説明

開閉装置

【課題】各種電子機器に使用される開閉装置に関し、開閉操作時の衝撃が少なく、滑らかな操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】一端が弾性部材19に当接し、他端の緩衝カム18が固定カム12から突出する緩衝体17を設けることによって、可動カム4が固定カム12に弾接する際、可動カム4が先ず固定カム12から突出した緩衝カム18に当接し、弾性部材19が撓むことで、可動カム4の固定カム12への弾接による衝撃が緩和されるため、開閉操作時の衝撃が少なく、滑らかな操作が可能な開閉装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に携帯電話やパーソナルコンピュータ等の、各種電子機器に使用される開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の高機能化や小型化が進むなか、固定筐体に対し可動筐体が開閉可能に装着された、所謂、折畳み式のものが増えており、これらに用いられる開閉装置においても、確実で良好な開閉操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の開閉装置について、図5〜図7を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面のうち、断面図等は固定カムと可動カムの関係を判り易くするため、径方向を拡大して表わしている。
【0005】
図6は従来の開閉装置の断面図、図7は同分解斜視図であり、同図において、1は左端面に固定部1Aが形成された略円筒状で金属製の固定体で、この右端面外周には、突出部2A、及びこの突出部2Aから上下へ延出する二つの傾斜部2B、2Cから形成された、一対の固定カム2が設けられている。
【0006】
また、3は同じく略円筒状で金属製の可動体で、固定体1に対し開閉方向へ回転可能に、かつ軸線方向へ移動可能に配置されると共に、固定カム2との対向面である左端面外周には一対の可動カム4が設けられている。
【0007】
そして、5は略円筒状で金属製の可動ケースで、左端の開口部から固定体1の固定部1Aが回転可能に突出すると共に、外周に突出したガイド溝部5Aには、可動体3外周の突起部3Aが挿入され、可動体3が軸線方向へ移動可能に可動ケース5内に収納されている。
【0008】
さらに、6はコイル状のばねで、可動体3右端面と可動ケース5内側面の間に、ばね6がやや撓んだ状態で装着され、このばね6によって可動体3が左方向へ付勢され、可動カム4の先端が固定カム2の傾斜部2Bへ弾接している。
【0009】
また、7は略円柱状の固定軸で、この固定軸7の左端部に固定体1が固着されると共に、固定軸7の右端部は可動体3の中空部やばね6を挿通し、止め輪8によって、可動ケース5外側面に回転可能に装着されて、開閉装置10が構成されている。
【0010】
そして、このように構成された開閉装置10が、例えば、図5の携帯電話の斜視図に示すように、固定体1の固定部1Aが上面に複数のキーからなる操作部21Aやマイクロフォン等の音声入力部21Bが形成された固定筐体21へ、可動ケース5のガイド溝部5A外周が、表面に液晶表示素子等の表示部22Aやスピーカ等の音声出力部22Bが形成された可動筐体22へ各々固着され、開閉装置10によって固定筐体21に対して可動筐体22が開閉可能に軸支されて電子機器が構成される。
【0011】
以上の構成において、図6に示すように、可動カム4の先端が固定カム2下側の傾斜部2Bへ弾接した状態では、可動体3がばね6によって下方向の閉方向へ付勢されているため、可動ケース5が装着された可動筐体22は、固定筐体21に対して閉じた状態で保持されている。
【0012】
そして、この閉状態から、可動筐体22を手で開くと、可動筐体22にガイド溝部5Aが装着固定された可動ケース5が回転し、可動体3が可動ケース5内を右方向の軸線方向へ回転しながら移動して、可動カム4先端が固定カム2の突出部2Aを超えて上側の傾斜部2Cへ弾接すると、可動体3が上方向の開方向へ付勢されるため、この力によって可動筐体22に開く方向の力が加わり、可動筐体22が固定筐体21に対して所定角度に開いた状態となる。
【0013】
つまり、可動筐体22に装着された可動ケース5を回転させることによって、ばね6に付勢された可動体3を軸線方向へ移動させ、可動カム4先端を固定カム2の傾斜部2Bまたは2Cのいずれかへ弾接させて、固定筐体21に対する可動筐体22の開閉操作が行われるように構成されている。
【0014】
なお、以上のような開閉操作時に、可動筐体22を手で所定角度まで開き、可動カム4先端が固定カム2の傾斜部2Bから突出部2Aを超えた後は、ばね6に付勢された可動カム4が傾斜部2C上を速やかに弾接摺動するため、可動筐体22の開操作を急速に行った場合には、可動カム4の固定カム2への衝突が手に衝撃として伝わる場合がある。
【0015】
このため、高粘度の潤滑剤が塗布された複数の摩擦板が弾接したダンパー装置(図示せず)等を、固定筐体21と可動筐体22の間に別途設け、これによって可動筐体22に一定の抵抗を与え、開閉装置10による衝撃を緩和して、可動筐体22の衝撃のない緩やかな開閉操作が可能となるように構成することが、一般に行われているものであった。
【0016】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2006−258117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記従来の開閉装置においては、開閉操作時の可動カム4の固定カム2への弾接による衝撃を防ぐため、別途ダンパー装置等を用いる必要があり、機器の構成が複雑なものになると共に、高価なものとなってしまうという課題があった。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、開閉操作時の衝撃が少なく、滑らかな操作が可能な開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、一端が弾性部材に当接し、他端の緩衝カムが固定カムから突出する緩衝体を設けて開閉装置を構成したものであり、可動カムが固定カムに弾接する際、可動カムが先ず固定カムから突出した緩衝カムに当接し、弾性部材が撓むことによって、可動カムの固定カムへの弾接による衝撃が緩和されるため、開閉操作時の衝撃が少なく、滑らかな操作が可能な開閉装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、開閉操作時の衝撃が少なく、滑らかな操作が可能な開閉装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0022】
なお、これらの図面の内、断面図等は固定カムと可動カムの関係を判り易くするため、径方向を拡大して表わしている。
【0023】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0024】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11は略円筒状で鋼や銅合金、焼結合金、或いは合成樹脂等の固定体で、この右端面外周には、突出部12A、及びこの突出部12Aから上下へ延出する二つの傾斜部12B、12Cから形成された、一対の固定カム12が設けられている。
【0025】
そして、3は同じく略円筒状で鋼や銅合金、焼結合金、或いは合成樹脂等の可動体で、固定体11に対し開閉方向へ回転可能に、かつ軸線方向へ移動可能に配置されると共に、固定カム12との対向面である左端面外周には一対の可動カム4が設けられている。
【0026】
また、15は略円筒状で鋼や銅合金、焼結合金、或いは合成樹脂等の可動ケースで、外周に突出した一対のガイド溝部15Aには、可動体3外周の一対の突起部3Aが挿入され、可動体3が軸線方向へ移動可能に可動ケース15内に収納されている。
【0027】
さらに、6はコイル状で銅や鋼線製のばねで、可動体3右端面と可動ケース15内側面の間に、ばね6がやや撓んだ状態で装着され、このばね6によって可動体3が左方向へ付勢され、可動カム4の先端が固定カム12の傾斜部12Bへ弾接している。
【0028】
また、7は略円柱状で鋼や銅合金、焼結合金、或いは合成樹脂等の固定軸で、固定軸7の右端部が可動体3の中空部やばね6を挿通し、止め輪8によって、可動ケース15外側面に回転可能に装着されている。
【0029】
そして、16は金属或いは合成樹脂等の固定カバーで、この固定カバー16や固定体11が固定軸7の左端部に固着されると共に、固定カバー16が可動ケース15左端の開口部を覆い、外周には固定部16Aが形成されている。
【0030】
さらに、17は鋼や銅合金、焼結合金、或いは合成樹脂等の緩衝体で、一対の緩衝体17が固定体11内周に軸線方向へ移動可能に装着されると共に、図1や図3の部分斜視図に示すように、右端に形成された緩衝カム18が固定カム12から右方向へ突出している。
【0031】
また、19は略柱状でスポンジ状やゲル状のウレタンやシリコーン、或いはこれらが積層された弾性部材で、一対の弾性部材19が固定カバー16右端面に装着されると共に、弾性部材19右端に緩衝体17左端が当接して、開閉装置20が構成されている。
【0032】
そして、このように構成された開閉装置20が、例えば、図5の携帯電話の斜視図に示すように、固定カバー16の固定部16Aが上面に複数のキーからなる操作部21Aやマイクロフォン等の音声入力部21Bが形成された固定筐体21へ、可動ケース15のガイド溝部15A外周が、表面に液晶表示素子等の表示部22Aやスピーカ等の音声出力部22Bが形成された可動筐体22へ各々固着され、開閉装置20によって固定筐体21に対して可動筐体22が開閉可能に軸支されて電子機器が構成される。
【0033】
以上の構成において、図1や図4(a)の部分断面図に示すように、可動カム4の先端が固定カム12下側の傾斜部12Bへ弾接した状態では、可動体3がばね6によって下方向の閉方向へ付勢されているため、可動ケース15が装着された可動筐体22は、固定筐体21に対して閉じた状態で保持されている。
【0034】
また、この閉状態から、可動筐体22を手で開くと、可動筐体22にガイド溝部15Aが装着固定された可動ケース15が回転し、可動体3が可動ケース15内を右方向の軸線方向へ回転しながら移動して、図4(b)に示すように、可動カム4先端が固定カム12の突出部12Aを超え、上側の傾斜部12Cへ弾接すると、可動体3が上方向の開方向へ付勢されるため、この力によって可動筐体22に開く方向の力が加わる。
【0035】
そして、この後、図4(c)に示すように、ばね6によって左方向へ付勢された可動カム4先端が、固定カム12から突出した緩衝カム18に弾接し、緩衝体17を押圧すると、図4(d)に示すように、緩衝体17左端が当接した弾性部材19が撓んで弾性変形し、これによって緩衝体17が左方向へ移動して、可動カム4先端が再び傾斜部12Cへ弾接する。
【0036】
さらに、この後、可動カム4先端が傾斜部12C上を上方向へ弾接摺動するが、これ以降も、図4(e)に示すように、先ず可動カム4が緩衝カム18に弾接し、図4(f)に示すように、これによって弾性部材19がさらに撓み、緩衝体17が左方向へ移動した後に、傾斜部12Cへ弾接するということを連続して繰り返しながら、傾斜部12C上を上方向へ弾接摺動する。
【0037】
そして、図4(g)に示すように、可動カム4先端が傾斜部12Cの平坦部まで弾接摺動し、緩衝カム18から外れこれを押圧しない状態になると、弾性復帰力によって弾性部材19が元の状態に復帰し、緩衝カム18が固定カム12から右方向へ突出した状態に戻ると共に、可動筐体22が固定筐体21に対して所定角度、例えば160度前後に開いた状態で保持される。
【0038】
なお、この開状態から可動筐体22を手で閉じた場合にも、上記と同様に、下方向へ弾接摺動した可動カム4が先ず緩衝カム18に弾接し、弾性部材19が撓んで緩衝体17が左方向へ移動した後に、傾斜部12Cへ弾接するということを連続して繰り返しながら、可動カム4が下方向の閉方向へ移動して、閉操作が行われる。
【0039】
つまり、開閉操作を行う際、ばね6によって付勢され固定カム12上を弾接摺動する可動カム4が、先ず固定カム12から突出した緩衝カム18に当接し、弾性部材19が撓んで緩衝体17が移動した後に、傾斜部12Cへ弾接するため、開閉操作が急速に行われた場合でも、可動カム4の固定カム12への衝突による衝撃が緩和され、滑らかな操作が行えるようになっている。
【0040】
すなわち、開閉操作に伴って、可動カム4が先ず緩衝カム18に当接し、弾性部材19が撓んで弾性変形することによって、あたかもダンパー装置(図示せず)等を用いた場合と同様に、可動カム4が固定カム12へ弾接する際の衝撃が緩和され、簡易で安価な構成で、滑らかな操作感触が得られるように構成されている。
【0041】
なお、弾性部材19にコイル状で銅や鋼線製のばねや、或いはU字状に折曲された金属薄板製のばね等を用いても本発明の実施は可能であるが、上述したように、ウレタンやシリコーン等の合成樹脂、或いはこれらが積層されたものを用いることで、より好ましい効果を得ることができる。
【0042】
つまり、弾性部材19に上記のような金属製のばねを用いた場合、こうした金属製のばねは開閉操作の速さ、すなわち可動カム4が固定カム12上を弾接摺動する速度に係わりなく、その全体の撓みに応じた所定の荷重、すなわちダンパー力が生じるため、可動筐体22を急速に開閉操作した場合でも、緩やかに開閉操作した場合でも同様のダンパー力しか得られない。
【0043】
これに対し、弾性部材19に上述したような略柱状で合成樹脂製のものを用いた場合、開閉操作が緩やかに行われた場合には、金属製のばねと同様に、所定の力で弾性部材19に所定の弾性変形が生じるが、急速に開閉操作が行われた場合、つまり可動カム4から緩衝カム18に急速な力が加わった場合には、その速度が大きくなるほど大きな力が加わらないと、弾性部材19には撓みが生じづらくなる。
【0044】
すなわち、弾性部材19に略柱状で合成樹脂製のものを用いることによって、開閉操作が急速に行われるほど、つまり可動カム4の固定カム12への衝突による衝撃が大きくなるほど、弾性部材19のダンパー力が大きなものとなり、衝撃を緩和する効果が顕著なものとなるように構成することができる。
【0045】
このように本実施の形態によれば、一端が弾性部材19に当接し、他端の緩衝カム18が固定カム12から突出する緩衝体17を設けることによって、可動カム4が固定カム12に弾接する際、可動カム4が先ず固定カム12から突出した緩衝カム18に当接し、弾性部材19が撓むことで、可動カム4の固定カム12への弾接による衝撃が緩和されるため、開閉操作時の衝撃が少なく、滑らかな操作が可能な開閉装置を得ることができるものである。
【0046】
なお、以上の説明では、手で可動筐体22を開閉操作し、これに固着された可動ケース15を回転させて、可動カム4を固定カム12に弾接摺動させる構成について説明したが、押釦や、可動カム4の固定カム12への弾接位置を反転させる反転カム等の部品を別途設け、手による開閉操作に加え、閉状態から押釦の押圧操作によって可動筐体22を自動的に開く、所謂、ワンプッシュオープン構造の開閉装置においても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による開閉装置は、開閉操作時の衝撃が少なく、滑らかな操作が可能なものを得ることができ、主に各種電子機器に使用される開閉装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分斜視図
【図4】同部分断面図
【図5】携帯電話の斜視図
【図6】従来の開閉装置の断面図
【図7】同分解斜視図
【符号の説明】
【0049】
3 可動体
3A 突起部
4 可動カム
6 ばね
7 固定軸
8 止め輪
11 固定体
12 固定カム
12A 突出部
12B、12C 傾斜部
15 可動ケース
15A ガイド溝部
16 固定カバー
16A 固定部
17 緩衝体
18 緩衝カム
19 弾性部材
20 開閉装置
21 固定筐体
21A 操作部
21B 音声入力部
22 可動筐体
22A 表示部
22B 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面に固定カムが設けられた固定体と、この固定体に対し回転可能に配置されると共に、上記固定カムとの対向面に可動カムが設けられた可動体と、上記可動カムを上記固定カムに弾接させるばねからなり、一端が弾性部材に当接し、他端の緩衝カムが上記固定カムから突出する緩衝体を設けた開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−7680(P2010−7680A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164085(P2008−164085)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】