説明

門柱等のキャップの取付構造

【課題】ビス1本を用いて止めてもキャップが浮き上がらないようにし、併せて、加工コストの削減、作業手間の簡略化及び施工コストの削減ができるキャップの取付構造を提供する。
【解決手段】門柱等の中空部の端部に挿入したキャップの挿入部にビスをねじ込んで固定されるキャップの取付構造において、キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分をビスねじ込み時の引き込み力により外側方向に変形可能に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空形材で作られた門柱やフェンス支柱等(以下、代表的に門柱という。)の端部に装着されるキャップの取付構造、中でも、キャップの挿入部を門柱の端部に挿入し、その門柱の外側からビスをねじ込んで固定する形式のキャップの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
門柱の上端部には、美観向上、腐食防止及び怪我防止などの目的でキャップが取り付けられている。一般的に、キャップは、門柱の上端面を被覆する蓋部と門柱の中空部の端部に挿入される挿入部とを一体に有し、通常、樹脂製であるが、アルミ等の金属製もある。
【0003】
キャップが金属製である場合は、強度が大きいので、門柱に挿入された挿入部に門柱の外側から1本のビスをねじ込んだとしても(いわゆる1本止めをしたとしても)キャップはしっかり固定され、蓋部が浮くことはないが、キャップが樹脂製である場合は、金属よりも強度が弱いため、1本止めをすると、キャップがビスをねじ込まれた一方側に引き寄せられる結果、蓋部の他方側が浮いてしまうので、複数のビスを互いに反対側で用いなければ、安定しなかった(特許文献1)。
【0004】
なお、ビス止めでなく、門柱の内壁面とキャップの挿入部の外面にそれぞれ嵌合部と被嵌合部を形成して、挿入部を門柱に挿入した時に嵌合部と被嵌合部が互いに嵌合して係止するように構成したキャップ取付構造も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−309876号公報 段落0003,図6
【特許文献2】特開平8−291677号公報 段落0009−0011,図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来は、キャップを安定性を持って取り付けるには、少なくとも2本のビスを互いに反対側からねじ込んで固定するから、門柱の上端部の互いに反対側にビス貫通孔を設け、キャップの挿入部の互いに反対側にビスをねじ込むねじ孔を設ける必要があるので、加工コストがかかり、また、少なくとも2本のビスを互いに反対側においてねじ込む作業を必要とするので、作業手間がかかるほか、部品コスト及び施工コストがかかるという問題があった。
【0007】
また、門柱の内壁面とキャップの挿入部の外面にそれぞれ嵌合部と被嵌合部を形成して、嵌合係止する取付構造は、門柱及びキャップの形状が複雑であり、製造も容易でないので、製造コストが嵩むという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、門柱の中空部の端部にキャップの挿入部を挿入し、門柱の外側からビスをねじ込んで固定されるキャップの取付構造において、ビス1本を用いて止めてもキャップが浮き上がらないようにすることにあり、併せて、加工コストの削減、作業手間の簡略化、及び施工コストの削減ができるキャップの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分をビスねじ込み時の引き込み力により外側方向に変形可能に形成したことを特徴としている(請求項1)。
上記構成により、ビスねじ込み時はキャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分のみが変形して門柱側に引き寄せられるので、ビスが1本でもキャップが浮き上がることがない。
【0010】
本発明は、キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分をビスねじ込み時の引き込み力により外側方向に変形可能に形成するために、キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分を挿入部から切り離された舌片に形成し、その舌片の中央にねじ孔を設け、そのねじ孔の両側に前記ねじ孔の径と等しい間隔をもってビス受け片を形成したことを特徴としている(請求項2)。
上記構成により、ビスがねじ込まれる時の引き込み力は、舌片にのみに伝達されて、その舌片が外側に弾性変形するため、キャップがビスねじ込み側に引き寄せられることがない。従って、ビスが1本でもキャップが浮き上がることがない。また、ねじ込まれたビスはビス受け片の間に螺合するので、ビスとキャップとの結合力が増し、舌片の破損が防止される。
【0011】
また、本発明は、キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分をビスねじ込み時の引き込み力により外側方向に変形可能に形成するため、キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分を薄肉に形成して、ビスがねじ込まれる部分にねじ孔を形成するとともに、そのねじ孔の両側に前記ねじ孔の径と等しい間隔をもってビス受け片を形成したことを特徴としている(請求項3)。
上記構成により、ビスのねじ込み時の引き込み力によりキャップの挿入部の薄肉部が外側に弾性変形するため、キャップがビスねじ込み側に引き寄せられことがない。従って、キャップが浮き上がることはない。ねじ込まれたビスは、ビス受け片の間に螺合するので、ビスとキャップとの結合力が増し、舌片の破損が防止される。
【0012】
さらに、本発明は、キャップをアルミニウムなどの金属製とするとともに、挿入部のビスがねじ込まれる部分を薄肉に形成し、そのビスがねじ込まれる部分にねじ孔を形成したことを特徴としている(請求項4)。
上記構成により、ビスのねじ込み時の引き込み力によりキャップの挿入部の薄肉部のビスがねじ込まれる部分が外側に塑性変形するため、キャップがビスねじ込み側に引き寄せられことがない。従って、キャップが浮き上がることはない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、ビスねじ込み時の引き込み力によりキャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分が変形するので、キャップがビスねじ込み側に引き寄せられることがない。従って、ビスが1本でもキャップの浮き上がりのない取付構造を提供することができる。併せて、加工コストの削減、作業手間の簡略化及び施工コストの削減ができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、ビスがねじ込まれる時の引き込み力により舌片が外側に弾性変形するため、キャップがビスねじ込み側に引き寄せられることがない。従って、ビスが1本でもキャップの浮き上がりのない取付構造を提供することができる。また、ねじ込まれたビスはビス受け片の間に螺合するので、ビスとキャップとの結合力が補強されるため、挿入部の肉厚が薄いためにねじ孔の破損によりビスの固定力が無効になることがない。
【0015】
請求項3の発明によれば、ビスのねじ込み時の引き込み力によりキャップの挿入部の薄肉部が外側に弾性変形するため、キャップがビスねじ込み側に引き寄せられことがない。従って、ビスが1本でもキャップが浮き上がることはない。また、ねじ込まれたビスは、ビス受け片の間に螺合するので、ビスとキャップとの結合力が補強される。
【0016】
請求項4の発明によれば、ビスのねじ込み時の引き込み力によりキャップの挿入部の薄肉部のビスがねじ込まれる部分が外側に塑性変形するため、キャップがビスねじ込み側に引き寄せられことがない。従って、ビスが1本でもキャップが浮き上がることはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の好ましい一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るキャップの正面図である。
【図3】同キャップの平面図である。
【図4】同キャップの底面図である。
【図5】同キャップの側面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】キャップの舌片のビスねじ込み前と後の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1において、1は横断面正方形の中空形材で作られた門柱であり、4つの側壁11のいずれか一つの側壁11aに門柱上端部から所定距離下がった、その側壁の幅方向中心位置に、キャップ取付用ビス3を貫通するための孔12が設けられている。
また、図1において、2は樹脂製のキャップであり、浅い正四角錐状の蓋部21と、その蓋部の周辺から所定の等しい距離だけ内側に寄った位置の下面から垂下する浅い正四角筒状の挿入部22とを一体に有している。蓋部21の周辺には、僅かの距離だけ垂下する正四角形に沿って連続する嵌合縁23が形成されていて、その嵌合縁23と挿入部22の間に下方に開口する溝24が形成されている。この溝24の幅は、門柱1の側壁11の肉厚よりもごく僅かに大きく設定されている。
【0019】
キャップ2の挿入部22の各辺の外側面には、複数本の細い縦リブ25が適宜の間隔をおいて設けられている。このリブ25の突出高さは、溝24の幅と門柱1の側壁11の肉厚の差にほぼ等しい。これにより、キャップ2の挿入部22は、門柱1の上端部からその中空部13に少ない摩擦抵抗で緊密に嵌合することができ、嵌合終了時に門柱1の上端縁を溝24に緊密に嵌入することができる。そして、キャップの蓋部21が門柱1の上端面を被覆し、中空部13を密閉するようになっている。
【0020】
キャップ2の挿入部22の少なくとも一辺に、図示の例では、互いに反対側の2辺に、その辺の幅中心から両側に等しい距離を離れた位置に、挿入部22の下辺から上辺近傍まで延びる細いスリット26を設けて、そのスリットの間に矩形に連続する挿入部22から切り離された舌片22aが形成されている。舌片22aは挿入部22から切り離されていることにより、挿入部22の他の部分よりも板厚に直角な方向に弾性変形し易くなっている。そして、各舌片22aの中心にねじ孔27が設けられている。また、舌片22aの背面には、そのねじ孔27の両側に垂直矩形状のビス受け片28が、そのねじ孔27の径とほぼ等しい間隔をもって設けられている。
【0021】
上記の構成を有するキャップ2を門柱1に取り付けるには、キャップ2の挿入部22の舌片22aが設けられている面を門柱1の孔12が設けられている側壁11aと平行にしてその挿入部22を門柱1の中空部13に門柱の側壁の上端部がキャップの蓋部周辺の溝24に嵌合されるまで挿入する。続いて、孔12からビス3をねじ込む。図7(a)はビスをねじ込む前の挿入部の舌片22aと門柱1の側壁11aとの位置関係を示す。ビスはキャップの舌片22aのねじ孔27にねじ込まれるとともに、両側のビス受け片28の間に螺合する。通常のキャップの挿入部22は比較的薄肉に形成されているため、ビス3の挿入部に対する結合力が余り大きくないので、ビスを挿入部の互いに反対側にねじ込むことにより、所要の結合強度を得ている。本発明の実施の形態は、挿入部22が通常のキャップと同様に薄肉に形成される場合は、舌片22aの背面にねじ孔27の径と等しい間隔でビス受け片28を設けているので、ビスの螺合距離が長くなるため、ビス1本止めであっても、ビス3とキャップ2の間に十分な結合強度が得られる。
【0022】
そして、ビス3を舌片22aにねじ込む時は、ビス3が舌片22aに引き込み力を加えるが、舌片22aはその両側のスリット26により挿入部の他の部分から分離されていて、弾性変形し易くなっているため、ビス3がねじ込まれた舌片22aのみが門柱1の側壁11a側に引き寄せられる。図7(b)はビスねじ込み後の門柱の側壁11aと舌片22aとの位置関係を示す。従って、キャップ2の門柱1に対する緊密な嵌合状態が悪化しないので、キャップのビス3と反対側が浮き上がることがない。
【0023】
図示の例では、舌片22aを矩形に連続する挿入部22から切り離すために、舌片22aの両側に細いスリット26を設けたが、スリット26に代えて比較的幅の大きいスロット又は切欠を設けても良い。すなわち、挿入部22は、門柱に対する嵌合状態が良好である限り、角筒状に連続しない形状のものでも良い。また、門柱1の横断面形状は、正多角形、非正多角形、円形(真円形、長円形、楕円形)等任意であり、キャップの蓋又は挿入部の形状も、そのキャップが取付けられる門柱の形状に対応する任意の形状とすることができる。
【0024】
キャップ2の挿入部22のビス3がねじ込まれる部分をビス3の引き込み力により変形可能にするには、上記スリット26やスロット等を設けずに、四角形に連続する挿入部の舌片22aに対応する部分を他の部分の比較的硬質の材料よりも柔軟な材料で成形することによっても達成することができる。この場合は、ねじ込まれるビスの引き込み力により、ビスがねじ込まれる部分のみが弾性変形するので、キャップ2がビス側に引き寄せられることがない。従って、キャップが浮き上がることがない。
【0025】
さらに、アルミ製キャップを用いる場合は、スリット26の間の舌片22aをビスの引き込み力により塑性変形可能に薄肉に形成することによって、同様の目的を達成することができる。舌片を薄肉に形成する場合は、図示の例と同様に、その舌片の背面のねじ孔の両側においてそのねじ孔の径と等しい間隔を持ってビス受け片を設けることが有効であることは既述したとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係るキャップ取付構造は、上述した門柱、フェンス支柱のキャップに限らず、手摺格子、面格子、ルーバーブレード等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 門柱
11 側壁
11a ビス貫通孔を設けた側壁
12 ビス貫通孔
13 中空部
2 キャップ
21 蓋部
22 挿入部
22a 舌片
26 スリット
27 ねじ孔
28 ビス受け片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
門柱等の中空部の端部にキャップの挿入部を挿入し、その挿入部に門柱の外側からビスをねじ込んで固定するキャップの取付構造において、
キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分をビスねじ込み時の引き込み力により外側方向に変形可能に形成したことを特徴とする門柱等のキャップの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップの取付構造において、キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分を、挿入部から切り離された舌片に形成し、その舌片の中央にねじ孔を設け、そのねじ孔の両側に前記ねじ孔の径と等しい間隔をもってビス受け片を形成したことを特徴する門柱等のキャップの取付構造。
【請求項3】
請求項1に記載のキャップの取付構造において、キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分を薄肉に形成して、ビスがねじ込まれる部分にねじ孔を形成するとともに、そのねじ孔の両側に前記ねじ孔の径と等しい間隔をもってビス受け片を形成したことを特徴とする門柱等のキャップの取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載のキャップの取付構造において、キャップをアルミなどの金属製とするとともに、挿入部のビスがねじ込まれる部分を薄肉に形成し、そのビスがねじ込まれる部分にねじ孔を形成したことを特徴とする門柱等のキャップの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−248825(P2010−248825A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100735(P2009−100735)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】