説明

開環メタセシス重合によって得られる固体材料

本発明は、固体材料、特に、例えばコンポジットミリングブロック(CMB)のような歯科目的であって、開環メタセシス重合(ROMP)によって得ることができる固体材料に関する。このようなミリングブロックを得るための方法、その使用法、及び組成物の利用も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、予備硬化された組成物、特に、例えばコンポジットミリングブロック(CMBs)のような歯科目的であって、開環メタセシス重合(ROMP)によって得られる組成物を記載する。このようなミリングブロックを得るための方法も記載する。
【0002】
(関連出願との相互参照)
本願は、欧州特許出願第06002150.8号(2006年2月2日出願)からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
CMBは多角形であり、多くの場合、円柱又は立方形の成形された標本である。それらは、ペースト状の硬化性処方を金型に充填し、その後前記ペースト状材料を硬化することによって調製され、ミリング又は研削のための十分な機械的強度の標本を与える。硬化した標本は、任意に所望の形状に切断することができ、たいていはミリングマシンで使用するためにサンプルホルダーに固定される。このような材料のラジカル硬化は、標本の望ましくない高度な収縮を伴うことが多い。結果として、これらの材料は内部応力が高く、それがミリング中又は口腔内での使用中に、標本の亀裂によって又は細分若しくは欠け落ち(チッピング)によって開放されることが多い。
【0004】
最近、開環メタセシス重合(ROMP)の導入により、体積収縮が小さく、摩耗性が小さく、良好な機械的特性を示す部分又は完全硬化材料が得られる急速な重合プロセスを特徴とする新規歯科用組成物が得られている。
【0005】
US6,075,068は、重合可能なモノマー類及び/又はポリマー類、充填剤、少なくとも1つの反応開始剤、又は1つの反応開始剤システム並びに顔料、X線造影剤、及び/又はチキソトロピー助剤を包含する通常の補助剤を含有する歯科用組成物を記載している。重合可能なモノマー類、及び/又はポリマー類は、歯科用組成物の部分的、又は最終的な硬化が開環メタセシス重合(ROMP)によって実行できるような化学構造を有する。該組成物は、ほぼカルベン型の反応開始剤を含有し、光の使用によって硬化される。
US6,844,409B2は、 開環メタセシス重合によって硬化可能であって、オレフィン含有樹脂システム及びメタセシス触媒を含む組成物に関する。
【0006】
CA297 442A1は、6〜17個の炭素原子を有する少なくとも1つの二環構造、及び開環メタセシス重合のための少なくとも1つの反応開始剤を含有する組成物であって、前記二環構造がメタクリレート基によって置換されない組成物に関する。前記システムは、室温で硬化する。
【0007】
US6,001,909は、緊密なシクロオレフィン、ROMP触媒、充填剤、及びシランを含む電気、又は電子的構成要素のための封入材料として使用される組成物に関する。
【0008】
コンポジットミリングブロック(CMB)は、歯科補綴学で広く使用されている。現在、硬化化学の面でのミリングブロックは、メタクリレート技術(MAT)に基づく。これは、ペースト状の処方に使用される重合可能な樹脂が、アクリル及び/又はメタクリル酸のエステル類を含むことを意味する。CMBは、光活性化によるラジカルの発生によって、又は熱、又は酸化還元的なラジカルの発生によってのいずれかで、このような処方をラジカル的に硬化することによって得られる。CMBは、例えば、クラウン、インレー、アンレー、又は部分的クラウンの製造に使用されることが多い。これらを得るために、CMBはコンピュータ制御されたミリングマシンで削られる。
【0009】
歯科用途にとって、美しさはきわめて重要である。ROMPによって製造された標本は、通常、金属反応開始剤の存在によってひどく変色する。反応開始剤の量を削減することは、重合の速度、及び完全性の点で制限される。したがって、ROMPによって調製されたCMBの色彩は、US6,001,909に見ることができるように、依然として問題であり、そこでは受け取った実施例1の試料が、ルテニウム分が約360ppmで「茶色がかった灰色」と表現されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのようなCMBの歯科利用の大部分における要求を満足する色彩を示すROMPで調製されたCMBに対する必要性が存在する。驚くべきことに、現在、標本がその硬化中に適用されるような高温に長時間曝露すると、標本の歯科修復への適用を可能にする実質的な変色が生じることが見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の態様において、本発明は、
a) 開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な少なくとも1つの官能基を有する、ROMPによる硬化が可能な少なくとも1つのモノマー、
b) ROMP硬化反応を開始するための少なくとも1つの反応開始剤、及び
c) 少なくとも1つの充填剤
を含む組成物の硬化によって得ることができ、前記硬化組成物が約130℃を超える温度で焼戻しされる、固体材料、特に歯科用材料に関する。
本発明の別の態様は、固体材料、特に歯科用材料の調製方法に関し、
a) 開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な少なくとも1つの官能基を有する、ROMPによる硬化が可能な少なくとも1つのモノマー、
b) ROMP硬化反応を開始するための少なくとも1つの反応開始剤、及び
c) 少なくとも1つの充填剤
を含む組成物が硬化され、前記硬化組成物が約130℃を超える温度で焼戻しされる。
【0012】
本発明はさらに、本発明による硬化組成物の又は本発明に従って調製された硬化組成物の、歯科用途における材料としての使用、特にインレー、アンレー、ベニヤシェル、クラウン又は、ブリッジ、永久的又は一時的のいずれか、人工歯又は義歯床又は義歯としての使用に関する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、インレー、アンレー、ベニヤシェル、クラウン、又はブリッジに関し、これは本発明による硬化組成物又は本発明に従って調製された硬化組成物を含む。
【0014】
本発明のさらなる態様は、歯の修復方法に関し、本発明による固体材料又は本発明に従って調製された固体材料のミリングの工程を含む。これは、例えばセレック(CEREC)(商標)ミリングマシン(シロナデンタルシステムズ(Sirona Dental Systems))、又はラヴァ(LAVA)(商標)ミリングマシン(3M ESPE社)、又はミリング、又は成形歯科補綴デバイス用のいかなるその他のコンピュータ支援デバイスでも行うことができる。
【0015】
本発明による固体材料は、軽量で耐久性のある固体材料が必要とされるいかなる技術分野でも使用できる。しかし、好ましくは、歯科補綴学及び審美歯科の分野において歯科材料として使用される。本発明による固体材料は、好ましくは、すぐにミリングできる状態のブロック、いわゆるコンポジットミリングブロック(CMB)の形態で使用される。このようなブロックは、それ自体で提供されることができるが、機械的ホルダ、例えば、特定のミリングマシンに特に適合されたホルダと共に提供されることもできる。
【0016】
本発明によるコンポジットミリングブロックは、ROMPによって硬化される。メタクリレート重合で硬化された先行技術のミリングブロックと比較して、ROMP−CMBの大きな長所は、非常に低い収縮及び収縮応力を、高い曲げ強度及び破壊靭性のような卓越した機械的特性と兼ね備えることである。本発明によるROMP−CMBは、歯科学において既存のCMBに置き換わることができ、しばしばより優れた特性により、そのようなデバイスの適用可能性を広げることができる。より広い用途は、より多種多様なミリングマシン、及び暫定的な(短期又は長期)、又は永久的な補綴修復、特にブリッジ、又は義歯のような新規歯科的適応(dental indication)への到達可能性に関係することができる。
【0017】
固体のROMP−CMBはまた、任意の(arbitrary)形状で製造され、そのままで、又は機械加工されて、航空又は宇宙分野のような特に高水準の機械的特性及び軽量利用が望まれる他の産業で使用されることもできる。
【0018】
本発明による固体材料において、硬化される組成物は
a) 約9,999〜約80%の、開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な官能基を少なくとも2つ有する、ROMPによる硬化が可能な少なくとも1つのモノマー、
b) 約10〜約5000重量ppmの、ROMP硬化反応を開始するための少なくとも1つの反応開始剤であって、前記ppm値はモノマーの量に対する反応開始剤中の金属の量に関係する、及び
c) 約19,999〜約 90重量%の充填剤又は2つ以上のそのような充填剤の混合物、を含む。
【0019】
上記の化合物は、硬化される組成物中に100重量%の総量で存在することができ、すなわち、上記a)に記載された物質、上記b)に記載された物質、及び上記c)に記載された物質から選択される物質の量を100重量%まで追加できる。ただし、硬化される組成物は、上記a)に記載された物質、上記b)に記載された物質、及び上記c)に記載された物質から選択される物質の他に1つ以上の補助剤を含むことも可能である。この場合、上記の量は、100重量%未満まで追加することができる。
【0020】
充填剤は、使用される充填剤の表面に化学的に結合した界面化合物と共に処理されることができ、ROMPによって作られるポリマー網状組織に組み込まれることができる。その他の添加剤は、変性剤、不透明度調節剤、柔軟剤、溶媒、相溶剤、レオロジー変性剤、着色顔料、有機又は無機繊維であることができる。
【0021】
本発明のさらなる態様では、固体材料の調製方法が記載され、
a) 開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な少なくとも1つの官能基を有する、ROMPによる硬化が可能な少なくとも1つのモノマー、
b) ROMP硬化反応を開始するための少なくとも1つの反応開始剤、及び
c) 少なくとも1つの充填剤
を含む組成物が硬化され、前記硬化組成物が約130℃以上の温度で焼戻しされる。
【0022】
硬化組成物の標本を約130℃又は約160℃又は約180℃もの高い温度で数時間焼戻しすることで、一般に、機械的特性、特に破壊靭性又はヤング弾性率は低下しない。時として、これらの機械的特性は、さらに改良され得る。
【0023】
硬化組成物の標本を約130℃、又は約160℃、又は約180℃もの高い温度で数時間焼戻しすることは、他方、標本の透明性(lucency)の増大を招きうる。標本中に存在する反応開始剤に由来する好ましくない変色は、驚くべきことに、しばしばこの熱的プロセスによって低減されることができる。これは、色彩分析、例えばL*a*bスキーム(CIELAB系:L*:明度;a*:赤/緑軸上の値;b*:黄/青軸上の値)によって、定量的に観測することができる。焼戻しにより、より高いL*値(100により近い)が得られ、これは明度の増大を意味し、約 0により近いa*値又は約0により近いb*値が得られる。
【0024】
脱色は、しばしば、酸素の排除によって良い影響を受けると言える。試料が焼戻し中に表面で酸素に曝露された場合、1つ以上の着色した染みが時として観察されることがあるが、材料の大部分は所望の脱色を示す。しかし、表面の染みは、研磨によって除去できる。窒素雰囲気下で、脱色は一般に、バルク材料中及び焼戻しした標本の表面上の両方で観察される。
【0025】
本発明は、本発明に従って硬化及び焼戻しした組成物の歯科用途での材料としての使用にも関する。歯科用途は、補綴物、特に一時的又は永久的のいずれかのインレー、アンレー、ベニヤシェル、クラウン、又はブリッジであることができる。
【0026】
本発明による固体材料は、好ましくはコンポジットミリングブロック(CMB)の形態で提供され、本発明による固体材料又は本発明の方法に従って調製された固体材料と、ミリングマシンに適合した機械的ホルダとを含む。
【0027】
本発明は、哺乳類、特にヒトの1つ以上の歯の修復のための方法にも関し、本発明による歯科用材料、又は本発明に従って調製された歯科用材料のミリングの工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明による固体材料は、少なくとも1つの環内オレフィン不飽和二重結合のような開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な少なくとも1つの官能基を有する、ROMPによる硬化が可能な少なくとも1つのモノマーを含む組成物、ROMPを開始するための少なくとも1つの反応開始剤及び少なくとも1つの充填剤を含む組成物にROMPを施すことによって得られる。ただし、しばしば重合可能なマトリックス組成物とも呼ばれる、前記組成物内のモノマーの少なくとも一部が、ROMPによって硬化可能な2つ以上の官能基、例えばROMPによって硬化可能な2つ以上の環内オレフィン不飽和二重結合を有する場合、良好な結果を与えることがしばしば実証されている。
【0029】
硬化可能な重合可能なマトリックス組成物は、好ましくは、ROMPによって重合可能な2つ以上の部分を有する少なくとも1つのモノマーを少なくとも約1重量%の割合で含む。ROMPによって重合可能な部分を2つ以上有するモノマーの量は、より高くすることができ、例えば、組成物中に少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、又は約60重量%のモノマー、又はさらに高い、例えば約70を超え、約80を超え、又はさらには約90重量%を超えることができる。
【0030】
一般的に、すべての種類のモノマー類が、ROMPによって重合可能な1つの部分、又は好ましくは2つ以上の部分を有する組成物の一部であることができる。
【0031】
一般に、好適なモノマー類は、一般式B−Anに従うことができ、ここでAはROMPによって重合可能な部分、好ましくはシクロブテニル、シクロペンテニル、シクロオクテニル又はしばしば好ましいノルボルネニル及び7−オキサ−ノルボルネニル基のような二環構造であり、BはROMPによって重合可能な1〜約100、例えば1〜約10又は1〜約5又は1〜約 4の部分、例えばROMPによって重合可能な2又は3つの部分が結合した有機又はケイ素−有機主鎖であり、nは約1〜約100である。本発明による組成物は、一般式B−Anに従うモノマー類の1種類のみを含有することができる。本発明による組成物は、一般式B−Anに従う2つ又はそれ以上の異なる種類のモノマー類を含有することも可能である。本発明による組成物は、好ましくは、一般式B−Anに従う少なくとも1種類のモノマーを含有し、これはROMPによって硬化可能な1つ、又は好ましくは2つのオレフィン不飽和二重結合を有する。
【0032】
本発明に従って使用できる二環構造は、好ましくは(メタ)アクリレート基のような環外C−C二重結合を持たず、その結果組成物の硬化が少なくとも大部分は開環メタセシス重合(ROMP)によって起こる。さらに、ビニル又はアリル基はROMP中に連鎖停止剤として機能することがあるため、二環構造がこれらの基も含有しなければ、場合によっては有利となりうる。しかし、それにもかかわらず、重合を調節するために連鎖停止剤の添加が好ましい場合がある。
【0033】
本発明による組成物は、1〜2個の環内二重結合を有する二環構造を含有できる。炭素環構造は酸素置換された環構造と同様に特に好ましい。
【0034】
顕著な環ひずみを有する炭素環式及び複素環式ビシクロ[x.y.z.]炭化水素は、しばしば特に好ましい場合があり、この時x、y及びzは1〜6の値を有する。xは約2に等しく、yは約2に等しく、zは1に等しい。
【0035】
この組成物の部類の好ましい代表例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン又は7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプテンの誘導体、特に環の5位に不飽和があり、2又は2,3位に置換があるものである。環の2又は2,3位における置換は、好ましくは炭素−ケイ素−、又は酸素−官能性であり、そして非反応性の残基に結合するか、又は2つ、3つ、又は4つ以上のROM重合可能な基の間の有機、若しくは金属有機スペーサ−架橋(spacer bridging)に結合する。
【0036】
この組成物の部類の好ましい代表例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン誘導体、及び7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン誘導体、特に次式に従うものである。
【化1】

式中、n、A、B、R1、R2、R3及びR4は、互いに独立して、次を意味する:
A= −CH2−又は−O−;
1= −H;C1〜C12アルキル、アリール、又はベンジル、好ましくはC1〜C12アルキル、フェニル、又はベンジル、特にメチル、エチル、プロピルブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、フェニル、ベンジル;−C(=O)−OR5;−O−C(=O)−R5;−CH2−O−C(=O)−R5;R5は−H、C1〜C12アルキル、アリール、又はベンジル、好ましくはC1〜C12アルキル、フェニル、又はベンジル、特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、フェニル、ベンジルを表す;
B= −O−、−CH2−、−CH2−O−、−CH2−O−(CH2−CH2−O)m−(ここでm=1、2、3、4又は5)、−C(=O)−、−C(=O)−O−又は不在;
n= 1〜6、好ましくは1〜4、特には1〜3の整数;
2= O、N及びSi原子を含有できるC1〜C24のn置換有機又は金属有機残基、好ましくはC1〜C12アルキレン、C6〜C24アリーレン、好ましくはビスフェノール型主鎖、ビフェニレン、フェニレン、又はナフチレン、分離性のシロキサン類又はカルボシラン類;
3、R4= C1〜C20アルキレン、好ましくはC1〜C12アルキレン、特にC1〜C3アルキレン;化学結合、−O−又はR4及びR4'は一緒に>CH−CH2−CH<ラジカルを形成する;
並びに立体異性化合物及びこれらの物質のいずれかの混合物。
【0037】
ラジカルB、R1、R2、R3及びR4は、環内又は環外の位置に結合することができる。一般的に、上記の式に従う二環式化合物は、立体異性混合物の形態で、特にラセミ化合物として、存在する。
【0038】
好ましい化合物はたいてい、したがって、式の変数の少なくとも1つが上述のような好ましい定義を有する化合物である。変数のいくつか又はすべてが好ましい定義に対応する化合物も好ましくなりうる。
【0039】
とりわけ好ましい二環構造は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン (7−オキサ−ノルボルネン)及びこれらから誘導される置換誘導体、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸の1−、2−又は多官能アルコール類とのエステル類、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸のモノ−、ジ−又は多官能アルコール類とのエステル類、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−オール又はビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−メタノール又はビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−(メトキシ−(2−ヒドロキシ)エタンとモノ−、ジ−及び多カルボン酸類とのエステル又は上記二環式アルコールとモノ−又はジイソシアネート類との反応生成物である。
【0040】
対応する構造式は、好適な二環構造について下に与えられており、該式は、置換基R1、R2及びR3の−R−=−(CH2n−との交換の結果得られる対応する位置異性体も表し、nは1〜4に等しく、O及びRを含有する環はノルボルネン構造に関して内側又は外側位置にある。
【0041】
使用できる好ましいモノマー類は、以下のリストに記される:
【0042】
モノマーリスト1
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0043】
前記式のいかなるノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エニル)基でも、対応する7−オキサ−ノルボルネン(7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エニル) 誘導体も構成される。簡略化のため、ノルボルネン部分での立体異性体は一般に、式に明示されていない。ただし、ノルボルネン環の内部又は外部のいずれかのすべての異性体及び両方の混合物が含まれることが理解されるべきである。したがって、二次元式
【化7】

は、以下の異性体又は考えられるその他のもののいずれか及びこれらすべての混合物を表わす:
【化8】

【0044】
それ故に、いかなる場合も、1つの鏡像異性のノルボルネニル異性体は、他の鏡像異性体又はそれらの混合物を意味する:
【化9】

【0045】
リストに記載された二環構造は、例えば付加環化、特にディールスアルダー反応のような既知の環化反応を通じて容易に到達できる。これらは一般に安定であり、室温で及び従来の歯科用充填剤の存在下で感湿性ではない。
【0046】
本発明の別の実施形態では、重合可能なマトリックス組成物は、1つ以上のオリゴマー又はプレポリマー構造、例えばROMP反応を起こして硬化物品を形成できる基で拘束された(tethered)及び/又は末端保護されたポリエーテル、ポリエステル又はポリシロキサン又はコポリマー化合物(PDMS)を含む。
【0047】
その他の好ましいオリゴマー及びポリマーのモノマー類を、下に記載する。
【0048】
モノマーリスト2:
【化10】

式中、n=1〜約1000、例えば2〜約100
【化11】

式中、n=1〜約1000、例えば2〜約100;o/n=0.001−1
【化12】

式中、n=1〜約1000、例えば2〜約100;o/n=0.001−1
【化13】

式中、n=1〜約1000、例えば2〜約100及びm+o=0〜約1000、例えば0〜約100
【化14】

式中、n=1〜約1000、例えば2〜約100及びm+o=0〜約1000、例えば0〜約100
【化15】

式中、n=1〜約100、例えば2〜約60及びm/n=1〜約10;例えば1〜5
【化16】

式中、n=1〜約100、例えば2〜約60
【0049】
本発明の組成物に使用してもよいさらに別のオリゴマー類及び/又はポリマー類の分類としては、シクロアルケニル基のようなメタセシス反応によって硬化可能なオレフィン基、例えばノルボルネニル又はノルボルネニルエチル基で末端官能化又は末端保護されたシロキサン主鎖を有する3又は4官能オリゴマー類又はポリマー類が挙げられる。このようなポリマーの1つの例は、ノルボルネニル(NBE)基で末端保護された4官能ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0050】
上記のオリゴマー類及びポリマー類の分類に加えて、該樹脂システムは、ROMP機構を介して重合してもよい他のいかなる重合可能なシクロアルケニル官能化シロキサン系オリゴマー類又はポリマー類も含んでもよい。
【0051】
モノマーリスト1からのモノマーは、特に有益な結果を与えることがある。
【0052】
ROMPによって重合可能な2つの部分を有し、分子量が約180を超える、特に約200を超える、又は約250を超える、又は約300を超える少なくとも1つのモノマーを含有する場合も有利となりうる。前記分子量の上限は、組成物の取扱いがその成形性に関してまだ可能であり(該組成物が固体でなく、成形するには粘稠すぎる)、硬化組成物の材料特性が所望の範囲にある範囲であるべきである。
【0053】
開環メタセシス重合(ROMP)によって硬化可能なモノマー(構成成分a))の量は、たいていは約10〜約90重量%の間で変動できる。多くの場合、約15〜約 50又は約20〜約40重量%の量で、良好な結果が得られる。
【0054】
硬化される組成物は、1つの反応開始剤(構成成分b))又は2つ以上の反応開始剤の混合物も含有する。好適な反応開始剤は、一般に、本発明による硬化可能な組成物においてROMP重合を開始することができるすべての物質である。反応開始剤を含む硬化可能な組成物が、周囲温度、一般的には室温又は約60℃までの温度で十分に化学的に安定である場合、処方の制約のない(unhindered)調製及び成形を提供することが好ましい。
好適な化学的に安定な反応開始剤は、約50℃未満の温度で少なくとも約5時間、組成物の粘度の約10%を超える増大を生じない。好適な反応開始剤が、約100℃を超える温度で約24時間以内に、ROMP反応によって処方を硬化する場合もこのましい。好ましい反応開始剤は、カルベン官能を持たないルテニウム又はオスミウムの金属錯体である。好適な反応開始剤の例は、カスターレナス(Castarlenas)ら、有機金属化学誌(Journal of Organometallic Chemistr)、663(2002年)235〜238、及びハフナー(Hafner)ら、Angew.Chem.1997年、109、第19号、S.2213に見出すことができる。これらの参照及び特にROMPの反応開始剤に関するその開示は、本明細書に明示的に言及され、該開示は本書の開示の一部とみなされる。
【0055】
さらに好ましい反応開始剤は、US6,001,909、10段51行〜13段14行及び13段66行〜15段65行に開示されている。この参照及び特にROMPのための光不安定でない反応開始剤に関するその開示は、本明細書に明示的に言及され、該開示は本書の開示の一部とみなされる。
【0056】
好ましい反応開始剤は次式に従う
【化17】

式中、
M =Ru又はOs
Ar =ベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、アニソールのような芳香族配位子
X =ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)、アルコキシ、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロアセテートのような陰イオン性配位子
R1 =アルキル残基C3〜C12、好ましくはイソプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロプロピル、t−ブチルのような二級又は三級アルキル残基から独立して選択される
【0057】
特に好適な反応開始剤は、次のものである。
【化18】

【0058】
反応開始剤の量は、組成物が約100℃を超える温度で約24時間以内の時間枠で、ROMPによって硬化するように選択されるべきである。反応開始剤の十分な量は、例えば約5ppm〜約10000、又は約10ppm〜約5000ppm、又は約20ppm〜約 2000ppmであり、前記ppmは、硬化される組成物の量を基準としたルテニウムの重量ppmである。
【0059】
硬化される組成物は、1つの充填剤又は2つ以上の充填剤の混合物(構成成分c))、例えば、有機又は無機充填剤、好ましくは無機充填剤も含有する。充填剤は、固体材料、例えば、SiO2のすべての変態(例えば、石英、クリストバライト)、又はガラスのような粉砕された無機材料、又は沈殿された材料、又は有機、若しくは無機繊維の「化学的セラミックス」のようなゾル−ゲル法によって得られる材料、フェルト又はビーズ、並びに高度に分散された薫蒸、又は沈殿された充填剤(SiO2、ZrO2又はその他の金属酸化物)、又は好ましくは硬化組成物の機械的特性を増強できるナノ形状の球形又はクラスター金属酸化物であることができる。使用される充填剤の寸法は、(これらに限定されるものではないが)数(sereval)μmから、数(a few)nmまでの範囲であることが多い。
【0060】
好ましい粒子状充填剤は、例えばDE40 29 230A1に記載されているような、SiO2、ZrO2及び/又はTiO2を含む混合酸化物を基本とする非晶質材料、熱分解ケイ酸又は沈殿ケイ酸のような極微小充填剤、並びに石英、ガラスセラミック又はガラス粉末のような平均粒径約0.01〜約5μmのマクロ又は微小充填剤、並びに三フッ化イットリビウムのようなX線不透明充填剤であることができる。さらに、ガラス繊維、ポリアミド又は炭素繊維を充填剤として使用できる。
【0061】
特に好ましい充填剤は、(a)二酸化ケイ素と約 20mol%までの、周期表のI、II、III及びIV族の少なくとも1つの元素の酸化物とを含み、約1.45〜約1.58の屈折率及び約10nm〜約10μmの平均一次粒径を有する非晶質球状粒子と、(b)約1.45〜約1.58の屈折率及び約0.5〜約5μmの平均粒径を有する石英、ガラスセラミック、若しくはガラス粉末、又はこれらの混合物、との混合物である。
本発明に従って硬化される組成物は、1種類のみの充填剤を含有できる。本発明に従って硬化される組成物は、2つ又はそれ以上の異なる種類の充填剤を含有することも可能であり、好ましい。異なる種類の充填剤は、化学組成、形状、寸法、粒度分布、又はその他の特徴、又は上記特徴の2つ以上の組み合わせが異なることができる。
【0062】
充填剤は、界面化合物によって修飾されることができる。界面化合物は、例えば縮合によって、充填剤の表面に化学的に結合した物質であり、ROMPによって作られるポリマー網状組織に組み込むことができる。通常、これらは2つの異なる官能基を含む。1つの官能基は充填剤材料の表面に化学的に結合することができ、第2の官能基は、通常はROMP反応を通じて、モノマーマトリックスと架橋することができる。好ましい物質は、一般式XabSiR1(4-a-b)によって記述されるシラン類であり、式中Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル又は−NR”2、好ましくはメトキシ又はエトキシであり:Rは、アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルであり;R”は水素、アルキル又はアリールであり;R1は、ROMPによって得られるポリマー網状組織に組み込むことができる不飽和の歪んだ脂環式基を含む有機基、好ましくはノルボルネニル、7−オキサ−ノルボルネニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、又はシクロオクテニルであり、aは1、2又は3であり;bは0、1又は2であり、(a+b<4)である。好ましい例:
【化19】

【0063】
本発明に従って硬化される組成物は、充填剤を約10〜約 90重量%の量で、好ましくは約40〜約85、又は約60〜約 80重量%の量で含有する。充填剤が、その寸法に関して異なる化合物、例えば構造充填剤及び微小充填剤を含有すると、好ましくなり得る。微小充填剤の量は0〜約50重量%であることができる。
【0064】
硬化される組成物は、好ましくは
a) 約9,999〜約50重量%の、開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な1つのモノマー又は2つ以上のそのようなモノマーの混合物、
b) 約100〜約3000重量ppmの、ROMP硬化反応を開始するための少なくとも1つの反応開始剤であって、前記ppm値はモノマーの量に対する反応開始剤中の金属の量に関係する、及び
c) 約49,999〜約90重量%の充填剤又は2つ以上のそのような充填剤の混合物、を含む。
【0065】
加えて、組成物は、必要であれば、安定剤、UV吸収剤、染料、顔料及び/又はスリップ剤のようなさらなる補助剤を含有することができる。補助剤は、任意に、各々約0.5重量%までの量で使用される。
【0066】
好適な安定剤は、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル又は2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール (BHT)である。
【0067】
本発明に従って硬化される組成物は、未硬化処方又は硬化プロセスの安定性への影響を示す1つ以上の変性剤をさらに含有することができる。安定剤は、ルテニウム配位部位でホスフィン配位子とうまく、しかし可逆的に競争する物質であることができ、促進剤は、銅(I)イオンのようにホスフィン配位子を補足してそれが再配位するのを防止する物質、又はフェニルアセチレンのようにルテニウムカルベン種を生じる剤のようなルテニウム錯体をより反応性の高いものに変換する物質であることができる。
【0068】
本発明に従って硬化される組成物は、1つ以上の不透明度変性剤をさらに含有することができる。不透明度変性物質が使用できるとき、それはマトリックス内で光を錯乱する高い能力を持ち、好ましくは処方の残りと十分に異なる屈性率を示す物質、例えばTiO2、Al23、YF3又はYbF3である。本発明に従って硬化される組成物は、柔軟剤、溶媒、相溶剤、レオロジー変性剤、着色顔料、有機又は無機繊維のような添加剤をさらに含有することができる。
【0069】
硬化される組成物は、少なくともペースト状であり、成形可能又は注入可能な液体状態であるべきである。組成物を硬化前に容易に所望の形状に容易にできるためには、組成物の粘度は、約100mPasを超え、約10Pas未満であるべきである。
【0070】
組成物のブルックフィールド粘度は、好ましくは約10〜約100000mPas又は約20〜約 50000mPasの範囲内である。
【0071】
本発明は、上記の固体材料の調製方法にも関し、開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な少なくとも1つの官能基を有する、ROMPによる硬化が可能な少なくとも1つのモノマー、ROMP硬化反応を開始するための少なくとも1つの反応開始剤、及び少なくとも1つの充填剤を含む組成物が硬化され、前記硬化組成物が約130℃を超える温度で焼戻しされる。
【0072】
本発明による硬化組成物は、一般に、単一工程で硬化及び焼戻しすることができる。この場合、組成物が適切な加熱装置内で硬化されるのであれば、硬化及び焼戻しが所望の程度にまで実行されるまで、単純に組成物を加熱装置内に放置することができる。硬化が約130℃の最小焼戻し温度よりも低い温度で起こる場合、それに応じて所望の硬化レベルに達するように加熱装置内の温度を調節することができる。
【0073】
本発明の方法では、硬化及び焼戻しは別々の工程で実行することもできる。したがって、硬化される組成物は最初に高温で硬化され、その後例えば冷却されそして保管されて、続く工程で約130℃以上の温度で焼戻しされることができる。
【0074】
硬化及び焼戻しは、等しい又は異なる温度で実行できる。硬化が約130℃未満の温度、例えば約50℃を超え約150℃未満の温度で、例えば約80℃〜約140℃で実行される場合、有利となり得る。しかし、硬化を焼戻しと同じ温度で、例えば約130℃を超える温度、例えば約160℃以上、例えば約170℃を超える又は約180℃を超える温度で実行することも可能である。硬化温度の上限は、通常は、材料特性が硬化プロセスによって悪影響を受ける温度である。硬化温度が約250℃未満である場合、成功することがしばしば実証されている。
【0075】
硬化時間は、1つ以上の材料特性の所望の改良が達成されるように選択できる。一般に、特性の改良の焦点が材料の物理的特性にある場合、硬化組成物は、例えば、圧縮強度、又は曲げ強度、又は破壊靭性、又はヤング弾性率、又はこれらの特徴の2つ以上の組み合わせが焼戻ししない材料よりも改良されるまで焼戻しすることができる。
【0076】
特性の改良の焦点が硬化組成物の光学特性にある場合、該組成物は少なくとも、CIE L*a*bカラースキームによる焼き戻した材料の色彩が、焼戻ししない材料と比較して、約100により近いL値、又は約0により近いa絶対値、又は約0により近いb絶対値、又はこれらの改良の2つ以上の組み合わせ、を有するまで焼戻しされる。
【0077】
CIEL*a*b(CIELAB)は、しばしば、人間の目に見えるすべての色彩を記述するために従来使用されている最も完全な色彩モデルとみなされる。これは、 国際照明委員会(International Commission on Illumination (Commission Internationale d'Eclairage、従ってCIEはその名称の略語))によってこの特定の目的のために開発された。これらは、L、a及びbより導出されるL*、a*及びb*を表すことから、L、a及びbの後の*は、完全な名称の一部である。
【0078】
該モデルの3つのパラメータは、色彩の輝度(L、最小のLで黒が得られる)、赤と緑との間の位置(a、最小のaで緑が得られる)及び緑と青との間の位置(b、最小のbで青が得られる)を表す。
【0079】
本発明による固体材料の好ましい実施形態は、下記パラメータ:
曲げ強度: 少なくとも約155MPa、
ヤング弾性率: 少なくとも約9200MPa、
L値: 68を超える、
a値: 4未満、及び
b値: 20.5未満
のうちの少なくとも1つを満足する。
【0080】
最小焼戻し時間は、約5分もの短さであることができる。一般に、多くの場合、最小硬化時間が約10〜約30分である場合に成功することが実証されている。良好な結果は、多数の材料で、約30〜約 300分、例えば約90分以上、又は約90〜約180分、例えば約100〜約150分の硬化時間で達成できる。
【0081】
一般に、本発明の方法は、所望の結果を達成するのに適したいかなる方法でも実施できる。最初に、硬化する組成物を所望の形状を有する型に充填し、該組成物を高温で硬化することが有利となり得る。硬化組成物の焼戻しは、硬化組成物の硬化の直後、又は冷却後のいずれかで実施できる。硬化組成物は、硬化形状のままで焼戻しできる。最初に硬化組成物を型から取外し、その後該硬化組成物を焼戻すことも可能である。
【0082】
本発明による固体材料は、一般に、軽量で耐久性のあるROMP材料が必要とされるすべての技術分野で使用できる。本発明の好ましい実施形態によると、固体材料は、歯科用途における材料として、例えば、インレー、アンレー、ベニヤシェル、クラウン、又はブリッジ、一時的又は永久的な、人工歯又は義歯床又は義歯として、使用される。
【0083】
上記のような歯科用途は、しばしば、予め硬化した材料に機械的なミリング工程を、好ましくはCMCミリングマシンによって施すことによって作製される。このようなマシン類は、たいていは、削る標本を適所に正確に保持するために特に適合された専用の機械的ホルダを使用する。本発明は、したがって、本発明による固体材料又は本発明に従って調製された固体材料を含む歯科用ミリングブロック(DMB)と、ミリングマシンに適合した機械的ホルダとを提供する。
【0084】
本発明は、歯の修復方法にも関し、本発明による固体材料と、本発明に従って調製された固体材料のミリングの工程を含む。
【0085】
以下の実施例にて、本発明を説明する:
【0086】
以下の例に、本発明の実施例の成分が記載されている。記載された成分は、ペーストに練られ、ISO試験手順に従って作製された試験試料がその後試験される。曲げ強度及びヤング弾性率の結果が与えられている。さらに、L*a*bの数値が記載されている。
【実施例】
【0087】
化合物1
1. 6g モノマー:
【化20】

2. 0.017g 反応開始剤:
【化21】

3. 15g 充填剤:石英(中央値:0.7μm)
6重量%でシラン化
【化22】

【0088】
ペーストの調製:モノマー、反応開始剤及び充填剤を、スピードミキサー(Speed Mixer)(商標)DAC150FVZ(ハウスチャイルド・エンジニアリング(Hauschild Engineering))でペーストに混合した。使用した条件は、2200rpmで3分間、3回であった。前記ペーストを、各混合時間の前に、室温まで放置冷却した。
【0089】
曲げ強度及びヤング弾性率はISO4049:2000に従って試験した。
【0090】
L*a*b値の決定は、ハンターラボ・スキャン(HunterLab Scan)−2(ハンターラボ(Hunterlab)、米国バージニア州)にて行った。
【0091】
硬化組成物の焼戻し後に得られた結果を、次の表に記載する。
【0092】
標本は、以下の値を満足したか又は上回った場合に、特定のパラメータのための試験が遂行されたとみなした:
曲げ強度: >155 MPa
ヤング弾性率: >9200
L値: >68
a値: <4
b値: <20.5
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な少なくとも1つの官能基を有する、ROMPによる硬化が可能な少なくとも1つのモノマー、
b)ROMP硬化反応を開始するための少なくとも1つの反応開始剤、及び
c)少なくとも1つの充填剤
を含む組成物の硬化によって得られる固体材料であって、前記硬化組成物が約130℃以上の温度で焼戻しされる、固体材料。
【請求項2】
前記硬化組成物が、約160℃以上の温度で焼戻しされる、請求項1に記載の固体材料。
【請求項3】
前記硬化組成物が、約1時間以上焼戻しされる、請求項1又は2に記載の固体材料。
【請求項4】
前記組成物が、圧縮強度、又は曲げ強度、又は破壊靭性、又はヤング弾性率、又はこれらの特徴の2つ以上の組み合わせが、焼戻ししない材料よりも改良されるまで焼戻しされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項5】
前記材料が、下記パラメータ:
曲げ強度:少なくとも約155MPa、
ヤング弾性率:少なくとも約9200MPa、
L値:68を超える、
a値:4未満、及び
b値:20.5未満
のうちの少なくとも1つを満足する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項6】
L*a*bスキームによる焼き戻した材料の色彩が、焼戻ししない材料よりも、約100により近いL値、又は約0により近いa絶対値、又は約0により近いb絶対値、又はこれら改良の2つ以上の組み合わせ、を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項7】
開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な少なくとも1つのモノマーが、少なくとも1つのケイ素原子を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項8】
前記反応開始剤が、Ru及びOsから成る群から選択される少なくとも1つの金属を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項9】
硬化される組成物が
a)約9,999〜約60重量%の、ROMPによる硬化が可能な官能基を少なくとも1つ有する開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な少なくとも1つのモノマー又は2つ以上のそのようなモノマーの混合物、
b)約100〜約3000重量ppmの、ROMP硬化反応を開始するための少なくとも1つの反応開始剤であって、前記ppm値はモノマーの量に対する反応開始剤中の金属の量に関係する、及び
c)約49,999〜約90重量%の充填剤又は2つ以上のそのような充填剤の混合物を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項10】
約50℃で硬化された前記組成物が、約50℃で約5時間で、約10%未満の粘度増大を示す、請求項1〜9のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項11】
固体材料の調製方法であって、
a)開環メタセシス重合(ROMP)による硬化が可能な少なくとも1つの官能基を有する、ROMPによる硬化が可能な少なくとも1つのモノマー、
b)ROMP硬化反応を開始するための少なくとも1つの反応開始剤、及び
c)少なくとも1つの充填剤
を含む組成物が硬化され、該硬化組成物が約130℃以上の温度で焼戻しされる、方法。
【請求項12】
前記硬化及び焼戻しが、別々の工程で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化及び焼戻しが、等しい又は異なる温度で実行される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記焼戻しが、約140℃以上の温度で実行される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記硬化組成物が、約30分以上焼戻しされる、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記硬化組成物が、曲げ強度、又はヤング弾性率、又はこれらの特徴の組み合わせが、少なくとも焼戻ししない材料よりも改良されるまで焼戻しされる、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
L*a*bスキームによる前記焼き戻した材料の色彩が、少なくとも、焼戻ししない材料よりも約100により近いL値、又は0により近いa絶対値、又は0により近いb絶対値、又はこれら改良の2つ以上の組み合わせ、を有するまで前記硬化材料が焼戻しされる、請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の焼戻し組成物の、又は請求項11〜17のいずれか一項に従って調製された焼戻し組成物の、歯科用途材料としての使用。
【請求項19】
前記材料が、インレー、アンレー、ベニヤシェル、クラウン又はブリッジ、永久的又は一時的のいずれかの人工歯又は義歯床又は義歯である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の固体材料又は請求項11〜17のいずれか一項に従って調製された固体材料と、ミリングマシンに適合する機械的ホルダとを含む、コンポジットミリングブロック(CMB)。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の固体材料、又は請求項11〜17のいずれか一項に従って調製された固体材料を含む、インレー、アンレー、ベニヤシェル、クラウン、又はブリッジ。
【請求項22】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の固体材料、又は請求項11〜17のいずれか一項に従って調製された固体材料をミリングする工程を含む方法。

【公表番号】特表2009−525339(P2009−525339A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553315(P2008−553315)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/002576
【国際公開番号】WO2007/089801
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】