説明

開口部装置の水切部材の保持構造

【課題】サッシ等の開口部装置の躯体の開口部への設置に際し、水切部材を保持するための保持部材の設置において、溶接作業を不要とすることができる新規な技術を提供する。
【解決手段】サッシ3などの開口部装置の下枠部材32に固定される水切部材40の保持構造において、水切部材40の下面側に取付られる保持部材60であって、水切部材40に固定される固定部材61と、固定部材61から延出されるアーム部材62と、を有する保持部材60を用い、アーム部材62がサッシ3の下枠部材32の側(枠部材側)に対して固定される構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部装置を開口部に設置するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルなどの建物の躯体の開口部に、ガラスサッシなどの窓や、ドアといった各種開口部装置を設ける形態について開示する文献が知られている(特許文献1参照。)。
この特許文献1では、コンクリート製の躯体に予め埋設された鉄筋に対し、サッシ枠側の固定具を溶接固定することで、サッシ枠を躯体の開口部に設置する構造について開示がされている。
【0003】
また、特許文献1には、水切部材(特許文献1において水切皿板)に保持部材(特許文献1において固定具)を介して鉄筋に対し溶接固定される形態が開示されている。この形態においては、保持部材によって水切部材が下側から保持されることとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−223073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水切部材を保持部材によって下側から保持する形態において、溶接作業を必要とする場合には、特に、躯体よりも室外側にある部位での溶接作業が困難となる。?体の室内側からの溶接作業になるため、特に、水切部材の出幅が大きい場合には、この作業が困難となる。
【0006】
また、保持部材の設置に関連する溶接作業に伴って、サッシなどの開口部装置に品質上の不具合が生じることも想定されるが、品質保証という観点で、サッシなどを供給するメーカー側と施工者側での責任の所在の切り分けが難しいという問題も生じる。このようなことからも、できる限り溶接作業が少なくされることが好ましい。
【0007】
そこで、本発明は、サッシ等の開口部装置の躯体の開口部への設置に際し、水切部材を保持するための保持部材の設置において、溶接作業を不要とすることができる新規な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1に記載のごとく、
開口部装置の枠部材に固定される水切部材の保持構造において、
前記水切部材の下面側に取付られる保持部材であって、
前記水切部材に固定される固定部材と、
前記固定部材から延出されるアーム部材と、を有する保持部材を用い、
前記アーム部材が前記枠部材側に対して固定される構造とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載のごとく、
前記アーム部材は、
前記枠部材、又は、前記枠部材に取付けられる部材に対して固定されることとする。
【0011】
また、請求項3に記載のごとく、
前記アーム部材における前記枠部材、又は、前記枠部材に取付けられる部材に対する固定位置は、調整可能に構成されることとしている。
【0012】
また、請求項4に記載のごとく、
前記アーム部材は、前記固定部材に対し角度調整可能に構成される、こととする。
【0013】
また、請求項5に記載のごとく、
前記アーム部材が固定される、前記枠部材に取付けられる部材は、
前記枠部材と、前記枠部材を支える躯体の間に介設される部材であって、
前記枠部材の荷重を支えるための部材である、
こととするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
即ち、請求項1に記載の発明においては、
開口部装置の躯体の開口部への設置に際し、水切部材を保持するための保持部材の設置について、溶接作業を不要とすることができ、溶接作業に伴う課題の解決が可能となる。また、枠部材側に対するアーム部材の固定や、水切部材に対する固定部材の固定を、枠部材を躯体に設置する前に予め行っておくことによれば、施工現場における保持部材の設置作業を省略することができ、施工時間を短縮することが可能となる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明においては、
枠部材とは別体の部材に固定する形態であれば、既存の開口部装置について特段の仕様を変更することなく適用が可能であり、容易に実施可能な構成が実現できる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明においては、
例えば、出幅の大きい水切部材が使用される場合と、出幅の小さい水切部材が使用される場合において、それぞれの固定部(固定部材を固定する部位)の位置が異なることがあっても、共通のアーム部材の仕様にて対応することが可能となる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明においては、
適宜アーム部材の角度を変更することによって、アーム部材を固定する対象となる部材に対するアーム部材の位置あわせを行うことが可能となる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明においては、
枠部材の荷重を支えるための部材を、アーム部材の固定箇所として有効利用することが可能であり、部品点数の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用される開口部装置の設置例について示す図。
【図2】保持部材にて水切部材を支持する構成について示す図。
【図3】(a)は保持部材と水切部材の構成について示す図。(b)水切部材に対する保持部材の取付箇所の詳細について示す図。
【図4】保持部材の取付について説明する図。
【図5】(a)は出幅の大きい水切部材が使用される場合について示す図。(b)は出幅の小さい水切部材が使用される場合について示す図。
【図6】固定された状態の保持部材について示す平面図。
【図7】下枠部材の躯体への設置が別形態である場合における本発明の適用について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、図22乃至図4の実施形態に参照されるように、
サッシ3などの開口部装置の枠部材としての下枠部材32に固定される水切部材40の保持構造において、
水切部材40の下面側に取付られる保持部材60であって、
水切部材40に固定される固定部材61と、
固定部材61から延出されるアーム部材62と、を有する保持部材60を用い、
アーム部材62がサッシ3の下枠部材32の側(枠部材側)に対して固定される構造とするものである。
【0022】
このような保持構造とすることにより、開口部装置の躯体の開口部への設置に際し、水切部材を保持するための保持部材の設置について溶接作業を不要とすることができ、溶接作業に伴う課題の解決が可能となる。また、下枠部材32側に対するアーム部材62の固定や、水切部材40に対する固定部材61の固定を、下枠部材32を躯体1に設置する前に予め行っておくことによれば、施工現場における保持部材60の設置作業を省略することができ、施工時間を短縮することが可能となる。
【0023】
以下、具体的に説明すると、図1に示すごとく、躯体1の開口部2に、開口部装置としてのサッシ3が設置されるものであり、このサッシ3は、上枠部材31a、縦枠部材31b・31c、及び、下枠部材32から四方枠を有して構成される。また、下枠部材32には水切部材40が取付けられおり、この水切部材40が長手方向Nの複数箇所において保持部材60によって下側から保持されることとなっている。
【0024】
また、図2は、図1のA−A線断面について示す図である。
この図2に示す実施例において、サッシ3の下枠部材32には、その室外側の部位において垂れ下がる取付片部35が設けられている。この取付片部35に対し、水切部材40の室内側の部位に形成される取付片部45が図示せぬ固定具によって固定される。このようにして、水切部材40の室内側の部位は、下枠部材32の取付片部35によって保持される。一方、水切部材40の室外側の部位は、以下に説明する保持部材60によって保持される。
【0025】
また、図3(a)(b)に示すごとく、水切部材40の裏面41には、略L字状断面の突条部42a・42bが見込方向Xにおいて対向するように設けられ、水切部材40の裏面41と突条部42a・42bの間には、それぞれ、見込方向Xにおいて対向する差込溝43a・43bが形成されている。そして、この突条部42a・42bと差込溝43a・43bによって、保持部材60の固定部材61を固定するための固定部44が構成されることとなっている。
【0026】
また、図3(a)(b)及び図4に示すごとく、保持部材60は、水切部材40の裏側に形成された固定部44に固定される固定部材61と、水切部材40に固定部材61を取付けた状態において、固定部材61から見込方向Xに延設されるアーム部材62を有して構成される。
【0027】
また、図3(a)(b)及び図4に示すごとく、固定部材61は、水切部材40と略水平な面を形成する板面部61mと、板面部61mから下方に垂設される垂片部61nを有して構成されており、例えば、板金加工された金具にて構成される。また、固定部材61の板面部61mは、水切部材40の差込溝43a・43bに差し込まれるようにして固定される。
【0028】
具体的には、図4に示すごとく、平面視矩形状の板面部61mの長手方向Yの端部を差込部61a・61bとし、板面部61mの長手方向Yを水切部材40長手方向Nと平行にした状態として、水切部材40の突条部42a・42bの間に板面部61mを配置する。その後、板面部61mを回転させることで、差込部61a・61bを突条部42a・42bの裏側にある差込溝43a・43bに挿入させることで固定を行う。また、板面部61mの角度を元の位置に戻すことで、水切部材40から固定部材61を取り外すことができる。
【0029】
また、図3(a)(b)及び図4に示すごとく、以上のように、水切部材40の固定部44に対する固定部材61の取付け、取外しを可能とすることで、水切部材40の長手方向Nの任意の位置において保持部材60(固定部材61)を固定することが可能となり、特に固定位置を厳密に規定する必要がなく、施工管理が容易な構成とすることができる。
【0030】
また、図3(a)(b)及び図4に示すごとく、固定部材61には、水切部材40の固定部44に取付けられた状態で突条部42bの外側下面42cに接する接触辺部61cが設けられている。これにより、固定部材61を固定部44に取付けた状態では、差込部61aと接触辺部61cの間に突条部42aが挟持され、取付後における固定部材61の位置ズレを防止することができる。
【0031】
また、図3(a)及び図4に示すごとく、固定部材61には、水切部材40に取付けた状態で下方に垂れ下がる垂片部61nが設けられており、この垂片部61nに、アーム部材62の室外側の端部62aが固定具53により連結固定される。このアーム部材62は、例えば、板金加工された金具にて構成されるものであり、本実施例では、長尺の板片部材により構成されている。
【0032】
また、図3(a)及び図4に示すごとく、アーム部材62の室内側の端部62bには、アーム部材62の長手方向に長い長孔62cが設けられており、この長孔62cを通じて固定具54を留め付けることにより、サッシ3の下枠部材32の側に対してアーム部材62が固定される。
【0033】
また、図5(a)(b)に示すごとく、アーム部材62において、長孔62cを設ける構成とすることにより、例えば、出幅L1の大きい水切部材40Aが使用される場合と、出幅L2の小さい水切部材40Bが使用される場合において、それぞれの固定部44A・44B(固定部材61を固定する部位)の位置が異なることがあっても、共通のアーム部材62の仕様にて対応することが可能となる。
【0034】
以上のようにして、図5(a)(b)アーム部材62における枠側固定部材10(或いは、別実施形態の場合における下枠部材32など)に対する固定位置は、調整可能に構成されることとしている。なお、長孔については、アーム部材62が固定される対象となる部材(枠側固定部材10、或いは、別実施形態の場合における下枠部材32など)の側に設けられることとしてもよい。また、長孔の形態とする他、アーム部材62の長手方向に複数の丸孔を配列する形態も考えられる。
【0035】
また、図6に示すごとく、水切部材40の長手方向Nにおける保持部材60(固定部材61)と枠側固定部材10の相対位置の関係によっては、アーム部材62が撓む状況が生じることが想定される。このような状況においても、図5(a)(b)、アーム部材62に長孔62cが設けられることで、長孔62cの任意の位置において固定具54を締結できるため、アーム部材62を撓ませた状態での固定が可能となる。また、保持部材60の固定部材61が一旦固定されると、水切部材40に対する固定部材61の長手方向Nの移動が困難となる場合も想定されるが、このような場合においても、アーム部材62を撓ませた状態で固定ができるため、固定部材61の長手方向Nの位置調整を必要とせず、施工時間の短縮を図ることができる。また、換言すれば、水切部材40に対する保持部材60の位置決めを厳密に行う必要を無くすことができる。
【0036】
また、図5(a)(b)に示すごとく、アーム部材62は、固定部材61に対し角度調整可能に構成されることが好ましい。これにより、適宜アーム部材62の角度を変更することによって、長孔62cの位置を調整することが可能となり、アーム部材62を固定する対象となる部材である枠側固定部材10に対するアーム部材62の端部62bの位置あわせを行うことが可能となる。なお、本実施形態では、図3(a)に示す固定具53を緩めることによってアーム部材62の角度調整が可能となる。
【0037】
また、図2に示すごとく、本実施例では、サッシ3の下枠部材32の下部には、枠側固定部材10が固定され、枠側固定部材10と躯体1の設置面1Aの間に設置用固定部材20が介設される。これにより、下枠部材32が、枠側固定部材10及び設置用固定部材20を介して躯体1に対して載置される構成となっている。また、設置用固定部材20は、固定具72によって躯体1に対して留め付けられる固定部材50により、躯体1に対して固定されるようになっている。なお、下枠部材32と躯体(設置面1A)の間には、下枠部材32の固定完了後において、モルタル80などが充填される。
【0038】
また、図3(a)に示すごとく、本実施例では、枠側固定部材10に対し、アーム部材62が固定具54によって固定されることとしている。これにより、溶接作業をすることなく、アーム部材62の端部62bを枠側固定部材10に固定することが可能となり、アーム部材62、及び、固定部材61を介して、水切部材40を枠側固定部材10にて保持することが可能となる。
【0039】
なお、図2に示すごとく、枠側固定部材10に対するアーム部材62の固定や、水切部材40に対する固定部材61の固定は、下枠部材32を躯体1に設置する前に予め行っておくことができる。これによれば、施工現場における保持部材60の設置作業を省略することができ、施工時間を短縮することが可能となる。このことは、特に、図5(a)に示すごとく、出幅L1の大きい水切部材40Aが使用される場合においては、躯体から室外側に大きく離れた位置において、保持部材60の固定部材61を水切部材40Aに固定する作業が必要となり、困難な作業が想定されるため、予め開口部に開口部装置を配置する前や、さらには、メーカーの工場などで予め取付けておくことが好ましいことになる。また、このように事前に保持部材を水切部材40や枠側固定部材10に固定する場合においても、本実施例で説明する構成によれば、溶接作業を不要とすることができる。
【0040】
また、図2及び図3(a)に示すごとく、本実施例では、枠側固定部材10に対し、アーム部材62の端部62bを固定具54にて連結固定することとしたが、設置用固定部材20に対しアーム部材62の端部62bを連結固定する形態とすることや、サッシ3の下枠部材32に対して直接アーム部材62を取付ける形態なども考えられる。
【0041】
つまり、図2及び図3(a)に示すアーム部材62の室内側の端部62bを固定する対象は、特に限定されるものではない。
【0042】
また、図2及び図3(a)に示すごとく、本実施例では、保持部材60のアーム部材62は、下枠部材32(枠部材)に取付けられる部材としての枠側固定部材10に対して固定されることとしている。このように、サッシ3の下枠部材32とは別体の部材である枠側固定部材10に固定する形態であれば、既存のサッシ3について特段の仕様を変更することなく適用が可能であり、容易に実施可能な構成が実現できる。
【0043】
また、本実施例では、枠側固定部材10、及び、設置用固定部材20を介して下枠部材32を設置面1Aに支持させる構成において、アーム部材62が固定される対象となる、下枠部材32に取付けられる部材(枠側固定部材10)は、下枠部材32と、下枠部材32を支える躯体1(設置面1A)の間に介設される部材であって、下枠部材32の荷重を支えるための部材であることとするものである。
【0044】
これにより、下枠部材32の荷重を支えるための部材である枠側固定部材10を、アーム部材62の固定箇所として有効利用することが可能であり、部品点数の増加を抑えることができる。
【0045】
さらに、枠側固定部材10とは別に、アーム部材62を下枠部材32に連結固定するためのステーとして機能する部材を利用することや、アーム部材62の端部に下枠部材32と連結するためのアタッチメントを設ける形態なども考えられる。
【0046】
また、図7に示す実施形態のように、下枠部材32の枠側固定部材10Aが、予め躯体1に埋設される鉄筋81に対して溶接82にて固定される形態も考えられる。つまり、図2に示す枠側固定部材10、設置用固定部材20、固定部材50が用いられない形態である。このような形態においても、上述した構成の保持部材60を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、RC造のビル建物などにおいて、躯体の開口部にサッシなどの開口部装置を設置する際の技術として、幅広く適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 躯体
1A 設置面
3 サッシ
10 枠側固定部材
20 設置用固定部材
32 下枠部材
35 取付片部
40 水切部材
41 裏面
42a 突条部
42b 突条部
42c 外側下面
43a 差込溝
43b 差込溝
44 固定部
45 取付片部
54 固定具
60 保持部材
61 固定部材
61a 差込部
61b 差込部
61c 接触辺部
61d 垂片部
62 アーム部材




【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部装置の枠部材に固定される水切部材の保持構造において、
前記水切部材の下面側に取付られる保持部材であって、
前記水切部材に固定される固定部材と、
前記固定部材から延出されるアーム部材と、を有する保持部材を用い、
前記アーム部材が前記枠部材側に対して固定される、
水切部材の保持構造。
【請求項2】
前記アーム部材は、
前記枠部材、又は、前記枠部材に取付けられる部材に対して固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の水切部材の保持構造。
【請求項3】
前記アーム部材における前記枠部材、又は、前記枠部材に取付けられる部材に対する固定位置は、調整可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水切部材の保持構造。
【請求項4】
前記アーム部材は、前記固定部材に対し角度調整可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の水切部材の保持構造。
【請求項5】
前記アーム部材が固定される、前記枠部材に取付けられる部材は、
前記枠部材と、前記枠部材を支える躯体の間に介設される部材であって、
前記枠部材の荷重を支えるための部材である、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の水切部材の保持構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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