説明

開封時にリズムを奏でる包装用箱

【課題】開封時にジッパを破断する際に生じる音を利用して、商品と何らかの関連のあるリズムを奏でるよう工夫することで、魅力ある商品を提供し、また同時に販売促進等も達成する。
【解決手段】ジッパを構成する破断線10は、箱の壁部を貫通し断続する複数の切目部11と、各切目部の間に位置する間隔部12とからなる。破断線に沿う各切目部11の延在長の相対比率は、予め採用したフレーズのリズムを交互に現れる無音部と有音部で表現した場合の、各無音部の時間長の相対比率に等しく構成する。破断線に沿う各間隔部12の延在長の相対比率は、上記リズム中の各有音部の強弱の相対比率に等しく構成する。この包装用箱によれば、開封のためジッパを破断するとき、上記フレーズのリズムに似せた音が再現される。開封時にフレーズが奏でられる包装用箱は魅力的で、このフレーズを商品と関連したものとすれば、より一層の販売促進効果が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菓子等を収容して販売される包装用箱に関する。
【背景技術】
【0002】
菓子等を収容して販売される包装用箱は、多種多様のものが知られており、ジッパ部を破断して開封されるものが多く知られている(例えば、特許文献1)。
一方、例えば特許文献2に示されるような、動画を生じさせることで商品の販売促進を図った包装用箱も提案されている。
しかしながら、ジッパを破断する際の開封音(破断音)を利用してリズムを奏で、これにより販売促進等を達成することを意図した先行技術を出願人は知らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−1079号公報
【特許文献2】特開2010−13119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、開封時にジッパを破断する際に生じる音を利用して、商品と何らかの関連のあるリズムを奏でるよう工夫することで、魅力ある商品を提供し、また同時に販売促進等も達成せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の包装用箱は、破断線を破断することで所定領域を開封するものである。破断線は、「箱の壁部を貫通し断続する複数の切目部」と「各切目部の間に位置する間隔部」と、からなる。
破断線に沿う各切目部の延在長の相対比率は、予め採用したフレーズのリズムを交互に現れる無音部と有音部で表現した場合の、各無音部の時間長の相対比率に等しく構成している。
破断線に沿う各間隔部の延在長の相対比率は、上記リズム中の各有音部の強弱(強さ)の相対比率に等しく構成している。
【0006】
包装用箱に形成する破断線は、交互に現れる「切目部」と「間隔部」からなるが、当該破断線に沿う両者の延在長は、次のステップ(1)〜(3)からなる設計方法で設計される。
≪ステップ(1)≫
予め採用したフレーズのリズムを、交互に現れる「所定時間長の無音部」と「所定強さの有音部」で表現する。
≪ステップ(2)≫
破断線に沿う各切目部の延在長の相対比率を、各無音部の時間長の相対比率に対応させて設定する。
≪ステップ(3)≫
破断線に沿う各間隔部の延在長の相対比率を、各有音部の強弱(強さ)に対応させて設定する。
【0007】
ステップ(1)において、具体的にどのような手法で、リズムを無音部と有音部で表現するかは自由であるが、例えば次のように、音符と休符からなる音楽記号を利用することが考えられる。
まず、予め採用したフレーズのリズムを、音符と休符からなる音楽記号の並びで表現する。そして、休符の長さについては、上記「所定時間長の無音部」における時間長を決定する。この場合でも、上記「所定強さの有音部」における強さは任意に決定してもよい。
音符と音符が連続して2つ並ぶ場合には、まず、当該2つの音符に対応する有音部の間に、擬似的な任意の時間長の無音部を設定する。そして、当該任意の時間長を、他の無音部の時間長に加算する。これは、必ず交互に間隔部と切目部とが現れるミシン目に、有音部と無音部とを対応させるためである。
【発明の効果】
【0008】
交互に現れる切目部と間隔部からなる破断線に沿って破断が進行するとき、間隔部が破れることで音が発生し、切目部では、もともと破れているので音は発生しない。
したがって、上記構成を備えた本発明の包装用箱によれば、開封のためジッパを破断するとき、「間隔部の延在長に応じた強さの有音部」と「切目部の延在長に応じた時間長の無音部」とが繰り返され、その結果、上記フレーズのリズムに似せた音が再現される。
開封時にフレーズのリズムが奏でられる包装用箱はそれだけで魅力的であり、また、このフレーズを商品と関連したものとすることで、より一層の販売促進効果が期待できる。
ただし、リズムを奏でる包装用箱であることを意識して聞かないと、当該フレーズを認識し難いこともあるので、包装用箱の表面に当該フレーズを表記するのが好ましい。
【0009】
また、包装用箱の破断線を構成する切目部および間隔部の実際の延在長を決定するに当たっては、上記ステップ(1)〜(3)で構成される設計方向が便利であるが、音楽記号は本来的にリズムを表現するものであるから、特に、ステップ(1)で音楽記号を介して設計するのが好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装用箱を説明する図。
【図2】図1の包装用箱において、ジッパの破断部を構成する切目部と間隔部の延在長を決定する手順を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る包装用箱を示す斜視図である。この包装用箱は、摘み部aを摘んで、ジッパ部Aを破断線10に沿って破断して開封するもので、そのような構成自体は、従来から多々知られたものである。
【0012】
なお、本件明細書において「ジッパ部」とは、破断線を破断することで所定領域を開封する構造部を意味している。図示した例では、「ジッパ部」は平行な2つの破断線10を有するが、必ずしもその必要はない。
【0013】
≪基本的な概念≫
本発明では、ジッパ部Aを構成する破断線10の具体的な構成に特徴があり、それにより、破断時に一定のリズムを奏でるように構成した点に特徴がある。図1では、ジッパ部Aを部分的に拡大して示しており、本発明の特徴を説明するために、破断線10を構成する「切目部11」と「間隔部12」の寸法を正確に描いている。
なお、拡大図示部において、下側の破断線10については、図示を簡略化するために単純な破線で描いているが、実際には、上側の破断線10と上下対称となる。
【0014】
破断線10は、交互に繰り返す複数の「切目部11」と複数の「間隔部12」とからなる、いわゆるミシン目で構成される。すなわち、「切目部11」は、箱の壁部を貫通してカットされた部分で、「間隔部12」は、「切目部11」と「切目部11」の間に位置する、貫通カットがなされていない部分である。
【0015】
詳しくは後述するが、予め採用したフレーズのリズムを有音部と無音部で表したとき、有音部の強弱を「間隔部12の延在長」に対応させ、無音部の時間長を「切目部11の延在長さ」に対応させる。
すなわち、破断線10に沿って破断が進行するとき、「間隔部12」が破れることでその延在長に応じた強さの音が発生し、「切目部11」では、もともと破れているので音は発生しない。無音部の時間長が「切目部11」の延在長に対応する。
その結果、破断線10に沿う「切目部11」および「間隔部12」の延在長は不規則なものとなり、不規則に生じる破断音をもってリズムを奏でる。
【0016】
上の説明から分かるように、「間隔部12」は、それが破れる時に音が発生すればよいので、壁面を貫通していなければ足り、ハーフカットであってもよい。一方、「切目部11」では音を発生させてはならないので、貫通したカット線であることが必要となる。ただし、「間隔部12」と比べて、出る音が非常に小さいのであれば、「切目部11」もハーフカットにすることも可能である(すなわち、ハーフカットの残存した部分が非常に薄い場合には、そこが破断するときの音は小さい)。
【0017】
本発明の本質的特徴は、予め採用したフレーズのリズムを交互に現れる無音部と有音部で表現し、各無音部の時間長を各切目部11の延在長に対応させ、各有音部の強さ(強弱)を各間隔部12の延在長に対応させている点にある。そして、このような切目部11と間隔部12からなる破断線を破るときに、フレーズに似せたビリビリ音でリズムを奏でている。
【0018】
そのような包装用箱を製造するに当たって、破断線10に沿う各切目部11と各間隔部12の延在長(寸法)を設計する必要がある。
その設計方法は、フレーズのリズムを、交互に現れる「所定時間長の無音部」と「所定強さの有音部」で表現し、無音部の時間長を切目部11の延在長に当てはめ、有音部の強弱を間隔部11の延在長に当てはめるものであれば、適宜の方法が採用可能である。
次に、その一例として、音楽記号を利用する方法を説明する。音楽記号は本来的にリズムを表現するものであるから、これを利用するのが好都合である。
【0019】
≪音楽符号を用いた破断線の設計方法≫
図1、2に示した具体例では、任意に選択した『ヒップホップ』というフレーズを例として、ジッパAを破断する際に所定のリズムを奏でるよう、破断線10に沿う「切目部11」および「間隔部12」の延在長を設定している。具体的な寸法値は、図1に示した通りであるが、これを決定する手順は次の通り、ステップ(1)〜(3)で構成される。
【0020】
まず、ステップ(1)において、予め採用したフレーズのリズムを、交互に現れる「所定時間長の無音部」と「所定強さの有音部」で表現する。ステップ(1)は、図2(a)〜(e)に対応している。
【0021】
なお、切目部11の「延在長」というとき、これは、図1中で破断方向を示す矢印Dに平行な部分のみの延在長を意味する。その間において、矢印Dに平行な長さ部分が、間隔部12の「延在長」を意味する。
また、説明を簡単にするために、参照符号を次のように定める。図1において、間隔部12は4つ存在するが、互いに区別するために、「間隔部ヒ」、「間隔部プ1」、「間隔部ホ」、「間隔部プ2」とする。切目部11は3つ存在するが、互いに区別するために、「切目部ッ1」、「切目部ギ」、「間隔部ッ2」とする。
これは、『ヒップホップ』の各文字との対応関係で命名したものである。「切目部ギ」は、後に説明するように擬似的なものであるから、「切目部ギ」とした。
【0022】
(ア)
まず、『ヒップホップ』にリズムをつけて音楽記号で表現する。実際の音楽記号の並びは作り手によって異なるかも知れないが、音符と休符からなる音楽記号で書き表されていれば足りる。ここでは、図2(a)の音楽記号に沿って説明する。
【0023】
(イ)
『ヒップホップ』は6文字の言葉であるが、これと各音楽記号との対応は、図2(b)に示したように、「音符」「休符」「音符」「音符」「休符」「音符」の順番となる。
【0024】
(ウ)
まず、各「休符」に対応する「切目部11」の長さを決定する。文字「ツ」が2つ存在するが、最初の「ツ」が8分休符、2番目の「ツ」が付点8分休符で表されている。したがって、最初の「ツ」に対応する「切目部ッ1」の長さを6mmと仮決定すれば、2番目の「ツ」に対応する「切目部ッ2」の長さは、(6×1.5=)9mmと仮決定される。
なお、「切目部ッ1」を6mmとしたのは任意に選択したものであって、5mmとする場合もある。その場合、「切目部ッ2」は(5×1.5=)7.5mmとなる。
【0025】
(エ)
ここで、第3文字と第4文字の--プホ--の部分で、「音符」「音符」と音符が2つ連続している。これをそのまま「間隔部」および「切目部」の並びに対応させようとすると、「音符」「音符」の部分では、「間隔部」「間隔部」と間隔部を2つ連続させることとなるが、実際のミシン目でそれはあり得ない(現実のミシン目では、「間隔部」と「切目部」は、必ず1個づつ交互に繰り返す)。
そこで、ミシン目に対応させるため、現実には無音状態が存在しない「プ」と「ホ」の間に、6mmの切目部(切目部ギ)を仮決定する(この6mmも任意に設定したもので、5mmであってもよい)。そして、これとのバランスをとるため、既に定めた2つの切目部の長さに対して6mmをプラスする。すなわち、「切目部ッ1」に6mmを加えて12mmとし、「切目部ッ2」に6mmを加えて15mmとする。図2(c)中の(+6)の表示は、このことを意味している。
【0026】
まとめると、図2(c)において、「切目部ッ1」、「切目部ギ」、「切目部ッ2」の各延在長は、順に12、6、15(mm)となる。これも未だ、仮決定の段階である。
なお、当然のことながら、音楽記号で表現したときに、音符と音符が連続して現れることがない場合には、この(エ)で説明した擬似的な「切目部ギ」を挿入する行程は省略される。
【0027】
(オ)
次に、各「音符」に対応する「間隔部12」の長さを決定する。「間隔部12」の長さは、有音部における音の強弱に対応している。図2(a)においては、第1文字「ヒ」、第3文字「プ」、第4文字「ホ」、および第6文字「プ」を、すべて8部音符で表している。
したがって、図2(d)において、「間隔部ヒ」、「間隔部プ1」、「間隔部ホ」、および「間隔部プ2」を、すべて4mmとする。これも未だ仮決定の段階である。
なお、4mmという数値は任意に選択したものであって、5mmとしてもよい。
【0028】
上の(ア)〜(オ)で、各切目部11および各間隔部12の延在長が仮決定された。これにより、一応、フレーズ『ヒップホップ』のリズムが完成するが、実際に試作品を作って破断音を聞き、より自然に、あるいは制作者の好みに近づけるために、各延在長を微調整することも可能である。破断音が実際にどのように聞こえるのかは、非常に感覚的なものだから、このような微調整が必要となる場合もある。
図2(c)において≪16≫と表示しているのは、このような微調整の結果である。図2(d)の≪3≫、≪3≫も同じである。
【0029】
図2(e)は、最終的に決定された各延在長を示している(アンダーラインは切目部であることを意味している)。これらが、図1中の具体的寸法となっている。
ここでは、微調整を行って最終寸法を決定しているが、微調整を行わずに、上で仮決定された延在長を、そのままで最終的な寸法とすることも、当然にあり得る。
【0030】
なお、上の説明では、特に、無音部の時間長に対応する切目部11の延在長を、休符の長さを基に設定している点に特徴がある。有音部の強弱については、音符の長さとは無関係に、間隔部12の延在長を仮決定して、最終的に微調整するというやり方でもよい。
【0031】
図2(a)〜(e)の行程により、予め採用したフレーズのリズムを、交互に現れる「所定時間長の無音部」と「所定強さの有音部」で表現するステップ(1)が完了する。すなわち、図2(e)中の各数値は、有音部の強弱(アンダーラインのない数字)、および無音部の時間長(アンダーラインが付された数字)の相対比率を表している。
【0032】
これらの数値が決まった後、破断線10に沿う各切目部11の延在長の相対比率を、アンダーラインが付された各数値(無音部の時間長)の相対比率に対応させる(ステップ2)。
さらに、破断線10に沿う各間隔部11の延在長の相対比率を、アンダーラインのない各数値(有音部の強弱)に対応させる(ステップ3)。
これによって、図1に示したように、実際の包装用箱における「切目部11」および「間隔部12」の寸法が決まる。
【0033】
≪他の例≫
図2で説明した例では、音楽記号を取り入れて、それに基づいて、ミシン目(破断線)を構成する「切目部11」と「間隔部12」の延在長を決定していた。しかしこれは、音楽記号を1つのツールとしたに過ぎず、単なる一例である。
1つのフレーズのリズムを「有音部」と「無音部」として表現し、「無音部」の時間長を「切目部11」の延在長で、「有音部」の強弱を「間隔部12」の延在長で、それぞれ表すことができれば、他のどのような方法であってもよい。
例えば、頭でリズムをイメージしながら、適当に各延在長を定め、試作と変更の繰り返しで、最終的な寸法を決定することも考えられる。
【0034】
なお、リズムを奏でる包装用箱であることを意識して聞かないと、当該フレーズを認識し難いこともあるので、包装用箱の表面に当該フレーズを表記するのが好ましい。
また、音質を変える要素として、箱体の「材質」や「容量」があるので、これらも加味して、実際の延在長を決定することが考えられる。
【符号の説明】
【0035】
10 破断線
11 切目部
12 間隔部
A ジッパ部
a 摘み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断線(10)を破断することで所定領域を開封する包装用箱であって、
上記破断線(10)は、箱の壁部を貫通し断続する複数の切目部(11)と、各切目部の間に位置する間隔部(12)と、からなり、
破断線(10)に沿う各切目部(11)の延在長の相対比率は、予め採用したフレーズのリズムを交互に現れる無音部と有音部で表現した場合の、各無音部の時間長の相対比率に等しく構成し、
破断線(10)に沿う各間隔部(12)の延在長の相対比率は、上記リズム中の各有音部の強弱の相対比率に等しく構成したことを特徴とする、包装用箱。
【請求項2】
包装用箱の表面に上記フレーズが表示された、請求項1記載の包装用箱。
【請求項3】
破断線(10)を破断することで所定領域を開封する包装用箱であって、上記破断線(10)は、箱の壁部を貫通し断続する複数の切目部(11)と、各切目部の間に位置する間隔部(12)と、から構成される包装用箱を製造するに際して、
予め採用したフレーズのリズムを、交互に現れる「所定時間長の無音部」と「所定強さの有音部」で表現するステップ(1)と、
破断線(10)に沿う各切目部(11)の延在長の相対比率を、各無音部の時間長の相対比率に対応させて設定するステップ(2)と、
破断線(10)に沿う各間隔部(11)の延在長の相対比率を、各有音部の強弱に対応させて設定するステップ(3)と、
を含む、破断線設計方法。
【請求項4】
上記ステップ(1)において、
上記予め採用したフレーズのリズムを、音符と休符からなる音楽記号の並びで表現し、
休符の長さから、上記「所定時間長の無音部」における時間長を決定する、請求項3記載の破断線設計方法。
【請求項5】
上記ステップ(1)において、
上記音楽記号の並びが連続する2つの音符を含む場合に、
当該2つの音符に対応する有音部の間に、任意の時間長の無音部を設定し、
当該任意の時間長を、他の無音部の時間長に加算する、請求項4記載の破断線設計方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−126413(P2012−126413A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278265(P2010−278265)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】