説明

長尺体支持装置

【課題】地震などによる横揺れや縦揺れの振動にも強く、且つ軽量、コンパクトであり、限られたスペース内での作業が容易である施工性にも優れる支持装置、及び耐火ブロックと組み合わせて防火区画処理を施した支持装置とすることで、優れた防火性能と施工性を得て、且つメンテナンスが容易である支持装置を提供する。
【解決手段】建造物の床貫通部に嵌め込んで固定される貫通スリーブと、前記貫通スリーブの上面縁に設けられる一対の支持フレームと、前記支持フレームの両端に設けられる少なくとも1以上の脚部とを備え、前記支持フレームは、前記貫通スリーブの上面縁で前記貫通スリーブに固定され、且つ前記長尺体の固定位置を調節可能な固定部を有し、前記脚部は、床面からの高さが調整可能な構造を有し、且つ前記支持装置を床に固定する構造であることを特徴とする支持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建造物の床を貫通して設置されるバスダクトや電気線を配するケーブルラックなどの長尺体を床貫通部において支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの多層階建造物の各階に電気や信号を伝達したり、空調などを行う場合に、各階の床に貫通部を設けて電気配線や空調配管などを、その貫通部に通して各階に送りとどけているが、高層階の建造物になるにつれ、電気配線や空調配管は長くなり、その自重が増加していくために、各階で支持することが必要となっている。
従来、床貫通部の貫通開口部に特許文献1や特許文献2に記載される支持枠を設け、配線や配管およびケーブルラックなどを支持枠に固定している。
【0003】
図5に示される特許文献1に記載される支持枠51は、ケーブルラック54を床、側壁などの貫通部に固定するもので、筒開口部に外向フランジ52aを設けた筒状枠本体52とこの筒状枠本体52の開口部にスライド自在に装架され且つ固定される一対のケーブルラック取付フレーム53とからなり、該ケーブルラック取り付けフレーム53は、適当幅を有する基板53aの端部に本体外向フランジ52aに係合する係合部52b、係合部に対応して固定ネジ53c、基板53aの側辺に立上壁53d、立上壁53dの適所にケーブルラック取付用の長孔53eを設けて構成されている。
【0004】
図6に示される特許文献2に提供される支持枠61は、床、側壁などの貫通部に埋設されて配管・配線用貫通部を形成すると共に支持枠本体62が断面矩形筒状体から成り、該支持枠本体62の一方の開口部外側の相対向する位置に、コ字の上線部分63aと下線部分63bが外向きとなると共に縦線部分63cが貫通方向と略一致するように該縦線部分63cが前記支持枠本体62の一方の開口部外側に夫々取り付けられ、前記コ字の上線部分63aにケーブルラック固定用アングル取付用孔部64aが設けられ、床のコンクリート打設時に前記コ字の上線部分63aの全部と前記コ字の縦線部分63cの途中部分までが床から露出し、他の部分が床内に埋設する構成を有する断面コ字状部材63が夫々取り付けられており、該相対向する位置の断面コ字状部材63には、ケーブルラック固定用アングル64が架渡、取り付けされる構成となっている。
【0005】
【特許文献1】実開平7−27240号公報
【特許文献2】登録実用新案第3111823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の支持枠51では、ケーブルラック取り付けフレーム53が外向フランジ52aの狭小な部分に載置されているだけであることから、ケーブルラック54をケーブルラック取り付けフレーム53に取り付けて固定した場合、ケーブルラック取り付けフレーム53、そのものが動いてしまう恐れがあり、十分に支持しているとはいえず、特に地震が起きた場合では、地震の縦揺れ、横揺れによりケーブルラック取り付けフレーム53が、外向フランジ52aより外れてしまい、ケーブルラック54に取り付けられているケーブルなどを傷つけてしまう恐れがある。更に支持枠本体52だけで、ケーブルラック54の重量を支えているので、強度的に支持枠本体52の板厚を厚くする必要があることから、自重が増加し、ハンドリングを悪くし、その作業性を低下させ、併せて価格も上昇してしまう問題がある。
【0007】
一方、床貫通部に支持枠を施工する場合、通常、支持枠の上面縁は、床面から0mmから100mmの高さの位置に来るように調節しながら施工されることが多いが、特許文献2記載の支持枠61は、ケーブルを支持するのに一定サイズのコ字状部材63を、予め取り付けておくことが必要なため、施工現場の状況に合わせて、その高さを調節した数種類のサイズの断面コ字状部材63を取り付けた支持枠61を用意しなければならない。
【0008】
また、ケーブルラック固定用アングル64は、断面コ字状部材63に固定具(ボルト・ナット)を用いて取り付けられているために、地震の横揺れに対しては、相応の耐久性を有しているが、大きな縦揺れに対しては、構造上から、その揺れを吸収することができず、ケーブルラック固定用アングル64が断面コ字状部材63からはずれて、ケーブルラックに取り付けられているケーブルなどを傷つけてしまう恐れがある。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑み、種々の検討を踏まえて成したもので、地震などによる横揺れや縦揺れの振動にも強く、その施工性にも優れる支持装置を提供すると共に、支持装置と耐火ブロックを組み合わせて用いることにより、優れた防火性能と施工性、及びメンテナンスも容易である支持装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、建造物の床貫通部に設けて、建造物内を貫通する長尺体を固定する支持装置であって、建造物の床貫通部に嵌め込んで固定される貫通スリーブと、前記貫通スリーブの上面縁に設けられる一対の支持フレームと、前記支持フレームの両端に設けられる少なくとも1以上の脚部とを備え、前記支持フレームは、前記貫通スリーブの上面縁で前記貫通スリーブに固定され、且つ前記長尺体の固定位置を調節可能な固定部を有し、前記脚部は、床面からの高さが調整可能な構造を有し、且つ前記支持装置を床に固定する構造であることを特徴とする支持装置である。
【0011】
請求項2記載の発明は、建造物の床貫通部に設けて、建造物内を貫通する長尺体を固定する支持装置であって、建造物の床貫通部に嵌め込んで固定される貫通スリーブと、前記貫通スリーブの上面縁に載置される一対の支持フレームと、前記支持フレームの両端に設けられる少なくとも1以上の脚部と、前記貫通スリーブの内部に支持板を介して載置される耐火ブロックとを備え、前記支持フレームは、前記貫通スリーブの上面縁で前記貫通スリーブに固定され、且つ前記長尺体の固定位置を調節可能な固定部を有し、前記脚部は、床面からの高さが調整可能な構造を有し、且つ前記支持装置を床に固定する構造であることを特徴とする支持装置である。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記支持フレームの断面形状が、コ字状形状の上端部及び下端部の対向するほぼ平行な辺の先端をコ字の内側に向けて、ほぼ平行な辺を連結する垂直な辺にほぼ平行な方向に折り曲げた断面形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の支持装置である。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記支持装置を用いて固定される建造物内を貫通する長尺体に加わる荷重における水平荷重分を、貫通スリーブと、その上面縁に固定した支持フレームとで担い、垂直荷重分を、支持フレームの両端に設けられる脚部で担うことを特徴とする建造物内を貫通する長尺体の支持手段を有する請求項1から請求項3のいずれかに記載の支持装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る支持装置は、軽量、コンパクトあることから、限られたスペース内での作業が容易であり、且つ地震などによる横揺れや縦揺れの振動にも強く、更に、その施工性にも優れる支持装置であり、更に、本発明に係る支持装置と耐火ブロックとを組み合わせて防火区画処理を施した支持装置とすることで、優れた防火性能と施工性が得られ、且つ、メンテナンスが容易である支持装置を提供するもので、工業上顕著な効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図を用いて本発明に係る支持装置を説明する。
図1は、本発明に係る支持装置の第一の実施形態を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は、図1(a)におけるa−a断面図である。
図1において、1は長尺体、2は支持フレーム、3は貫通スリーブ、3aは貫通スリーブ上面フランジ部、5は脚部、6は上面フランジ部孔、7は支持フレーム2を貫通スリーブ3の上面フランジ部3aに固定する締結具(ボルト・ナット)、8は長尺体1を支持フレーム2に固定する長尺体固定具、10は第一の実施形態に係る支持装置である。
【0016】
支持装置10は、図1(a)に示されるように、一対の支持フレーム2と、支持フレーム2の両端に設けられる脚部固定孔2bに取り付けられる受け足5cを有する脚部5と、長尺体1を支持フレーム2に取り付ける長尺体固定具8とで構成される。貫通スリーブ3への取り付けは、貫通スリーブ3の上面フランジ部3aに設けた上面フランジ部孔6と支持フレーム2に設けた支持フレーム固定孔2aとを合わせ、締結具7(ボルト・ナット)で、貫通スリーブ3に支持フレーム2を取り付け固定する。貫通スリーブ3への支持フレーム2への取り付けは、ボルト・ナット等の締結具ではなく、他の締結具を用いても良いし、溶接等の手段を用いることもできる。
【0017】
次に、床貫通部への支持装置10の設置は、図1(b)に示すように貫通スリーブ3を床貫通部20に嵌め込み、その周囲にコンクリートを打設して貫通スリーブ3を固定した後、支持装置10を貫通スリーブ3に締結もしくは溶接により固定し、脚部5の高さを調節して支持装置10をより強力に床に保持する方法、或いは支持装置10を取り付けた貫通スリーブ3を床貫通部に嵌めこみ、脚部5の高さを調節した後、コンクリートを貫通スリーブ3の周囲に打設して固定する方法で行われ、この場合、脚部5の受け足5cを貫通スリーブ3の周囲に打設するコンクリートに埋設させると、より強力な保持が可能となる。また、受け足5cは、強度的に十分であれば、ボルト等脚部5と一体のものを用いても良い。
【0018】
本発明で用いる支持フレーム2は、図2に示す断面形状及び構造を有するチャンネル材を用いると良い。図2(a)に示す断面形状であることで、長尺体1を支持フレーム2に取り付ける際に、長尺体1の位置に合わせて、長尺体固定具8の位置を容易に設定することが可能となり作業性が大幅に向上すると共に、長尺体のサイズや形状に依存せずに取り付けることができる。
【0019】
即ち、長尺体1を支持フレーム2に取り付ける際、縦方向の取り付け位置は、図2(c)に示す長尺体固定具8に備わる中ナット8aを緩め、長尺体1の位置に合わせて長尺体固定具8の位置を微調節し、固定ナット8bを締めこんで長尺体1と支持フレーム2とを締結する。
一方、横方向の取り付け位置は、長尺体固定具8に備わる固定ナット8cを緩め、位置の微調整を行って、取り付け位置を決め、固定ネット8cを締めこんで支持フレーム2に長尺体固定具8とを締結する。
なお、支持フレーム2の断面形状は、図2(a)に示す形状に限定せず、長尺体1と長尺体固定具8の締結位置を微調整できる長孔を有したチャンネル断面形状材やL型断面形状材でも良い。
【0020】
図3(a)、(b)は第一の実施形態で用いた脚部5の外観斜視図および支持フレーム2への取り付け部の部分断面図である。
支持フレーム2の両端に備える脚部5は、長さが調節可能なアジャスターボルト5aを用い、高さ調節ナット5bとアジャスターボルト5aの一端に受け足5cを有した構造のものを示しているが、長尺体の重量に耐えうる強度を有し、高さの調節が可能で、且つ支持装置を床に保持する構造、或いは固定する構造であるなら良い。
【0021】
例えば図3(c)に示すように、図1の支持フレーム2と同断面形状のチャンネル脚15bを用いて、L型締結具17の一端を支持フレーム2の端部に取り付け、他端をチャンネル脚15bに取り付け、脚部15とした構造でも良い。この場合、脚部15の高さの調節は、L型締結具17の締結具18を緩めることで高さ調節ができる。その他、図3(d)、(e)に示すような脚部でも良い。
なお、図1に示す支持装置10において、脚部5は支持フレーム2の両端に1脚ずつ配置されている例を示したが、長尺体1の数や種類により、複数脚の脚部を設けるのが望ましい。
【0022】
上述した本発明に係る支持装置10は、長尺体1に加わる荷重のうち、その水平荷重分を貫通スリーブ3と、その上面フランジ部3aと固定した支持フレーム2で主として受け止め、垂直荷重分を脚部5で主として受け止める。このように荷重を分散して受け止めることで、支持装置10の全体の耐荷重性能を高めている。
【0023】
しかも、支持フレーム2及び脚部5、15で構成される支持部分は、構成部材が少なく、材料コストも低廉となり、更に軽量且つコンパクトであることから、施工現場への輸送や施工時のハンドリングが容易であり、更に支持装置10を施工する床貫通部近傍のスペースが限られている場合でも、その施工や取り付けの制限を受けることを少なくすることができる。
【0024】
また、脚部5、15は貫通スリーブ3の上面フランジ部3aから床面までの高さの調節可能な機能を有することで、施工現場の状況に合わせて臨機応変に対応して支持装置10を固定することができる。
【0025】
図4は、本発明に係る支持装置の第二の実施形態を示すもので、第一の実施形態で示した支持装置の貫通スリーブ3の底面部に支持板12を設け、その支持板12上に耐火ブロック13を載置して防火区画処理を行った支持装置11の外観斜視図である。このようにすることで、耐火ブロックによりブロックの上下の空間を離隔して、火災時に上階から下階、下階から上階への延焼を防止し、ケーブル類を保護することができる。
このように本発明に係る支持装置11は、その上部から目視することができ、耐火ブロック13の劣化、破損および載置状況の確認が容易であり、メンテナンス性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る支持装置の第一の実施形態を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は図1(a)のa−a断面図である。
【図2】本発明で用いられる支持フレームを表すもので、(a)、(b)は第一及び第二の実施形態で用いた支持フレームの断面図および側面図、(c)は長尺体を支持フレームへ取り付ける場合の説明図である。
【図3】本発明で用いられる脚部の構造を示す図で、(a)は第一及び第二の実施形態で用いた脚部5の外観斜視図、(b)は脚部5の支持フレーム2への取り付け状態を示す部分断面図、(c)、(d)、(e)は他の方式の脚部の外観斜視図である。
【図4】本発明に係る支持装置の第ニの実施形態を示す断面図(図1(a)のa−a断面と同箇所)である。
【図5】特許文献1に係る支持枠を示す外観斜視図である。
【図6】特許文献2に係る支持枠を示す外観斜視図(a)および施工後の断面図(b)である。
【符号の説明】
【0027】
1 長尺体
2 支持フレーム
2a 支持フレーム固定孔
3 貫通スリーブ
3a 上面フランジ部
4 固定具(長尺体1を支持フレーム2に固定する)
5、15 脚部
5a アジャスターボルト
5b 高さ調節ナット
5c 受け足
6 上面フランジ部孔
7 固定具(支持フレーム2を貫通スリーブ3の上面フランジ部3aに固定する)
8 長尺体固定具
8a 中ナット
8b、8c 固定ナット
10、11 支持装置
12 支持板
13 耐火ブロック
15b 支持フレーム2と同断面脚
15c チャンネル脚
15d L型アングル脚
17 L型締結具
17a 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の床貫通部に設けて、建造物内を貫通する長尺体を固定する支持装置であって、
建造物の床貫通部に嵌め込んで固定される貫通スリーブと、前記貫通スリーブの上面縁に設けられる一対の支持フレームと、前記支持フレームの両端に設けられる少なくとも1以上の脚部とを備え、
前記支持フレームは、前記貫通スリーブの上面縁で前記貫通スリーブに固定され、且つ前記長尺体の固定位置を調節可能な固定部を有し、
前記脚部は、床面からの高さが調整可能な構造を有し、且つ前記支持装置を床に保持又は固定する構造である
ことを特徴とする支持装置。
【請求項2】
建造物の床貫通部に設けて、建造物内を貫通する長尺体を固定する支持装置であって、
建造物の床貫通部に嵌め込んで固定される貫通スリーブと、前記貫通スリーブの上面縁に載置される一対の支持フレームと、前記支持フレームの両端に設けられる少なくとも1以上の脚部と、前記貫通スリーブの内部に支持板を介して載置される耐火ブロックとを備え、
前記支持フレームは、前記貫通スリーブの上面縁で前記貫通スリーブに固定され、且つ前記長尺体の固定位置を調節可能な固定部を有し、
前記脚部は、床面からの高さが調整可能な構造を有し、且つ前記支持装置を床に保持又は固定する構造である
ことを特徴とする支持装置。
【請求項3】
前記支持フレームの断面形状が、コ字状形状の上端部及び下端部の対向するほぼ平行な辺の先端をコ字の内側に向けて、ほぼ平行な辺を連結する垂直な辺にほぼ平行な方向に折り曲げた断面形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の支持装置。
【請求項4】
前記支持装置を用いて固定される建造物内を貫通する長尺体に加わる荷重における水平荷重分を、貫通スリーブと、その上面縁に固定した支持フレームとで担い、垂直荷重分を、支持フレームの両端に設けられる脚部で担うことを特徴とする建造物内を貫通する長尺体の支持手段を有する請求項1から請求項3のいずれかに記載の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−318841(P2007−318841A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143122(P2006−143122)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000165996)株式会社古河テクノマテリアル (23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】