説明

長尺体用スプール

【課題】巻き付けられた長尺体を扉部で容易に保護できるうえ、長尺体を任意の位置で確実に保持でき、しかも釣針などの付設部材を備えた長尺体であっても、その付設部材を安定良く保持しながら、長尺体を容易に巻回できるようにする。
【解決手段】円筒状の胴部(2)と、胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備える。長尺体が巻回される巻装部(5)を、両フランジ部(3)間で胴部(2)の周囲に形成する。フランジ部(3)のうち、第1フランジ部(3a)の外周縁部(6a)に環状の扉部(7)を延設し、扉部(7)の先端側を、第2フランジ部(3b)側へ変位させた閉じ姿勢と、第2フランジ部(3b)から離隔させた開き姿勢とに切り換える。第2フランジ部(3b)に、外周端部(6b)から径方向内側へ向けて溝状の係止部(10)を形成する。係止部(10)に長尺体を係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸や手芸糸、金属線などの糸条体を巻きつける長尺体用スプールに関し、さらに詳しくは、巻き付けられた長尺体をフランジ部の周縁に形成した扉部で容易に保護できるうえ、任意の位置で確実に保持でき、しかも釣針などの付設部材を備えた長尺体であっても、その付設部材を安定良く保持しながら、長尺体を容易に巻回できる、長尺体用スプールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣糸などの長尺体が巻回されるスプールとしては、例えば、円筒状の胴部とこの胴部の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部とを備え、長尺体が巻回される巻装部をこの両フランジ部間で上記の胴部の周囲に形成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。上記の巻装部に巻回された長尺体は、例えば両フランジ部の外周縁部間を覆う状態に装着されたカバー部材等で保護される。
【0003】
上記のカバー部材は、長尺体の巻装時や取り出し時に着脱しなければならず、煩雑である。また、上記のスプールに巻回された長尺体は、巻き終わりの端部が、例えばフランジ部の適所に形成された切込み部に係止され、長尺体が不用意に解けたり引き出されたりしないようにしてある。しかしながら、この切込み部はフランジ部の周縁の一箇所にのみ形成してあり、長尺体は必ずしもこの切込み部に対応した位置で切断されるとは限らないので、長尺体の長さによっては、巻装部の一周分以上の長さが、この切込み部からはみ出す場合がある。
【0004】
そこで上記の問題点を解消するため、本願発明者等は、上記の一方または両方のフランジ部の外周縁部に扉部を延設し、この扉部を閉じ姿勢と開き姿勢とに切換可能に構成したスプールを提案した(例えば、特許文献2参照、以下、従来技術という。)。この従来技術では、扉部を閉じ姿勢に切換えることで、長尺体を保護できるうえ、扉部と他のフランジ部間や扉部同士間に長尺体を挟持できるので、その長尺体の端部を任意の位置で保持できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−153189号公報
【特許文献2】特開2010−063427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術では、例えば巻装部に巻回される長尺体の量が多くなると、その長尺体の巻付け力により上記の一対のフランジ部が互いに離隔する方向に押圧される場合がある。そして、その押圧力が過剰に大きくなると巻装部が拡幅されて、上記の扉部を閉じ姿勢に切り換えても他方の扉部やフランジ部と当接できなくなり、隙間が形成されて上記の長尺体を確りと保持できなくなる虞がある。
【0007】
また、長尺体が釣糸であって、釣針やサルカンなどの部材を付設したハリスである場合には、これらの付設部材を上記の巻装部内へ巻きつけることができないので、これらの釣針等を付設したハリスの取り扱いが容易でない。例えばこれらの部材をフランジ部の外側へ配置した状態で巻装部に長尺体を巻回すると、その付設部材に加わる重量などにより引っ張られて長尺体が引き出される虞もある。
【0008】
本発明の技術的課題は、上記の問題点を解消し、巻き付けられた長尺体をフランジ部の周縁に形成した扉部で容易に保護できるうえ、任意の位置で確実に保持でき、しかも釣針などの付設部材を備えた長尺体であっても、その付設部材を安定良く保持しながら、長尺体を容易に巻回できる、長尺体用スプールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1〜図6に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明は長尺体用スプールに関し、円筒状に形成された胴部(2)と、この胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、長尺体(4)が巻回される巻装部(5)をこの両フランジ部(3)間で上記の胴部(2)の周囲に形成した長尺体用スプールであって、上記のフランジ部(3)のうち、第1フランジ部(3a)の外周縁部(6a)に環状の扉部(7)を延設して、この扉部(7)の先端側を、第2フランジ部(3b)側へ変位させた閉じ姿勢(X)とこの第2フランジ部(3b)から離隔させた開き姿勢(Y)とに切換可能に構成し、上記の第2フランジ部(3b)に、その外周端部(6b)から径方向内側へ向けて溝状の係止部(10)を形成して、この係止部(10)に上記の長尺体(4)を係止可能に構成したことを特徴とする。
【0010】
上記長尺体用スプールでは、扉部が閉じ姿勢にされると、巻装部に巻回された長尺体が外部から遮蔽されてこの扉部により保護される。また上記の長尺体は、上記の扉部と第2フランジ部の外周縁との間に挟持されるので、この長尺体の巻き終わり端部の近傍など任意の位置が保持される。さらにこの長尺体の端部近傍は、上記の係止部に挿通して係止されると確りと保持される。
【0011】
上記の長尺体が、例えば釣針を端部に備えたハリスである場合などは、この長尺体が上記の巻装部へ巻回される際、上記の釣針を付設した端部が巻き始め端部とされ、その釣針が上記の巻装部から第2フランジ部の側方へ出された状態で、巻き始め端部の近傍が上記の係止部に挿通されて係止される。この状態で長尺体が巻装部に巻回され、その巻き終り端部の近傍が扉部と第2フランジ部の外周縁との間に挟持され、或いは上記の係止部に挿通して係止される。上記のハリスが一端にサルカンを備える場合は、このサルカンを備えた長尺体の端部を巻き終わり端部としてもよい。この場合の長尺体は、サルカンを付設していない端部側から巻装部に巻回され、巻き終わり端部の近傍が上記の係止部に挿通されて係止され、サルカンが第2フランジ部の側方へ出された状態となる。
【0012】
上記の係止部は、上記の第2フランジ部の一か所に形成してもよいが、この第2フランジ部に複数形成してあると、長尺体の巻き終わり端部に近接した適切な係止部を選定し、この係止部に長尺体の端部近傍を係止させることで、この係止部から長尺体の巻き終わり端部が過剰にはみ出すことを防止できて好ましい。さらにこの場合、係止部が複数あるので、複数の長尺体を同一のスプールに巻回した場合に、その長尺体の端部を異なる係止部に係止させることができ、複数の長尺体を個別に管理することができて好ましい。
【0013】
例えば、長尺体が上記の釣針を備えたハリスの場合、1本目のハリスの巻き始め端部がいずれかの係止部に係止され、巻き終わり端部が同じ係止部または他のいずれかの係止部に係止される。そして2本目のハリスの巻き始め端部が、例えば1本目のハリスの巻き始め端部を係止した係止部と隣接する係止部に係止され、2本目のハリスの巻き終わり端部が1本目のハリスの巻き終わり端部を係止した係止部と隣接する係止部に係止される。このように巻回して端部を係止することにより、各長尺体を順次、巻き終わり端部から取出すことができる。
【0014】
なお、上記の係止部が、上記の第2フランジ部に複数形成してある場合は、各係止部の近傍に数字やアルファベットなどの記号等の、係止部の位置を特定する目印が設けてあると、巻き付け順序や取出し順序を明確にできて好ましい。
【0015】
上記の係止部は、上記の長尺体を係止できれる溝状であればよく、特定の形状に限定されない。しかしこの係止部の溝幅は、少なくとも中間部から第2フランジ部の外周縁部まで、その外周縁部に向かうほど徐々に広がるように形成してあると、この係止部内へ長尺体を容易に案内できて好ましい。
【0016】
また上記の係止部は、少なくとも一方の溝内側面に薄肉部が他方の溝内側面に向けて突設してあると、上記の長尺体は、この薄肉部を撓ませることで係止部内へ挿通され、或いは係止部から取り出される。この場合、長尺体はこの薄肉部により、係止部から不用意に取出されることが防止されるので、長尺体が係止部へより確実に保持されて好ましい。
【0017】
上記の各フランジ部は、胴部の一端から径方向外側へ延設してあればよく、特定の形状のものに限定されない。しかしこの第2フランジ部側の側面には、上記の係止部と干渉しない部位に磁石を備えると、上記のような釣針やサルカンなど、磁性体からなる部材が長尺体に付設してある場合に、上記の係止部から第2フランジ部の外側に出されたこれらの部材を上記の磁石に磁力で固定させることができ、安定的に保持できて好ましい。
【0018】
ここで、上記の長尺体とは、上記の胴部へ巻回可能な糸条体や帯状体をいう。この糸条体とは、例えば釣糸や手芸糸などの繊維製品のほか、金属線などをも含む。また上記の帯状体とは、装飾や包装などに用いられるリボン、テープなどをいう。これらの長尺体は、太さや幅が特定の寸法のものに限定されず、合成樹脂製のほか天然繊維製や金属製、紙製などであってもよく、特定の材質に限定されない。
【0019】
上記の胴部とフランジ部および扉部とは、特定の素材に限定されないが、これらを合成樹脂にて一体に形成してもよい。一方、上記の扉部は、上記の閉じ姿勢と開き姿勢とに切換できる程度の柔軟性を備えた材質で形成され、通常、好ましくは合成樹脂材料で形成される。この扉部と上記のフランジ部および胴部とは、別体に形成して互いに接着などにより接合してもよいが、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂材料により一体的に成形すると、接合手段や接合工程が不要であり、安価に実施できて好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0021】
(1) 上記の巻装部に巻回された長尺体は、上記の扉部を閉じ姿勢に切り換えると、この扉部で覆われるので、他の保護部材を必要とすることなく、この扉部により容易に保護することができる。
【0022】
(2) 上記の扉部を閉じ姿勢に切り換えると、長尺体がこの扉部と第2フランジ部の外周縁との間に挟持されるので、この長尺体を、その巻き終わり端部近傍など任意の位置で保持することができる。しかも、例えば端部近傍を上記の係止部へ挿通して係止することにより、この長尺体を確実に保持することも可能である。
【0023】
(3) 上記の長尺体が、例えば釣針やサルカンなど付設部材を備える場合であっても、長尺体をこの部材を付設した近傍で上記の係止部へ挿通して係止することにより、上記の付設部材を第2フランジ部の側方へ出した状態で、長尺体を巻装部へ容易に巻回することができる。しかも第2フランジ部の側方へ出した付設部材は、その近傍で長尺体が係止部に係止されるので、その付設部材が重量などにより引っ張られても、長尺体が引き出されることを防止でき、この結果、その付設部材を安定良く第2フランジ部の側方に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、釣糸用スプールの一部破断斜視図である。
【図2】第1実施形態の、扉部を閉じ姿勢に切り換えた状態の釣糸用スプールの断面図である。
【図3】第1実施形態の、扉部を開き姿勢に切り換えた釣糸用スプールの要部の拡大断面図である。
【図4】第1実施形態の、釣糸用スプールの正面図である。
【図5】第1実施形態の係止部を示し、図5(a)は係止部近傍の要部の拡大正面図であり、図5(b)は図5(a)のB−B線矢視断面図である。
【図6】第2実施形態の、釣糸用スプールの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図5は本発明の第1実施形態を示している。図1と図2に示すように、この釣糸用スプール(1)は円筒状に形成された胴部(2)と、この胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、この両フランジ部(3・3)間で上記の胴部(2)の周囲に、釣糸(4)が巻回される巻装部(5)を形成してある。
【0026】
上記のフランジ部(3)は、第1フランジ部(3a)を第2フランジ部(3b)よりも小径に形成してあり、この小径の第1フランジ部(3a)の外周縁部(6a)に、環状の扉部(7)が延設してある。この扉部(7)と上記の両フランジ部(3)と胴部(2)とは、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂材料で一体に成形してあり、扉部(7)の肉厚は、例えば第1フランジ部(3a)の肉厚の70%以上に、好ましくは75%以上に形成してある。
【0027】
上記の扉部(7)は、フランジ部(3)の中心軸心(L)を中心軸とする截頭円錐面に形成してあり、従って図2に示すように、軸心方向の断面形状が、フランジ部(3)の径方向に対し傾斜した直線状に形成されている。このため、上記のフランジ部(3)の径方向に対する扉部(7)の傾斜角度を、径方向の全幅に亘って大きな角度に、例えば約45度〜約65度の範囲内で任意の角度に設定することができ、この扉部(7)におけるフランジ部(3)の半径方向の寸法を短くして、巻装部(5)の収容容積を大きくすることができる。
【0028】
上記の扉部(7)の基端側には薄肉の凹溝部(8)が環状に形成してある。この凹溝部(8)は上記の第1フランジ部(3a)や扉部(7)に比べて薄肉に形成されているので、あたかもヒンジのように屈曲することができる。従って図3に示すように、この凹溝部(8)で屈曲させることにより、上記の扉部(7)は、先端側を第2フランジ部(3b)側へ変位させた閉じ姿勢(X)と、この第2フランジ部(3b)から離隔させた開き姿勢(Y)とに切換られる。
【0029】
上記の第2フランジ部(3b)は、外周縁部(6b)が薄肉に形成してあり、この薄肉外周縁部(6b)の外径は、上記の閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)へ単に当接する大きさよりもやや大径に形成してある。一方、上記の扉部(7)の外径は、上記の第2フランジ部(3b)の外径よりも大径に形成してある。このため、上記の閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)は、第2フランジ部(3b)を包み込むように取り囲んでおり、その先端周縁(9)から内方へ入り込んだ位置で、上記の第2フランジ部(3b)の外周縁部(6b)へ押付けるように当接している。このときの押圧力は、上記の外周縁部(6b)が薄肉であるので良好に緩衝される。この結果、この閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)は、第2フランジ部(3b)の薄肉外周縁部(6b)に沿った形状となり、この薄肉外周縁部(6b)との間に隙間を生じることなく、均一に押し付けた状態で当接する。
【0030】
上記の扉部(7)の肉厚は、第1フランジ部(3a)の肉厚の70%以上に、好ましくは75%以上に形成されており、第2フランジ部(3b)の薄肉外周縁部(6b)へ確りと、周方向の全域にわたって(但し、後述の係止部を設けた部位を除く)均一に押付けられる。この結果、釣糸(4)の端部が巻装部(5)の周方向のいずれの位置にあっても、図2に示すように、この閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)と第2フランジ部(3b)との間の任意の位置で、この釣糸(4)の端部を確実に保持することができる。
【0031】
上記の閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)の先端周縁(9)は、第2フランジ部(3b)との当接位置よりも外方へ突出した状態となっている。このため、作業者はこの突出した部分に指先を引っ掛ける等により、扉部(7)を第2フランジ部(3b)から簡単に分離でき、上記の凹溝部(8)で屈曲させることで、この扉部(7)を開き姿勢(Y)へ容易に切換えることができる。
【0032】
図4に示すように、上記の第2フランジ部(3b)には、その外周端部(6b)から径方向内側へ向けて、4つの溝状の係止部(10)が、周方向へ等間隔に形成してある。上記の釣糸(4)は、この係止部(10)へ挿通することによっても係止される。なお、この第1実施形態では上記の第2フランジ部に4つの係止部(10)を設けたが、本発明ではこの係止部は1つでもよく、2以上の任意の個数であってもよい。
【0033】
上記の係止部(10)には、例えば釣針(11)を付設した上記の釣糸(4)の巻き始め端部近傍が挿通され、その釣針(11)は第2フランジ部(3b)の側方に配置される。この第2フランジ部(3b)側の側面には、上記の係止部(10)と干渉しない部位に、必要に応じて扇形で板状の磁石(12)が接着剤等で固定してある。上記の釣針(11)は鉄などの磁性体で形成してあり、上記の磁石(12)へ磁力で吸着固定され、所定位置に安定よく保持される。
【0034】
一方、上記の釣糸(4)の巻き終わり端部は、前述したとおり、巻装部(5)の周方向のいずれの位置にあっても、図2に示すように、閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)と第2フランジ部(3b)との間の任意の位置で保持される。
ただし、巻装部に多量の釣糸(4)が巻回されてフランジ部(3・3)間が離隔する方向に押圧された場合や、釣糸(4)の巻き終わり端部にサルカン(13)などの部材が付設されている場合などは、図4に示すように、この巻き終わり端部を上記の係止部(10)に挿通して係止させ、確実に保持してもよい。この場合、上記の巻き始め端部と巻き終わり端部は、同じ係止部(10)に係止してもよく、あるいは互いに異なる係止部(10)に係止してもよい。
【0035】
上記の係止部(10)は、図5(a)に示すように、中間部から第2フランジ部(3b)の外周縁部(6b)まで、その外周縁部(6b)に向かうほど徐々に広がるように形成してあり、これにより、釣糸(4)を係止部(10)内へ容易に案内できるようにしてある。
またこの溝状の係止部(10)の溝内側面には、図5(b)に示すように、薄肉部(14)がそれぞれ他方の溝内側面に向けて突設してある。この結果、係止部(10)の内端まで挿入された釣糸(4)は、上記の薄肉部(14)により係止部(10)から不用意に取出されることが防止されて、釣糸(4)が係止部(10)へより確実に保持される。
【0036】
次に、上記の釣糸(4)が、例えば一端に釣針(11)を備え、他端にサルカン(13)を付設したハリスである場合に、この釣糸(4)を上記の釣糸用スプール(1)の巻装部(5)へ巻回する手順について説明する。
最初に、上記の扉部(7)を開き姿勢(Y)に切り換えておき、上記の釣針(11)を付設した端部を釣糸(4)の巻き始め端部とし、この釣針(11)を第2フランジ部(3b)の側方に配置した状態で、巻き始め端部の近傍をいずれかの上記の係止部(10)に挿通して釣糸(4)を係止する。上記の釣針(11)は前記の磁石(12)に吸着固定しておく。この状態で上記の釣糸(4)を前記の巻装部(5)へ巻回していく。
【0037】
釣糸(4)が巻き終わり端部近傍になると、いずれかの係止部(10)にその釣糸(4)を挿通して係止する。必要があれば、図4に示すように、巻装部(5)から多めの釣糸(4)を繰り出した状態にしておき、その繰り出された釣糸(4)を隣接する係止部(10)との間の第2フランジ部(3b)の周側縁に巻き付けて、この釣糸(4)の端部を確りと保持してもよい。
上記の巻き終わり端部に付設したサルカン(13)は、第2フランジ部(3b)の側方で、上記の磁石(12)に吸着固定される。
【0038】
上記の釣糸(4)が複数本である場合は、1本目の巻き始め端部とは異なる位置の係止部(10)に、2本目の釣糸(4)の巻き始め端部近傍を、上記と同様に挿通して係止し、その後は上記と同様に操作して巻き終わり端部近傍を、1本目の巻き終わり端部とは異なる位置の係止部(10)に挿通して係止する。釣糸(4)が3本以上ある場合は、同様の操作が繰り返される。
【0039】
上記の釣糸(4)を使用する場合は、最後に巻回した釣糸(4)の巻き終わり端部が係止部(10)から取り外され、サルカン(13)により図外の道糸に固定される。サルカンを備えない場合はこの巻き終わり端部が上記の道糸に結ばれる。その後、釣糸(4)が順次巻装部(5)から巻き戻されたのち、釣針(11)が付設されている巻き始め端部が上記の係止部(10)から取り外される。釣糸(4)が複数巻回されている場合は、順次、同様の手順で釣糸用スプール(1)から個々の釣糸(4)が取り出される。
【0040】
図4は本発明の第2実施形態を示している。
この第2実施形態では、第2フランジ部(3b)の12箇所に、それぞれ外周端部(6b)から径方向内側へ向けて溝状の係止部(10)が、互いに等間隔に形成してある。各係止部(10)の近傍には、ぞれぞれ位置を特定する目印(15)として、数字やアルファベットが形成してある。なお本発明に用いるこの目印(15)は、特定の係止部(10)の近傍のみに、例えば星形など任意の形状の突起などを設けて構成してもよい。
その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用し、同様に用いられるので説明を省略する。
【0041】
上記の実施形態で説明した長尺体用スプールは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の形状や寸法、材質、係止部の個数などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0042】
例えば、上記の各実施形態では胴部(2)とフランジ部(3)と扉部(7)を合成樹脂材料で一体に形成したので、安価に製造することができる。しかし本発明では、例えば胴部とフランジ部とを別体に形成して組み付けるものであってもよい。また、上記の各実施形態では扉部(7)を截頭円錐面に形成したが、本発明の上記の扉部は、外側または内側へ湾曲させた形状であってもよい。
【0043】
また上記の実施形態では、上記の扉部(7)の基端側に凹溝部(8)を形成したが、この凹溝部は特定の断面形状のものに限定されず、扉部の基端側の外面と内面とのいずれに形成してもよく、両面に形成してもよい。さらにこの凹溝部は省略することも可能である。
また上記の実施形態では、第2フランジ部(3b)の外周縁部(3b)を薄肉に形成したが、本発明では第2フランジ部を均一な厚さに形成してもよい。
【0044】
上記の実施形態では、第2フランジ部(3b)側の側面に扇形の磁石(12)を固定したが、本発明では他の形状の磁石を固定してもよく、或いはこれらの磁石を省略したものであってもよい。
また上記の実施形態では、上記の係止部(10)を第2フランジ部(3b)の半径方向に形成した。しかし本発明では、第2フランジ部の半径方向に対し傾斜した方向に係止部を形成したものであってもよい。また上記の実施形態では、この係止部(10)が薄肉部(14)を備える場合について説明したが、本発明ではこの薄肉部を省略することも可能である。
【0045】
また上記の実施形態では、釣糸(4)の端部に釣針(11)などの部材を付設した場合について説明した。しかし本発明では、付設部材を備えない釣糸を複数本、巻装部へ捲回する場合にも適用でき、この場合、釣糸の巻き終わり端部近傍を互いに異なる係止部へ係止することで、各釣糸を個別に管理することができる。
さらに、上記の実施形態では長尺体(4)が釣糸である場合について説明したが、本発明に用いる上記の長尺体は、他の糸条体や、巻装部と同じ幅の或いはこれよりも狭い幅の帯状体等であってもよいことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の長尺体用スプールは、扉部を容易に開き姿勢と閉じ姿勢とに切換でき、閉じ姿勢に切換えた扉部で長尺体の端部を確実に保持できるうえ、巻装部の収容容積を大きくして長尺体の収容長さを長くできるので、特に釣糸用スプールに好適であるが、手芸糸や包装用テープなど、他の長尺体に用いるスプールにも好適である。
【符号の説明】
【0047】
1…長尺体用スプール(釣糸用スプール)
2…胴部
3…フランジ部
3a…第1フランジ部
3b…第2フランジ部
4…長尺体(釣糸)
5…巻装部
6a…第1フランジ部(3a)の外周縁部
6b…第2フランジ部(3b)の外周縁部(薄肉外周縁部)
7…扉部
10…係止部
12…磁石
14…薄肉部
X…閉じ姿勢
Y…開き姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成された胴部(2)と、この胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、長尺体(4)が巻回される巻装部(5)をこの両フランジ部(3)間で上記の胴部(2)の周囲に形成した長尺体用スプールであって、
上記のフランジ部(3)のうち、第1フランジ部(3a)の外周縁部(6a)に環状の扉部(7)を延設して、この扉部(7)の先端側を、第2フランジ部(3b)側へ変位させた閉じ姿勢(X)とこの第2フランジ部(3b)から離隔させた開き姿勢(Y)とに切換可能に構成し、
上記の第2フランジ部(3b)に、その外周端部(6b)から径方向内側へ向けて溝状の係止部(10)を形成して、この係止部(10)に上記の長尺体(4)を係止可能に構成したことを特徴とする、長尺体用スプール。
【請求項2】
上記の係止部(10)が、上記の第2フランジ部(3b)に複数形成してある、請求項1に記載の長尺体用スプール。
【請求項3】
上記の係止部(10)の近傍に、係止部(10)の位置を特定する目印(15)が設けてある、請求項1又は請求項2に記載の長尺体用スプール。
【請求項4】
上記の係止部(10)の溝幅は、少なくとも中間部から第2フランジ部(3b)の外周縁部(6b)まで、その外周縁部(6b)に向かうほど徐々に広がるように形成してある、請求項1から3のいずれかに記載の長尺体用スプール。
【請求項5】
上記の係止部(10)は、少なくとも一方の溝内側面に薄肉部(14)が他方の溝内側面に向けて突設してある、請求項1から4のいずれかに記載の長尺体用スプール。
【請求項6】
上記の第2フランジ部(3b)側の側面に磁石(12)を備える、請求項1から5のいずれかに記載の長尺体用スプール。
【請求項7】
上記の長尺体(4)が釣糸である、請求項1から6のいずれかに記載の長尺体用スプール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−143160(P2012−143160A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1672(P2011−1672)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(506269149)株式会社ワイ・ジー・ケー (21)
【Fターム(参考)】