説明

長尺物の陸上輸送装置

【課題】重心の低い安定した状態で曲がり角を旋回できるのみならず、アウトリガー式の補助輪機構を必要としない長尺物の陸上輸送装置。
【解決手段】長尺物の一端を支持し、他端が車両から突出するような支持台を備えた長尺物の陸上輸送装置において、前記支持台4を前記車両2に対して横移動させる支持台横移動装置13と、前記支持台4を前記車両4に対して時計又は反時計方向に回転させる支持台回転装置14からなる干渉回避装置3を前記車両2に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両による長尺物の陸上輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両による長尺物の陸上輸送装置としては、車両に搭載された異形長尺物(例えば、風力発電の風車のブレード等のように、長さ方向の大きさ及び重量に均等性のない長尺物)の一端を支持し、他端を車両から突出させる支持台と、この支持台を車両に対して起伏させる起伏装置とを備えた異形長尺物の運搬装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−243805号公報
【0004】
この異形長尺物の運搬装置は、車両が曲がり角に差し掛かると、異形長尺物を搭載した支持台を起立させ(支持台は、例えば、78°程度まで起立させることができる。)、荷台からの異形長尺物の突出長及び旋回径を小さくし、道路際の電柱や建屋などに接触しないようにしているが、上記のように、異形長尺物を搭載した支持台を起立させることによって重心の位置が高くなり、車両の走行が不安定になる。
【0005】
このため、この異形長尺物の運搬装置は、車両の両側部にアウトリガー式の補助輪機構を備えているが、アウトリガー式の補助輪機構を備えることにより、車両の構造および操作が煩雑になると云う問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、長尺物を搭載した支持台を直立させることなく、安定した状態で曲がり角を旋回できるのみならず、アウトリガー式の補助輪機構を必要としない比較的構造の簡単な長尺物の陸上輸送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明に係る長尺物の輸送装置は、次のような手段を採用する。
【0008】
即ち、請求項1に記載のように、長尺物の一端を支持し、他端が車両から突出するような支持台を備えた長尺物の陸上輸送装置において、前記支持台を前記車両に対して横移動させる支持台横移動装置と、前記支持台を前記車両に対して時計又は反時計方向に回転させる支持台回転装置からなる干渉回避装置を前記車両に設けたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載のように、請求項1記載の長尺物の輸送装置において、干渉回避装置を、車両に設置する基台と、該基台上に設けた支持台横移動用プレートと、該支持台横移動用プレート上に設けた支持台回転用プレートと、該支持台回転用プレート上に立設した複数の支持装置と、これらの支持装置によって支持された支持台取付用フレームにより形成してなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載のように、請求項2記載の長尺物の輸送装置において、基台に支持台横移動装置用、回転装置用及びテールアップ装置用の油圧装置を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載のように、請求項2記載の長尺物の輸送装置において、支持台回転装置を、支持台横移動用プレート上に立設させた立設部と、該立設部に嵌着させたスプロケットと、該スプロケットに巻き掛けたチェーンと、該チェーンの端部を支持する一対の油圧装置により形成してなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載のように、請求項1又は2記載の長尺物の輸送装置において、干渉回避装置に支持台のテールをアップするテールアップ装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、請求項1に係る発明は、長尺物の一端を支持し、他端が車両から突出するような支持台を備えた長尺物の陸上輸送装置において、前記支持台を前記車両に対して横移動させる支持台横移動装置と、前記支持台を前記車両に対して時計又は反時計方向に回転させる支持台回転装置からなる干渉回避装置を前記車両に設けたため、曲がり角で右折又は左折する時に、車両に搭載した干渉回避装置によって長尺物を搭載した支持台を回転及び/又は横移動させて長尺物の円弧の軌跡を小さくすることにより、重心の低い安定した状態のまま曲がり角を安全に旋回することができる。また、従来のように、アウトリガー式の補助輪機構を必要としないため、車両の構造や操作が煩雑になるのを回避することができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、請求項1記載の長尺物の輸送装置において、干渉回避装置を、車両に設置する基台と、該基台上に設けた支持台横移動用プレートと、該支持台横移動用プレート上に設けた支持台回転用プレートと、該支持台回転用プレート上に立設した複数の支持装置と、これらの支持装置によって支持された支持台取付用フレームにより形成したため、支持台の回転及び/又は横移動を円滑に行うことができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、請求項2記載の長尺物の輸送装置において、基台に支持台横移動装置用、回転装置用及びテールアップ装置用の油圧装置を設けたため、基台に対して支持台横移動用プレートを円滑に横スライドさせることができるのみならず、支持台横移動用プレートを円滑に回転させることができる。また、支持台を円滑にテールアップさせることができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明は、請求項2記載の長尺物の輸送装置において、支持台回転装置を、支持台横移動用プレート上に立設させた立設部と、該立設部に嵌着させたスプロケットと、該スプロケットに巻き掛けたチェーンと、該チェーンの端部を支持する一対の油圧装置により形成したため、支持台回転用プレートを支持台横移動用プレートに対して円滑に回転させることができる。
【0017】
また、請求項5に記載のように、請求項1又は2記載の長尺物の輸送装置において、干渉回避装置に支持台のテールをアップするテールアップ装置を設けたため、平坦部から登り勾配へ、或いは、下り勾配から平坦部へ進入する際に、干渉回避装置に設けたテールアップ装置によって長尺物を搭載した支持台のテールをアップすることにより、長尺物の自由端と地面との干渉を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、後部トレーラー2の上に干渉回避装置3を介して支持台4が設置されている。そして、支持台4上に長尺物(例えば、風力発電用の風車のブレード)5が搭載されている。符号6は、長尺物5の重心であり、干渉回避装置3の中心Oから距離L1だけ後方に位置している。
【0020】
図2に示すように、支持台4は、側面視でL字型を呈し、基枠7と、基枠7の前端に、前記基枠7に対して直角に設けた支持枠8により形成されている。支持枠8は、図4に示すように、井桁状に形成され、上下一対の横枠9と、左右一対の縦枠10の内側にある第2の縦枠11に設けた把持具(図示せず)によって長尺物5の基端部5aを保持するようになっている。また、支持枠8にカウンターウェイトを取り付けることにより、支持枠4を回転させた場合においても、長尺物の重量を支持枠4に載荷させることができる。
【0021】
上記干渉回避装置3は、主として、支持台横移動装置13と支持台回転装置14から構成されている。干渉回避装置3は、図2に示すように、後部トレーラー2上に設置する基台21と、基台21上に設けた横スライド用プレート22と、横スライド用プレート22上に設けた回転用プレート23と、回転用プレート23上に立設した複数(例えば、4本)の支持装置24と、これらの支持装置24によって支持された支持台取付用フレーム25を備えている。この実施形態では、支持装置24として、高さ調整用ジャッキを使用するが、ジャッキ以外に、例えば、柱状体や型材などの一般的な支持体を使用しても差し支えがない。
【0022】
支持台横移動装置13は、支持台4を横スライドさせる前後一対の油圧ジャッキ26を備えている。この横スライド用油圧ジャッキ26は、図3に示すように、夫々、その一端が基台21の右側に設けた前後一対のブラケット29,29に取り付けられ、他端が横スライド用プレート22の左側に設けた前後一対のブラケット30,30に取り付けられている。
【0023】
従って、この横スライド用油圧ジャッキ26,26のロッド26a,26aをシリンダー26b,26bから伸長させると、図5(b)に示すように、横スライド用プレート22が基台21の中心Oから基台21の左側に所定の距離L2だけ横スライドする。また、この横スライド用油圧ジャッキ26,26のロッド26a,26aをシリンダー26b,26b内に収縮させると、図5(c)に示すように、横スライド用プレート22が基台21の中心Oから基台21の右側に所定の距離L3だけ横スライドする。
【0024】
上記横スライド用プレート22は、図2に示すように、基台21の天板21aの下面を支持するローラ31と、前記天板21aの端面を支持するローラ32を備えている。
【0025】
他方、支持台回転装置14は、図3に示すように、横スライド用プレート22に立設させた円筒状の立設部16と、立設部16の外周部に嵌着させたスプロケット17と、スプロケット17に巻き掛けたチェーン18と、チェーン18の端部を支持する前後一対の油圧ジャッキ19により形成されている。この一対の油圧ジャッキ19は、支持台の前端側の油圧ジャッキ19A(以下、第2油圧ジャッキと云う。)と支持台の後端側の油圧ジャッキ(以下、第3油圧ジャッキと云う。)19Bにより構成され、夫々、回転用プレート23上に設置されている。
【0026】
従って、図6(a)に示すように、第3油圧ジャッキ19Bのロッド19aをシリンダー19bから伸長させると同時に、第2油圧ジャッキ19Aのロッド19a’をシリンダー19b’内に収縮させると、回転用プレート23が立設部16を軸(回転中心)にして時計方向に所定の角度θ2(例えば、0〜90°)だけ回転する。なお、図6(a)は、定位置(横軸X−X)から時計方向に45°回転した状態、図6(b)は、定位置(横軸X−X)から時計方向に90°回転した状態を示している。
【0027】
なお、第2及び第3油圧ジャッキ19A,19Bを上記操作と逆に操作すると、回転用プレート23を定位置(横軸X−X)から反時計方向に所定の角度(例えば、0〜90°)だけ回転させることができる。
【0028】
また、支持台4のテール4aを上方に回転させるテールアップ装置15は、左右一対の油圧ジャッキ28により構成されている。テールアップ用の油圧ジャッキ28は、図2に示すように、支持台前端側の支持装置24と支持台取付用フレーム25間に斜交いに架橋され、そのロッド28aを伸長させることにより、支持台4のテール4aを上方に所定の角度θ1 (例えば、5〜6°)だけ回転できるようになっている(図7参照。)。尚、ロッド28a先端は、支持台前端側の支持装置24よりも支持台後端側に位置している。
【0029】
次に、図10に示すように、後部トレーラー2を牽引車1に連結して長尺物5を陸送する場合について説明する。
【0030】
図8に示すように、T字路(道幅の狭い直線道路41に、前記道路41よりも道幅の巾の広い直線道路42がT字型に接続しているT字路)40の曲がり角を左折する場合は、牽引車1が巾の広い直線道路42のセンターライン43をオーバーするように左折するのであるが、その際、図9に示すように、支持台(図示せず)に搭載した長尺物5を後部トレーラー2の右側、即ち、矢印a方向に横スライドさせるとともに、時計方向、即ち、矢印b方向に所定の角度θ2だけ回転させる。このため、車両の重心を低く保持したまま長尺物5が狭い直線道路41際にある建造物や樹木に接触するのを回避することができる。なお、図8は、上記の干渉回避操作を行わない場合の例を示している。
【0031】
また、道路45の平坦部46から登り勾配47に掛かる場合には、図10に示すように、長尺物5を搭載した支持台4のテール4aを所定の角度θ1だけ上に持ち上げる。この場合、牽引車1及び後部トレーラー2が平坦部46から登り勾配47に掛かる場合でも長尺物5の後端5aが平坦部46に接触するのを回避することができる。また、牽引車1及び後部トレーラー2が下り勾配から平坦部に掛かる場合も、長尺物5を搭載した支持台4のテール4aを所定の角度θ1だけ上に持ち上げることにより、長尺物5の後端5aが下り勾配に接触するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る長尺物の輸送装置の側面図である。
【図2】本発明に係る長尺物の輸送装置の要部拡大側面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】支持台の正面図である。
【図5】(a)横スライド用プレートが基準位置に位置する状態説明図、(b)横スライド用プレートが基台の左側に横スライドした状態説明図、(c)横スライド用プレートが基台の右側に横スライドした状態説明図である。
【図6】(a)回転用プレートが基準位置から時計方向に45°回転した状態説明図、(b)回転用プレートが基準位置から時計方向に90°回転した状態説明図である。
【図7】支持台のテールをθ1だけ上に回転させた状態を示す説明図である。
【図8】T字路を左折する場合の説明図である。
【図9】T字路を左折する場合の長尺物のスライド方向を示す説明図である。
【図10】平坦部から登り勾配に掛かる場合の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
2 車両
3 干渉回避装置
4 支持台
13 支持台横移動装置
14 支持台回転装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物の一端を支持し、他端が車両から突出するような支持台を備えた長尺物の陸上輸送装置において、前記支持台を前記車両に対して横移動させる支持台横移動装置と、前記支持台を前記車両に対して時計又は反時計方向に回転させる支持台回転装置からなる干渉回避装置を前記車両に設けたことを特徴とする長尺物の輸送装置。
【請求項2】
干渉回避装置を、車両に設置する基台と、該基台上に設けた支持台横移動用プレートと、該支持台横移動用プレート上に設けた支持台回転用プレートと、該支持台回転用プレート上に立設した複数の支持装置と、これらの支持装置によって支持された支持台取付用フレームにより形成してなることを特徴とする請求項1記載の長尺物の輸送装置。
【請求項3】
基台に支持台横移動装置用、回転装置用及びテールアップ装置用の油圧装置を設けたことを特徴とする請求項2記載の長尺物の輸送装置。
【請求項4】
支持台回転装置を、支持台横移動用プレート上に立設させた立設部と、該立設部に嵌着させたスプロケットと、該スプロケットに巻き掛けたチェーンと、該チェーンの端部を支持する一対の油圧装置により形成してなることを特徴とする請求項2記載の長尺物の輸送装置。
【請求項5】
干渉回避装置に支持台のテールをアップするテールアップ装置を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の長尺物の輸送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−189099(P2008−189099A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24642(P2007−24642)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(592242822)三井造船鉄構工事株式会社 (7)