説明

閉鎖デバイス供給システム用の送出ワイヤ

患者の血管系内のある位置に閉鎖デバイスを送り込む送出ワイヤアセンブリは、送出ワイヤ導管を含み、この送出ワイヤ導管は、遠位のコイル部分に連結される近位の管状部分と、近位の管状部分および遠位のコイル部分を通って延びる導管ルーメンとを有する。送出ワイヤアセンブリは、導管ルーメン内に配置されたコアワイヤであって、閉鎖デバイスに連結された遠位端を有するコアワイヤも含む。送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分が、複数の領域を含み、それら複数の領域が、当該送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分の長さに沿って遠位方向に剛性が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、一般に、人間または獣医学の患者の血管中の塞栓または血管閉鎖を達成するための血管閉鎖デバイスを移植するためのシステムおよび供給デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
血管閉鎖デバイスまたはインプラントは、血管内の動脈瘤の治療を含む様々な理由により使用されている。一般的に使用される血管閉鎖デバイスは、白金(または白金合金)ワイヤストランドを“第1”マンドレルの周りに巻き付けることにより形成される柔軟な螺旋状の巻きコイルを含む。コイルの相対的な剛性は、特に、その組成、ワイヤストランドの直径、第1マンドレルの直径および得られる第1巻線のピッチに依存することとなる。その後、コイルはより大きな“第2”マンドレルの周りに巻き付けられて、第2形状を与えるために熱処理される。例えば、Ritchart等に発行された米国特許第4,994,069号は、送出カテーテルのルーメンを介した配置のために引き延ばされたときに、直線的で螺旋状の第1形状をなし、送出カテーテルから放出されて脈管構造内に配置されたときに、折り曲げて屈曲した第2形状をなす、血管閉鎖コイルを開示している。
【0003】
脈管構造内の所望部位、例えば、動脈瘤に、血管閉鎖コイルを運ぶために、先ず、操縦可能なガイドワイヤを使用して、小さな外形の送出カテーテルまたは“マイクロカテーテル”をその部位に配置することが良く知られている。典型的には、マイクロカテーテルの遠位端は、担当医または製造業者の何れかにより、患者の具体的な生体構造に応じて、選択された予め成形された曲げ、例えば、45°、90°、“J字状”、“S字状”またはその他の曲げ形状で提供され、その結果、ガイドワイヤが引き抜かれると、1またはそれ以上の血管閉鎖コイルを動脈瘤内で解放するために、所望位置に留まることとなる。その後、送出または“押込み”ワイヤは、その遠位端に連結された血管閉鎖コイルがマイクロカテーテルの遠位端開口部から動脈瘤内に延びるまで、マイクロカテーテルを通って進む。その後、血管閉鎖デバイスは、端部送出ワイヤから解放または“分離”され、送出ワイヤはカテーテルを介して引き戻される。その後、患者の具体的な必要性に応じて、カテーテルを介して1またはそれ以上の別の閉鎖デバイスを押し込んで、同じ部位で解放することができる。
【0004】
押込みワイヤの端部から血管閉鎖コイルを解放する既知の方法の一つは、押込みワイヤの遠位端部に沿って位置する小さな露出区間または分離領域である電気分解で分離可能な接合部を使用することによるものである。分離領域は、典型的には、ステンレス鋼により形成されて、血管閉鎖デバイスの直近位に配置される。電気分解で分離可能な接合部は、電気分解し易く、血液またはその他の体液のようなイオン溶液の存在下で押込みワイヤに電荷が加えられたときに、分解する。このため、分離領域がカテーテルの遠位端から出て、患者の血管の血液プールに曝されると、電気接点を介して導電性の押込みワイヤに加えられた電流が、リターン電極を有する回路を形成し、分離領域が電気分解により崩壊する。リターン電極は、患者の皮膚に取り付けられた電極と、離れた部位で皮膚を通って挿入された導電性針と、押込みワイヤ上に位置するが、分離領域において終わる導電路から電気的に絶縁された電極とを含む。
【0005】
電流血管閉鎖コイル供給システムに関する分かってる問題点の一つは、血管閉鎖コイルがマイクロカテーテルを通って押されるときに、押込みワイヤの分離領域が湾曲することである。硬い押込みワイヤがマイクロカテーテル内で様々な湾曲形状を呈するときに生じる垂直な力は、分離領域を湾曲させるのに十分な大きさとなり得る。この湾曲は、動脈瘤内の塞栓コイルの配置、および電気分解による塞栓コイルの分離に悪影響を与えることがある。
【0006】
分かってる別の問題点は、押込みワイヤが硬い遠位部分を有する傾向があり、それが、所望位置において供給システムを正確に配置することを困難にする。すなわち、押込みワイヤの硬い遠位部分が、コイルの展開および解放時に、予め成形されたマイクロカテーテルに動脈瘤からの跳ね返りまたは反跳を生じさせる可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
様々な実施形態によれば、患者の血管系内のある位置に閉鎖デバイス(occlusive devices)を送り込む送出ワイヤアセンブリ(delivery wire assembly)が、送出ワイヤ導管(delivery wire conduit)を含み、この送出ワイヤ導管が、遠位のコイル部分に連結される近位の管状部分と、近位の管状部分および遠位のコイル部分を通って延びる導管ルーメンとを有する。この送出ワイヤアセンブリは、導管ルーメン内に配置されたコアワイヤ(core wire)であって、閉鎖デバイスに連結された遠位端を有するコアワイヤも含む。送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分が、コイルワイヤから形成される複数のコイルを含み、それら複数のコイルが、1またはそれ以上のそれぞれの近位、中間および遠位のコイルを含み、それらが、送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分の長さに沿って遠位方向に剛性が減少する。中間のコイルの剛性は、非限定的な一例として、近位のコイルの剛性の86−95%とすることができ、遠位のコイルの剛性は、(再び、非限定的な一例として)近位のコイルの剛性の80−85%とすることができる。
【0008】
ある実施形態においては、1または複数の最も近位のコイルが約0%のピッチを有することができ、1または複数の中間のコイルが5−9%の範囲内のピッチを有し、1または複数の最も遠位のコイルが10−20%の範囲内のピッチを有する。ある実施形態においては、1または複数の近位のコイルのコイルワイヤが約0.00250インチの外径を有し、1または複数の中間のコイルのコイルワイヤが約0.00225インチの外径を有し、1または複数の最も遠位のコイルのコイルワイヤが約0.00200インチの外径を有する。ある実施形態においては、1または複数の近位のコイルのコイルワイヤが300−350ksiの範囲内の最大引張強度を有し、1または複数の中間のコイルのコイルワイヤが250−299ksiの範囲内の最大引張強度を有し、1または複数の最も遠位のコイルのコイルワイヤが200−249ksiの範囲内の最大引張強度を有する。ある実施形態においては、1または複数の近位のコイルのコイルワイヤが1または複数の中間のコイルのコイルワイヤよりも高い弾性係数を有し、1または複数の中間のコイルのコイルワイヤが1または複数の遠位のコイルのコイルワイヤよりも高い弾性係数を有する。ある実施形態においては、1または複数の近位のコイルのコイルワイヤが円形の断面を有し、1または複数の中間のコイルのコイルワイヤが楕円の断面を有し、1または複数の遠位のコイルのコイルワイヤが、1または複数の中間のコイルのコイルワイヤの楕円の断面よりも大きい長径の楕円の断面を有する。ある実施形態においては、コイルワイヤが積層されており、1または複数の近位のコイルのコイルワイヤを覆う積層体が、中間領域のコイルワイヤを覆う積層体よりも厚く、1または複数の中間のコイルのコイルワイヤを覆う積層体が、1または複数の遠位のコイルのコイルワイヤを覆う積層体よりも厚い。
【0009】
別の代替的な実施形態においては、閉鎖デバイス供給システム(occlusive device delivery system)が、送出カテーテル(delivery catheter)を含み、この送出カテーテルが、近位端と、遠位端と、それら近位端と遠位端との間に延びるカテーテルルーメンとを有する。この更なる代替的な実施形態に係る閉鎖デバイス供給システムは、送出ワイヤアセンブリも含み、この送出ワイヤアセンブリが、遠位のコイル部分に連結される近位の管状部分、および近位の管状部分および遠位のコイル部分を通って延びる導管ルーメンを有する送出ワイヤ導管と、導管ルーメン内に配置されて、電気分解で分離可能な接合部を介して閉鎖デバイスに連結された遠位端を有するコアワイヤとを備える。送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分が、当該送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分の長さに沿って遠位方向に剛性が減少する複数のコイルを備える。閉鎖デバイス供給システムは、コアワイヤに電気的に接続される電源装置も含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここで図面を参照する。これら図面において、同様の符号が全体を通して、対応する部分を表している。
【図1】図1は、一実施形態に係る閉鎖コイル供給システムを示している。
【図2】図2は、一実施形態に係る送出ワイヤアセンブリの縦断面図を示している。
【図3】図3A乃至図3Fは、様々な実施形態に係る送出ワイヤアセンブリの詳細な縦断面図を示している。
【図4】図4は、自然状態モードにある閉鎖コイルを示し、例示的な第2構成の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、一実施形態に係る閉鎖コイル供給システム10を示している。このシステム10は、数多くのサブコンポーネントまたはサブシステムを含む。これらは、送出カテーテル100、送出ワイヤアセンブリ200、閉鎖コイル300および電源装置400を含む。送出カテーテル100は、近位端102と、遠位端104と、近位端102および遠位端104間に延びるルーメン106とを含む。送出カテーテル100のルーメン106は、送出ワイヤアセンブリ200の軸方向の移動を提供するためにサイズ設定されている。また、ルーメン106は、ガイドワイヤ(図示省略)の通路に合わせてサイズ設定されている。ガイドワイヤは、選択的には、適当な供給部位に送出カテーテル100を適切に案内するために使用することができる。
【0012】
送出カテーテル100は、高分子塗膜によりカプセル化または包囲されたステンレス鋼の平角線の編組シャフト構成を含むことができる。例えば、HYDROLENE(登録商標)は、送出カテーテル100の外側部分を被覆するために使用できる例示的な高分子塗膜の一つである。内側ルーメン106は、当該ルーメン106内で軸方向に移動されるデバイスと送出カテーテル100との間の摩擦力を低減するために、PTFEのような潤滑塗膜で覆うことが望ましい。送出カテーテル100は、X線不透過材料から形成された1またはそれ以上の任意のマーカーバンド108を含むようにしてもよく、これは、画像技術(例えば、X線透視画像)を使用して患者の血管系内で送出カテーテル100の位置を特定するために使用することができる。送出カテーテル100の長さは、具体的な用途に応じて変化させることができるが、一般的には長さ約150cmである。当然のことながら、その他の長さの送出カテーテル100を本明細書に記載のシステム10とともに使用することもできる。
【0013】
送出カテーテル100は、図1で示すように、真っ直ぐな遠位端104を含むことができる。代替的には、遠位端104を、特定の幾何学的形状または方向に予め成形することもできる。例えば、遠位端104を、“C字”形状、“S字”形状、“J字”形状、45°の曲げ形状、90°の曲げ形状に成形することができる。ルーメン106の寸法は、送出ワイヤアセンブリ200および閉鎖コイル300の寸法に応じて変化させることができるが、一般的には、送出カテーテル100の直径ルーメン106(送出カテーテル100のI.D.(内径))は約0.02インチ未満である。送出カテーテル100は、マイクロカテーテルとして知られている。図1には示されていないが、送出カテーテル100は、患者の血管内の適切な位置に送出カテーテル100を案内する助けとなる別個のガイドカテーテル(図示省略)とともに利用することができる。
【0014】
さらに図1を参照すると、システム10は、送出カテーテル100のルーメン106内の軸方向移動用に構成された送出ワイヤアセンブリ200を備えている。送出ワイヤアセンブリ200は、一般に、近位端202および遠位端204を含む。送出ワイヤアセンブリ200は、送出ワイヤ導管213を含み、この送出ワイヤ導管が、近位の管状部分206と、遠位のコイル部分208とを有する。近位の管状部分206は、例えば、ステンレス鋼製のハイポチューブ(hypotube)から形成することができる。遠位のコイル部分208は、例えば、ステンレス鋼線材から形成することができる。遠位のコイル部分208は、両端を接した配置で近位の管状部分206に接合することができる。
【0015】
送出ワイヤアセンブリ200はさらに、コアワイヤ210を含み、このコアワイヤは、送出ワイヤアセンブリ200の近位端202から、送出ワイヤアセンブリ200の遠位端204よりも遠位の位置まで、延びている。コアワイヤ210は、送出ワイヤ導管213の内側部分内に延在するルーメン212内に配置されている。コアワイヤ210は、ステンレス鋼線材のような導電性材料から形成されている。コアワイヤ210の近位端214(透視した状態で示される)は、送出ワイヤアセンブリ200の近位端202に位置する電気接点216に電気的に接続されている。電気接点216は、電源装置400の対応する電気接点(図示省略)と結合するように構成された金属ハンダ(例えば、金)から形成することができる。
【0016】
コアワイヤ210の一部は、絶縁塗膜218で覆うことが望ましい。絶縁塗膜218にはポリイミドを含むことができる。コアワイヤ210は、電気接点216と接触するコアワイヤ210の近位端214と、送出ワイヤアセンブリ200の遠位端204よりも遠位に延びるコアワイヤ210の部分に位置する小領域220とを除いて、その全長に亘り絶縁塗膜218に被覆されている。コアワイヤ210のこの“露出”部分は、電源装置400からの電流の印加で溶解する電解分離領域220を形成する。
【0017】
代替的な実施形態では、電解分離領域220の代わりに、熱エネルギに応答して破壊または溶解するように、犠牲部分を構成することができる。例えば、分離領域220は、外部から加えられる熱エネルギまたは熱に応答して融解または溶解するポリマリンク(例えば、1または複数の繊維)から形成することができる。ポリマリンクは、高抗張力および適当な融解温度を有する熱可塑性プラスチック材料(例えば、ポリエチレン)から形成することができる。熱に反応する犠牲部分は、分離領域220に適用するように構成される電気抵抗加熱コイルに反応するものであってもよい。そのような加熱コイルは、印加された電流に応答して熱を発生することにより作動する。代替的には、犠牲部分を破壊または溶解するために、電磁気またはRFエネルギを使用することができる。米国特許第7,198,613号は、様々な熱作動分離様式に関する更なる詳細を開示している。
【0018】
図1をさらに参照すると、閉鎖コイル300は、近位端302と、遠位端304と、それら端部間に延びるルーメン306とを含む。閉鎖コイル300は、一般に、白金または白金合金(例えば、白金タングステン合金)のような生体適合性金属から形成されている。閉鎖コイル300は、当該閉鎖コイル300が送出カテーテル100内に装着されるときに、一般に直線的な構成(図1に示すように)を含む。閉鎖コイル300は、解放すると、一般に、図4に示すような二次元構成または三次元構成を含む第2形状をとる。当然のことながら、本明細書に記載のシステム10は、様々な構成を有する閉鎖コイル300とともに使用することができ、特定のサイズおよび構成を有する特定の閉鎖コイル300に限られるものではない。
【0019】
閉鎖コイル300は、複数のコイル巻線308を含む。コイル巻線308は、一般に、閉鎖コイル300のルーメン306に沿って配置された中心軸まわりの螺旋形となっている。閉鎖コイル300は、図1に示すような巻線間隔の閉じた(クローズドピッチ)構成を有することができる。
【0020】
コアワイヤ210の遠位端222は、閉鎖コイル300の近位端302に、接合部250で連結されている。コアワイヤ210を閉鎖コイル300に接続するために、レーザ溶着、レーザタック、スポットおよび連続溶接を含む様々な技術および装置を使用することができる。コアワイヤ210の遠位端222と閉鎖コイル300の近位端302との間に形成される接合部250を被覆するために、接着剤240を塗布することが望ましい。接着剤240には、加熱またはUV放射を通じて固化または硬化されるエポキシ材料を含むことができる。例えば、接着剤240は、マサチューセッツ州ビルリカのフォーチュンドライブ14所在のエポキシテクノロジー社より入手可能なEPO−TEK(登録商標)353ND−4のような熱硬化性の2部エポキシを含むことができる。接着剤240は、接合部250をカプセル化して、その機械的安定性を増加させる。
【0021】
さらに図1を参照すると、システム10は、電解分離領域220を含むコアワイヤ210に直流を供給するための電源装置400を含む。導電性の流体(血液のような生理液または生理食塩水のような洗浄溶液を含む)の存在下では、電源装置400が作動すると、電気接点216、コアワイヤ210、電解分離領域220およびリターン電極(図示省略)を含む回路に電流が流れる。数秒(一般的には約10秒未満)後、犠牲電解分離領域220が溶解し、閉鎖コイル300がコアワイヤ210から分離する。
【0022】
電源装置400は、駆動回路402とともに、バッテリ(例えば、一組の単4電池)のような内蔵エネルギ源を含むこととなる。駆動回路402は、駆動電流を出力するように構成された1またはそれ以上のマイクロコントローラまたはプロセッサを含むことができる。図1に示す電源装置400は、送出ワイヤアセンブリ200の近位端202を受け入れて結合するように構成されたレセプタクル404を含む。レセプタクル404に近位端202を挿入すると、送出ワイヤアセンブリ200に設けられた電気接点216が、電源装置400に位置する対応接点(図示省略)と電気的に接続される。
【0023】
可視的表示器406(例えば、LED光)は、送出ワイヤアセンブリ200の近位端202が電源装置400内に適切に挿入されたときを示すことができる。バッテリを交換する必要がある場合に、別の可視的表示器407を作動させることもできる。電源装置400は、典型的には、犠牲電解分離領域220に電流を印加するためにユーザによって押下される作動トリガまたはボタン408を含む。典型的には、作動トリガ408が作動されると、分離が生じるまで、駆動回路402が自動的に電流を供給する。駆動回路402は、典型的には、ほぼ一定の電流(例えば、約1.5mA)を加えることにより作動する。
【0024】
電源装置400は、閉鎖コイル300がコアワイヤ210から分離したときを検知するように構成された任意の検出回路410を含むことができる。検出回路410は、測定インピーダンス値に基づいて分離を識別することができる。可視的表示器412は、電源装置400が犠牲電解分離領域220に電流を供給している状態のときを示すことができる。別の可視的表示器414は、閉鎖コイル300がコアワイヤ210から分離したときを示すことができる。分離の際に、可視的表示器414の代わりに、音響信号(例えば、ビープ音)または触知性信号(例えば、振動またはブザー)を発生させることができる。検出回路410は、閉鎖コイル300の分離を検知したときに、駆動回路402を無効にするように構成することができる。
【0025】
電源装置400は、非両極性の送出ワイヤアセンブリが電源装置400に挿入されたときをオペレータに示す別の可視的表示器416を含むこともできる。上記背景技術で述べたように、非両極性の送出ワイヤアセンブリは、別個のリターン電極を使用しており、それは典型的には、患者の鼠径部内に挿入された針の形態をしている。電源装置400は、非両極性の送出ワイヤアセンブリが挿入されたときを検知するように構成されている。そのような状況下において、可視的表示器416(例えば、LED)が点灯されて、ユーザは、別個のリターン電極(図1には示されていない)を、電源装置400に配置されたポート418内に挿入するよう、指示を受ける。
【0026】
図2は、一実施形態に係る送出ワイヤアセンブリ200の断面図を示している。この実施形態の同様の構成要素は、図1に関して上述した符号と同じ符号で特定されている。送出ワイヤアセンブリ200は、近位端202および遠位端204を含み、約184cmと約186cmとの間の長さを有する。送出ワイヤアセンブリ200は、近位の管状部分206および遠位のコイル部分208を有する送出ワイヤ導管213を含む。近位の管状部分206は、0.01325インチの外径(OD)と、0.0075インチの内径(ID)とを有するステンレス鋼製のハイポチューブから形成することができる。ハイポチューブ部分の長さは、約140cmと約150cmの間とすることができるが、その他の長さを使用することもできる。
【0027】
図2で見られるように、遠位のコイル部分208は、近位の管状部分206の遠位面に、端と端を接した形で接合されている。接合は、溶接またはその他の接合を使用して達成することができる。遠位のコイル部分208は、約39cmから約41cmの長さを有することができる。遠位のコイル部分208は、0.0025インチ×0.006インチのコイルを含むことができる。前者の寸法は、一般に、コイルを形成するコイルワイヤのODを指す。後者の寸法は、一般に、コイルワイヤを巻き付けて複数のコイル巻線を形成するのに使用される内側マンドレルを指し、そのコイルの公称IDである。
【0028】
遠位のコイル部分206は、3つのコイル“領域”、すなわち、近位領域224、中間領域226および遠位領域228に分けられて、各領域が1またはそれ以上のコイルからなり、近位コイル234、中間コイル236および遠位コイル238を含む各領域のコイルが互いに異なる。3種類のコイルは、3種類のコイルワイヤ、すなわち、近位コイルワイヤ244、中間コイルワイヤ246および遠位コイルワイヤ248から構成されている。これら領域は、送出ワイヤアセンブリ200の遠位のコイル部分206の長さに沿って遠位方向に剛性が減少する。換言すれば、近位領域224は中間領域226よりも硬く、中間領域226は遠位領域228よりも硬い。一実施形態では、中間領域の剛性が近位領域の剛性の約86−95%であり、遠位領域の剛性が近位領域の剛性の約80−85%である。この遠位のコイル部分206の長さに沿った剛性の漸減は、応力の解放により湾曲を最小化し、押し易さ(pushability)および追従性(trackability)を最大化する。この緩やかな剛性の変化は、閉鎖コイル300の展開および分離中における送出カテーテル100の反発(kick back)も低減する。
【0029】
剛性の減少を達成するために、本発明の様々な実施形態は、領域間で変化するコイルおよび/またはコイルワイヤを含む。一実施形態においては、図3Aに示すように、コイルのピッチが遠位方向に減少する。近位コイル234は、約0%のピッチを有し、中間コイル236は5−9%の範囲内のピッチを有し、遠位コイル238は10−20%の範囲内のピッチを有する。
【0030】
別の実施形態においては、図3Bに示すように、コイルワイヤのODが遠位方向に減少する。近位コイルワイヤ244は、約0.00250インチのODを有し、中間コイルワイヤ246は、約0.00225インチのODを有し、遠位コイルワイヤ248は、約0.00200インチのODを有している。
【0031】
さらに別の実施形態においては、図3Cに示すように、コイルワイヤの引張強度が遠位方向に減少する。近位コイルワイヤ244は、約300−350ksiの引張強度を有し、中間コイルワイヤ246は、約250−299ksiの引張強度を有し、遠位コイルワイヤ248は、約200−249ksiの引張強度を有している。
【0032】
さらに別の実施形態においては、図3Dに示すように、コイルワイヤの弾性係数が遠位方向に減少する。近位コイルワイヤ244は、中間コイルワイヤ246よりも高い弾性係数を有し、中間コイルワイヤは、遠位コイルワイヤ248よりも高い弾性係数を有する。
【0033】
別の実施形態においては、図3Eに示すように、コイルワイヤの断面が円からより楕円に変化する。近位コイルワイヤ244は、円形の断面を有し、中間コイルワイヤ246は、楕円の断面を有し、遠位コイルワイヤ248は、より楕円の断面、すなわち、より大きい長径を有する楕円の断面を有している。
【0034】
さらに別の実施形態においては、図3Fに示すように、コイルワイヤが積層されて、その積層体が遠位方向に薄くなっている。遠位コイルワイヤの積層体254は、中間コイルの積層体256よりも厚く、中間コイルの積層体は、遠位コイルの積層体258よりも厚い。
【0035】
この実施形態では3つの領域を示しているが、本発明は、3つの領域を有する遠位のコイル部分を備える送出ワイヤアセンブリに限定されるものではない。代替的な実施形態では、遠位のコイル部分の変化が、不連続ではなく、連続的である。
【0036】
図2を参照すると、遠位のコイル部分208の1またはそれ以上のマーカーコイル205が、X線不透過材料(遠位のコイル部分208の固体マーカーコイル205として図示)から形成することができる。例えば、遠位のコイル部分208は、ステンレス鋼コイルの部分(例えば、長さ3cm)を含み、その後に、白金コイルの部分(X線不透過性で、同様に長さ3mm)、その後に、ステンレス鋼コイルの部分(例えば、長さ37cm)などが続くものであってもよい。
【0037】
コアワイヤ210は、一端が電気接点216で終わり、送出ワイヤ導管213の遠位のコイル部分208よりも遠位に延びる。コアワイヤ210は、電解分離領域220と、電気接点216に連結される近位部分とを除いて、ポリイミドのような絶縁塗膜218で覆われている。電解分離領域220は、遠位のコイル部分208の遠位端よりも遠位に数ミリメートル(例えば、約0.02mm乃至約0.2mm)の位置に配置されている。コアワイヤ210は、約0.0175インチのODを有することができる。中心コイル260は、遠位のコイル部分208内の定位置でコアワイヤ210に取り付けられている。中心コイル260は、コアワイヤ210を送出ワイヤアセンブリ200内の適切な位置に配置させるようにする。中心コイル260は、本明細書に記載の接着剤のような接着剤240を使用して、コアワイヤ210に直接接合することができる。そのために、コアワイヤ210および中心コイル260を遠位のコイル部分208に固定すべく、接着剤240が塗布される。接着剤240には、先により詳細に述べたEPO−TEK(登録商標)353ND−4が含まれる。
【0038】
引き続き図2を参照すると、外側スリーブ262またはジャケットが、送出ワイヤ導管213の近位の管状部分206の一部と遠位のコイル部分208の一部を囲んでいる。外側スリーブ262は、近位の管状部分206と遠位のコイル部分208との間で形成される結合部分または接合部を被覆する。外側スリーブ262は、約50cmから約54cmまでの長さを有することができる。外側スリーブ262は、ポリエーテルブロックアミド・プラスチック材料(例えば、PEBAX7233ラミネーション)から形成することができる。外側スリーブ262は、PEBAXとHYDROLENE(登録商標)の積層体を含むことができる。外側スリーブ262のODは、0.02インチ未満とすることができ、0.015インチ未満がより望ましい。
【0039】
図4は、自然な状態の閉鎖コイル300の例示的な一構成を示している。自然な状態において、閉鎖コイル300は、例えば、図1に示す直線的な構成から、第2形状に変形する。第2形状には、様々な二次元形状および三次元形状をともに含むことができる。図4は、閉鎖コイル300の第2形状の一例である。また、閉鎖コイル300は、従来より知られているように、閉鎖コイル300のすべてまたは一部にわたり合成繊維を組み込むことができる。これら繊維は、コイル巻線308に直接取り付けるようにしても、あるいは織り構成または編組構成を使用して、閉鎖コイル300内に一体化するようにしてもよい。
【0040】
電気接点216は、送出ワイヤ導管213のルーメン212内にコアワイヤ210を挿入することにより製造することができる。その後、送出ワイヤアセンブリ200の近位端202に金属ハンダを塗布することにより、電気接点216を形成することができる。金属ハンダが硬化可能になった後、余剰材料を除去するためにクリッパなどを使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管系内のある位置に閉鎖デバイスを送り込む送出ワイヤアセンブリであって、
遠位のコイル部分に連結される近位の管状部分と、前記近位の管状部分および前記遠位のコイル部分を通って延びる導管ルーメンとを有する送出ワイヤ導管と、
前記導管ルーメン内に配置されて、前記閉鎖デバイスに連結された遠位端を有するコアワイヤとを備え、
前記送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分が、当該送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分の長さに沿って遠位方向に剛性が減少するコイルワイヤから形成される複数のコイルを備えることを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
前記複数のコイルのうち、最も遠位のコイルの剛性が、最も近位のコイルの剛性の80−85%であることを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項3】
請求項1に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
前記送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分における複数のコイルが、近位領域、中間領域および遠位領域をそれぞれ形成し、中間領域のコイルの剛性が近位領域のコイルの剛性の86−95%であり、遠位領域のコイルの剛性が近位領域のコイルの剛性の80−85%であることを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項4】
請求項3に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
前記複数のコイルのうち、最も近位の領域におけるコイルが、最も遠位の領域におけるコイルよりも小さい開ピッチ(open pitch)を有し、最も遠位の領域におけるコイルが、10−20%の範囲内のピッチを有することを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項5】
請求項1に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
前記送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分における複数のコイルが、近位領域、中間領域および遠位領域をそれぞれ形成し、近位領域のコイルが、中間領域のコイルよりも小さい開ピッチを有し、中間領域のコイルが、遠位領域のコイルよりも小さい開ピッチを有することを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項6】
請求項5に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
近位領域のコイルが約0%のピッチを有し、中間領域のコイルが5−9%の範囲内のピッチを有し、遠位領域のコイルが10−20%の範囲内のピッチを有しており、近位領域のコイルが約0%のピッチを有し、中間領域のコイルが約5%のピッチを有し、遠位領域のコイルが約10%のピッチを有することを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項7】
請求項1に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
前記送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分における複数のコイルが、近位領域、中間領域および遠位領域をそれぞれ形成し、近位領域のコイルワイヤが中間領域のコイルワイヤよりも大きい外径を有し、中間領域のコイルワイヤが遠位領域のコイルワイヤよりも大きい外径を有することを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項8】
請求項7に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
近位領域のコイルワイヤが約0.00250インチの外径を有し、中間領域のコイルワイヤが約0.00225インチの外径を有し、遠位領域のコイルワイヤが約0.00200インチの外径を有することを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項9】
請求項1に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
前記送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分におけるコイルが、近位領域、中間領域および遠位領域をそれぞれ形成し、近位領域のコイルワイヤが中間領域のコイルワイヤよりも高い引張強度を有し、中間領域のコイルワイヤが遠位領域のコイルワイヤよりも高い引張強度を有することを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項10】
請求項9に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
近位領域のコイルワイヤが、300−350ksiの範囲内の最大引張強度を有し、中間領域のコイルワイヤが、250−299ksiの範囲内の最大引張強度を有し、遠位領域のコイルワイヤが、200−249ksiの範囲内の最大引張強度を有することを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項11】
請求項1に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
前記送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分における複数のコイルが、近位領域、中間領域および遠位領域をそれぞれ形成し、近位領域のコイルワイヤが中間領域のコイルワイヤよりも高い弾性係数を有し、中間領域のコイルワイヤが遠位領域のコイルワイヤよりも高い弾性係数を有することを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項12】
請求項1に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
前記送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分における複数のコイルが、近位領域、中間領域および遠位領域をそれぞれ形成し、近位領域のコイルワイヤが円形の断面を有し、中間領域のコイルワイヤが楕円の断面を有し、遠位領域のコイルワイヤが、中間領域のコイルワイヤの楕円の断面よりも大きい長径の楕円の断面を有することを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項13】
請求項1に記載の送出ワイヤアセンブリにおいて、
前記送出ワイヤアセンブリの遠位のコイル部分がラミネート加工されたコイルワイヤを含み、最も近位の領域のコイルを覆う積層体が、最も遠位の領域のコイルを覆う積層体よりも厚いことを特徴とする送出ワイヤアセンブリ。
【請求項14】
閉鎖デバイス供給システムであって、
近位端と、遠位端と、それら近位端と遠位端との間に延びるカテーテルルーメンとを有する送出カテーテルと、
請求項1乃至13の何れかに記載の送出ワイヤアセンブリと、
コアワイヤに電気的に接続される電源装置とを備えることを特徴とする閉鎖デバイス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−522597(P2012−522597A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503724(P2012−503724)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/029700
【国際公開番号】WO2010/117883
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【出願人】(511087006)ストライカー エヌヴイ オペレイションズ リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER NV OPERATIONS LTD.
【Fターム(参考)】