説明

長尺体用スプール

【課題】フランジ部の大形化が容易であり、しかも扉部により長尺体の端部を確実に保持できるようにする。
【解決手段】円筒状に形成された胴部(2)と、胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、両フランジ部(3)間で胴部(2)の周囲に巻装部(4)を形成する。フランジ部(3)の外周縁部に環状の扉部(10)を形成し、扉部(10)の先端側を他方のフランジ部(3)側へ偏位させる。一方のフランジ部(3)を含む第1スプール部分(1a)と、他方のフランジ部(3)を含む第2スプール部分(1b)とを互いに別体に形成し、両スプール部分(1a・1b)を互いに接続する。第1スプール部分(1a)を柔軟材料で形成する。一方のフランジ部(3)に形成した扉部(10)の先端を、上記の他方のフランジ部(3)との当接位置よりも外側へ延設し、他方のフランジ部(3)へ押圧するように当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸や手芸糸、金属線などの糸条体のほか、包装用テープなどの帯状体を巻きつけておくスプールであって、必要量を随時引き出すことができ、しかも長尺体の端部を保持する扉部を備えた長尺体用スプールに関し、さらに詳しくは、フランジ部の大形化が容易であり、しかも扉部により長尺体の端部を確実に保持できる、長尺体用スプールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣糸などの長尺体が巻回されるスプールとしては、例えば、円筒状の胴部とこの胴部の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部とを備え、長尺体が巻回される巻装部をこの両フランジ部間で上記の胴部の周囲に形成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記のスプールに巻回された長尺体は、巻き終わりの端部が、例えばフランジ部の適所に形成された切込み部に係止され、長尺体が不用意に解けたり引き出されたりしないようにしてある。しかしながら、この切込み部はフランジ部の周縁の一箇所にのみ形成してあり、長尺体は必ずしもこの切込み部に対応した位置で切断されるとは限らないので、長尺体の長さによっては、巻装部の一周分以上の長さが、この切込み部からはみ出す場合がある。
【0004】
そこで上記の問題点を解消するため、従来、上記の両フランジ部の外周縁部にそれぞれ扉部を形成し、両扉部の外周縁部を互いに近接した閉じ姿勢と互いに離隔した開き姿勢とに切換可能に構成したスプールが提案されている(例えば、特許文献2参照、以下、従来技術という。)。この従来技術では、両扉部を閉じ姿勢に切換えることで、周方向の任意の位置で長尺体の端部が両扉部間に挟持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−153189号公報
【特許文献2】特許第3878196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のスプールは、フランジ部を大径にして長尺体の収容量を大きくしようとすると、金型が大形化して安価に実施できないばかりか、上記のフランジ部は薄肉に形成されることから、この薄肉のフランジ部を大径化すると成形の際に合成樹脂が先端まで充分にまわり難く、射出成形などで一体成形することが容易でない。
【0007】
上記の問題点を解消するため、一方のフランジ部を含む第1スプール部分と、他方のフランジ部を含む第2スプール部分とを互いに別体に形成して、両スプール部分を互いに接続することが考えられる。しかしながら、スプールの巻装部に長尺体を捲回すると、上記の両フランジ部の内面にフランジ間隔を拡げる方向に圧力が加わることから、上記のようにフランジ部分がそれぞれ異なるスプール部分に形成された場合には、フランジ部の外周縁部に形成した上記の扉部が他方のフランジ部から後退して、他方の扉部に当接できなくなる虞があった。特にフランジ部が大径化すると、フランジ部の外周縁部に形成した上記の扉部は大きく後退することとなり、両扉部が一層離間し易く、この結果、両扉部間に長尺体の端部を挟持できなくなる問題があった。
【0008】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、フランジ部の大形化が容易であり、しかも、扉部により長尺体の端部を確実に保持できる、長尺体用スプールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば、本発明の実施の形態を示す図1から図8に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明は長尺体用スプールに関し、円筒状に形成された胴部(2)と、この胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、長尺体(5)が巻回される巻装部(4)をこの両フランジ部(3)間で上記の胴部(2)の周囲に形成し、少なくとも一方のフランジ部(3)の外周縁部に環状の扉部(10)を形成し、この扉部(10)の先端側を他方のフランジ部(3)側へ偏位させた長尺体用スプールであって、上記の一方のフランジ部(3)を含む第1スプール部分(1a)と、上記の他方のフランジ部(3)を含む第2スプール部分(1b)とを互いに別体に形成して、両スプール部分(1a・1b)を互いに接続し、少なくとも上記の第1スプール部分(1a)を柔軟な材料で形成し、上記の扉部(10)の先端を、上記の他方のフランジ部(3)との当接位置よりも外側へ延設して、この扉部(10)をその他方のフランジ部(3)へ押圧するように当接したことを特徴とする。
【0010】
上記の一方のフランジ部の外周縁部に形成した扉部は、先端から内側へ偏位した位置で他方のフランジ部へ押圧するように当接するが、このフランジ部を含む上記の第1スプール部分は軟質材料で形成されているので、上記の扉部は弾性変形することで上記の他方のフランジ部へ所定の押圧力で当接する。上記の巻装部へ長尺体を捲回すると、上記の両フランジ部はこの長尺体に押圧されてフランジ間隔を拡げる方向に圧力を受け、上記の扉部が他方のフランジ部から後退しようとする。しかしこの扉部は先端が上記の他方のフランジ部との当接位置よりも外側へ延設してあるので、上記の長尺体に押圧されてフランジ間隔が拡がったとしても、この扉部は他方のフランジ部へ当接した状態に維持される。
【0011】
ここで、上記の長尺体とは、上記の胴部へ捲回可能な糸条体や帯状体をいう。この糸条体とは、例えば釣糸や手芸糸などの繊維製品のほか、金属線などをも含む。また上記の帯状体とは、装飾や包装などに用いられるリボン、テープなどをいう。これらの長尺体は、太さや幅が特定の寸法のものに限定されず、合成樹脂製のほか天然繊維製や金属製、紙製などであってもよく、特定の材質に限定されない。
【0012】
上記の柔軟材料とは、例えばポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂、軟質のポリ塩化ビニル樹脂などを挙げることができるが、上記の扉部が所定の押圧力で他方のフランジ部へ当接できて、その当接状態を長尺体が巻回されても維持できる柔軟性を備えておればよく、特定の材質のものに限定されない。ただしこの柔軟材料は、巻回される長尺体を確りと受け止める程度の硬さを備える必要があり、上記の柔軟性は、具体的には、例えばJIS K7215で規定された測定方法で、タイプDのデュロメータ硬さ(HDD)が30〜70であると好ましく、より好ましくはHDDが40〜60のものが用いられる。
【0013】
上記の第1スプール部分は柔軟材料で形成されるが、他方の第2スプール部分は特定の材料に限定されず、例えば同様の柔軟材料で形成すると、両スプール部分に形成した扉部をそれぞれ開き姿勢に切換えることで、巻装部を大きく開放できて好ましい。しかし、一般に軟質材料は透明性が低く、巻装部へ捲回された長尺体を目視することが容易でない。これに対し上記の第2スプール部分を、例えばポリスチレン樹脂やポリカーボネート樹脂など、第1スプール部分よりも硬い材料で形成した場合には、長尺体用スプール全体の強度を高く維持できるうえ、この第2スプール部分側の透明性を確保し易く、長尺体の色や寸法などを容易に目視できて好ましい。
【0014】
上記の胴部は、上記の第1スプール部分と第2スプール部分とのいずれか一方に形成したものであってもよく、或いは、両スプール部材とは別体に形成して、この胴部を介して第1スプール部分と第2スプール部分とを互いに接続することも可能である。しかし上記の胴部を、上記の第1スプール部分に形成した第1胴部部分と上記の第2スプール部分に形成した第2胴部部分とから構成すると、胴部は円筒状に形成してあるので、剛性が高く確りと接続できて好ましい。この場合、この第1胴部部分に係合部を設けるとともに第2胴部部分に係止部を設けて、この係止部を上記の係合部へ係合させることにより上記の第1胴部部分と第2胴部部分とを互いに接続すると、接着などの処理を要することなく、両胴部部分同士を簡単に接続できて好ましい。
【0015】
上記の扉部は、両スプール部分にそれぞれ形成してもよいが、上記の第1スプール部分にのみ形成してもよい。即ち、上記の一方のフランジ部の外周縁部に扉部を形成し、この扉部を上記の他方のフランジ部側へ偏位させ、その他方のフランジ部の外周縁部へ当接するように構成することができる。この構成によれば、上記の他方のフランジ部は外周縁部が真円形など所定形状に保持されているので、これに当接する扉部はその外周縁部の形状に沿うこととなり、この結果、扉部とこれが当接する他方のフランジ部との間に隙間を生じる虞がなく、この扉部で長尺体の端部を一層確実に保持できて好ましい。
【0016】
上記の扉部は、特定の形状や構造のものに限定されないが、この扉部の先端側を、上記の他方のフランジ部側へ偏位させた閉じ姿勢と、この他方のフランジ部から離隔させた開き姿勢とに切換可能に構成すると、この扉部を閉じ姿勢に切換えることで長尺体の端部を確実に保持できるうえ、開き姿勢に切換えることで長尺体を巻装部へ容易に案内して捲回できるので、好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0018】
(1)上記の一方のフランジ部を含む第1スプール部分と、上記の他方のフランジ部を含む第2スプール部分とを互いに別体に形成して、両スプール部分を互いに接続したので、成形の際に合成樹脂が薄肉のフランジ部の先端まで充分にまわり易く、フランジ部の大形化が容易であり、長尺体の収容量を容易に大きくすることができる。
【0019】
(2)巻装部への長尺体の捲回によりフランジ間隔が拡がったとしても、上記の扉部は他方のフランジ部へ当接した状態に維持されるので、この扉部により長尺体の端部を確実に保持することができる。
【0020】
(3)上記の一方のフランジ部や扉部は柔軟材料で形成されているので、容易に変形させることができ、この扉部を他方のフランジ部から離間させることで、長尺体を巻装部へ容易に案内してこの巻装部へ捲回することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、釣糸用スプールの一部破断斜視図である。
【図2】第1実施形態の、組付前の第1スプール部分と第2スプール部分の胴部近傍を拡大した斜視図である。
【図3】第1実施形態の釣糸用スプールを示し、図3(a)は巻装部近傍を拡大した断面図、図3(b)は図3(a)のB部の拡大断面図である。
【図4】本発明の変形例1を示す、扉部近傍の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す、巻装部近傍の拡大断面図である。
【図6】第2実施形態の変形例を示し、図6(a)は変形例2の図4相当図、図6(b)は変形例3の図4相当図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す、図2相当図である。
【図8】第2実施形態の、胴部近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図3は本発明の第1実施形態を示し、図1は長尺体用スプールである釣糸用スプールの一部破断斜視図、図2は組付前の第1スプール部分と第2スプール部分の、胴部近傍を拡大した斜視図、図3(a)は巻装部近傍を拡大した断面図、図3(b)は図3(a)のB部の拡大断面図である。
【0023】
図1に示すように、この釣糸用スプール(1)は、円筒状に形成された胴部(2)と、この胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備える。そして、この両フランジ部(3)間で上記の胴部(2)の周囲に巻装部(4)が形成してあり、この巻装部(4)に釣糸(5)が巻回される。
【0024】
図1と図2に示すように、上記の釣糸用スプール(1)は、一方のフランジ部である第1フランジ部(3a)を含む第1スプール部分(1a)と、他方のフランジ部である第2フランジ部(3b)を含む第2スプール部分(1b)とを互いに別体に形成してあり、上記の胴部(2)で両スプール部分(1a・1b)を互いに接続してある。即ちこの胴部(2)は、上記の第1スプール部分(1a)に形成した第1胴部部分(2a)と、上記の第2スプール部分(1b)に形成した第2胴部部分(2b)とから構成してあり、この第1胴部部分(2a)に溝状の係合部(6)を設け、第2胴部部分(2b)に鉤状の係止部(7)が設けてある。この係止部(7)を上記の係合部(6)へ係合させることにより、上記の第1胴部部分(2a)と第2胴部部分(2b)とが互いに接続される。
【0025】
上記の第1胴部部分(2a)には、接続端面の周縁に環状の凸部(8)が形成してある。また上記の第2胴部部分(2b)には、この環状凸部(8)と対面する部位に環状の凹部(9)が形成してある。上記の第1胴部部分(2a)と第2胴部部分(2b)とを互いに接続する際に、この環状凸部(8)と環状凹部(9)とがインロー式に嵌合し、これにより胴部(2)の外周面が滑らかに連続した円筒面に形成され、巻装部(4)に捲回した釣糸(5)が、両胴部部分(2a・2b)間へ入り込まないようにしてある。
【0026】
上記の第1スプール部分(1a)と第2スプール部分(1b)は、ともに、例えばポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂、軟質のポリ塩化ビニル樹脂などの、柔軟な合成樹脂材料で形成してある。具体的には、例えばタイプDのデュロメータ硬さ(HDD)が55程度のポリエチレン樹脂などが用いられる。
【0027】
図1と図3に示すように、上記の各フランジ部(3a・3b)の外周縁部には、それぞれ環状の扉部(10)が形成してある。この扉部(10)の先端側は、それぞれ他のフランジ部側へ偏位させてあり、両扉部(10・10)の先端部同士を互いに当接させてある。さらにこの扉部(10)の先端は、両スプール部分(1a・1b)を互いに組み付ける前の自然な状態では、図3(b)の仮想線に示すように、他方の扉部(10)との当接位置よりも所定長さ(L)だけ外側へ延設してある。そして両スプール部分(1a・1b)を互いに組み付けることで、扉部(10)同士が互いに押圧しあうように当接してある。このとき、上記の両スプール部分(1a・1b)はともに柔軟な合成樹脂材料で形成されているので、弾性変形することで扉部(10)同士が所定の押圧力で互いに当接する。
【0028】
また上記の両扉部(10・10)はそれぞれ柔軟な合成樹脂材料で形成されていることから、この扉部(10)の先端側を、図3(a)の実線に示すように他方の扉部(10)側へ偏位させた閉じ姿勢(X)と、図3(a)の仮想線に示すように、この他方の扉部(10)から離隔させた開き姿勢(Y)とに切換ることが可能である。
【0029】
上記の釣糸用スプール(1)に釣糸(5)を捲回する場合、上記の両扉部(10・10)をそれぞれ開き姿勢(Y)に切換え、上記の巻装部(4)へ釣糸(5)を案内して捲回する。この捲回により、上記の両フランジ部(3a・3b)は、それぞれ外側へ、即ち、フランジ間隔を拡げる方向に圧力を受ける。しかし、このフランジ部(3)を含む上記の各スプール部分(1a・1b)は柔軟な合成樹脂材料で形成されており、各フランジ部(3a・3b)の外周縁部に形成した上記の扉部(10)は、他方の扉部(10)との当接位置よりも所定長さ(L)だけ外側へ延設してあるので、釣糸(5)の捲回の際の押圧力によりフランジ間隔が拡がったとしても、上記の両扉部(10)をそれぞれ閉じ姿勢(X)に切換えると、この扉部(10)が弾性変形し他方の扉部(10)へ所定の押圧力で当接した状態に維持される。この結果、図1に示すように、巻装部(4)から引き出された釣糸(5)の端部は、上記の両扉部(10・10)間に確りと挟持されて保持される。
【0030】
上記の実施形態では、扉部の形状を略円錐面に形成して、両扉部の先端部同士を互いに当接した。しかし本発明では上記の扉部は特定の形状に限定されず、また扉部と他のフランジ部との当接位置も上記の実施形態のものに限定されない。
【0031】
例えば図4に示す変形例1は、第1フランジ部(3a)に形成した扉部(10a)を、第2フランジ部(3b)に形成した扉部(10b)よりも大径にしてある。そしてこの大径の扉部(10a)の先端(11)を、小径の扉部(10b)との当接位置よりも外側へ延設し、この大径の扉部(10a)の先端(11)から内側へ偏位した位置で小径の扉部(10b)へ押圧するように当接してある。このように構成することで、両扉部(10a・10b)をそれぞれ閉じ姿勢(X)に切換えると、大径の扉部(10a)は小径の扉部(10b)の外周縁部に沿って支持される。この結果、フランジ部(3)の全周縁に渡って両扉部(10a・10b)間に隙間を生じる虞が無くなり、任意の位置で釣糸を挟持して保持することができる。
【0032】
上記の第1実施形態では、両フランジ部分をいずれも柔軟な合成樹脂材料で形成した。しかし本発明では、例えば図5に示す第2実施形態のように、第2スプール部分(1b)を第1スプール部分(1a)よりも硬い材料で形成してもよい。
【0033】
即ち、この第2実施形態では、第1スプール部分(1a)は、上記の第1実施形態と同様、ポリプロピレン樹脂のような柔軟な合成樹脂材料で形成してある。しかし第2スプール部分(1b)は、第1スプール部分(1a)よりも硬い、例えば、ポリスチレン樹脂やポリカーボネート樹脂などで形成してある。また、上記の第1スプール部分(1a)は第1フランジ部(3a)の外周縁部に環状の扉部(10)を形成し、この扉部(10)の先端側を第2スプール部分(1b)の第2フランジ部(3b)側へ偏位させてある。これに対しこの第2スプール部分(1b)は第2フランジ部(3b)を平板な円板状に形成してあり、その外周縁部に扉部は形成されていない。
【0034】
上記の第2スプール部分(1b)は硬質の合成樹脂材料で形成されており、可塑剤などを含まないので、内部の釣糸を充分に目視できるように透明材料で形成することができる。またこの第2スプール部分(1b)は、第2フランジ部(3b)が硬い材料で形成してあるので、釣糸用スプール(1)全体の剛性や強度を高く維持できるうえ、所定の押圧力で第2フランジ部(3b)側へ偏位した上記の扉部(10)を確りと受け止めることができ、第2フランジ部(3b)の全周縁にわたって、上記の扉部(10)との間に隙間を生じることが防止される。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0035】
この第2実施形態においても、上記の扉部の形状は上記のものに限定されず、任意の形状に形成することができる。例えば図6(a)に示す第2変形例では、第1フランジ部(3a)を第2フランジ部(3b)よりも大径に形成してあり、この第1フランジ部(3a)の外周縁部に形成した扉部(10)の先端を、第2フランジ部(3b)との当接位置よりも外側へ延設して、この扉部(10)の先端(11)から内側へ偏位した位置で、第2フランジ部(3b)へ押圧するように当接してある。このように構成することで、閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(10)は、第2フランジ部(3b)の外周縁部に沿って支持され、第2フランジ部(3b)の全周縁に渡って、両扉部(10・10)間に隙間を生じる虞を一層良好に無くすことができ、任意の位置で釣糸を挟持して確実に保持できる。
【0036】
図6(b)に示す第3変形例では、第2フランジ部(3b)の外周縁部に環状の扉部(10)を形成し、この扉部(10)の先端側を第1フランジ部(3a)側へ偏位させたものである。この第2フランジ部(3b)は硬い合成樹脂材料で形成してあり、開き姿勢に切換不能となっている。この場合、第1フランジ部(3a)の外周縁部に形成された扉部(10)は、第2フランジ部(3b)側へ僅かに偏位させるだけでこの第2フランジ部(3b)に当接することができるので、巻装部(4)内の容積を大きく確保できて好ましい。
【0037】
上記の各実施形態では、いずれも胴部を、長さ方向の中間部で軸直交方向の平面により分割された第1胴部部分と第2胴部部分とから構成した。しかし本発明ではこの胴部をいずれか一方のスプール部分に設けてもよく、或いは両スプール部分とは別体に形成して、この胴部を介して第1スプール部分と第2スプール部分とを接続してもよい。
【0038】
さらに図7と図8に示す第3実施形態のように、上記の胴部(2)を、第1スプール部分(1a)に形成した第1胴部部分(2a)と、第2スプール部分(1b)に形成した第2胴部部分(2b)とから構成し、この第1胴部部分(2a)を第2胴部部分(2b)に外嵌、或いは内嵌することにより、上記の第1スプール部分(1a)と第2スプール部分(1b)とを互いに接続してもよい。
【0039】
即ち図7に示すように、第1胴部部分(2a)には周方向の2箇所に係合溝(12)が形成してあり、この係合溝(12)の基端部に係合凹部(13)が形成してある。一方、第2胴部部分(2b)には先端内面に係止突起(14)が設けてある。この第2胴部部分(2b)を第1胴部部分(2a)に外嵌し、係合突起(14)を上記の係合溝(12)で案内したのち、この第2胴部部分(2b)を周方向へ回転させて、上記の係合突起(14)を係合凹部(13)へ嵌入させると、これにより両スプール部分(1a・1b)が互いに接続される。この両スプール部分(1a・1b)が互いに接続された状態では、図8に示すように、第1胴部部分(2a)と第2胴部部分(2b)とが二重筒状となっているので、釣糸用スプール(1)全体の強度を高めることができる。
【0040】
上記の実施形態で説明した長尺体用スプールは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の形状や寸法、材質などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0041】
例えば、上記の各実施形態では、フランジ部を均一な肉厚に形成してその外周縁部に扉部を形成した。しかしこの扉部の内周縁部に沿って環状の凹溝部を形成すると、この凹溝部でヒンジのように屈曲することで、扉部を容易に開き姿勢と閉じ姿勢とに切換えることができ、好ましい。
【0042】
また、上記の実施形態では長尺体が釣糸である場合について説明したが、本発明に用いる上記の長尺体は、他の糸条体や、巻装部と同じ幅の或いはこれよりも狭い幅の帯状体等であってもよいことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の長尺体用スプールは、フランジ部の大形化が容易であり、しかも扉部により長尺体の端部を確実に保持できるので、特に釣糸用スプールに好適であるが、手芸糸や包装用テープなど、他の長尺体に用いるスプールにも好適である。
【符号の説明】
【0044】
1…長尺体用スプール(釣糸用スプール)
1a…第1スプール部分
1b…第2スプール部分
2…胴部
2a…第1胴部部分
2b…第2胴部部分
3…フランジ部
4…巻装部
5…長尺体(釣糸)
6…係合部
7…係止部
10…扉部
X…閉じ姿勢
Y…開き姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成された胴部(2)と、この胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、長尺体(5)が巻回される巻装部(4)をこの両フランジ部(3)間で上記の胴部(2)の周囲に形成し、
少なくとも一方のフランジ部(3)の外周縁部に環状の扉部(10)を形成し、この扉部(10)の先端側を他方のフランジ部(3)側へ偏位させた長尺体用スプールであって、
上記の一方のフランジ部(3)を含む第1スプール部分(1a)と、上記の他方のフランジ部(3)を含む第2スプール部分(1b)とを互いに別体に形成して、両スプール部分(1a・1b)を互いに接続し、
少なくとも上記の第1スプール部分(1a)を柔軟な材料で形成し、
上記の扉部(10)の先端を、上記の他方のフランジ部(3)との当接位置よりも外側へ延設して、この扉部(10)をその他方のフランジ部(3)へ押圧するように当接したことを特徴とする、長尺体用スプール。
【請求項2】
上記の柔軟材料は、タイプDのデュロメータ硬さ(HDD)が30〜70である、請求項1に記載の長尺体用スプール。
【請求項3】
上記の第2スプール部分(1b)を第1スプール部分(1a)よりも硬い材料で形成した、請求項1または請求項2に記載の長尺体用スプール。
【請求項4】
上記の胴部(2)を、上記の第1スプール部分(1a)に形成した第1胴部部分(2a)と上記の第2スプール部分(1b)に形成した第2胴部部分(2b)とから構成し、この第1胴部部分(2a)に係合部(6)を設けるとともに第2胴部部分(2b)に係止部(7)を設けて、この係止部(7)を上記の係合部(6)へ係合させることにより上記の第1胴部部分(2a)と第2胴部部分(2b)とを互いに接続した、請求項1から3のいずれか1項に記載の長尺体用スプール。
【請求項5】
上記の扉部(10)の先端側を、上記の他方のフランジ部(3)側へ偏位させた閉じ姿勢(X)とこの他方のフランジ部(3)から離隔させた開き姿勢(Y)とに切換可能に構成した、請求項1から4のいずれか1項に記載の長尺体用スプール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−213611(P2010−213611A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63478(P2009−63478)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(506269149)株式会社ワイ・ジー・ケー (21)
【Fターム(参考)】