説明

開閉屋根

【課題】耐荷重性及び密閉性を向上した開閉屋根を提供する。
【解決手段】一方の屋根本体部4の第2側縁部6には、断面がコの字状の金属製のパッキン収容部13が設けられ、パッキン収容部13内に第1パッキン14が設けられている。他方の屋根本体部4の第2側縁部6には、断面がL字状の金属製の第1当接部15が設けられている。各屋根本体部4の第2側縁部6同士が当接する際、第1当接部15が第1パッキン14に当接する。これにより、各第2側縁部6間がシールされる。また、屋根本体部4は、第2側縁部6から第1側縁部5に向かって下り勾配となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は開閉屋根に係り、特に、浄水場等に設けられる開閉屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な表流水の浄水場では、施設効率、人的効率の面から急速ろ過を採用するケースが多い。これは、急速ろ過システムが、原水濁度への守備範囲が広いこと、面積あたりの処理能力が高いこと、自動化が緩速ろ過よりも容易なことなどの特徴に起因する。浄水場が大規模であることから、急速ろ過システムは、屋外に設けられるのが通常である。
【0003】
特に、急速ろ過システムのうちの急速ろ過池が屋外に設けられると、急速ろ過池内に、雨水やゴミ等が混入して汚染されてしまう可能性がある。さらに、昨今は、飲料用水への毒物の混入等を企むテロの危険性も想定されており、急速ろ過池に屋根を設置する必要性が求められている。ただし、急速ろ過池内をメンテナンスするために、当該屋根は開閉可能である必要がある。
【0004】
急速ろ過池用の屋根に限定するものではないが、従来の大型構造物の開閉屋根が、例えば特許文献1に記載されている。この開閉屋根は、開閉方向に複数に分割された板状の複数の可動屋根体を建物上に開閉方向に沿って移動自在に配置したものである。
【0005】
【特許文献1】特開平9−242244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のようなスライド式の開閉屋根は耐荷重性が弱く、特に降雪地域に設けられた急速ろ過システムでは、当該屋根に積もった雪によって押し潰されてしまうか又は開閉ができなくなる可能性があるといった問題点があった。また、地震の時に、可動屋根体が動いてしまい、密閉性が悪いといった問題点もあった。
【0007】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、耐荷重性及び密閉性を向上した開閉屋根を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る開閉屋根は、第1側縁部及び第2側縁部を有する2つの屋根本体部であって、該第1側縁部において回転可能に固定されると共に互いの該第2側縁部が対向するように設けられた2つの屋根本体部と、前記第1側縁部を中心として前記屋根本体部を回動させる回動装置とを備えた開閉屋根であって、前記各第2側縁部同士がシール部材を介して当接することによって前記開閉屋根が閉じられ、該開閉屋根が閉じられている場合、前記屋根本体部は、前記第2側縁部から前記第1側縁部に向かって下り勾配となっている。
前記シール部材は、一方の前記屋根本体部の前記第2側縁部に沿って設けられた第1パッキンと、他方の前記屋根本体部の前記第2側縁部に沿って設けられた第1当接部とを備えてもよい。
前記開閉屋根が閉じられたときに、前記2つの屋根本体部の裏面部に対応する形状の上端部を有した2つの壁部と、前記第1側縁部の下方において前記第1側縁部に沿って前記2つの壁部間を延びる基台であって、該基台の両端部が前記壁部に接続された2つの基台と、該基台に沿って設けられた第2当接部と、前記屋根本体部の裏面部に設けられると共に前記開閉屋根が閉じられた時に前記第2当接部が当接する第2パッキンとを備え、前記開閉屋根が閉じられた時に、前記第2パッキンが前記前記壁部にも当接してもよい。
前記裏面部には、前記上端部と接触する位置にパッキンが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、開閉屋根は、第1側縁部及び第2側縁部を有する2つの屋根本体部であって、第1側縁部において回転可能に固定されると共に互いの第2側縁部が対向するように設けられた2つの屋根本体部と、第1側縁部を中心として屋根本体部を回動させる回動装置とを備え、第2側縁部同士がシール部材を介して当接することによって開閉屋根が閉じられることにより、各屋根本体部に無理な荷重がかかって第2側縁部同士がずれることはないので、密閉性を向上することができる。また、開閉屋根が閉じられている場合、屋根本体部が第2側縁部から第1側縁部に向かって下り勾配となっているので、耐荷重性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、開閉屋根1は、急速ろ過システムの急速ろ過池2用に設けられている。上方から見たときに、急速ろ過池2を半分に分割するような橋部3が、急速ろ過池2の上方をまたぐように設けられ、2つの開閉屋根1,1が、橋部3によって半分に分割された領域のそれぞれに設けられている。各開閉屋根1は、2つの屋根本体部4,4を備えている。各屋根本体部4は、上方から見たときに長方形の形状を有しており、屋根本体部4の長手方向に互いに平行に延びる第1側縁部5及び第2側縁部6を有している。2つの屋根本体部4,4は、互いの第2側縁部6が対向するようにして設けられている。各屋根本体部4の長手方向に対する両端部には、開閉屋根1を開閉するために屋根本体部4を回動させる回動装置である開閉シリンダー7が設けられている。
【0011】
図2は、開閉屋根1が閉じた状態を示している。各屋根本体部4は、第1側縁部5において、回転固定部材9を介して、急速ろ過池2の周囲の通路8に対して回転可能に固定されている。開閉屋根1は、各屋根本体部4の第2側縁部6同士が当接することによって閉じられている。このため、各屋根本体4は、第2側縁部6から第1側縁部5に向かって下り勾配となっている。また、急速ろ過池2を挟むようにして、コンクリート製の2枚の壁部10(図2には1枚の壁部10のみが記載されている)が、互いに平行に設けられている。壁部10には、人が出入りするための扉21が設けられている。壁部10の上端部10aは、開閉屋根1が閉じられた状態における各屋根本体部4の裏面部4bに対応する形状、すなわち、中央付近から側方に向かって下り勾配を有するような形状を有している。これにより、開閉屋根1が閉じられた状態では、屋根本体部4の裏面部4bが壁部10の上端部10aに接触する。
【0012】
開閉シリンダー7は、半径の異なる2つのシリンダーが入子状に組み合わされて、図示しない油圧ポンプによって伸縮可能に構成されている。図2のように、開閉屋根1が閉じている場合には、開閉シリンダー7は、半径の小さいシリンダーが半径の大きいシリンダーに挿入されて、最も長さが短い状態になっている。開閉シリンダー7の一端は、壁部10の下方に取り付けられたブラケット11に回転可能に固定され、他端は、屋根本体部4に取り付けられたブラケット12に回転可能に固定されている。
【0013】
図3に示されるように、屋根本体部4の裏面部4bには、開閉屋根1が閉じられた際に壁部10の上端部10a(図2参照)と接触する位置に、パッキン20が設けられている。これにより、開閉屋根1が閉じられた時に、壁部10と屋根本体部4との間がシールされる。
【0014】
一方の屋根本体部4の第2側縁部6には、断面がコの字状の金属製のパッキン収容部13が設けられ、パッキン収容部13内に第1パッキン14が設けられている。他方の屋根本体部4の第2側縁部6には、断面がL字状の金属製の第1当接部15が設けられている。ここで、第1パッキン14及び第1当接部15は、シール部材を構成する。各屋根本体部4の第2側縁部6同士が当接する際、第1当接部15が第1パッキン14に当接する。これにより、各第2側縁部6間がシールされる。尚、第1当接部15は、パッキン収容部13内に設けられた第1パッキン14のいずれかの部分に当接すれば各第2側縁部6間をシールできるので、各屋根本体部4の第2側縁部6同士が多少ずれて当接しても、各第2側縁部6間のシールが可能になる。
【0015】
橋部3には、屋根本体部4の第1側縁部5の下方に第1側縁部5に沿って延びる金属製の基台16が設けられている。基台16は、コの字状の断面形状を有している。図3には図示されていないが、もう一方の屋根本体部4の第1側縁部5の下方の通路8(図2参照)には、同様の基台が設けられている。基台16の上面部16aには、上面部16aに沿って延びる金属製の第2当接部17が設けられている。第2当接部17は、L字状の断面形状を有している。基台16及び第2当接部17のそれぞれの両端部は、壁部10(図2参照)に接続されている。屋根本体部4の裏面部4bには、断面がコの字状の金属製のパッキン収容部18と、パッキン収容部18内に設けられた第2パッキン19とが設けられ、開閉屋根1が閉じた状態の時に、第2当接部17が第2パッキン19に当接するようになっている。これにより、第1側縁部5において、屋根本体部4と基台16との間がシールされる。また、開閉屋根1が閉じられた状態で、第2パッキン19の両端部がそれぞれ壁部10に当接することにより、壁部10と第2パッキン19との間がシールされる。従って、第1側縁部5に沿ったシールがなされる。尚、もう一方の屋根本体部4においても、同様の構成により、第1側縁部5に沿ったシールがなされる。
以上の構成により、開閉屋根1が閉じられると、急速ろ過池2(図1または2参照)が外部から隔離される。
【0016】
次に、この実施の形態に係る開閉屋根の開閉動作について説明する。
まず、図2に示されるように、開閉屋根1が閉じられた状態から開く動作について説明する。図示しない油圧ポンプにより、開閉シリンダー7が伸びると、屋根本体部4が、ブラケット12を介して開閉シリンダー7の伸びる方向に力を受ける。屋根本体部4は、第1側縁部5において、回転固定部材9を介して回転可能に固定されているので、第1側縁部5を中心に回動する。すると、各第2側縁部6同士の当接が解除されて、図4に示されるように、開閉屋根1が開いた状態になる。
【0017】
これとは逆に、開閉屋根1を閉じる場合には、図示しない油圧ポンプによって開閉シリンダー7を縮ませると、各屋根本体部4は、第1側縁部5を中心に各第2側縁部6同士が近づくように回動する。最終的に各第2側縁部6同士が当接することにより、開閉屋根1が閉じられる。この際、第1当接部15が第1パッキン14に当接し、第2当接部17が第2パッキン19に当接し、第2パッキン19の両端部が壁部10に当接し、パッキン20が壁部10の上端部10aに当接することにより、急速ろ過池2は外部から隔離される。
【0018】
このように、開閉屋根1は、第1側縁部5及び第2側縁部6を有する2つの屋根本体部4,4であって、第1側縁部5において回転可能に固定されると共に互いの第2側縁部6が対向するように設けられた2つの屋根本体部4,4と、第1側縁部5を中心として屋根本体部4を回動させる開閉シリンダー7とを備え、第2側縁部6同士がシール部材を介して当接することによって開閉屋根1が閉じられることにより、各屋根本体部4に無理な荷重がかかって第2側縁部6同士がずれることはないので、密閉性を向上することができる。また、開閉屋根1が閉じられている場合、屋根本体部4が第2側縁部6から第1側縁部5に向かって下り勾配となっているので、耐荷重性を向上することができる。このため、降雪時でも、開閉屋根1が押し潰されるのを防止できると共に、開閉屋根1を開閉することができる。
また、一方の屋根本体部4の第2側縁部6に、断面がコの字状の金属製のパッキン収容部13内に設けられた第1パッキン14を設けると共に、他方の屋根本体部4の第2側縁部6に、断面がL字状の金属製の第1当接部15を設けることにより、第1当接部15は、第1パッキン14のいずれかの部分に当接すれば各第2側縁部6間をシールできるので、各屋根本体部4の第2側縁部6同士が多少ずれて当接しても、各第2側縁部6間をシールすることができる。
また、開閉屋根1が閉じられたときに2つの屋根本体部4,4の裏面部4b,4bに対応する形状の上端部10aを有した2つの壁部10,10と、第1側縁部5の下方において第1側縁部5に沿って2つの壁部10,10間を延びる基台16であって、基台16の両端部が壁部10に接続された2つの基台16,16と、基台16に沿って設けられた第2当接部17と、屋根本体部4の裏面部4bに設けられると共に開閉屋根1が閉じられた時に第2当接部17が当接する第2パッキン19とを備え、開閉屋根1が閉じられた時に、第2当接部17が第2パッキン19に当接すると共に第2パッキン19の両端部が壁部10に当接することにより、第1側縁部5に沿ったシールがなされる。
さらに、裏面部4bにおいて上端部10aと接触する位置にパッキン20を設けることにより、壁部10と屋根本体部4との間をシールすることができる。
【0019】
この実施の形態では、開閉屋根1を急速ろ過池2用に適用した場合を例にして説明をしたが、これに限定するものではない。屋外及び屋内の様々な設備等の開閉屋根として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態に係る開閉屋根の平面図である。
【図2】この実施の形態に係る開閉屋根が閉じた状態の正面図である。
【図3】この実施の形態に係る開閉屋根が閉じた状態の部分拡大正面図である。
【図4】この実施の形態に係る開閉屋根が開いた状態の正面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 開閉屋根、4 屋根本体部、4b (屋根本体部4の)裏面部、5 第1側縁部、6 第2側縁部、7 開閉シリンダー(回動装置)、10 壁部、10a (壁部10の)上端部、14 第1パッキン(シール部材)、15 第1当接部(シール部材)、16 基台、17 第2当接部、19 第2パッキン、20 パッキン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側縁部及び第2側縁部を有する2つの屋根本体部であって、該第1側縁部において回転可能に固定されると共に互いの該第2側縁部が対向するように設けられた2つの屋根本体部と、
前記第1側縁部を中心として前記屋根本体部を回動させる回動装置と
を備えた開閉屋根であって、
前記各第2側縁部同士がシール部材を介して当接することによって前記開閉屋根が閉じられ、該開閉屋根が閉じられている場合、前記屋根本体部は、前記第2側縁部から前記第1側縁部に向かって下り勾配となっている開閉屋根。
【請求項2】
前記シール部材は、
一方の前記屋根本体部の前記第2側縁部に沿って設けられた第1パッキンと、
他方の前記屋根本体部の前記第2側縁部に沿って設けられた第1当接部と
を備える、請求項1に記載の開閉屋根。
【請求項3】
前記開閉屋根が閉じられたときに、前記2つの屋根本体部の裏面部に対応する形状の上端部を有した2つの壁部と、
前記第1側縁部の下方において前記第1側縁部に沿って前記2つの壁部間を延びる基台であって、該基台の両端部が前記壁部に接続された2つの基台と、
該基台に沿って設けられた第2当接部と、
前記屋根本体部の裏面部に設けられると共に前記開閉屋根が閉じられた時に前記第2当接部が当接する第2パッキンと
を備え、
前記開閉屋根が閉じられた時に、前記第2パッキンが前記前記壁部にも当接する、請求項2に記載の開閉屋根。
【請求項4】
前記裏面部には、前記上端部と接触する位置にパッキンが設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の開閉屋根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−127190(P2009−127190A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299616(P2007−299616)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(593045488)日本機器鋼業株式会社 (12)