説明

開口部付き非耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法、及び、耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法

【課題】開口部付き非耐力壁を開口部付き耐力壁に設計施工容易に改修することができ、また、耐力壁を開口部付き耐力壁に設計施工容易に改修することができる改修方法等を提供する。
【解決手段】開口部1付き非耐力壁に対し、環状のフレーム4を開口部1を囲むと共に架構2,3に囲まれるように開口部1の周囲に配置し、該フレーム4と架構2,3とをそれらの間において斜材6で連結することで開口部1付きブレース型耐力壁にする。また、ブレース型耐力壁に対し、ブレースの長さ方向の中間部を所定の長さ範囲にわたって切除し、そこに環状のフレームを配置し、該フレームと前記ブレースの切断端部とを連結することでブレース型耐力壁とし、相前後してフレームに囲まれた内部に開口部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部付き非耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法、及び、耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の建物に対する耐震改修において、図5(イ)に示すような開口部51付き非耐力壁を開口部付き耐力壁に改修することや、図5(ロ)に示すようなブレース52,52が用いられた耐力壁を開口部付き耐力壁に改修することを求められることがあるが、架構53…,54…等の周辺部材への影響が大きく、改修のための設計が厄介であると共に、施工が大掛かりなものになってしまいやすいという問題がある。
【特許文献1】特開2007−9621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、開口部付き非耐力壁を開口部付き耐力壁に設計施工容易に改修することができ、また、耐力壁を開口部付き耐力壁に設計施工容易に改修することができる改修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、開口部付き非耐力壁に対し、環状のフレームを、開口部を囲むと共に架構に囲まれるように開口部の周囲に配置し、該フレームと架構とをそれらの間において斜材で連結することにより、開口部付きブレース型耐力壁にすることを特徴とする開口部付き非耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法によって解決される(第1発明)。
【0005】
この方法では、開口部付き非耐力壁を開口部付き耐力壁に改修することができるのはもちろん、
開口部付き非耐力壁を、環状のフレームと斜材とを用いて開口部付きブレース型耐力壁にするものであるから、架構との関係では斜材の端部が架構に連結されることによる耐力構造であり、そのため、架構等の周辺部材への影響が少なく、改修のため設計や施工を容易にすることができる。
【0006】
また、上記の課題は、ブレース型耐力壁に対し、ブレースの長さ方向の中間部を所定の長さ範囲にわたって切除し、そこに環状のフレームを配置し、該フレームと前記ブレースの切断端部とを連結することでブレース型耐力壁とし、相前後してフレームに囲まれた内部に開口部を設けることを特徴とする耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法によって解決される(第2発明)。
【0007】
この方法では、ブレース型耐力壁を開口部付き耐力壁に改修することができるのはもちろん、
既存のブレース型耐力壁のブレースに対する一部切除と、残されたブレースと環状フレームとの連結とを行えばよく、それにより、環状フレーム内のスペースを利用して開口部を形成することができると共に、架構等の周辺部材への影響が少なくないしはなくて、改修のため設計や施工を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上のとおりのものであるから、開口部付き非耐力壁を開口部付き耐力壁に設計施工容易に改修することができ、また、耐力壁を開口部付き耐力壁に設計施工容易に改修することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1及び図2に示す第1実施形態は、開口部付き非耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法についてのもので、図1(イ)は、既存物件の開口部1付きの非耐力壁を示す。2,2は架構の左右の鋼製柱、3,3は架構の上下の鋼製梁である。なお、下梁3は、基礎や土台であってもよい。また、開口部1は、腰高窓用のものであってもよいし、掃き出し窓用や出入り口ドア用のものであってもよい。
【0011】
この開口部1付き非耐力壁に対し、図1(ロ)に示すように、方形環状の鋼製ラーメンフレーム4を、開口部1を囲むと共に、架構2…,3…に囲まれるように開口部1の周囲に配置する。この配置状態において、環状フレーム4は、上下の梁3,3に対し、固定しない無連結状態のままにしておく。なお、本実施形態では、環状フレーム4を、位置決めのため、ボルト等の釣り具7で上梁3に対して仮の状態に取り付けて、吊り状態にしている。
【0012】
しかる後、図2(ハ)に示すように、環状フレーム4と架構2,3とを、それらの間において、帯状鋼板などからなるプルタイプの斜材6…でX状に連結し、図2(ニ)に示すように、釣り具7を外す。なお、斜材6…は、環状フレーム4を開口部1の周囲に配置する前に、予め、環状フレーム4の側又は架構2,3の側に取り付けておいてもよいし、図示するように、環状フレーム4を開口部1の周囲に配置した後に取り付けるようにしてもよい。また、上記の実施形態では、斜材6…が、引っ張り力を負担するプルタイプの斜材からなり、同じ傾斜方向を向いて延びる斜材が、同一直線上に配置されている場合を示したが、斜材は、引張り力と圧縮力の両方を負担するプッシュ・プルタイプのものからなっていてもよいし、また、同じ傾斜方向を向いて延びる斜材は、同一直線上に配置されていてもよいし、同一直線上の配置されていなくてもよい。こうして、図1(イ)に示す開口部1付きの非耐力壁が、図2(ニ)に示すように、開口部1付きのブレース型耐力壁に改修される。
【0013】
このように、上記の方法によれば、開口部1付き非耐力壁を開口部1付き耐力壁に改修することができ、しかも、開口部1付き非耐力壁を、環状フレーム4と斜材6…とを用いて開口部1付きブレース型耐力壁にするものであるから、架構2,3との関係では斜材6…の端部が架構2,3に連結されることによる耐力構造であり、そのため、架構2,3…等の周辺部材への影響が少なく、改修のため設計や施工を容易にすることができる。
【0014】
図3及び図4に示す第2実施形態は、耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法についてのもので、図3(イ)は、既存物件のX形配置のブレースによるブレース型耐力壁を示す。
【0015】
このブレース型耐力壁に対し、図3(ロ)に示すように、ブレース6,6の長さ方向の中間部を所定の長さ範囲にわたって切除した後、そこに、図4(ハ)に示すように、内部に開口部を形成することが可能な方形環状のラーメンフレーム4を配置する。なお、本実施形態においても、方形環状フレーム4を、位置決めのため、ボルト等の釣り具7で上梁3に対して仮の状態に取り付けて、吊り状態にしている。
【0016】
そして、環状フレーム4と、残されたブレース6a…の切断端部とをボルト等で連結し、釣り具7を外し、環状フレーム4で囲まれた内部に開口部1を形成すると、図4(ニ)に示すように、開口部1付きの耐力壁に改修される。
【0017】
なお、開口部1は、環状フレーム4に囲まれた内部に予め形成しておいてもよいし、環状フレーム4とブレース6a…とを連結した後に環状フレーム4に囲まれた内部に形成するようにしてもよい。
【0018】
このように、本方法によれば、ブレース型耐力壁を開口部付き耐力壁に改修することができ、しかも、既存のブレース型耐力壁のブレース6…に対する一部切除と、残されたブレース6a…と環状フレーム4との連結とを行えばよく、それにより、環状フレーム4内のスペースを利用して開口部を形成することができると共に、架構2,3…等の周辺部材への影響が少なくないしはなくて、改修のため設計や施工を容易にすることができる。
【0019】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の各実施形態では、ブレース(斜材)をX状に配置するようにした場合を示したが、第1発明では、斜材が斜め一方向にのみ向けられた耐力壁に改修するようにしてもよく、また、第2発明では、既存物件のブレースが斜め一方向にのみ向けられた耐力壁を改修の対象とし、ブレースが斜め一方向にのみ向けられた、あるいは、ブレースを追加してブレースがX状に配置された、開口部付き耐力壁に改修するようにしてもよい。
【0020】
また、第1,第2発明において、環状フレームは、額縁の下地として用いられてもよいし用いられなくてもよい。
【0021】
また、上記の各実施形態では、環状フレームが方形環状のものからなる場合を示したが、第1,第2発明では、円形など各種の環状形態をしてしてもよい。
【0022】
更に、第2発明では、既存物件の耐力壁においてブレースがX状に入れられている場合において、形成する開口部の位置、サイズ、形状などによっては、X形ブレースにおいて、一方のブレースの長さ方向の中間部のみを切除するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図(イ)及び図(ロ)は、図2と共に、第1発明の実施形態改修方法を順次に示す正面図である。
【図2】図(ハ)及び図(ニ)は、図1と共に、第1発明の実施形態改修方法を順次に示す正面図である。
【図3】図(イ)及び図(ロ)は、図4と共に、第2発明の実施形態改修方法を順次に示す正面図である。
【図4】図(ハ)及び図(ニ)は、図3と共に、第2発明の実施形態改修方法を順次に示す正面図である。
【図5】図(イ)及び図(ロ)は既存物件の壁を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…開口部
2,3…架構
4…環状フレーム
6…斜材(ブレース)
6a…残されたブレース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部付き非耐力壁に対し、環状のフレームを、開口部を囲むと共に架構に囲まれるように開口部の周囲に配置し、該フレームと架構とをそれらの間において斜材で連結することにより、開口部付きブレース型耐力壁にすることを特徴とする開口部付き非耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法。
【請求項2】
ブレース型耐力壁に対し、ブレースの長さ方向の中間部を所定の長さ範囲にわたって切除し、そこに環状のフレームを配置し、該フレームと前記ブレースの切断端部とを連結することでブレース型耐力壁とし、相前後してフレームに囲まれた内部に開口部を設けることを特徴とする耐力壁から開口部付き耐力壁への改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−197418(P2009−197418A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37923(P2008−37923)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】