説明

開封機構付きキャップ及びこれを取り付けたボトル容器

【課題】
開封動作によってシール部材の一ヵ所を切り残す構造のキャップ。
【解決手段】
切り刃付きシール開封用の円筒体を備えたキャップにおいて、切り刃は2枚設けられ、2枚の切り刃による開封距離が異なる構成とし、開封動作後シールの切り残し部が一ヵ所残存するシール開封機構付きキャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封手段を備えるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
未使用状態では注出孔を封止状態に保ち、使用開始時に注出孔に設けられたシールなどを開封して使用するキャップ構造を備えた容器が数多く提案されている。また、未使用状態で不用意に開封できないように不正開封防止機構を伴っているキャップ構造が多い。
例えば、特許文献1(特開2001−19019号公報)、特許文献2(特開平11−349025号公報)、特許文献3(特許第3024089号公報)等がある。
【0003】
これらの従来例は、破れたシールが容器内落下することや切り残ることに対する配慮は特になされていない。
本出願人が先に提案した先行文献3に開示された開封構造は、外蓋110を設けた外装キャップ109に設けた斜めに切り口を形成したガイド筒120の先端によってシール108を押し破る形態であるので、シール開封作業時に外装キャップを取り外す必要が無く、雑菌の混入や手指の汚れの危険が無く、使用開始後も容器に密閉性を保つことができるとするものである。図11、図12、図13、図14に特許文献3開示される先行発明を紹介する。図11は容器の全体概略図を示し、図12は未使用状態の頭部断面図、図13は環状帯部を取り除いた状態の断面図、図14は使用状態図を示している。
この従来例は、容器101に化粧液を注入し、口102に上記中栓108を被冠、固定して容器101を密封し、さらに上述の如く外装キャップ109を被冠、固定する。この状態で需要者の手にわたるまで保管される。そして需要者がこの化粧液を使用する場合、上記環状帯部108fの一端部108gを引っ張ると、図13に示す如く、環状帯部108fが中栓108の外周壁108aの下端から切り離れ、環状帯部108fが剥がれる。そこで図14に示す如く、外装キャップ109を上から押圧すると、外装キャップ109が下方にずれて本体キャップ110の外周壁110cが中栓108の外周壁108a外周及び容器101の口102の環状突部105の外周をすべり、本体キャップ110の上面板110bの下面が中栓108の外周壁108aと内周壁108bの上端に当たる。
その際この本体キャップ110のガイド筒112が中栓108の内周壁108bの内側を下降し、ガイド筒112の最下端箇所112bと垂直端縁112cにより形成された尖端部が中栓108の遮蔽板108cの肉薄の外周縁を突き差し、ガイド筒112の下降に従ってガイド筒112の傾斜した下端縁に沿って次第に切り込みがひろがっていく。そして図14に示す如く、遮蔽板108cは内周壁108bから切り取られる。またその際外装キャップ109の本体キャップ110の外周壁110cの内周環状突部110dが容器101の外周壁103の環状突部105の下の下部環状凹部107に嵌まり、外装キャップ109は固定される。
これにより容器101の口102の中栓108は開く。そして容器101の中の化粧液を取り出すには外装キャップ109の外蓋111を蝶番111bを中心に回して開ける。これにより本体キャップ110の上面板110bの小孔110aは開き、容器101を傾けると化粧液はガイド筒112を通って小孔110aから注出する。そして再び外蓋111を本体キャップ110に被冠すると、外蓋111の突起111aが本体キャップ110の小孔110aに嵌入し、容器101は密閉される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−19019号公報
【特許文献2】特開平11−349025号公報
【特許文献3】特許第3024089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、開封動作によってシール部材の一カ所を切り残す構造のキャップを提案する。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2枚の刃を対向配置した円筒状に切り刃を用いてシール部材を切開して開封するものであって、一方の切り刃による切開軌跡と他方の切り刃による切開軌跡の距離に差を設け、切り残し部を設けることにより、開封後のシール部材を確実に固定しようとするものである。
【0007】
本発明の主な解決手段は次のとおりである。
(1)切り刃付きシール開封用の円筒体を備えたキャップにおいて、切り刃は2枚設けられ、2枚の切り刃による開封距離が異なる構成とし、開封動作後シールの切り残し部が一カ所残存することを特徴とするシール開封機構付きキャップ。
(2)2枚の切り刃による開封距離が異なる構成が、円筒端に非点対称及び/又は切り刃先端の高さ異ならしめたことを特徴とする(1)記載のシール開封機構付きキャップ。
(3)注出孔を塞ぐ封止膜に対して、筒先端に2枚の突出刃を非点対称に配置した注出孔内を進退可能な円筒体を天井面に設けたキャップ本体を有することを特徴とするキャップ。
(4)封止膜を設けた内キャップと内キャップに螺合するキャップ本体とから構成され、キャップ本体を正回転することにより封止膜を破断する切り刃を2つ備えたキャップであって、該2つの切り刃は円筒体の先端に非点対称に対抗して配置され、該円筒体の軸を中心とし一方の切り刃の先端を0°とする円周方向の位置関係及び破断回転の関係を次ぎのように設定することにより、破断操作後に連結部が1カ所形成された封止膜の開封状態が形成されることを特徴とするキャップ。
一方の切り刃Aの位置=0°
他方の切り刃Bの位置θb>180°
一方の切り刃Aの破断回転角度θcut<θb
一方の切り刃Aの破断回転角度θcut+θb>360°
(5)封止膜を設けた内キャップと内キャップに螺合するキャップ本体とから構成され、キャップ本体を正回転することにより封止膜を破断する切り刃を2つ備えたキャップであって、
内キャップは、外周に雄ネジが設けられた円筒状であって、内側に封止膜となる底部を形成した短径の有底の円筒体からなる注出孔が設けられており、
キャップ本体は、前記内キャップの雄ネジに螺合する雌ネジが形成された内径を有する筒状蓋体であって、該蓋の天井面に前記注出孔内に内接して進退可能とする切り刃付き円筒体を形成し、該切り刃は2枚形成され、該突出刃の間隔は大離間角度である大きな間隔と、小離間角度である短い間隔ととする非点対称に配置されており、
キャップ本体に設けられた突出刃の先端が内キャップの注出孔の封止膜を破断する端緒の位置から、回転進入する限度を前記小離間角度より大きく前記大離間角度よりも小さくなる範囲に内キャップとキャップ本体の螺合関係に設定したことを特徴とするキャップ。
(6)キャップ本体には、先端部にヒンジ付きキャップ体が設けられていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載されたキャップ。
(7)内キャップとキャップ本体との間に開封方向への回動を防止するリング状の開封防止部材を設けたことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載されたキャップ。
(8)(1)〜(7)いずれかに記載されたキャップを取り付けたことを特徴とする合成樹脂製ボトル容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上述したような構成を備えることによって、以下のような本発明に特有の効
果を奏するものである。
1.切り刃の切開長に差を設けることにより、切り残し部を設けることができる。
2.先端に2枚の切り刃を設けた円筒体を回転させ、開封動作を規制することにより、切り残し部分を確実に規定することができる。
3.シール部材を備えた内キャップと、切り刃を設けた円筒体を螺合させることにより、開封に要する力を軽減することができると共に回動終端が特定されるので開封箇所の特定、シールの切り残し部の確実性を向上させることができる。
4.2枚の切り刃によって2カ所から切削が開始され、一方は切り離されるときに切断音がでて、開封作業が終了したことが確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、容器本体の頸部にキャップに関し、容器本体の頸部に直接被冠する内キャップ、この内キャップに被冠するキャップ本体からなり、内キャップは未使用状態を保持するためのシール部材を有し、キャップ本体には使用開始時にこのシールを破断する切り刃が設けられている。さらに、未使用状態において、不正開封を防止する開封防止リングを備えている。
そして、本発明は、シール部材を一カ所残して切り離して、開封後のシール部材を内キャップにつながった状態に保持する開封手段を講じたものである。シール部材の一部を残して円形に切除する手段として、2枚の切り刃を先端部に形成した円筒体を使用して、この円筒体をシールに押し当て回動させた場合に、2つの切削始点に対して一方の切り刃の切削軌跡は他方の切削始点の手前で停止し、他方の切り刃の切削軌跡が一方の切削始点を通過できるように2枚の切り刃の設定を工夫したものである。この工夫は、円周上配置関係、刃の大きさ、形状などである。
円周上の配置の場合は非点対称配置、対称配置の場合は刃の先端の高さ変える、山形刃の場合はテーパ角を変える等を講ずることができる。また、これらを組み合わせることで実現できる。
切削動作は、任意にすることもできるが、切削終点を規制することにより切り残しを確実にすることができる。例えば、内キャップとキャップ本体を螺合関係とし、螺合の終点と切削動作を同期させることにより実現できる。
材質は、容器本体、キャップは合成樹脂製、金属製などに適用ができる。
【0010】
以下に各構成要素について述べる。
1. 全体構成
本発明は、シール開封構造を備えたキャップである。このキャップは、ボトル容器に被冠される。キャップは、シール部材を備えた内キャップと内キャップに被冠されるキャップ本体から構成される。更に、未使用状態において、不正開封を防止する開封防止リングが必要に応じて適用される。
【0011】
2. キャップ
キャップは、内キャップとキャップ本体から構成される。必要に応じて、未使用状態においては開封防止リングを介在させる。
2−1内キャップ
内キャップは、シールされた流出孔を有し、ボトル容器の頸部に被冠される。ボトルネック被冠する場合は、2重円筒状をなし、ボトルの頸部を挟み込んで装着される形式が望ましい。内側の円筒が流出孔を形成し、底部を封止してシール部材を形成する。内キャップは回動しないようにボトルに装着されることが好ましい。ボトルとの連結構造はボトルとの相互に規定される構成であるが、縦方向の抜き出し防止機能と回転防止機能を備える必要がある。例えば、点状の凹凸を組み合わせると両機能を実現できる。また、リング状の凸部と凹部を組み合わせることにより抜き出し規制が可能であり、縦方向に凸部と凹部を組み合わせると周方向の回転を規制することができる。ボトルの頸部下方に1〜複数ののリブを設け、内キャップに先端側にも複数〜1つのリブを設け、装着時に相互に入り組むようにすることにより、周方向の回動を防止することもできる。
シール部材である封止膜は、皿状に湾曲させることができる。湾曲の程度を開封状態において、裏面がボトルの頸部に安定して接触するようにボトル頸部の内周径の曲率と同程度とすることが好ましい。
【0012】
2−2キャップ本体
キャップ本体は、内キャップに被冠され、使用時に内キャップのシール部材を開封する2枚の切り刃が備えられている。
内キャップが円筒状の流出孔を備えている場合は、シール部材を開封する切り刃として、この円筒に内接して摺動可能な下方が開放した円筒の先端に2枚の切り刃を設けることが好ましい。
2枚の切り刃は、シールしている封止膜を内縁周に沿って切削して、ほぼ全周に渡って切り離し一部を連結片として残すことができるように形成する。例えば、非点対称配置、大きさの異なる山形形状の刃、傾斜を違えた山形形状刃、先端の高さを違えた刃などである。開封動作は、回動して行う。2枚の切り刃による回動切削は、それぞれの切り刃の切削軌跡が一部で重複しないようにすることで実現できる。回動範囲を規制することにより、正確な切削軌跡を実現でき、確実に連結片を残すことができる。連結片が2カ所できることは、シール部材が十分に開かず、スムーズな注出を妨げる恐れがある。完全に切り離してしまうと、シール片がボトル容器本体内を浮遊したり、注出孔に引っかかり流出を阻害してしまう恐れがある。ボトル容器が透明な場合は、不純物が混入しているような印象を与えてしまう。特に、化粧品や飲料品では、使用感が不良である。
【0013】
残存連結片と接触して停止する切り刃の接触部位を、開封片を下方付勢形状にすると、開封片の姿勢を一定に保つことができる。例えば、切削終了部位を下向き傾斜面とすると、接触によって下向きの付勢ができる。また、切削終了点において刃部が終了するように刃部を形成し、切削終了点から刃付き円筒を更に進入させると、刃付き円筒の外周面によって連結が挟圧されて開封片を下向きに付勢することができる。ただし、進入が深くなると連結片がちぎれてしまう危険があるので、ちぎれない程度の進入に留めるよう注意することが大事である。
【0014】
2枚の切り刃を設けた円筒体の回動を規制する手段としては、内キャップとキャップ本体とを螺合させ、螺合の終点において、1カ所の連結片が残るようにすることが可能である。
ひとつの円周上に位置する2枚の切り刃を用いた切開によって、ひとつの連結片を形成することは、2つできる切開始点と切開終点のうち、切削終点が一方の切削始点を乗り越えることとなり、このとき連結片が切り離される音が発生するので、開封動作の終了を確認することができる。
【0015】
2枚の刃の形成及び開封動作の回動規制には次のような態様がある。
(1)切り刃付きシール開封用の円筒体を備えたキャップにおいて、切り刃は2枚設けられ、2枚の切り刃による開封距離が異なる構成とし、開封動作後シールの切り残し部が一カ所残存するシール開封機構付きキャップ。
(2)2枚の切り刃による開封距離が異なる構成を円筒端に非点対称及び/又は切り刃先端の高さを異ならしめることにより実現できる。
非点対称即ち、円周上に切り刃の間隔を異ならせて配置した場合は、2つの切り刃が同時に切削を開始したとき、短い間隔に相当する長さを切削した時点で、長い間隔と短い間隔の差分が連結片として残ることとなる。
また、2枚の切り刃の先端の高さに差を設けた場合、回転進入させつつ切削動作を行うとき、2つの切り刃は切削開始時期に時間差が生じ、その時間差分の長さを連結片として残すことができる。
(3)注出孔を塞ぐ封止膜に対して、筒先端に2枚の突出刃を非点対称に配置した注出孔内を進退可能な円筒体を天井面に設けたキャップ本体を有するキャップ。
(4)非点対称配置の具体的な態様の一例として次のように規定することができる。封止膜を設けた内キャップと内キャップに螺合するキャップ本体とから構成され、キャップ本体を正回転することにより封止膜を破断する切り刃を2つ備えたキャップであって、該2つの切り刃は円筒体の先端に非点対称に対抗して配置され、該円筒体の軸を中心とし一方の切り刃の先端を0°とする円周方向の位置関係及び破断回転の関係を次ぎのように設定することにより、破断操作後に連結部が1カ所形成された封止膜の開封状態が形成されるキャップ。
一方の切り刃Aの位置=0°
他方の切り刃Bの位置θb>180°
一方の切り刃Aの破断回転角度θcut<θb
一方の切り刃Aの破断回転角度θcut+θb>360°
【0016】
(5)更に、螺合関係を規定することにより、切り残しの残存連結片を規制することができる。例えば、封止膜を設けた内キャップと内キャップに螺合するキャップ本体とから構成され、キャップ本体を正回転することにより封止膜を破断する切り刃を2つ備えたキャップであって、内キャップは、外周に雄ネジが設けられた円筒状であって、内側に封止膜となる底部を形成した短径の有底の円筒体からなる注出孔が設けられており、キャップ本体は、前記内キャップの雄ネジに螺合する雌ネジが形成された内径を有する筒状蓋体であって、該蓋の天井面に前記注出孔内に内接して進退可能とする切り刃付き円筒体を形成し、該切り刃は2枚形成され、該突出刃の間隔は大離間角度である大きな間隔と、小離間角度である短い間隔ととする非点対称に配置されており、キャップ本体に設けられた突出刃の先端が内キャップの注出孔の封止膜を破断する端緒の位置から、回転進入する限度を前記小離間角度より大きく前記大離間角度よりも小さくなる範囲に内キャップとキャップ本体の螺合関係に設定したキャップ。
更に、この場合、切削終点にて刃部が終了するように形成した2枚の切り刃付きシール開封用円筒刃とすることにより、切削終了点において開封片を下向き付勢を保持ができる。更に、切り刃部終了点から、連結部の長さを超えない範囲で、螺合を進めると連結片が円筒刃の外周面によって押さえ込まれるので、開放片の下向き姿勢を更に安定させることができる。
【0017】
2−3ヒンジキャップ
キャップ本体の先端側にはヒンジ付きキャップを設けることができる。開封後はヒンジキャップを開閉することにより内容物を注出することが可能となる。開封後は小出しにして使用するような用途には、便利で清潔に使用することができる。例えば、化粧用容器に適している。
【0018】
2−4開封防止リング
開封防止リングは、未使用状態を示すものでキャップ本体や内キャップとは別体独立して設けられることが好ましい。未使用状態を示す不正開封手段としては、内キャップとキャップ本体とを帯状に連結する手段(例えば、特許文献3)などが一般的に用いられている。本出願人は、新たな手段として、特開2006−193202号公報に示すように、別体構成したリング状の開封防止部材を提案した。
【0019】
3. ボトル容器本体
残量が視認できる透明性があるボトルが適している。透明性の点からは、合成樹脂製、ガラス製が使用できる。例えば、化粧料容器等である。
【0020】
[実施例]
図1は、本実施例のキャップを容器本体に装着した状態の部分拡大図を示す。図1(a)は未使用状態、図1(b)はシールを開封した状態を示している。
図2はヒンジ付きキャップ本体の断面図、図3はキャップ本体の外観図、図4は切り刃の状態を下面から見た図を示している。
図5は内キャップの断面図、図6は内キャップの外観図を示す。
図7は容器本体の外観図を示す。
図8は、ヒンジ付きキャップをオープンにした状態の断面図を示す。
図9は、開封防止リングの一部破断面図を示す。
図10は、本実施例の切り刃の開封動作を示す図であって、図10(a)は未使用状態の切り刃の位置、図10(b)は切削開始位置、図10(c)は切削終了位置を示す。
【0021】
図1には、本実施例のキャップを容器本体に装着した状態の部分拡大図が示されている。図1(a)は未使用状態、図1(b)はシールを開封した状態を示している。
未使用状態では、容器本体2の頸部21に内キャップ3、開封防止リング5、キャップ本体4の順に被冠されている。内キャップ3は、ボトル容器の頸部の先端部が空隙35に進入し、ボトル容器本体2の頸部に設けられた環状凸部22と内キャップの環状凹部34が圧着嵌合して抜け止めされている。ボトル容器の頸部基部に形成された縦リブ23と内キャップの基部内面に設けた縦リブ36が係合して周方向の回動を規制している。また、内キャップの雄ネジ33とキャップ本体の雌ネジ42が螺合している。ネジは2条ネジを採用して少ない回転数でも強固で安定した螺合を実現する。未使用状態を保持するためにキャップ本体の下部に開封防止リング5を介在させて螺合の進入を止め、円筒切刃70が下降して封止膜7との接触を防止している。
【0022】
使用状態は、まずキャップ本体と開封防止リングを一緒に一旦はずし、キャップ本体のみを再装着して、終点まで螺合を進めることにより、円筒切刃70によって封止膜7の周囲を、連結片79を残して切削して開封状態とする。その後ヒンジキャップ6を開いて内容物を取り出して、内容物を利用することができる。
本例では、封止膜7は、Δd分下側へ湾曲させた皿状としてある。図1(b)において、このΔdは、容器本体の頸部21に沿うように接触する曲率に形成する。このような状態によって切開された封止膜は安定した姿勢となり、開栓後の使用状態を良好に保つことができる。
【0023】
キャップ本体の構成を、図2〜図4を参照して説明する。図2はヒンジ付きキャップ本体の断面図、図3はキャップ本体の外観図、図4は切り刃の状態を下面から見た図を示している。
キャップ本体4は、内キャップに被冠する雌ネジ42を形成した円筒部41、該円筒部41の頂部にはヒンジキャップ6が設けられている。中央部には先端側に切刃を設けた円筒切刃70を設ける。この円筒切刃の基部側は注出口65となる。円筒部41の基端内側に係合凸部47が設けられ、内キャップの基端部に設けられた係合凹部37と係合して、螺合終点で両者が容易には外れないように納まる。
【0024】
ヒンジキャップ6を開放した状態を示すキャップ本体の断面が図6に示されている。頂蓋64の一端はヒンジ61によって連結され、他端にはつまみ63が形成され、中央部には注出口65を封鎖できる栓62が設けられている。
【0025】
円筒切刃70は、切刃A71と切刃B72の2つが設けられ、側面視で略山形の形状であって、頂部を平坦78、切刃の前方は鉛直に形成された切刃先部73、それに続く切刃先斜面74、更に平坦部75を備えている。切刃の後ろは後部斜面77を経て平坦部に連なっている。2枚の切刃は大間隔角210°、少間隔角150°隔てられて形成されている。開封動作は後述するが、切削角度150°、40°分の連結片が切り離されずに残存する。この切刃は頂部に平坦部が20°分設けられているのでその分と切削しながら封止膜に突き刺さる切刃先斜面74の一部を算入すると、170°分の切削が実行されるので、未切削の残存角度が40度となる。
【0026】
内キャップの構成を、図5、図6を参照して説明する。図5は内キャップの断面図、図6は内キャップの外観図を示す。内キャップは、略円筒状の外観をしており、内側に小径の円筒を備えた2重構造である。小径円筒の底部は封止膜でシールされている。この2重の円筒によって形成される空隙部に容器本体の頸部先端を挿入して、被冠する構造である。
更に、詳述すると、内キャップ3は、雄ネジ33が形成された外筒部31、封止膜7によってシールされた内筒部32によって2重に形成され、2つの筒によって形成される空隙35を有する。外筒部31の外側基部にはキャップ本体あるいは開封防止リングの突起と係合する係合凹部37が設けられている。この係合凹部37は、両側にテーパを有する膨出部の間に形成され、キャップ本体などの突起が該膨出部を乗り越えて係合して、被冠の位置止をする構成となっている。更に、膨出部は回転方向手前が小さく、前方が大きく形成して、回り止め機能及び緩める方向への回転に対する抵抗機能も果たしている。外筒部31の内面には多数の縦リブ36、36・・、環状凹部34が形成され、それぞれ容器本体の頸部に設けられた縦リブ23、環状凸部22と係合して、抜止と回転が防止された被冠関係となるようにされている。
【0027】
容器本体は、図7に例示されており、内キャップを被せることができるように、頸部を形成し、収容部は少なくとも一部が透明となっていることが望ましい。透明な合成樹脂製とすることができ、PETなどを用いて、ブロー成型により製造することができる。図7は、容器本体2の側面図であり、肩部を絞って形成した頸部21が設けられ、該頸部には環状凸部22と縦リブ23が形成されている。
【0028】
図9に開封防止リング5が例示されている。段付きの円筒形となっていて、内キャップに装着され、上方の小径部にはキャップ本体の基部が装着される。装着状態においては、未使用状態であることをしめすと共に、封止膜が切り刃と接触することを防止している。細かい図示は省略するが内キャップ及びキャップ本体と係合位置を規制するために、係合用に凹部、凸部が形成されている。
【0029】
開封動作について、図10を参照して説明する。図10は、内キャップを平面視した状態での円筒刃70の位置関係を表示している。内キャップの内筒32に設けられた封止膜7が中心に示されている。内筒32内における2枚の切り刃A,B71,72の状態を縦断面視において表記している。図10(a)は開封防止リングが装填された未使用状態であり、図10(b)は開封防止リングを外し、切り刃A,B71,72が封止膜7を切削始めた始点の状態であり、図10(c)は切削が連結片79を残して終了した状態を示す。円筒刃70の先端に形成された切り刃A71と切り刃B72の形状は前記したとおりであり、同一形状の略山形形状である。
【0030】
図10(a)は、切り刃A71の平部78の後端を0°とした円形座標軸で各部材の位置関係が示されている。切り刃Bの平部78の後端は210°に配置され、それぞれ平部は20°分の長さを有し、切り刃の底部である切り刃先斜面74の基部と後部斜面77の基部間は90°分の長さを有している。縦断面視的には切り刃の平部78は封止膜7と非接触状態にある。
【0031】
図10(b)は、開封防止リングを取り外して、再螺合して図1(a)の位置から45°進行させた位置において、2枚の切り刃の平部が封止膜を突き破り切削した始点の状態を示している。切り刃Bの平部78の後端は255°にある。
【0032】
図10(c)は、更に135°回転して、開削を終了した状態を示している。切り刃A71の平部78の後端は、180°に位置している。切り刃Bの平部78の後端は30°である。縦断面視的に見ると切り刃A71は83aの状態となっており、切り刃先端斜面74が封止膜7を突き破った状態となり、その先端斜面分が15°分及び平部20°分が加算された170°分が切り刃A71によって切削された角度になり、座標軸的には215°である。したがって、図10(b)の切り刃Bの平部78の後端255°との差分40°が切り残され、連結片79を形成する部分に相当する。
一連の螺合回転は360°以内で実現するように構成されている。開封防止リング分が180°であり、開削回転が遊びも入れて180°となっている、このような少ない回転角度による正確な制御は2条ネジによる螺合構造としたことにより実現されている。
【0033】
一方、切削終点における切り刃B72は、縦断面視的に見ると83bの状態にあり、平面的には切り刃B72の切刃先部73は50°にある。したがって、切り刃A71の切削位置45°を通過しており、この部分は切り離されていることとなる。合成樹脂の延びを考慮しても、切り刃B72の切刃先斜面74も切り刃Aと同様に螺合の進入に伴い、封止膜レベル15°分を超えているので、切り離しは確実である。
【0034】
この実施例を請求項4に添って考えると次のようになる。本実施例では、切り刃の頂部が平部や山形の傾斜面が実質的な切削機能を果たしているのでその分を考慮して、適用関係を考える必要がある。針のような棒状の切り刃の場合は、このような関係は考慮する必要が無い。
(1)一方の切り刃Aの位置=0°:図10(b)における切り刃A71の平部78の後端位置45°(請求項に記載した発明の概念は、切り刃がシールを開削する間際の配置関係を想定しているので、ここでは、45°に相当する)
(2)他方の切り刃Bの位置θb>180°:図10(a)における切り刃B72の平部78の後端位置210°(ここでは大間隔角度である210°に相当する)
(3)一方の切り刃Aの破断回転角度θcut<θb:切り刃A71によって切削された角度170°
(4)一方の切り刃Aの破断回転角度θcut+θb>360°:切り刃A71によって切削された角度170°+図10(a)における切り刃B72の平部78の後端位置210°
【0035】
この切り刃B72の切り離し終点において、破断音が発生するので、シールの開封が確実に行われたことが利用者は耳においても確認することができ、余分は回動動作は必要とせず、安心できる。螺合による切り刃の進入であるから、ストレートに押し込む力に比べて小さな力で開封動作ができる。
【0036】
残存した連結片79は、切り刃A71の平坦部75によって、奥側へ付勢されて姿勢が安定し、ヒンジキャップを開いて振り出しなどの注出動作を行っても、封止膜が戻ることもなく、スムーズな注出操作を行うことができる。
封止膜を湾曲させて容器本体の頸部に密着させることができ、開栓後の封止膜の姿勢を安定に保つことができ、使用時の障害発生を防止することができる。
【0037】
本実施例のキャップは、まず内キャップと開封防止リングとキャップ本体とを一体に組み合わせて準備し、内容物を充填した状態のボトル容器本体の頸部に圧着することにより被冠することができる。ボトリング工程を簡略化することができる。

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施例のキャップを容器本体に装着した状態の部分拡大図、図1(a)は未使用状態、図1(b)はシールを開封した状態を示す。
【図2】ヒンジ付きキャップ本体の断面図
【図3】キャップ本体の外観図
【図4】切り刃の状態を下面からキャップ本体を見た図
【図5】内キャップの断面図
【図6】内キャップの外観図
【図7】容器本体の外観図
【図8】ヒンジ付きキャップをオープンにした状態の断面図
【図9】開封防止リングの一部破断面図
【図10】本実施例の切り刃の開封動作を示す図であって、図10(a)は未使用状態の切り刃の位置、図10(b)は切削開始位置、図10(c)は切削終了位置を示す。
【図11】従来例の容器の全体概略図
【図12】従来例の未使用状態の頭部断面図
【図13】従来例の環状帯部を取り除いた状態の頭部断面図
【図14】従来例の使用状態の頭部断面図
【符号の説明】
【0039】

1 ボトル容器
2 容器本体
21 頸部
22 環状凸部
23 縦リブ

3 内キャップ
31 外筒部
32 内筒部
33 雄ネジ
34 環状凹部
35 空隙
36 縦リブ
37 係合凹部
4 キャップ本体
42 雌ネジ

6 ヒンジキャップ
61 ヒンジ
62 栓
63 つまみ
65 注出口

5 開封防止リング
7 封止膜
70 円筒切刃
71 切刃A
72 切刃B
73 切刃先部
74 切刃先斜面
75 平坦部
77 後部斜面
78 平坦
79 連結片

81a 未使用状態の切り刃Aの縦方向位置
81b 未使用状態の切り刃Bの縦方向位置
82a 封止膜切開始点における切り刃Aの縦方向位置
82b 封止膜切開始点における切り刃Bの縦方向位置
83a 封止膜切開終点における切り刃Aの縦方向位置
83b 封止膜切開終点における切り刃Bの縦方向位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り刃付きシール開封用の円筒体を備えたキャップにおいて、切り刃は2枚設けられ、2枚の切り刃による開封距離が異なる構成とし、開封動作後シールの切り残し部が一カ所残存することを特徴とするシール開封機構付きキャップ。
【請求項2】
2枚の切り刃による開封距離が異なる構成が、円筒端に非点対称及び/又は切り刃先端の高さ異ならしめたことを特徴とする請求項1記載のシール開封機構付きキャップ。
【請求項3】
注出孔を塞ぐ封止膜に対して、筒先端に2枚の突出刃を非点対称に配置した注出孔内を進退可能な円筒体を天井面に設けたキャップ本体を有することを特徴とするキャップ。
【請求項4】
封止膜を設けた内キャップと内キャップに螺合するキャップ本体とから構成され、キャップ本体を正回転することにより封止膜を破断する切り刃を2つ備えたキャップであって、 該2つの切り刃は円筒体の先端に非点対称に対抗して配置され、該円筒体の軸を中心とし一方の切り刃の先端を0°とする円周方向の位置関係及び破断回転の関係を次ぎのように設定することにより、破断操作後に連結部が1カ所形成された封止膜の開封状態が形成されることを特徴とするキャップ。
一方の切り刃Aの位置=0°
他方の切り刃Bの位置θb>180°
一方の切り刃Aの破断回転角度θcut<θb
一方の切り刃Aの破断回転角度θcut+θb>360°
【請求項5】
封止膜を設けた内キャップと内キャップに螺合するキャップ本体とから構成され、キャップ本体を正回転することにより封止膜を破断する切り刃を2つ備えたキャップであって、
内キャップは、外周に雄ネジが設けられた円筒状であって、内側に封止膜となる底部を形成した短径の有底の円筒体からなる注出孔が設けられており、
キャップ本体は、前記内キャップの雄ネジに螺合する雌ネジが形成された内径を有する筒状蓋体であって、該蓋の天井面に前記注出孔内に内接して進退可能とする切り刃付き円筒体を形成し、該切り刃は2枚形成され、該突出刃の間隔は大離間角度である大きな間隔と、小離間角度である短い間隔とする非点対称に配置されており、
キャップ本体に設けられた突出刃の先端が内キャップの注出孔の封止膜を破断する端緒の位置から、回転進入する限度を前記小離間角度より大きく前記大離間角度よりも小さくなる範囲に内キャップとキャップ本体の螺合関係に設定したことを特徴とするキャップ。
【請求項6】
キャップ本体には、先端部にヒンジ付きキャップ体が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載されたキャップ。
【請求項7】
内キャップとキャップ本体との間に開封方向への回動を防止するリング状の開封防止部材を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載されたキャップ。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載されたキャップを取り付けたことを特徴とする合成樹脂製ボトル容器。
【請求項9】
ボトル容器が液体化粧料用であることを特徴とする合成樹脂製ボトル容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−56334(P2008−56334A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238509(P2006−238509)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【特許番号】特許第4021461号(P4021461)
【特許公報発行日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】