説明

長時間のイオントフォレシス施行期間に好適な犠牲電極設計及び送達種

塩配合物から正電荷を有する薬剤種を長時間送達するための装着可能なイオントフォレシスデバイスが開示され、これは、被酸化性金属の完全な消費を確実にするのに十分な幅を有する接続範囲を有するほぼ平面状の層の形態の易酸化性金属ベースの犠牲アノードであって、皮膚に安全な状態で少なくとも6時間の最小動作寿命を有するように構成されたアノードと、経皮送達用に配合された塩形態の正電荷を有する薬剤種を含むゲルを受け入れるための、前記アノードと電気的に接触した薬物送達ゲルパッドとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年9月2日に出願された米国仮特許出願第61/093,464号明細書の通常の出願であり、同様に本願に全体として参照により援用されるものと見なされる当該出願からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して治療剤の経皮送達システムであって、皮膚装着型イオントフォレシスデバイスを使用してかかる物質を体内に導入するためのシステムに関する。より具体的には、本発明は、特にドネペジルHClなどの通常は皮膚刺激物であるものを含め、塩酸塩として配合された薬物を、犠牲活性金属ベース電極システムを備える皮膚装着型パッチを使用して安全に長時間送達するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
イオントフォレシス法は、多くのイオン性帯電治療剤化合物の送達において商業的利用が見出されている。この送達方法では、電荷を有するイオンが、同種電荷の電極部位において皮膚を通じて送り込まれる。施行時間及び電流レベル(通常はミリアンペア分の単位で報告される)は送達される薬物量と直接相関し、薬物送達効率は、薬物分子によって運ばれる電流の、薬剤と同じ電荷を有する薬剤以外の競合イオンによって運ばれる電流に対する比率により計測することができる。
【0004】
内蔵型の装着可能なイオントフォレシスシステムが開発されており、これは電気回路及び電源装置が単一の皮膚装着型パッチとして一体化されたもので、パッチは、対象者の皮膚と電気的に連通する一対の電極を備える。イオントフォレシス用デバイスの信頼性及び機能に関する重要な考慮事項は、使用される電極の選択及び設計にある。電極材料は「不活性」であってもよく、電流が通過する間に変化しないものとすることができる。例としては、白金、金、及び炭素が挙げられる。しかしながら、不活性電極材料は、アノードで水が電気化学的に酸化し、カソードで水が還元される結果として、電極部位においてpHが変化する可能性を伴う。こうした反応は電流の流れにより起こり、アノードに酸性の変化を、及びカソードにアルカリ性の変化をもたらすため、皮膚装着型パッチによる中等度の、又はさらには重度の皮膚刺激作用又は熱傷を引き起こし得る。
【0005】
不活性電極材料に関連するpH変化は、電流の通過中に電気化学反応によって消費される材料である「犠牲」電極材料を使用することにより解消することができる。例えば、カソードの塩化銀は、電流が通過する間に銀に還元される。逆に、犠牲アノードは酸化され、銀、亜鉛、又は他の易酸化性金属(水に対して選好的に酸化する金属)などの材料を含む。
【0006】
イオントフォレシスデバイスでは、犠牲材料含有量は、少なくとも、意図した量の薬物を送達し、意図した送達期間にわたり持続させるのに十分でなければならない。これを達成するため、電極は、電極の犠牲材料が完全に消耗するまで機能し続け、長時間にわたる送達期間において電極との電気接続部が早期破断することがないように設計されることが望ましい。
【0007】
イオントフォレシスに関する長時間の送達期間についての別の重要な考慮因子は、皮膚刺激作用に関するものである。それ自体が皮膚に対して刺激性である化合物は、これまでイオントフォレシス用デバイスを使用した送達には好適でなかった。これは、こうしたデバイスが、それらの化合物との皮膚接触を必要とするためである。これは、かかる化合物を皮膚中に長期間(例えば、少なくとも6時間〜最高7日間又はそれ以上の期間)にわたり送達するように設計された適用において特に顕著である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発展形態により、鎮痛薬、制吐薬を含み、且つそれ自体が中等度から重度の皮膚刺激性を有する治療物質を含む各種治療物質の、長時間にわたる皮膚に安全で効果的な経皮送達の成功を、ここでイオントフォレシスを用いて達成することができる。適合する塩形態の特定の化合物を、概して約10%以下の濃度で水性ハイドロゲルに配合することができ、イオントフォレシスデバイスを使用して成功裏に、且つ安全に経皮送達することができる。イオントフォレシスデバイスは、極めて低い電流密度、概して100μA/cm未満で動作する皮膚装着型パッチに易酸化性金属の犠牲電極を備える。本発明に係るパッチは、概して安定したpH環境下で少なくとも6時間、及び最高7日間又はそれ以上の期間にわたりかかる化合物を皮膚中に送達することができる。
【0009】
実施形態は、長期間にわたり安全に装着可能であり、且つ水性(含水)ハイドロゲル中に含まれる塩酸塩として配合されてもよい正電荷を有する化合物の送達に特化したイオントフォレシスパッチデバイスを提供する。例示的なパッチは、長期間にわたり消費されるように設計された所定量の銀などの易酸化性金属を含む犠牲アノードを備える。このようなパッチは、皮膚に安全な低出力レベルに制御することのできる電流源をさらに備える。
【0010】
特定の例示的実施形態は、皮膚刺激物として公知の医薬品であるドネペジルHClの送達に特化した、使い捨ての装着可能なイオントフォレシスパッチを提供する。このパッチでは、所定量の薬物が、吸収性送達ゲルパッドにより保持される含水ハイドロゲルとして組み込まれる。パッチは銀含有アノードと塩化銀カソードとを備え、さらに、100μA/cmより低い電流密度を使用して最高7日間の期間にわたり薬物を送達するように構成される。
【0011】
本発明の重要な態様は、電極及び接続導体構成に対処する必要がある。従って、イオントフォレシスデバイスが長時間にわたり動作する間に犠牲材料が完全に消費される電極、特にアノードが考案された。犠牲電極材料の完全な消費を確実とし、且つコネクタセグメントが早期に切断されることにより引き起こされる電極の早期破損をなくすため、連続層として構成される犠牲アノードは、アノードの対応する最大幅寸法のほぼ5%以上の接続導体セグメント又はネック(neck)セグメントを必要とし、好ましくは、接続導体セグメントは対応する最大幅の10%以上であることが見い出された。アノードはさらに、十分な犠牲の銀又は他の易酸化性金属を含み、それが消費される前に必要な時間幅にわたり必要量の治療剤を送達しなければならない。金属は、シルクスクリーン印刷法によるなどして貼着される層であってもよく、金属層の厚さは様々であり得るが、概して約0.0002インチ(5μm)〜約0.002インチ(50μm)である。
【0012】
特定の実施形態において、アノード層は、投与対象の正電荷を有する塩酸塩が配合されたハイドロゲルを含むように設計されたゲル吸収薬物送達パッドの上面に付着される。アノード範囲は、投与される塩酸塩を含むゲル吸収薬物送達パッドを受け入れるように構成される。アノード範囲は、投与される薬剤の全てについて薬剤の接触範囲を包含している必要がある。好ましくは、銀が加えられるゲルパッド表面は凹凸があるか、若しくは粗面であり、又は他の方法で、有効電極範囲を増加させ、寸法範囲が等しい対応する平滑な表面を有する電極の表面積より大きい、比較的高表面積をもたらすように構成される。この構成により、電極とゲルとの間の接触抵抗も低減される。
【0013】
示されるとおり、本発明の電極システムを使用すると、ドネペジルHClを含む公知の皮膚刺激性薬剤の送達であっても、イオントフォレシスを皮膚に安全で効果的な方法で実施できることが見い出された。示されるとおり、この薬剤の臨床有効用量をほとんどの場合において有害な皮膚症状なしに最高7日間にわたり投与することができることも見い出された。
【0014】
図面では、その全体を通して同様の符号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】早期破損し易い典型的な先行技術の犠牲銀アノード構成の概略図を表す。
【図1B】早期破損し易い典型的な先行技術の犠牲銀アノード構成の概略図を表し、破損モードが図1Bに示される。
【図2】拡張された相互接続域を利用した、本発明に係るアノード設計の概略図である。
【図3】複数の電気接続部を利用した、本発明に係る代替的なアノード設計の図である。
【図4A】円形状を利用した他のアノード設計の図である。
【図4B】矩形状を利用した他のアノード設計の図である。
【図5A】従来のトポグラフィーを示す金属アノード層の概略断面図である。
【図5B】好ましいトポグラフィーを示す金属アノード層の概略断面図である。
【図6A】本発明での使用に好適なイオントフォレシス用パッチ構成の分解図を表す。
【図6B】図6aのパッチに好適な例示的回路の概略図を表す。
【図7】24時間イオントフォレシス実験におけるいくつかの無毛ラット群の電流レベルのグラフ図を表す。
【図8】ドネペジルHClの受動投与と比較した薬剤送達と電流レベルとの間の関係を表す。
【図9】IV投与したドネペジルのボーラスプロファイルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、皮膚装着型イオントフォレシスパッチを使用して、塩の形態で安全に投与することのできる各種の治療物質、特に通常は皮膚刺激物である薬物により対象を経皮的に治療する方法に関する。本発明により、例えば、有効量のドネペジルを、長期間にわたり対象の皮膚を実質的に刺激することなく対象に経皮投与できることが分かっている。ドネペジルは、皮膚刺激性薬剤であることが知られている。この化合物についての化学物質安全性データシート(MSDS)は、それを皮膚に接触したままにすると有害であると警告している。
【0017】
本発明は、一態様において、塩、好ましくは塩酸塩の形態の正電荷を有する薬物を長時間送達するための統合型イオントフォレシス用経皮パッチに関する。このパッチは、ドネペジル及び通常は皮膚刺激物である他の薬剤によって例示される薬剤の長期送達に特に有用である。さらに、このイオントフォレシス用パッチにおいて使用される電極は、所定量の犠牲金属、好ましくは銀を含み、好ましくはほぼ平面状の形態であって、例えばスクリーン印刷法によって貼着される。
【0018】
銀を含む犠牲アノードは、塩酸(HCl)塩として存在する治療剤又は薬物の送達に特に有用であることが見い出された。銀が酸化されると、発生した銀イオン(Ag+)が薬物の塩化物イオン(Cl−)と組み合わさって不溶性の塩化銀(AgCl)を形成する。この反応はさらなる銀の金属酸化を妨げず、また薬物送達の効率を低下させ得る存在である競合イオン(薬物と同様の電荷をもつイオン)の発生も低減する。
【0019】
定義
1.用語「電極」又は「アノード」は、本明細書で使用されるとき、イオントフォレシス用パッチにおける銀などの易酸化性金属のうち、正電荷を有する薬物溶液と接触している部分として定義される。
2.本明細書で使用されるとき、電極又はアノードの「ネック範囲(neck area)」又は「ネック接続セグメント」という用語は、薬物溶液と接触している電極の最も狭い領域である。典型的には、ネック範囲は薬物リザーバのなかで電源に最も近い縁端にあり、回路における電源との電気接点を提供する。
3.用語「長時間送達」は、イオントフォレシスパッチからの少なくとも6時間、及び7日間又はそれ以上もの長い期間にわたる薬剤の持続的送達として定義される。
4.用語「皮膚に安全」及び「対象の皮膚を実質的に刺激しない」は、本明細書で使用されるとき、動作結果としてパッチの取外し後約2時間の皮膚紅斑スコアが2.50以下、好ましくは2.00以下、又は、或いは最も好ましくは1.00以下となるパッチを含むように意図される。このスコアリングシステムでは、0=紅斑なし、1=極めて軽度の紅斑(ほとんど知覚できない)、2=明瞭な紅斑、3=中等度〜重度の紅斑、4=重度の紅斑〜軽度の痂皮形成である。
【0020】
電極
本発明に関して、本発明者らはまた、犠牲アノードの特定の設計又は構成が、早期破損、すなわち電極範囲内の犠牲金属材料が消耗される前に電極との電気接続部が早期断裂することに起因する電極の破損に対し、優れた保護を提供することも発見した。従って、平面電極のネック範囲の幅が、x方向にもy方向にも最大電極幅のほぼ5%以上であるか、又は電極を完全に包み込むほど広い場合、導体アークは、犠牲金属の消耗について計算された長時間送達の全期間にわたり電極が動作信頼性を有するのに十分であることが見い出された。
【0021】
銀などの犠牲金属の無駄な消耗を最小限に抑え、且つ電極の薬物リザーバとの接触抵抗を最小限に抑えるための、最適化された表面が分かっている。最適な表面は、電極表面の最上点と最下点との間の差が全電極表面の25%以上である粗面形状であることが発見されている。粗面形状を用いることにより、犠牲金属と薬物との間の有効接触表面積を、対応する平坦な表面に基づく面積と比較して50%以上増加させることができる。この粗面形状電極はまた、高表面積電極と見なすこともでき、ここで実際の電極の表面積は、その高表面積電極の同じ長さ寸法及び幅寸法によって画定される対応する仮想電極の表面積を超えている。
【0022】
図1A〜図5Bは、代表的な先行技術及び本概念の犠牲アノード設計を示す。図1Aは、概して20により、典型的な先行技術の犠牲銀アノード構成の概略図を表し、これは、24による薬物パッド用接触範囲に置かれた主電極22を備える。主電極22と共に、垂直軸又はy軸上の(c−d)の幅と、電極22を対応する電源と接続する電気接続部26の最も狭い部分に相当する(a−b)として定義されるネック範囲とが示される。ネック範囲(a−b)はまた、y軸又は垂直軸上で最も狭い幅にも相当する。従来のアノードでは、典型的には幅(a−b)が幅(c−d)の5%未満であることが分かっている。図1Bの概略図に示されるとおり、接続部26に関して接続の範囲が狭い、又は不十分であると、結果として主電極又は犠牲電極材料が消費される前に電気接続部の早期破断が起こることが多い。かかる破断は28によって示される。
【0023】
他方で、図2は、概して30により、本発明に係るアノード設計の概略図を示し、これは、想像線の34による薬物パッド用接触範囲に置かれた主電極32を備えるとともに、36による電源との大面積電気接続部又はネック範囲を有する。この図は、(a−b)が(c−d)の10%より大きい電極構成を示す。
【0024】
図3は、概して40により、本発明の犠牲電極の代替的実施形態を示し、これは、44による薬物パッド用接触範囲に置かれた主電極42を備えるとともに、46及び48による一対の接続部として示される電源との複数の電気接続部を備える。この実施形態は、同様に(c−d)により示される電極の主電極の最大幅の10%より大きい合計ネック範囲幅(a−b)を有する。
【0025】
図2及び図3に示される実施形態では、薬物パッドの接触範囲は主電極の範囲を超えている。そのため、これらの実施形態では、いずれの主電極も薬物パッド用接触範囲の外側には延在せず、従って「ネック範囲」は、単に主電極から薬物用接触範囲を越えて延在する1つ又は複数の電気接続部により画定される。
【0026】
さらなる実施形態が図4Aに50として示され、ここで主電極は、想像線の54により示される薬物パッド範囲の幅を超えている、又はその外側まで延在する円形デバイスとして52により示される。そのため、図2及び図3に示される実施形態とは対照的に、主電極は薬物パッド用接触範囲の外側まで延在し、実施形態の一例では、主電極の少なくとも一部分が薬物パッドにより画定される範囲を越えて延在する。図4Aに示される実施形態では、主電極の一部分が薬物パッドにより画定される範囲を越えて延在するため、ネック範囲は電極を包含する。電気接続部が56により示される。そのため、図4Aに示される実施形態におけるネック範囲は、電気接続部と、薬物パッドにより画定される範囲を越えて延在する主電極の部分との双方を含む。
【0027】
図4Bは、電気接続部64を備えた、想像線の62により示される薬物パッド範囲を同様に超えている矩形状の主電極60を表す。図4Aと同様に、図4Bに示される実施形態のネック範囲は、電気接続部と、薬物パッドにより画定される範囲を越えて延在する主電極の部分との双方を含む。
【0028】
図4A及び図4Bの実施形態に関して、これらは、主電極が薬物パッドの接触範囲を超えた範囲を有するデバイス構成の例であり、ここである場合には、主電極の範囲は、薬物パッドの範囲を5%以上、例えば10%以上など、15%以上を含めて超えていてもよい。所与の望ましい構成に応じて、主電極は薬物パッドの全ての側辺を越えて延在してもよく、又は薬物パッドの側辺の一部のみを越えて延在してもよい。
【0029】
図5Aは、平滑表面72又は平滑表面の範囲と等しい電極範囲をもたらす基材層74として置かれた犠牲アノード電極層70の概略図である。
【0030】
図5Bは、薬物パッドにより提供される粗面に対応したものであり得る82による粗面を有する犠牲アノード層80を示し、ここで電極は、薬物パッドを被覆する材料の最小厚さが最大厚さの50%以下となるように置かれてもよい。しかしながら、いずれの場合にも、粗面を利用すると電極の有効表面積が著しく増加し、長さ寸法と幅寸法とにより決定されるとおりの電極によって占められる範囲より大きい、比較的高面積の反応材料がもたらされることは明らかである。これによってより小さい範囲に対してより多量の消耗電極材料を配置することが可能となり、また薬物を含む薬物パッドと電極との間の接触範囲も増し、従って配合された薬物材料と電極との間の接触抵抗が低減する。かかる構成により、接触範囲は電極のフットプリントを基準として50〜100%増加し得る。図5Bに示される実施形態は、高表面積電極の一例を提供する。
【0031】
本発明の特定の実施形態では、上記のとおりのネック範囲が存在してもよく、しかし高表面積電極は存在しなくともよいことに留意しなければならない。さらに他の実施形態にでは、上記のとおりのネック範囲が存在しなくともよく、しかし高表面積電極は存在してもよい。さらに他の実施形態では、上記のとおりのネック範囲及び高表面積電極の双方が存在してもよい。
【0032】
皮膚装着型パッチ
本発明のパッチは、経皮投与に好適な含水ハイドロゲル形態で配合された塩酸塩としての対象物質の送達に関して、好ましくは内蔵型である。このパッチはイオントフォレシスを使用して化合物を送達し、より好ましくは、パッケージングから取り外して患者又は対象の皮膚に貼り付けるだけでよいか、又は皮膚に貼り付ける前に単純な組立てのみを必要とする、完全な一体化された、又は組み合わされたデバイスである。パッチを皮膚に貼り付けると、電気的なイオントフォレシス回路が完成し、デバイスは直ちに治療化合物の経皮投与を開始する。好ましくは、臨床的に有効なレベルに達するまでに必要な時間は約6時間以下であり、そのレベルが7日間以上にわたり維持され得る。
【0033】
本発明に係るドネペジルHCl又は他の薬物物質の送達に好適なパッチの一実施形態が、図6Aの分解図に概して100により示され、これは、貼り付けられたパッチにおいて上側層又は最上層となり、且つ可剥性剥離剤層104に付着され得る不浸透性の非導電軟質裏当て層102を備える。裏当て層102は、剥離剤層の下の内側又は下側表面に貼着された医療級接着剤材料の周辺部接着パターンを有する(106により概略的に示される)。接着剤は、患者又は対象の皮膚に対する比較的長期の接着に好適な、またパッチの周辺部を密封して、接着剤の縁部を越えたいかなる材料の漏出も防止するような方法によるものでなければならない。かかる材料は、市販品として容易に入手することができる。
【0034】
パッチは、一対の直列接続リチウム電池112の形態であってもよい電源、スクリーン印刷銀アノード114、銀−塩化銀スクリーン印刷カソード電極116を含む電気回路アセンブリ110をさらに備える。図6Bの概略図に示されるとおり、回路はまた、出力電流レベルの制御を提供する120により示される直列接続トランジスタ及びレジスタも含み得る。示される回路は皮膚に貼り付けることにより完成するものであり、イオントフォレシスパッチを動作させ、且つ電流レベル制御を提供するために使用することのできる構成の一例に相当する。かかる回路は概して公知であり、当業者には多くの適用可能な変形例が想起されるであろう。ある場合には、回路は上記の送達用電流を提供するように構成される。
【0035】
両面医療級テープの層122が含まれ、可剥性裏当て層102並びに電気回路アセンブリ110、吸収パッド124及び126並びに電極114及び116並びに吸収パッド124及び126を収容するように設計された凹部を画定する付形された医療級発泡テープ部材128の間の接着を含め、組立て状態におけるデバイスのコンポーネント内部の接着を提供する。
【0036】
吸収性ゲル含有パッド124、126の一方は各電極と関連付けられ、電気的に連通する。一方のゲルパッドが投与される対象の治療化合物を含み、又は保つために使用され、及び対応する導電材料が他方のゲルパッドに含まれ、パッチが皮膚に貼り付けられたときの回路の完成を可能にする。
【0037】
投与対象の物質を含むパッドがアノードに関連付けられるか、又はカソードに関連付けられるかは、物質それ自体の電荷に依存することに留意しなければならない。従って、本発明の例に従い投与される塩酸塩又は他の塩物質は正に帯電しており、そのため、アノード114に関連付けられたパッド124から投与され、カソードパッド126は薬剤を含まない導電性ゲル材料で浸潤される。示されるとおり、吸収性ゲルパッドを受け入れて収容するパッチの凹部は、図示されるとおり、成形発泡材バリア128によるものとして提供される。
【0038】
アノード及びカソードパッド構造は、好ましくは構造中の薬物含有ハイドロゲル材料の連続性を保つ不織布材料であり、可能性として最高3層までの、複数の材料層を含み得る。吸収性不織布マトリックスに好適であり得る材料の例としては、綿、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリエステルが挙げられる。最も好ましくは、吸収性材料はポリプロピレンである。実施形態の一例は、厚いニードルパンチポリプロピレン層と、薄い透過性のポリエチレンネット層と、図6Aにおいて124a及び126aによるとおりの周辺部の薄い密封ポリプロピレン層とを含む。これらの層は、接着剤を必要とすることなく一体に熱融着されてもよい。3つの層の全てが、同じ外周形状を有するようにカットされる。密封層124a、126aは、完全なまま密封性を保つ周辺環状部の形状にカットされる。環状部の内側に、内部領域が透過性となるように密封層124a、126aが完全に切り抜かれるか、又は穴が開けられる。透過性領域は、アノード電極114及びカソード電極116の形状と一致するように付形され、従って使用時にデバイスが組み立てられたとき、その層を通じたゲルの移動及び電極の全範囲との接触が可能となる。
【0039】
重要なことに、密封環状部124a及び126aはゲル移動を阻む隔壁を提供し、従ってパッドが別個に保管される場合に、保管中に外表面が比較的乾燥した状態に保たれ、且つデバイスの起動時に、環状部における接着材料を用いてパッド124、126を対応する電極凹部に接着剤で貼着するように設計することができる。
【0040】
ゲルは、好ましくは8,000〜120,000センチポアズの粘度範囲で配合されることが好ましく、但しこれは、ゲルが形状を保持してパッチにおける組立てが成功する限り、限定されるものではない。本システムで有用なゲルは、適当な粘度の導電性ゲルをもたらすように適当量の配合薬物をHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxpropylmethylcellulose))などの架橋された、又は架橋性のゲル化剤中に溶解することにより配合されてもよい。PVP(ポリビニルピロリドン)、PEO(ポリエチレンオキシド)、又はPVA(ポリビニルアルコール)などの他のゲル化剤もまた使用することができる。吸収性スクリムに含まれる2%w/wのHPMC粉末から配合されたゲルが、成功を収めている。
【0041】
パッケージングされるとき、本発明の一体化されたイオントフォレシスパッチは、好ましくは製造時に吸収性複合パッド124に吸収されてパッチ内に収容されるハイドロゲルの形態の、投与対象の治療材料を含むように設計される。従って、使用者に任された作業は、パッケージングを開封し、治療が求められる患部にパッチを貼り付けることのみであり得る。このように、対象者は単にパッチを皮膚の所望の位置に接着剤を用いて置くことにより、自分で治療を成功させることができる。
【0042】
示されるとおり、ハイドロゲル吸収パッドはまた、共通のパッケージング内に個別に保管され、パッケージを開封したときに単純にパッチに貼り付けられてもよい。
【0043】
本明細書で例として用いられる好ましい一実施形態は、ドネペジルHClの投与に特化したものである。コリンエステラーゼ(cholinestrase)阻害薬のドネペジルHClは、米国における死亡原因の第7位であるアルツハイマー病の軽度から中等度の症状の治療に適応される。高頻度の投薬レジメンでの患者コンプライアンスは、認知機能障害においては制限因子である。経口剤形の臨床的な実用性はまた、末梢コリン作動系の活性化により引き起こされる胃腸の副作用によっても制限される。示されるとおり、ドネペジルHClはまた、Sequoia Researchによりその化学物質安全性データシート(MSDS)において皮膚と接触する場合に有害と見なされており、明らかな皮膚刺激物として特定されている。
【0044】
本発展形態に従えば、イオントフォレシスは、低コストで使い捨ての使用が容易な「能動的」パッチを用いて、低レベルのDC電流を利用して同種電荷の可溶性塩イオンを非侵襲的に皮膚を通じて送り込むことで所望の治療レベルを実現する技術として成功裏に用いられている。ドネペジル(MW=415.96、pKa=8.9)は、そのHCl塩形態ではpH6.0で正に帯電するため、従って皮膚の刺激作用に関する負の徴候を解消することができたならば、アノードイオントフォレシス送達に望ましい候補であり得る。
【0045】
本発明の特定の実施形態は、上記に概要を述べたとおり、上記ではドネペジルHCLの送達に関連して記載されているが、本発明は、多種多様な活性薬剤の送達に好適である。例えば、限定はされないが、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン、アミリジン、ミナプリン、ヒューペルジン及びフプリンなどのアルツハイマー病の治療に使用が見出される他の薬剤が、本発明のデバイスにより送達されてもよい。
【0046】
本発明のデバイスに存在してもよい別のタイプの対象となる活性薬剤は、制吐薬である。対象となる特定の制吐剤としては、限定はされないが、アロセトロン、アザセトロン、ベメセトロン、シランセトロン、ドラセトロン、グラニセトロン、インジセトロン、イタセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、ラモセトロン、トロピセトロン、及びザトセトロンが挙げられる。
【0047】
また、鎮痛薬も対象となる。対象となる鎮痛薬としては、限定はされないが、フェンタニル、スフェンタニル、カーフェンタニル(carfentanhl)、イオフェンタニル(Iofentanil)、アルフェンタニル、ヒドロモルホン、オキシコドン、プロポキシフェン、ペンタゾシン、メサドン、チリジン、ブトルファノール、ブプレノルフィン、レボルファノール、コデイン、オキシモルホン、メペリジン、及びジヒドロコデイノンが挙げられる。
【0048】
当然ながら、本発明のデバイスを用いて他のタイプの薬剤も投与することができ、本発明は、その最も広義の意味において上記の特定の活性薬剤の送達に限定されるものではない。
【0049】
本発明に従い設計された犠牲電極が、長時間の送達期間にわたり高い信頼性を有し、且つ皮膚に安全であることを実証するため、モデル化合物としてドネペジルHClを用いて実験を行った。第1の実験の実施例Iでは、薬物が全施行期間にわたり連続的に送達されたことを検証するため、電流計測及び血液分析を実施した。第2の実験の実施例IIでは、本発明に従い作製された長時間送達デバイスの刺激能が最小限であるかどうかを判定するため、評価を実施した。第3の実験の実施例IIIでは、本発明に従い作製された長時間送達デバイスの皮膚感作能が最小限であるかどうかを判定するため、実験を実施した。
【実施例】
【0050】
実施例I
装着可能な電子薬物送達デバイスを使用して、本発明に従い設計された犠牲電極を用いた、イオントフォレシス送達の実現可能性、及び無毛ラットに送達される治療用量のドネペジルHClに対する電流の効果を実証した。
【0051】
実験方法
7ボルトの出力のAgアノード及びAg/AgClカソードからなるパッチを使用した。電流を所望のレベルに設定するため、各パッチに直列トランジスタを使用した。アノード及びカソード吸収パッドに、それぞれ薬物及び生理食塩水配合物を一晩浸潤させ、翌日使用した。電流レベル設定及び期待用量/日(過去のインビトロ効率計測から確立)は以下のとおりである:
【0052】
【表1】

【0053】
接続部が適正であることを確かめるため、電流を全適用期間にわたりモニタした。パッチを各動物に24時間置き、72時間まで所定の時間点で血液試料を採取した。血漿試料からタンパク質沈殿法により薬物を抽出し、RP−HPLCにより、励起を325nm及び放射を390nmとした蛍光検出法を用いて分析した。WinNonlinを用いて薬物動態分析を行った。
【0054】
結果及び考察
全ての群において一定の電流レベルが維持されたことから、電極の信頼性が示された(図7)。
【0055】
図8で分かるとおり、受動送達と比較して、電流レベルの増加に伴い無毛ラット皮膚を通じて送達されるドネペジル量の著しい増加が認められた。
【0056】
IVボーラス投与のクリアランス値を使用して(図9、表II)、1日当たりの送達用量を計算した(表III)。
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
結論
長期間にわたるイオントフォレシスによるドネペジルHClの送達は、中断又は早期破損の証拠もなく成功した。経皮イオントフォレシス送達はまた、1日当たり2.5、5.0及び7.5mgの所望の治療レベルも実現した。
【0060】
実施例II
皮膚一次刺激性試験の結果
目的:この試験は、医療機器の生体適合性に関する特定の規制によって要求されるとおり、ウサギの剃毛した皮膚に対する試験イオントフォレシスパッチの皮膚刺激能を決定するために設計した。
試験試料の調製:0.5mLのゲルをイオントフォレシス用デバイスの各電極パッドに注入することにより試験品を調製した。ゲルをパッド上に均一に拡げ、約24時間吸収させた。
実験方法概要:貼り付け前に、薬物と表示されたパッチ上にゲルパッドを置き、生理食塩水と表示されたパッチ上に生理食塩水ゲルパッドを置いた。加えて、乾燥したパッドを粘着パッチ上に置くことにより、陰性対照パッチを調製した。調製したパッチは3匹の成体アルビノウサギの剃毛した背部の皮膚に対し、2個の物品(「薬物」及び「生理食塩水」)、及び1個の陰性対照パッチについて傍脊椎部の皮膚の両側に貼り付けた。各動物の胴体に弾性包帯を巻き付け、低刺激性テープで固定して、最低6時間曝露させた。包帯を外した後60±6分目、及び24±2時間目、48±2時間目、及び72±2時間目に皮膚刺激作用の観察を実施した。紅斑及び浮腫の肉眼的エビデンスについて、組織反応を評価した。
【0061】
各ウサギについて、24時間、48時間及び72時間の観察期間のみ、試験品部位及び対照部位の紅斑及び浮腫スコアの合計を計算した。合計スコアを6で除して(2観察部位×3観察期間)、一次刺激スコア観察平均値を決定した。次に、各ウサギの試験部位についての一次刺激スコアを合計し、対照一次刺激スコアの合計からその合計を減じた。この値を動物の総数で除して一次刺激指数を求めた。試験品を一次刺激指数(PII)表IVに基づき、無視できる、軽度、中等度又は重度の反応に分類した。
【0062】
【表4】

【0063】
結果:表Vを参照のこと。一次刺激指数(PII)=0
結論:試験品は非刺激物であると考えられる。
【0064】
【表5】

【0065】
技術参考文献:
16 CFR,Part 1500.41,Method of Testing Primary Irritant Substances,1−1 97
ISO 10993−10:2002 Standard,“Biological Evaluation of Medical Devices,Part 10−Tests for Irritation and Sensitization” 6〜10,21頁
Marzulli,F.N.,Maibach,H.I.,Dermatotoxicology 第4版,201〜208頁,Hemisphere Publishing Corp.New York,NY,1991年
U.S.EPA − Office of Prevention,Pesticides and Toxic Substances(OPPTS),Health Effects Test Guidelines,OPPTS 870.1200 Acute Dermal Toxicity
【0066】
実施例III
関連パッチ皮膚感作試験
医療機器用に修正したBuehler法
目的:この試験は、イオントフォレシス試験品のアレルギー誘発能又は感作能を評価するために設計した。この試験は、モルモットにおいて接触性アレルゲンをスクリーニングし、その結果をヒトに対して推定するための手順として用いたが、ヒトにおける実際の感作リスクを確立するものではない。
試験試料の調製:試験品は本発明の電極を有するイオントフォレシス用デバイスからなり、透明の薬物及び生理食塩水ゲルを有する白色の吸収性パッドを含んだ。
実験方法概要:10匹の試験用モルモットに試験品でパッチ貼付を行い、5匹のモルモットに対照ブランクでパッチ貼付を行った。6時間の曝露後に包帯及びパッチを取り外した。24時間の休止時間後、各動物の紅斑及び浮腫について各部位を観察した。この手順を1週間に1回、3週間にわたり繰り返し、合計3回の施行とした。2週間の休止時間後、適当な試験品で9匹の試験動物に対し、及び対照ブランクで対照動物に対し、動物への局所的なパッチ貼付を行った。6時間の曝露後にパッチを取り外した。パッチを取り外してから24時間後及び48時間後の紅斑及び浮腫について、皮膚のパッチ貼付部位を観察した。各動物を皮膚スコアに基づき感作反応について評価した。試験結果は、感作反応の発生率及び重症度に基づいた。
【0067】
試験結果を表VI〜IXにまとめる。
結論:試験品は非感作性物質であると考えられる。
【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
【表8】

【0071】
【表9】

【0072】
技術参考文献:
Dermatotoxicology,編者Marzulli,F.N.及びMaibach,H.I.,第4版,1991年,381〜3385頁,Hemisphere Publishing Corporation,New York
ISO 10993−10:1995 Standard,“Biological Evaluation of Medical Devices,Part 10−Tests for Irritation and Sensitization” 13〜15頁
Principles and Methods of Toxicology,編者Wallace Hayes,A.,第3版,1994年.Dermatotoxicology 第21章,777頁,Ravin Press,New York
Ritz H.L.及びBuehler E.V.(1980年).Procedure for Conducting the Guinea Pig Assay.Current Concepts in Dermatology,Drill V.A.及びLazar P.(編),Academic Press,New York,NY,25〜40頁
U.S.EPA − Office of Prevention,Pesticides and Toxic Substances(OPPTS),Health Effects Test Guidelines,OPPTS 870.2600 Skin Sensitization

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩配合物から正電荷を有する薬剤種を長時間送達するための装着可能なイオントフォレシスデバイスであって、
(a)最大電極幅寸法の概して5%以上である幅を有する接続ネック範囲を有するほぼ平面状の層の形態の易酸化性金属ベースの犠牲アノードと、
(b)ここで前記アノードは、皮膚に安全な状態で少なくとも6時間の最小動作寿命を有するように構成され、
(c)経皮送達用に配合された塩形態の正電荷を有する薬剤種を含むゲルを受け入れるための、前記アノードと電気的に接触した薬物送達ゲルパッドと、
を含む、デバイス。
【請求項2】
前記ネック範囲の前記幅が、前記最大アノード幅の10%以上である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記塩が塩酸塩である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記塩酸塩がドネペジルHClである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記易酸化性金属が銀である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記易酸化性金属が銀である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項7】
前記易酸化性金属が銀である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記アノードが、前記薬物送達パッドと接触した粗いテクスチャを有する表面を有し、それによりそれらの間の接触範囲を増加させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記アノードが、前記薬物送達パッドと接触した粗いテクスチャを有する表面を有し、それによりそれらの間の接触範囲を増加させる、請求項5に記載のデバイス。
【請求項10】
前記アノードが複数のネック接続セグメントを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記アノードが複数のネック接続セグメントを備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項12】
前記薬物送達が1cm当たり100μA以下の電流密度を用いて行われるように出力電流を制御する回路コンポーネントを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記アノードが、7日間以上の最大寿命を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記アノードが、7日間以上の最大寿命を有する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記アノードが、前記薬物送達パッド上の層として形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記正電荷を有する種がドネペジルである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記アノードと直列の易還元性カソードを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
双方の電極において安定したpHで動作する、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ドネペジルHClの濃度が概して10%以下であり、含水ハイドロゲル中に含まれる、請求項4に記載のデバイス。
【請求項20】
長期動作させるためのイオントフォレシスデバイス用犠牲アノードであって、
(a)薬物送達ゲルパッド基材上に連続層を形成する所定量の易酸化性金属と、
(b)イオントフォレシス回路中で前記連続銀層に接続する導電性接続セグメントであって、前記アノードの最大幅の概して5%以上である幅を有する接続セグメントと、
を含み、
(c)ここで前記薬物送達ゲルパッドが粗面を有する、
犠牲アノード。
【請求項21】
前記銀の厚さが約5μm〜約50μmである、請求項20に記載の犠牲アノード。
【請求項22】
前記接続セグメントの前記幅が、前記最大アノード幅の10%以上である、請求項20に記載の犠牲アノード。
【請求項23】
前記接続セグメントの前記幅が、前記最大アノード幅の10%以上である、請求項21に記載の犠牲アノード。
【請求項24】
HCl塩配合物から正電荷を有する種を長時間送達するためのイオントフォレシスデバイスであって、
(a)最大電極幅寸法の概して5%以上である幅のネック範囲を有するほぼ平面状の層の形態の銀ベースの犠牲アノードと、適合する易還元性カソードと、
(b)ここで前記銀ベースのアノードは、少なくとも6時間の最小動作寿命を有するように構成され、
(c)送達用の塩酸塩形態の正電荷を有する種を含むゲルを受け入れて吸収するための、前記アノードと電気的に接触した吸収性薬物送達パッドと、
(d)薬物送達が概して100μA/cm以下の電流を用いて行われるように出力電流を制御する回路コンポーネントと、
を含む、デバイス。
【請求項25】
前記ネック範囲の前記幅が、前記最大アノード幅の10%以上である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記塩酸塩がドネペジルHClである、請求項24に記載のデバイス。
【請求項27】
前記銀ベースのアノードが粗面テクスチャを有し、前記薬物パッド上の層を形成する、請求項24に記載のデバイス。
【請求項28】
薬物送達に用いられる犠牲アノードの製造方法であって、所定量の易酸化性金属をシルクスクリーン印刷するステップであって、それにより薬剤種を含む所定量の導電性ハイドロゲルを含めるための吸収性薬物送達ゲルパッド上に層を形成するステップを含む、方法。
【請求項29】
前記犠牲アノードが、前記アノードの最大幅の概して5%以上のネック範囲を有するように製造される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記易酸化性金属が銀である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記易酸化性金属が銀である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記ゲルパッドの表面が粗面である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記ハイドロゲル中に所定量の前記薬剤種塩を配合するステップと、前記ハイドロゲルを前記ゲルパッドに吸収させるステップとを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記塩が塩酸塩である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記塩がドネペジルHClである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
正電荷を有する薬剤物質を対象に長期間にわたり皮膚に安全な方法で経皮投与する方法であって、
(a)請求項1に記載の装着可能なイオントフォレシスデバイスを提供するステップであって、前記正電荷を有する種がゲル形態で加えられる、ステップと、
(b)6時間〜7日間の期間にわたり前記イオントフォレシスデバイスを対象の皮膚に貼り付けるステップと、
を含む、方法。
【請求項37】
前記薬剤種が、鎮痛薬、制吐薬、アルツハイマー病の治療に有用な薬剤及び通常は皮膚刺激物である物質からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記種がドネペジルである、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記薬剤種が、鎮痛薬、制吐薬、アルツハイマー病の治療に有用な薬剤及び通常は皮膚刺激物である物質からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項40】
前記薬剤種が、鎮痛薬、制吐薬及び通常は皮膚刺激物である物質からなる群から選択される、請求項24に記載のデバイス。
【請求項41】
前記薬剤種が、鎮痛薬、制吐薬及び通常は皮膚刺激物である物質からなる群から選択される、請求項28に記載のデバイス。
【請求項42】
前記回路コンポーネントが塩化銀カソードを含む、請求項24に記載のデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−501213(P2012−501213A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525015(P2011−525015)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/004928
【国際公開番号】WO2010/027444
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(502237663)トラヴァンティ ファーマ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】