説明

関節部の着脱装置

【課題】関節部着脱用ピンをボスから突没させるための油圧シリンダのボスに対する取付け強度が高まり、かつ部品点数が削減されると共に、油圧シリンダの取付けが容易となる関節部の着脱装置を提供する。
【解決手段】関節部を構成する一方の連結部に固定したボス12内に両端より突没可能に内蔵され、他方の連結部のボス12に着脱可能に嵌合する筒状をなす2本のピン4を備える。ボス12内に設けられる両ロッド形の油圧シリンダ16を備える。油圧シリンダ16のピストンロッド39をピン4に連結する。ボスの側面に設けた開口部18に嵌合されかつボルトによりボス12に固定して取付けられたマニホルド17を備える。油圧シリンダ16のチューブ27とマニホルド17とを凹凸嵌合して油圧シリンダ16をボス12に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機において、多関節フロントの関節部を油圧シリンダにより着脱可能にピン結合する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機においては、分解輸送のため、あるいはバケット等の作業具交換等のために関節部を着脱可能に連結する構造が採用される。このピンによる結合、分解を能率よく行なうため、関節部を構成する一方の連結部(ブラケット)に設けたボスに油圧シリンダを収容し、その油圧シリンダにより両端からピンを突没させて他方の連結部(ブラケット)のボスに挿脱して連結、離脱を行なう。
【0003】
従来の関節部の着脱装置においては、特許文献1に記載のように、前記関節部着脱用のピンを筒状に構成し、この関節部着脱用のピンを突没するためにボスに内蔵された油圧シリンダのチューブを、固定用のピンによりボスに固定して取付けている。特許文献2においては、ボスに突没可能に内蔵された関節部着脱用の筒状ピンにピストンを収容して関節部着脱用の筒状ピンをシリンダとして兼用し、その筒状ピンに収容した左右のピストン同士を共通のピストンロッドにより連結し、そのピストンロッドの中央部を固定用のピンによりボスに固定している。
【0004】
また、特許文献1においては、ボスから関節部着脱用のピンを突出させて他方の連結部のボスに嵌合した関節部の連結状態において、他方の連結部から関節部着脱用のピンに半径方向にかかる荷重が油圧シリンダのピストンロッドに曲げ力として作用しないように、関節部着脱用のピンの内周面に設けた環状溝と、ピストンロッドの外周に設けた環状溝に抜け止めリングを隙間を介して嵌め、関節部着脱用のピンの外側端部より螺入したボルトの先端で前記抜け止めリングを押圧して抜け止めリングを取付け、関節部着脱用のピンに外力が加わった場合には抜け止めリングが流動してピストンロッドに外力が伝わらないようにしている。
【0005】
【特許文献1】特許第3747178号公報
【特許文献2】特開2003-160949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載のように、油圧シリンダのチューブまたはピストンロッドの中央部を固定用のピンによってボスに固定する構造では、関節部の連結状態において、関節部着脱用のピンに軸方向の力が加わった場合、固定用のピンでこの軸方向の力を受けなければならないため、強度不足を生じるおそれがある。また、油圧シリンダのチューブまたはピストンロッドを固定するための好ましくは複数本の固定用ピンを設ける必要があり、部品点数が多くなるという問題点がある。さらに油圧シリンダのチューブまたはピストンロッドと外部配管との接続用のマニホルドとの油路の接続のための接続に手間がかかり、製作工数が多いという問題点がある。
【0007】
また、特許文献1に記載のように、外部からボルトにより抜け止めリングを位置決めする構造では構造が複雑化する上、ボルトの先端が外部から見えず、メンテナンスが困難である。
【0008】
また、関節部着脱用のピンが不意に抜け出ることがないようにブラケットにピンストッパをボルト付けすると共に、関節部着脱用のピンをピンストッパにボルトで固定する構造では、製造上の公差により関節部着脱用のピンの外端面がブラケットの外面より没入した位置にあると、ピンストッパの孔に挿通したボルトを関節部着脱用のピンに設けたねじ孔に螺合して締結する際に、ボルトにより関節部着脱用のピンが外方向に引っ張られ、関節部着脱用のピンを突没させる油圧シリンダが破損するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、関節部着脱用のピンをボスから突没させるための油圧シリンダのボスに対する取付け強度が高まり、かつ部品点数が削減されると共に、油圧シリンダの取付けが容易となる関節部の着脱装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、関節部着脱用のピンが不意に抜け出ることを防止するためのピンストッパを有するものにおいて、ピンストッパのボルトによる取付けの際に油圧シリンダに引っ張り力が作用して破損することのないように構成された関節部の着脱装置を提供することを他の目的とする。
【0011】
また、本発明は、関節部着脱用のピンに半径方向の外力が加わった場合にこの外力がピストンロッドに作用することを、簡単な構造で防止しうる構成の関節部の着脱装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の関節部の着脱装置は、作業機のフロントの関節部の対応する連結部同士をピンにより着脱可能に連結する関節部の着脱装置において、
前記関節部を構成する一方の連結部に固定したボスと、
前記ボスに両端より突没可能に内蔵され、他方の連結部のボスに着脱可能に嵌合する筒状をなす2本のピンと、
前記一方の連結部に固定したボス内に設けられ、前記筒状をなす2本のピンが摺動可能に外嵌されるチューブと、
前記チューブと前記チューブ内に設けられる2個のピストンと各ピストンにそれぞれ一端が連結され他端が前記チューブ両端の端板よりそれぞれ突出した2本のピストンロッドとを備え、前記ピストンロッドをそれぞれ前記ピンの外端部近傍に連結させた両ロッド形の油圧シリンダと、
前記チューブの肉厚部に形成され、前記2個のピストン間に形成されたボトム室と、前記チューブの両端の端板と前記ピストンとの間に形成されたロッド室にそれぞれ作動油を供給する油路と、
前記ボスの側面に設けた開口部に嵌合されかつボルトによりボスに固定して取付けられ、前記油路に連通する油路を有するマニホルドと、
前記チューブの外面に突出して設けられ、前記マニホルドと凹凸嵌合され、かつボルトにより前記マニホルドに固定されるチューブの取付け部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の関節部の着脱装置は、請求項1に記載の関節部の着脱装置において、
前記一方の連結部は、前記ボスの左右にそれぞれ一対ずつのブラケットを備え、
前記各一対のブラケット間に他方の連結部のブラケットを嵌め込んでそのブラケットに設けたボスに前記ピンを挿脱する構造を有し、
前記一対のブラケットのうち、外側のブラケットにボルトにより固定するピンストッパを備え、
前記ピンストッパは、前記外側のブラケットのピン孔に挿入して前記ピンの外端面に当接させかつピンを固定するためのボルト挿通孔を備える突出部を有し、
前記突出部の突出幅は、前記ピンを外側に最大に伸長させたときのピンの外端面と前記外側のブラケットの外面との間の最大製造公差以上の幅に設定したことを特徴とする。
【0014】
請求項3の関節部の着脱装置は、請求項1または2に記載の関節部の着脱装置において、
前記ピンにおける前記ピストンロッドとの連結部に、前記ピンの内周面に内方に突出して形成された環状部を有し、
前記ピストンロッドにおける前記ピンとの連結部に、前記環状部の内周面との間に隙間を有して嵌合される嵌合部を備えると共に、前記環状部より内側に位置するピストンロッドのリング部と、前記ピストンロッドの嵌合部にボルト付けする受け具との間で前記環状部を挟持してピストンロッドと前記ピンとを連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、油圧シリンダの取付け部が、ボスの開口部に嵌合固定されたマニホルドに凹凸嵌合されて取付けられるので、マニホルドに固定用のピンの作用を持たせることができ、油圧シリンダの取付け強度が大となる。また、固定用のピンが不要となるので、部品点数が削減できる。また、マニホルドと油圧シリンダの取付け部との嵌合により自動的に油路が接続されるので、組み立てが容易となる。
【0016】
請求項2の発明によれば、ピンストッパに突出部を設け、この突出部が筒状ピンの外端面に必ず当接した状態でピンストッパにボルト付けされると共にブラケットに固定されるようにしたので、ボルトによりピンストッパを取付ける際に筒状ピンに引っ張り力が作用せず、油圧シリンダを破損することがない。また、突出部の代わりにシムを用いた場合のようなシムの付け忘れや紛失による油圧シリンダの破損を防止することができる。また、突出部のサイズをピン孔に合わせることにより、ボルトを締める際に芯だしが容易であり、ピンストッパの取付けが容易となる。
【0017】
請求項3の発明によれば、ピストンロッドにおける関節部着脱用のピンとの連結部は、関節部着脱用のピンの内周面に形成した環状部の内周面との間に隙間を有して嵌合部を嵌合したので、関節部着脱用のピンに半径方向に作用する力がピストンロッドに作用することが防止ないし軽減される。また、環状部をピストンロッドに固定されたリングと受け具とで挟持したので、ピストンロッドの推力を関節部着脱用のピンに確実に伝達することができる。また、この連結部が外部から見えるため、メンテナンスが容易である。また、関節部着脱用のピンに螺合するボルトにより抜け止めリングを固定する構造に比較して構造が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の関節部の着脱装置を適用する作業機の一例である油圧ショベルを示す側面図である。この油圧ショベルは、下部走行体1上に設置した上部旋回体2にブーム3をピン4を中心にブームシリンダ3aにより起伏可能に取付け、ブーム3の先端にアームシリンダ5aによりピン6を中心にアーム5を回動可能に取付け、アーム5の先端にバケットシリンダ10aによりピン9を中心としてバケット10を回動可能に取付けてなる。
【0019】
図2は前記ブーム3を上部旋回体2に着脱可能に取付けるピン4を用いた着脱装置を示す背面図である。3bはブーム3の上部旋回体2に対する連結部として構成されたブームフート、11aと11b、11cと11dはそれぞれ対をなすブラケットであり、これらはブーム3に対する連結部を構成するものである。12は互いに対向する内側ブラケット11a、11c間に溶接またはボルト13によって固定されるボスである。
【0020】
図3は図2のブーム3および外側のブラケット11b、11dの図示を省略し、かつピン4を収縮させた状態でこの実施の形態の着脱装置を示す断面図である。図2、図3に示すように、ピン4は筒状をなし、ボス12内にその両端から突没可能に内蔵される。この実施の形態においては、ボス12およびブラケット11a、11cからピン4を突没可能に嵌合して内蔵されている。ブラケット11a〜11dにはピン4を嵌合するためのブッシュ14からなるピン孔15を有する(図7参照)。
【0021】
16は前記ピン4を突没させるためにボス12内に内蔵して固定される油圧シリンダである。17はこの油圧シリンダ16に作動油を供給するための外部配管(図示せず)を接続するマニホルドである。このマニホルド17は、ボス12に設けた開口部18に嵌合する嵌合部19と、この嵌合部19より外側に設けた鍔部20とからなる。このマニホルド17にはボス12の半径方向に油路21、22が設けられ、その各油路21、22の外端部に配管の継手23が取付けられる。このマニホルド17は、嵌合部19をボス12に設けた開口部18に嵌め、かつ鍔部20をボス12の側面に設けた凹部24に嵌め、ボルト25によりボス12に固定する。すなわち鍔部20に設けたボルト挿通孔にボルト25を通してボス12に設けたねじ孔26に螺合して締結することにより、マニホルド17がボス12に固定される。
【0022】
一方、油圧シリンダ16には、そのチューブ27の軸方向の中央部に大径部29を形成し、この大径部29にマニホルド17に固定するための取付け部30を形成する。この例ではこの取付け部30はマニホルド17の嵌合部19を嵌合する凹部として形成されているが、この代わりに取付け部30に凸部を形成し、マニホルド17の嵌合部19にこの凸部に嵌合する凹部を形成しても良い。チューブ27のマニホルド17に対する固定は、マニホルド17の嵌合部19にチューブ27の取付け部30の凹部を嵌合すると共に、ボルト31をマニホルド17に設けたボルト挿通孔32に通して取付け部30に設けたねじ孔33に螺合し締結することにより行なわれる。このようにマニホルド17にチューブ27を固定した状態では、チューブ27に半径方向に設けた油路34、35はそれぞれマニホルド17の油路21、22に連通する。
【0023】
油圧シリンダ16は、内部に2個のピストン37を内蔵し、各ピストン37に内端を結合したピストンロッド39を、チューブ27の両端より突出させた両ロッド形の油圧シリンダである。40はチューブ27の両端にボルト38により固定して設けた端板であり、この端板40とピストン37との間にロッド室41が形成され、2つのピストン37、37の間にボトム室42が形成される。前記チューブ27に半径方向に設けた一方の油路34の内端は前記ボトム室42に連通する。他方の油路35は、チューブ27の肉厚部に軸方向に設けた油路43とさらにこの油路43に連通させて半径方向に設けた油路44(図7参照)により、ロッド室41に連通する。
【0024】
図7、図8に示すように、ピストンロッド39の先端にピン4の外端部が下記の構造で連結される。すなわち、ピン4におけるピストンロッド39との連結部には、ピン4の内周面に内方に突出して形成された環状部45を設ける。一方、ピストンロッド39におけるピン4との連結部46は、環状部45の内周面との間に隙間gを有して嵌合される嵌合部47を備えると共に、環状部45より軸方向の内側においてピストンロッド39に一体に設けたリング部48と、環状部45の軸方向の外側でピストンロッド39にボルト49により固定した円板状の受け具50との間で環状部45を挟持してピストンロッド39とピン4とを連結する。この構造により、ピン4に半径方向の力が加わっても、ピストンロッド39に対してピン4が相対的に半径方向に移動可能であり、ピストンロッド39には曲げ力が加わらない構造としている。
【0025】
図7において、51は油圧ショベルの旋回時(停止時)にピン4に軸方向に発生する力によりによるピン4の移動(引っ込み)を規制する油圧シリンダ16が収縮してピン4がブームフート3bから抜け出ることを防止するピンストッパである。このピンストッパ51は、図9に示すようにピン4の外端面に対向する面に突出部52を有しかつ取付け用ボルト挿通孔53を有する。このピンストッパ51は、外側のブラケット11b、11dのピン孔15に突出部52を挿入してピン4の外端面に当接させ、かつボルト54をボルト挿通孔53に挿通してピン4に設けたねじ孔55に螺合し締結することによりピン4に固定する。
【0026】
56はブラケット11b、11dの外面に溶接された受座、57はこの受座56に設けたねじ孔である。59はピンストッパ51を押さえる押さえ板であり、ピンストッパ51に2枚の押さえ板59を当て、各押さえ板59に2個ずつ設けたボルト挿通孔60にボルト61を挿通して受座56のねじ孔57に螺合し締結することにより、ピンストッパ51がブラケット11b、11dから外れてピン4がブラケット11aと11b、11cと11dとの間にある状態から軸方向の外側または内側に抜け出ることを防止する。
【0027】
ここで、ピンストッパ51の突出部52の突出幅t(図9参照)は、ピン4外端部とブラケット11b、11dの外面との間の幅T(図7参照)の製造上避けられない最大公差T0以上(t≧T0)に設定する。
【0028】
この関節部の着脱装置は、ボス12の開口部18にマニホルド17の嵌合部19を嵌合してボルト25により固定すると共に、マニホルド17の嵌合部19にチューブ27の取付け部30に凹凸嵌合し、ボルト31によりマニホルド17にチューブ27を固定する。
【0029】
このように、本実施の形態においては、油圧シリンダ16の取付け部30が、ボス12の開口部18に嵌合固定されたマニホルド17に凹凸嵌合されて取付けられるので、マニホルド17に従来の固定用ピンの固定作用を持たせることができ、固定用ピンに比較して油圧シリンダ16の取付け強度が大となる。また、固定用ピンが不要となるので、部品点数が削減できる。また、マニホルド17と油圧シリンダ16の取付け部30との嵌合により自動的に油路21と34、22と35が連通するので、組み立てが容易となる。
【0030】
本実施の形態において、ブーム3のブームフート3bをブラケット11a〜11dに連結してブーム3を取付ける場合、次の手順で連結作業を行なう。左右のブームフート3bをそれぞれブラケット11aと11b、11cと11dとの間に挿入してこれらのブラケットのピン孔15とブームフート3bのピン孔15との位置合わせを行なう。そして油圧シリンダ16を伸長させてピン4を軸方向の外方向に移動させ、ピン4をブームフート3のピン孔15とブラケット11b、11dのピン孔15にピン4を挿入する。そして、ピンストッパ51の突出部52をブラケット11b、11dのピン孔15に挿入し、ボルト54をピンストッパ51のボルト挿通孔53に挿通してピン4に設けたねじ孔55に螺合し締結することによりピンストッパ51をピン4に固定する。その後、ピンストッパ51に押さえ板59を当て、押さえ板59のボルト挿通孔60にボルト61を挿入してブラケット11b、11dに溶接した受座56のねじ孔57に螺合し締結することにより、押さえ板59によりピンストッパ51を押さえてブラケット11b、11dに固定する。
【0031】
ここで、図7、図9について説明したように、ピンストッパ51の突出部52の突出幅tを、ピン4の外端面とブラケット11b、11dの外面との間の最大製造公差T0以上(t≧T0)としたので、ピン4の外端面に対してピンストッパ51の突出部52が当接した状態でピンストッパ51がピン4およびブラケット11b、11dにボルト54、61により固定される。
【0032】
従来は図11に示すようにピン4とブラケット11b、11dとの間に隙間Tが生じている場合、ボルト54によりピンストッパ51をピン4に固定すると、隙間Tの存在により、ボルト54による締結力がピン4に張力として作用し、油圧シリンダ16を破損するおそれがあったが、本実施の形態においては、前記t≧T0の関係を持たせてピンストッパ51をピン4およびブラケット11b、11dに固定したので、ボルト54によりピンストッパ51を取付ける際にT1の隙間ができるため、ピン4に引っ張り力が作用せず、油圧シリンダ16を破損することがない。また、突出部52の代わりにシムを用いた場合のようなシムの付け忘れや紛失による油圧シリンダ16の破損を防止することができる。また、突出部52のサイズをピン孔に合わせることにより、ボルトを締める際に芯だしが容易であり、ピンストッパ51の取付けが容易となる。
【0033】
また、本実施の形態においては、図7、図8で示したように、ピン4に設けた環状部45の内周面とピストンロッド39の嵌合部47の外周面との間に隙間gを形成してピン4とピストンロッド39とを連結したので、ブラケット11aと11b、11cと11dの各ピン孔15間に製造上の軸心のずれが生じているかあるいは外力の作用によりピン4とピストンロッド39の軸心のずれが生じても、ピン4の曲がりによってピストンロッド39に曲げ力が作用せず、油圧シリンダ16の破損が防止されると共に、油圧シリンダ16の円滑な伸縮動作が可能で、ピン4の円滑な着脱動作が保証される。
【0034】
また、ピストンロッド39の凸部であるリング部48と受け具50とで環状部45を挟持したので、ピストンロッド39の推力をピン4に確実に伝達することができる。また、ピンストッパ51は着脱可能であり、このピンストッパ51を外せばこの連結部46が外部から見えるため、メンテナンスが容易である。また、ピン4に螺合するボルトにより抜け止めリングを固定する構造に比較して構造が簡単である。
【0035】
図12、図13は本発明の他の実施の形態を示すもので、図1に示したバケット10を取付けるピン9の着脱構造を示すものである。図13において、右側のピン9はボス12内に没入した状態を示し、左側はピン9が突出した状態を示すが実際には左右のピン9は同時に突出、収縮するものである。図12、図13において、62はバケット10のアーム5への取付け側の背面に設けたブラケットであり、これらのブラケット62はバケット10のアーム5に対する取付け部に溶接された2枚の平行板からなる。63は各ブラケット62に溶接されたボスである。ピン9の構造は前記実施の形態のピン4と同じであり、また、油圧シリンダ16のマニホルド17に対する取付け構造、マニホルド17のボス12に対する取付け構造、ピストンロッド39のピン9に対する連結部46の構造は前記実施の形態と同じである。この実施の形態が前記実施の形態と異なる点は、図13の左側に示すように、ピン9をブラケット62に設けたボス63のピン孔64に挿入した状態において、ピン9は片持ち式にボス12に支持される点である。
【0036】
このようなピン9の支持構造にいては、バケット10からのブラケット61に作用する外力の作用により、ピン9がピストンロッド39に対して半径方向に傾斜しやすくなるが、この場合、図8に示した連結部46の構造、すなわち環状部45と嵌合部47との間に隙間gが形成された構造により、前述した油圧シリンダ16の破損防止と、ピン9の着脱動作の保証と、保守点検の容易化の効果が得られる。また、マニホルド17に対する油圧シリンダ16の取付け部30の凹凸嵌合による取付け構造による前述した効果が得らえる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による関節部の着脱装置を適用する作業機の一例である油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本発明の関節部の着脱装置の一実施の形態を、図1の油圧ショベルのブームフート部の上部旋回体に対する連結部に例をとって示す背面図である。
【図3】図2の着脱装置をピンの没入状態で示す断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】図4のE−E断面図である。
【図7】図2の関節部の着脱装置をピンの突出状態で示す断面図である。
【図8】図7の部分拡大図である。
【図9】(A)は本実施の形態のピンストッパの斜視図、(B)はその側面図である。
【図10】図9の端面図である。
【図11】従来のピンストッパの取付け構造を示す断面図である。
【図12】図1のバケットの平面図である。
【図13】図12のバケットのアームに対する本発明の他の実施の形態の着脱装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1:下部走行体、2:上部旋回体、3:ブーム、3a:ブームシリンダ、3b:ブームフート、4:ピン、5:アーム、5a:アームシリンダ、6:ピン、7:アーム、9:ピン、10:バケット、10a:バケットシリンダ、11a、11b、11c、11d:ブラケット、12:ボス、13:ボス、14:ブッシュ、15:ピン孔、16:油圧シリンダ、17:マニホルド、18:開口部、19:嵌合部、20:鍔部、21、22:油路、23:継手、24:凹部、25:ボルト、26:ねじ孔、27:チューブ、29:大径部、30:取付け部、31:ボルト、32:ボルト挿通孔、33:ねじ孔、34、35:油路、37:ピストン、38:ボルト、39:ピストンロッド、40:端板、41:ロッド室、42:ボトム室、43、44:油路、45:環状部、46:連結部、47:嵌合部、48:リング部、49:ボルト、50:受具、51:ピンストッパ、52:突出部、53:ボルト挿通孔、54:ボルト、55:ねじ孔、56:受座、57:ねじ孔、59:押さえ板、60:ボルト挿通孔、61:ボルト、62:ボス、63:ピン孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機のフロントの関節部の対応する連結部同士をピンにより着脱可能に連結する関節部の着脱装置において、
前記関節部を構成する一方の連結部に固定したボスと、
前記ボスに両端より突没可能に内蔵され、他方の連結部のボスに着脱可能に嵌合する筒状をなす2本のピンと、
前記一方の連結部に固定したボス内に設けられ、前記筒状をなす2本のピンが摺動可能に外嵌されるチューブと、
前記チューブと前記チューブ内に設けられる2個のピストンと各ピストンにそれぞれ一端が連結され他端が前記チューブ両端の端板よりそれぞれ突出した2本のピストンロッドとを備え、前記ピストンロッドをそれぞれ前記ピンの外端部近傍に連結させた両ロッド形の油圧シリンダと、
前記チューブの肉厚部に形成され、前記2個のピストン間に形成されたボトム室と、前記チューブの両端の端板と前記ピストンとの間に形成されたロッド室にそれぞれ作動油を供給する油路と、
前記ボスの側面に設けた開口部に嵌合されかつボルトによりボスに固定して取付けられ、前記油路に連通する油路を有するマニホルドと、
前記チューブの外面に突出して設けられ、前記マニホルドと凹凸嵌合され、かつボルトにより前記マニホルドに固定されるチューブの取付け部とを備えたことを特徴とする関節部の着脱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の関節部の着脱装置において、
前記一方の連結部は、前記ボスの左右にそれぞれ一対ずつのブラケットを備え、
前記各一対のブラケット間に他方の連結部のブラケットを嵌め込んでそのブラケットに設けたボスに前記ピンを挿脱する構造を有し、
前記一対のブラケットのうち、外側のブラケットにボルトにより固定するピンストッパを備え、
前記ピンストッパは、前記外側のブラケットのピン孔に挿入して前記ピンの外端面に当接させかつピンを固定するためのボルト挿通孔を備える突出部を有し、
前記突出部の突出幅は、前記ピンを外側に最大に伸長させたときのピンの外端面と前記外側のブラケットの外面との間の最大製造公差以上の幅に設定したことを特徴とする関節部の着脱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の関節部の着脱装置において、
前記ピンにおける前記ピストンロッドとの連結部に、前記ピンの内周面に内方に突出して形成された環状部を有し、
前記ピストンロッドにおける前記ピンとの連結部に、前記環状部の内周面との間に隙間を有して嵌合される嵌合部を備えると共に、前記環状部より内側に位置するピストンロッドのリング部と、前記ピストンロッドの嵌合部にボルト付けする受け具との間で前記環状部を挟持してピストンロッドと前記ピンとを連結したことを特徴とする関節部の着脱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−133690(P2008−133690A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321890(P2006−321890)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】