説明

間接活線作業用具保持装置

【課題】 高所作業時に作業者の作業スペースを確保することができる上に、バケットの移動時に棒状の本体部を備えた間接活線作業用具が架線等に干渉することなく間接活線作業用具を確実に保持し、作業者や周囲の安全を確保することのできる間接活線作業用具保持装置を提供する。
【解決手段】 高所作業車のバケットの側壁の上端部に基端部が枢着されたベースと、間接活線作業用具を保持可能に構成された保持手段とを備え、ベースは、枢着軸を中心に回転することで、バケットの側壁と交差する方向で外方に向けて延出した第一姿勢と、上下方向に延びる第二姿勢とに切り換え可能に構成され、保持手段は、ベースの第一姿勢で上向きになる面上に配置され、且つ、間接活線作業用具の長手方向がベースの延びる方向と対応するように間接活線作業用具を保持可能に構成され、間接活線作業用具の長尺方向にスライド可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車のバケット上で作業者が用いる間接活線作業用具を保持するための間接活線作業用具保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、架線や電柱等の高所にあるものを対象に作業を行うに当たり、高所作業車が用いられている。かかる高所作業車は、伸長可能に構成されたブームの先端に作業者の乗るバケットが設けられており、ブームの回転・伸長・傾動等でバケットを作業対象の近傍に配置できるようになっている。これにより、高所作業車は、バケットに乗った作業者が各種作業用具や部品等を用いて高所にある作業対象に対する各種作業を行えるようになっている。
【0003】
ところで、高所作業は、上述の如く、作業者がバケットに乗って各種作業を行うため、バケットには、作業を行うための各種作業用具も一緒に載せられる。そして、バケット内に作業用具を置くと作業者の作業スペースが作業用具に占領されてしまい、作業者の安全性や作業効率が低下するとして、通常、各種作業用具を収納した作業用袋をバケットの側壁の外面側に吊り下げたり、バケットに並設されたウインチのブーム等に吊り下げたりすることで、作業者の作業スペースを確保するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−213505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如く、作業用袋をバケットの外側に吊り下げて作業スペースを確保すると、作業者が作業用袋から各種作業用具を取り出すに当たり、作業者はバケットから身体を外側に乗り出した姿勢で各種作業用具を取り出さなければならず、安全性に問題があった。
【0005】
また、作業用具には、一方向に長手をなした棒状の本体部を備えた間接活線操作棒や絶縁ヤットコ等の間接活線作業用具があり、このように一方向に長手をなしたもの(長尺なもの)を作業用袋に入れると上方に向けての延出量が大きく、作業用袋の配置によっては、作業者の身長よりも上方に延出してしまうことがあり、バケットを上昇(移動)させたときに間接活線作業用具が架線等と接触する虞がある。
【0006】
さらに、このように一方向に長手をなす本体部を備えた間接活線作業用具を作業用袋に入れると、作業用袋から出た部分が多くなって収容状態が不安定になってしまうため、作業中(作業用具を出し入れ作業)やバケットの移動に伴って作業用袋のバランスが崩れ、間接活線作業用具が落下してしまう虞もある。
【0007】
このように、従来の作業用袋を用いた作業は、作業者や周囲の安全を確保するのに十分と言えるものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、高所作業時に作業者の作業スペースを確保することができる上に、バケットの移動時に棒状の本体部を備えた間接活線作業用具が架線等に干渉することなく、作業者や周囲の安全を確保することのできる間接活線作業用具保持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る間接活線作業用具保持装置は、高所作業車のバケットの上下方向に延びる側壁の上端部に基端部が枢着されたベースと、棒状の本体部を備えた間接活線作業用具を保持可能に構成された保持手段とを備え、前記ベースは、枢着軸を中心に回転することで、バケットの側壁と交差する方向で外方に向けて延びる第一姿勢と、上下方向に延びる第二姿勢とに切り換え可能に構成され、前記保持手段は、前記ベースの第一姿勢で上向きになる面上に配置され、且つ、間接活線作業用具の本体部の長手方向がベースの延びる方向と対応するように該間接活線作業用具を保持可能に構成されるとともにベースの延びる方向にスライド可能に構成されていることを特徴とする。なお、ここで、「棒状の本体部を備えた間接活線作業用具」とは、間接活線作業に用いられる工具であって、一方向に長手をなす棒状の本体部を備えた各種工具を意味する。すなわち、「棒状の本体部を備えた間接活線作業用具」とは、例えば、棒状の本体部の先端部に各種先端工具が取り付けられる一方、本体部の基端側に作業者が把持する把持部が設けられた間接活線操作棒や、棒状の本体部の先端に対象物を挟持すべく互いに接離可能な一対の挟持体が設けられる一方、本体部の基端側に作業者が把持する把持部が設けられ、該把持部に一対の挟持体を接離させるためのハンドルが設けられた絶縁ヤットコ等の間接活線作業に用いられる各種工具を意味する。
【0010】
上記構成の間接活線作業用保持装置によれば、ベースが第二姿勢になった状態で保持手段に保持された間接活線作業用具の本体部が上下方向に延びた態様となる。そして、保持手段をベースの延びる方向(ベースが枢着された基端(側壁側)から先端に向けて延びる方向)にスライドさせることで、該保持手段に保持された間接活線作業用具の上下方向の配置を調整することができる。これにより、間接活線作業用具の本体部が上下方向に延びる姿勢で保持されたとしても、間接活線作業用具が上方側或いは下方側に延出しすぎることがなく、バケットの移動に伴って間接活線作業用具が架線等に接触(干渉)することを防止することができる。
【0011】
そして、ベースが第二姿勢にあるときに保持手段をスライドさせて間接活線作業用具の配置を調整すると、ベースを第一姿勢にしたときに該ベースの基端側で間接活線作業用具がバケット内(作業者の作業スペース内)に位置する場合があるが、保持手段をベースの先端側にスライドさせることで、間接活線作業用具が作業スペースから退避した状態となり、作業者の作業スペースを確保することができる。また、保持手段は、ベースの第一姿勢で上向きになる面上に設置されているため、ベースが第一姿勢になった状態で、作業者が保持手段から間接活線作業用具を簡単に取り外して各種作業に用いることができる。また、ベースは、第一姿勢になった状態で、バケット(側壁)の上端部から外方に延出した態様になるため、作業者がバケットから身体を乗り出すことなく間接活線作業用具を保持手段に対して着脱することができる。
【0012】
本発明の一態様として、前記ベースは、プレート状に形成され、第一姿勢で上向きになる面の一部の領域に保持手段が設置されるとともに、第一姿勢になった状態で前記一部の領域以外の他の領域に各種作業用具を載置可能に構成されてもよい。このようにすれば、作業時(ベースが第一姿勢のとき)に、間接活線作業用具に加え、該間接活線作業用具に取り付ける先端工具や、その他の工具を初めとして、絶縁テープや絶縁カバー、圧縮スリーブ等の部品といった各種作業用具をベース上に載置することができる。これにより、高所作業中に作業用袋から各種作業用具を取り出すといった作業を行う必要がなく、作業者の安全をより確実に確保することができる。
【0013】
本発明の他態様として、前記ベースは、バケットの側壁の内面側に枢着され、第二姿勢で側壁の上端から上方に向けて延出した姿勢になる一方、第一姿勢で側壁の上面に支持されるように構成されてもよい。このようにすれば、ベースを第一姿勢と第二姿勢との間で姿勢変更させるときに、ベースがバケット(作業スペース)内を通過することがなく、作業者がベースの姿勢変更に伴ってベースを躱した姿勢をとる必要がない。また、ベースを第一姿勢で維持させるためにベースを支持する支持手段を設ける必要がなく、構成を簡素化することもできる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る間接活線作業用具保持装置によれば、高所作業時に作業者の作業スペースを確保することができる上に、バケットの移動時に棒状の本体部を備えた間接活線作業用具が架線等に干渉することなく、作業者や周囲の安全を確保することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第一実施形態に係る間接活線作業用具保持装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0016】
本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置は、高所作業車のバケットに取り付けられるもので、図1、図2、図3(a)及び図3(b)に示す如く、高所作業車のバケットBの上下方向に延びる側壁Wの上端部に基端部が枢着されたベース10と、棒状の本体部を備えた間接活線作業用具Tを保持可能に構成された保持手段20とを備えている。
【0017】
前記ベース10は、枢着軸を中心に回転することで、バケットBの側壁Wと交差する方向で外方に向けて延びる第一姿勢F1と、上下方向に延びる第二姿勢F2とに切り換え可能に構成されている。本実施形態に係るベース10は、プレート状に形成されている。そして、該ベース10は、第一姿勢F1で上向きになる面の一部の領域に保持手段20が設置されるとともに、第一姿勢F1になった状態で前記一部の領域以外の他の領域に各種作業用具を載置可能に構成されている。すなわち、本実施形態に係るベース10は、保持手段20を支持する機能に加え、各種作業用具を載置するトレイとしても機能するようになっている。
【0018】
より具体的には、本実施形態に係るベース10は、長方形状の板状に形成されており、長手方向と直交する方向(以下、短手方向という)の一方の端部が基端部とされ、その基端部がヒンジ100を介してバケットBの側壁Wの上端部に固定されている。そして、該ベース10は、バケットBの側壁Wの内面側に枢着され、第二姿勢F2でバケットBの上端から上方に向けて延出した姿勢になる一方、第一姿勢F1でバケットBの側壁Wの上面に支持されるように構成されている。これに伴い、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、ベース10がバケットBの上端から上方に向けて延びる第二姿勢F2(ベース10が起立した第二姿勢F2)で、該ベース10の姿勢を維持させるための姿勢維持手段30が設けられている。
【0019】
かかる姿勢維持手段30には、種々態様のものを採用することができ、本実施形態においては、ベース10の側面(長手方向の少なくとも何れか一方の端面)に突設されたピン体300と、先端部がピン体300に対して係脱可能に構成されるとともに基端部がバケットBに枢着されたアーム体301とで構成されている。かかるアーム体301は、図3(b)に示す如く、先端部に長手方向と交差方向に掘り下げられた凹部302が形成されており、枢着支点周りで回転させることで、ベース10が起立した状態で該ベース10に突設されたピン体300がアーム体301の凹部302に嵌り込むようになっている。そして、ピン体300が凹部302内から抜け出ないようにアーム体301の先端部には凹部302の開口を開閉するためのスライド部材303が設けられている。かかるスライド部材303は、アーム体301の長手方向にスライド可能に設けられており、凹部302の開口を閉じた状態と凹部302の開口を開放した状態とに切り換わるようになっている。
【0020】
図1及び図2に戻り、該ベース10は、長手方向の一端側の略半分の領域が間接活線作業用具Tを保持するための保持領域Haに設定される一方、長手方向の他端側の略半分の領域が各種作業工具(例えば、間接活線作業用具Tとしての間接活線操作棒に取り付けられる先端工具やその他の工具)や、絶縁カバーや絶縁テープ、圧縮スリーブ等の部品といった作業用具を載置するトレイ領域Paに設定されている。
【0021】
そして、該ベース10は、トレイ領域Pa上に載置した作業用具等の落下を防止すべく、一方の面(第一姿勢F1で上向きになる面)上にトレイ領域Paを画定するように隔壁110a,110b,110cが立設されている。かかる隔壁110a,110b,110cは、トレイ領域Paを取り囲むように設けてもよいが、本実施形態においては、ベース10の短手方向の他端部(先端部)、長手方向の他端部、及び長手方向の中間部の三箇所に設けられている。すなわち、隔壁110a,110b,110cは、バケットB側を開放するように、ベース10の長手方向の中央部及び他端部に短手方向に延びるように形成されるとともに、ベース10の短手方向の他端部に長手方向に延びるように形成されている。
【0022】
前記保持手段20は、間接活線作業用具Tを着脱可能に構成されている。該保持手段20は、間接活線作業用具Tの本体部が長尺な棒状であることを前提に該本体部を保持できるようになっている。より具体的には、棒状の本体部を備えた間接活線作業用具Tとして、一方向に長手をなす棒状の本体部の先端部に各種先端工具が取り付けられる一方、本体部の基端側に作業者が把持する把持部が設けられた間接活線操作棒や、一方向に長手をなす棒状の本体部の先端に対象物を挟持すべく互いに接離可能な一対の挟持体が設けられる一方、本体部の基端側に作業者が把持する把持部が設けられ、該把持部に一対の挟持体を接離させるためのハンドルが設けられた絶縁ヤットコ等があり、本実施形態に係る保持手段は、間接活線操作棒や、絶縁ヤットコ等が棒状の本体部を備えていることを前提に、これらの本体部を保持できるように構成されている。
【0023】
具体的に説明すると、本実施形態に係る保持手段20は、一つの間接活線作業用具Tの本体部を軸線方向に間隔をあけた二箇所で保持するようになっている。すなわち、本実施形態に係る保持手段20は、間接活線作業用具Tを部分的に保持する一対の保持体200,200を備えており、該一対の保持体200,200が間接活線作業用具Tの軸線方向(ベース10の基端と先端との間)で間隔をあけて配置されている。
【0024】
各保持体200,200は、図4(a)に示す如く、前記ベース10に対して直接的又は間接的に固定される平面視矩形状のベース部201と、該ベース部201に対して直角又は略直角をなすように、該ベース部201の両端から延出した一対の延出片部202,202とを備えている。そして、一対の延出片部202,202は、互いに対向する面にベース部201から所定距離離れた位置に相手側へ膨出した膨出部203,203が形成されている。かかる保持体200,200は、少なくとも一対の延出片部202,202が弾性に富む金属製の板材(例えば、バネ鋼)で構成される。本実施形態に係る保持手段20は、長方形状の板材を曲げ加工することで、ベース部201及び一対の延出片部202,202が一体的に形成されている。
【0025】
そして、各保持体200,200は、一対の延出片部202,202間に間接活線作業用具Tの本体部を介入させることで、該間接活線作業用具Tが膨出部203,203を押して両延出片部202,202を互いに離間させるように弾性変形させ、該間接活線作業用具Tが膨出部203,203間を通過した状態で一対の延出片部202,202が弾性で復元し、間接活線作業用具Tが一対の延出片部202,202に挟み込まれるとともに、ベース部201及び膨出部203,203との接触で位置決めされるようになっている。
【0026】
そして、該間接活線作業用具保持装置1は、図1及び図2に示す如く、保持手段20がベース10の延びる方向(本実施形態においてはベース10の短手方向)にスライド可能に構成されている。本実施形態に係る保持手段20は、ベース10の基端側にある第一スライド位置Xと、ベース10の先端側にある第二スライド位置Yとの間でスライド可能に設けられている。より具体的には、本実施形態に係る保持手段20は、当該保持手段20の少なくとも一部(本実施形態においては一対の保持体200,200のうちの一方)がベース10の基端を超えた外側(バケットB側)に位置することになる第一スライド位置Xと、当該保持手段20の少なくとも一部(本実施形態においては一対の保持体200,200のうちの他方)がベース10の先端よりも外方に位置することになる第二スライド位置Yとの間でスライド可能に設けられている。これにより、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、ベース10を第二姿勢F2にした状態で保持手段20が第一スライド位置Xに位置することで、該保持手段20が保持した間接活線作業用具TがバケットBに乗った作業者の身長よりも低い位置になるようになっている。
【0027】
ここで、保持手段20をスライド可能にするための構成について具体的に説明すると、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、ベース10上にスライドレール40が設けられており、該スライドレール40を介して保持手段20がベース10上に間接的に固定されている。
【0028】
本実施形態において、上述の如く、保持手段20を第一スライド位置Xと第二スライド位置Yとの間でスライド可能とすべく、前記スライドレール40は、図4(b)に示す如く、第一姿勢F1で上向きになる一方の面上に固定され、ベース10の基端と先端との間に延びるレール本体400と、レール本体400と同方向に延びて該レール本体400に沿ってスライド可能に設けられた第一スライダー401と、第一スライダー401と同方向に延びて第一スライダー401に沿ってスライド可能に設けられた第二スライダー402とを備えている。
【0029】
そして、前記スライドレール40は、図4(a)に示す如く、レール本体400と第一スライダー401との間に複数のボール403…が転動自在に介設されるとともに、第一スライダー401と第二スライダー402との間にも複数のボール404…が転動自在に介設されている。これにより、前記スライドレール40は、第一スライダー401はレール本体400に対して円滑にスライドでき、また、第二スライダー402は、第一スライダー401に対して円滑にスライドできるようになっている。
【0030】
そして、該スライドレール40は、レール本体400の長手方向の中央部に図示しない第一ストッパーが設けられるとともに、第一スライダー401の長手方向の両端部に設けられた図示しない一対の第一係止片が設けられている。これにより、該スライドレール40は、図4(b)に示す如く、第一スライダー401がレール本体400の長手方向にスライドしたときに、何れか一方の第一係止片が第一ストッパーに係止されて第一スライダー401がレール本体400から脱落してしまうのを防止するようになっている。
【0031】
また、該スライドレール40は、第一スライダー401の長手方向の中央部に図示しない第二ストッパーが設けられるとともに、第二スライダー402の長手方向の両端部に設けられた図示しない一対の第二係止片が設けられており、第二スライダー402が第一スライダー401の長手方向にスライドしたときに、何れか一方の第二係止片が第二ストッパーに係止されて第二スライダー402が第一スライダー401から脱落してしまうのを防止するようになっている。
【0032】
そして、前記保持手段20は、ベース部201が上記スライドレール40の第二スライダー402に固定されている。本実施形態において、前記保持手段20は、上述の如く一対の保持体200,200で構成されているため、各保持体200,200が第二スライダー402に対して長手方向に間隔をあけて固定されている。
【0033】
本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、図1及び図2に示す如く、保持手段20を複数備えており、二つ(或いは、二種類)以上の間接活線作業用具Tを保持できるようになっている。そのため、該間接活線作業用具保持装置1は、二本以上のスライドレール40がベース10の一方の面上にベース10の長手方向に間隔をあけて並列に配置されており、各スライドレール40の第二スライダー402に前記保持手段20(一対の保持体200,200)が固定されている。これにより、第一スライダー401及び第二スライダー402のスライドの組み合わせにより、保持手段20を第一スライド位置Xと第二スライド位置Yとに位置変更できるようになっている。
【0034】
本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、以上の構成からなり、続いて、該間接活線作業用具保持装置1の使用態様(作用)について説明することとする。
【0035】
まず、図2及び図3(b)に示す如く、ベース10を起立状態にし、該ベース10を姿勢維持手段30によって起立状態(第二姿勢F2)で維持させる。そして、間接活線作業用具Tの先端側(先端工具を取り付ける先端部や、絶縁ヤットコの一対の挟持体等)がベース10の先端側に位置するように保持手段20に間接活線作業用具Tを保持させる。このとき、保持手段20をベース10の基端側(第一スライド位置X)にスライドさせることで、起立したベース10の先端から上方に延出する間接活線作業用具Tの延出量が抑えられた状態になる。
【0036】
そして、間接活線作業用具T棒の先端に取り付ける先端工具や、作業に必要なその他の工具、部品等をバケットBに載せ、作業者がバケットBに乗って該バケットBを作業位置に向けて移動させる。なお、先端工具や部品等の作業用具は、作業用袋に収容した状態でバケットBに載せてもよいし、そのままバケットBに載せてもよいが、運搬や後の作業性を考慮すれば作業用袋に入れてバケットBに載せることが好ましい。
【0037】
そして、上述の如く、間接活線作業用具Tの上方に延出する延出量が抑えられているため、バケットBを作業位置に移動させる際に、間接活線作業用具Tが架線等に干渉することが防止される。
【0038】
そして、バケットBが作業位置に到達すると、まず、保持手段20を第二スライド位置Yにスライドさせて間接活線作業用具Tをベース10の先端側にスライドさせる。そうすると、バケットB内に位置していた間接活線作業用具Tの基端側(作業者が把持する把持部)がベース10と対向した状態になる。この状態で、図1及び図3(a)に示す如く、姿勢維持手段30によるベース10の姿勢維持を解除し、該ベース10を枢着支点を中心にして回転(傾動)させ、バケットBの側壁Wの上面にベース10の他方の面を載置する。この状態で、ベース10がバケットBの側壁Wに支持され、バケットBの側壁Wから外方に延出した状態になる。そうすると、ベース10の一方の面(トレイ領域Pa)が上向きになるため、当該トレイ領域Paがトレイとして機能を発揮した状態となり、バケットBに載せた先端工具や各種部品をベース10(トレイ領域Pa)上に載置する。
【0039】
そして、間接活線作業用具T(間接活線作業用具T棒や絶縁ヤットコ)や、先端工具、部品等を必要に応じてベース10上から取って作業が行われる。このようにバケットBの側壁Wに枢着されたベース10に間接活線作業用具Tや各種作業用具を保持(或いは、載置)できることで、作業者がこれらを用いる際にバケットBから身体を乗り出した姿勢にならずに安全に作業を行うことができる。また、間接活線作業用具T等の選択等も行い易く作業効率を高めて作業を行うことができる。
【0040】
そして、作業が完了すると、間接活線作業用具Tを保持手段20に保持させるとともに、トレイ領域Pa上の各種作業用具等をバケットB内に載せる。その後、保持手段20を第二スライド位置Yから第一スライド位置Xにスライドさせるとともに、第一姿勢F1であったベース10を第二姿勢F2に姿勢変更させるとともに、該ベース10を姿勢維持手段30で第二姿勢F2に維持させ(図2及び図3(b)参照)、バケットBを次ぎの作業位置に向けて或いは地上に向けて移動させる。このときにおいても、間接活線作業用具Tが作業者の身長よりも低い位置にあるため、バケットBを移動させても架線等に干渉することなくバケットBを安全且つ円滑に移動させることができる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1によれば、高所作業車のバケットBの上下方向に延びる側壁Wの上端部に基端部が枢着されたベース10と、棒状の本体部を備えた間接活線作業用具Tを保持可能に構成された保持手段20とを備え、前記ベース10は、枢着軸を中心に回転することで、バケットBの側壁Wと交差する方向で外方に向けて延出した第一姿勢F1と、上下方向に延びる第二姿勢F2とに切り換え可能に構成され、前記保持手段20は、前記ベース10の第一姿勢F1で上向きになる面上に配置され、且つ、間接活線作業用具Tの長手方向がベース10の延びる方向と対応するように該間接活線作業用具Tを保持可能に構成されるとともに間接活線作業用具Tの長尺方向にスライド可能に構成されているため、高所作業時に作業者の作業スペースを確保することができる上に、バケットBの移動時に間接活線作業用具Tが架線等に干渉することなく間接活線作業用具Tを確実に保持し、作業者や周囲の安全を確保することができるという優れた効果を奏し得る。
【0042】
また、前記ベース10は、プレート状に形成され、第一姿勢F1で上向きになる面の一部の領域に保持手段20が設置されるとともに、第一姿勢F1になった状態で前記一部の領域以外の他の領域に各種作業用具を載置可能に構成されているため、作業時(ベース10が第一姿勢F1のとき)に、間接活線作業用具Tに加え、該間接活線作業用具Tに取り付ける先端工具や、その他の工具、各種部品等といった作業用具をベース10上に載置することができる。これにより、高所作業中に作業用袋から各種用具や部品を取り出すといった作業を行う必要がなく、作業者の安全をより確実に確保することができる。
【0043】
さらに、前記ベース10は、バケットBの側壁Wの内面側に枢着され、第二姿勢F2でバケットBの上端から上方に向けて延出した姿勢になる一方、第一姿勢F1でバケットBの側壁Wの上面に支持されるように構成されているため、ベース10を第一姿勢F1と第二姿勢F2との間で姿勢変更させるときに、ベース10がバケットB(作業スペース)内を通過することがなく、作業者がベース10の姿勢変更に伴ってベース10を躱した姿勢をとる必要がない。また、ベース10を第一姿勢F1で維持させるためにベース10を支持する支持手段を設ける必要がなく、構成を簡素化することもできる。さらに、保持手段20に保持させた間接活線作業用具TがバケットB内に位置することになり、何らかの原因で保持手段20から間接活線作業用具Tが外れても該間接活線作業用具TをバケットBが受けることになり安全である。
【0044】
また、前記保持手段20は、ベース10の基端よりもバケットB側に位置する第一スライド位置Xと、ベース10の先端よりも外方に位置する第二スライド位置Yとの間でスライド可能に構成されているため、保持手段20のスライド量を大きくすることができ、保持手段20のスライド量によって保持手段20の配置が制限されることがない。従って、保持手段20の配置を適正な配置にすることができる。
【0045】
次に、本発明の第二実施形態に係る間接活線作業用具保持装置について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において、第一実施形態の構成と同一又は相当する構成については、同一名称及び同一符号を付すこととする。
【0046】
本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、高所作業車のバケットBに取り付けられるもので、図5、図6、図7(a)及び図7(b)に示す如く、高所作業車のバケットBの上下方向に延びる側壁Wの上端部に基端部が枢着されたベース10と、棒状の本体部を備えた間接活線作業用具Tを保持可能に構成された保持手段20とを備えている。
【0047】
前記ベース10は、枢着軸を中心に回転することで、バケットBの側壁Wと交差する方向で外方に向けて延出した第一姿勢F1と、上下方向に延びる第二姿勢F2とに切り換え可能に構成されている。本実施形態に係るベース10は、プレート状に形成されている。そして、該ベース10は、第一姿勢F1で上向きになる面の一部の領域に保持手段20が設置されるとともに、第一姿勢F1になった状態で前記一部の領域以外の他の領域に各種作業用具を載置可能に構成されている。すなわち、本実施形態に係るベース10は、保持手段20を支持する機能に加え、各種作業用具を載置するトレイとしても機能するようになっている。
【0048】
より具体的には、本実施形態に係るベース10は、長方形状の板状に形成されており、長手方向と直交する方向(以下、短手方向という)の一方の端部が基端部とされ、その基端部がヒンジ100を介してバケットBの側壁Wの上端部に固定されている。そして、本実施形態に係るベース10は、バケットBの側壁Wの外面側に枢着され、第二姿勢F2でバケットBの上端から垂下した姿勢になる一方、第一姿勢F1でバケットBの側壁Wから外方に延出した姿勢で維持するように構成されている。これに伴い、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、ベース10を第一姿勢F1で維持させるための姿勢維持手段50が設けられている。
【0049】
かかる姿勢維持手段50には、種々態様のものを採用することができ、本実施形態においては、図7(a)及び図7(b)に示す如く、バケットBの側壁Wの外面に固定されたヒンジ500と、該ヒンジ500を介して上下方向に延びる軸回りで回転可能に構成された支持プレート501とを備えたものが採用されている。該姿勢維持手段50は、支持プレート500の基端部がヒンジ500に連結されており、支持プレート501をヒンジ500の軸回りで回転させることで、該支持プレート501の一方の面及びバケットBの側壁Wの外面が対向する状態と、支持プレート501が側壁Wの外面から外方に延出した状態との切り換わるようになっている。
【0050】
これにより、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、ベース10が垂下する第二姿勢F2になった状態で、支持プレート501がベース10とバケットBの側壁Wとの間に介在し、ベース10が外方に延出した第一姿勢F1になった状態で支持プレート501が外方に延出して該ベース10の他方の面を支持するようになっている。姿勢維持手段50は、少なくとも一つ設けられればよいが、本実施形態においては、ベース10の長手方向の両端部を支持できるように、ベース10の長手方向に間隔をあけて二つ設けられている。
【0051】
図5及び図6に戻り、本実施形態においても、ベース10は、長手方向の一端側の略半分の領域が間接活線作業用具Tを保持するための保持領域Haに設定される一方、長手方向の他端側の略半分の領域が間接活線作業用具Tに取り付ける先端工具や、その他の工具、絶縁カバーや絶縁テープ、圧縮スリーブ等の部品といった作業に必要な作業用具を載置するトレイ領域Paに設定されている。
【0052】
そして、該ベース10は、トレイ領域Pa上に載置した作業用具等の落下を防止すべく、一方の面(第一姿勢F1で上向きになる面)上にトレイ領域Paを画定するように隔壁110a,110b,110cが立設されている。かかる隔壁110a,110b,110cも、トレイ領域Paを取り囲むように設けてもよいが、本実施形態においては、ベース10の短手方向の他端部(先端部)、長手方向の他端部、及び長手方向の中間部の三箇所に設けられている。すなわち、隔壁110a,110b,110cは、バケットB側を開放するように、ベース10の長手方向の中央部及び他端部に短手方向に延びるように形成されるとともに、ベース10の短手方向の他端部に長手方向に延びるように形成されている。
【0053】
そして、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、上述の如く、姿勢維持手段50として上下方向に延びる軸回りで回転可能な支持プレート501を備えたものを採用しているため、ベース10の他方の面(第一姿勢F1で下向きになる面)には、図7(a)及び図7(b)に示す如く、支持プレート501の位置決めを行うためのストッパー120が突設されている。かかるストッパー120は、ベース10の長手方向の少なくとも一端縁(短手方向に延びる端縁)に沿って設けられる。
【0054】
本実施形態においては、上述の如く、姿勢維持手段50が二つ設けられているため、前記ストッパー120は、ベース10の長手方向の両端縁に沿って設けられている。これにより、支持プレート501が該ベース10を支持した状態で、ベース10の他方の面の広がる方向(長手方向)でストッパー120に係止されるようになっており、支持プレート501がベース10を支持できる位置から外方に向けて(ベース10に対する支持位置から外れた位置に)回転してしまうのを防止できるようになっている。
【0055】
そして、前記保持手段20は、図5、図6、及び図8(a)に示す如く、間接活線作業用具Tを着脱可能に構成されている。本実施形態に係る保持手段20は、第一実施形態と同一の構成であり、第一実施形態の説明を参照することとしてここでの説明は割愛することとする。
【0056】
そして、該間接活線作業用具保持装置1は、図5、及び図6に示す如く、保持手段20がベース10の延びる方向(本実施形態においてはベース10の短手方向)にスライド可能に構成されている。本実施形態に係る保持手段20は、当該保持手段20の略全てがベース10上に位置する第一スライド位置X’と、当該保持手段20の少なくとも一部(本実施形態においては一対の保持体200,200のうちの他方)がベース10の先端よりも外方に位置する第二スライド位置Y’との間でスライド可能に構成されている。これにより、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、ベース10を第二姿勢F2にした状態で保持手段20が第一スライド位置Xに位置することで、該保持手段20が保持した間接活線作業用具TがバケットBに乗った作業者の身長よりも低い位置になるようになっている。
【0057】
ここで、保持手段20をスライドさせる構成について具体的に説明すると、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、ベース10上にスライドレール40が設けられており、該スライドレール40を介して保持手段20がベース10上に間接的に固定されている。
【0058】
本実施形態において、上述の如く、保持手段20を第一スライド位置Xと第二スライド位置Yとの間でスライド可能とすべく、前記スライドレール40は、図8(b)に示す如く、第一姿勢F1で上向きになる面上に固定され、ベース10の基端と先端との間に延びるレール本体400’と、レール本体400と同方向に延びて該レール本体400’に沿ってスライド可能に設けられたスライダー401’とを備えている。
【0059】
そして、前記スライドレール40は、図8(a)に示す如く、レール本体400’とスライダー401’との間に複数のボール403’…が転動自在に介設されている。これにより、前記スライドレール40は、スライダー401’がレール本体400’に対して円滑にスライドできるようになっている。
【0060】
そして、該スライドレール40は、レール本体400’の長手方向の両端部に図示しないストッパーが設けられるとともに、スライダー401’の長手方向の一端部に図示しない第一係止片が設けられている。これにより、該スライドレール40は、スライダー401’がレール本体400’の長手方向にスライドしたときに、第一係止片が何れか一方のストッパーに係止されてスライダー401’がレール本体400’から脱落してしまうのを防止するようになっている。
【0061】
そして、前記保持手段20は、ベース部201が上記スライドレール40のスライダー401’に固定されている。本実施形態において、前記保持手段20は、上述の如く一対の保持体200,200で構成されているため、各保持体200,200がスライダー401’に対して長手方向に間隔をあけて固定されている。
【0062】
本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、第一実施形態と同様に、図5及び図6に示す如く、保持手段20を複数備えており、二つ(或いは、二種類)以上の間接活線作業用具Tを保持できるようになっている。そのため、該間接活線作業用具保持装置1は、二本以上のスライドレール40がベース10の一方の面上にベース10の長手方向に間隔をあけて並列に配置されており、各スライドレール40のスライダー401’に前記保持手段20(一対の保持体200,200)が固定されている。
【0063】
本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1は、以上の構成からなり、続いて、該間接活線作業用具保持装置1の使用態様(作用)について説明することとする。
【0064】
まず、図6及び図7(b)に示す如く、ベース10を垂下状態にし、間接活線作業用具Tの先端側(先端工具を取り付ける先端部や、絶縁ヤットコの一対の挟持体等)がベース10の先端側に位置するように保持手段20に間接活線作業用具Tを保持させる。このとき、保持手段20をベース10の基端側(第一スライド位置X)にスライドさせておくことで、間接活線作業用具TがバケットBの底よりも下方に突出して地面と干渉することを防止することができる。なお、特に言及しなかったが、第一スライド位置Xに位置した状態でスライダー401’をレール本体400’に対して一時的に係止させる係止手段(図示しない)を設けることが好ましく、このように係止手段でスライダー401’の配置を位置決めすることで、間接活線作業用具Tを適正な配置に容易に調整することができる。
【0065】
そして、間接活線作業用具T棒の先端に取り付ける先端工具や作業に必要な部品をバケットBに載せ、作業者がバケットBに乗って該バケットBを作業位置に向けて移動させる。なお、この場合においても、先端工具や部品等の作業用具は、作業用袋に収容した状態でバケットBに載せてもよいし、そのままバケットBに載せてもよいが、運搬や後の作業性を考慮すれば作業用袋に入れてバケットBに載せることが好ましい。
【0066】
そして、上述の如く、バケットBが地上にあるときにスライダー401’をレール本体400’に対して一時的に係止させる場合には、間接活線作業用具Tが上方側に移動(スライド)した状態になっているため、バケットBが移動し始めた後(好ましくは、作業位置に到達したとき)に、係止手段による係止を解除して保持手段20を第二スライド位置Yにスライドさせて間接活線作業用具Tを下方側に位置変更させる。
【0067】
そして、バケットBが作業位置に到達すると、図5及び図7(a)に示す如く、第二姿勢F2にあるベース10を第一姿勢F1にする。なお、上述の如く、保持手段20が第一スライド位置Xで位置している場合には、ベース10を第二姿勢F2にするに伴って間接活線作業用具Tの基端部がバケットB内に位置することになるため、予め保持手段20を第二スライド位置Yにスライドさせた上でベース10を第二姿勢F2にする。
【0068】
そして、姿勢維持手段50の支持プレート501をヒンジ500の軸回りで回転させ、該支持プレート501をバケットBの側壁Wから外方に延出した状態にしてベース10の下方に配置し、バケットBを支持プレート501上に配置する。これにより、ベース10は、支持プレート501に支持され、バケットBの側壁Wから外方に延出した状態になる。そうすると、ベース10の一方の面(トレイ領域Pa)が上向きになるため、当該トレイ領域Paがトレイとして機能を発揮した状態となり、バケットBに載せた先端工具や各種部品をベース10(トレイ領域Pa)上に載置する。
【0069】
そして、間接活線作業用具T(間接活線操作棒、絶縁ヤットコ)や、先端工具、部品等を必要に応じてベース10上から取って各種作業が行われる。このようにバケットBの側壁Wに枢着されたベース10に間接活線作業用具Tや各種作業用具を保持(或いは、載置)できることで、作業者がこれらを用いる際にバケットBから身体を乗り出した姿勢にならずに安全に作業を行うことができる。また、間接活線作業用具T等の選択等も行い易く作業効率を高めて作業を行うことができる。
【0070】
そして、作業が完了すると、間接活線作業用具Tを保持手段20に保持させるとともに、トレイ領域Pa上の各種作業用具等をバケットB内に載せる。その後、支持プレート501を回転させてベース10を第二姿勢F2に姿勢変更させ(図6及び図7(b)参照)、バケットBを次ぎの作業位置に向けて或いは地上に向けて移動させる。このときにおいても、間接活線作業用具Tが作業者の身長よりも低い位置にあるため、バケットBを移動させても架線等に干渉することなくバケットBを安全且つ円滑に移動させることができる。なお、バケットBを移動させる場合、保持手段20を第二スライド位置Y’に位置させたままでもよいが、該保持手段20が保持した間接活線作業用具TがバケットBの底よりも下方に延出するような場合であって、該間接活線作業用具TがバケットBの下方にあるもの(例えば、地面等)に接触する虞がある場合には、保持手段20を第一スライド位置X’にスライドさせておくことは勿論のことである。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る間接活線作業用具保持装置1によれば、高所作業車のバケットBの上下方向に延びる側壁Wの上端部に基端部が枢着されたベース10と、棒状の本体部を備えた間接活線作業用具Tを保持可能に構成された保持手段20とを備え、前記ベース10は、枢着軸を中心に回転することで、バケットBの側壁Wと交差する方向で外方に向けて延出した第一姿勢F1と、上下方向に延びる第二姿勢F2とに切り換え可能に構成され、前記保持手段20は、前記ベース10の第一姿勢F1で上向きになる面上に配置され、且つ、間接活線作業用具Tの長手方向がベース10の延びる方向と対応するように該間接活線作業用具Tを保持可能に構成されるとともにベース10の延びる方向にスライド可能に構成されているため、高所作業時に作業者の作業スペースを確保することができる上に、バケットBの移動時に間接活線作業用具Tが架線等に干渉することなく間接活線作業用具Tを確実に保持し、作業者や周囲の安全を確保することができるという優れた効果を奏し得る。
【0072】
また、前記ベース10は、プレート状に形成され、第一姿勢F1で上向きになる面の一部の領域に保持手段20が設置されるとともに、第一姿勢F1になった状態で前記一部の領域以外の他の領域に各種作業用具を載置可能に構成されているため、作業時(ベース10が第一姿勢F1のとき)に、間接活線作業用具Tに加え、該間接活線作業用具Tに取り付ける先端工具や、その他の工具、各種部品等といった作業用具をベース10上に載置することができる。これにより、高所作業中に作業用袋から各種用具や部品を取り出すといった作業を行う必要がなく、作業者の安全をより確実に確保することができる。
【0073】
尚、本発明の間接活線作業用具保持装置は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0074】
上記各実施形態において、プレート状のベース10を採用し、その略半分の領域に保持手段20を設けるとともにそれ以外の領域をトレイ領域Paにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ベース10の全面に複数の保持手段20を設けるようにしてもよい。また、ベース10はプレート状のものに限定されるものではなく、例えば、ベース10を棒状や帯板状に構成し、その長手方向の一端部をバケットBの側壁Wに枢着したり、上記スライドレール40のレール本体400,400’をベース10としてその長手方向の一端部をバケットBの側壁Wに枢着したりしてもよい。従って、保持手段20を複数設ける場合、保持手段20毎にベース10を設けても勿論よい。また、保持手段20を複数設けたものに限定されるものではなく、例えば、保持手段20を一つ備えたものであってもよい。すなわち、保持手段20は少なくとも一つ設けられればよい。
【0075】
上記各実施形態において、弾性に富む板材を曲げ加工して保持手段20を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、ベース部201と一対の延出片部202,202とをそれぞれ独立した部材で構成し、これらを連結して保持手段20としてもよい。また、保持手段20は、一対の延出片部202,202を備えたものに限定されるものではなく、例えば、ベース部201に対して帯状のベルト材を固定し、該ベルト材の一端側に雄側の面ファスナーを設けるとともに他端側に雌側の面ファスナーを設け、間接活線作業用具Tにベルト材を巻き付けて雄雌の面ファスナーを係合させることで間接活線作業用具Tを保持するようにしてもよい。また、図示しないが、保持手段20は、矩形状のベース部と、該ベース部の両端から延出する一対の延出片部と、何れか一方の延出片部の先端部に枢着されるとともに先端部が他方の延出片部の先端に係脱可能に構成された押部材とを備えたものであってもよい。かかる保持部材は、一対の延出片部間に間接活線作業用具Tを介入させた状態で押部材の先端部を延出片部に係合させることで、間接活線作業用具Tを押部材でベース部側に押さえ込んだ状態で保持することができる。このように保持手段20は間接活線作業用具Tを着脱可能に構成されれば種々態様のものを採用することができる。
【0076】
上記各実施形態において、スライドレール40を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、ベース10の一方の面(第一姿勢F1で上向きになる面)上に溝を形成し、保持手段20をベース10の溝に沿ってスライドさせるようにしてもよい。
【0077】
上記各実施形態において、間接活線作業用具Tを長手方向に間隔をあけて保持する一対の保持体200,200で保持手段20を構成したが、保持手段20は間接活線作業用具Tを二箇所で保持するものに限定されるものではなく、例えば、間接活線作業用具T(本体部)を軸心方向(長手方向)に間隔をあけて三箇所以上で保持するようにしたものや、間接活線作業用具T(本体部)の所定範囲を保持するようにしたものであってもよい。
【0078】
上記第一実施形態において、ベース10を第二姿勢F2で維持させる姿勢維持手段30として、ベース10に突設したピン体300と、バケットBに枢着したアーム体301とで構成し、アーム体301の先端部に設けた凹部302にピン体300を嵌め込むとともに、アーム体301の先端部にスライド可能に設けられたスライド部材303でピン体300が凹部302から抜け出るのを防止するようにしたものを採用したが、姿勢維持手段30は、これに限定されるものではなく、例えば、ベース10の他方の面(第一姿勢F1で下側に向く面)に対し、該ベース10の基端側で出退可能なスライド体を設けるとともに、バケットBの側壁Wの上面にスライド体を挿入する開口を設け、ベース10が第二姿勢F2になった状態でスライド体をスライドさせて側壁Wの上面に形成された開口に挿入するようにしてもよい。このようにしても、ベース10を第二姿勢F2の状態で維持させることができる。
【0079】
上記第二実施形態において、上下方向に延びるヒンジ500と、該ヒンジ500の軸回りで回転可能な支持プレート501とで姿勢維持手段50を構成し、第一姿勢F1にしたベース10を支持プレート501で支持させるようにしたが、ベース10を第一姿勢F1で維持させる姿勢維持手段50は、上下方向に延びる軸回りで回転可能な支持プレート501を備えたものに限定されるものではなく、例えば、図9(a)及び図9(b)に示す如く、一端部同士が枢結された一対のリンク体550a,550bで構成され、一方のリンク体550aの他端部がバケットBに枢着されるとともに、他方のリンク体550bの他端部がベース10に枢着され、一対のリンク体550a,550bが一列に並んだ状態で、何れか一方のリンク体550a,550bが他方のリンク体550a,550bに係止され、互いに枢結された一端部がヒンジ100(ベース10の枢着支点)から離間する方向に移動しないように構成されたものであってもよい。このようにすれば、一対のリンク体550a,550bが一列に並んだ状態でベース10が第一姿勢F1で維持し、一対のリンク体550a,550bが一端部の枢結支点を中心にして回転した状態(折れ曲がった態様)でベース10を第二姿勢F2にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第一実施形態に係る間接活線作業用具保持装置を高所作業車のバケットに取り付けた状態の斜視図であって、ベースを第一姿勢にした状態の斜視図を示す。
【図2】第一実施形態に係る間接活線作業用具保持装置を高所作業車のバケットに取り付けた状態の斜視図であって、ベースを第二姿勢にした状態の斜視図を示す。
【図3】第一実施形態に係る間接活線作業用保持装置の部分拡大図であって、(a)は、ベースを第一姿勢にした状態のヒンジ周辺の部分拡大断面図を示し、(b)は、ベースを第二姿勢にした状態のヒンジ周辺の部分拡大断面図を示す。
【図4】第一実施形態に係る間接活線作業用具保持装置の保持手段とスライドレールの説明図であって、(a)は、保持手段及びスライドレールの縦断面図を示し、(b)は、保持手段が第二スライド位置にある状態を仮想線で示す一方、保持手段が第一スライド位置にある状態を実線で示したスライドレール及び保持手段の側面図を示す。
【図5】本発明の第二実施形態に係る間接活線作業用具保持装置を高所作業車のバケットに取り付けた状態の斜視図であって、ベースを第一姿勢にした状態の斜視図を示す。
【図6】第二実施形態に係る間接活線作業用具保持装置を高所作業車のバケットに取り付けた状態の斜視図であって、ベースを第二姿勢にした状態の斜視図を示す。
【図7】第二実施形態に係る間接活線作業用保持装置の部分拡大図であって、(a)は、ベースを第一姿勢にした状態のヒンジ周辺の部分拡大断面図を示し、(b)は、ベースを第二姿勢にした状態のヒンジ周辺の部分拡大断面図を示す。
【図8】第二実施形態に係る間接活線作業用具保持装置の保持手段とスライドレールの説明図であって、(a)は、保持手段及びスライドレールの縦断面図を示し、(b)は、保持手段が第二スライド位置にある状態を仮想線で示す一方、保持手段が第一スライド位置にある状態を実線で示したスライドレール及び保持手段の側面図を示す。
【図9】本発明の他実施形態に係る間接活線作業用保持装置の部分拡大図であって、(a)は、ベースを第一姿勢にした状態のヒンジ周辺の部分拡大断面図を示し、(b)は、ベースを第二姿勢にした状態のヒンジ周辺の部分拡大断面図を示す。
【符号の説明】
【0081】
1…間接活線作業用具保持装置、10…ベース、20…保持手段、30…姿勢維持手段、40…スライドレール、50…姿勢維持手段、100…ヒンジ、110a,110b,110c…隔壁、200,200…保持体、201…ベース部、202…延出片部、203…膨出部、300…ピン体、301…アーム体、302…凹部、303…スライド部材、400,400’…レール本体、401…第一スライダー、401’…スライダー、402…第二スライダー、403,403’,404,…ボール、500…ヒンジ、501…支持プレート、550a,550b…リンク体、B…バケット、F1…第一姿勢、F2…第二姿勢、Ha…保持領域、Pa…トレイ領域、T…間接活線作業用具、W…側壁、X…第一スライド位置、Y…第二スライド位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所作業車のバケットの上下方向に延びる側壁の上端部に基端部が枢着されたベースと、棒状の本体部を備えた間接活線作業用具を保持可能に構成された保持手段とを備え、前記ベースは、枢着軸を中心に回転することで、バケットの側壁と交差する方向で外方に向けて延びる第一姿勢と、上下方向に延びる第二姿勢とに切り換え可能に構成され、前記保持手段は、前記ベースの第一姿勢で上向きになる面上に配置され、且つ、間接活線作業用具の本体部の長手方向がベースの延びる方向と対応するように該間接活線作業用具を保持可能に構成されるとともにベースの延びる方向にスライド可能に構成されていることを特徴とする間接活線作業用具保持装置。
【請求項2】
前記ベースは、プレート状に形成され、第一姿勢で上向きになる面の一部の領域に保持手段が設置されるとともに、第一姿勢になった状態で前記一部の領域以外の他の領域に各種作業用具を載置可能に構成されている請求項1に記載の間接活線作業用具保持装置。
【請求項3】
前記ベースは、バケットの側壁の内面側に枢着され、第二姿勢で側壁の上端から上方に向けて延出した姿勢になる一方、第一姿勢で側壁の上面に支持されるように構成されている請求項1又は2に記載の間接活線作業用具保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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