説明

開閉装置の操作機構、及び開閉装置

【課題】遮断用バネのバネ力を安定的に保持しつつ、開極時間を短縮した開閉装置およびその操作機構を提供する。
【解決手段】遮断への移行時に放勢される遮断用バネ12のバネ力を受けて回転することで可動接点を対向接点から引き離すメインレバー11を有しており、メインレバー11には、軸回転可能なサブシャフト70に固定されたサブレバー71が連結される。サブシャフト70には、先端にローラ72aが取り付けられた単数のラッチレバー72が固定されている。ラッチレバー72は、ローラ72aの移動軌跡上に介在する単数のラッチ部91によって回転が抑止される。ラッチ部91には、ウェイト93が接離可能に押しつけられており、アクチュエータ21により、このウェイト93を押し退けてラッチ部91を回転させ、ローラ72aの移動軌跡上から待避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、変電所や開閉所に設置される電力用の開閉装置及びその操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電流遮断機能を有する開閉装置は、その使用目的、必要とされる機能に応じて、負荷開閉器、断路器、遮断器等のように呼称されるが、接点を相対的に接離させることで、電流の遮断と投入とを切り替える点で共通する。この接点を接離させる操作機構としては、大出力が得られる油圧操作力を用いたものや、中・低出力のバネ操作力を用いたものが挙げられる。
【0003】
油圧操作力を用いた操作機構は、一般的に油圧操作機構と呼ばれ、バネ操作力を用いた操作機構は、一般的にバネ操作機構と呼ばれているが、近年、開閉装置の一種であるガス遮断器に設けられている消弧室の小型化が進展する中、少ない操作力で事故電流等を遮断できるバネ操作機構が採用される例が多くなっている。
【0004】
ここで、超高電圧を遮断可能なガス遮断器では、2サイクル遮断という高速動作性能が求められている。2サイクル遮断とは、交流の2サイクル分の時間以内に電流を遮断するものである。しかし、従来のバネ操作機構を採用した開閉装置では、遮断用バネのバネ力を保持しておくラッチ機構の応答性の観点から、3サイクル遮断程度の動作性能が一般であり、2サイクル遮断の実現は容易ではなかった。
【0005】
このようなバネ操作機構を採用した開閉装置の第1の従来例としては、特許文献1乃至3に挙げられる。特許文献1乃至3に開示の開閉装置においては、遮断用バネの付勢力は出力レバーを介してラッチとオープロップ(開係止レバー)とキャッチで構成されたラッチ機構により保持されている。この第1の従来例においては、ソレノイドアクチュエータに電流を流すことで、プランジャがキャッチを動作させ、キャッチとプロップの係合が外れ、出力レバーとラッチの係合が外れ、出力レバーが回転し、遮断用バネを放勢させることにより、遮断動作が実施される。
【0006】
また、このようなバネ操作機構を採用した開閉装置の第2の従来例としては、特許文献4が挙げられる。特許文献4に開示の開閉装置においては、遮断用バネの付勢力を保持するために引き外しレバーと保持レバーが配置されており、保持レバーは遮断動作時には遮断用バネの力ではなく、加速バネの力により動作させ、遮断用バネの力を解放させる構造を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−213824号公報
【特許文献2】特開2000−40445号公報
【特許文献3】特開2007−294363号公報
【特許文献4】特許3497866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記第1の従来例においては、遮断用バネの放勢は、ソレノイドの励磁によるキャッチの動作と、オープロップの動作と、遮断用バネを含む接点の離反動作の三動作から構成されている。これらの動作関係を図18に示す。横軸は時間軸であり、縦軸は各部のストロークである。最下部の曲線はトリップ電流の波形を示し、その上にキャッチの動作曲線、更にその上にオープロップと遮断用バネのストロークを示してある。最上部にはガス遮断器の消弧室内部の接触子の通電信号を示している。
【0009】
電流をソレノイドに流した時点を基点とし、キャッチが動作しオープロップの動作が開始されるまでの時間をT1とする。さらにオープロップの動作開始から遮断用バネの動作開始までの時間をT2とする。T3は遮断バネの動作開始から開極点に達するまでの時間を示す。そして、開極時間をT0とすると、第1の従来例では、T0=T1+T2+T3の関係が成立する。
【0010】
2サイクル遮断を実現するためには、開極時間T0をある値以下にする必要がある。しかし、この第1の従来例では、ソレノイドへの電流導通後、キャッチから遮断用バネまで全て同時に動作が開始されるのではなく、キャッチがある程度動作した後にオープロップとの係合が外れることにより、オープロップの動作が開始され、オープロップがある程度動作してから遮断用バネが動作する。このように、複数のラッチ機構を段階的に動作させ、段階的にラッチを解除していく方式では、この開極時間T0を短縮することは非常に困難である。
【0011】
例えば、消弧室の可動部重量と開極速度、駆動エネルギーから遮断用バネのバネ力が決定するため、T3の時間短縮には限度がある。T2を短縮させる方法としては、オープロップの軽量化と遮断用バネを保持する保持力を大きくする方法が挙げられる。これにより、高速に動作させることができる。しかし、この方法だと保持力が大きくなると強度向上のためオープロップを大型化する必要があり軽量化には限界が生じる。従って、保持力増大による高速化には限界が生じることになる。また、保持力を大きくすることによりオープロップとキャッチとの係合部にも大きな力が作用し、キャッチが大型化し、さらにキャッチを動作させるため大きな電磁力を持つソレノイドが必要となってくる。
【0012】
現在、ソレノイドの高出力化のため、大型のコンデンサを利用した励磁方法がとられているが、ソレノイドに流せる電流値には規格で定められた上限値があるため、高出力化にも限度がある。このように、従来のバネ操作機構では、開極時間を短縮することが困難であった。
【0013】
また、第2の従来例においても、遮断用バネのバネ力の解放過程は電磁石により引き外しフックが動作し、リセットレバーと加速バネと保持レバーがほぼ同時に動作し、引き外しレバーと遮断バネが同時に動作する三動作から構成されている。
【0014】
この従来例では遮断バネの保持力の方向を保持レバーのほぼ回転中心としたことにより保持レバーの動作に要する力の低減をしている。また、二番目の動作に含まれている保持レバーの動きを加速バネによって高速化し動作時間短縮を図っている。しかし、この二番目の動作時間を零秒にすることは物理的に困難であり、開極時間全体を大幅に短縮することは第1の従来例で説明した理由も含めて困難であった。
【0015】
また、第2の従来例では、さらに遮断用バネのバネ力の保持において安定性が不足するという問題も指摘されている。すなわち、第1に、引き外しレバーと保持レバーが係合する部分への加圧力の方向を保持レバーのほぼ回転中心方向としているため、外部振動による保持レバーへの強制加振により、引き外しレバーが遮断動作方向に回転し、遮断指令なしの状態でも動作してしまう可能性がある。第2に、引き外しレバーに配置されたローラと保持レバーとの係合面の変形等により加圧力の方向が保持レバーの回転中心のどちらに向くか安定しておらず、加圧力が保持レバーの遮断動作する方向に作用した場合、遮断指令を入力しなくても引き外しレバーが外れてしまう可能性がある。第3に、投入動作においてローラが保持レバーを押し退けて再び係合する際の衝撃力で保持レバーが遮断方向に動作し、遮断指令無しで遮断動作することは十分考えられる。
【0016】
このように従来のバネ操作機構では、開極時間を十分に短縮することができず、さらに遮断用バネのバネ力の保持の安定性が不足する可能性があった。
【0017】
本発明の実施形態は、上記の課題を解消するために提案されたものであり、遮断用バネのバネ力を安定的に保持しつつ、開極時間を短縮した開閉装置およびその操作機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、実施形態の開閉装置の操作機構は、対向接点に対して可動接点を接離させることで、電流の遮断と投入とを切り替える操作機構であり、以下の特徴を有する。
(1)前記投入から前記遮断に移行するときに放勢される遮断用バネを有する。
(2)回転可能に軸支されるとともに、一端が前記遮断用バネと連結され、他端が前記可動接点と連結され、前記遮断用バネのバネ力を受けて回転することで前記可動接点を前記対向接点から引き離すメインレバーを有する。
(3)前記メインレバーと一端が連結され、他端を中心に回転可能なサブレバーを有する。
(4)前記サブレバーの前記他端を固定し、軸回転可能なサブシャフトを有する。
(5)一端が前記サブシャフトに固定され、他端にローラが取り付けられ、前記サブシャフトの軸回転を受けて前記一端を中心に回転可能な単数のラッチレバーを有する。
(6)回転可能に軸支され、前記投入の状態にあるときには端部が前記ローラの移動軌跡上に介在して前記ラッチレバーの回転を抑止する単数のラッチ部を有する。
(7)前記ラッチ部の前記端部に接離可能なウェイトを一端に有するウェイトレバーを有する。
(8)前記ウェイトレバーの他端に取り付けられ、前記ローラの移動軌跡上に前記ラッチ部の前記端部を維持させるように、前記ウェイトを前記端部に押しつける復帰バネを有する。
(9)前記ウェイトを押し退けて前記ラッチ部を回転させることで、前記ラッチ部を前記ローラの移動軌跡上から待避させるアクチュエータを有する。
【0019】
また、実施形態の開閉装置は、電流の遮断状態と投入状態とを切り替える開閉装置であり、以下の特徴を有する。
(1)相対的に接離可能な対向接点及び可動接点を有する。
(2)前記投入状態から前記遮断状態に移行するときに放勢される遮断用バネを有する。
(3)回転可能に軸支されるとともに、一端が前記遮断用バネと連結され、他端が前記可動接点と連結され、前記遮断用バネの放勢を受けて回転することで前記可動接点を前記対向接点から引き離すメインレバーを有する。
(4)前記メインレバーと一端が連結され、他端を中心に回転可能なサブレバーを有する。
(5)前記サブレバーの前記他端を固定し、軸回転可能なサブシャフトを有する。
(6)一端が前記サブシャフトに固定され、他端にローラが取り付けられ、前記サブシャフトの軸回転を受けて前記一端を中心に回転可能な単数のラッチレバーを有する。
(7)回転可能に軸支され、前記投入状態にあるときには端部が前記ローラの移動軌跡上に介在して前記ラッチレバーの回転を抑止する単数のラッチ部を有する。
(8)前記ラッチ部の前記端部に接離可能なウェイトを一端に有するウェイトレバーを有する。
(9)前記ウェイトレバーの他端に取り付けられ、前記ローラの移動軌跡上に前記ラッチ部の前記端部を維持させるように、前記ウェイトを前記端部に押しつける復帰バネを有する。
(10)前記ウェイトを押し退けて前記ラッチ部を回転させることで、前記ラッチ部を前記ローラの移動軌跡上から待避させるアクチュエータを有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係る開閉装置の一例を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る操作機構の一例を示す分解構成図である。
【図3】第1の実施形態に係るラッチ機構の詳細構成図である。
【図4】第1の実施形態に係る遮断開始直後のラッチ機構を示す構成図である。
【図5】第1の実施形態に係る遮断途中のラッチ機構を示す構成図である。
【図6】第1の実施形態に係る遮断途中の操作機構全体を示す分解構成図である。
【図7】第1の実施形態に係る投入開始直後の投入機構を示す構成図である。
【図8】第1の実施形態に係る投入開始直後のラッチ機構及びカム機構を示す構成図である。
【図9】第1の実施形態に係る投入途中でのラッチ機構を示す構成図である。
【図10】第1の実施形態に係る投入完了直前でのラッチ機構を示す構成図である。
【図11】第1の実施形態に係る等価質量モデルを示す模式図である。
【図12】第2の実施形態に係るラッチ機構を示す構成図である。
【図13】第2の実施形態において、投入動作時のラッチレバーとラッチ部とカウンターウェイトレバーの位置関係を示す図である。
【図14】第3の実施形態に係るラッチ部とカウンターウェイトレバーとを示す斜視図である。
【図15】第4の実施形態に係るラッチ部の先端を示す拡大構成図である。
【図16】第5の実施形態に係るラッチ機構の構成図である。
【図17】他の実施形態に係るラッチ機構の構成図である。
【図18】従来の開閉装置における各機構の動作関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、開閉装置、及び開閉装置の操作機構の複数の実施形態について、図1乃至17を参照して具体的に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本実施形態に係る開閉装置の一例を示す断面図である。開閉装置1は、消弧性ガス2内で接点を接離させることで、電流を遮断又は投入させるガス遮断器である。この開閉装置1には、金属製又は硝子製の密閉容器3内に対向接触子4aと可動接触子4bとが対向配置されている。密閉容器3内には、消弧性ガス2が充填されている。消弧性ガス2は、消弧性能及び絶縁性能に優れたガスであり、例えば六フッ化硫黄ガス(SFガス)であるが、SFガスよりも地球温暖化係数の小さい空気、二酸化炭素、酸素、窒素、またはそれらの混合ガス等であってもよい。
【0023】
対向接触子4aと可動接触子4bは、それぞれ電気的な接点として機能する導体である。この対向接触子4aと可動接触子4bは、相対的に接離可能となっている。具体的には、可動接触子4bは、密閉容器3に併設された操作機構10と連結されている。この操作機構10が可動接触子4bを対向接触子4aの方向に押し出すことで、可動接触子4bは対向接触子4aと接触し、開閉装置1は電流投入状態に移り、操作機構10が可動接触子4bを対向接触子4aから引き離すことで、可動接触子4bは対向接触子4aと離反し、開閉装置1は電流遮断状態に移る。
【0024】
図2は、操作機構10の一例を示す分解構成図である。操作機構10において、操作ロッド5は、可動接触子4bの後端に固定される棒状部材であり、駆動力を受けて可動接触子4bを押し引きする。この操作ロッド55は、可動接触子4bと対向接触子4aと同軸に配置され、この軸方向にスライド可能となっている。
【0025】
この操作ロッド5には、リンク6を介在してメインレバー11が連結されている。操作ロッド5の後端とリンク6の一端、及びメインレバー11とリンク6の他端は、それぞれ共通のピンを中心に回転自在に連結されている。
メインレバー11は、3本のアームが放射状に延びて形成され、アームの放射中心にアームの延び方向と直交する回転軸を有する。このメインレバー11は、回転軸で位置固定されているが、回転軸を中心に回転可能である。メインレバー11とリンク6とは、そのうちの一本である第1アームの先端で連結されている。
【0026】
メインレバー11の他の一本である第2アームは、第1アームが可動接触子4bから離れる方向を時計回りとすると、第1アームから反時計回りの方向に位置する。この第2アームには、遮断駆動源が連結されている。遮断駆動源は、電流を遮断する操作駆動力を発生させる遮断用バネ12と、遮断用バネ12の振動を減衰させるダンパー17と、遮断用バネ12の伸張範囲を規制するピストン17aと、遮断用バネ12の付勢力をメインレバー11に伝達するリンク15とにより構成されている。
【0027】
遮断用バネ12は、伸張方向に放勢される圧縮コイルバネである。この遮断用バネ12は、メインレバー11が収納されているハウジング14に設置されている。遮断用バネ12の一端は、このハウジング14に固定されており、他端は浮動となっている。
【0028】
ダンパー17は、内部に流体が充填されており、一端が遮断用バネ12の浮動端に固定されている。遮断用バネ12の浮動端には、板状のバネ受け16が設けられている。ダンパー17は、一端がバネ受け16の底面に固定され、遮断用バネ12の軸に沿って内部に延びている。
【0029】
バネ受け16の上面には、ピストン17aが設けられている。ピストン17aは、遮断用バネ12が収容されたハウジング14の端面に当接することで、遮断用バネ12の伸張範囲を規制している。
【0030】
ダンパー17の他端には、リンク15の一端が固定されている。このリンク15は、遮断用バネ12の軸に沿って内部から外部へ延び、メインレバー11の第2アームまで延びている。リンク15の他端と第2アームの先端とは、共通のピン11aで回転自在に連結されている。尚、このリンク16は、第1アーム側へ延びている。
【0031】
次に、メインレバー11の他の一本である第3アームには、リンク80を介してサブレバー71が連結されている。第3アームの先端とリンク80の一端、及びサブレバー71の一端とリンク80の他端は、それぞれ共通のピンで回転自在に連結されている。サブレバー71の他端は、当該レバーの伸び方向と直交する方向に延設されたサブシャフト70に固定されている。
サブシャフト70は、図示しない軸受けに支持されて軸回転可能となっているが、配置位置は固定されている。
【0032】
このように、遮断用バネ12の伸張動作を可動接触子4bのスライド動作に変換するメインレバー11は、リンク80とサブレバー71を介してサブシャフト70と係合している。そのため、操作機構10は、サブシャフト70を回転抑止状態から回転可能状態へ切り替えることで、遮断動作を開始させることができる。この操作機構10は、サブシャフト70の回転抑止状態と回転可能状態とを切り替えるためのラッチ機構を備えている。
【0033】
ラッチ機構の詳細構成を図3に示す。図3に示すように、サブシャフト70には、サブレバー71の他に、ラッチレバー72が固定されている。ラッチレバー72は、サブシャフト70と直交する方向に延び、その先端には、当該レバーの側面から突出する円柱状のローラ72aが回転自由に嵌着されている。このラッチレバー72がラッチされると、サブシャフト70は回転抑止状態となり、このラッチレバー72のラッチが解除されれば、サブシャフト70は回転可能状態となる。
【0034】
ラッチレバー72のローラ72a側には、ラッチレバー72をラッチするラッチ部91が存在する。このラッチレバー72は、回転不能に配置位置が固定された係止レバー91e上に設けられている。このラッチ部91は、一端に回転軸100を有し、回転軸100で位置固定されているが、回転軸100を中心に回転可能となっている。このラッチ部91は、ラッチレバー72のローラ72aの移動軌跡上の一点(以下、ラッチポイントという)に介在可能に延びている。
【0035】
ラッチ部91は、ラッチポイントまで延びた端部に平面部102を有する。平面部102は、遮断動作時にラッチレバー72のローラ72aが移動する方向に存在し、ローラ72aの移動軌跡と略直交する。ラッチ部91がラッチポイントに存在するとき、平面部102はラッチレバー72のローラ72aと当接し、ラッチレバー72の回転を抑止する。
【0036】
この平面部102は、さらに、その平面と直交する仮想の垂線を考えたときに、その垂線上にラッチ部91の回転軸100が存在するように形成されている。そのため、ラッチレバー72の回転力は、平面部102から回転軸100に向かうベクトルに変換され、ラッチ部91の回転方向にはほとんど作用しない。
【0037】
さらに、ラッチ部91には、ローラ受け103が平面部102に隣接して設けられている。このローラ受け103は、平面部102と略直交して延びている。このローラ受け103は、開閉装置1の投入動作時にラッチレバー72がラッチポイントへ戻ってきた際に、ラッチレバー72を受け止める。
【0038】
このようなラッチ部91は、リンク機構を介してソレノイドアクチュエータ21によって揺動する。このリンク機構は、ラッチ部91と連結する引き外しリンク53と、引き外しリンク53と連結されると共に、ソレノイドアクチュエータ21によって揺動する引き外しレバー54とを備える。
【0039】
引き外しリンク53の一端は、ラッチ部91にピンで回転自在に連結されている。引き外しリンク53の他端には、伸び方向に沿った長辺を有する長穴53aが貫設されている。引き外しレバー54は、途中に回転軸を有し、一端にはローラピン54bが設けられている。引き外しレバー54は、引き外しリンク53の長穴53aにローラピン54bが摺動可能に嵌め込まれることで、引き外しリンク53と連結されている。
【0040】
この引き外しレバー54には、ソレノイドアクチュエータ21のプランジャ21aが当接している。プランジャ21aの当接位置は、ローラピン54b設置側とは回転軸を挟んで反対側である。また、プランジャ21aは、ソレノイドアクチュエータ21により押し出されると、引き外しレバー54を時計回りに回転させるように、引き外しレバー54と当接している。引き外しレバー54における時計回りとは、引き外しリンク53がラッチ部91とは反対側へ移動する方向である。
【0041】
さらに、このラッチ機構は、ラッチ部91による回転抑止を補助するカウンターウェイト93部を備えている。カウンターウェイト93部は、カウンターウェイトレバー92とカウンターウェイト93と復帰バネ94とを備える。
【0042】
カウンターウェイトレバー92は、くの字形状を有し、屈曲部に回転軸91aが設けられている。回転軸91aから延びる第1アームは、ラッチ部91の先端に設けられたローラ受け103の背面まで延びている。この第1アームの先端には、円柱形状のカウンターウェイト93が固定されている。回転軸91aから延びる第2アームには、復帰バネ94の一端が固定されている。復帰バネ94は、カウンターウェイト93がラッチ部91に接触ように付勢している。
【0043】
このラッチ部91とカウンターウェイトレバー92を等価質量モデルとして考えた場合、ラッチ部91とカウンターウェイトレバー92をそれぞれ等価質量m1と等価質量m2とすると、以下式(1)が成り立つように設定されている。
【0044】
m2≧{e1/(1+e2+e1×e2)}×m1・・・(1)
e1は、ラッチ部91とラッチレバー72のローラ72aとの反発係数であり、e2は、ラッチ部91とカウンターウェイトレバー92の反発係数である。それぞれの衝突が完全弾性衝突の場合には、e1=e2=1であるため、以下式(2)が成り立つ。
m2≧1/3×m1・・・(2)
【0045】
等価質量モデルにおけるラッチ部91の等価質量m1とは、ラッチ部91の回転軸100周りの慣性モーメントを回転軸100からカウンターウェイト93の接触点までの距離の自乗で除した値である。また、同様に、等価質量モデルにおいて、カウンターウェイトレバー92は、カウンターウェイトレバー92とカウンターウェイト93からなる等価質量m2を有する。
【0046】
尚、カウンターウェイトレバー92とラッチ部91との間には、カウンターウェイトレバー92と係合可能なストッパーピン90aが設けられている。このストッパーピン90aは、カウンターウェイトレバー92の回転範囲を規制している。そのため、カウンターウェイトレバー92から回転力を受けるラッチ部91は、このストッパーピン90aによって揺動範囲が規制されている。
【0047】
図1に戻り、操作機構10は、更に、可動接触子4bを対向接触子4aに接触させるための投入機構を備えている。投入機構において、ハウジング14の上面には、投入用バネ13が設けられている。投入用バネ13は、圧縮コイルバネである。この投入用バネ13は、一端がハウジング14の上面に固定されており、他端が浮動となっている。この投入用バネ13は、伸張する方向に付勢されている。投入用バネ13の浮動端には、板状のバネ受け18が設けられており、バネ受け18には、投入用バネ13の伸張方向と直交するピン18aが固定されている。
【0048】
バネ受け18上のピン18aには、棒状のリンク83の一端が回転自在に連結されている。このリンク83には、投入レバー82が連結されている。投入レバー82は、リンク83の他端に回転自在に連結されている。この投入レバー82は、投入シャフト81に固定されている。投入シャフト81は、配置位置は固定されているが、軸回転は自在となっている。この投入シャフト81は、メインレバー11の回転軸に相互に回転自在に軸支されており、サブシャフト70に沿って平行に延びている。
【0049】
開閉装置1の遮断状態、すなわち、可動接触子4bが対向接触子4aから離間している状態において、リンク83側を手前にし、投入シャフト81を奥側にして、リンク83と投入シャフト81との位置関係を眺めると、投入シャフト81の軸は、リンク83の中心軸101よりも左側に位置している。そのため、投入用バネ13が伸張すると、投入シャフト81は、反時計回りに回転する。
【0050】
投入シャフト81には、カム84が固定されている。カム84は、扇形状を有し、弧の部分にカム面を有している。カム面は、投入シャフト81に固定された軸との距離が連続的に拡大する。カム84の軸から半径方向に延びる一本の仮想線を考えると、カム84の軸から仮想線とカム面との交差点までの距離は、投入シャフト81が反時計回りに回転するに連れて拡大していく。
【0051】
また、サブシャフト70には、このカム84に対向してカムレバー73が固定されている。カムレバー73は、一端がサブシャフト70に固定され、他端にカム面上を摺動するローラ73aを有する。そのため、投入シャフトが反時計回りに回転すると、カムレバー73は、時計回りに回転する方向にカム面から回転力を受ける。
【0052】
このような投入機構において、投入レバー82は、ラッチ機構により保持されている。このラッチ機構において、投入レバー82にはツメ82bが設けられている。ツメ82bには、半円柱部材62が接離可能に係合する。半円柱部材62は、軸方向に拡がる平坦面と直交する方向に移動可能となっており、ツメ82bと平坦面の長辺の高さが同じになったときに、ツメ82bと当接し、ツメ82bと円周面の高さが同じになったときに、ツメ82bから離れる。
【0053】
この半円柱部材62には、ソレノイドアクチュエータ22によって移動力が付与される。具体的には、半円柱部材62には、平坦面と平行、且つ軸との直交方向に突起物62aが設けられている。この突起物62aは、半円柱部材62の円周面側に位置する底部においてソレノイドアクチュエータ22のプランジャ22aと当接している。そのため、プランジャ22aが押し出されると、半円柱部材62は、上方に移動し、ツメ82bと半円柱部材62との係合が解除され、投入レバー82が回転可能となる。
【0054】
また、突起物62aにおいて、プランジャ22aが当接する面とは逆の面には、伸張方向に放勢される復帰バネ62bが固定されており、プランジャ22aがソレノイドアクチュエータ22に引っ込むと、半円柱部材62がツメ82bと係合し、投入レバー82の回転が抑止される。
【0055】
以上のような開閉装置1において、投入状態では、メインレバー11は、遮断用バネ12によって可動接触子4bを対向接触子4aから離そうとするトルクを受けている。しかし、ラッチレバー72の回転がラッチ部91によって規制されているため、ラッチレバー72が固着しているサブシャフト70も軸回転不可能となり、サブシャフト70に固着しているサブレバー71も回転不可能となっている。そのため、サブレバー71と連結しているメインレバー11も回転できず、電流の投入状態は維持される。
【0056】
(作用1:遮断動作)
このような操作機構10による開閉装置1の遮断動作について図4乃至6を参照しつつ説明する。図4は、遮断開始直後のラッチ機構を示す構成図であり、図5は、遮断途中のラッチ機構を示す構成図であり、図6は、遮断途中の操作機構10全体を示す分解構成図である。
【0057】
まず、図4に示すように、外部指令の入力によってソレノイドが励磁されると、ソレノイドアクチュエータ21がプランジャ21aを外へ押し出す。プランジャ21aがソレノイドアクチュエータ21から押し出されると、プランジャ21aに当接されていた引き外しレバー54が時計回りに回転させられる。引き外しレバー54が回転すると、引き外しレバー54の先端に設けられたローラピン54bは、引き外しリンク53の長穴53aを最端部側に摺動し、長穴53aの内面に当接する。
【0058】
更に、プランジャ21aが押し出されると、引き外しリンク53は、時計回りに倒れ込んだ引き外しレバー54に引っ張られて、ラッチ部91とは反対側へ移動する。引き外しリンク53が移動すると、ラッチ部91は、背面のカウンターウェイト93を押し退けて、回転軸を中心に反時計回りに回転し始める。
【0059】
ラッチ部91が一定角度回転するまでは、平面部102がラッチレバー72のローラ72aを押し込むように移動しており、係合関係は維持されている。更に、ラッチ部91が回転させられると、平面部102がラッチポイントから離脱してローラ72aから離れる。この平面部102とローラ72aとの離間によってラッチレバー72の制止は解除される。
【0060】
ラッチレバー72の制止が解除されると、図5に示すように、ラッチレバー72の反時計回りの回転が許可されることとなる。すなわち、サブシャフト70が回転可能となり、サブレバー71が回転可能となり、次いでメインレバー11が回転可能となる。
【0061】
そのため、図6に示すように、遮断用バネ12が伸張し、リンク15がメインレバー11の第2アームを持ち上げ、それによりメインレバー11が時計回りに回転する。メインレバー11が時計回りに回転すると、第1アームは、時計回りに倒れ込み、第1アームに連結されていたリンク6と操作ロッド5は、対向接触子4aとは反対側へ移動する。このリンクと操作ロッド5の移動に伴って、可動接触子4bは、対向接触子4aから離反する。
【0062】
可動接触子4bが対向接触子4aからある程度離反すると、ピストン17aがハウジング14の上面に当接し、ダンパー17も制動力を発揮し、遮断用バネ12の動作は停止される。
【0063】
尚、ラッチ部91とラッチレバー72との係合が解除され、ラッチレバー72が回転し、遮断動作が終了すると、ラッチ部91は、カウンターウェイトレバー92が復帰バネにより投入状態と同じ位置まで回転させられるため、このカウンターウェイトレバー92に押し出されて、投入状態とほぼ同じ位置、すなわち平面部102がラッチポイント近くに復帰している。引き外しリンク53と引き外しレバー54もプランジャが引っ込められることにより、投入状態とほぼ同じ位置に復帰している。
【0064】
(作用2:投入動作)
次に、このような操作機構10による開閉装置1の投入動作について図7乃至11を参照しつつ説明する。図7は、投入開始直後の投入機構を示す構成図であり、図8は、投入開始直後のラッチ機構及びカム機構を示す構成図であり、図9は、投入途中でのラッチ機構を示す構成図であり、図10は、投入完了直前でのラッチ機構を示す構成図であり、図11は、等価質量モデルを示す模式図である。
【0065】
図7に示すように、ソレノイドアクチュエータ22がプランジャ22aを押し出すと、突起物62aを介して半円柱部材62が上方に持ち上げられる。半円柱部材62が上方に持ち上げられると、投入レバー82のツメ82bと半円柱部材62との係合は解除され、投入レバー82が回転可能となる。
【0066】
投入レバー82が回転可能となると、投入用バネ13が伸張し、リンク83を持ち上げる。リンク83が持ち上げられると、リンク83に連結している投入レバー82は、投入シャフト81を中心に反時計回りに回転を始める。投入レバー82は、投入シャフト81に固定されているため、投入レバー82の回転に伴って、投入シャフト81も反時計回りに軸回転する。
【0067】
図8に示すように、投入シャフト81が反時計回りに軸回転すると、投入シャフト81に固定されているカム84も反時計回りに回転し、カム84と対向して設けられているカムレバー73のローラ73aはカム面を摺動する。カム84が反時計回りに回転すると、カムレバー73のローラ73aが当接している位置は、カム84の軸から連続的に離れていくため、カムレバー73は、先端が押し下げられるように、時計回りに回転する。
【0068】
カムレバー73が時計回りに回転すると、カムレバー73が固着しているサブシャフト70も時計回りに軸回転し、サブシャフト70に固定されているサブレバー71も時計回りに回転する。サブレバー71とメインレバー11は、一本のリンク80を介して連結されているため、サブレバー71が時計回りに回転すると、メインレバー11は、反時計回りに回転する。
【0069】
そのため、メインレバー11の第1アームは、対向接触子4aに近づく方向に揺動し、リンクと操作ロッド5を対向接触子4a側へ押し出す。リンクと操作ロッド5が対向接触子4a側へ押し出されると、操作ロッド5の先端に固定されている可動接触子4bは、対向接触子4aと接触する。
【0070】
尚、この投入動作によりメインレバー11が回転すると、第2アームは、反時計回りに揺動するため、リンク15を下方に引きずり下ろす。リンク15が引きずり下ろされると、遮断用バネ12は、圧縮されて蓄勢する。
【0071】
このような投入動作において、図8に示すように、サブシャフト70が時計回りに回転すると、ラッチレバー72はサブシャフト70に固定されているため、同じく時計回りに回転する。すなわち、ラッチレバー72のローラ72aは、ラッチポイントへ向けて移動する。
【0072】
ラッチレバー72の時計回りでの回転過程において、ラッチレバー72のローラ72aは、まず、復帰バネ94により復帰していたラッチ部91のアーム部分に当接し、ラッチ部91を反時計回りに押し込んでいく。そして、ラッチレバー72のローラ72aがラッチポイントに位置した頃には、図9に示すように、ラッチ部91のアーム部分から離れる。このとき、ラッチ部91は、ラッチレバー72との係合が解除されているため、カウンターウェイトレバー92と共に時計回りに復帰動作を始める。
【0073】
そうすると、図10に示すように、ラッチ部91は、ローラ受け103でラッチレバー72のローラ72aと衝突し、また平面部102と当接する。尚、ラッチ部91のアームとラッチレバー72のローラ72aの係合が解除されたころには、カム84とカムレバー73との接触が解除されるように設定されており、ラッチレバー72は、反時計回りに回転しようとするが、慣性力によって、ラッチ部91のローラ受け103が衝突するほうが十分に速くなっている。
【0074】
このラッチ部91とラッチレバー72が衝突したときの等価質量モデルを図11に示す。図11に示すように、ラッチレバー72は、固定壁303として考えることができる。まず、衝突直前では、図11の(a)に示すように、等価質量m1を有するラッチ部91の等価質量モデル301と等価質量m2を有するカウンターウェイトレバー92の等価質量モデル302は、一体で運動しているため、それぞれ速度v1で固定壁へ向けて移動する。
【0075】
この状態で、図11の(b)に示すように、ラッチ部91の等価質量モデル301が固定壁303に衝突すると、ラッチ部91の等価質量モデル301は反発して速度v2となり、速度v1のカウンターウェイトレバー92の等価質量モデル302と衝突する。
【0076】
そして、図11の(c)に示すように、ラッチ部91とカウンターウェイトレバー92の衝突により、それぞれの等価質量モデル301,302は、速度v3と速度v4となる。
【0077】
この一連の衝突過程において、ラッチ部91の等価質量モデル301と固定壁303との反発係数をe1とすると、以下式(3)が成立する。
v2/v1=−e1・・・(3)
【0078】
ラッチ部91とカウンターウェイトレバー92との衝突前後では、運動量保存の法則により、以下式(4)が成立する。
m1・v2+m2・v1=m1・v3+m2・v4・・・(4)
【0079】
さらに、ラッチ部91とカウンターウェイトレバー92との反発係数をe2とすると、以下式(5)が成立する。
(v3−v4)/(v2−v1)=−e2・・・(5)
【0080】
そうすると、上記(3)乃至(5)より、以下式(6)が成立する。
−e1・v1・m1+(v1+e2・v1+e1・e2・v1)・m2
=v3・m1+v3・m2・・・(6)
【0081】
ここで、上述したように、ラッチ部91とカウンターウェイトレバー92は、以下式(1)が成り立つように設定されている。
m2≧{e1/(1+e2+e1×e2)}×m1・・・(1)
【0082】
そのため、上記(1)及び(6)式から、v3≧0となり、ラッチ部91は、ラッチレバー72との衝突によっても反動により反時計回りの方向に回転することはなく、衝突以後、ラッチ部91とラッチレバー72とが離れてしまうことはない。
【0083】
尚、上記(1)式を満たさない場合であっても、ラッチ部91のラッチレバー72への衝突後の跳ね返りの速度v2よりも、カウンターウェイトレバー92との衝突後の速度v3はラッチレバー72から離れる方向への速度が小さくなるため、衝突の反動によるラッチ部91のラッチレバー72からの離反動作を抑制する効果は得られる。
【0084】
(効果)
以上のように、本実施形態の開閉装置1によれば、電流遮断動作を規制するラッチ機構は、ただ一つの係合関係を有し、具体的にはラッチレバー72とラッチ部91との係合関係のみである。そのため、ラッチレバー72とラッチ部91との係合を引き外す動作と、遮断用バネ12の動作の計2動作が順次行われることにより、電流遮断動作は行われる。このように、従来の遮断用バネ12による遮断動作は、キャッチストロークとオープロップストロークと遮断用バネ12のストロークの計3動作より成り立っていたものが、本実施形態では2動作で完遂できるため、アクチュエータの駆動開始からの開極時間が短縮化される。具体的には、オープロップストロークの時間T2が排除されたのと同じ効果が得られる。
【0085】
このラッチ機構を一つだけ設ける構成は、ラッチレバー72と係合するラッチ部91の位置保持をカウンターウェイト93により図り、係合外れを防止しているため、実効的に達成されている。
【0086】
また、このカウンターウェイトレバー92をラッチ部91の背面に接離可能に設けることにより、電流投入動作におけるラッチ部91とラッチレバー72との衝突による係合外れを防止することにより、バネ操作機構10の動作信頼性は向上する。
【0087】
更に、ラッチ部91とラッチレバー72との係合面を平面とし、この平面に直交する垂線上にラッチ部91の回転軸を設けるようにすることにより、ラッチレバー72の押圧力はラッチ部91の回転方向へ作用しづらくなる。従って、ラッチ部91の小型化を図ることができ、ラッチ部91をラッチレバー72から引き外す際の力も最小化でき、ソレノイドアクチュエータも小型化できる。
【0088】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る開閉装置1の操作機構10について図12及び13を参照して詳細に説明する。尚、第1の実施形態と同一箇所については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0089】
図12は、第2の実施形態に係るラッチ機構を示す構成図である。図12に示すように、ラッチ部91には、復帰バネ91cが回転軸に嵌着されている。この復帰バネ91cは、ねじりバネである。ねじりバネのアームは、ラッチ部91がラッチレバー72と離れる方向に拡がっており、外側でストッパーピンと当接している。そのため、このねじりバネは、ラッチレバー72のローラの移動軌跡上にラッチ部91が介在するように常に付勢力を与えており、ラッチ部91がラッチレバー72から離れにくくなっている。
【0090】
また、復帰バネ91cの他のアーム近傍には、他のストッパーピン90aが設けられており、ラッチ部91の時計回りの回転範囲を規制している。
【0091】
図13は、この第2の実施形態において、投入動作時のラッチレバー72とラッチ部91とカウンターウェイトレバー92の位置関係を示す図である。図13(a)に示すように、投入動作時にラッチレバー72がラッチ部91を押し退けるように回転すると、ラッチ部91は復帰バネ91cの存在により応答速度が鈍くなり、先にカウンターウェイトレバー92が衝突の反動によって跳ね返ってラッチ部91から離れる。
【0092】
そして、図13(b)に示すように、ラッチ部91が衝突の反動により、ラッチレバー72から跳ね返った頃には、カウンターウェイトレバー92がラッチ部91の方向へ戻り、ラッチ部91と当接する。そのため、図13(c)に示すように、ラッチ部91の跳ね返りは、カウンターウェイトレバー92によって小さくなる。
【0093】
従って、第2の実施形態では、復帰バネ91cの存在によってラッチ部91によるラッチレバー72の回転抑止効果がより向上するとともに、投入動作におけるラッチ部91からのラッチレバー72の係合外れをより効果的に防止できる。
【0094】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る開閉装置1の操作機構10について図14を参照して詳細に説明する。尚、第1の実施形態と同一箇所については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0095】
図14は、第3の実施形態に係るラッチ部91とカウンターウェイトレバー92とを示す斜視図である。図14に示すように、この操作機構10は、複数のカウンターウェイトレバー92を備えている。カウンターウェイトレバー92は、それぞれ一端にカウンターウェイト93が取り付けられ、他端が各復帰バネ94で付勢されている。
【0096】
この複数のカウンターウェイトレバー92は、カウンターウェイト93の重量、又は復帰バネの弾性係数、又はその両方がそれぞれ異なっている。そのため、投入動作において、カウンターウェイトレバー92がラッチ部91から跳ね返った場合、各カウンターウェイトレバー92のラッチ部91への復帰タイミングがずれることとなる。従って、ラッチ部91のラッチレバー72からの跳ね返りに対する抑止力は断続的に働き、ラッチレバー72とラッチ部91の係合外れは更に効果的に防止される。
【0097】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る開閉装置1の操作機構10について図15を参照して詳細に説明する。尚、第1の実施形態と同一箇所については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0098】
図15は、第4の実施形態に係るラッチ部91の先端を示す拡大構成図である。図15に示すように、カウンターウェイトレバー92の先端には、カウンターウェイト93の側面にピン97が立設している。ピン97は、ラッチ部91の回転方向に対して直交して延びている。
【0099】
このピン97には、リング98が嵌められている。リング98の内径は、ピン97の直径より大きく、リング98は、ピン97の径方向に移動可能となっている。このリング98は、カウンターウェイト93と略同一の外径を有する。
【0100】
この第4の実施形態に係る開閉装置1の操作機構10において、投入動作時にラッチ部91がラッチレバー72と衝突し、その反力がカウンターウェイトレバー92に及ぶと、リングは慣性力に従って、カウンターウェイトレバー92の跳ね返り方向とは逆に移動し、ピンに衝突する。そのため、ラッチ部91は、このリング98の慣性力によってラッチレバー72からの離間を阻止される。従って、この第4の実施形態においては、ラッチ部91とラッチレバー72の係合外れが更に防止される。
【0101】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る開閉装置1の操作機構10について図16を参照して詳細に説明する。尚、第1の実施形態と同一箇所については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0102】
図16は、第5の実施形態に係るラッチ機構の構成図である。図16に示すように、ラッチ部91のローラ受け103には、ローラ72aとの衝突面に振動吸収部材95が貼着されている。振動吸収部材95は、高分子材料等の振動吸収性の高い材質により構成されている。これにより、投入動作によってラッチレバー72のローラ72aがラッチ部91と衝突したとき、その衝撃が振動吸収部材95により吸収され、ラッチ部91の跳ね返りが緩和され、ラッチ部91とラッチレバー72との係合外れが更に効果的に防止される。
【0103】
[その他の実施の形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、第1乃至第5の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせたものも包含される。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0104】
例えば、図17に示すように、ラッチ部91にレバーを固定し、ラッチ部91の回転を係止部材91eを押しつけることで係止し、この係止部材91eの押し付けをソレノイドアクチュエータ91fで付与又は解除する方式においても、カウンターウェイトレバー92をラッチ部91の背面に設けることができる。
【0105】
また、カウンターウェイト93は、円形の断面形状であっても、それ以外の形状であってもよく、双方において同様の効果を得ることができる。
【0106】
更に、各実施形態においては、遮断用バネ12や投入用バネ13やその他の復帰バネに圧縮コイルバネを用いたが、他の弾性体要素、例えバネじりコイルバネ、皿バネ、渦巻きバネ、板バネ、空気バネ、又は引っ張りバネ等を用いることもできる。
【0107】
また、ラッチ部91の先端を凸円弧面で形成し、その円弧面の中心位置は、投入状態におけるローラの中心とラッチ部91の回転軸中心を結ぶ直線上にほぼ一致させることにより、ラッチ部91とラッチレバー72との係合を外す時間は短縮され、開極時間の短縮化が可能となる。
また、第2の実施形態では、ラッチ部91に固定された復帰バネ91cと係合するストッパーピン90cと、ラッチ部91の時計回りの回転を規制するストッパーピン90aとをそれぞれ設けているが、一つに兼用させるようにしてもよい。
【0108】
例えば、本発明は、対向接触子4aを可動接触子4bと反対側へ駆動し、相対的開極速度を向上させようとするいわゆるデュアルモーション機構を用いたタイプの開閉装置1にも適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 開閉装置
2 消弧性ガス
3 密閉容器
4a 対向接触子
4b 可動接触子
5 操作ロッド
6 リンク
10 操作機構
11 メインレバー
11a ピン
12 遮断用バネ
13 投入用バネ
14 ハウジング
14a ハウジング上面
15 リンク
16 バネ受け
17 ダンパー
17a ピストン
18 バネ受け
18a ピン
21 ソレノイドアクチュエータ
21a プランジャ
22 ソレノイドアクチュエータ
22b プランジャ
53 引き外しリンク
53a 長穴
54 引き外しレバー
54b ローラピン
62 半円柱部材
62a 突起物
62b 復帰バネ
70 サブシャフト
71 サブレバー
71a ピン
72 ラッチレバー
72a ローラ
73 カムレバー
73a ローラ
80 リンク
82 投入レバー
82a ピン
82b ツメ
83 リンク
84 カム
90 係止レバー
90a ストッパーピン
90b ピン
90c ストッパーピン
91 ラッチ部
91a 回転軸
91b ピン
91c 復帰バネ
91d レバー
91e 係止レバー
91f ソレノイドアクチュエータ
92 カウンターウェイトレバー
93 カウンターウェイト
94 復帰バネ
95 振動吸収部材
97 ピン
98 リング
100 回転軸
101 中心軸
102 平面部
103 ローラ受け
301 ラッチ部の等価質量モデル
302 カウンターウェイトレバーの等価質量モデル
303 ラッチレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向接点に対して可動接点を接離させることで、電流の遮断と投入とを切り替える開閉装置の操作機構であって、
前記投入から前記遮断に移行するときに放勢される遮断用バネと、
回転可能に軸支されるとともに、一端が前記遮断用バネと連結され、他端が前記可動接点と連結され、前記遮断用バネのバネ力を受けて回転することで前記可動接点を前記対向接点から引き離すメインレバーと、
前記メインレバーと一端が連結され、他端を中心に回転可能なサブレバーと、
前記サブレバーの前記他端を固定し、軸回転可能なサブシャフトと、
一端が前記サブシャフトに固定され、他端にローラが取り付けられ、前記サブシャフトの軸回転に受けて前記一端を中心に回転可能な単数のラッチレバーと、
回転可能に軸支され、前記投入の状態にあるときには端部が前記ローラの移動軌跡上に介在して前記ラッチレバーの回転を抑止する単数のラッチ部と、
前記ラッチ部の前記端部に接離可能なウェイトを一端に有するウェイトレバーと、
前記ウェイトレバーの他端に取り付けられ、前記ローラの移動軌跡上に前記ラッチ部の前記端部を維持させるように、前記ウェイトを前記端部に押しつける復帰バネと、
前記ウェイトを押し退けて前記ラッチ部を回転させることで、前記ラッチ部を前記ローラの移動軌跡上から待避させるアクチュエータと、
を備えること、
を特徴とする操作機構。
【請求項2】
前記ラッチ部は、
前記ローラの移動軌跡上に介在する端部に設けられ、前記ローラと当接する平面と、
前記平面と直交する仮想線上に設けられた回転軸と、
を有し、
前記投入の状態では、前記ローラの移動力を前記平面によって前記回転軸に向かう力に変換することで、前記ラッチレバーの回転を更に抑止すること、
を特徴とする請求項1記載の操作機構。
【請求項3】
前記ラッチ部と連結し、前記アクチュエータの駆動力を受けて前記ラッチ部を前記ローラの移動軌跡から引き外すように移動可能な引き外しリンク機構と、
前記ラッチ部の端部を前記ローラの移動軌跡上へ付勢する復帰バネと、
を更に備え、
前記アクチュエータは、前記復帰バネに抗して前記リンク機構を移動させること、
を特徴とする請求項1又は2記載の操作機構。
【請求項4】
前記引き外しリンク機構は、
前記ラッチ部に配置されたピンと、
一端が前記ピンに軸支され、他端に長穴を有するリンクと、
前記長穴内を摺動可能なピンが一端に設けられたレバーと、
を有し、
前記アクチュエータは、前記レバーの他端と当接するプランジャを有するソレノイドアクチュエータであり、
前記プランジャで前記レバーの他端を押し出すと、前記レバーの先端が引き倒され、前記リンクが前記レバーの先端に引きずられ、前記ラッチ部が前記ウェイトを押し退けて回転して前記ローラの移動軌跡から待避すること、
を特徴とする請求項3記載の操作機構。
【請求項5】
前記ラッチ部の等価質量m1と前記ウェイトレバーの等価質量m2は、
前記ラッチレバーと前記ラッチ部の反発係数をe1、前記ラッチ部と前記ウェイトレバーの反発係数をe2とすると、
m2≧{e1/(1+e2+e1×e2)}×m1であること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の操作機構。
【請求項6】
前記ウェイトを有する前記ウェイトレバーと前記ウェイトの前記復帰バネは、それぞれ複数設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の操作機構。
【請求項7】
前記複数のウェイトは、重量が異なること、
を特徴とする請求項6記載の操作機構。
【請求項8】
前記ウェイトの前記復帰バネは、弾性係数が異なること、
を特徴とする請求項6又は7に記載の操作機構。
【請求項9】
前記ラッチ部の端部を前記ローラの移動軌跡上に復帰させる復帰バネを更に備えること、
を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の操作機構。
【請求項10】
前記ウェイトに配設されるピン体と、
前記ピン体の外径よりも大きい内径と、前記ウェイトの外径と同程度の外径を有し、前記ピン体に遊貫されたリングと、
を有すること、
を特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の操作機構。
【請求項11】
前記ラッチ部の前記端部に設けられる振動吸収材を更に備えること、
を特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の操作機構。
【請求項12】
前記サブシャフトに固定されたカムレバーと、
前記サブシャフトと並行に配設される投入シャフトと、
前記投入シャフトに固定され、前記カムレバーとカム面が当接する投入カムと、
一端が前記投入シャフトに固定され、前記投入シャフトを軸回転させる投入レバーと、
前記投入レバーの他端にリンク機構を介して取り付けられ、前記投入の状態に移行するときに前記投入レバーを回転させるように付勢する投入用バネと、
を備えること、
を特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の操作機構。
【請求項13】
前記投入レバーの先端に配置されたツメと、
前記ツメと係合する半円柱部と、
前記半円柱部を前記ツメと係合させる方向に付勢するバネと、
前記バネの付勢に抗して、前記半円柱部を前記ツメから離間させる方向に移動させるアクチュエータと、
を備えること、
を特徴とする請求項12記載の操作機構。
【請求項14】
電流の遮断状態と投入状態とを切り替える開閉装置であって、
相対的に接離可能な対向接点及び可動接点と、
前記投入状態から前記遮断状態に移行するときに放勢される遮断用バネと、
回転可能に軸支されるとともに、一端が前記遮断用バネと連結され、他端が前記可動接点と連結され、前記遮断用バネの放勢を受けて回転することで前記可動接点を前記対向接点から引き離すメインレバーと、
前記メインレバーと一端が連結され、他端を中心に回転可能なサブレバーと、
前記サブレバーの前記他端を固定し、軸回転可能なサブシャフトと、
一端が前記サブシャフトに固定され、他端にローラが取り付けられ、前記サブシャフトの軸回転を受けて前記一端を中心に回転可能な単数のラッチレバーと、
回転可能に軸支され、前記投入状態にあるときには端部が前記ローラの移動軌跡上に介在して前記ラッチレバーの回転を抑止する単数のラッチ部と、
前記ラッチ部の前記端部に接離可能なウェイトを一端に有するウェイトレバーと、
前記ウェイトレバーの他端に取り付けられ、前記ローラの移動軌跡上に前記ラッチ部の前記端部を維持させるように、前記ウェイトを前記端部に押しつける復帰バネと、
前記ウェイトを押し退けて前記ラッチ部を回転させることで、前記ラッチ部を前記ローラの移動軌跡上から待避させるアクチュエータと、
を備えること、
を特徴とする開閉装置。
【請求項15】
前記ラッチ部は、
前記ローラの移動軌跡上に介在する端部に設けられ、前記ローラと当接する平面と、
前記平面と直交する仮想線上に設けられた回転軸と、
を有し、
前記投入状態では、前記ローラの移動力を前記平面によって前記回転軸に向かう力に変換することで、前記ラッチレバーの回転を更に抑止すること、
を特徴とする請求項14記載の開閉装置。
【請求項16】
前記ラッチ部の等価質量m1と前記ウェイトレバーの等価質量m2は、
前記ラッチレバーと前記ラッチ部の反発係数をe1、前記ラッチ部と前記ウェイトレバーの反発係数をe2とすると、
m2≧{e1/(1+e2+e1×e2)}×m1であること、
を特徴とする請求項14又は15記載の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−65480(P2013−65480A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204024(P2011−204024)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(395002434)東芝変電機器テクノロジー株式会社 (59)
【Fターム(参考)】