説明

間欠磁気記録再生装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防犯用等に用いられる間欠磁気記録再生装置に関し、詳しくは、映像信号だけではなく、音声信号などの連続信号をも記録・再生できる間欠磁気記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図7は、従来の間欠磁気記録再生装置のブロック回路図である。図において、1は映像信号入力端子、2は映像信号増幅器、3は映像信号記録手段で、映像信号をFM信号に変調するFM変調器およびFM信号増幅器で構成される。4は記録モードと再生モードでビデオヘッドの入出力を切り替えるモード切り替えスイッチ、5は映像信号再生手段で、再生時に磁気テープから再生されたFM信号を増幅する増幅器および復調するFM復調器で構成される。6は再生された映像信号を出力する映像信号出力端子である。
【0003】11は音声信号入力端子、12は入力された音声信号を増幅する増幅器、13はこの音声信号の時間軸を圧縮する時間軸圧縮手段(以下、「圧縮手段」という)、14は音声信号記録手段で、圧縮された音声信号をFM信号に変調するFM変調器およびFM信号増幅器で構成される。15は記録モードと再生モードでビデオヘッドの入出力を切り替えるモード切り替えスイッチ、16は音声信号再生手段で、再生時に磁気テープから再生されたFM信号を増幅する増幅器および復調するFM復調器で構成される。17はこの音声信号の時間軸を元の時間軸に伸長する時間軸伸長手段(以下、「伸長手段」という)、18は伸長された音声信号を出力する再生音声出力端子である。
【0004】100は回転ドラムで、映像信号用のビデオヘッド110,111および音声信号用のビデオヘッド112,113を備えている。101は磁気テープ、102はキャプスタンシャフト、103はピンチローラ、20はキャンプスタンモータ間欠駆動回路で、間欠的にキャプスタンシャフト102を駆動し、磁気テープ101をすすめる。
【0005】次に、記録時の動作について説明する。映像信号入力端子1に入力された映像信号は、映像信号記録手段3およびモード切り替えスイッチ4をとおしてビデオヘッド110,111に加えられる。この入力される映像信号は、図8(a)に示すように、フィールドV0,V1,・・・V9,V10,V11,V12,・・・と順次連続した信号である。間欠記録再生用のVTRは、図8(d)に示すように、例えば40フィールドのうち1フィールドずつ、しかも間欠的に記録し、8時間×40=320時間の長時間記録が行えるように構成されている。
【0006】ところで、このような間欠記録をするには、磁気テープ101を間欠的に移動し、かつ、図9に示すように、傾斜して順次隣接したトラックを形成して記録するようにしなければならない。このため、間欠駆動回路20で、入力された映像信号の垂直同期信号を基準にした間欠駆動パルス信号を作成し、このパルス信号をキャプスタンモ─タ(図示せず)に加えて、所定長ずつ、間欠的に正確に磁気テープ101をすすめ、このとき、映像信号はビデオヘッド110,111によって磁気テープ101の表層部に記録される。
【0007】他方、音声入力端子11に入力された音声信号は、音声信号増幅器12を通して圧縮手段13に入力され、映像信号の1フィールドと同じ時間ごとに、図8R>8(b)に示すように、A0,A1・・・A9,A10,A11,A12・・・に区切られ、図8(e)に示すように、順次、時間軸圧縮が施される。なお、この例の圧縮率は1/40としている。
【0008】この圧縮信号が、音声信号記録手段14および音声信号を通してビデオヘッド112,113に加えられ、磁気テープ101の表層に記録される映像信号と同じ位置に深層記録される。結局、磁気テープ101上のトラックパターンは、図10のようになる。
【0009】次に、再生時の動作について説明する。再生時には、記録時のほぼ逆の動作を行う。磁気テープ101上に記録された映像信号は、ビデオヘッド110,111によって再生され、モード切り替えスイッチ4を通して映像信号再生手段5に入力され、映像信号再生手段5によって復調された映像信号は、映像信号出力端子6から出力される。
【0010】他方、磁気テープ101上に記録された音声信号は、ビデオヘッド112,113によって再生され、モード切り替えスイッチ15を通して音声信号再生手段16に入力され、音声信号再生手段16で復調された音声信号は、伸長手段17に入力され、伸長手段17で時間軸が伸長されてもとの連続信号となった音声信号は、音声信号出力端子18から出力される。
【0011】このようにして、音声信号のような連続信号が、間欠磁気記録再生装置において記録・再生される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従来の間欠磁気記録再生装置では、回転ドラム上のヘッド取付位置が180度より少しでもずれていると、磁気テープに記録した信号に欠落が生じる。また、磁気テープに記録した信号を再生するとき、間欠動作の時間が録画時と再生時とで少しでもずれると、間欠動作の繋ぎ目で信号の欠落が生じるという問題点があった。
【0013】本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、回転ドラム上のヘッド取付位置に多少の誤差があっても、磁気テープに記録した信号に欠落が生じることがなく、また、再生時に、間欠動作の時間が記録時と多少変動しても、繋ぎ目の再生信号に欠落の生じない間欠磁気記録再生装置を得ることを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係る間欠磁気記録装置は、記録時に、上記映像信号に関連する連続音声信号を、上記映像信号の少なくとも複数フィールド相当分を含み、かつ先行する区分の最後尾の音声信号と、この先行する区分に続く区分の最先端の音声信号とが重複するように区分し、この区分された音声信号の時間軸を圧縮する時間軸圧縮手段と、この圧縮手段によって時間軸が圧縮された音声信号を、1フィールド分の映像信号が記録されているトラックに深層記録する記録手段と、再生時に、磁気テープ上に記録されている時間軸が圧縮された音声信号を再生して復調する再生手段と、再生された時間軸圧縮信号の時間軸を元の時間軸に伸長するとともに、隣り合うトラックに記録された音声信号の重複部分を組み合わせて連続音声信号に再生する時間軸伸長手段とを備えたものである。
【0015】
【作用】本発明における時間軸圧縮手段は、映像信号に関連する連続音声信号を、上記映像信号の少なくとも複数フィールド相当分を含み、かつ先行する区分の最後尾の音声信号と、この先行する区分に続く区分の最先端の音声信号とが重複するように区分し、この区分された音声信号の時間軸を圧縮して記録する。このため、ビデオヘッドの取り付け位置が多少ずれても、記録した信号に欠落が生じない。また、時間軸伸長手段は、再生された圧縮信号の時間軸を元の時間軸に伸長するとともに、隣り合うトラックに記録された音声信号の重複部分を組み合わせて連続音声信号にするので、記録・再生の間欠動作のタイミングが多少ずれても、再生信号に欠落が生じない。
【0016】
【実施例】
実施例1.以下、本発明の一実施例を図について説明する。図1は、本実施例の間欠磁気記録再生装置の構成を示すブロック回路図で、図6に示した従来例とは、音声信号の処理系が異なる。図2は圧縮手段21のブロック回路図で、30はクロック信号発生器(圧縮)、31はAD変換器、32,33はRAM、34はRAM選択スイッチ、35はDA変換器である。
【0017】次に、この圧縮手段の動作を説明する。音声信号は、まず、AD変換器31に入力され、アナログ信号からデジタル信号に変換される。このデジタル信号に変換された音声信号は、2つのRAM32,33に交互に一旦格納され、それから読み出されるが、RAM32,33への書き込みクロック信号の周波数をf1、読み出しクロック信号の周波数をf2とすると、f1<f2となるように構成されているので、音声信号は時間軸圧縮される。
【0018】この時間軸圧縮された信号は、RAM選択スイッチ34を通してDA変換器35に読み出され、デジタル信号から再びアナログ信号に変換されて出力される。なお、RAM選択スイッチ34は、キャプスタンモータ駆動回路20から入力される、タイミング信号に同期して切り替えられるスイッチである。
【0019】図3は、この動作を表したタイミングチャートで、図3(b)は入力される音声信号、図3(e)は深層記録される音声信号である。まず、A10〜A40の信号がRAM32に格納されるが、RAM33は、A40〜の信号を格納し始め、次に、RAM32に格納された音声信号A10〜A40が、時間軸圧縮されて読み出されてDA変換器35に出力され、A70の信号が、RAM33に格納され始めると、同時にA70〜の信号がRAM33にも格納され始め、次に、RAM切り替えスイッチ34が切り替えられて、RAM33に格納された音声信号A40〜A70の信号が、時間軸圧縮されて読み出されてDA変換器35に出力される。という動作を繰り返す。
【0020】なお、これらの動作は、キャプスタンモータ間欠駆動回路20から出力されたタイミング信号によって、クロック信号発生器(圧縮)30が制御する。
【0021】図4は、磁気テープ101上のトラックパターンを示す1図で、A40,A70の区間の信号が、前後のトラックに重複して記録されるので、回転ドラム上のヘッドの取付位置に誤差があっても、その誤差が、A40やA70のような1区間を圧縮した時間に相当する誤差以内であれば、信号の欠落が生じないことは明らかである。
【0022】なお、この実施例では、重複して記録される信号の区分を、映像信号の1フィールドに相当する時間としたが、ヘッド取付位置により多くの誤差があれば、もっと広げてもよいし、誤差があまり無ければ、狭めてもよい。
【0023】図5は、伸長手段22の一実施例のブロック回路図で、圧縮手段21の回路構成とほぼ同様に構成されており、36はクロック信号発生器(伸長)、37は入力RAM選択スイッチ、38は出力RAM選択スイッチである。
【0024】次に、動作を説明する。音声信号は、まず、AD変換器31に入力され、アナログ信号からデジタル信号に変換される。このデジタル信号に変換された音声信号は、入力RAM選択スイッチ37を通して、RAM32からRAM33のどちらかのRAMに一旦格納され、それから読み出されて出力される。
【0025】入力RAM選択スイッチ37は、間欠再生の動作に同期して、1トラックずつ交互に切り替えられるスイッチである。このとき、RAM32,33への書き込みクロック信号の周波数をf1、読み出しクロック信号の周波数をf2とすると、f1>f2の関係に構成されているので、音声信号は元の時間軸に伸長される。
【0026】この時間軸伸長された信号は、出力RAM選択スイッチ38を通してDA変換器35に読み出され、デジタル信号から、再びアナログ信号に変換されて出力される。
【0027】なお、出力RAM選択スイッチ38は、間欠記録の動作に同期して切り替えられるスイッチであるが、切り替え位置は、前後のトラックに記録された重複部分のほぼ真ん中にくるように設定される。ただし、間欠再生の時間が変動したときには、この切り替え位置は、その変動に応じてずらすことができる。
【0028】図6は、この動作を表したタイミングチャートで、図6(c)は深層記録される音声信号、図6(e)は出力された音声信号である。まず、A10〜A40の信号がRAM32に格納されるが、重複部分の半分が切り捨てられた後、残りの部分が伸長されて出力され始める。次に、入力RAM選択スイッチ37が切り替えられて、A40〜A70の信号がRAM33に格納されるが、重複部分の半分が切り捨てられた後、出力RAM選択スイッチが切り替えられて、残りの部分が伸長されて出力され始める。
【0029】なお、この時、RAM32には、重複部分の半分がまだ出力されず残っているはずであるが、間欠動作が正確な場合には使われずに捨てられる。この動作を以後繰り返す。なお、これらの動作は、キャプスタンモータ間欠駆動回路20から出力されたタイミング信号によって、クロック信号発生器(伸長)36が制御する。
【0030】このような再生を行った場合、記録時と再生時の間欠動作時間にずれがあっても、そのずれが、A40のような1区間の時間の半分に相当する時間内であれば、信号を欠落なく再生することができるのは明らかである。図6(f)は、磁気テープ101の走行スピードが変動し、間欠動作の時間が1区間の1/4時間分だけ伸びた場合の再生音声信号を示している。つまり、RAM32には、A40の区間の信号がすべて格納されているので、1区間の1/2に相当する時間だけ間欠動作の時間が伸びても、再生音声信号には欠落が生じない。
【0031】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、間欠磁気記録再生装置において、映像信号に関連する連続音声信号を、上記映像信号の少なくとも複数フィールド相当分を含み、かつ先行する区分の最後尾の音声信号と、この先行する区分に続く区分の最先端の音声信号とが重複するように区分し、この区分された音声信号の時間軸を圧縮して記録し、再生するときに、時間軸圧縮信号の時間軸を元の時間軸に伸長するとともに、隣り合うトラックに記録された音声信号の重複部分を組み合わせて元の連続音声信号に再生するように構成したので、記録時には、回転ドラムのヘッド取り付け位置が多少ずれても欠落なく磁気テープに時間軸圧縮した連続音声信号を記録でき、また、再生時には、間欠再生動作のタイミングが多少ずれても、欠落のない時間軸を元の時間軸に伸長した連続信号を再生できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による全体構成を示すブロック回路図である。
【図2】本実施例の圧縮手段のブロック回路図である。
【図3】本実施例の記録時の動作を表すタイミングチャートである。
【図4】本実施例により磁気テープ上に記録されるトラックパターンを示す図である。
【図5】本実施例の伸長手段のブロック回路図である。
【図6】本実施例の再生時の動作を表すタイミングチャートである。
【図7】従来の音声記録付き間欠磁気記録再生装置の全体構成を示すブロック回路図である。
【図8】従来の音声記録付き間欠磁気記録再生装置の記録時の動作を表すタイミングチャートである。
【図9】通常のVTRにより磁気テープ上に記録される映像信号のトラックパターンである。
【図10】従来の音声記録付き間欠磁気記録再生装置により磁気テープ上に記録されるトラックパターンである。
【符号の説明】
21 時間軸圧縮手段
14 音声信号記録手段
16 音声信号再生手段
22 時間軸伸長手段
100 回転ドラム
101 磁気テープ
110,112 映像信号のビデオヘッド
112,113 音声信号用のビデオヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁気テープを間欠的に走行させ、この走行時に入力された映像信号を回転ドラムに設けられたビデオヘッドによって、前記磁気テープの走行方向にたいして傾斜するトラックに順次隣接して記録し、再生する間欠磁気記録再生装置において、記録時に、上記映像信号に関連する連続音声信号を、上記映像信号の少なくとも複数フィールド相当分を含み、かつ先行する区分の最後尾の音声信号と、この先行する区分に続く区分の最先端の音声信号とが重複するように区分し、この区分された連続音声信号の時間軸を圧縮する時間軸圧縮手段と、この圧縮手段によって時間軸が圧縮された連続音声信号を、1フィールド分の映像信号が記録されているトラッに深層記録する記録手段と、再生時に、磁気テープ上に記録されている時間軸が圧縮された連続音声信号を再生して復調する再生手段と、再生された時間軸圧縮信号の時間軸を元の時間軸に伸長するとともに、隣り合うトラックに記録された音声信号の重複部分を組み合わせて連続音声信号に再生する時間軸伸長手段とを備えたことを特徴とする間欠磁気記録再生装置。

【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate


【図3】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate


【特許番号】第2768035号
【登録日】平成10年(1998)4月10日
【発行日】平成10年(1998)6月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−94186
【出願日】平成3年(1991)4月24日
【公開番号】特開平4−324154
【公開日】平成4年(1992)11月13日
【審査請求日】平成6年(1994)11月25日
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【参考文献】
【文献】特開 平1−288074(JP,A)
【文献】特開 昭63−275063(JP,A)