説明

間接活線工具

【課題】6kV級架空配電線の間接活線作業に使用されている間接活線工具を改良することにより、マニピュレータ工法によらず、無停電工法で間接活線を行なえる20kV級系統の架空配電線の間接活線工具を提供する。
【解決手段】20kV級架空配電線の間接活線作業に使用するヤットコ等の間接活線工具であって、絶縁操作棒2の先端部から下端部側にある限界鍔20aまでの絶縁距離L11が少なくとも110cmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線作業に使用するヤットコ等の間接活線工具に関するもので、特に、特別高圧活線である20kV級架空配電線の間接活線作業に使用する間接活線工具に関する。
【背景技術】
【0002】
20kV級系統の架空配電線は、一般に広く使用されている6kV級架空配電線に比べると、電力損失が少なく、送電容量も大きいため、既設系統も含めて積極的に活用する必要がある。この20kV級の新架空配電亘長は着実に伸びており、今後も20kV級設備の拡大が期待されるところである。
【0003】
然るに、20kV級配電線路の活線作業は、厚生労働省の労働安全衛生規則によりマニピュレータと呼ばれるロボットアームを使用した工法に限定されている。マニピュレータ工法は、顧客の停電回避や過酷な作業環境の現場支援に寄与してきたが、次のような制約によって、適用範囲の拡大が望めない状況にある。
(1).駐車スペースに車道(1車線)を要するため、道路状況によって施工が困難な場合がある。
(2).装柱により作業範囲が制約されるため、作業内容が限定される。
(3).操作において特殊機能を有するため、人材育成(教育)が困難である。
【0004】
そこで、本発明の発明者は、6kV級架空配電線の間接活線作業に使用されている間接活線工具を改良することにより、マニピュレータ工法によらず、無停電工法で間接活線作業が行なえる20kV級架空配電線の間接活線工具を発案したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1の(a) は現在使用されている6kV級架空配電線の間接活線作業に使用されているヤットコ1を示すもので、このヤットコ1では、絶縁操作棒2の先端部からその下端部側にある限界鍔までの絶縁距離L1が60cmとなっている。この絶縁距離60cmというのは、作業者が架空電線の直下で作業する場合にその作業個所の下方へ60cm離れた位置で作業すれば安全であるとされるところの労働安全衛生規則に適合し得る接近限界距離である。
【0006】
尚、図1の(a) において、3,4は絶縁操作棒2の先端部に取付部材5を介して把持可能に組み付けられた固定把持片及び可動把持片、6は可動把持片4の基端部に連結ピン7を介して連結された絶縁性の作動棒、8は作動棒7の下端部に連結ピン9を介して連結された操作レバーで、この操作レバー8は、取付部材10を介して絶縁作動棒6の下端部に付設されている。絶縁操作棒2にはゴム製の絶縁鍔20a,20bが所要間隔をおいて取り付けられており、下端部側の絶縁鍔20aが限界絶縁鍔である。また絶縁作動棒6にも絶縁鍔21が設けてある。
【0007】
しかして、本発明の発明者は、20kV級架空配電線の間接活線作業用工具において、絶縁操作棒の先端部から下端側にある限界鍔までの絶縁距離を検討し、電線直下の作業を前提とし、活線振分(ホットプラー)工事による電線上昇の30cmを加味しても、標準安全距離80cmへの侵入を防止できる少なくとも110cmの長さを設定するようにした。尚、活線振分工事とは、停電範囲の縮小を目的として、架空電線路の途中にバイパスを設けると共にその途中を切断により停電させて電線の振り分けを行なう工事で、その電線路の切断に先立って停電個所をホットプラー電線支持具によって両側から引き寄せる時に、その引き寄せられて撓んだ電線部分が上方へ押し上げられる状態となるのが上記の電線上昇である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、20kV級架空配電線の間接活線作業に使用するヤットコ等の間接活線工具であって、絶縁操作棒2の先端部から下端部側にある限界鍔20aまでの絶縁距離L11が少なくとも110cmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、20kV級架空配電線12に対する活線作業の接近限界距離が厚生労働省の労働安全衛生規則に20cmと定められていることから、この20cmから、さらに安全に作業を行なえる標準安全距離を80cmに設定し、この標準安全距離の80cmに活線振分工事による電線12の上昇距離30cmを加味することによって、絶縁操作棒2の先端部から下端部側にある限界鍔20aまでの絶縁距離L11を少なくとも110cmとしたから、無停電工法で間接活線作業を安全に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1の(b) は本発明に係る20kV級架空配電線の間接活線作業に使用するヤットコ(間接活線工具)11を示す。このヤットコ11は、構造的には同図の(a) に示すヤットコ1と同じであって、合成樹脂で形成された絶縁操作棒2の上端部に取付部材5を介して固定把持片3及び可動把持片4が把持可能に組み付けられ、可動把持片4の基端部には連結ピン7を介して合成樹脂製の絶縁性作動棒6が連結され、この絶縁作動棒6の下端部に連結ピン9を介して操作レバー8が連結され、この操作レバー8は取付部材10を介して絶縁作動棒6の下端部に付設されていて、操作レバー8を握持することにより、可動把持片4が固定把持片3に対し閉動するようになっている。絶縁操作棒2にはゴムで形成された絶縁鍔20a,20b,20cが所要間隔をおいて取り付けられ、下端部側の絶縁鍔20aが限界絶縁鍔である。また絶縁作動棒6には絶縁鍔21a,21bが取り付けられている。
【0011】
このヤットコ11の特徴は、絶縁操作棒2の先端部、即ち取付部材5から絶縁操作棒2の下端部側に設けてある限界鍔20aまでの絶縁距離L11を、少なくとも110cmとしたことである。即ち、20kV級架空配電線に対応したヤットコ11の最適長さを設定するにあたっては、図2から分かるように、20kV級架空配電線12に対する活線作業の接近限界距離が厚生労働省の労働安全衛生規則に20cmと定められていることから、この20cmから、さらに安全に作業を行なえる標準安全距離を80cmに設定し、この標準安全距離の80cmに活線振分(ホットプラー)工事による電線12の上昇距離30cmを加味することによって、上記絶縁距離L11を110cmとしたものである。
【0012】
尚、ホットプラー工事による電線12の上昇距離の30cmは、電線12の停電個所をホットプラー電線支持具にて引き寄せる時に、その引き寄せられて撓んだ電線12部分が最大限30cm上昇するとしたことによるものである。図2には、ホットプラー工事の際に電線12が上昇した状態を仮想線で示している。
【0013】
この図2は、高所作業車のバケットBに乗った作業者Mがヤットコ11を使用して20kV級架空配電線12の間接活線工事を行なっている状態を示したもので、このヤットコ11は、取付部材5から絶縁操作棒2の下端部側の限界鍔20aまでの絶縁距離L11を110cmとしたことにより、活線作業を安全に行なうことができる。このヤットコ11の絶縁距離L11は110cm以上に設定することもできるが、その絶縁距離L11をあまり長くすると、作業がし難くなることから、絶縁距離L11は110cm程度にすることが好ましい。
【0014】
また,上述した実施形態では、間接活線工具としてヤットコのみを例示したが、ヤットコと他にスティックを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a) は本発明に係るヤットコの正面図、(b) は従来のヤットコの正面図である。
【図2】本発明に係るヤットコを使用して20kV級架空配電線の間接活線工事を行なっている状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0016】
L11 本発明に係るヤットコ
L1 従来のヤットコ
2 絶縁操作棒
6 絶縁作動棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20kV級架空配電線の間接活線作業に使用するヤットコ等の間接活線工具であって、絶縁操作棒の先端部から下端部側にある限界鍔までの絶縁距離が少なくとも110cmであることを特徴とする間接活線工具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−206253(P2008−206253A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37742(P2007−37742)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)