説明

閉鎖系の多段階核酸増幅反応

【課題】前の段階の反応混合物の一部が次の段階の反応の試料となる、閉鎖系の多段階核酸増幅反応の系、方法及び装置の提供。
【解決手段】本発明は、特に流体的に閉じた条件下で多段階増幅反応を実施する系、方法及び装置に関する。一態様では、第一(又は前の)反応混合物の一部を単離して、それを第二(又は後の)反応混合物において試料又は検体として使用し、それによって両方の反応混合物が簡単に混合される場合に、第一反応成分が第二反応中にて及ぼす可能性がある妨害作用を実質的に回避することを可能にする、流体的に閉じた反応系において、本発明の方法が実施される。前記態様では、本発明の系、方法及び装置が、ネステッドプライマーの使用に基づく多段階の増幅を可能にする任意の増幅反応によって使用される場合がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一つ以上の核酸の存在について試料を解析する系及び方法に関し、より具体的には、多段階核酸増幅反応、特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を閉鎖条件下で実施する系及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
核酸増幅反応は、多くの研究用途、医学用途及び工業用途にとって極めて重要である。当該反応は、臨床的及び生物学的研究、感染症の検出及びモニタリング、突然変異の検出、癌マーカーの検出、環境モニタリング、遺伝子による識別、生物兵器防衛用途における病原体の検出等に使用されている(例えば、非特許文献1;非特許文献2)。特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、これら全ての領域において用途が見出されており、その用途には、ウイルス及び細菌の検出、ウイルス量のモニタリング、稀な及び/又は培養が困難な病原体の検出、生物兵器のおそれの迅速な検出、癌患者における最小の余病の検出、食品病原体試験、輸血用血液のスクリーニング等の用途が含まれる(例えば、非特許文献3;非特許文献4)。PCRに関して、このように広範に利用されている主要な理由は、その速度と使いやすさ(通常は、規格化されたキット、比較的簡単で低コストの機器を使用して数時間以内に実施される)、その感度(多くの場合、試料中の数十の標的配列を検出可能)、及びその頑健性(法医学試料等の低品質の又は保存された試料、又は固定組織試料が容易に解析される)である(非特許文献5)。
【0003】
このように広範な用途に反映されている核酸増幅技術における進歩にもかかわらず、特に感染症検出、最小の余病の検出、生物兵器用途等の領域において、速度及び感度の更なる向上が必要である。
【0004】
PCRの感度の大幅な向上は、二段階増幅反応におけるネステッドプライマーのセットを使用することによって得られる(例えば、非特許文献6)。この手法では、第一増幅反応の増幅産物が、新しいプライマーセットを使用する第二増幅反応の試料となり、少なくともいずれか一つのプライマーが、第一増幅産物の内部に結合する。この手法は、感度が上昇するものの、試薬の取り扱い、及び混入配列の取り込みの危険性が増大し、擬陽性をもたらす可能性があるということに悩まされる。いわゆる密閉管のネステッドPCRを使用して前記障害を克服する試みが行われてきたが、当該手法は同じ反応容器の異なる部分に試薬を隔離する方式に主に頼っているため、遠心分離のようなある種の物理的プロセスにより試薬を強制的に一緒にすることによって、第二段階の反応が開始される(例えば、非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。従って、第一段階の反応成分の相当量が第二段階の反応物中に存在する。
【0005】
又、感度の大幅な向上、及び擬陽性の減少は、反応を閉鎖環境で実施することによっても得られる。高感度の増幅技法の欠点は、標的でない配列の不適切な増幅によって擬陽性試験結果が発生することである(例えば、非特許文献10)。標的でない配列の存在は、反応の特異性の欠如、前の反応物からの混入(即ち、「キャリーオーバー」混入)、又は水、ディスポ、試薬等の周辺の環境からの混入による場合が考えられる。当該問題は閉鎖容器にて増幅を実施することによって改善することができ、一旦試料及び試薬を加えて、容器を密封すると、試薬又は生成物をそれ以上取り扱うことはない。当該操作は、反応混合物中の生成物の量を連続して報告する標識を使用する「リアルタイム」増幅の出現によって、大部分が可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schweitzer et al.,Current Opinion in Biotechnology,12:21−27(2001)
【非特許文献2】Koch,Nature Reviews Drug Discovery,3:749−761(2004)
【非特許文献3】Mackay,Clin.Microbiol.Infect.,10:190−212(2004)
【非特許文献4】Bernard et al.,Clinical Chemistry,48:1178−1185(2002)
【非特許文献5】Strachan and Read,Human Molecular Genetics 2(John Wiley & Sons,New York,1999
【非特許文献6】Albert et al.,J.Clin.Microbiol.,28;1560−1564(1990)
【非特許文献7】Yourno,PCR Methods and Applications,2:60−65(1992)
【非特許文献8】Wolff et al.,PCR Methods and Applications,4:376−379(1995)
【非特許文献9】Olmos et al.,Nucleic Acids Research,27:1564−1565(1999)
【非特許文献10】Borst et al.,Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.,23:289−299(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
閉鎖容器中の多段階増幅による試みにもかかわらず、現在の技術には、前の反応物の好ましくない成分、例えばプライマー又はその他の成分からの妨害作用を生じる可能性なく、多段階反応を行なうことができる方法又は系が欠けている。従って、一段階技法の利便性を有するものの、ネステッドプライマーを使用する多段階増幅により更に高い感度が得られる、閉鎖系の多段階増幅反応を実施する新しい手法の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前の段階の反応混合物の一部が次の段階の反応の試料となる、閉鎖系の多段階核酸増幅反応の系、方法及び装置を提供する。
【0009】
一態様では、本発明が、試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を検出する、以下の工程を包含する方法を提供する:(a)第一反応混合物中で第一段階増幅試薬(前記第一段階増幅試薬には、各標的ポリヌクレオチドの開始プライマーが含まれる)を使用して、試料由来の一つ以上の標的ポリヌクレオチドを流体的に閉じた反応系(fluidly closed reaction system)において増幅して、一つ以上の第一増幅産物を形成する工程;(b)流体的に閉じた反応系において第一反応混合物の試料を単離する工程;及び(c)第二反応混合物中で第二段階増幅試薬(前記第二段階増幅試薬には、一つ以上の第一増幅産物それぞれの少なくとも一つの第二プライマーが含まれる)を使用して、試料中の一つ以上の第一増幅産物を流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第二増幅産物を形成し、各第二プライマーが前記第一増幅産物の開始プライマーに比例して第一増幅産物中でネスト化されるようにする工程。
【0010】
別の態様では、本発明が、ネステッド増幅反応を制御する、以下の工程を包含する方法を提供する:(i)第一段階増幅反応において、反応混合物中の蛍光指示薬の存在下で標的ポリヌクレオチドを増幅する工程(前記蛍光指示薬は、第一段階増幅反応における増幅産物の量に関連する光信号を生成することができる);(ii)第一段階増幅反応において蛍光指示薬の光信号をモニタリングする工程;及び(iii)第一段階増幅反応の反応混合物の有効部分を自動的に分離し、光信号が所定のレベルに達した又は超えたときにはいつでも、第二段階増幅反応を開始する工程。
【0011】
別の態様では、本発明が、試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を検出する、以下の工程を包含する方法を提供する:(i)廃棄物レザバ、試料を含む試料レザバ、第一段階増幅試薬を含む第一反応物レザバ、及び第二段階増幅試薬を含む第二反応物レザバと選択的に流体連絡されており、各レザバが流体的に閉じている反応チャンバーを提供する工程;(ii)試料レザバ由来の試料、及び第一反応物レザバ由来の第一段階増幅試薬を反応チャンバーに流体的に移動させることで、試料中に標的ポリヌクレオチドが存在するときにはいつでも、第一段階増幅試薬が増幅反応において試料と反応し、第一増幅産物を含む反応生成物を生成するようにする工程;(iii)反応チャンバー内に残存する有効部分を除き、反応生成物を廃棄物レザバに流体的に移動させる工程;(iv)第二反応物レザバ由来の第二段階増幅試薬を反応チャンバーに流体的に移動させることで、反応生成物中に第一増幅産物が存在するときにはいつでも、第二段階増幅試薬が増幅反応において試料の有効部分と反応し、第二増幅産物を生成するようにする工程;及び(v)試料中に標的ポリヌクレオチドが存在するかどうかを決定するために第二増幅産物を検出工程。
【0012】
別の態様では、本発明が、試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの相対量を決定する、以下の工程を包含する方法を提供する:(i)一つ以上の標的ポリヌクレオチド、及び第一増幅反応物(第一増幅反応物には、標的ポリヌクレオチド及び参照配列それぞれの開始プライマーが含まれる)中の少なくとも一つの参照配列を試料において増幅して、標的ポリヌクレオチド及び参照配列それぞれの第一増幅産物を含む第一反応生成物を形成する工程;(ii)第一反応生成物の有効部分由来の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの第一増幅産物を第二増幅反応物(前記第二増幅反応物には、各標的ポリヌクレオチドの第二プライマーが含まれる)において増幅して、各第一増幅産物の第二増幅産物を形成し、各第一増幅産物の各第二プライマーが、それらの開始プライマーに関連する当該第一増幅産物においてネスト化されるようにする工程;及び(iii)第二増幅反応物の第二増幅産物と第一増幅反応中の少なくとも一つの参照配列とを比較し、試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの相対量を決定する工程。
【0013】
本発明の別の態様では、ネステッド増幅反応を実施する、以下を含む流体的に閉じた反応系が提供される:(i)試料レザバ、廃棄物レザバ、第一段階増幅試薬を含む第一反応物レザバ、及び第二段階増幅試薬を含む第二反応物レザバと選択的に流体連絡されており、各レザバが流体的に閉じている反応チャンバー;及び(ii)前記試料レザバ中の試料、及び第一段階増幅試薬を反応チャンバーに流体的に移動し(ここで第一増幅反応は、反応混合物中に一つ以上の第一増幅産物を形成するために実施される);反応混合物の有効部分を単離し;前記第二段階増幅試薬及び有効部分を反応チャンバーに流体的に移動させる(ここで第二増幅反応は、一つ以上の第二増幅産物を形成するために実施される)、回転バルブと作動的に関連したポンプ。
【0014】
別の態様では、本発明が、本発明の方法を実施するための、以下を含む容器を提供する:(i)液体を含むための反応チャンバー;(ii)入口チャネルによって反応チャンバーに接続される入口;(iii)出口チャネルによって反応チャンバーに接続される出口;及び(iv)反応チャンバー内の保持部材(前記保持部材は反応チャンバー内の規定の容積を維持するように配置されており、液体の残りの部分は出口チャネルを通じて反応チャンバーから排出される)。
【0015】
別の態様では、本発明が、多段階反応を実施するための装置を提供し、前記装置が、(a)少なくとも第一チャネル及び第二チャネルがその中に形成されている本体;及び(b)(i)液体を含むための反応チャンバー;(ii)入口チャネルによって反応チャンバーに接続される入口;(iii)出口チャネルによって反応チャンバーに接続される出口;及び(iv)反応チャンバー内の保持部材(前記保持部材は、反応チャンバー内の規定の容積を維持するように配置されており、液体の残りの部分は出口チャネルを通じて反応チャンバーから排出される)を含む、前記本体から延長された反応容器からなり、容器の入口が、本体内の第一チャネルと接続しており、容器の出口が、本体内の第二チャネルと接続している装置を提供する。
【0016】
更に別の態様では、本発明が、ネステッド増幅反応の性能を制御するコンピュータによる実行用のプログラムを具現化するコンピュータ読み取り可能な製品であって、以下の命令を含むコンピュータ読み取り可能な製品を提供する:(a)第一段階増幅反応からの光信号(前記光信号は第一段階増幅反応の増幅産物の濃度と単調に関連し、前記光信号が直近の値を有する)の値を読み取る命令;(b)前記光信号の値からベースライン信号を決定する命令;(c)前記光信号の値から所定のレベルを計算する命令;(d)所定のレベルを光信号の直近の値と比較する命令;(e)前記光信号の直近の値が所定のレベル以上であるときにはいつでも、第二段階増幅反応を開始する命令;(f)第二段階の反応が開始するまで、工程(d)及び(e)を繰り返す命令。
【0017】
別の態様では、本発明が、一つ以上のRNA配列を増幅する方法であって、以下の工程を包含する方法を提供する:(i)第一反応混合物中で逆転写酵素を使用して、一つ以上のRNA配列を流体的に閉じた反応系において転写して、一つ以上の相補的な一本鎖DNA配列を形成する工程;(ii)流体的に閉じた反応系において第一反応混合物の第一有効部分を単離する工程;及び(iii)第二反応混合物中の第一段階増幅試薬(第一段階増幅試薬には、相補的な一本鎖DNA配列のそれぞれに対する開始プライマーが含まれる)を使用して、第一有効部分中の一つ以上の相補的な一本鎖DNAを流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第一増幅産物を形成する工程。
【0018】
本発明は、(1)「キャリーオーバー」反応物の回避による閉鎖系内での二段階増幅反応における高い感度;(2)反応開始のクローズループ制御を使用した、リアルタイム多段階増幅反応の性能、特にリアルタイムネステッドPCRの性能;(3)参照配列の一段階増幅及び標的配列の多段階増幅による、多段階増幅中の更に正確な少量の標的ポリヌクレオチド;及び(4)本発明の方法を実施する好都合且つ使い捨ての反応容器を含むがこれらに限定されない、最新の技法を上回る様々な利点を種々の態様で有する、検体又は試料中の一つ以上のポリヌクレオチドを検出又は測定する系及び方法を提供する。
【0019】
定義
本明細書で使用される、核酸化学、生化学、遺伝学、及び分子生物学の用語及び記号は、例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,Second Edition(W.H.Freeman,New York,1992);Lehninger,Biochemistry,Second Edition(Worth Publishers,New York,1975);Strachan
and Read,Human Molecular Genetics,Second Edition(Wiley−Liss,New York,1999);Eckstein;Oligonucleotides and Analogs:A Practical Approach(Oxford University Press,New York,1991);Gait,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1984);Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory,1989)等の、これらの分野における標準的論文及びテキストに従う。
【0020】
「増幅産物(amplicon)」とは、ポリヌクレオチド増幅反応の生成物を意味する。即ち、一つ以上の開始配列から複製される、ポリヌクレオチドの集団であり、通常は二本鎖である。一つ以上の開始配列は、同じ配列の一つ以上のコピーとなる場合もあれば、異なる配列の混合物となる場合もある。増幅産物は、その生成物が一つ以上の標的核酸の複数の複製である、種々の増幅反応によって生成することができる。一般的に、増幅産物を生成する増幅反応生成物は、反応生成物の生成に必要な鋳型ポリヌクレオチド中で相補体を有する、ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのいずれかである、反応生成物の塩基対を形成するという点において、「鋳型由来」である。一態様では、鋳型由来の反応が、核酸ポリメラーゼを使用したプライマー伸長法、又は核酸リガーゼを使用したオリゴヌクレオチドライゲーション反応となる。当該反応には、本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許第4,683,195号、米国特許第4,965,188号、米国特許第4,683,202号、米国特許第4,800,159号(Mullis et al.)(PCR);米国特許第5,210,015号(Gelfand et al.)(「タックマン」プローブ付きリアルタイムPCR);米国特許第6,174,670号(Wittwer et al.);米国特許第4,988,617号(Landegren et al.)(LCR);米国特許第5,427,930号(Birkenmeyer et al.)(「ギャップ−LCR」);米国特許第5,399,491号(Kacian et al.)(NASBA);米国特許第5,648,211号、米国特許第5,712,124号(Walker)(SDA);米国特許第5,854,033号(Lizardi);日本国特許出願公開平4−262799(Aono et al.)(ローリングサークル増幅反応)等の文献に開示されるような、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、線状ポリメラーゼ反応、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖変位増幅(SDA)、核酸配列増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅等が含まれるが、これらに限定されない。一態様では、本発明の増幅産物がPCRによって生成される。増幅反応は、増幅反応の進行として反応生成物を測定することを可能にする検出化学が利用できる場合に、例えば、後述する「リアルタイムPCR」又はLeone et al.,Nucleic Acids Research,26:2150−2155(1998)等の文献に記載されるような「リアルタイムNASBA」等の「リアルタイム」増幅となる場合もある。本明細書で使用される「増幅する」とは、増幅反応を実施することを意味する。「反応混合物」とは、反応を実施する上で必要な全ての反応物(反応の際の選択されたレベルにおいてpHを維持するための緩衝剤、塩、補因子、捕捉剤等が含まれるが、これらに限定されない)を含む溶液を意味する。
【0021】
増幅反応に関する「閉鎖(閉じた)」とは、液体、特に、核酸、タンパク質、ウイルス、細菌等が含まれるが、これらに限定されない、非試料材料生体分子又は生物等の非試料材料を含む液体が通過できるような開口を有さない、容器又はコンテナ又はチャンバー内で当該反応が行われることを意味する。一態様では、閉鎖増幅反応物を入れる容器、チャンバー又はコンテナに、気体を透過するが液体を透過しない出入口又は排出口、例えば、フィルター膜を通じて空気を排出するが、従来の反応条件下では液体を排出しない排出口が含まれる場合がある。当該排出口に適した膜には、TyrekOフィルム(Dupon
t)等の織られたポリオレフィンフィルムが含まれる。
【0022】
「相補的又は実質的に相補的」とは、例えば、二本鎖DNA分子の2本鎖の間、又はオリゴヌクレオチドプライマーと一本鎖核酸のプライマー結合部位との間等の、ヌクレオチド又は核酸の間のハイブリダイゼーション、又は塩基対形成又は二重鎖の形成を意味する。一般的に、相補的ヌクレオチドは、A及びT(又はA及びU)、又はC及びGである。適切なヌクレオチド挿入又は欠失を認め、一本鎖のヌクレオチドを適切に並べ、比較し、他方の鎖と少なくとも約80%、通常は少なくとも約90%〜95%、更に好ましくは約98〜100%が対を形成する場合に、一本鎖RNA又はDNA分子は実質的に相補的と言える。又、その相補体に対する選択的なハイブリダイゼーション条件下でRNA又はDNA鎖がハイブリダイズする場合、実質的な相補性が存在する。通常は、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも14〜25ヌクレオチドの伸びを超えて少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約75%、更に好ましくは少なくとも約90%の相補性がある場合に生じる(本明細書に参考文献として組み入れられる、M.Kanehisa Nucleic Acids Res.12:203(1984)を参照)。
【0023】
「コンピュータ読み取り可能な製品」とは、コンピュータによって読み取ることができるか、伝達される情報を保存するための任意の有形の媒体を意味する。コンピュータ読み取り可能な製品には、磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、CD−ROM、穿孔テープ又はカード、読み込み専用記憶装置、直接アクセス記憶装置、ゲートアレイ、静電記憶装置、及びその他の同様の媒体が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
「二重鎖」とは、安定した複合体が形成されるように、完全に又は部分的に相補し合う少なくとも二本のオリゴヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチドが、全て又は殆どのヌクレオチドの間でワトソン−クリック型塩基対を形成することを意味する。「アニーリング」及び「ハイブリダイゼーション」という用語は、安定した二重鎖の形成を意味するために同じ意味で使用される。二重鎖に関する「完全に一致」とは、各鎖中の全てのヌクレオチドが他の鎖中のヌクレオチドとワトソン−クリック型塩基対を形成するように、二重鎖を構成するポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド鎖が互いに二重鎖構造を形成することを意味する。「二重鎖」という用語は、いずれも利用されることがある、デオキシイノシン、2−アミノプリン塩基を有するヌクレオシド、PNA等のヌクレオシド類似体の対を含む。二本のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの間の二重鎖における「不一致」とは、二重鎖中のヌクレオチドの対がワトソン−クリック型結合を形成しないことを意味する。
【0025】
「流体的に閉じた(閉じている)」とは、従来の操作条件において、一つ以上の容器、
チャンバー、バルブ及び/又は通路を含む系内の液体が相互に通じており、この系の外部とは通じることができず、同様に、この系の外部の液体が、系の内部に含まれる液体とは通じることができないことを意味する。一態様では、流体的に閉じた系の容器、チャンバー、バルブ及び通路が100psi未満の範囲、別の態様では、50psi未満の範囲又は30psi未満の範囲に加圧されていることを、従来の作動条件が意味する。
【0026】
「蛍光指示薬」とは、反応混合物中の生成物が、少なくとも所定の濃度範囲を超えて蓄積すると、蛍光指示薬のシグナルが増加するように、増幅反応の生成物(即ち、「増幅生成物」)の存在下で蛍光シグナルを生成することのできるプローブを意味する。蛍光指示薬は、二本鎖DNA生成物と結合する、YO−PRO−1、SYBRグリーン1等のインターカレーティング色素(intercalating dye)(Ishiguro et al.,Anal.Biochem.,229:207−213(1995);Tseng et al.,Anal.Biochem.,245:207−212(1997);Morrison et al.,Biotechniques,24:954−962(1998))、又はプライマーの伸長によって離れるまで、蛍光クエンチャーに近接することを防止する、蛍光分子を有するヘアピン構造を有するプライマー等(AmplifluorTMプライマー)(例えば、Whitecombe et al.,Nature Biotechnology,17:804−807(1999))のように非特異的になる場合もある。又、蛍光指示薬は、通常、オリゴヌクレオチド部分が増幅生成物に特異的に結合するまで、蛍光クエンチャーに近接している蛍光分子を含む、標的配列に特異的になる場合もある(例えば、Gelfand et al.,米国特許第5,210,015号(「タックマン」);Nazarenko et al.,Nucleic Acids Research,25:2516−2521(1997)(「スコーピオンプローブ」);Tyagi et al.,Nature Biotechnology,16:49−53(1998)(「モレキュラービーコン」))。蛍光指示薬は、リアルタイムPCRと共に使用される場合もあれば、反応完了ときに反応生成物の全量を測定するために使用される場合がある。
【0027】
「内標準」とは、試料中の標的ポリヌクレオチドの絶対的又は相対的定量を可能にするために、標的ポリヌクレオチドとして、同一の増幅反応中で増幅される核酸配列を意味する。内標準は、内生的である場合もあれば、外生的である場合もある。即ち、内標準は試料中で自然に発生することもでき、又は、増幅前に試料に加えることもできる。一態様では、試料中の対応する標的ポリヌクレオチドの量を決定するために標的増幅産物を対比することができるような検定を規定するために、一連の所定の濃度で反応混合物に複数の外生的内標準配列が加えられる場合がある。外生的内標準の数、配列、長さ及びその他の特徴の選択は、当業者にとって通常の設計上の選択である。好ましくは、外生的内標準(又、本明細書では「参照配列」とも称する)は、一定の又は細胞サイクルに依存する転写レベルを示す、最小限に制御された遺伝子に対応する試料に対して自然な配列である(例えば、Selvey et al.,Mol.Cell Probes,15:307−311(2001))。具体的な参照配列には、以下の遺伝子、即ち、GAPDH、β−ミクログロブリン、18SリボゾームRNA、及びβ−アクチンの遺伝子(上記に引用したSelvey et al.を参照)からの配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
「キット」とは、本発明の方法を実施するための材料又は試薬を送達するための任意の送達系を意味する。反応アッセイとの関連で、当該送達系には、任意の位置から別の位置への反応試薬(例えば、適切なコンテナ中のプローブ、酵素等)及び/又は支持材(例えば、アッセイを実施するための緩衝剤、説明書等)の保存、輸送又は送達を可能にする系が含まれる。例えば、キットには、関連する反応試薬及び/又は支持材を含む一つ以上の筐体(例えば、箱)が含まれる。当該内容物は、一緒に又は別々に、所期の受容者に送達される。例えば、第一コンテナにはアッセイに使用される酵素が含まれ、第二コンテナにはプローブが含まれる。
【0029】
「ライゲーション」とは、鋳型由来反応において、複数の核酸、例えば、オリゴヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチドの末端の間に共有結合又は連鎖を形成することを意味する。結合又は連鎖の性質は広く変化することができ、ライゲーションは酵素的又は化学的に実施することができる。本明細書で使用されるように、ライゲーションは、通常、1本のオリゴヌクレオチドの末端ヌクレオチドの5’炭素と別のオリゴヌクレオチドの3’炭素との間にリン酸ジエステル結合を酵素的に形成して実施される。鋳型由来ライゲーション反応は、本明細書に参考文献として組み入れられる、以下の文献、即ち、米国特許第4,883,750号(Whitely et al.);米国特許第5,476,930号(Letsinger et al.);米国特許第5,593,826号(Fung et al.);米国特許第5,426,180号(Kool);米国特許第5,871,921号(Landegren et al.);Xu and Kool,Nucleic Acids Research,27:875−881(1999);Higgins et al.,Methods in Enzymology,68:50−71(1979);Engler et al.,The Enzymes,15:3−29(1982);及び米国特許出願公開第2004/0110213号(Namsaraev)に記載されている。
【0030】
「微小流体デバイス」とは、相互接続され、流体連絡されており、単独で、又は試料の投入、流体及び/又は試薬駆動手段、温度制御、及び検出系等の支援機能を提供する装置又は計器と連携して、分析反応又はプロセスを実施するために設計されている、一つ以上のチャンバー、排出口、及びチャネルの統合された系を意味する。微小流体には更に、バルブ、ポンプ、内壁に特定の機能性コーティング、例えば、試料成分又は試薬が吸着するのを防止するか、又は電気浸透等による試薬の移動を促進するコーティングが含まれる場合がある。通常、当該装置は、ガラス、プラスチック、又はその他の固体ポリマー材料である場合がある固体基板において、又は固体基板として製造され、一般的には、特に光学的又は電気化学的方法による、検出、及び試料のモニタリング、及び試薬の移動を容易にするための平面型を有している。微小流体デバイスの特徴は、通常、数100平方マイクロメートル以下の断面積を有し、通路は、通常、毛細血管の寸法、例えば、約1000μm〜約0.1μmの最大断面寸法を有する。微小流体デバイスは、通常、100μL〜数nLの範囲、例えば、10〜100nLの容積を有する。微小流体デバイスは、本明細書に組み入れられる、以下の文献、即ち、米国特許第6,001,229号、米国特許第5,858,195号、米国特許第6,010,607号及び米国特許第6,033,546号(Ramsey);米国特許第5,126,022号及び米国特許第6,054,034号(Soane et al.);米国特許第6,613,525号(Nelson
et al.);米国特許第6,399,952号(Maher et al.);国際特許出願公開WO 02/24322号(Ricco et al.);国際特許出願公開WO 99/19717号(Bjornson et al.);米国特許第5,587,128号及び米国特許第5,498,392号(Wilding et al.)によって例示されているように、当業界において周知である。
【0031】
本明細書で使用される、「ヌクレオシド」には、例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,2nd Edition(Freeman,San Francisco,1992)に開示されているように、2’−デオキシ及び2’−ヒドロキシ型を含む天然ヌクレオシドが含まれる。ヌクレオシドに関する「類似体」には、特定のハイブリダイーションを行なう能力があるという条件で、例えば、Scheit,Nucleotide Analogs(John Wiley,New York,1980);Uhlman and Peyman,Chemical Reviews,90:543−584(1990)等に記載されているような、修飾塩基部分及び/又は修飾糖部分を含む合成ヌクレオシドが含まれる。当該類似体には、結合特性を向上し、複雑さを減少し、特異性を向上させる等のために設計された合成ヌクレオシドが含まれる。ハイブリダイゼーション、又はヌクレアーゼ耐性を向上させた類似体を含むポリヌクレオチドは、Uhlman and Peyman(上記で引用);Crooke et al.,Exp.Opin.Ther.Patents,6:855−870(1996);Mesmaeker et al.,Current Opinion in structural Biology,5:343−355(1995)等に開示されている。二重鎖の安定性を向上することのできる、模範的なタイプのポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホロアミデート(本明細書では「アミデート」と称する)、ペプチド核酸(本明細書では「PNAs」と称する)、オリゴ−2’−O−アルキルリボヌクレオチド、C−5プロピニルピリミジンを含むポリヌクレオチド、ロックド核酸(LNAs)及び同様の化合物が含まれる。当該オリゴヌクレオチドは、市販されているか、又は文献に開示される方法を使用して合成することができる。
【0032】
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」とは、DNAの相補鎖の同ときに起こるプライマー伸長による、特定のDNA配列のインビトロ増幅のための反応を意味する。即ち、PCRは、プライマー結合部位に隣接する標的核酸の複数のコピー又は複製物を製造するための反応であって、当該反応は以下の工程を1回以上繰り返すことを包含する:(i)標的核酸を変性させる工程、(ii)プライマーをプライマー結合部位にアニーリングする工程、及び(iii)ヌクレオシド三リン酸の存在下で、核酸ポリメラーゼによってプライマーを伸長させる工程。通常、反応は、サーマルサイクラー手段中で各工程に適した種々の温度を通して循環する。特定の温度、各工程における持続時間、工程間の変化速度は、当業者に周知の多くの要因に依存し、例えば、McPherson et al.,PCR:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1991)及びMcPherson et al.,PCR2:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1995)等の文献に例示されている。例えば、Taq DNAポリメラーゼを使用する従来のPCRにおいては、二重鎖標的核酸は90℃を超える温度で変性され、プライマーは50〜75℃の範囲の温度でアニーリングされ、プライマーは、72〜78℃の範囲の温度で伸長される。「PCR」という用語には、RT−PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、定量的PCR、マルチプレックスPCR等の派生した型形の反応が含まれるが、これらに限定されない。反応容積は、数100nL、例えば200nL〜数100μL、例えば200μLの範囲である。「逆転写PCR」又は「RT−PCR」とは、標的RNAを、次に増幅される相補的一本鎖DNAに変換する逆転写反応によって先行するPCRを意味する(例えば、本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許第5,168,038号(Tecott et al.))。「リアルタイムPCR」とは、反応が進行するにつれて、反応生成物、即ち増幅産物の量をモニタリングするPCRを意味する。主に反応生成物をモニタリングするために使用する検出化学がことなる、多くの形態のリアルタイムPCRがある(例えば、本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許第5,210,015号(Gelfand et al.)(「タックマン」);米国特許第6,174,670号及び第6,569,627号(Wittwer et al.)(インターカレーティング色素);米国特許第5,925,517号(Tyagi et al.)(モレキュラービーコン))。リアルタイムPCRのための検出化学は、本明細書に参考文献として組み入れられる、Mackay et al.,Nucleic Acids Research,30:1292−1305(2002)に論評されている。「ネステッドPCR」とは、第一PCRの増幅産物が、いずれかが第一増幅産物の内部に結合する、プライマーの新しいセットを使用した第二PCRの試料となる二段階PCRを意味する。本明細書で使用されるように、ネステッド増幅反応に関する「開始プライマー」は第一増幅産物を生成するために使用されるプライマーを意味し、「第二プライマー」は第二、又はネステッド増幅産物を生成するために使用される一つ以上のプライマーを意味する。「マルチプレックスPCR」とは、同じ反応混合物中で同ときに複数の標的配列(又は単一の標的配列及び一つ以上の参照配列)が実施されるPCRを意味する(例えば、Bernard et al.,Anal.Biochem.,273:221−228(1999)(二色リアルタイムPCR))。通常、各配列の増幅のために、プライマーの別個のセットが使用される。通常、マルチプレックスPCRにおける標的配列の数は、2〜10、又は2〜6、更に一般的には2〜4の範囲である。
【0033】
「定量的PCR」とは、試料又は検体中の一つ以上の特定の標的配列の存在量を測定するために設計されたPCRを意味する。定量的PCRには、当該標的配列の絶対的定量及び相対的定量の両方が含まれる。定量的測定は、標的配列と別個に、又は一緒にアッセイされ得る、一つ以上の参照配列を使用して行われる。参照配列は、試料又は検体に対して内生的である場合もあれば、外生的である場合もあり、後者の場合は、一つ以上の競合鋳型を含む場合もある。一般的な内生的参照配列には、β−アクチン、GAPDH、β−ミクログロブリン、リボゾームRNA等の遺伝子の断片又は転写物が含まれる。定量的PCRの技法は、本明細書に参考文献として組み入れられる、Freeman et al.,Biotechniques,26:112−126(1999);Becker−Andre et al.,Nucleic Acids Research,17:9437−9447(1989);Zimmerman et al.,Biotechniques,21:268−279(1996):Diviacco et al.,Gene,122:3013−3020(1992):Becker−Andre et al.,Nucleic Acids Research,17:9437−9446(1989)等に例示されているように、当業者に周知である。
【0034】
「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」とは、同じ意味で使用され、それぞれヌクレオチドモノマーの直鎖状ポリマーを意味する。ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドを生成するモノマーは、ワトソン−クリック型塩基対形成、塩基対の積み重ね、フッグスティーン又は逆フッグスティーン型塩基対形成等の、モノマー−モノマー相互作用の規則的なパターンによって天然ポリヌクレオチドと特異的に結合することができる。当該モノマー及びそれらのヌクレオシド内結合は、自然に発生するか、又はそれらの、自然に発生するか、又は自然に発生しない類似体等の類似体となる場合がある。自然に発生しない類似体には、PNA、ホスホロチオエートヌクレオシド内結合、蛍光色素分子又はハプテン等の、標識の結合を可能にする結合基を含む塩基が含まれる。オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、ポリメラーゼによる伸長、リガーゼによるライゲーション等の酵素処理を必要とするときにはいつでも、事例におけるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、幾つかの位置で、ヌクレオシド内結合の特定の類似体、糖成分、又は塩基を含まないことを当業者は理解するであろう。通常に「オリゴヌクレオチド」として言及される時は、ポリヌクレオチドは、通常、数個のモノマー単位、例えば5〜40から数千のモノマー単位のサイズに及ぶ。ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、「ATGCCTG」のように文字の配列(大文字又は小文字)によって表わされ、指摘されるか、事情から明らかでない限りは、左から右への順序で5’→3’であり、「A」はデオキシアデノシンを示し、「C」はデオキシシチジンを示し、「G」はデオキシグアノシンを示し、及び「T」はチミジンを示し、「I」はデオキシイノシンを示し、「U」はウリジンを示すことが理解される。特に断らない限り、専門用語及び原子の番号付けの慣習は、Strachan and Read,Human Molecular Genetics 2(Wiley−Liss,New York,1999)に開示されたものに従う。通常、ポリヌクレオチドは、リン酸ジエステル結合によって結合された4種の天然ヌクレオシド(例えば、DNA用のデオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、又はRNA用のこれらのリボソーム相当品)を含むが、修飾塩基、糖、又はヌクレオシド内結合等の、非天然ヌクレオチド類似体を含む場合もある。酵素が、活性のために、一本鎖DNA、RNA/DNA二重鎖等の、特異的なオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質要求性を有することは当業者に明らかであり、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質についての適切な組成物の選択は、当業者の知識内、特に、Sambrook et al.,Molecular Cloning,第二版(Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989)及び同様の文献等の論文からのガイダンス内で十分である。
【0035】
「プライマー」とは、伸長された二重鎖が形成されるように、核酸合成の開始点として作用し、3’末端から鋳型に沿って伸長するためのポリヌクレオチド鋳型と二重鎖を形成することのできる、天然又は合成のいずれかのオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーの伸長は、通常、DNA又はRNAポリメラーゼ等の核酸ポリメラーゼを使用して実施される。伸長プロセスで加えられるヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列によって決定される。通常、プライマーはDNAポリメラーゼによって伸長される。プライマーは、通常、14〜40ヌクレオチドの範囲、又は18〜36ヌクレオチドの範囲の長さを有する。プライマーは、単一のプライマーを使用した直線増幅反応、又は複数のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応等の、種々の核酸増幅反応で使用される。特定の用途のためのプライマーの長さ及び配列の選択のためのガイダンスは、本明細書に参考文献として組み入れられる、Dieffenbach,PCR Primer:A Laboratory Manual,2nd Edition(Cold Spring Harbor Press,New York,2003)等によって証明されるように、当業者に周知である。
【0036】
「読み出した情報(readout)」とは、測定及び/又は検出し、数字又は値に変換することができるパラメータを意味する。ある事情においては、読み出した情報は、このように集めた又は記録したデータの実際の数値的な表現を意味する。例えば、マイクロアレイからの蛍光強度信号の読み出した情報は、マイクロアレイの各ハイブリダイゼーション部位において生成された信号のアドレス及び蛍光強度である。従って、かかる読み出した情報は、種々の方法、例えば、マイクロアレイの画像として、数字の表として、記録又は保存することができる。
【0037】
一分子の別の分子への結合、例えば、プローブについての標識された標的配列への結合に関する「特異的に」又は「特異性」とは、認識し、接触し、2個の分子間で安定した複合体を形成し、その他の分子とは、実質的に認識せず、接触せず、又は複合体を形成しないことを意味する。一態様では、第一分子の第二分子への結合に関する「特異的」が、第一分子が反応物又は試料中で、別の分子を認識して複合体を形成する範囲で、第二分子と多くの複合体を形成することを意味する。好ましくは、この多くの複合体は、少なくとも50%である。一般的に、特異的結合現象に関与する分子は、相互に結合する分子の間の特異的認識を起こす表面又は空洞における領域を有する。特異的結合の具体例には、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドの間の二重鎖又は三重鎖の形成、受容体−リガンド相互作用等が含まれる。本明細書で使用されるように、特異性又は特異的結合に関する「接触」とは、2個の分子が、ファンデルワールス力、水素結合、塩基の積み重ね相互作用、イオン及び疎水性相互作用等の弱い非共有化学的相互作用に十分に接近することを意味する。
【0038】
「Tm」又は「融解温度」とは、二重鎖核酸分子の集団が、半分が一本鎖に解離する温度を意味する。核酸のTmを計算するための幾つかの式は当業界で周知である。例えば、Tm値の簡単な概算は、以下の式によって計算することができる。1M NaClにおける水溶液中に核酸がある場合、Tm=81.5+0.41(G+C%)。二重鎖形成及び解離の更に完全なモデルに基づくTmの計算方法は、Breslauer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,83:3746−3750(1986);及びWetmur,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.,26:227−259(1991)に開示されている。
【0039】
「試料」とは、標的核酸の検出又は測定が求められている、生物学的、環境的、医学的又は患者からの材料の分量を意味する。一方で、検体又は培養物(例えば、微生物の培養物)を含むことを意味する。他方では、生物学的及び環境的試料の両方を含むことを意味する。試料には合成起源の検体が含まれる場合もある。生物学的試料には、ヒトを含む動物、液体、固体(例えば、便)又は組織、液体及び固体の食品及び加工食品、酪農製品、野菜、肉及び肉の副産物及び廃棄物等の成分が含まれるが、これらに限定されない。生物学的試料には、培養物、血液、唾液、脳、髄液、胸水、乳、リンパ液、痰、精液、針吸引した試料等が含まれる。生物学的試料は、全ての種々の系統の家畜、及び野生動物、例えば、有蹄動物、熊、魚、げっし類等から得られるが、これらに限定されない。環境的試料には、表面材料、土、水及び工業的試料、及び食品及び酪農加工手段、装置、設備、道具、使い捨て及び使い捨てでない部品から得られる試料等の、環境的材料が含まれる。これらの具体例は、本発明に適用できる試料のタイプを限定するとして解釈されない。「試料」及び「検体」という用語は、同じ意味で使用される。
【0040】
多数の蛍光標識に関する「スペクトル分解可能」とは、標識の蛍光放射が十分に識別され、即ち、十分に重複しておらず、結合したそれぞれの標識が結合した分子タグが、標準的光検出系によるそれぞれの標識によって生成される蛍光信号に基づいて、例えば、米国特許第4,230,558号、米国特許第4,811,218号等、又はWheeless et al.,Flow Cytometry,Instrumentation and Data Analysis:21−76(Academic Press,New York,1985)に例示されるような、バンドパスフィルター及び光電子増倍管を使用して区別することができることを意味する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ネステッド増幅反応を制御する方法であって、
第一段階増幅反応において、反応混合物中の蛍光指示薬の存在下で標的ポリヌクレオチドを増幅する工程であって、該蛍光指示薬は、該第一段階増幅反応における増幅産物の量に関連する光信号を生成することができる、工程;
該第一段階増幅反応において該蛍光指示薬の光信号をモニタリングする工程;及び、
該第一段階増幅反応の反応混合物の有効部分を自動的に分離し、該光信号が閾値に達するか、又は閾値を超えるときに第二段階増幅反応を開始する工程
を包含する、方法。
(項目2)
前記第一段階増幅反応の前記反応混合物が、流体的に閉じた反応系の第一反応チャンバー内にあり、前記自動的に分離する工程が、該第一段階の反応混合物の前記有効部分を第二反応チャンバーに流体的に移動させることを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第一段階増幅反応の前記反応混合物が、流体的に閉じた反応系の第一反応チャンバー内にあり、前記自動的に分離する工程が、第一反応チャンバー内に残存する有効部分を除き、該第一段階の反応混合物を廃棄物レザバに流体的に移動させることを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記第一反応チャンバーが、底部及び出口を有し、該出口は、前記第一段階の反応混合物が該出口を通じて前記廃棄物レザバに流体的に移動されるときにはいつでも、該第一段階の反応混合物の一定の容積が該第一反応チャンバーにおいて該出口よりも下に維持されているように、該底部よりも上に配置される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記第一反応チャンバーにおいて維持されている前記容積は、前記有効部分を含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記有効部分が、少なくとも1分子の前記増幅産物を含むのに十分な前記反応混合物の容積である、項目3に記載の方法。
(項目7)
前記有効部分が、少なくとも100分子の前記増幅産物を含むのに十分な前記反応混合物の容積である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記反応混合物が一定の容積を有し、前記有効部分が該反応混合物の容積の一定の割合であり、該割合が、0.5〜10%の範囲から選択される、項目3に記載の方法。
(項目9)
前記閾値が、多様なベースライン信号レベルであり、該多様性が、1.5〜25の範囲から選択される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記閾値が、前記光信号によって規定される成長曲線の最大値、最小値、又はゼロ値に対応する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記蛍光指示薬が、二本鎖DNAに特異的に結合するか、又は増幅生成物に特異的に結合するオリゴヌクレオチド部分を含むインターカレーティング色素から選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記増幅産物が、前記第一段階増幅反応における参照配列の増幅によって生成される、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記増幅産物が、前記第一段階増幅反応における標的ポリヌクレオチドの増幅によって生成される、項目10に記載の方法。
(項目14)
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を検出する方法であって、
第一反応混合物中の第一段階増幅試薬を使用して、該試料由来の一つ以上の標的ポリヌクレオチドを流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第一増幅産物を形成する工程であって、該第一段階増幅試薬は、各標的ポリヌクレオチドに対する開始プライマーを含む、工程;
該流体的に閉じた反応系において第一反応混合物の有効部分を単離する工程;
第二反応混合物中の第二段階増幅試薬を使用して、該有効部分中の該一つ以上の第一増幅産物を該流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第二増幅産物を形成する工程であって、該第二段階増幅試薬は、該一つ以上の第一増幅産物のそれぞれに対する少なくとも一つの第二プライマーを含み、その結果、各第二プライマーはそのような第一増幅産物の開始プライマーに比例してそのような第一増幅産物中でネスト化される、工程;及び、
該一つ以上の第二増幅産物を検出して、該試料中の該一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を決定する工程
を包含する、方法。
(項目15)
前記第一反応混合物が、流体的に閉じた反応系の第一反応チャンバー内にあり、前記単離工程が、該第一反応混合物の前記有効部分を第二反応チャンバーに流体的に移動させることを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記第一反応混合物が、流体的に閉じた反応系の第一反応チャンバー内にあり、前記単離工程が、該第一反応チャンバー内に残存する有効部分を除き、該第一反応混合物を廃棄物レザバに流体的に移動させることを含む、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記第一反応チャンバーが、底部及び出口を有し、該出口は、前記第一段階の反応混合物が該出口を通じて前記廃棄物レザバに流体的に移動されるときにはいつでも、該第一段階の反応混合物の一定の容積が該第一反応チャンバーにおいて該出口よりも下に維持されているように、該底部よりも上に配置される、項目16に記載の方法。
(項目18)
第一反応チャンバーにおいて維持されている前記容積が、前記有効部分を含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記有効部分が、少なくとも1分子の前記増幅産物を含むのに十分な前記第一反応混合物の容積である、項目16に記載の方法。
(項目20)
前記有効部分が、少なくとも100分子の前記増幅産物を含むのに十分な前記第一反応混合物の容積である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記反応の第一混合物が一定の容積を有し、前記有効部分が該第一反応混合物の容積の一定の割合であり、該割合が、0.5〜10%の範囲から選択される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記単離工程が、前記第一反応混合物中の一つ以上の増幅産物の一つと関連する蛍光指示薬からの光信号をモニタリングする工程であって、該光信号は、該増幅産物の量と単調に関連する、工程;及び該光信号が所定のレベル以上であるときにはいつでも、該第一反応混合物の前記有効部分を自動的に分離する工程を包含する、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記所定のレベルが、多様なベースライン信号レベルであり、該多様性が1.5〜25の範囲から選択される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記第一段階増幅試薬及び前記第二段階増幅試薬が、ポリメラーゼ連鎖反応又はNASBA反応を実施するための試薬を含む、項目16〜23のいずれかに記載の方法。
(項目25)
前記蛍光指示薬が、二本鎖DNAに特異的に結合するか、又は前記第一反応混合物中の増幅生成物に特異的に結合するオリゴヌクレオチド部分を含むインターカレーティング色素から選択される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記一つ以上の増幅産物のうちの一つが、前記第一反応混合物における参照配列の増幅によって生成される、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記流体的に閉じた反応系が微小流体デバイスである、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記流体的に閉じた反応系が、
反応チャンバーであって、前記試料を含む試料レザバ、第一段階増幅試薬を含む第一反応物レザバ、及び第二段階増幅試薬を含む第二反応物レザバと選択的に流体連絡し、該レザバのそれぞれは流体的に閉じている、反応チャンバー;ならびに
ポンプであって、該試料及び該第一段階増幅試薬を該反応チャンバーに流体的に移動させるため;前記光信号が所定のレベル以上であるときにはいつでも、前記第一反応混合物の前記有効部分を自動的に分離するため;そして該有効部分中の前記一つ以上の第一増幅産物を増幅するために該反応チャンバーに該第二段階増幅試薬を流体的に移動させるために、回転バルブと作動的に関連した、ポンプ
を含む、項目24に記載の方法。
(項目29)
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を検出する方法であって、
反応チャンバーを提供する工程であって、該反応チャンバーは、廃棄物レザバ、試料を含む試料レザバ、第一段階増幅試薬を含む第一反応物レザバ、及び第二段階増幅試薬を含む第二反応物レザバと選択的に流体連絡し、該レザバのそれぞれは流体的に閉じている、工程;
試料レザバ由来の試料、及び第一反応物レザバ由来の第一段階増幅試薬を反応チャンバーに流体的に移動させる工程であって、その結果、該試料中に標的ポリヌクレオチドが存在するときにはいつでも、該第一段階増幅試薬が増幅反応において該試料と反応し、第一増幅産物を含む反応生成物が生成される、工程;
該反応チャンバー内に残存する有効部分を除き、該反応生成物を該廃棄物レザバに流体的に移動させる工程;
第二反応物レザバ由来の第二段階増幅試薬を該反応チャンバーに流体的に移動させる工程であって、その結果、該反応生成物中に該第一増幅産物が存在するときにはいつでも、該第二段階増幅試薬が増幅反応において該反応生成物の有効部分と反応し、第二増幅産物が生成される、工程;ならびに
該第二増幅産物を検出して、該試料中に該標的ポリヌクレオチドが存在するかどうかを決定する工程
を包含する、方法。
(項目30)
前記第一段階増幅試薬との前記増幅反応が、所定のサイクル数の間実施されるポリメラーゼ連鎖であり、前記反応生成物を流体的に移動させる工程が、該増幅反応の所定のサイクル数の後に実施される、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記増幅反応における前記所定のサイクル数が20〜50の範囲である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記反応生成物を流体的に移動させる工程が、前記第一増幅産物に関連する蛍光指示薬からの光信号をモニタリングする工程であって、該光信号は、該第一増幅産物の量と単調に関連する工程;及び該光信号が所定のレベル以上であるときにはいつでも、該反応生成物の前記有効部分を自動的に分離する工程、を包含する、項目29に記載の方法。
(項目33)
前記反応生成物が一定の容積を有し、前記有効部分が前記反応生成物の容積の一定の割合であり、該割合が0.5〜10%の範囲から選択される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記所定のレベルが多様なベースライン信号レベルであり、該多様性が1.5〜25の範囲から選択される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記増幅反応がそれぞれポリメラーゼ連鎖反応又はNASBA反応である、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記蛍光指示薬が、二本鎖DNAに特異的に結合するか、又は増幅生成物に特異的に結合するオリゴヌクレオチド部分を含むインターカレーティング色素から選択される、項目35に記載の方法。
(項目37)
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの相対量を決定する方法であって、
一つ以上の標的ポリヌクレオチド、及び第一増幅反応中の少なくとも一つの参照配列を該試料において増幅して、標的ポリヌクレオチド及び参照配列それぞれの第一増幅産物を含む第一反応生成物を形成する工程であって、該第一増幅反応は、標的ポリヌクレオチド及び参照配列それぞれの開始プライマーを含む、工程;
該第一反応生成物の有効部分由来の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの第一増幅産物を第二増幅反応において増幅して、各第一増幅産物の第二増幅産物を形成する工程であって、該第二増幅反応は、各標的ポリヌクレオチドの第二プライマーを含み、その結果、各第一増幅産物の各第二プライマーが、それらの開始プライマーに比例してそのような第一増幅産物においてネスト化される、工程;ならびに
該第二増幅反応の第二増幅産物と該第一増幅反応中の少なくとも一つの参照配列とを比較し、試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの相対量を決定する工程
を包含する、方法。
(項目38)
前記第一増幅反応及び前記第二増幅反応が流体的に閉じた反応系において実施される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記第一増幅反応及び前記第二増幅反応がそれぞれリアルタイム増幅反応である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記第二増幅反応における前記増幅工程が、少なくとも一つの前記第一増幅産物と関連する蛍光指示薬からの光信号をモニタリングする工程であって、該光信号は、そのような第一増幅産物の量と単調に関連する、工程;及び前記光信号が所定のレベル以上であるときにはいつでも、前記反応生成物の前記有効部分を自動的に分離する工程、を包含する、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記反応生成物が一定の容積を有し、前記有効部分が該反応生成物の容積の一定の割合であり、該割合が、0.5〜10%の範囲から選択される、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記所定のレベルが多様なベースライン信号レベルであり、前記多様性が1.5〜25の範囲から選択される、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記増幅反応がそれぞれポリメラーゼ連鎖反応又はNASBA反応である、項目42に記載の方法。
(項目44)
ネステッド増幅反応を実施するための流体的に閉じた反応系であって、
反応チャンバーであって、試料レザバ、廃棄物レザバ、第一段階増幅試薬を含む第一反応物レザバ、及び第二段階増幅試薬を含む第二反応物レザバと選択的に流体連絡し、該レザバのそれぞれが流体的に閉じている、反応チャンバー;ならびに
ポンプであって、該ポンプは、該試料レザバ中の試料、及び該第一段階増幅試薬を該反応チャンバーに流体的に移動させるため;反応混合物の有効部分を単離するため;及び該第二段階増幅試薬及び該有効部分を該反応チャンバーに流体的に移動させるために回転バルブと作動的に関連し、ここで第一増幅反応は該反応混合物中に一つ以上の第一増幅産物を形成するために実施され、第二増幅反応は、一つ以上の第二増幅産物を形成するために実施される、ポンプ
を含む、反応系。
(項目45)
前記ポンプが前記反応混合物の前記有効部分を単離するときにはいつでも、前記反応チャンバー内に残存する前記有効部分を除き、該反応混合物が廃棄物レザバに流体的に移動される、項目44に記載の流体的に閉じた反応系。
(項目46)
前記反応チャンバーが、底部及び出口を有し、該出口は、前記反応混合物が該出口を通じて前記廃棄物レザバに流体的に移動されるときにはいつでも、該反応混合物の一定の容積が前記第一反応チャンバーにおいて該出口よりも下に維持されているように、該底部よりも上に配置され、該容積は前記有効部分を含む、項目45に記載の流体的に閉じた反応系。
(項目47)
少なくとも一つの前記第一増幅産物と関連する一つ以上の蛍光指示薬からの一つ以上の光信号を収集するために前記反応チャンバーと作動的に関連した一つ以上の検出器をさらに含み、該一つ以上の光信号はそれぞれ、該第一増幅産物のうちの一つの量と単調に関連する、項目46に記載の流体的に閉じた反応系。
(項目48)
マイクロプロセッサをさらに含み、該マイクロプロセッサは、前記一つ以上の光信号の値をモニタリングするため;及び該光信号の少なくとも一つの値が所定のレベル以上あるときにはいつでも、前記反応混合物の有効部分を単離するように前記ポンプ及び前記回転バルブを作動させるために、該ポンプ、該回転バルブ、及び前記一つ以上の検出器と作動的に関連する、項目47に記載の流体的に閉じた反応系。
(項目49)
反応容器であって、
液体を含むための反応チャンバー;
入口チャネルによって該反応チャンバーに接続される入口;
出口チャネルによって該反応チャンバーに接続される出口;及び、
該反応チャンバー内の保持部材であって、該保持部材は該反応チャンバー内の該液体の規定の容積を維持するように配置されており、該液体の残り部分は該出口チャネルを通じて該反応チャンバーから排出される、保持部材
を含む、反応容器。
(項目50)
前記反応容器が、
前記反応チャンバーの側壁を規定する硬質なフレーム;及び、
該反応チャンバーの反対側の主壁を形成するために該硬質なフレームの反対側に取り付けられた第一及び第二のポリマーフィルム
をさらに含む、項目49に記載の反応容器。
(項目51)
前記主壁のそれぞれが各熱表面に適合するのに十分に可撓性である、項目50に記載の反応容器。
(項目52)
前記側壁のうちの少なくとも二つが光透過性を備えており、互いに角度オフセットしている、項目50に記載の反応容器。
(項目53)
前記反応チャンバーが、該前記反応チャンバーの深さ及び幅が少なくとも4:1の比率を有するような幅及び深さを有し、該反応チャンバーの深さが2mm未満である、項目49に記載の反応容器。
(項目54)
多段階反応を実施するための装置であって、
少なくとも第一チャネル及び第二チャネルがその中に形成されている本体;ならびに
該本体から延びる反応容器を含み、該反応容器は、
液体を含むための反応チャンバー;
入口チャネルによって該反応チャンバーに接続される入口;
出口チャネルによって該反応チャンバーに接続される出口;及び
該反応チャンバー内の保持部材であって、該保持部材は反応チャンバー内の液体の規定の容積を維持するように配置されており、該液体の残りの部分は出口チャネルを通じて反応チャンバーから排出される、保持部材
を含み、
該容器の入口は、該本体内の第一チャネルと接続されており、該容器の出口は、該本体内の該第二チャネルと接続されている、装置。
(項目55)
前記本体が更に排出口を含み、該排出口は、前記液体が前記入口及び前記第一チャネルを通じて前記反応チャンバーに流入するときにはいつでも、前記第二チャネルからガスを放出するために、該第二チャネルと流体連絡している、項目54に記載の装置。
(項目56)
前記本体内の前記第一チャネル中の液体を、前記反応容器の入口を通じて前記反応チャンバーに流れさせるための差圧源を更に含む、項目54に記載の装置。
(項目57)
ネステッド増幅反応の性能を制御するためのコンピュータによる実行用のプログラムを具現化するコンピュータ読み取り可能な製品であって、該プログラムが、
(a)第一段階増幅反応からの光信号の値を読み取る工程であって、該光信号は該第一段階増幅反応の増幅産物の濃度と単調に関連し、該光信号の値は直近の値を有する、工程;(b)該光信号の値からベースライン信号レベルを決定する工程;
(c)該光信号の値から所定のレベルを計算する工程;
(d)該所定の値を該光信号の直近の値と比較する工程;
(e)該光信号の直近の値が該所定のレベル以上であるときにはいつでも、第二段階増幅反応を開始する工程;及び、
(f)該第二段階の反応が開始するまで、工程(d)及び(e)を繰り返す工程
のための命令を含む、コンピュータ読み取り可能な製品。
(項目58)
前記所定のレベルを計算する工程が、1.5〜25の範囲から選択される係数を前記ベースライン信号レベルに乗じて、該所定のレベルを得ること、又は前記光信号の値から増幅産物の成長曲線の指標値を計算して、該所定の値を得ることを含む、項目57に記載のコンピュータ読み取り可能な製品。
(項目59)
前記第一段階増幅反応及び前記第二段階増幅反応が、それぞれポリメラーゼ連鎖反応又はNASBA反応である、項目58に記載のコンピュータ読み取り可能な製品。
(項目60)
前記ネステッド増幅反応が流体的に閉じた反応系において実施され、前記第二段階増幅反応を開始する工程が、流体的に閉じた反応系において前記第一段階増幅反応の反応混合物の有効部分を単離すること、及び流体的に閉じた反応系において該有効部分と該第二段階増幅反応の反応物とを混合すること、のための命令を生成する工程を包含する、項目59に記載のコンピュータ読み取り可能な製品。
(項目61)
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅する方法であって、
第一反応混合物中の第一段階増幅試薬を使用して、該試料由来の一つ以上の標的ポリヌクレオチドを流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第一増幅産物を形成する工程であって、該第一段階増幅試薬は、各標的ポリヌクレオチドに対する第一プライマーを含む、工程;
該流体的に閉じた反応系において該第一反応混合物の有効部分を単離する工程;及び、
第二反応混合物中で第二段階増幅試薬を使用して、該有効部分中の一つ以上の増幅産物を該流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第二増幅産物を形成する工程であって、該第二段階増幅試薬は、該一つ以上の第一増幅産物のそれぞれの少なくとも一つの第二プライマーを含み、その結果、各第二プライマーがそのような第一増幅産物の第一プライマーに比例してそのような第一増幅産物中でネスト化される、工程
を包含する、方法。
(項目62)
前記第一反応混合物が、流体的に閉じた反応系の第一反応チャンバー内にあり、前記単離工程が、該第一反応チャンバー内に残存する有効部分を除き、該第一反応混合物を廃棄物レザバに流体的に移動させることを含む、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記第一反応チャンバーが、底部及び出口を有し、該出口は、前記第一段階の反応混合物が該出口を通じて前記廃棄物レザバに流体的に移動されるときにはいつでも、該第一段階の反応混合物の一定の容積が該第一反応チャンバーにおいて該出口よりも下に維持されているように、該底部よりも上に配置される、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記第一反応チャンバー内に維持される前記容積が、前記有効部分を含む、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記有効部分が、少なくとも1分子の前記増幅産物を含むのに十分な前記第一反応混合物の容積である、項目63に記載の方法。
(項目66)
前記有効部分が、少なくとも100分子の前記増幅産物を含むのに十分な前記第一反応混合物の容積である、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記反応の第一混合物が一定の容積を有し、前記有効部分が、該第一反応混合物の該容積の一定の割合であり、該割合が、0.5〜10%の範囲から選択される、項目63に記載の方法。
(項目68)
前記単離工程が、前記第一反応混合物中の前記一つ以上の増幅産物の一つと関連する蛍光指示薬からの光信号をモニタリングする工程であって、該光信号は、該増幅産物の量と単調に関連する、工程;及び該光信号が所定のレベル以上であるときにはいつでも、該第一反応混合物の前記有効部分を自動的に分離する工程、を包含する、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記所定のレベルが多様なベースライン信号レベルであり、前記多様性が1.5〜25の範囲から選択される、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記第一段階増幅試薬及び前記第二段階増幅試薬が、ポリメラーゼ連鎖反応又はNASBA反応を実施するための試薬を含む、項目69に記載の方法。
(項目71)
一つ以上のRNA配列を増幅する方法であって、
第一反応混合物中の逆転写酵素を使用して、一つ以上のRNA配列を流体的に閉じた反応系において転写して、一つ以上の相補的な一本鎖DNA配列を形成する工程;
該流体的に閉じた反応系において該第一反応混合物の第一有効部分を単離する工程;及び、
第二反応混合物中の第一段階増幅試薬を使用して、該第一有効部分中の該一つ以上の相補的な一本鎖DNA配列を該流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第一増幅産物を形成する工程であって、該第一段階増幅試薬は、該相補的な一本鎖DNA配列のそれぞれの開始プライマーを含む、工程
を包含する、方法。
(項目72)
前記第一反応混合物が、前記の流体的に閉じた反応系の反応チャンバー内にあり、前記第一有効部分を単離する工程が、該反応チャンバー内に残存する該第一有効部分を除き、該第一反応混合物を廃棄物レザバに流体的に移動させることを含む、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記第一反応チャンバーが、底部及び出口を有し、該出口は、前記第一段階の反応混合物が該出口を通じて前記廃棄物レザバに流体的に移動されるときにはいつでも、該第一段階の反応混合物の残留容積が前記第一反応チャンバーにおいて該出口よりも下に維持されているように、該底部よりも上に配置され、該残留容積が前記第一有効部分を含む、項目72に記載の方法。
(項目74)
前記第一反応混合物が一定の容積を有し、前記有効部分が、該第一反応混合物の該容積の一定の割合であり、該割合が、0.5〜20%の範囲から選択される、項目72に記載の方法。
(項目75)
前記流体的に閉じた反応系において前記第二反応混合物の第二有効部分を単離する工程;及び、
第三反応混合物中の第二段階増幅試薬を使用して、該第二有効部分中の一つ以上の第一増幅産物を該流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第二増幅産物を形成する工程であって、該第二段階増幅試薬は、該一つ以上の第一増幅産物のそれぞれに対する少なくとも一つの第二プライマーを含み、その結果、各第二プライマーがそのような第一増幅産物の前記開始プライマーに比例してそのような第一増幅産物中でネスト化される、工程
をさらに包含する、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記第二反応混合物が、前記流体的に閉じた反応系の反応チャンバー内にあり、前記第二有効部分を単離する工程が、該反応チャンバー内に残存する該第二有効部分を除き、該第二反応混合物を廃棄物レザバに流体的に移動させることを含む、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記第二反応混合物が、前記出口を通じて前記廃棄物レザバに流体的に移動され、該第二反応混合物の残留容積が、該出口より下で前記反応チャンバー中に維持されており、該残留容積が前記第二有効部分を含む、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記第二反応混合物が一定の容積を有し、前記第二有効部分が該第二反応混合物の容積の一定の割合であり、該割合が、0.5〜20%の範囲から選択される、項目77に記載の方法。
(項目79)
ネステッド増幅反応の性能を制御するためのコンピュータによる実行用のプログラムを具現化するコンピュータ読み取り可能な製品であって、該プログラムは、
(a)第一段階増幅反応からの光信号の値を読み取る工程であって、該光信号は第一段階増幅反応の増幅産物の量又は濃度と関連する、工程;
(b)閾値交差が発生したかどうかを該光信号の値から決定する工程;及び
(c)該閾値交差が発生した場合、第二増幅反応を開始する工程
のための命令を含む、コンピュータ読み取り可能な製品。
(項目80)
前記閾値交差が発生したかどうかを決定する工程が、一つ以上の前記光信号の値が、ノイズをベースとする閾値、ユーザーが定義する閾値、又は初期設定の閾値を超えたかどうかを決定することを含む、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記閾値交差が発生したかどうかを決定する工程が、前記光信号の値によって規定される成長曲線の導関数が、最大、最小、又はゼロであるかどうかを決定することを含む、項目79に記載の方法。
(項目82)
前記ネステッド増幅反応が流体的に閉じた反応系において実施され、前記第二段階増幅反応を開始する工程が、該流体的に閉じた反応系において前記第一段階増幅反応の反応混合物の有効部分を単離する工程、及び該流体的に閉じた反応系において該有効部分と前記第二段階増幅反応の反応物とを混合する工程、のための命令を生成する工程を包含する、項目79に記載のコンピュータ読み取り可能な製品。
(項目83)
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を検出する方法であって、
第一段階増幅試薬を含む反応チャンバーを提供する工程であって、該反応チャンバーが、廃棄物レザバ、試料を含む試料レザバ、及び第二段階増幅試薬を含む第二反応物レザバと選択的に流体連絡されており、該レザバのそれぞれが流体的に閉じている、工程;
該試料レザバ由来の試料を該反応チャンバーに流体的に移動させる工程であって、その結果、該試料中に標的ポリヌクレオチドが存在する場合に、該第一段階増幅試薬が増幅反応において該試料と反応し、第一増幅産物を含む第一反応生成物が生成される、工程;
該反応チャンバー内に残存する該第一反応生成物の有効部分を除き、該第一反応生成物を該廃棄物レザバに流体的に移動させる工程;
該第二反応物レザバ由来の該第二段階増幅試薬を反応チャンバーに流体的に移動させる工程であって、その結果、該第一反応生成物中に該第一増幅産物が存在するときにはいつでも、該第二段階増幅試薬が増幅反応において該第一反応生成物の有効部分と反応し、第二増幅産物が生成される、工程;及び、
該試料中に標的ポリヌクレオチドが存在するかどうかを決定するために該第二増幅産物を検出する工程
を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】図1A〜1Bは、リアルタイムPCR等の増幅反応のサイクル数(又は反応時間)とシグナルをグラフ化する。
【図1B】図1A〜1Bは、リアルタイムPCR等の増幅反応のサイクル数(又は反応時間)とシグナルをグラフ化する。
【図1C】図1Cは、本発明の方法を実施する装置の略図である。
【図2A】図2A〜2Hは、回転バルブ及びピストンタイプの流体ポンプを使用した流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の実施を図示する。
【図2B】図2A〜2Hは、回転バルブ及びピストンタイプの流体ポンプを使用した流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の実施を図示する。
【図2C】図2A〜2Hは、回転バルブ及びピストンタイプの流体ポンプを使用した流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の実施を図示する。
【図2D】図2A〜2Hは、回転バルブ及びピストンタイプの流体ポンプを使用した流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の実施を図示する。
【図2E】図2A〜2Hは、回転バルブ及びピストンタイプの流体ポンプを使用した流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の実施を図示する。
【図2F】図2A〜2Hは、回転バルブ及びピストンタイプの流体ポンプを使用した流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の実施を図示する。
【図2G】図2A〜2Hは、回転バルブ及びピストンタイプの流体ポンプを使用した流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の実施を図示する。
【図2H】図2A〜2Hは、回転バルブ及びピストンタイプの流体ポンプを使用した流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の実施を図示する。
【図3A】図3A〜3Cは、本発明の特定の実施形態を実施する代替の反応チャンバーを図示する。
【図3B】図3A〜3Cは、本発明の特定の実施形態を実施する代替の反応チャンバーを図示する。
【図3C】図3A〜3Cは、本発明の特定の実施形態を実施する代替の反応チャンバーを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
本発明は、多段階増幅反応を、特に流体的に閉じた条件で実施する系、方法及び装置に関する。一態様では、第一(又は前の)反応混合物の一部を単離して、それを第二(又は後の)反応混合物において試料又は検体として使用し、それによって第一反応成分が第二反応中にて及ぼす可能性がある妨害作用を実質的に回避することを可能にする、流体的に閉じた系において、本発明の方法が実施される。前記態様では、本発明の系、方法及び装置が、ネステッドプライマーの使用に基づく多段階の増幅を可能にする任意の増幅反応によって使用される場合がある。
【0043】
特に、それらは、二段階又はネステッドPCR、及びNASBA反応を実施するのに好都合である。具体例の目的で、ネステッドPCR及びNASBA反応の基本的な反応条件を以下に記述する。しかし、更に優れた感度を得るためにPCR又はNASBA反応において使用されるネステッドプライマーは、一つ以上のプライマーを使用してその他の増幅反応において同様に適用され得ることを当業者は理解するだろう。別の態様では、本発明が、流体的に閉じた反応系において二段階RT−PCR反応を提供し、第二段階PCRが後のPCRに影響を与えるRT反応の成分なしで実施される場合がある(例えば、Sellner et al.,Nucleic Acids Research,20:1487(1992))。更なる態様では、本発明が三段階反応を提供し、一つ以上の標的RNAを一つ以上の相補的な一本鎖DNAに変換して、次に逆転写−ネステッドPCR又は「RT−nPCR」等の二段階増幅反応において前記DNAが増幅されるように、逆転写反応が実施される。
【0044】
前述の通り、本発明の一態様では、二段階反応を実施する装置が提供されており、当該装置は:(a)少なくとも第一チャネル及び第二チャネルがその中に形成されている本体;及び(b)(i)液体を含むための反応チャンバー;(ii)入口チャネルによって反応チャンバーに接続される入口;(iii)出口チャネルによって反応チャンバーに接続される出口;及び(iv)反応チャンバー内の保持部材(前記保持部材は反応チャンバー内の液体の規定の部分を維持するように配置されており、液体の残りの部分は出口チャネルを通じて排出される)を有する、前記本体から延長された反応容器からなり、前記容器の入口は本体内の第一チャネルと接続されており、前記容器の出口は本体内の第二チャネルと接続されている。本発明の装置は更に、第二チャネルからガスを排出する、第二チャネルと流体連絡されている排出口を含む。本発明の装置は更に、前記本体内の前記第一チャネル中に液体を封入し、前記反応容器の入口を通じて前記反応チャンバーに液体を流すための差圧源を含む。本発明の容器には更に、i)前記反応チャンバーの側壁を規定する硬質なフレーム;及びii)前記反応チャンバーの反対側の主壁を形成するための、前記硬質なフレームの反対側に取り付けられた第一及び第二ポリマーフィルムが含まれる。前記装置本体には更に、液体試料と増幅試薬とを混合する混合チャンバーが含まれ、前記混合チャンバーは、第一チャネルを通じて容器の入口と接続されている。前記装置本体には更に、出口チャネルを通じて除去される液体の残留物を入れる廃棄物チャンバーが含まれ、前記廃棄物チャンバーは、第二チャネルを通じて容器の出口と接続されている。装置本体は更にその中に、i)試料流路;及びii)液体試料由来の所望の検体を単離するための試料流路中の単離領域(前記単離領域は、第一チャネルを通じて容器の入口と接続されている)を形成している。一態様では、本体中の前記単離領域に、a)流路中に、試料中の細胞又はウイルスを溶解してその中から物質を遊離するための溶解チャンバー;及びb)溶解された細胞又はウイルスを捕獲するために、前記溶解チャンバー中に位置する少なくとも一つの担体が更に含まれる。装置の容器には、反応チャンバーを定義する多数の壁が含まれ、少なくとも一つの壁が軟質シート又はフィルムからなり、前記装置が更に、a)前記シート又はフィルムに接触するための少なくとも一つの熱表面;b)反応チャンバー内の圧力を上昇させるための手段(前記チャンバー内の圧力上昇は、前記シート又はフィルムを熱表面に適合させるだけの十分なものである);及びc)表面を加熱又は冷却してチャンバー内の熱変化を引き起こすための少なくとも一つの熱素子を含む。
【0045】
装置の容器には、反応チャンバーを形成するための、2個の反対側の主壁、及び互いに主壁に接続した側壁が更に含まれ、少なくとも2個の側壁が光透過性を備えており、互いに角度オフセット(angularly offset)されており、前記装置が更に、第一光透過性の側壁を通じて反応チャンバーに光を伝達する少なくとも一つの光源を有し、第二光透過性の側壁を通じてチャンバーから放射された光を検出する少なくとも一つの検出器を有する光学系を含む。
【0046】
ネステッド増幅反応
PCRに関して前述の通り、ネステッド増幅反応は、前の段階の増幅産物が、前に生成された増幅産物中の少なくとも一つの内部位置に結合する新しいプライマー又はプライマー対を使用した次の段階の試料となる多段階反応である。ネステッド増幅反応の各段階においては、増幅反応は従来の方法で処理される。ネステッド増幅反応における個々の増幅反応を連続するための設計上の選択には、(i)各段階のサイクル数又は時間、(ii)第二段階の反応の試料として供給するための第一段階の反応混合物の有効部分のサイズ、(iii)第二段階のプライマーについての内部結合部位の選択、(iv)参照配列が各段階で増幅されるかどうか、(v)各段階で同じ種類の増幅反応が実行できるかどうか、例えば、PCR−PCR、NASBA−NASBA、PCR−NASBA等の二段階ネステッド増幅反応が含まれる。通常、ネステッド増幅反応は、連続的なPCR又は連続的なNASBA反応であり、従来の反応条件下で実施される。
【0047】
本発明の一態様では、PCRがネステッド増幅反応の一つの段階である場合、PCRにおけるサイクル数は20〜40の範囲、又は24〜36の範囲となる。別の態様では、サイクル数が、所定の量の増幅産物を生成するのに十分な数、言い換えると、リアルタイム信号生成化学における所定の信号を生成するのに十分な数となる。ネステッド増幅反応が、2個の連続的なPCRを含む場合、連続的PCRにおけるサイクル数及びその他の反応条件は、同じである場合もあれば、異なる場合もある。
【0048】
一態様では、第一又は前の段階の反応について、有効部分が、第二段階の反応の開始を可能にするのに十分な量となる。一態様では、第二段階の反応に提供するのに十分な量の有効部分が、1μL当たり少なくとも一つの標的ポリヌクレオチドの濃度となり、別の態様では、1μL当たり少なくとも10個の標的ポリヌクレオチドの濃度となり、別の態様では、1μL当たり少なくとも50個の標的ポリヌクレオチドの濃度となり、別の態様では、1μL当たり少なくとも100個の標的ポリヌクレオチドの濃度となり、別の態様では、少なくとも500個の標的ポリヌクレオチドの濃度となり、別の態様では、1μL当たり少なくとも1000個の標的ポリヌクレオチドの濃度となる。更に別の態様では、有効部分が、第一段階の反応混合物の容積の0.5〜10%の量となり、又は第一段階の反応混合物の容積の1〜5%の量となる。後述の通り、幾つかの実施形態では、優れた正確さを有する有効部分を回収し、サンプリングの間違いを最小化するために、一部を除去又は単離する前に第一段階の反応混合物が希釈される。例えば、1μLの容積を有する第一段階の反応混合物の10%部分を得るために、希釈していない混合物から直接0.1mLを除去する代わりに、10μLまで希釈した後に希釈した混合物の1μLを除去する場合もある。一般的に、第二段階の反応における反応物は、少なくとも一つの以下の例外を有し、第一段階の反応におけるものと同じである場合もある。即ち、一つ以上のプライマーは第二段階の反応において異なるが、第二段階増幅反応におけるプライマー濃度は通常である。第一段階及び第二段階増幅反応における信号生成スキームは同じである場合もあれば、異なる場合もある。
【0049】
一態様では、本発明が、開ループ制御又は閉ループ制御のいずれかの下で、第二段階(又は次の段階)の増幅反応を自動的に開始する方法を提供する。開ループ制御による実施形態では、第一段階増幅反応が、所定のサイクル数又は所定の反応時間の間実施され、その後に反応混合物の有効部分が単離され、第二段階の反応物と混合され、第二段階増幅反応が開始する。当該実施形態では、第一段階の増幅産物のリアルタイムモニタリングが任意となっている。一方、閉ループ制御による実施形態では、第一段階増幅反応の反応パラメータがモニタリングされ、所定の値になるか、所定の閾値を過ぎた場合に第一反応を停止し、反応混合物の有効部分が単離され、第二段階の反応物と混合され、第二段階増幅反応が開始する。第二段階増幅を開始する時を決定するために使用される反応パラメータは、反応生成物の蓄積、言い換えると、第一段階の反応の完了の度合いとはっきりした関係を有する任意のパラメータとなる場合もある。好ましくは、パラメータの上昇した値が、通常は、一つ以上の増幅産物である、当該生成物の量とポジティブ又はネガティブのいずれかに関連するように、反応パラメータは、第一段階の反応における一つ以上の蓄積と単調な関係を有する。反応パラメータには、反応混合物の吸光度;温度;pH;第二反応生成物の濃度;増幅産物の濃度が含まれるが、これらに限定されず、後者は、一つ以上の蛍光シグナル、比色シグナル、化学発光シグナル、電気化学発光シグナル又は電気化学シグナルに基づく。一態様では、反応パラメータが、第一段階の反応における少なくとも一つの増幅産物の濃度と単調に関連する。当該増幅産物は、標的ポリヌクレオチド、又は参照配列又はその他の内標準から製造することができる。従って、閉ループ制御によるネステッドPCRにおいては、第一段階増幅反応はリアルタイムPCRである。本発明の一態様では、反応パラメータが、そのシグナルが反応混合物中の増幅産物の濃度と単調に関連する、蛍光指示薬によって検出される増幅産物となる。試料又は検体中の標的核酸の量又は質に可変性がある場合、第二段階の反応の閉ループ制御は、更に一貫し、変化の少ない読み出した情報を生成することができる。
【0050】
幾つかの用途では、試料が標的ポリヌクレオチドを含む場合もあれば、含まない場合もある。従って、一態様では、一つ以上の参照配列、又はその他の内標準の増幅産物が、第二段階の反応を開始するための時を決定するためにモニタリングされる。即ち、当該内標準は、第二段階の反応を開始するためのポジティブコントロール及び反応パラメータとなる。別の態様では、内標準及び標的ポリヌクレオチドの両増幅産物が所定のレベルに達するか、又はこれを超えなければならず、それらは、第二段階の反応を開始するために、同じである場合もあれば、異なる場合もある。
【0051】
本発明の別の態様では、第一段階増幅反応が開ループ制御下のPCRである場合、第二段階の反応の開始前に実施されるサイクル数は20〜40の範囲であり、別の態様では、20〜30の範囲である。別の態様では、所定の時間の後に第一段階増幅反応が停止され、第二段階増幅反応が開始される場合に、前記の所定の時間が、解析中の試料の特定のタイプによって経験的に選択される場合がある。例えば、参照配列を有する試料においては、所定の時間が、平均的試料におけるプラトー値の4分の1、3分の1、半分のような任意の画分に選択された参照配列を増幅する際に要する平均時間として選択される場合もある。
【0052】
第一段階増幅反応が閉ループ制御の下である場合、第二段階の反応が開始される、第一段階の反応パラメータ値は種々の方法で選択される。一態様では、図1A及び図1Bに示したように、値が、ベースラインシグナルレベル、バックグラウンドノイズの関数として、又は反応混合物における一つ以上の増幅産物の蓄積を表わす関数の特性として決定される。図1Aにおいて、増幅産物特異的プローブによって生成された、識別可能な波長において蛍光を発する蛍光色素を有するモレキュラービーコン等の、二つの異なる蛍光シグナルによって測定されたように、曲線(1000)及び(1002)は、例えば、それぞれ参照配列及び標的ポリヌクレオチドの蓄積された増幅産物を表す。通常、当該曲線は図示したようにシグモイドであり、それぞれは、ノイズレベル又はベースラインシグナル(1004)より低い、弱い正の勾配の領域、強い正の勾配の対数直線領域(1010)、及び反応物が消費され、及び/又は蓄積した副生成物を妨害する反応の段階に対応する、弱い正の勾配のプラトー領域(1012)を有する。本発明の一態様では、標的増幅産物の曲線(1002)が、ベースラインシグナル(1004)の関数である所定のレベル(1006)に達するか、又はこれを超えるときに、第二段階の反応が開始される。別の態様では、標的増幅産物の曲線(1002)及び参照配列の曲線(1000)の両方が所定のレベル(1006)に達するか、又はこれを超えるときに、第二段階の反応が開始される。所定のレベル(1006)の選択は、当業者にとって通常の設計上の選択であり、第一段階の反応において増幅される標的と密接に関連する配列の可能性(即ち、アッセイにおける特異性の欠如)、試料の質、ベースラインシグナル値に寄与する範囲、反応に使用される増幅のタイプ、使用したシグナル検出系等の、種々の因子により決まる。一態様では、所定のレベル(1006)がベースラインシグナル値(1004)の倍数となる。具体例として、所定のレベル(1006)は、ベースラインシグナル値の1.5〜25倍の範囲で選択される。別の態様では、所定のレベル(1006)が、ベースラインシグナル値の1.5倍、又はベースラインシグナル値の2倍、又はベースラインシグナル値の3倍、又はベースラインシグナル値の5倍、又はベースラインシグナル値の10倍となる。ベースラインシグナル値は、例えば、増幅反応の開始近くにおける、所定のサイクル数又は所定の時間間隔の蛍光測定値の平均のような関数となる場合もある。蛍光測定値は、モニタリング中の増幅産物によって生成される蛍光シグナルと同じチャネルからのシグナルの測定値となる場合もあれば、これらの測定値を含む場合もある。一態様では、ベースラインシグナル値が、少なくとも一つの増幅産物の成長曲線について測定した、初期の、10、又は25、又は50又は100光学シグナル値の関数となる。一態様では、当該関数が、初期光学シグナル値の算術的平均となる。好ましくは、所定のレベル(1006)が、それぞれの対数直線領域(1010)中の曲線(1002)及び/又は曲線(1000)を横切る。増幅産物は、光学シグナルを生成する種々の標識(蛍光指示薬、比色標識、化学発光標識、電気化学発光標識等を含むが、これらに限定されない)を使用して同定及び/又は測定することができる。
【0053】
別の態様では、第二段階の反応が開始される際の反応パラメータの値が、図1Bに図示するような、増幅反応における蓄積された増幅産物とサイクル数又は時間の関係を描く曲線(本明細書では「増幅産物成長曲線」と称する)の特性によって決定される場合がある。図1Aに示す通り、曲線(1013)及び曲線(1015)は、それぞれ参照配列及び標的ポリヌクレオチドに対応する増幅産物の蓄積を描く。各ポイントにおける何れの曲線も正の勾配を有するが、勾配の大きさは反応の初期から末期にかけて変化し、初期には勾配が平らで、対数直線領域では急勾配になり、プラトー領域では再び平らになる。当該曲線について導関数をとる場合、時間又はサイクル値(1019)において最大を有する、凡その対称的な関数(1018)が生成される。値(1019)は、曲線(1015)の第一導関数の基礎である。曲線(1015)の勾配の上昇が停止し、減少が開始する際のポイント(1014)に対応する値(1019)、即ち、それが、第二段階の反応を開始するためのシグナル値(1022)を決定するための曲線(1015)の魅力的な特性とする、対数直線領域のほぼ真ん中に位置する変曲点である。別の態様では、曲線(1021)によって表わされる別のほぼ対照的な関数を生成するように、曲線(1015)の第二導関数が決定される場合もある。曲線(1021)の基礎は、第二段階の反応を開始するためのシグナル値、例えば、(1023)を決定するための別の候補特性を提供する。増幅産物の蓄積を表わす、曲線(1015)の当該特性に対応するシグナル値の決定は、本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許第6,783,934号(McMillan et al.)に開示されている。前述の通り、「増幅産物成長曲線」という用語は、反応混合物における増幅産物の蓄積を表わす、サイクル数又は時間の関数として、又は、関連するパラメータ、例えば、非温度制御増幅反応等における温度の関数として、曲線(1000)、(1002)、(1013)又は(1015)等の曲線を意味する。増幅産物成長曲線の第一又は第二関数等の特性は、曲線が集められて作成されたデータ等のアッセイの間に繰り返して計算されることが理解される。又、上記アッセイのリアルタイムな性質のために、増幅産物の成長曲線の特定の特性を遡及的にのみ決定することができることが理解される。従って、如何なる場合でも、第二段階増幅反応をいつ開始すべきかを決定する上で、当該特性は適切ではない。第二段階増幅反応を開始する時を決定するための増幅産物の成長曲線の適切な特性の選択は、当業者にとって通常の設計上の選択である。
【0054】
本発明の一態様では、所定の値に達するか、又はこれを超える反応パラメータに相当する光信号を検出することによって、第二段階の反応の開始の閉ループ制御が実施される。好ましくは、反応パラメータは増幅産物の濃度であり、通常、増幅産物は標的ポリヌクレオチドに相当する。種々の蛍光シグナル生成スキームは、増幅反応物中に、増幅産物濃度に単調に関連する蛍光シグナルを生成することができる。当該蛍光シグナル生成スキームには、前記で引用された引用文献に開示されている、モレキュラービーコン、SYBRグリーン、タックマンプローブ、AmplifluorTMプライマー、「スコーピオン」プライマー等のインターカレーティング色素が含まれるが、これらに限定されない。増幅産物の濃度等の反応パラメータによって生成される光信号をベースとした、当該閉ループ制御を実施するために、種々の計装系を使用することができる。以下に更に詳細に開示されている通り、一態様では、米国特許第6,369,893号(Christel et
al.)に開示されている、マルチチャネル光検出系が、当該測定に適している。本発明に適用可能な当該系の概略を図1Cに示す。Christel等は、反応チャンバー(1070)内で反応混合物を照射するための発光ダイオードLED(1050)〜(1056)を提供する。LED(1050)〜(1056)によって励起された蛍光は、検出される光の波長を限定する帯域通過フィルターとそれぞれ一般的に作動的に関連する検出器(1060)〜(1066)によって収集される。LED(1050)〜(1056)の励起ビームは同じである場合もあれば、異なる場合もある。一態様では、各検出器(1060)〜(1066)が複数の蛍光色素の一つのみからの蛍光を主に収集するように、帯域通過フィルターが複数のスペクトル分解可能な蛍光色素によって放射される蛍光を選択的に通すために選択される。本発明において使用するために、1対のLED検出器、例えば(1052)及び(1062)は標的ポリヌクレオチドに対応する増幅産物からの蛍光シグナルを検出するために割り当てられ、1対のLED検出器、例えば(1056)及び(1066)は参照配列に対応する増幅産物からの蛍光シグナルを検出するために割り当てられる。
【0055】
検出系の全ての構成部品及び流体的に閉じた反応系(1086)の制御は、マイクロプロセッサ(1080)によって制御される。検出器(1060)〜(1066)によって集められた光信号は、従来の光学によって処理され、電気信号に変換され、従来の前置増幅及び条件付け(1082)の後に、保存及び/又はマイクロプロセッサ(1080)による更なる処理のためにデジタル化される。本発明の一態様では、マイクロプロセッサ(1080)が、検出器(1062)等の1個の検出器によって集められるシグナル値を連続してモニタリングするようにプログラムされている。値が所定のレベルに達するか、又はこれを超えると、マイクロプロセッサ(1080)は、第二段階増幅反応を開始するために、流体的に閉じた反応系(1086)の構成部品を作動させる一連のコマンドを有する制御装置(1084)を供給するためのサブルーチンを開始する。マイクロプロセッサ(1080)は又、制御装置を介して反応チャンバーの温度を変更及び/又は調整する。温度制御は、好ましくは、その開示が本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許第6,565,815号及び米国特許第6,391,541号(Chang et al.)に教示されるように、抵抗性加熱エレメント及び冷却ファンを有する一つ以上の加熱板を使用して達成される。閉ループ制御を使用する実施形態では、マイクロプロセッサ(1080)は、所定のレベルと比較することができるように、所定の間隔で、図1Bの(1013)又は(1015)等の曲線の特性値を計算することができる。計算された値が所定のレベルに達するか、又はこれを超えると、マイクロプロセッサ(1080)は、前述の通り、第二段階増幅反応を開始するためのサブルーチンを開始する。
【0056】
前述の通り、コンピュータは、好ましくは、第二段階の反応を開始する方法の工程を実施する。一態様では、コンピュータが、処理装置、記憶装置、入出力装置、及びそれらの間の情報を伝達するための、関連するアドレス/データバス構造を含む。処理装置は、方法の特定の作業を処理するための、RISC及びCISCプロセッサ、組み込まれたファームウェアを使用した専用のマイクロプロセッサ、又はカスタマイズされたデジタル信号処理回路(DSP)を含む、適切なオペレーティング系によって駆動する、従来のマイクロプロセッサとなる場合もある。記憶装置はマイクロプロセッサ内にあり、即ち、レベル1キャッシュ、高速S−RAM、レベル2キャッシュ、D−RAM、又は光学又は磁気ディスクである。入出力装置は、コンピュータとユーザーとの間に情報を伝達することのできる任意の装置、例えば、キーボード、マウス、ネットワークカード等となる場合もある。アドレス/データバスは、PCIバス、NUバス、ISA、又はその他の任意のバス構造となる場合もある。コンピュータが本発明の方法を実施する場合、前述の方法の工程は、コンピュータ読み取り可能な製品に保存されたプログラムにおいて、又はコンピュータ読み取り可能な製品にて具体化することができる。又、当該コンピュータ読み取り可能な製品には、グラフィカルユーザーインターフェース用のプログラム、及び電気泳動系又はデータ収集装置にて設定を変更するプログラムが含まれる場合もある。一態様では、本発明が、選択された流体的に閉じた反応系において、図1Cに開示される作業を制御するアルゴリズム及びコンピュータ読み取り可能な製品を提供する。
【0057】
本発明の一態様では、コンピュータ読み取り可能な製品が、流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の性能を制御するコンピュータによる実行用のプログラムを含む。一態様では、当該プログラムが、以下の命令を含む場合がある:(a)第一段階増幅反応からの光信号(前記光信号は第一段階の増幅産物の濃度と単調に関連し、前記光信号が直近の値を有する)の値を読み取る命令;(b)前記光信号の値からベースライン信号を決定する命令;(c)前記光信号の値から所定のレベルを計算する命令;(d)所定の値を光信号の直近の値と比較する命令;(e)前記光信号の直近の値が所定のレベル以上であるときにはいつでも、第二段階増幅反応を開始する命令;及び(f)第二段階の反応が開始するまで、命令(d)及び(e)を繰り返す命令。本明細書で使用されるように、光信号に関する「直近の値」とは、増幅反応をモニタリングする検出系による光信号の直近の測定に対応する値を意味する。言い換えると、前記値は、増幅反応の間に生成されるような増幅産物成長曲線の直近の値である。
【0058】
本発明の別の態様では、コンピュータ読み取り可能な製品が、流体的に閉じた反応系におけるネステッド増幅反応の性能を制御するコンピュータによる実行用のプログラムを含む。一態様では、当該プログラムが、以下の命令を含む場合がある:(a)第一段階増幅反応からの光信号(前記光信号は第一段階の増幅産物の濃度と関連する)の値を読み取る命令;(b)閾値交差が発生したかどうかを光信号の値から決定する命令;及び(c)閾値交差が発生したときに、第二段階増幅反応を開始する命令。
【0059】
ネステッドPCRは、例えば、第一段階及び第二段階の両方の反応がリアルタイムPCRである場合に、前記装置で使用するのに適している。具体例として、第一段階増幅反応は、その強度が増幅産物と単調に関連する蛍光シグナルを精製するためにAmplifluorTMヘアピンプライマーが使用されるリアルタイムPCRであり得る(例えば、Whitcombe et al.,Nature Biotechnology,17:804−808(1999))。第二段階増幅反応は、同一の、又は異なった標識スキームを使用することができる。即ち、AmplifluorTMヘアピンプライマーは、蛍光色素分子−消光剤対が極めて接近するように維持し、その結果、蛍光色素分子からの如何なる蛍光シグナルも消光される従来のプライマー、及び標的結合部分の5’末端におけるヘアピン部分と同様に選択される、標的結合部分を有する。PCRの逆伸長工程の間、逆の鎖がそれを通じて標的ポリヌクレオチドの末端に伸長し、それによって、蛍光シグナルが生成されるように消光剤が蛍光色素分子の近くから離れ、ヘアピンの二重鎖領域は移動する。二重鎖DNA生成物が蓄積するにつれて、反応混合物からの蛍光シグナルは増加する。蛍光シグナルの強度が、例えばベースラインの3倍等の所定のレベルに達した又は超えたときに、PCRは停止し、反応混合物の有効部分が単離され、その後、それは第二段階の反応物と混合される。第一反応混合物(及び第一増幅産物の部分)の有効部分を除去し、それを、別の第二反応における増幅のための試料又は検体として処理することによって、伸長されたAmplifluorTMプライマーからの蛍光等の第一反応成分からの障害が実質的に取り除かれる。
【0060】
又、反応パラメータに関連して生成された信号が所定のレベルに達した又はこれを超えた後に第二段階のNASBAが開始するように、ネステッドNASBA反応を実施することができる。NASBA反応は、90〜120分間に10〜1012の範囲の因数による所望の標的配列の増幅を生成し得る従来の条件下における、二つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用した、同時の逆転写酵素(通常、鳥骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素)、RNアーゼH、及びRNAポリメラーゼ(通常、T7 RNAポリメラーゼ)の活性に基づく。NASBA反応では、核酸が一本鎖で、プライマー結合部位を有する場合にのみ、増幅反応の鋳型となる。NASBAは等温性(通常、前記酵素を使用して41℃で実施される)であり、試料調製工程において二重鎖DNAの変性が防止される場合、一本鎖RNAの特異的増幅が達成される。即ち、RT−PCR等のその他の技法と比較して、複合体ゲノムDNAによって引き起こされる擬陽性の結果を得ることなく、二重鎖DNAバックグラウンド中での一本鎖RNA標的の検出が可能である。モレキュラービーコン等の反応と適合性のある蛍光指示薬を使用することにより、NASBAを、増幅産物のリアルタイム検出によって実施することができる。モレキュラービーコンは、一方の末端に蛍光標識を有し、他方の末端に消光剤を有する、例えば、Tyagi and Kramer(前記で引用)に開示されるような、5’−フルオレセイン及び3’−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸(即ち、3’−DABCYL)を有する、ステムアンドループ構造のオリゴヌクレオチドである。モレキュラービーコンが反応温度、例えば41℃で標的配列と安定したハイブリッドを形成することができるように、6個のヌクレオチド、例えば、4個のG又はC及び2個のA又はT、及び約20個のヌクレオチドの標的特異的ループの相補的なステム構造を有する場合もある。一般的なNASBA反応混合物は、30%DMSO中の、80mM Tris−HCl[pH 8.5]、24mM MgCl、140mM KCl、1.0mM DTT、2.0mMの各dNTP、4.0mMの各ATP、UTP及びCTP、3.0mMのGTP及び1.0mM ITPである。プライマーの濃度は0.1μMであり、モレキュラービーコンの濃度は40nMである。酵素混合物は、375ソルビトール、2.1μgのBSA、0.08UのRNアーゼH、32UのT7 RNAポリメラーゼ、及び6.4UのAMV逆転写酵素である。反応混合物は、5μLの試料、10μLのNASBA反応混合物、及び5μLの酵素混合物であり、合計反応容積は20μLである。リアルタイムNASBA反応を実施するための更なるガイダンスが、本明細書に参考文献として組み入れられる、以下の参考文献、即ち、Polstra et al.,BMC Infectious Diseases,2:18(2002);Leone et al.,Nucleic Acids Research,26:2150−2155(1998);Gulliksen et al.,Anal.Chem.,76:9−14(2004);Weusten et al.,Nucleic Acids Research,30(6)e26(2002);Deiman et al.,Mol.Biotechnol.,20:163−179(2002)に開示されている。ネステッドNASBA反応はネステッドPCRと同様に実施される。即ち、第一NASBA反応の増幅産物が、その少なくとも一つが第一増幅産物の内部に結合する、プライマーの新規なセットを使用して第二NASBA反応の試料になる。
【0061】
前述の通り、一態様では、本発明が、流体的に閉じた反応系において、一つ以上の増幅反応により連続して逆転写酵素反応を実施する方法を提供する。一実施形態では、細胞又は組織試料から抽出された、選択されたmRNA等の一つ以上のRNAが、以下のようにして増幅される場合がある:(i)第一反応混合物中で逆転写酵素を使用して、一つ以上のRNA配列を流体的に閉じた反応系において転写して、一つ以上の相補的な一本鎖DNA配列を形成し;(ii)流体的に閉じた反応系において第一反応混合物の第一有効部分を単離し;及び(iii)第二反応混合物中の第一段階増幅試薬(第一段階増幅試薬には、相補的な一本鎖DNA配列のそれぞれに対する開始プライマーが含まれる)を使用して、第一有効部分中の一つ以上の相補的な一本鎖DNAを流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第一増幅産物を形成する。転写工程は、従来の逆転写反応を使用して実施され、その成分、即ち逆転写酵素試薬は、例えば、Ambionから容易に購入することができる。大まかに言えば、前記実施形態では、逆転写反応が、前述のようなネステッドPCRにおける第一段階増幅反応とほぼ同様に処理される。即ち、逆転写酵素反応混合物の有効部分(「第一有効部分」)を、好ましくは、当該部分を反応チャンバー内に残し、混合物の残部を捨てることによって単離する。前記実施形態では、次の増幅反応によって検出され得る相補的な一本鎖DNAの十分な量を前記部分が含むことを、当該第一有効部分が意味する。従って、上記の有効部分についての定義は、前記実施形態の第一有効部分にも適用できる。前述の通り、上記の第二段階の反応の後に第三段階のネステッド増幅が続く場合もある。前記方法の前記態様は、以下の追加の工程によって実施される:(i)流体的に閉じた反応系において前記第二反応混合物の第二有効部分を単離し;及び(ii)第三反応混合物中で第二段階増幅試薬(前記第二段階増幅試薬には、一つ以上の第一各増幅産物それぞれの少なくとも一つの第二プライマーが含まれる)を使用して、前記第二有効部分中の一つ以上の第一増幅産物を前記流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第二増幅産物を形成し、各第二プライマーが当該第一増幅産物の前記開始プライマーに比例して当該第一増幅産物中でネスト化されるようにする。好ましくは、本発明の上記態様は、流体的に閉じた反応系においてRT−nPCRとして実施される。
【0062】
本発明の方法を実施するための系
本発明の方法は、試薬を隔離し、試薬を移動し、及び反応生成物を反応系へ出入りさせ、温度を制御し及び反応生成物を検出するための種々の工学的方法に基づく、種々の系及び装置によって実施することができる。系の選択は、試料又は検体の有効性、試料又は検体の形態、試料又は検体により引き起こされる危険又は感染力、可搬性の要求性、使用される増幅反応の性質等を含むが、これらに限定されない多くの要因によって決まる。本発明の方法を実施するために使用することのできる具体的な系には、米国特許第6,369,893号(Christel et al.)及び米国特許第6,374,684号(Dority)に開示されるような、マイクロプロセッサ制御の下で、回転バルブ及びピストン方の流体ポンプを使用する、流体的に閉じた反応系;米国特許第5,229,297号(Schnipelsky et al.);及びFindlay et al.,Clin.Chem.,39:1927−1933(1993)に開示されるような、試料、反応物及び生成物を、反応チャンバー及び検出装置を通じて機械的に駆動するための柔軟な試薬レザバを有する、閉鎖された使い捨てのキュベット;以下の参考文献、即ちShoji et al.,Appl.Biochem.Biotechnol.,41:21−34(1993)及びJ.Micromech.Microeng.,4:157−171(1994);McCormick et al.,Anal.Chem.,69:2626−2630(1997);Cheng et al.,Topics Curr.Chem.,194:215−231(1998);米国特許第6,663,833号(Stave et al.);米国特許第5,714,380号(Neri et
al.);米国特許第5,589,136号(Northrup et al.)等に定義され、更に開示されるような、微小流体デバイスが含まれる。当該系は、制御された様式で、容器と反応チャンバーとの間で、反応物、試料及び反応生成物を流体移動することができる。即ち、当該系は、直接的に液体−原動力の下、容器中で試薬、試料、反応生成物等を移動する。液体−原動力には、多くの種類のポンプ又は圧縮ガス容器、電気運動ポンプ等によって生成される圧力差が含まれる。
【0063】
一態様では、本発明の方法が、回転バルブ、反応物及び廃棄物レザバの操作の詳細設計及び方法、及びDority(前記で引用)に一般的に開示される反応チャンバーによって都合よく実施される場合がある。別の態様では、増幅生成物のリアルタイムモニタリングが望まれる場合に、Christel et al.(前記で引用)に開示される温度制御装置及び蛍光光度計を有する装置が都合よく使用される。下記に更に詳細に開示されるように、Christel et al.の装置は、更に、Dorityの流体的に閉じた反応系において第二段階の反応の開始の閉ループ制御をもたらすために使用することができる。
【0064】
図2A〜2Iには、第二増幅反応の試料として使用する第一反応混合物の有効部分を反応チャンバーに残すために反応チャンバーの部分排出を可能にする、Dority(前記で引用)に開示される一般的な設計手法に従った装置の動作を図示する。部分排出は、ピストンタイプのポンプによって置換される容積を電子的に制御することによって達成される。又、後述するように、反応チャンバーの部分排出は、チャンバー内の「デッドボリューム」が有効部分を限定し、使用されるピストンタイプのポンプの完全なストロークを可能にする、反応チャンバーの代替え的な設計により受動的に実施することもできる。
【0065】
図2Aは、ピストンタイプのポンプ(2006)と作動上関係がある、内部チャンバー(2004)を有する回転バルブ(2002)を含む筐体(2000)を示す。ポンプ(2006)のピストン(2056)の上り行程はチャンバー(2004)を加圧し、容器と接続し得る、引き込み口を通じて液体内容物を封入する。同様に、ポンプ(2006)のピストン(2056)の下り行程はチャンバー(2004)を加圧し、開放し、容器と接続し得る引き込み口を通じて液体をくみ上げる。当該ポンプ−回転バルブ装置の操作、試料調製のためのチャンバー(2004)の使用及び構成の更なる記述は、この目的のために本明細書に参考文献として組み入れられる、Dority(前記で引用)によってもたらされる。回転バルブ(2002)は種々の引き込み口、例えば、(2050)及び(2052)、及び、当該引き込み口が当該容器又は反応チャンバー(2042)に通過するための対応する引き込み口に配列するときにはいつでも、チャンバー(2004)を種々の容器(下記で更に詳細に記述する)又は反応チャンバー(2042)と流体連絡することを可能にする、関連する流路(2008)及び(2012)を有する。前記の例示的実施形態では、チャンバー(2004)が筐体(2000)中に配置され、容器等への流路の引き込み口と流体連絡されて配置されるように、当該関連流路の縦軸が、回転バルブ(2002)の軸に対して垂直をなす一つ又は二つの平面(点線(2048)及び(2049)で示す)内の回転バルブ(2002)中に放射状に配置されている。回転バルブ(2002)には更に、バルブの一つの面における引き込み口が、筐体(2000)の引き込み口と流体連絡するように配置されることを可能にし、回転バルブ(2002)の他方の面と並んだ接続流路(2010)が含まれる。当該接続流路(2010)は内部チャンバー(2004)とは流体連絡されていない。図2Aに示す通り、当該接続流路(2020)が流路(2044)及び(2016)の引き込み口と一体になった(2046)と並ぶときには、流路(2044)及び(2016)は流体連絡される。同様に、当該接続流路(2020)が流路(2040)及び(2036)の引き込み口と一体になった(2038)と並ぶときには、流路(2040)及び(2036)は流体連絡される。図2A〜2I及び3A〜3Iの両方において、筐体(2000)内のクロスハッチングされた流路及び容器回転バルブ(2002)のポンプに近い面にあるが、ハッチングされていない流路及び容器はポンプから遠い面にある。前述の通り、回転バルブ(2002)は、内部チャンバー(2004)を、種々の容器及び流路によって接続された反応チャンバー(2042)と流体連絡して配置し、回転バルブ(2002)がその中で回転する筐体(2000)のシート中に引き込み口を有する。この実施例においては、当該容器に、(i)流路(2016)によって回転バルブ(2002)と流体連絡することができる第一段階増幅試薬を含む容器(2014);(ii)流路(2020)によって回転バルブ(2002)と流体連絡することができる、例えば、細胞性試料の表面膜を破壊するための溶解試薬を含む容器(2018);(iii)流路(2024)によって回転バルブ(2002)と流体連絡することができる、試料又は検体材料を含む容器(2022);(iv)流路(2028)によって回転バルブ(2002)と流体連絡することができる、洗浄試薬を含む容器(2026);(v)流路(2032)によって回転バルブ(2002)と流体連絡することができる、廃棄物レザバ(2030);及び(vi)流路(2036)によって回転バルブと流体連絡することができる、第二段階増幅試薬を含む容器(2034)が含まれる。
【0066】
図2B〜2Hは、流体的に閉じた条件下で二段階増幅反応を実施するための図2Aの装置の動作を示す。又、回転バルブ(2002)の特定の実施形態がどのように作動するかを教示するため、図2B〜2Hのそれぞれにおいて、番号を振った32の領域に分けて、回転バルブ(2002)が図示されている。回転バルブ(2002)の番号の振られた各領域に隣接して、番号の振られた筐体(2000)のシートに対応する位置がある。番号32は、とりわけ容器及びチャンバーの複合系における相互接続を供給するための回転バルブ(2002)の能力を反映する、単に設計上の選択である。図2Bに示すように、回転バルブ(2002)の開始位置で、2組のセットについての各領域における互いに隣接する番号は同じである。回転バルブ(2002)上の特定の番号(内側の番号)に丸をつけ(1、5、14、28)、回転バルブ(2002)の外側に隣接する特定の番号(外側の番号)に丸を付けた(1、6、8、21、30、31)。丸は、種々の容器及びチャンバーへの引き込み口が位置する領域を示す。内部に影を付けた丸、例えば、5、6及び8は、引き込み口が回転バルブ(2002)の「ポンプに近い」面(2049)に位置することを示し、内部に影のない丸、例えば、1、21、30、31は、引き込み口が回転バルブ(2002)の「ポンプから遠い」面(2048)に位置することを示す。それぞれ、小さな斑点で覆われた内部を有する領域14及び28における円(2126)及び(2124)は、接続流路(2010)を示す。図2Bにおいては、試料調製工程を実施することのできる試料レザバ(2022)が内部チャンバー(2004)と流体連絡するように、回転バルブ(2002)は、バルブの引き込み口1(2108)が筐体(2000)の引き込み口1と並ぶ開始位置にあるように見える。ポンプ(2006)の下り行程によって、試料は、流路(2024)、引き込み口(2106)及び(2108)、及び内部チャンバー(2104)を満たすための流路(2012)によって規定される経路を通じて引き込まれる。洗浄工程は、図2C及び2Dに示す通りに実施される場合もある。要約すると、図2Cにおいて、ピストン(2056)の下り行程によって、容器(2026)内の洗浄溶液が内部チャンバー(2004)に引き込まれるように(2200(及び2204))、筐体(2000)の引き込み口6(2110)が領域5における引き込み口(2128)と並ぶように、回転バルブ(2002)が回転する。引き込み口5(2128)が、内部チャンバー(2004)と廃棄物レザバ(2030)との間が流体連絡するのを可能とする筐体(2000)の引き込み口8と並ぶように回転バルブ(2002)を回転させることによって、ピストン(2056)の上り行程で内部チャンバー(2004)内の洗浄溶液が廃棄物レザバ(2030)に排出される場合がある(2202)。前記プロセスは、必要に応じて繰り返される場合もある。
【0067】
無傷細胞を含む試料については、細胞表面膜を溶解するための試薬が内部チャンバー(2004)に加えられ、必要に応じて洗浄される溶解物が生成する。図2Dにおいては、回転バルブ(2002)が回転して、バルブの引き込み口1(2108)が筐体(2000)の引き込み口31(2114)と並び、これによって、内部チャンバー(2004)が容器(2018)と流体連絡される。ピストン(2056)の下り行程は、溶解試薬を容器(2018)から内部チャンバー(2302)に引き込む(2300)。溶解試薬中でのインキュベーション後、試料は、場合よって、前述の通り追加洗浄される場合もある。インキュベーション後、又はインキュベーション及び追加洗浄後、内部チャンバー(2004)中の溶解物が、ピストン(2056)の上り行程により、引き込み口1及び30、及び流路2016を通じて、第一段階増幅試薬と混合される、容器(2014)に封入されるように、引き込み口1(2108)が、筐体(2000)の流路(2016)と並ぶように(領域30において)、回転バルブ(2002)を回転させる。一つが回転バルブ(2002)のポンプに近い面(図2Aにおける2049)にあり、他方がポンプから遠い面(図2Aにおける2048)にあるように、引き込み口1及び流路(2044)の引き込み口の間は流体連絡されていないため、流路(2044)中には流れがない。試料材料と第一段階増幅試薬とを混合した後、混合物を反応チャンバー(2042)に移す。図2Fに示す通り、引き込み口5が、反応チャンバー(2042)と流体連絡されている流路(2040)の引き込み口と並び、接続流路14(2126)が領域30(2112)の流路(2016)及び(2044)の引き込み口と並ぶように、回転バルブ(2002)を回すことによってこれが達成される場合もある。ピストン(2056)の下り行程によって、反応混合物が容器(2014)から流路(2016)、接続流路14、及び流路(2044)を通じて、Christel et al.(前記で引用)によって教示されるような、光学モニタリングを使用したリアルタイムPCR等の、第一段階増幅反応が実施される反応チャンバー(2042)内に引き込まれる(2500)。別の実施形態によれば、第一反応物レザバ(2014)が必要でなく、試料材料が反応チャンバーに流体的に移動され、それが第一段階増幅試薬と混合され、第一反応混合物を形成するように、第一段階増幅試薬が反応チャンバー(2042)内に簡単に配置されている。
【0068】
第一段階増幅反応は反応チャンバー内で実施され、第一増幅産物を生成する。第一段階増幅反応が停止し、(任意に)ピストン(2056)を廃棄物レザバ(2030)に排出することによって回転バルブ(2002)の近くにもたらした後、ピストン(2056)の部分的な下り行程によってチャンバー(2042)から反応混合物のバルクを除去する。ここで、反応チャンバー(2042)中に残された反応混合物の量(2600)は、コンピュータ制御によるピストン(2056)の上り行程を実施することによって予め決められる。残される量は、多段階反応の次の段階を実施するために効率的に選択される;従って、特定の実施形態における実際の容積は、決定するために通常の実験が必要になる場合がある。当該部分除去の後、図2Hに示すように、引き込み口5(2128)が流路(2044)の引き込み口と並び、領域21(2504)において接続流路が流路(2040)及び(2036)の引き込み口と並ぶように、回転バルブ(2002)を回転させる。この配列によって、流路(2036)、接続流路28(2124)、流路(2040)、反応チャンバー(2042)、及び流路(2044)に沿って、第二段階増幅試薬を含む容器(2034)と内部チャンバー(2004)とが流体連絡される。ピストン(2056)の下り行程により、第二段階増幅試薬が容器(2034)から反応チャンバー(2042)に引き込まれ(2700)、試料として供給された有効部分(2600)における増幅産物を使用して、第二段階増幅反応が実施される。
【0069】
図3Aに示すように、第二段階増幅反応(及びその結果、有効部分)のために反応チャンバー(2042)内に保持された反応混合物の容積を決定するための部分的なポンプの行程を使用する代わりの方法として、容積は、所定のサイズの「デッドボリューム」を含む反応チャンバー(2042)を使用することによって、受動的に制御することができる。これは、流路(2040)を通じて排出されるときにはいつでも、反応混合物の一部(2804)が、反応チャンバー(2042)の底(2805)におけるチャンバー(2042)内に残留するように、流路(2040)の反応チャンバー引き込み口を、反応チャンバー(2042)の壁に沿って「より高く」移動することによって達成することができる。かかる受動的な制御は、信頼性が必要であり、電気部品又はソフトウェア障害による破壊のために低耐性である用途において特に好ましい。一態様では、本発明が、第二段階増幅反応の試料として供給する反応混合物の有効部分を収集するデッドボリュームを有する反応チャンバー(2042)を提供する。又、流路(2040)の設計を変更する代わりに、図3Bに示すように、擁壁(2852)等の保持部材が反応チャンバーに追加される場合もある。前記実施形態では、流路(2040)を通じた反応混合物の排水により液体レベル(2850)が低下するように、容積(2858)が反応チャンバー内に保持される(本明細書では「保持容積」と称する)。保持部材(2852)により保持されない流体は、保持部材(2852)により保持されたものを除き、チャンバー内に実質的に流体が残らなくなるまで、流路(2040)を通じて反応チャンバーから廃棄物チャンバーに流体的に移動される。
【0070】
本発明の一態様では、本発明の装置及び方法に使用される反応容器が提供される。図3Cには、当該反応容器の一実施形態を図示する。最も一般的には、反応容器(2874)が以下を含む:即ち、出口(2880)及び出口流路(2884)を通じて反応チャンバーが液体を排出するときにはいつでも、液体(例えば、図3Bの(2858))の容積が保持されるように配置される、反応混合物等の液体を含むための反応チャンバー(2876)、入口チャネル(2882)によって反応チャンバー(2876)に接続される入口(2878)、出口チャネル(2884)によって反応チャンバー(2876)に接続される出口(2880)、及び反応チャンバー(2876)内の保持部材(2852)を含む。一実施形態では、反応容器(2874)が、それぞれが光透過性を備えており、互いに角度オフセットしており、それによって、反応チャンバー(2876)内の蛍光指示薬の照射、及びそれによって生成された蛍光シグナルの収集を可能にする、側壁(2886)及び(2888)を含む、反応チャンバー(2876)の側壁を定義する硬質なフレーム(2900)を含む。先により詳細に開示した好ましい実施形態では、反応チャンバー(2876)内の蛍光指示薬が側壁(2886)又は(2888)を通じて照射され、蛍光指示薬が、側壁(2886)又は(2888)を通じて収集される。流体密封反応チャンバー(2876)は、硬質なフレーム(2900)から、当該フレームの向かい合った側に、第一及び第二プラスチックフィルム(2870)及び(2872)をそれぞれ密封して付着することによって形成される。このように付着した場合、第一及び第二プラスチックフィルム(2870)及び(2872)は、それぞれ反応チャンバー(2876)の第一及び第二の主壁を形成する。好ましくは、プラスチックフィルム(2870)及び(2872)は、チャンバー(2876)内の温度の正確な制御のための効果的な熱伝導を可能にする熱表面に適合する上で十分に柔軟である。反応チャンバー(2876)は深さ(図3Cにおける図面の平面に入る寸法)及び幅(2902)を有し、説明した実施形態では、幅(2902)が、反応チャンバー(2876)の主壁の表面の寸法となる。反応容器の一態様では、幅(2902)及び反応チャンバー(2876)の深さが、反応チャンバー(2876)の部品の急速な加熱及び冷却のため、容積に対して大きい表面を有するように選択される。一態様では、幅(2902)及び反応チャンバー(2876)の深さが、約4:1の比を有し、反応チャンバー(2902)の深さが2mm未満となる。
【0071】
内標準
しばしば、患者における標的遺伝子の測定した発現レベルが正常範囲内であるかどうかを決定することを試みる場合等、異なるアッセイからの読み出した情報を比較することが好ましい。特に、医学用途においては、基準試料の結果と、患者試料からのアッセイ結果とを比較することが好ましい。当該比較は、同じ試料からの参照配列に関連するシグナルに対する標的ポリヌクレオチドに関連するシグナルの比を決定することによって容易に実施される。これは、その他の試料又は検体からの値に対する、標的ポリヌクレオチドについての値を比較することを可能にする。内標準、特に、参照配列の使用及び選択は、本明細書に参考文献として組み入れられる、以下の文献、即ち、Radonic et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,313:856−862(2004);Bustin,J.Mol.Endoccrinol.,29:23−39(2002);Hoorfar et al.,J.Clin.Microbiol.,42:1863−1868(2004)等に反映されたように、当業者にとって周知である。参照配列に関連するシグナル又は値は、例えば、複数の参照配列から測定されたシグナル又は値の平均となる場合もあることが理解される。
【0072】
本発明の一態様では、標的ポリヌクレオチドの当該相対値が、第一段階増幅反応において参照配列及び標的ポリヌクレオチドの両方を増幅し、第二段階増幅反応において標的ポリヌクレオチドの増幅産物のみを増幅し、第一増幅反応における参照配列の増幅産物からのシグナルに対する、第二増幅反応における標的ポリヌクレオチドの増幅産物からのシグナルをそれぞれ含む比を求めることによって提供される。本発明の前記態様は、異なる試料からの微量、又は非常に低レベルの標的ポリヌクレオチドのレベルを比較する上で特に適している。当該環境においては、参照配列は、通常標的ポリヌクレオチドに対して、非常に過剰に存在し、その結果、両方の配列が二段階増幅を受ける場合、有機蛍光色素の発光バンドの場合のように、それぞれのシグナルがわずかに重複する場合であっても、参照配列のシグナルは標的ポリヌクレオチドのシグナルを容易に圧倒する。従って、前記態様の一実施形態では、(i)参照配列が第一段階PCRにおいて増幅されるが、第二段階PCRにおいては増幅されず、(ii)以下の二つの測定、即ち、標的ポリヌクレオチドからの第二段階PCRにおいて生成される増幅産物からの蛍光シグナル、及び参照配列からの第一段階PCRにおいて生成される増幅産物からの蛍光シグナルの比から、標的ポリヌクレオチドの相対量を決定する、ネステッドPCRを実施することによって、複数の試料中の標的ポリヌクレオチドの相対量を測定する方法が提供される。好ましい実施形態では、第一段階及び第二段階の両方の反応がリアルタイムPCRとなる。前記態様の別の実施形態では、(i)参照配列が第一段階のNASBA反応において増幅されるが、第二段階のNASBA反応においては増幅されず、(ii)以下の二つの測定、即ち、標的ポリヌクレオチドからの第二段階のNASBA反応において生成される増幅産物からの蛍光シグナル、及び参照配列からの第一段階のNASBA反応において生成される増幅産物からの蛍光シグナルの比から、標的ポリヌクレオチドの相対量を決定する、ネステッドNASBA反応を実施することによって、複数の試料中の標的ポリヌクレオチドの相対量を測定する方法が提供される。好ましい実施形態では、第一段階及び第二段階の両方の反応がリアルタイムNASBA反応である。前述の両方の手法では、第一段階PCR又はNASBAにおける光信号をモニタリングすることによって、第二段階の反応を開始することができる。一態様では、当該光信号が、参照配列又は標的ポリヌクレオチドのいずれか、又は両方の増幅産物の量の測定をもたらす。一態様では、光信号が、ベースライン信号レベルの1.5〜10倍の範囲である所定のレベルに達した時又はこれを超えたときに、第二段階の反応が開始される場合もある。一態様では、光信号が、参照配列に対応する増幅産物の成長曲線の第二導関数の累乗根に対応する所定の値に達した時又はこれを超えたときに、第二段階の反応が開始される場合もある。
【0073】
選択される参照配列の内標準のタイプは、解析される試料の性質によって決まる。ほ乳類細胞又は組織を含む試料についての具体的な参照配列を表1に示す。
【0074】
【表1】


【0075】
試料又は検体の調製
本発明で使用される、標的ポリヌクレオチドを含む試料又は検体は、細胞培養物、動物又は植物組織、患者の生検、環境の試料等を含む、種々の源から由来する。本発明のアッセイのための試料は、通常、試料又は検体を取得した源によって決まる、従来の技術を使用して調製される。
【0076】
外部の要素による試料又は検体の汚染の機会を最小化するように、又は試料又は検体が危険な成分を含む場合、それによる環境汚染を最小化するように、試料又は検体は集められる。一般的に、これは、組織、血液、唾液等の解析のための試料を、流体的に閉じた系内の試料収集チャンバー内に直接投入することによって実施される。通常、試料の相互汚染の防止は、注入バルブ又は隔壁等の密封可能な開口を通じて、試料を直接試料収集チャンバーに注入することによって達成することができる。一般的に、試料注入の際又は後の潜在的な漏れの危険を減少するためには、密封可能なバルブが好ましい。前記に加えて、装置の試料収集部分には、感染因子の中和、検体又は試料の安定化、pH調整のための試薬及び/又は処置が含まれる場合もある。安定化及びpH調整手段には、例えば、血液試料の凝固を防止するためのヘパリンの投入、緩衝剤の添加、プロテアーゼ又はヌクレアーゼ阻害剤、防腐剤の添加が含まれる。当該試薬は、一般的に、装置の試料収集チャンバーに貯蔵される場合もあれば、接触可能なチャンバー内に別々に貯蔵される場合もあり、前記試薬は、試料を装置に投入する際に加えられる場合もあれば、試料と混合される場合もある。これらの試薬は、使用される特定の試薬の性質及び安定性に応じて、液体又は凍結乾燥のいずれかの形態で装置に投入することができる。
【0077】
試料についての増幅反応を実施する前に、試料に対して一つ以上の試料調製操作を実施することがしばしば好ましい。通常、これらの試料調製操作には、細胞全体の試料、ウイルス等から核酸等の細胞内物質を抽出するような操作等が含まれる。一つ以上のこれらの種々の操作は、本発明によって意図される、流体的に閉じた系内に容易に取り込むことができる。
【0078】
細胞全体、ウイルス又はその他の組織試料が解析されている実施形態については、通常、種々の試料調製操作を継続する前に、細胞又はウイルスから核酸を抽出することが必要となる。従って、試料の収集に次いで、収集された細胞、ウイルスの外被等から粗製の抽出物に核酸が遊離され、例えば、混入する(DNA結合)タンパク質の変性、精製、濾過、脱塩等の次の操作のための試料を調製するための追加の処理に続く。試料細胞又はウイルスからの核酸の遊離、及びDNA結合タンパク質の変性は、一般的に、化学的、物理的、電解溶解法によって実施される。例えば、化学的方法は、一般的に溶解試薬を使用して細胞を破壊し、細胞から核酸を抽出し、グアニジンイソチオシアネート又は尿素等のカオトロピック塩を使用して抽出処理を行い、混入し潜在的に妨害するタンパク質を変性させる。一般的に、化学的抽出及び/又は変性法を使用する場合、試薬を、試料チャンバー内、又は別の接触可能なチャンバーに取り込むことができ、又は外部投入することができる。
【0079】
物理的方法は、核酸を抽出し、DNA結合タンパク質を変性するために使用される。全ての目的のため、完全に本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許第5,304,487号(Wilding et al.)は、細胞膜に穴を開け、それらの成分を抽出するための、マイクロチャネル内における物理的突起部、又は、チャンバー又はチャネル内における鋭角な粒子の使用を議論している。これらの構造と、撹拌のための圧電素子との組み合わせは、溶解のための適切な剪断力をもたらす。当該素子は、核酸断片化に関して以下に更に詳細に記述する。又、より伝統的な細胞抽出方法、例えば、試料が十分な流れ圧力を有するチャネルを通過するときに、細胞の溶解を引き起こす、限定された断面直径を有するチャネルを使用する方法を使用することができる。又、細胞抽出及び混入タンパク質の変性は、試料に交流の電流を加えることにより実施することができる。更に具体的には、流体の流れを横切って交流電流が加えられる間、細胞試料が微小管配列を通過する。細胞の溶解/抽出を実施するために、本発明の装置内でその他の種々の方法、例えば、細胞を超音波撹拌にかけ、又は細胞を小さいすき間に通し、それによって細胞に高い剪断応力をかけ、破裂させる方法を使用することができる。
【0080】
抽出に続き、粗製の抽出物のその他の成分、例えば、変性したタンパク質、細胞膜粒子、塩等から核酸を単離することが、しばしば好ましい。粒子状物質の除去は、一般的に、濾過、凝集等によって達成される。装置には、種々のタイプのフィルターを容易に組み込むことができる。更に、化学的変性方法を使用する場合、次の工程に進む前に試料を脱塩することが好ましい。試料の脱塩、及び核酸の単離は、一般的に一つの工程で、例えば、核酸を固相に結合し、混入した塩を洗い流すか、試料についてゲル濾過クロマトグラフィーを実施し、塩を透析膜に通過させること等によって、実施される場合がある。核酸を結合させるための適切な固相担体には、けいそう土、シリカ(即ち、ガラスウール)等が含まれる。当業界においても周知である適切なゲル排除媒体は、本発明の装置に容易に組み込むこともでき、例えば、Pharmacia及びSigma Chemicalから市販されている。
【0081】
単離及び/又はゲル濾過/脱塩は、追加のチャンバー内で実施することができ、又、次の反応チャンバーに通じるチャネル又は流路内に、特定のクロマトグラフ媒体を組み入れることができる。又、一つ以上の流路又はチャンバーは、所望の精製に適した、荷電した官能基、親和結合官能基、即ち、mRNA精製のためのポリ−Tオリゴヌクレオチド等の官能基を与えるために、それ自体が誘導体化される場合がある。又、脱塩法は、一般的に、その他の成分と比較した場合の、DNAの高い電気泳動度及び負電荷を上手く利用することができる。又、電気泳動法は、その他の細胞混入物及び残骸からの核酸の精製に利用することができる。一実施例では、装置の単離チャネル又はチャンバーが、その中に配置された白金電極等の電極を有する、2個の単離された「場」のチャネル又はチャンバーと流体連絡している。2個の場のチャネルは、核酸又はその他の大きい分子を通過させず、電流を通過させることのできる、適切なバリア又は「捕獲膜」を使用して単離チャネルから単離されている。前記バリアは、一般的に二つの基本的機能をもたらす。即ち、第一に、バリアは、単離チャンバー内で陽極に向かって移動する核酸を保持するよう作用し、第二に、バリアは、電極における電気分解と関連する逆効果が、反応チャンバー内に入らないようにする(例えば、塩接合(salt junction)としての機能)。当該バリアには、例えば、透析膜、濃厚ゲル、PEIフィルター又はその他の適切な材料が含まれる。適切の電場の適用により、試料中に存在する核酸は陽極に向かって移動し、捕獲膜に捕捉されるだろう。次いで、膜を含まない残存する試料の不純物を、適切な流体の流れを適用してチャンバーから洗浄する。電圧の逆転により、核酸は、実質的により純粋な形態で膜から遊離する。電場チャネルは、単離チャンバー又はチャネルの同じ又は反対側の場に配置される場合もあれば、作動効率を最大にするため、本明細書に開示される混合要素と共に使用される場合もある。更に、タンパク質又は核酸の粒子状物質によるバリアの汚染を防止し、それにより繰り返しの使用を可能にするため、バリアを粗フィルターで覆うことも可能である。同様の態様では、核酸をより速く通過させながら、その他の混入物の流れは遅延又は抑制する、短いカラムのゲル又はその他の適切なマトリックス又はゲルを使用することによって、混入物から核酸を単離するために、負の電荷を有する核酸の高い電気泳動度が利用される場合もある。
【0082】
多くの用途について、細胞、細胞の残骸及びその他の混入物からメッセンジャーRNAを抽出、単離することが好ましい。そのため、本発明の系には、mRNA精製チャンバー又はチャネルが場合により含まれる。一般的に、当該精製は、mRNA上のポリ−Aテイルを上手く利用する。特に、前述の通り、mRNAに対する親和性リガンドを供給するために、ポリ−Tオリゴヌクレオチドが、装置のチャンバー又はチャネル内に固定化される。ポリ−Tオリゴヌクレオチドは、チャンバー又はチャネル内に取り込まれた固体担体に固定化することもでき、又はチャンバー又はチャネル自体の表面に固定化することもできる。
【0083】
患者の血液由来の稀な転移性細胞中の標的ポリヌクレオチドを測定する等の幾つかの用途においては、アッセイを実施する前に、免疫磁気単離等によって濃縮工程が実施される場合がある。当該単離及び濃縮は、本明細書に参考文献として組み入れられる、以下の文献、即ち、米国特許第6,365,362号(Terstappen et al.);米国特許第5,646,001号(Terstappen et al.);米国特許第5,998,224号(Rohr et al.);米国特許第5,665,582号(Kausch et al.);米国特許第6,048,515号(Kresse et
al.);米国特許第5,508,164号(Kausch et al.);米国特許第5,691,208号(Miltenyi et al.);米国特許第4,452,773号(Molday);米国特許第4,375,407号(Kronick);Radbruch et al.,Methods in Cell Biology,Vol,42:ch 23(Academic Press,New York,1994);Uhlen et al.,Advances in Biomagnetic Separation(Eaton Publishing,Natick,1994);Safarik et al.,J.Chromatography B,722:33−53(1999);Miltenyi et al.,Cytometry,11:231−238(1990);Nakamura et al.,Biotechnol.Prog.,17:1145−1155(2001);Moreno et al.,Urology,58:386−392(2001);Racila et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,95:4589−4594(1998);Zigeuner et al.,J.Urology,169:701−705(2003);Ghossein et al.,Seminars in Surgical Oncology,20:304−311(2001)に開示されるような、当業者に公知の種々の技術及び材料を使用して実施することができる。
【0084】
本発明を実施するために使用するのに好ましい磁気粒子は、コロイドとして振る舞う粒子である。当該粒子は、一般的に約200ナノメートル(nm)(0.2μm)未満であるサブミクロン粒子サイズ、及び長期間の溶液からの重力単離に対する安定性によって特徴付けられる。その他の多くの利点に加えて、このサイズの範囲は、細胞解析に通常に適用される分析技法に対し、目に見えなくする。90〜150nmの範囲及び70〜90%の磁気質量を有する粒子は、本発明において使用されることが意図される。結合する分子によって囲まれた、超常磁性の材料の結晶性コアを含む。コーティング物質は、好ましくは、試料及び磁気コア中に検出される生体高分子との間の非特異的相互作用を防止するために効果的な量で加えられるべきである。当該生体高分子には、非標的細胞表面上のシアル酸残基、レクチン、糖タンパク質(glyproteins)及びその他の膜成分が含まれる。更に、前記物質は、できる限り多くの磁気質量/ナノ粒子を含むべきである。コアに含まれる磁気結晶のサイズは、完全な磁区を含まないように、十分小さなサイズとなっている。又、ナノ粒子のサイズは、ブラウン運動のエネルギーが磁気モーメントを超えるように、十分小さなサイズとなっている。結果として、これらのコロイド性磁気粒子の磁北極、磁南極及び相互の引力/反発力は、それらの溶液安定性に寄与し、適度に強い磁場にさえ生ずるとは思えない。最終的に、磁気粒子は、高い磁場勾配の外部場セパレータ内で単離可能であるべきである。その特性は試料の取り扱いを容易にし、強磁性のビーズ又はスチールウールを装填した、更に複雑な内部勾配カラムを超えた経済的利点をもたらす。前述の特性を有する磁気粒子は、本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許第4,795,698号及び米国特許第5,698,271号に開示される基礎原料の修飾によって製造することができる。
【0085】
前述の通り、試料又は検体は、本発明を使用した、標的ポリヌクレオチドの検出又は定量のための多種多様の供給源から得ることができる。具体的な標的ポリヌクレオチドには、ウイルス、細菌、真菌、原生動物及びほ乳類由来の核酸が含まれるが、これらに限定されない。特に、ほ乳類核酸には、p53、ATP、Her1(EGFR)、BCR−ABL、PTEN、BRAF、BRCA1、Grb7、トポイソメラーゼIIα等の癌遺伝子が含まれる。検出及び/又は定量のために受け入れられる核酸を含む例示的なウイルス及び細菌を表2に示す。表2の生物由来の標的ポリヌクレオチドを選択することは、当業者の通常の設計上の選択である。
【0086】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を検出する方法であって、
第一反応混合物中の第一段階増幅試薬を使用して、該試料由来の一つ以上の標的ポリヌクレオチドを流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第一増幅産物を形成する工程であって、該第一段階増幅試薬は、各標的ポリヌクレオチドに対する開始プライマーを含む、工程;
該流体的に閉じた反応系において第一反応混合物の有効部分を単離する工程;
第二反応混合物中の第二段階増幅試薬を使用して、該有効部分中の該一つ以上の第一増幅産物を該流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第二増幅産物を形成する工程であって、該第二段階増幅試薬は、該一つ以上の第一増幅産物のそれぞれに対する少なくとも一つの第二プライマーを含み、その結果、各第二プライマーはそのような第一増幅産物の開始プライマーに比例してそのような第一増幅産物中でネスト化される、工程;及び、
該一つ以上の第二増幅産物を検出して、該試料中の該一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を検出する方法であって、
反応チャンバーを提供する工程であって、該反応チャンバーは、廃棄物レザバ、試料を含む試料レザバ、第一段階増幅試薬を含む第一反応物レザバ、及び第二段階増幅試薬を含む第二反応物レザバと選択的に流体連絡し、該レザバのそれぞれは流体的に閉じている、工程;
試料レザバ由来の試料、及び第一反応物レザバ由来の第一段階増幅試薬を反応チャンバーに流体的に移動させる工程であって、その結果、該試料中に標的ポリヌクレオチドが存在するときにはいつでも、該第一段階増幅試薬が増幅反応において該試料と反応し、第一増幅産物を含む反応生成物が生成される、工程;
該反応チャンバー内に残存する有効部分を除き、該反応生成物を該廃棄物レザバに流体的に移動させる工程;
第二反応物レザバ由来の第二段階増幅試薬を該反応チャンバーに流体的に移動させる工程であって、その結果、該反応生成物中に該第一増幅産物が存在するときにはいつでも、該第二段階増幅試薬が増幅反応において該反応生成物の有効部分と反応し、第二増幅産物が生成される、工程;ならびに
該第二増幅産物を検出して、該試料中に該標的ポリヌクレオチドが存在するかどうかを決定する工程
を包含する、方法。
【請求項3】
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの相対量を決定する方法であって、
一つ以上の標的ポリヌクレオチド、及び第一増幅反応中の少なくとも一つの参照配列を該試料において増幅して、標的ポリヌクレオチド及び参照配列それぞれの第一増幅産物を含む第一反応生成物を形成する工程であって、該第一増幅反応は、標的ポリヌクレオチド及び参照配列それぞれの開始プライマーを含む、工程;
該第一反応生成物の有効部分由来の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの第一増幅産物を第二増幅反応において増幅して、各第一増幅産物の第二増幅産物を形成する工程であって、該第二増幅反応は、各標的ポリヌクレオチドの第二プライマーを含み、その結果、各第一増幅産物の各第二プライマーが、それらの開始プライマーに比例してそのような第一増幅産物においてネスト化される、工程;ならびに
該第二増幅反応の第二増幅産物と該第一増幅反応中の少なくとも一つの参照配列とを比較し、試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの相対量を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項4】
ネステッド増幅反応を実施するための流体的に閉じた反応系であって、
反応チャンバーであって、試料レザバ、廃棄物レザバ、第一段階増幅試薬を含む第一反応物レザバ、及び第二段階増幅試薬を含む第二反応物レザバと選択的に流体連絡し、該レザバのそれぞれが流体的に閉じている、反応チャンバー;ならびに
ポンプであって、該ポンプは、該試料レザバ中の試料、及び該第一段階増幅試薬を該反応チャンバーに流体的に移動させるため;反応混合物の有効部分を単離するため;及び該第二段階増幅試薬及び該有効部分を該反応チャンバーに流体的に移動させるために回転バルブと作動的に関連し、ここで第一増幅反応は該反応混合物中に一つ以上の第一増幅産物を形成するために実施され、第二増幅反応は、一つ以上の第二増幅産物を形成するために実施される、ポンプ
を含む、反応系。
【請求項5】
反応容器であって、
液体を含むための反応チャンバー;
入口チャネルによって該反応チャンバーに接続される入口;
出口チャネルによって該反応チャンバーに接続される出口;及び、
該反応チャンバー内の保持部材であって、該保持部材は該反応チャンバー内の該液体の規定の容積を維持するように配置されており、該液体の残り部分は該出口チャネルを通じて該反応チャンバーから排出される、保持部材
を含む、反応容器。
【請求項6】
多段階反応を実施するための装置であって、
少なくとも第一チャネル及び第二チャネルがその中に形成されている本体;ならびに
該本体から延びる反応容器を含み、該反応容器は、
液体を含むための反応チャンバー;
入口チャネルによって該反応チャンバーに接続される入口;
出口チャネルによって該反応チャンバーに接続される出口;及び
該反応チャンバー内の保持部材であって、該保持部材は反応チャンバー内の液体の規定の容積を維持するように配置されており、該液体の残りの部分は出口チャネルを通じて反応チャンバーから排出される、保持部材
を含み、
該容器の入口は、該本体内の第一チャネルと接続されており、該容器の出口は、該本体内の該第二チャネルと接続されている、装置。
【請求項7】
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅する方法であって、
第一反応混合物中の第一段階増幅試薬を使用して、該試料由来の一つ以上の標的ポリヌクレオチドを流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第一増幅産物を形成する工程であって、該第一段階増幅試薬は、各標的ポリヌクレオチドに対する第一プライマーを含む、工程;
該流体的に閉じた反応系において該第一反応混合物の有効部分を単離する工程;及び、
第二反応混合物中で第二段階増幅試薬を使用して、該有効部分中の一つ以上の増幅産物を該流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第二増幅産物を形成する工程であって、該第二段階増幅試薬は、該一つ以上の第一増幅産物のそれぞれの少なくとも一つの第二プライマーを含み、その結果、各第二プライマーがそのような第一増幅産物の第一プライマーに比例してそのような第一増幅産物中でネスト化される、工程
を包含する、方法。
【請求項8】
一つ以上のRNA配列を増幅する方法であって、
第一反応混合物中の逆転写酵素を使用して、一つ以上のRNA配列を流体的に閉じた反応系において転写して、一つ以上の相補的な一本鎖DNA配列を形成する工程;
該流体的に閉じた反応系において該第一反応混合物の第一有効部分を単離する工程;及び、
第二反応混合物中の第一段階増幅試薬を使用して、該第一有効部分中の該一つ以上の相補的な一本鎖DNA配列を該流体的に閉じた反応系において増幅して、一つ以上の第一増幅産物を形成する工程であって、該第一段階増幅試薬は、該相補的な一本鎖DNA配列のそれぞれの開始プライマーを含む、工程
を包含する、方法。
【請求項9】
ネステッド増幅反応の性能を制御するためのコンピュータによる実行用のプログラムを具現化するコンピュータ読み取り可能な製品であって、該プログラムは、
(a)第一段階増幅反応からの光信号の値を読み取る工程であって、該光信号は第一段階増幅反応の増幅産物の量又は濃度と関連する、工程;
(b)閾値交差が発生したかどうかを該光信号の値から決定する工程;及び
(c)該閾値交差が発生した場合、第二増幅反応を開始する工程
のための命令を含む、コンピュータ読み取り可能な製品。
【請求項10】
試料中の一つ以上の標的ポリヌクレオチドの有無を検出する方法であって、
第一段階増幅試薬を含む反応チャンバーを提供する工程であって、該反応チャンバーが、廃棄物レザバ、試料を含む試料レザバ、及び第二段階増幅試薬を含む第二反応物レザバと選択的に流体連絡されており、該レザバのそれぞれが流体的に閉じている、工程;
該試料レザバ由来の試料を該反応チャンバーに流体的に移動させる工程であって、その結果、該試料中に標的ポリヌクレオチドが存在する場合に、該第一段階増幅試薬が増幅反応において該試料と反応し、第一増幅産物を含む第一反応生成物が生成される、工程;
該反応チャンバー内に残存する該第一反応生成物の有効部分を除き、該第一反応生成物を該廃棄物レザバに流体的に移動させる工程;
該第二反応物レザバ由来の該第二段階増幅試薬を反応チャンバーに流体的に移動させる工程であって、その結果、該第一反応生成物中に該第一増幅産物が存在するときにはいつでも、該第二段階増幅試薬が増幅反応において該第一反応生成物の有効部分と反応し、第二増幅産物が生成される、工程;及び、
該試料中に標的ポリヌクレオチドが存在するかどうかを決定するために該第二増幅産物を検出する工程
を包含する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2012−55320(P2012−55320A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−274877(P2011−274877)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【分割の表示】特願2007−539256(P2007−539256)の分割
【原出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(500065565)
【氏名又は名称原語表記】CEPHEID
【Fターム(参考)】