説明

闘技用模擬武具

【課題】逮捕術等の模擬的な武具として、耐久性と安全性とを両立すること。
【解決手段】片手で把持される柄11と、柄11の一端部に連続する打突部20とを一体に有する闘技用模擬武具10である。打突部20は、柄に設けられた有底のスリーブ(11、12)に基端側が摺動自在に装着されるとともに、少なくとも闘技の稽古や試合に要請される剛性と可撓性とを具備する芯材14と、芯材14の柄11に対する相対的な変位を許容した状態で芯材14を柄11と一体的に連結するとともに、打撃による衝撃を吸収するように芯材を被覆する弾性外装材(15、16)と、芯材14をスリーブ(11、12)から突出する方向に付勢する弾性部材17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、闘技用模擬武具に関する。
【背景技術】
【0002】
護身術、逮捕術、古武道、格闘技等(総称する場合には「闘技」ともいう)の稽古や試合には、模擬的な武具が必要になる。闘技の稽古や試合では、相当の力を込めて相手を真剣に打突することを要する。そのため、子供用の玩具では、安全性の確保を図ることはできるものの、実践的ではない。実際に使用されてきた模擬的な武具、とりわけ打突攻撃に実用的なものは、安土桃山時代に考案された袋竹刀や、江戸時代になって考案された(割)竹刀である。特に竹刀は、今日に至るまで広く使用されている模擬刀である。
【0003】
竹刀は、環状に組み付けられる複数本の割竹を本体としている。本体には、ゴムなどの衝突防止用の内芯が挿入される。本体と内芯とは、本体の先端を被覆する袋状の先革と、本体の基端を被覆する袋状の柄革とで一体的に組み付けられる。通常、先革と柄革とは、弦で連結される。さらに柄革の先端から鍔が嵌装され、本体を柄部分と刃部分とに区分ける。
【0004】
因みに、竹刀に関しては、例えば、特許文献1〜6に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3030270号公報
【特許文献2】特開平09−010371号公報
【特許文献3】特開2003−305147号公報
【特許文献4】特開2004−249065号公報
【特許文献5】特開2005−305082号公報
【特許文献6】特開2006−109908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、竹刀で全ての闘技の稽古や試合に対応することは容易ではない。
【0007】
例えば、逮捕術の稽古や試合では、相当な力を込めて様々な角度から相手を真剣に打突するため、竹刀の弦が切れやすい。また、割竹がささくれて、けがの原因にもなる。しかも、比較的短尺の竹刀を用いることを要するため、相対的に竹刀の剛性が高くなり、竹刀自身が受ける衝撃も、人体に与える衝撃も大きくなる。かかる不具合を防止するためには、竹刀の割竹の枚数を増やせばよいが、その場合には、組み付けが困難になる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高い耐久性と安全性とを両立することのできる闘技用模擬武具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、片手で把持される柄と、前記柄の一端部に連続する打突部とを一体に有する闘技用模擬武具であって、前記打突部は、前記柄に設けられた有底のスリーブに基端側が摺動自在に装着されるとともに、所要の剛性と可撓性とを具備する芯材と、前記芯材の前記柄に対する相対的な変位を許容した状態で前記芯材を前記柄と一体的に連結するとともに、打撃による衝撃を吸収するように前記芯材を被覆する弾性外装材と、前記芯材をスリーブから突出する方向に付勢する弾性部材とを備えていることを特徴とする闘技用模擬武具である。この態様では、闘技の稽古や試合に際し、闘技用模擬武具の柄を片手で把持し、相手を打突部で打突する。打突部が相手に打ち込まれても、芯材が所定の可撓性を有し、且つ芯材を被覆する弾性外装材が衝撃を吸収するので、竹刀と同等、或いは、それ以上の耐久性と安全性とを確保することができる。特に、突き技が用いられた場合でも、打突部の先端が弾性部材の付勢力に抗して衝撃を吸収しながら柄側に縮むので、竹刀よりも遙かに高い衝撃吸収性能を発揮し、耐久性と安全性とを両立することができる。
【0010】
好ましい態様において、前記弾性部材は、前記スリーブの底と前記芯材との間に介装される弾性体である。
【0011】
好ましい態様において、前記弾性体は、コイルスプリングである。
【0012】
好ましい態様において、前記柄は、前記スリーブとしての樹脂製のパイプの底を構成する樹脂製品である。
【0013】
本発明の別の態様は、片手で把持される柄と、前記柄の一端部に連続する打突部とを一体に有する闘技用模擬武具であって、前記打突部は、所要の剛性と可撓性とを具備する芯材と、前記芯材を前記柄と一体的に連結するとともに、打撃による衝撃を吸収するように前記芯材を被覆する弾性外装材とを備えていることを特徴とする闘技用模擬武具である。この態様においても、闘技の稽古や試合に際し、闘技用模擬武具の打突部が相手に打ち込まれても、芯材が所定の可撓性を有し、且つ芯材を被覆する弾性外装材が衝撃を吸収するので、竹刀と同等、或いは、それ以上の耐久性と安全性とを確保することができる。
【0014】
好ましい態様において、前記芯材は、熱可塑性樹脂である。
【0015】
好ましい態様において、前記弾性外装材は、前記芯材を全周にわたって被覆するスリーブ状のスポンジパイプと、前記スポンジパイプの先端部に固着されるゴム製のキャップとを備えている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、所定の弾性を有する芯材と、この芯材を被覆する弾性外装材によって、高い衝撃吸収性を発揮し、もって耐久性と安全性とを両立することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態に係る闘技用模擬武具の斜視図である。
【図2】図1の実施形態に係る闘技用模擬武具の分解斜視図である。
【図3】図1の実施形態に係る闘技用模擬武具断面図であり、(A)は伸張時、(B)は縮長時を示す。
【図4】本発明の別の実施形態に係る闘技用模擬武具の斜視図である。
【図5】本発明の別の実施形態に係る闘技用模擬武具の分解斜視図である。
【図6】図5の実施形態に係る闘技用模擬武具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0019】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る闘技用模擬武具10は、柄11と、柄11に固着されたパイプ12と、パイプ12内に摺動自在に装着された芯材14と、芯材の外周を被覆するスポンジパイプ15及びキャップ16と、芯材14をパイプ12から突出する方向に付勢する弾性部材としてのコイルスプリング17とを備えている。このうち芯材14のスポンジパイプ15で被覆された部位が本実施形態において、打突部20を構成している。
【0020】
闘技用模擬武具10は、護身術、逮捕術、古武道、格闘技等の稽古や試合に使用されることを想定した模擬的な武具であり、特に、逮捕術に好適なデザインに設定されている。本実施形態では、警棒を模したものであり、全長は、警棒の現在の規格に沿って、長さ600mm以下(例えば、350mm)に設定されている。
【0021】
柄11は、熱可塑性樹脂であり、一端部が閉じた中空体である。柄11の外周には、複数の周溝11aが形成されており、この周溝11aと、表面の仕上げ粗さとによって、滑り止めが図られている。柄11の具体例としては、全長130mm、外径29mm、内径13mm、底部の厚み7mmであることが好ましい。
【0022】
パイプ12は、本実施形態において、スリーブを構成する熱可塑性樹脂成型品である。図示の実施形態では、ボンドなどの接着剤でパイプ12が有底の柄11内に固着され、有底のスリーブを構成している。スリーブとしてのパイプ12の先端は、僅かに柄11から突出している。かかる突出部位は、後述するスポンジパイプ15の固定に利用される。しかし、この構成は、あくまで一例であり、パイプ12に直接スポンジパイプ15が固定される必要はない。パイプ12の具体例としては、全長165mm、外径13mm、内径10.5mmであることが好適である。
【0023】
芯材14は、パイプ12の内周に基端部が摺動自在に嵌装(装着)されている中実の熱可塑性樹脂製棒である。芯材14は、闘技の稽古や試合に好適な硬さと可撓性とを具備しており、これによって、打突による耐久性と安全性とを確保している。芯材14の具体例としては、全長175mm〜220mm、直径10mmであることが好適である。
【0024】
スポンジパイプ15は、芯材14を被覆する中空部材であり、径方向及び軸方向に高い可撓性を有する多孔質樹脂成形品である。スポンジパイプ15の具体例としては、例えば、自由状態における全長が170mm、外径が20mm、内径が10mmであることが好適である。また、用途や材質に応じて、外径を例えば、25mm程度に厚く設定してもよい。その場合、キャップ16を挿入するために、先端のみ20mmに細くした二段形状に構成してもよい。図示の実施形態において、スポンジパイプ15の基端側(柄11側)部分には、パイプ12が圧入されており、好ましくは、接着剤で固定される。
【0025】
キャップ16は、スポンジパイプ15の先端部に固着された樹脂成型品である。キャップ16の具体例としては、全長が26mm、内径が18.5mmであり、好ましくは、先端側から基端側にかけて細くなるテーパ形状に形成される。キャップ16の端壁(芯材14の先端面と対向する部位)は、当該芯材14の軸方向の衝撃に充分耐え得るような厚さに設定される。また、キャップ16の先端壁を基端側に比べて大径にすることにより、受圧面を拡げて過度な衝撃を避けるようにしている。
【0026】
本実施形態においては、スポンジパイプ15及びキャップ16が芯材14の柄11に対する相対的な変位を許容した状態で芯材14を柄11と一体的に連結するとともに、打撃による衝撃を吸収するように芯材14を被覆する弾性外装材を構成している。
【0027】
コイルスプリング17は、芯材14と柄11の底部(従って、有底スリーブの底部)との間に介装された弾性部材の一例である。コイルスプリング17の具体例としては、例えば、自由状態における全長が110mm、外径が9mm、線径が0.8mmの金属製品であることが好適である。しかし、コイルスプリング17は、これに限らず、空気、弾性樹脂等、パイプ12と芯材14との軸方向の相対変位を許容し、且つ芯材14が柄側に変位する際、その押し込み荷重を吸収するのに充分な付勢力を有する弾性体であればよい。
【0028】
上述した構成では、図1及び図3(A)に示す自由状態においては、コイルスプリング17が芯材14をパイプ12から突出する方向に付勢している結果、スポンジパイプ15とキャップ16とで構成される弾性外装材が許容する範囲内において、芯材14は、パイプ12から突出した状態になっている。
【0029】
闘技の稽古や試合に際し、使用者は、闘技用模擬武具10の柄11を片手で把持し、相手を打突する。相手側が打突部20で打撃されても、スポンジパイプ15が衝撃を吸収し、さらに芯材14が撓むことによって、過度なダメージを相手に与えることはない。この結果、竹刀と同等、或いは、それ以上の耐久性と安全性とを確保することができる。
【0030】
さらに、使用者が闘技用模擬武具10で突き技を用いても、打突時の軸方向の衝撃がコイルスプリング17並びにスポンジパイプ15の圧縮変形によって吸収され、相手に過度なダメージを与えるおそれがなくなる。図示の例では、図3(B)に示すように、衝撃吸収可能な変位量Lを例えば、打突部20の1/3程度に設定している。従って、竹刀では、得られない安全性を確保することができる。
【0031】
上述した実施の形態は、本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【0032】
例えば、図4に示すように、柄11に芯材14の基端部分を固着し、芯材14の外周をスポンジパイプ15とキャップ16で被覆しただけのものであってもよい。
【0033】
或いは、図5及び図6に示す袋30を闘技用模擬武具10に採用してもよい。
【0034】
各図に示す袋30は、有底筒状に縫製した本体31と、本体31の開口部分に形成される環状の帯通し部32と、帯通し部32に通された帯33とを有している。
【0035】
本体31は、例えば、牛革、ビニール等の素材で形成されたものであり、闘技用模擬武具10が自由状態にあるときの打突部20全長と柄11の一部を被覆する長さに設定されている有底筒状に形成されている。
【0036】
帯通し部32は、本体31の開口部にわたって形成されたC字形の環状体であり、内部に帯33を通す空間を本体の周方向に形成している。帯通し部32は、本体31を縫製する際、その一部に切り込み32aを入れ、折り返して縫い合わせることにより一体形成されることが好ましい。
【0037】
帯33は、本体31と同様な皮革、またはビニール製のものであり、帯通し部32の切り込み32aからその両端部を突出させている。帯33は、袋30の締付部材の一例であり、紐であってもよい。組付時において、帯33は、適切に結ばれ、その余長部分は、図6に示したように本体31の内部に収容される。
【0038】
袋30を採用した場合には、スポンジパイプ15とキャップ16との分離が一層確実に阻止される。また、本体31が打突時の緩衝部材として機能し、打撃を受けた相手に過度な衝撃を与えるおそれがなくなる。
【0039】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
10 闘技用模擬武具
11 柄
12 パイプ(スリーブの一例)
14 芯材
15 スポンジパイプ(弾性外装材の要部)
16 キャップ(弾性外装材の要部)
17 コイルスプリング(弾性部材の一例)
20 打突部
30 袋
31 本体
32 帯通し部
33 帯(締付部材の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片手で把持される柄と、前記柄の一端部に連続する打突部とを一体に有する闘技用模擬武具であって、
前記打突部は、
前記柄に設けられた有底のスリーブに基端側が摺動自在に装着されるとともに、所要の剛性と可撓性とを具備する芯材と、
前記芯材の前記柄に対する相対的な変位を許容した状態で前記芯材を前記柄と一体的に連結するとともに、打撃による衝撃を吸収するように前記芯材を被覆する弾性外装材と、
前記芯材をスリーブから突出する方向に付勢する弾性部材と
を備えていることを特徴とする闘技用模擬武具。
【請求項2】
請求項1記載の闘技用模擬武具において、
前記弾性部材は、前記スリーブの底と前記芯材との間に介装される弾性体である
ことを特徴とする闘技用模擬武具。
【請求項3】
請求項2記載の闘技用模擬武具において、
前記弾性体は、コイルスプリングである
ことを特徴とする闘技用模擬武具。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の闘技用模擬武具において、
前記柄は、前記スリーブとしての樹脂製のパイプの底を構成する樹脂製品である
ことを特徴とする闘技用模擬武具。
【請求項5】
片手で把持される柄と、前記柄の一端部に連続する打突部とを一体に有する闘技用模擬武具であって、
前記打突部は、所要の剛性と可撓性とを具備する芯材と、
前記芯材を前記柄と一体的に連結するとともに、打撃による衝撃を吸収するように前記芯材を被覆する弾性外装材と
を備えていることを特徴とする闘技用模擬武具。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の闘技用模擬武具において、
前記芯材は、熱可塑性樹脂である
ことを特徴とする闘技用模擬武具。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の闘技用模擬武具において、
前記弾性外装材は、前記芯材を全周にわたって被覆するスリーブ状のスポンジパイプと、前記スポンジパイプの先端部に固着されるゴム製のキャップとを備えている
ことを特徴とする闘技用模擬武具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−259768(P2010−259768A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163336(P2009−163336)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(390029274)早川繊維工業株式会社 (4)