説明

開環重合体水素化物の金属除去方法

【課題】水素化した熱可塑性ノルボルネン系樹脂の脱触装置を小型化するとともに、重合触媒や水添触媒の金属化合物の除去性能を高める。
【解決手段】少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体の開環重合で得られる開環重合体を水素化した開環重合体水素化物のポリマー溶液を、又は少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体と当該単量体と共重合可能な化合物との開環重合で得られる開環重合体を水素化した開環重合体水素化物のポリマー溶液を、抽出剤を満たした向流接触型多段抽出塔40の塔頂部に連続的に供給し、該向流接触型多段抽出塔40の塔底部から連続的に排出することにより、前記開環重合体の水素化物から金属化合物を除去する開環重合体水素化物の金属除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体の開環重合で得られる開環重合体を水素化した開環重合体水素化物から、又は少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体と当該単量体と共重合可能な化合物との開環重合で得られる開環重合体を水素化した開環重合体水素化物から、重合触媒金属や水添触媒金属を除去する、開環重合体水素化物の金属除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、主鎖構造の剛直性に起因してガラス転移温度が高く、主鎖構造に嵩高い基が存在するために非晶性で光線透過率が高く、しかも屈折率の異方性が小さいことによる低複屈折性を示すなどの特長を有しており、耐熱性、透明性、光学特性に優れた透明熱可塑性樹脂として注目されている。
近年、上記の特徴を利用して、例えば光ディスク、光学レンズ、光ファイバーなどの光学材料、光半導体封止などの封止材料などの分野において、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を応用することが検討されている。
また、耐熱性に優れ、吸水性が低いなどの利点があるため、熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなるフィルムは光学用の各種フィルム、例えば、位相差板、導光板、偏光板保護フィルム、各種表示素子基板、タッチパネルなどに用いることができる。
【0003】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、下記の(イ)〜(ロ)に示す(共)重合体(以下「特定重合体」ともいう。)が挙げられる。
(イ)下記一般式(1)で表される化合物(以下「特定単量体a」ともいう。)の開環重合体の水素添加物。
(ロ)特定単量体aと、当該特定単量体aと共重合可能な化合物(以下「共重合性単量体b」ともいう。)との開環重合体の水素添加物。
【化3】


上記一般式(1)に於いて、mは1以上の整数、pは0または1以上の整数である。また、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。さらに、R1 とR2 、R3 とR4 またはR2 とR3 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環を形成していてもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。
【0004】
少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体を開環重合させて得られる開環重合体を、又は少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体と当該単量体と共重合可能な共重合性単量体とを開環重合させて得られる開環重合体を、攪拌機を備えた槽型反応器中で水素化した後、次いでピストンフロー型反応器中で水素化することを特徴とする開環重合体水素化物(=熱可塑性ノルボルネン系樹脂)の製造方法が提案されている(特許文献1,参照)。
【特許文献1】特開平08−059799号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂に重合触媒金属や水添触媒金属が残留していると、前述した各種の特性を十分に発揮できなくなって、前述した各種の用途に適さなくなる。このため、重合触媒金属や水添触媒金属を十分に除去することが望まれている。
従来は、回分式の脱触装置を用いて重合触媒金属や水添触媒金属を除去していたのであるが、回分式の脱触装置には、下記の不具合がある。
(1)現実的な時間内に触媒金属化合物を除去するためには、エージングタンクが1〜2基、抽出タンクが1〜3基、遠心分離機が1〜3基、ポリマーレシーバが1〜3基、それぞれ必要となる。このため、システム構成が大型化する。
(2)長時間の処理を行なっても、重合触媒や水添触媒の金属化合物を十分に除去できない。また、残留モノマーが多く、低分子量成分比も大きい。このため、前述した各種の特性を十分に発揮できず、各種用途での性能も十分でなくなる。
本発明は上記の不具合に鑑みたものであり、脱触装置を小型化するとともに、重合触媒や水添触媒の金属化合物の除去性能を高めることを目的とする。また、これにより、残留モノマーを無くすとともに、低分子量成分比を低減すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]〜[6]のように構成される。
[1]構成1:
下記一般式(1)で表わされる化合物(以下「特定単量体a」ともいう)を開環重合させて得られる開環重合体の水素化物のポリマー溶液、又は下記一般式(1)で表わされる化合物(以下「特定単量体a」ともいう)と当該特定単量体aと共重合可能な化合物(以下「共重合性単量体b」ともいう)とを開環重合させて得られる開環重合体の水素化物のポリマー溶液を、抽出剤を満たした向流接触型多段抽出塔の塔頂部に連続的に供給し、該向流接触型多段抽出塔の塔底部から連続的に排出することにより、前記開環重合体の水素化物から金属化合物を除去することを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
【化4】


上記一般式(1)に溶いて、mは1以上の整数、pは0または1以上の整数である。また、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。さらに、R1 とR2 、R3 とR4 またはR2 とR3 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環を形成していてもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。
【0007】
ポリマー溶液:
前記(イ)〜(ロ)に記述した熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、溶液状態で水添工程から送られて来るのであるが、これに公知の溶媒を適宜に添加してもよい。この溶媒としては、特に限定されず、前記(イ)〜(ロ)に記述した熱可塑性ノルボルネン系樹脂に用い得る各種の公知の溶媒を用いることができる。
例えば、トルエンを用いることができる。
抽出剤:
抽出剤は、向流接触型多段抽出塔の底部付近の抽剤入口から抽出塔の内部へ送り込まれる。この抽出剤は、向流接触型多段抽出塔の頂部付近の抽料入口から抽出塔の内部へ送り込まれてくるポリマー溶液との比重差により抽出塔内を徐々に上方へ移動した後、向流接触型多段抽出塔の頂部付近の抽出液出口から排出されて、溶剤回収工程へ送られる。
抽出剤としては、例えば、メタノールとトルエンを所定比で混合した混合溶液を用いることができる。ここで、メタノール/トルエン比は0.2〜1.2の範囲、好ましくは0.4〜1.0の範囲である。このメタノール/トルエン比が0.2未満ではポリマー用液中のポリマー成分が抽剤に溶解するという不具合がある。また、このメタノール/トルエン比が1.2を越えるとポリマー用液中のポリマー成分が凝集し、固体となり抽出塔内を閉塞するという不具合がある。
抽出剤はメタノールとトルエンの混合溶液に限定されず、他に、アセトン、テトラヒドロフラン、等を用いることもできる。
【0008】
向流接触型多段抽出塔:
向流接触型多段抽出塔は、上下方向に設けた管(抽出塔)内に、それぞれが複数の貫通孔を備えた攪拌板(開孔率50〜60%程度,外径が抽出塔の内径に略合致)を複数枚配して成り、抽出塔外(例:塔頂部の上)に設けた駆動源からの駆動力で各攪拌板を一体で上下方向に往復移動させることにより、抽出塔下部から連続的又は間欠的に供給される相対的に軽量の抽出剤を下方から上方へ移動させて抽出塔上部から排出するとともに、抽出塔上部から連続的又は間欠的に供給される相対的に重いポリマー溶液を上方から下方へ移動させて抽出塔下部から排出する装置である。この下方への移動時にポリマーは攪拌板の貫通孔を通過するため、千切られて小さくなる、凝縮して大きくなる、という操作を繰り返される。この繰り返し操作により、ポリマーに残留していた重合や水添の触媒金属化合物は徐々に除去されて、抽出剤とともに抽出塔上部から排出される。こうして触媒金属化合物を低減されたポリマー溶液は、塔底部から排出される。
抽出塔の内径や筒長、攪拌板の枚数や開孔率或いは貫通孔の数、攪拌板の移動速度、ポリマー溶液の単位時間当たりの供給量、抽出剤の単位時間当たりの供給量等は、触媒金属化合物の除去の目標値や、除去に要する時間の目標値等に応じて、適宜に設定されるものとする。また、抽出塔や攪拌板の材質、攪拌板の駆動力や伝達機構等は、ポリマー溶液の量や粘度、抽出剤の種類等に応じて適宜に選択されるものとする。
向流接触型多段抽出塔としては、例えば、住重プラントエンジニアリング(株)製のカールカラム(登録商標)抽出装置を用いることができる。
【0009】
[2]構成2:
構成1に於いて:
向流接触型多段抽出塔の塔底部から連続的に排出したポリマー溶液を、さらにフィルタで濾過することを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
フィルタ:
フィルタでは、向流接触型多段抽出塔では除去しきれなかった触媒金属化合物を除去する。つまり、向流接触型多段抽出塔の後段にフィルタを設けることにより、金属除去の能力をシステム全体として向上させるとともに、金属の除去を向流接触型多段抽出塔とフィルタとに分配して行なうことにより、金属除去の全所要時間を短縮している。
フィルタとしては、例えば、特開2003−026721号公報に記載されている公知のフィルタ装置やフィルタエレメントを用いることができる。特開2003−026721号公報の図3とその説明には同公報の技術に対する従来のフィルタ装置が記載されており、図1とその説明には同公報に於いて開示されたフィルタ装置が記載されている。
フィルタは1段に限定されず、2段以上の多段に設けてもよい。例えば、3段に設けても良い。また、フィルタを多段に設ける場合に於いて、後段になるにしたがって細かいメッシュのフィルタエレメントを用いるようにしてもよい。
【0010】
[3]構成3:
構成1又は構成2の何れかに於いて、
共重合性単量体bは下記一般式(2)で表される化合物である、
ことを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
【化5】


上記一般式(2)中、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。さらに、R1 とR2 、R3 とR4 またはR2 とR3 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環(ただし、前記一般式(1)で表される構造を除く)を形成してもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。
【0011】
[4]構成4:
構成1〜構成3の何れかに於いて、
向流接触型多段抽出塔に満たす抽出剤は、メタノール/トルエン比を0.2〜1.2の範囲に調整した混合溶液である、
ことを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
【0012】
特定単量体・開環重合体:
ここで、特定単量体a、共重合性単量体b(特定単量体b)、特定重合体、及びこれらを構成する各種要素(前記一般式(1)(2)の要素)や、さらに、開環重合触媒や水添触媒について説明する。
【0013】
一般式(1)(2)の要素:
一般式(1)や(2)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
また、炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
また、一般式(1)や(2)における置換または非置換の炭化水素基は、直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage )を介して結合していてもよい。
連結基としては、例えば炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基〔例えば、−(CH2q−(式中、qは1〜10の整数)で表されるアルキレン基〕;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基〔例えば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基 (−O(CO)−)、スルホン基(−SO2 −)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結 合(−S−)、イミノ基( −NH−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、シロキ サン結合(−OSi(R5 2 )− (式中、R5 はメチル、エチルなどのアルキル基)〕、ある いはこれらの2種以上が結合されたもの などが挙げられる。
極性基としては、例えば水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド環含有基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル含有基、およびカルボキシル基などが挙げられる。
さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などが挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては、例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などが挙げられ;トリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられ;アミノ基としては、第1級アミノ基が挙げられ;アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
共重合性単量体bにおいて、R1 とR2 、R3 とR4 またはR2 とR3 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環(ただし、前記一般式(1)で表される構造を除く)を形成してもよく、そのような構造を有する共重合性単量体bとしては、例えば、下記式(2−1)で表される化合物、下記式(2−2)で表される化合物などが挙げられる。
【化6】


(式(2−1)および(2−2)中、R5〜R10は、各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素 、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。)
【0014】
特定単量体aの具体例:
特定単量体aの具体例としては、
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[9.2.1.13,9 .02,10.04,8 ]−12−ペンタデセン、
ペンタシクロ[9.2.1.15,8 .02,10.04,9 ]−12−ペンタデセン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
【0015】
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
【0016】
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
【0017】
8−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(4−ビフェニルカルボニルオキシエチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(3−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(3−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
1,2−(2H、3H−[1,3]エピシクロペンタ)−1,2−ジヒドロアセナフチレンとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加体、
などを挙げることができるが、特定単量体aは、これらの化合物に限定されるものではない。また、これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて特定単量体aとして用いることができる。
【0018】
これらの中では、分子内に少なくとも1つの極性基を有する化合物が好ましく、特に、一般式(1)において、R1 およびR3 が水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R2 およびR4 が水素原子または一価の有機基に相当するものであって、かつR2 およびR4 の少なくとも一つが水素原子および炭化水素基以外の極性基であるものが、他素材との密着性・接着性を高めるので好ましい。
【0019】
ここに、得られる特定重合体中の極性基の含有量は、最終製品に要求される所望の機能などにより決定されるものであり、特に限定はされないが、特定単量体aに由来する全構造単位中に極性基を有する特定単量体aに由来の構造単位が、好ましくは1モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上、特に好ましくは10モル%以上であり、特定単量体aに由来する全構造単位が極性基を有するものであってもよい。
【0020】
また、特定単量体aとしては、一般式(1)において、R2 およびR4 の少なくとも一つが下記一般式(3)で表される極性基を有するものであることが、得られる特定重合体のガラス転移温度と吸水性、透湿度を制御しやすい点で好ましい。
−(CH2n COOR6 ・・・・・・(3)
上記一般式(3)中、nは0〜5の整数であり、R6 は一価の有機基である。
【0021】
一般式(3)においてR6 で表される一価の有機基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニリル基などのアリール基;この他にもジフェニルスルホン、テトラヒドロフルオレンなどのフルオレン類などの芳香環やフラン環、イミド環などの複素環を有する一価の基などが挙げられる。また、一般式(3)において、nは0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0である。nの値が小さいものほど得られる特定重合体のガラス転移温度が高くなるので好ましく、特にnが0である特定単量体aは、その合成が容易である点で好ましい。
【0022】
さらに、特定単量体aは、一般式(1)において、一般式(3)で表される極性基が結合した炭素原子にさらにアルキル基が結合したものであることが好ましく、これにより、得られる特定重合体の耐熱性と吸水性、透湿度のバランスを図ることができる。ここで、アルキル基の炭素原子数は1〜5であることが好ましく、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
また、特定単量体aとしては、一般式(1)においてmが1でありpが0であるものは、ガラス転移温度の高い特定重合体が得られる点で好ましい。
【0023】
したがって、前述の特定単量体aの具体例の中から挙げるならば、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10 ]−3−ドデセンが特に好ましく、このような特定単量体aを用いることにより、ガラス転移温度が高く、吸水による変形などの悪影響を殆ど受けずかつ他材料との密着性や接着性が良好となる程度の吸水性を有する特定重合体を得ることができる。
【0024】
特定単量体b(共重合性単量体b):
特定単量体bの具体例としては、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(α体およびβ体)、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0025】
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ [2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−フェニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0026】
4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)フェニルスルホニルベンゼン、
5−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニルカルボニルオキシプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(3−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(3−ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−ナフチルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0027】
5−メチル−5−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(9−アントラセニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
アセナフチレンとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加体、
などを挙げることができるが、特定単量体bは、これらの化合物に限定されるものでなはい。また、これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて特定単量体bとして用いることができる。
なお、上記式(2−1)で表される化合物の具体例としては、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−イソプロピル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,7−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メチル−8−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェノキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メチル−7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,7−ジフルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジフルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
などを挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。
また、上記式(2−2)で表される化合物の具体例としては、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(DCP)、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
9−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン
7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−フェノキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−メチル−7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエ ン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7,8−ジフルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン
などが挙げられるが、これらの例示に限定されるものではない。
【0028】
これらの中では、一般式(2)におけるR1 〜R4 が、全て水素原子であるもの、またはいずれか1つが炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、その他の全部が水素原子であるものが、最終的に得られる特定位相差フィルムの吸水性を制御することができる点で好ましく、特に、R1 〜R4 が、全て水素原子であるもの、またはいずれか1つがメチル基、エチル基若しくはフェニル基であり、その他の全部が水素原子であるものが、耐熱性の高い特定重合体が得られる点で好ましい。さらに、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(DCP)が 、光学フィルムとして用いた場合の靱性を向上させる効果が極めて顕著である点で好ましい。
【0029】
特定重合体:
特定単量体a、又は、特定単量体aと特定単量体bとを共重合させることによって得られる特定重合体は、当該特定単量体aおよび特定単量体b以外の他の共重合性単量体とともに共重合されてなるものであってもよい。
他の共重合性単量体としては、例えばシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素原子数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。
さらにポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖にオレフィン性不飽和結合を有する不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体aおよび必要に応じて特定単量体bを重合させてもよく、このようにして得られる特定重合体は、耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
【0030】
特定重合体の30℃クロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh )は、0.2〜5dl/g であることが好ましい。さらに好ましくは0.3〜4dl/g、特に好ましくは0.5〜3dl/gである。5dl/gを超えると、溶融粘度が高くなりすぎ、加工性が悪化することがある。一方、0.2dl/g未満であると、フィルム強度が低下することがある。
【0031】
特定重合体の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常は8,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは15,000〜100,000、特に好ましくは20,000〜100,000である。また、重量平均分子量(Mw)が、通常は20,000〜3,000,000、好ましくは30,000〜1,000,000、さらに好ましくは40,000〜500,000、特に好ましくは40,000〜300,000の範囲である。
また、特定重合体の分子量分布は、上記のMw/Mnが、通常、1.5〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2.5〜5、特に好ましくは2.5〜4.5である。
【0032】
特定重合体の23℃における飽和吸水率は、好ましくは0.05〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜0.7重量%、特に好ましくは0.1〜0.5重量%である。飽和吸水率がこの範囲内であると、各種光学特性、例えば透明性、位相差や位相差の均一性あるいは寸法精度が、高温多湿のような条件下でも維持され、他材料との密着性や接着性に優れるため使用途中で剥離などが発生せず、また、酸化防止剤などの添加物との相溶性も良好であるため、添加の自由度が大きくなる。飽和吸水率が0.05重量%未満であると、他材料との密着性や接着性が乏しくなり使用中に剥離を生じやすくなる場合があり、また、酸化防止剤などの添加物の配合に制限が生じることもある。一方、1重量%を超えると、吸水により光学特性の変化や寸法変化を起こしやすくなる。なお、上記の飽和吸水率はASTM D570に準拠し、23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる値である。
【0033】
特定重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば特定重合体の構造単位a(特定単量体aに由来の構造単位)および/または構造単位b(特定単量体bに由来の構造単位)の種類、もしくは構造単位aと構造単位bとの比の調整、あるいは添加剤の添加などにより適宜変えることが可能であるが、通常は100〜250℃、好ましくは110〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃である。Tgが100℃未満の場合は、熱変形温度が低くなり、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また、最終的に得られるフィルムの光学特性が温度により大きく影響を受けることがある。一方、Tgが250℃を超えると、溶融押出加工や延伸加工などに加熱して加工する場合に熱可塑性ノルボルネン系樹脂が熱劣化する可能性が高くなったり、フィルム厚み方向の光軸の傾斜の制御がし難くなったりする。
【0034】
構造単位aおよび構造単位bを有する特定重合体においては、構造単位aと構造単位bとの比(a/b)は、好ましくは、モル比ではa/b=95/5〜5/95、さらに好ましくは95/5〜60/40である。構造単位aの割合が上記範囲より大きいと靱性改良の効果や所望の光学特性が期待できない場合があり、逆に、構造単位aの割合が上記範囲より小さいとガラス転移温度が低くなり、耐熱性に問題が生じる場合がある。
【0035】
さらに、構造単位aおよび構造単位bを有する特定重合体において、当該重合体中の構造単位aと構造単位bの比率(組成比)は、分子量分布全範囲においてバラツキが小さいことが好ましい。具体的には、重合反応に供した特定単量体aと特定単量体bとの比率に対して、任意の分子量における組成比を、±50%以内、好ましくは±30%以内、さらに好ましくは±20%以内のバラツキ範囲に収めることで、より一層均一な特定位相差フィルムを得ることができる。また、こうした範囲に収めることで、延伸配向した際に、位相差のより一層の均一性を得ることが可能となる。
【0036】
特定重合体の製造条件:
以下に、特定単量体a及び特定単量体bあるいはその他の共重合性単量体を開環共重合するための条件について説明する。
【0037】
開環重合触媒:
単量体の開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、
(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、
(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えば Mg、Caなど)、IIB族元素(例えばZn、Cd、Hgなど)、IIIB族元素(例えばB、Alなど)、IVA族元素(例えばTi、Zrなど)あるいはIVB族元素(例えばSi、Sn、Pbなど)の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種と、
の組合せからなる触媒である。
またこの場合に触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。
【0038】
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl6 、MoCl5 、ReOCl3 など特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n−C49 Li、( C25 )3 Al 、( C25 )2 AlCl、( C25 )1.5 AlCl1.5 、( C25 )AlCl2 、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、さらに特開平1−240517号公報に記載の化合物を使用することができる。
【0039】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体a及び特定単量体b(以下、双方を併せて「特定単量体」という。)とのモル比で「(a)成分:特定単量体」が、通常、1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる範 囲である。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲である。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲である。
【0040】
分子量調節剤:
特定重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。
好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
分子量調節剤の使用量としては、重合反応に供される特定単量体1モルに対して、0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
【0041】
開環重合反応用溶媒:
開環重合反応において用いられる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素類;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素化合物類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチルなどの飽和カルボン酸エステル類;ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、上記芳香族炭化水素類が好ましい。
溶媒の使用量としては、溶媒:特定単量体(重量比)が、通常、1:1〜10:1となる量、好ましくは1:1〜5:1となる量である。
【0042】
特定重合体への配合/添加:
特定重合体には、透明性・耐熱性を損なわない範囲で公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、無機微粒子などを配合してもよい。
特定重合体には、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤などを添加してもよい。
酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスチルテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−(β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]、2,4,8,10−テトラオキスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが挙げられる。
紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
これらの添加剤の添加量は、特定重合体100重量部に対して、通常、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部である。
さらに、酸化防止剤および紫外線吸収剤以外に、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0043】
水素添加触媒:
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒及び均一系触媒が公知である。なお、芳香環を有する置換基を分子内に有する開環重合体を水素添加する場合には、芳香環の不飽和結合が実質的に水素添加されない条件を選択することが好ましい。
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属類を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。具体的には、ベンゾエトカルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、(4−ペンチルベンゾエト)カルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、(4−オクチルベンゾエト)カルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどが挙げられる。
また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。
これらの水素添加触媒は、「開環重合体:水素添加触媒(重量比)」が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
【0044】
水添工程:
水素添加工程は金属除去工程の前段に於いて連続工程として行なうことが望ましい。
例えば、前述の特定単量体aを開環重合させて得られる開環重合体、又は特定単量体aと共重合可能な前述の共重合性単量体bとを開環重合させて得られる開環重合体を、撹拌機を備えた槽型反応器である第1反応器中にて160℃より低温で水素化し、続いて、プラグフロー型反応器である第2反応器中にて160℃以上で水素化するという工程により、水添工程を、本発明の金属除去工程の前段の連続工程として行なうことができる。
【0045】
第1反応器:
第1反応器、即ち、撹拌機を備えた槽型反応器としては、当該第1反応器に連続的に供給される開環重合体溶液及び水素化触媒と、当該第1反応器内の開環重合体溶液とを十分に混合でき、水素と開環重合体溶液の接触を促せるものであればよい。例えば、ディスクタービン型撹拌機、ファンタービン型撹拌機、プロペラ型撹拌機、リボン型撹拌機などが挙げられる。撹拌機で撹拌することにより、水素の拡散速度を増して反応速度を大きくすることができる。第1反応器での水素化率は、70〜98%、好ましくは85〜95%とするとよい。第1反応器での水素化率が70%より低いと、第1反応器の後段のプラグフロー型反応器(後述)での水素化反応後に於いても99%以上の高水素化率を得ることは困難となる。一方、相対的に低温(160℃未満)の第1反応器での水素化率を98%より高くしようとすると、処理時間を長くする必要があるため第1反応器の容量を大きくせざるを得ず(設備を大型化せざるを得ず)、経済的に不利となる。
第1反応器では、異性化反応を抑制するために、通常の水添温度よりも低い160℃未満、好ましくは150℃未満、更に好ましくは145℃以下の温度を設定する。
また、第1反応器内の圧力としては、9.0〜10.0MPaの範囲、第1反応器内の滞留時間は1〜3時間、好ましくは1〜2時間の範囲である。
【0046】
第2反応器:
第1反応器にて水素化率70〜98%、好ましくは85〜95%まで水素化された開環重合体溶液は、第1反応器から連続的に抜き出されて、相対的に高温の水素で保持されたプラグフロー型反応器(第2反応器)に連続的に供給される。ここで、プラグフロー型反応器とは、物質が反応器内を流れ方向に一様の速度で移動し、流れ方向における混合や拡散の度合いが無視できる程度に小さく、流れ方向に直角な方向における物質の濃度分布が実質上均一である管型反応器のことをいう。このプラグフロー型反応器としては、管内に不規則充填材を充填した反応器を用いることができる他、例えば、(株)ノリタケカンパニーリミテド製の「スタティックミキサー」、住友重機械工業(株)製の「スルザーミキサー」、櫻製作所(株)製の「スケヤミキサー」などを用いることができる。
第2反応器では、水素化率が高い状態で更に水素化を進行させるために、通常の水添温度よりも高い160℃以上、好ましくは170〜180℃の温度を設定する。
最終的な水素化率は、97%以上、好ましくは99%以上である。
また、第2反応器内の圧力としては、9.0〜10.0MPaの範囲、第2反応器内の滞留時間は1〜3時間、好ましくは1〜2時間の範囲である。
【0047】
[5]構成5:
構成1〜構成4の何れかに於いて、
開環重合体の水素化物のポリマー溶液に乳酸を添加してラインブレンダ(連続自動混合装置)で均一に拡散させ、さらに、メタノールを添加してエージングタンクで均一化した後、向流接触型多段抽出塔の塔頂部に供給する、
ことを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
乳酸の添加により、抽出効果が高まる。添加する酸の強度が強いほど抽出効果は高まるが、ポリマーを劣化させてしまうため、このバランス上、構成5では乳酸を選択する。
乳酸の添加量は、ポリマー溶液100重量部に対して、0.5〜2.5重量部、好ましくは1.0〜2.0重量部である。乳酸の添加量が0.5重量部より少ないと、開環重合や水素化に使用した触媒金属が除去され難いという不具合がある。また、乳酸の添加量が2.5重量部を越えると、乳酸除去のために向流接触型抽出塔のサイズを大きくしなくてはならないという不具合がある。
ラインブレンダ(連続自動混合装置)としては、例えば、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスタティックミキサーを使用することができる。
エージングタンクとしては、例えば、月島機械(株)製の円筒堅型タンクを使用することができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の溶媒としてトルエンを用いた場合、エージングタンク内では、メタノール/トルエン比は、0.1〜1.0の範囲、好ましくは0.2〜0.5の範囲である。また、温度は55℃以下である。
【0048】
[6]構成6:
構成2又は構成3に於いて、
向流接触型多段抽出塔に満たす抽出剤は、メタノール/トルエン比を重量比で0.2〜1.2の範囲に調整した混合溶液であり、
開環重合体の水素化物のポリマー溶液に乳酸を添加してラインブレンダで均一に拡散させ、さらに、メタノールを添加してエージングタンクで均一化した後、向流接触型多段抽出塔の塔頂部に供給するとともに、
向流接触型多段抽出塔の塔底部でのポリマー溶液の濃度がポリマー溶液フィルタに供給可能な濃度となるようにメタノールの添加量を制御する、
ことを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
例えば、エージングタンクへ添加するメタノールの量を制御することにより、向流接触型多段抽出塔へ供給するポリマー溶液中の固形分濃度を25重量%程度とし、抽剤(メタノール/トルエン混合溶液)と向流する下降中に膨潤させて17重量%程度にして排出する。この17重量%という濃度は、フィルタに供給可能な濃度である。
【発明の効果】
【0049】
本発明によると、重合や水添の触媒金属の残留量を十分に低減できる。
また、本発明によると、残留モノマーを十分に低減できるとともに、重量平均分子量Mwが10,000以下の低分子量成分比を0.3〜2%程度にでき、これは、回分式の脱触装置で脱触する場合の4〜6%と比較すると、十分に小さい値である。このため、本発明の金属除去後の熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いてフィルムを成膜した場合は、位相差の発現性を向上させることができ、薄膜化できる。また、本発明の金属除去後の熱可塑性ノルボルネン系樹脂を成形する成形機の金型の汚れを防止できる。また、仕上工程の脱揮装置内に汚れが付着することを防止できる。
また、本発明によると金属除去装置での滞留時間は0.6時間程度であり、これは、回分式脱触装置で同量を金属除去する場合の所要時間(6時間以上)よりも十分に短い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、図面を参照して、水添工程と、水添工程に続く脱触工程の例を説明する。
水添工程:
図1は、開環重合体を水素化して熱可塑性ノルボルネン系樹脂を製造するシステムの一例を示す。図示のシステムは、第1反応器10と、第2反応器20を有する。
第1反応器10は通常の槽型反応器であり、反応器内部を所望の圧力(例:9.0〜10.0MPa程度)に設定したり、所望の温度(例:100〜160℃程度)に設定するための設備を有する。また、第1反応器10は、底部からポンプPの制御により開環重合体を所望量づつ連続的又は間欠的に供給する設備や、上部からバルブVの制御により水素化後(即ち水素化途中)の開環重合体を所望量づつ連続的又は間欠的に取り出して第2反応器20へ送り込む設備を有する。また、第1反応器10には、水素供給口(不図示)から水素を所望の圧力で圧入できるとともに、触媒供給口(不図示)から所望量の水添触媒を供給できる。この第1反応器の容量は、本例の場合、0.005m3 である。また、第1反応器10としては、具体的には、JSRエンジニアリング(株)製のHYDROGENATION REACTORを用いている。
【0051】
第2反応器20は、管状の容器内に不規則充填材25をランダムに充填して成るプラグフロー型反応器である。第2反応器20は、反応器内部を所望の圧力(例:9.0〜10.0MPa程度)に設定したり、所望の温度(例:140〜190℃程度)に設定するための設備を有する。また、第2反応器20は、底部からバルブVの制御により第1反応器10での水素化後(即ち水素化途中)の開環重合体を所望量づつ連続的又は間欠的に供給する設備や、上部から水素化終了後の開環重合体(熱可塑性ノルボルネン系樹脂)を所望量づつ取り出す設備を有する。また、第2反応器20には、触媒供給口(不図示)から所望量の水添触媒を供給できる。この第2反応器の容量は、本例では0.005m3 であり、L/Dは4.6である。また、第2反応器20としては、具体的には、JSRエンジニアリング(株)製のパイプリアクターを用いており、不規則充填材としては、(株)奥谷金網製作所製のラッシヒリングを用いている。
【0052】
水添工程では、下記(a)のようにして、水素化された熱可塑性ノルボルネン系樹脂が製造される。これらは、それぞれ金属除去工程に送られる。
(a)第1反応器としては、ジャケット及びプロペラ型攪拌機を備えた反応容器を用い、内部を水素ガスで置換した後、この反応容器を水素で充填し、開環重合体、水素添加触媒、反応により吸収された分の水素ガスを連続的に供する。開環重合体の第1反応器内の滞留時間は、2〜3時間にコントロールする。反応により水素ガスが吸収されている間の反応容器の温度は140〜150℃に保ち、開環重合体供給タンクと反応容器間の配管は、保温することが好ましい。
第2反応器は、二重管タイプのパイプリアクターを用い、内部は上述した不規則充填剤を充填し、水素ガスで置換した後、この反応器を水素で充填し、第1反応器で一部が水添された開環重合体を第1反応器より、水素添加触媒、反応により吸収された分の水素ガスを直接、第2反応器へ連続的に供した。第1反応器で一部が水添された開環重合体の第2反応器内の滞留時間は、2〜3時間にコントロールする。反応により水素ガスが吸収されている間の反応容器の温度は155〜165℃に保つ。
【0053】
金属除去工程:
第2反応器20から取り出された開環重合体(熱可塑性ノルボルネン系樹脂)は、必要に応じて溶媒(例:トルエン)を加えられ、さらに所要量の乳酸を添加されて、図2の脱触システム内のラインブレンダ30へ供給される。
【0054】
図2は、水素化された熱可塑性ノルボルネン系樹脂を金属除去するシステム例を示す。図示のシステムは、ラインブレンダ(連続自動混合装置)30、バルブ50、エージングタンク35、向流接触型多段抽出塔40、バルブ55、フィルタ61を有する。
ラインブレンダ(連続自動混合装置)30としては、ここでは(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスタティックミキサーを用いている。ラインブレンダ30内の温度、圧力は、それぞれ30〜60℃の範囲、0.0〜5.0MPaの範囲に設定される。
ラインブレンダ30への供給前に、ポリマー溶液には、ポリマー溶液の固形分100重量部に対して1.0〜2.0重量部の乳酸が添加される。
エージングタンク35としては、ここではJSRエンジニアリング(株)製の円筒堅型タンクを用いている。また、エージングタンク35内でのメタノール/トルエン比が重量比で0.2〜0.5の範囲になるように、エージングタンク35への供給前に、所要量のメタノールが添加される。また、エージングタンク35内の温度、圧力は、それぞれ、30〜60℃の範囲、0.0〜5.0MPaの範囲に設定される。
【0055】
エージングタンク35から送り出されたポリマー溶液は、向流接触型多段抽出塔40の塔頂部付近の抽料入口41から、円筒状の抽出塔40の内部へ連続的に送り込まれる。また、向流接触型多段抽出塔40の底部付近の抽剤入口42からは、抽剤(メタノールとトルエンの混合溶液、メタノール/トルエン比=0.2〜1.2の範囲)が、連続的に抽出塔40の内部へ送り込まれる。
向流接触型多段抽出塔40は、抽出塔の上部に駆動源(モータ)45を備えており、該駆動源45から伝達される駆動力により、円板状の複数枚の攪拌板46が一体に上下方向に往復移動される。最大移動速度は、1〜10cm/secの範囲である。各攪拌板46は、本例では、それぞれ4個の貫通孔を有し、開口率(開口面積/攪拌板面積)は56%である。また、各攪拌板の外径は、抽出塔40の内径に略合致する。つまり、攪拌板46の外周面と抽出塔40の内周面との間には、攪拌板46の上下移動を可能とする程度の僅かなクリアランスのみが設けられている。なお、本例の抽出塔40は、内径が25.4mm、筒長が1800mmである。
抽出塔40の塔頂部付近の抽料入口41から送り込まれたポリマー溶液は、底部付近の抽剤入口42から送り込まれた抽出剤(メタノール/トルエン混合溶液)との比重差及び上述の攪拌板46の移動により徐々に下降して抽出塔底部に至り、抽残液出口43から送り出され、バルブ55を経て、フィルタ61へ送られる。
同様に、抽出塔40の底部付近の抽剤入口42から送り込まれた抽出剤(メタノール/トルエン混合溶液)は、塔頂部付近の抽料入口41から送り込まれたポリマー溶液との比重差及び上述の攪拌板46の移動により徐々に上昇して抽出塔上部に至り、抽出液出口44から送り出されて溶剤回収工程へ送られる。
【0056】
抽出塔40内を上記のように下降する間に、ポリマーは、上下移動を繰り返している複数枚の攪拌板46の貫通孔を通過し、千切られて小さくなる、凝縮して大きくなる、という操作を繰り返される。この繰り返し操作により、ポリマーに残留していた重合や水添の触媒金属化合物は徐々に除去される。触媒金属化合物の残留量を低減されたポリマー溶液は、抽出塔底部の抽残液出口43から上述のように排出される。
また、下降時、ポリマー溶液は徐々に膨潤するため、当初は25重量%程度であった固形分濃度が、出口付近では17重量%程度になる。このため、遠心分離等の処理を施さなくても、そのままフィルタへ送り込むことが可能である。なお、当初の濃度を25重量%程度に設定しないことにより、及び/又は、攪拌板46の移動速度を調整等して抽出塔40内での滞留時間を変えることにより、出口付近での固形分濃度を17重量%程度とは異なる値にして、遠心分離等の処理を施すようにする構成も可能である。
【0057】
フィルタは、本例では、1段で構成されているが、これに代えて多段(例:3段)に構成したり、さらに、後段のフィルタほど細かいメッシュとなるように構成してもよい。このように構成すると、比較的粒径が粗い触媒金属から比較的粒径が細かい重合や水添の触媒金属まで順に捕集可能である。
【実施例1】
【0058】
開環重合体の調製:
特定単量体aとして下記[化7]で示される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10 ]−3−ドデセンを用い、共重合性単量体bとして下記[化8]で示されるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを用いて、開環重合反応を行った。
【化7】


【化8】


ジャケットおよびパドル型攪拌機を備えた反応容器の内部を窒素ガスで置換し、この反応容器内に、トルエンを18.0kg仕込み、80℃に加熱し、六塩化タングステンのジメトキシエタン溶液(溶液濃度=1.14重量%)を58.1g、ジエチルアルミニウムクロリドのトルエン溶液(溶液濃度=7.80重量%)を14.7g添加した。
次いで、攪拌しながら特定単量体aのトルエン溶液14.4kg(特定単量体a濃度=50重量%)、共重合性単量体bのトルエン溶液3.6kg(共重合性単量体b濃度=50重量%)、および分子量調節剤である1−ヘキセン1.1kgを1時間に渡り連続的に各々を添加し開環重合反応を行った。特定単量体および分子量調節剤の全量が添加された後、更に2時間、開環重合反応を継続した。開環重合反応を停止し、開環重合体A−1を得た。また、反応系の溶液を多量のメタノール中に加えて開環重合体を析出させ、濾別分離後乾燥して白色粉末状の開環重合体A−2を得た。
以上の様にして得られた開環重合体A−2の収率は99.5%、固有粘度(ηinh )は0.55dl/g(クロロホルム中、30℃、濃度0.5g/dl)であり、GPC測定によるポリスチレン換算の平均分子量(展開溶液:テトラヒドロフラン)は、数平均分子量Mn=2.1×10 4、重量平均分子量Mw=6.6×10 4(Mw/Mn=3.1)であった。
【0059】
水素化:
第1反応器としては、ジャケットおよびプロペラ型攪拌機を備えた反応容器(内容量=0.005m3 )を用いた。内部を水素ガスで置換した後、この反応容器を10MPaの水素で充填し、開環重合体A−1を時間当たり2.26kg、水素添加触媒としてクロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムの0.2重量%トルエン溶液を時間当たり2.83gを連続的に供給するとともに、圧力コントロールにより、反応によって吸収された分の水素ガスを連続的に供した。開環重合体A−1の第1反応器内の滞留時間は、2時間にコントロールした。反応により水素ガスが吸収されている間の反応容器の温度は145℃に保っていた。開環重合体A−1供給タンクと反応容器間の配管は保温配管とし、反応容器直近の配管表面温度は、表面温度計での測定で137℃を確認した。
第2反応器としては、二重管タイプのパイプリアクター(内容量=0.005m 3)を用いた。内部は、(株)奥谷金網製作所製のラッシヒリングを充填し、水素ガスで置換した後、この反応器を10MPaの水素で充填し、第1反応器で一部が水添された開環重合体A−1を第1反応器より連続的に供した。また、水素添加触媒としてクロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムの0.2重量%トルエン溶液を時間当たり8.48g連続的に供給するとともに、圧力コントロールにより、反応によって吸収された分の水素ガスを連続的に供した。第1反応器で一部が水添された開環重合体A−1の第2反応器内の滞留時間は、第1反応器同様、2時間にコントロールした。反応により、水素ガスが吸収されている間の反応容器の温度は160℃に保っていた。
【0060】
金属除去:
第2反応器出口より得られた開環重合体の水素化物と、トルエンとを、重量比で(ポリマー溶液:トルエン=4:1)の割合でジャケットおよびパドル型攪拌機を備えた容器に封入し、気相部を窒素ガスで置換した。
この容器を50℃にコントロールしながら、3.4l/hの速度でエージングタンクへ供した。乳酸をポリマー成分に対して1重量部添加になるように、また、メタノールをポリマー溶液中のトルエン量に対して0.5重量倍添加になるように、連続的にチャージした。エージングタンクは、200rpmの速度で攪拌を行った。
エージングタンクから、ポリマー溶液を3.4l/hの速度で抽出塔へ供した。
【0061】
なお、条件は下記の通りである。
エージングタンク35内:50℃、0.5時間滞留。
抽出塔40内:50℃、0.1時間滞留
攪拌板46のストローク速度:160spm。(spmとは抽出塔上部の駆動源(モータ)45の1分間の回転速度である。)
抽出塔40へ供給される抽剤:8.5l/h。抽剤タンクは50℃に保った。抽剤のメタノール/トルエン割合は、0.8(重量比)。
評価は下記の通りである。
抽出塔底部から排出されるポリマー溶液(全固形分17重量%)をフィルタ61(PTFE製、0.5μm)で濾過し、残留金属をICP(誘導結合高周波プラズマ発光分光分析装置)、原子吸光装置で測定した。結果、
重合触媒金属(W≦1ppm、Al≦1ppm);
水添触媒金属(N.D.);
であった。N.D.とは目的金属ピークが検出されないことである。
また、
残留モノマー=N.D.(GC測定);
であった。GCとはガスクロマトグラフィーである。
また、
分子量10,000以下の低分子量成分比率≦1%(GPC測定);
であった。GPC測定とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による測定である。
【0062】
[比較例1]
第2反応器出口より得られた開環重合体の水素化物80gとトルエン20gをジャケットおよびパドル型攪拌機を備えた反応器に封入し、気相部を窒素ガスで置換した。
反応器を50℃にコントロールしながら、乳酸を0.4g添加し、0.5時間、200rpmの速度で攪拌を行った。その後、メタノールを56g添加し、1時間、200rpmの速度で攪拌を行った。
反応器を20℃以下まで冷却し、内容物の静置分離の後、以下の操作を行なった。
1)上層の溶媒を除去し、除去溶媒中のトルエンとメタノールの含量を測定した。
2)下層のポリマーに除去したトルエンと同量のトルエンを新たに添加し、気相部を窒素ガスで置換した後、反応器を50℃にコントロールしながら、0.5時間、200rpmの速度で攪拌を行なった。
3)さらに、除去したメタノールと同量のメタノールを新たに添加し、1時間、200rpmの速度で攪拌を行なった。
4)反応器を20℃以下まで冷却、および内容物の静置分離を行なった。
5)上記1)〜4)を繰り返した。
操作5)終了後、上層の溶媒を除去し、下層のポリマー相をトルエンにて全固形分=17重量%に調整し、フィルタ(PTFE製、0.5μm)で濾過した後、残留金属をICP、原子吸光装置で測定した。結果、
重合触媒金属(W≦1ppm、Al≦1ppm);
水添触媒金属≦1ppm;
残留モノマー=3,400ppm(GC測定);
分子量10,000以下の低分子量成分比率=5.5%(GPC測定);
であった。
[比較例2]
第2反応器出口より得られた開環重合体の水素化物8gとトルエン2gを混合し、フィルタ(PTFE製,0.5μm)で濾過した後、残留金属をICP、原子吸光装置で測定した。結果、
重合触媒金属(W=22ppm、Al=10ppm);
水添触媒金属(17ppm);
であった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】開環重合体の水素化システムの一例を示す説明図。
【図2】実施の形態の金属除去システムの一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0064】
10 第1反応器
20 第2反応器
25 不規則充填材
30 ラインブレンダ
35 エージングタンク
40 向流接触型多段抽出塔
41 抽剤入口
42 抽料入口
43 抽残液出口
44 抽出液出口
45 駆動源(モータ)
46 攪拌板
61 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされる化合物(以下「特定単量体a」ともいう)を開環重合させて得られる開環重合体の水素化物のポリマー溶液、又は下記一般式(1)で表わされる化合物(以下「特定単量体a」ともいう)と当該特定単量体aと共重合可能な化合物(以下「共重合性単量体b」ともいう)とを開環重合させて得られる開環重合体の水素化物のポリマー溶液を、抽出剤を満たした向流接触型多段抽出塔の塔頂部に連続的に供給し、該向流接触型多段抽出塔の塔底部から連続的に排出することにより、前記開環重合体の水素化物から金属化合物を除去することを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
【化1】


(上記一般式(1)中、mは1以上の整数、pは0または1以上の整数であり、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。さらに、R1 とR2 、R3 とR4 またはR2 とR3 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環を形成していてもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。)
【請求項2】
請求項1に於いて、
向流接触型多段抽出塔の塔底部から連続的に排出したポリマー溶液を、さらにフィルタで濾過することを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れかに於いて、
共重合性単量体bは下記一般式(2)で表される化合物である、
ことを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
【化2】


(上記一般式(2)中、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。さらに、R1 とR2 、R3 とR4 またはR2 とR3 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環(ただし、前記一般式(1)で表される構造を除く)を形成してもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。)
【請求項4】
請求項1〜請求項3に於いて、
向流接触型多段抽出塔に満たす抽出剤は、メタノール/トルエン比を0.2〜1.2の範囲に調整した混合溶液である、
ことを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに於いて、
開環重合体の水素化物のポリマー溶液に乳酸を添加してラインブレンダで均一に拡散させ、さらに、メタノールを添加してエージングタンクで均一化した後、向流接触型多段抽出塔の塔頂部に供給する、
ことを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に於いて、
向流接触型多段抽出塔に満たす抽出剤は、メタノール/トルエン比を重量比で0.2〜1.2の範囲に調整した混合溶液であり、
開環重合体の水素化物のポリマー溶液に乳酸を添加してラインブレンダで均一に拡散させ、さらに、メタノールを添加してエージングタンクで均一化した後、向流接触型多段抽出塔の塔頂部に供給するとともに、
向流接触型多段抽出塔の塔底部でのポリマー溶液の濃度がフィルタに供給可能な濃度となるようにメタノールの添加量を制御する、
ことを特徴とする開環重合体水素化物の金属除去方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−91937(P2007−91937A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284912(P2005−284912)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】