィルムは、ダイキン工業株式会社製のPTFEファインパウダー(商品名:ポリフロンF104)からペースト押し出し、ロール圧延、潤滑剤乾燥、延伸、焼成の各工程を経ることにより製造したものである。この2軸延伸多孔質PTFEフィルムを幅250mm、長さ3mのサイズにカットして用いた。
【0066】
補強膜として、延伸PTFE製の織り布(ジャパンゴアテックス社製、素線 維度:380デニール、坪量:183g/m)を用い、これを幅250mm、長さ1mのサイズにカットした。
【0067】
ガラス板上に、上記のように用意した2軸延伸多孔質PTFEフィルムと延伸PTFE製の織り布を皺の無いように伸ばしながら幅を揃えて重ねて拡げた。なお、先端部では、延伸PTFE製の織り布の先端部よりもさらに10cm先に2軸延伸多孔質PTFEフィルムの先端部が配置されるように重ねた。
【0068】
拡げた2軸延伸多孔質PTFEフィルムと延伸PTFE製の織り布の先頭部の2軸延伸多孔質PTFEフィルムの上に上記のステンレスパイプを置き、たるみや皺が発生しないように張力をかけながら、先端部の2軸延伸多孔質PTFEフィルムをステンレスパイプ側(最内層側)にしてステンレスパイプに同心円状に巻きつけた。
【0069】
この2軸延伸多孔質PTFEフィルムと延伸PTFE製の織り布が巻きつけられたステンレスパイプを両端部で支持する冶具に載せてオーブンに入れて、340℃で加熱処理した。約10時間後に冶具に載せたままオーブンから取り出し、自然放冷により室温まで冷却した。
【0070】
次いで、ステンレスパイプの両端部からはみだしている2軸延伸多孔質PTFEフィルムと延伸PTFE製の織り布をカッターナイフで切り落として幅を150mm(ステンレスパイプの長さと同じ)とした。さらにステンレスパイプの両端部をステンレス製のホースバンド(株式会社トヨックス製、商品名エスカルゴ)で締め付けた。以上の方法により、2軸延伸多孔質PTFEフィルムと延伸PTFE製の織り布が巻きつけられた方向転換装置(1)を得た。なお、この方向転換装置(1)の最外径は42mmであった。
【0071】
(実施例2)
多孔質樹脂膜として、1軸延伸多孔質PTFEフィルム(ジャパンゴアテックス社製、フィルム厚さ:165μm、見掛け密度:0.564)を用いた。この1軸延伸多孔質PTFEフィルムは、ダイキン工業株式会社製のPTFEファインパウダー(商品名:ポリフロンF104)からペースト押し出し、ロール圧延、潤滑剤乾燥、延伸、焼成の各工程を経ることにより製造したものである。この1軸延伸多孔質PTFEフィルムを幅250mm、長さ4mのサイズにカットした。
【0072】
補強膜として、延伸PTFE製の織り布(ジャパンゴアテックス社製、素線 維度:380デニール、坪量:183g/m)を用い、これを幅250mm、長さ50cmのサイズにカットして用いた。
【0073】
その他の条件は実施例1と同様にして方向転換装置(2)を得た。この方向転換装置(2)の外径は39mmであった。
【0074】
(実施例3)
多孔質樹脂膜として、ポリプロピレンの多孔質膜(商品名:NG100、株式会社トクヤマ製、厚さ:110μm)を幅250mm、長さ2mにカットしたものを用意した。
【0075】
補強膜として、300メッシュのステンレススクリーン(素線径30μm、株式会社メッシュ製)を幅150mm、長さ2mにカットしたものを用意した。
【0076】
実施例1と同じステンレスパイプ上に、最初にステンレススクリーンを同心円状に巻き、次いでポリプロピレンの多孔質膜を同心円状に、しわなく巻きつけた。その上に、さらに実施例2で用いたものと同じ1軸延伸多孔質PTFEフィルムを5周巻きつけた。1軸延伸多孔質PTFEフィルムは、加熱処理したときに収縮し、巻き締まりの効果があるために用いた。
【0077】
ステンレスパイプを実施例1と同様の冶具に載せてオーブンに入れ、155℃で加熱処理した。約5時間後に冶具に載せたままオーブンから取り出し、自然放冷により室温まで冷却した。
【0078】
その後は、実施例1と同様の処理をして方向転換装置(3)を得た。この方向転換装置(3)の外径は37mmであった。
【0079】
以上の方向転換装置(1)〜(3)における多孔質樹脂膜の通気係数(K)およびその変動係数(C)は、下記表1に示す通りのものである。
【0080】
【表1】

【0081】
(参考例1)
市販の超高分子量ポリエチレン製の多孔質パイプ(内径:30mm、外径:40mm、肉厚:5mm、長さ:150mm、平均気孔径:5μm、株式会社染谷製作所製)をそのまま方向転換装置(4)とした。
【0082】
(参考例2)
市販の超高分子量ポリエチレン製の多孔質パイプ(内径:30mm、外径:40mm、肉厚:5mm、長さ:150mm、平均気孔径:15μm、株式会社染谷製作所製)をそのまま方向転換装置(5)とした。
【0083】
(参考例3)
市販の多孔質セラミック製散気管(商品名:エアーストーンNR−S304、株式会社イワキポンプ製)をそのまま方向転換装置(6)とした。
【0084】
以上の方向転換装置(4)〜(6)における多孔質パイプや散気管の通気係数(K)およびその変動係数(C)は、上記表1に示す通りのものである。
【0085】
2.評価方法
図7に示した試験装置に、方向転換装置(1)〜(6)を取り付けて粘着テープの走行方向の転換試験を行った。粘着テープ(商品名:No3705スーパー、幅:5cm、日東電工株式会社製)に500gの錘7をぶらさげることにより100g/cmの荷重をかけた。粘着剤面を方向転換装置に対向させて、90度の方向転換の状態にて方向転換装置上で粘着テープを長手方向に往復させ(図7)、粘着テープの粘着剤の影響を受けずに動かせるかどうかを確認した(1回目)。
【0086】
さらに、この状態で1時間放置したあと、再度粘着テープを長手方向に動かして粘着テープの粘着剤の影響を受けずに動かせるかどうかを確認した(2回目)。
【0087】
上記表1は、加圧気体の圧力を0.05MPa、0.1MPa、0.2MPa、0.3MPaに変更して行った試験の結果を示すものである。使用した方向転換装置は、上記(1)〜(6)の6種類である。表1には、方向転換装置の動作初期に行った試験(1回目)の結果と、1時間後に行った試験(2回目)の結果を示す。
【0088】
表1の評価基準は以下の通りである。
○:粘着剤の影響を受けず、粘着テープを自由に動かせる。
△:粘着剤が影響し、所々に引っ掛かりがある。
×:粘着剤が方向転換装置に粘着し、粘着テープを動かせない。
【0089】
表1の試験結果から分かるように、超高分子量ポリエチレン製の多孔質パイプや多孔質セラミック製の多孔質パイプを用いた方向転換装置(4)〜(6)では、加圧気体の圧力を0.3MPaまで上昇させた場合にはやや改善するものの、それよりも低い圧力では粘着剤が方向転換装置に粘着し、粘着テープを動かせなかった。これに対して、本発明の実施例である多孔質樹脂膜を用いた方向転換装置(1)〜(3)では、粘着テープの浮揚状態が良好であるため、粘着剤の影響を受けず、粘着テープを非常に滑らかに動かすことができた。
【符号の説明】
【0090】
1 有孔容器
2 孔
3 多孔質樹脂膜
4 方向転換装置
5 試験台
6 長尺シート
7 錘
8 固定バー
9 ガイドレール
10 気体送給ホース
11 圧縮気体供給装置
12 搬送物体
13 物体浮揚部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の有孔容器と、該有孔容器の孔を覆う多孔質樹脂層とを有することを特徴とする長尺シートの方向転換装置。
【請求項2】
前記多孔質樹脂層が多孔質樹脂膜の積層構造を含む請求項1に記載の方向転換装置。
【請求項3】
前記多孔質樹脂層が多孔質樹脂膜の巻回構造を含む請求項1または2に記載の方向転換装置。
【請求項4】
前記多孔質樹脂層の厚さが0.1〜20mmである請求項1〜3のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項5】
前記多孔質樹脂層の外面は、少なくとも一部に円柱曲面を有する請求項1〜4のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項6】
前記多孔質樹脂層の通気係数が100〜15000mL/(cm・分・MPa)である請求項1〜5のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項7】
前記多孔質樹脂層の通気係数の変動係数が30%以下である請求項6に記載の方向転換装置。
【請求項8】
前記多孔質樹脂膜が多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜である請求項2〜7のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項9】
前記有孔容器と前記多孔質樹脂層の間、または、前記多孔質樹脂層中に、補強膜が形成されている請求項1〜8のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項10】
前記補強膜の一部が前記多孔質樹脂層に固着されている請求項9に記載の方向転換装置。
【請求項11】
前記多孔質樹脂層の表面に撥液剤が添加されている請求項1〜10のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項12】
前記有孔容器の表面積20cmに対して、内径1mm以上の穴が1個以上形成されている請求項1〜11のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項13】
前記有孔容器に圧縮気体供給装置が接続されている請求項1〜12のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項14】
前記有孔容器に水蒸気発生装置が接続されており食品搬送に用いる請求項1〜13のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項15】
柱状の有孔容器と、該有孔容器の孔を覆う多孔質樹脂層とを有する物体浮揚部材を並列に複数並べて構成される長尺シートの方向転換装置。
【請求項16】
前記多孔質樹脂層上に更に多孔質樹脂膜が着脱可能に設けられている請求項1〜15のいずれかに記載の方向転換装置。
【請求項17】
柱状の有孔容器と、該有孔容器の孔を覆う多孔質樹脂層とを有する物体浮揚部材を並列に複数並べて構成される物体浮揚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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