説明

防カビ剤及びその製造方法

【課題】本発明は、暗所においても顕著に優れた防かび効果を発揮できる防カビ剤を提供することを主な目的とする。
【解決手段】ケイ酸チタニウム系化合物を有効成分とする防カビ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防カビ剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の気候条件はカビの発育に適しているため、日本には古くから清酒、味噌、醤油などの製造において、カビの生理機能を利用してきた歴史が存在する。しかし、その一方で、カビによる食品汚染が問題になっている。加えて、輸入食品が増加するにつれて、アフラトキシンをはじめとする、カビが産生する毒素であるカビ毒の問題が、最近注目されている。
【0003】
一方、従来、アルコール系、フェノール系、ハロゲン系、イソチアゾロン系、イミタゾール系などの有機系の物質によって、カビの発生を防止乃至抑制できることが知られている。しかしながら、これらの有機系物質は即効性に優れているものの、持続性が乏しいという問題がある。
【0004】
また、銀、銅、亜鉛などの金属を、ゼオライト、ガラス、シリカゲル、酸化チタン等に結合させた無機系組成物によって、カビの発生を防止乃至抑制できることが知られている。これらの無機系組成物は、金属イオンが溶出することにより防カビ作用が発揮されることから、その持続性は前記有機系物質と比較して優れているものの、即効性に乏しく、また、これらを樹脂等と混合した際には、該樹脂を変色させる等の問題がある。
【0005】
また、酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物の光触媒作用を利用して、カビの発生を防止乃至抑制できることが知られている(特許文献1〜3)。しかしながら、これらは紫外線等の光を照射することによりその効果が発揮されるものであることから、暗所においては、その効果が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−226207
【特許文献2】特開2001−303272
【特許文献3】特開2003−026526
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、暗所においても顕著に優れた防かび効果を発揮できる防カビ剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、ケイ酸チタニウム系化合物とカビとを接触させた場合、暗所においてもカビの生育が効果的に抑制されることを見出した。
【0009】
本発明は上記知見に基づきさらに検討を重ねた結果完成されたものであり、下記に掲げるものである。
項1. ケイ酸チタニウム系化合物を有効成分とする防カビ剤。
項2. カビがアスペルギルス属に属するものである、項1に記載の防カビ剤。
項3. ケイ酸チタニウム系化合物を有効成分とする防カビ剤を対象物に適用することを特徴とする、防カビ方法。
項4. カビがアスペルギルス属に属するものである、項3に記載の防カビ方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のケイ酸チタニウム系化合物は、光を照射しない場合であっても、防かび効果を発揮できる。このため、本発明によれば、暗所であっても、カビの生育を顕著に抑制乃至防止でき、または適用対象からカビを除去することができる。また、本発明によれば、カビの生育を素早く抑制乃至防止でき、従って、即効性に優れた防かび剤を提供できる。また、本発明によれば、カビの生育を長期間に亘って抑制乃至防止でき、従って持続性に優れた防かび剤を提供できる。また、本発明によれば、カビの生育の抑制乃至防止が求められる対象物に直接塗布、噴霧等することによりケイ酸チタニウム系化合物を付着させることができ、従って、取り扱いも非常に簡便である。また、本発明によれば、対象物に、ケイ酸チタニウム系化合物を付着させることに起因する変色、腐食等の劣化をもたらすこともない。このため、本発明の防かび剤は、家庭用品、玩具、日用品、布、革、紙、建築資材等のあらゆる非ヒト対象物に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はアスペルギルス ブラブスに対するケイ酸チタニウム系化合物の防カビ効果(写真)を示す。
【図2】図2はアスペルギルス ブラブスに対するケイ酸チタニウム系化合物の防カビ効果(グラフ)を示す。
【図3】図3はアスペルギルス ニゲルに対するケイ酸チタニウム系化合物の防カビ効果(写真)を示す。
【図4】図4はアスペルギルス ニゲルに対するケイ酸チタニウム系化合物の防カビ効果(グラフ)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の防カビ剤は、ケイ酸チタニウム系化合物を有効成分とする。
ケイ酸チタニウム系化合物
本発明において使用されるケイ酸チタニウム系化合物は、ケイ酸供給源、チタニウム供給源、水及びアルコールを混合することにより製造される。
【0013】
ケイ酸供給源は、前記ケイ酸チタニウム系化合物におけるケイ酸を供給できる限り制限されないがケイ酸塩、ケイ酸が例示される。
【0014】
ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸マンガンが例示され、好ましくはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウムが挙げられる。
【0015】
ケイ酸としては、オルトケイ酸、メタケイ酸、メタ二ケイ酸が例示され、好ましくはオルトケイ酸が挙げられる。
【0016】
チタニウム供給源は、前記ケイ酸チタニウム系化合物におけるチタニウムを供給できる限り制限されないが、四塩化チタン、ジイソプロボキシ・ビス(トリエタノールアミネート)チタン、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラノルマル(n)ブドキシド、二酸化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸リチウム、チタンテトライソプロポキシド、硫酸チタンが例示され、好ましくは四塩化チタン、ジイソプロボキシ・ビス(トリエタノールアミネート)チタン、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラノルマル(n)ブドキシド、二酸化チタンが挙げられる。
【0017】
アルコールとしては、特に限定されないが、炭素数1〜6の低級アルコールが例示される。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリンなどが例示される。アルコールとして、好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールであり、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコールである。また、アルコールとして、市販品であるソルミックス(登録商標)AP−7(日本アルコール販売株式会社)等を使用することもできる。
【0018】
前述するように、本発明において使用されるケイ酸チタニウム系化合物は、ケイ酸供給源、チタニウム供給源、水及びアルコールを混合することにより製造される。
【0019】
これらの配合割合は、これらを混合することにより得られる混合溶液中、重量比で、該混合溶液100部あたり、ケイ酸供給源は0.001〜40重量部、好ましくは0.001〜30重量部であり、チタニウム供給源は0.01〜50重量部、好ましくは0.01〜40重量部であり、水は5〜90重量部、好ましくは10〜80重量部であり、アルコールは5〜90重量部、好ましくは10〜70重量部である。
【0020】
また、これらの混合溶液中、重量比で、ケイ酸供給源1重量部に対して、チタニウム供給源は0.1〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部、水は0.5〜100重量部、好ましくは1.5〜80重量部であり、アルコールは1〜120重量部、好ましくは2〜110重量部である。
【0021】
これらの混合は、通常、室温(13〜28℃)で行えばよい。
【0022】
ケイ酸供給源、チタニウム供給源、水及びアルコールの混合手順は特に制限されないが、例として以下の混合手順1及び2が挙げられる。
−混合手順1
まず、以下の基本溶液を調製する。
【0023】
基本溶液a:アルコールにチタンアセチルアセトネートを添加することにより、基本溶液aを調製する。
【0024】
基本溶液b:アルコールにチタンテトラノルマル(n)ブドキシドを添加することにより、基本溶液bを調製する。
【0025】
基本溶液c:精製水とアルコールを混合した後、四塩化チタンを添加することにより、基本溶液cを調製する。
【0026】
基本溶液d:精製水に、ケイ酸3号ソーダを添加することにより、基本溶液dを調製する。
【0027】
基本溶液e:精製水にケイ酸3号ソーダを添加することにより、基本溶液eを調製する。
【0028】
基本溶液f:精製水に基本溶液cを添加し、次いで前記基本溶液dを添加することにより、基本溶液fを調製する。
【0029】
基本溶液g:アルコールに基本溶液cを添加し、次いで前記基本溶液bを添加し、次いで前記基本溶液cを添加することにより、基本溶液gを調製する。
【0030】
基本溶液h:アルコール、前記基本溶液a、基本溶液g、及び基本溶液cを混合し、前記基本溶液fに、この混合溶液を添加して、次いで前記基本溶液cを添加することにより、基本溶液hを調製する。
【0031】
基本溶液i:前記基本溶液a、基本溶液b、及び基本溶液cを混合し、アルコールに、この混合溶液を添加することにより、基本溶液iを調製する。
【0032】
基本溶液j:アルコールに前記基本溶液hを添加し、次いで前記基本溶液fを添加することにより、基本溶液jを調製する。
【0033】
このようにして得られた基本溶液を次のように混合することにより、ケイ酸チタニウム系化合物が得られる。すなわち、前記基本溶液jに精製水を添加し、得られた混合液に基本溶液iを添加し、得られた混合溶液にアルコールを添加し、該溶液のpHを、前記基本溶液c、及び基本溶液dあるいはeを用いて調整する。
−混合手順2
前述と同様にして、基本溶液a、b、c、d、e、f、g、h及びjを調製する。また、以下のようにして、基本溶液kを得る。
【0034】
基本溶液k:アルコールに前記基本溶液aを添加し、次いで前記基本溶液gを添加し、得られた混合溶液に、前記基本溶液cを添加し、次いで前記基本溶液fを添加し、この混合溶液に、精製水及びアルコールの混合液を添加し、更に前記基本溶液eを添加することにより、基本溶液kを調製する。
【0035】
このようにして得られた基本溶液を次のように混合することにより、ケイ酸チタニウム系化合物が得られる。すなわち、前記基本溶液kに、前記基本溶液jを添加し、次いで、精製水を添加し、得られた混合溶液に、アルコールを添加し、該溶液のpHを前記基本溶液c、及び基本溶液dあるいはeを用いて調整する。
【0036】
より好ましい防カビ効果が発揮される点から、ケイ酸供給源、チタニウム供給源、水及びアルコールの混合手順として、前記混合手順1及び2が好ましく例示される。
防カビ剤中のケイ酸チタニウム系化合物の配合量
本発明の防カビ剤におけるケイ酸チタニウム系化合物の配合量は、防カビ剤100重量部に対して12.5〜100重量部であり、好ましくは25〜100重量部であり、更に好ましくは50〜100重量部である。
防カビ剤におけるその他の成分
本発明の防カビ剤には、前記ケイ酸チタニウム系化合物の防カビ効果を妨げない範囲で、用途に応じて通常防カビ剤に使用される任意の添加剤が配合されてもよい。このような添加剤としては、希釈剤、分散剤、着色剤、香料、酸化防止剤、増粘剤等が例示される。
カビ
本発明において対象とするカビは制限されない。カビとして、アスペルギルス(Aspergillus)属、ユーロチウム(Eurotium)属、ペニシリウム(Penicillium)属、フザリウム(Fusarium)属、クラドスポリウム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor)属、ワレミア(Wallemia)属、アルタナリア(Alternaria)属、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属、マラセチア(Malassezia)属、クリプトコックス(Cryptococcus)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ケトミウム(Chaetomium)属、トリコフィトン(Trichophyton)属、セドスポリウム(Scedosporium)属、ミクロスポルム(Microsporum)属、などが例示される。
【0037】
例えば、アスペルギルス属に属するカビとして、アスペルギルス フラブス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス ニゲル(Aspergillus niger)、アスペルギルス・バージカラー(Aspergillus versicolor)などが例示される。これらはコウジカビとも呼ばれ、自然界において最も普通に見られるカビの一種である。アスペウギルス フラバスは発ガン性のカビ毒を産生する。これはパン、ケーキ類、紅茶などに発生する他、ピーナッツを初めとするナッツ類、トウモロコシ、種々の穀類、穀粉類などの食品、ほこり、土壌など広く環境中に分布している。
【0038】
ユーロチウム属に属するカビとして、ユーロチウム ルブラム(Eurotium rubrum)、ユーロチウム アムステロダミ(Eurotium amstelodami)、ユーロチウム チェバリエリ(Eurotium chevalieri)などが例示される。これらは、やや乾燥した環境を好むカビ(好乾菌)で、和・洋菓子類、魚介類乾燥品、ジャム、佃煮などの糖あるいは塩濃度の高い食品や、乾燥食品などにしばしば発生する。これらは、食品のカビ発生苦情の原因菌として有名な菌である。これらは、食品以外にもカメラのレンズ、フィルム、精密機器基盤などに発生する事がある。)
ペニシリウム属に属するカビとして、ペニシリウム シトリナム(Penicillium citrinum)、ペニシリウム イスランジカム(Penicillium islandicum)、ペニシリウム ビリディカータム(Penicillium viridicatum)、ペニシリウム ノタトウム(Penicillium notaum)などが例示される。これらは、アスペルギルスと並び、わが国の食品から頻繁に検出される菌で、アオカビとも呼ばれる。これらには、黄変米の原因菌として知られるペニシリウム シトリナム(Penicillium citrinum)、ペニシリウム イスランジカム(Penicillium islandicum)のほか、オクラトキシンやペニシリン酸を産生するペニシリウム ベロッコサム(Penicillium verrucosum)などのカビ毒産生菌も含まれる。これらは、もち、柑橘類、リンゴ、魚肉練り製品、清涼飲料水、サラミソーセージ、乳製品などにしばしば発生するほか、穀類、穀粉類などの食品、ほこり、土壌など広く環境中に分布している。
【0039】
フザリウム属に属するカビとして、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム オキシスポラム(Fusariumu oxysporum)、フザリウム グラミネアラム(Fusariumu graminearum)などが例示される。これらは、麦をはじめ多数の植物に寄生する植物病原菌で、この菌の感染した麦を食べることにより、過去多くのアカカビ中毒が発生している。これらは、土壌、麦などの植物、汚水などに分布し、一部の菌種はトリコテセン毒素という刺激性の強いカビ毒を産生する。
【0040】
クラドスポリウム属に属するカビとして、クラドスポリウム ククメリヌム(Cldosporium cucumerinum)、クラドスポリウム トリコイデス(Cladosporium tricoides)、クラドポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)などが例示される。これらは、風呂場の壁でみかける黒いカビで俗にクロカビと呼ばれ、ケーキ、野菜など、様々な食品や衣類にも生え、空気中に浮遊するカビの中でもっとも多いのがこの菌で、喘息などのアレルゲンとしても問題にされている。
【0041】
ムコール属に属するカビとして、ムコール ミエヒー(Mucor miehei)、ムコール ジャバニカス(Mucor javanicus)、ムコール ムセド(Mucor musedo)などが例示される。これらは、ケカビと呼ばれ、発育が速く、食品上でも短時間で大きなコロニーを形成する。土壌、果実、野菜、でんぷん、腐敗物等に広く分布し、長期間低温に保存した食品、生鮮野菜・果実などにもしばしば発生する。
【0042】
ワレミア属に属するカビとして、ワレミア セビ(Wallemia sebi)などが例示される。これらは、好乾菌で、チョコレート、カステラ、羊羹、干し柿などの糖度が高い食品に発生する事が多い。これらは、ほこり、じゅうたん、畳表などからも多数検出され、直径2〜3mm程度の小さなチョコレート色のコロニーを形成する。
【0043】
アルタナリア属に属するカビとして、アルタナリア ステビアエ(Alternaria steviae)、アルタナリア アルタナータ(Alternaria alternata)などが例示される。これらは、ススカビとも呼ばれ、なし、柑橘類、リンゴなどの腐敗の原因となるほか、ゆでうどんなどの水分の多い食品に発生する。これらは、灰色から黒色のやや綿毛状のコロニーを形成する。これらは、土壌、空中、ほこり、植物、穀類などに分布し、植物病原菌、アレルゲンとしても重要視されている。
【0044】
オーレオバシディウム属に属するカビとして、オーレオバシディウム プルランス(Aureobasidium pullulans)が例示される。これらは、発育初期には白色の集落を形成し、次第に黒色の湿潤したコロニーを形成する。これらは、醤油、及び清涼飲料水製造工場やその周辺の環境中から頻繁に検出され、清涼飲料水、ところてん、ゼリーなどの食品や工場の壁面などでも発生が見られる。
【0045】
ピキア(Pichia)属に属するカビとして、ピキア アノマーラ(Pichia anomala)、ピキア サブペリキュローサ(Pichia subpelliculosa)などが例示される。これらは、代表的な産膜酵母で、ケーキ、パン、いなり寿司などの食品で増殖すると酢酸エチルを産生し、シンナー臭を発生させる。漬物、ジュース類やシロップなどからも検出される。
【0046】
カンジダ属に属するカビとして、カンジダ アアセリ(Candida aaseri)、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ ギリエルモンジイ(Candida guilliermondii)などが例示される。これらは、ヒトのカンジダ症を引き起こす病原体である。これらは、元来はヒトの体表や消化管、それに女性の膣粘膜に普通に生息するもので、多くの場合は特に何の影響も与えない。しかし、これらは、体調が悪いときなどに病変を起こすによりみ日和見感染の原因となる。
【0047】
マラセチア属に属するカビとして、マラセチア フルフル(Malassezia furfur)、マラセチア バキデルマチス(Malassezia pachydermatis)などが例示される。これらは、人や動物の皮膚に常在する酵母様真菌で、通常は何も病害を示さないが、何らかの要因により、過度に増殖すると、皮膚に傷害を引き起こす。これらは、動物では皮膚、耳道、肛門、肛門嚢、膣、口吻などに常在している。これらは、動物では皮膚、耳道、肛門、肛門嚢、膣、口吻などに人では脱色素斑や毛胞炎を発症し、動物では外耳炎や皮膚炎の発症や、脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を悪化させる。
【0048】
クリプトコックス属に属するカビとして、クリプトコックス ネオフォルマンス (Cryptococcus neoformans)、クリプトコックス アルビズス(Cryptococcus albidus)、クリプトコックス カストリクス(Cryptococcus gastrics)などが例示される。これらは、ハトの蓄積した糞の中で増殖したり、ハトの止まり木に付着したりしている。ハトの糞が乾いて舞い上がり、それが呼吸とともに、ヒトの肺の中にクリプトコックス菌が取り込まれ、感染し、クリプトコックス症と呼ばれる肺に軽い病巣をつくる。免疫不全の患者でごくまれに中枢神経に感染して髄膜炎や脳炎を起こす。
【0049】
トリコスポロン属に属するカビとして、トリコスポロン アステロイデス (Trichosporon asteroides)、トリコスポロン カビターツム(Trichosporon ovoides)、トリコスポロン アサヒ(Trichosporon asahii)、トリコスポロン ムコイド(Trichosporon mucoides)などが例示される。これらは、担子菌系酵母の1属であり自然界に広く分布し、ヒトの咽頭や皮膚からも、ときに分離される。これらは、白色砂毛症といわれる表在性真菌症の病因真菌とされ、わが国に多い夏型過敏性肺炎のアレルゲンとして知られている。好中球減少の患者では、予後不良な深在性真菌症の原因真菌となることもある。
【0050】
ロドトルラ属に属するカビとして、ロドトルラ ミヌタ(Rhodotorula minuta)、ロドトルラ ルブラ(Rhodotorula rubra)、ロドトルラ グルティニス(Rhodotorula glutinis)、ロドトルラ オウランティアカ(Rhodotorula aurantiaca)などがが例示される。これらは、赤やピンク、オレンジ、黄色などのコロニーを形成する。これらは、台所の排水口や洗面所の洗面台、浴室の床など水系環境を好みこれらをぬめらせる。
【0051】
ケトミウム属に属するカビとして、ケトミウム グロボスム(Chaetomiumglobosum)、ケトミウム クリバシウム、(Chaetomium clivaceum)などが例示される。これらは、小さな球形の子実体を作る子嚢菌で、土壌や糞などから広く発見されるが、セルロース分解能が高いため、紙や綿製品にも出現することがあり、紙の汚染源の代表的なもので、紙に染みを生じ、時に深刻な被害を与える。
【0052】
トリコフィトン属に属するカビとして、トリコフィトン トンズランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン シェーンライニイ(Trichophyton shoehleinii)、トリコフィトン アジェロイ(Trichophyton ajelloi)、トリコフィトン メンタグロファイテス(Trichophyton mentagrophytes)などが例示される。これらは、皮膚真菌症において白癬(水虫、タムシ等)の原因菌である。特にトリコフィトン・トンズランスは感染力が強く、世界中で患者数が急増している新型の水虫菌である。
【0053】
セドスポリウム属に属するカビとして、セドスポリウム アピオスペルムム(Scedosporium apiospermum)などが例示される。これらは、日和見病原性菌(好湿性菌)で、特に好中球減少患者においては当該菌種を含む様々な環境性糸状菌が,侵襲性アスペルギルス症に類似する巣状脈管炎病変を引き起こす可能性が示唆されている。
【0054】
ミクロスポルム属に属するカビとして、ミクロスポルム ガリネ(Microsporum gallinae)、ミクロスポルム フェルギネウム(Microsporum ferrugineum)などが例示される。これらは、皮膚真菌症と呼ばれる水虫などを起こす。普通のカビにとっては分解しにくいケラチン(髪の毛や爪などの成分)をよく分解する。
防カビ剤の形態、適用対象
本発明において防カビとは、カビの発生すなわちカビの生育や増殖を抑制すること、カビの生育や増殖を防止すること、または防カビ剤の適用箇所からカビを除去することを等をいう。
【0055】
本発明の防カビ剤は、前記ケイ酸チタニウム系化合物の防カビ効果を妨げない範囲で、用途に応じた形態にすることができ、例えば、液状、半固形、固形等のいずれであってもよい。
【0056】
本発明の防カビ剤の適法対象はヒト以外であれば制限されず、カビが生育または増殖する対象物、これらの恐れがある対象物に適用される。例えば、家庭用品、玩具、日用品、布、革、紙、建築資材、自動車や電車などの車両、船舶、工業用品、貯水槽、空調フィルター、農業用ビニールハウス等が挙げられる。
【0057】
本発明の防カビ剤の適用方法は、適用対象にケイ酸チタニウム系化合物を付着させることができる限り制限されない。例えば、防カビ剤の適用方法として、適用対象への防カビ剤の塗布、噴霧、浸漬等が挙げられる。また、防カビ剤の適用方法として、適用対象へ防カビ剤を塗布、噴霧、浸漬等した後、これを焼結等させることにより適用してもよい。また、防カビ剤の適用方法として、適用対象を構成する材料や素材にカビ剤を添加、練り込む等させることにより適用してもよい。
【0058】
適用量は特に限定されず、適宜選択すればよい。適用量として、例えば、本発明の防カビ剤が液状の場合、対象物1mmあたり、防カビ剤30〜50mlが例示される。また、本発明の防カビ剤が固形の場合、対象物1mmあたり、防カビ剤36〜60gが例示される。本発明の防カビ剤が液状及び固形以外の場合は、該適用量を参考にして、その適用量を決定すればよい。
【0059】
本発明の防カビ剤は、バインダー等を使用することなく、対象物に接着させることができることから、簡便である。また、本発明の防カビ剤は、その効果を迅速に発揮でき且つ長期間持続できるものであり、防かび効果の即効性、持続性及び安定性を兼ね備える。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各基本溶液の調製
本発明のケイ酸チタニウム系化合物を調製するにあたり、まず、以下の基本溶液a〜kを調製した。なお、以下の実施例に記載の反応は、全て室温(13〜28℃)で行った。また、基本溶液a〜hの調製の際は、混合は30分間隔で行い、pHチェックを行った。基本溶液i、j、及びkの調製の際は、素早く連続混合を行った。
【0061】
基本溶液a:イソプロピルアルコール(以下IPA)(和光純薬、特級)、またはエタノール(和光純薬、特級)1容量部に対して、チタンアセチルアセトネート(三菱ガス化学株式会社製、該商品100重量あたりチタンアセチルアセトネートは65重量部含まれる)1/10容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合することにより、基本溶液aを調製した。
【0062】
基本溶液b:IPA、またはエタノール1容量部に対して、チタンテトラノルマル(n)ブドキシド(三津和化学薬品株式会社製、該商品100重量あたりチタンテトラノルマル(n)ブドキシドは99重量部含まれる)3/20容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合することにより、基本溶液bを調製した。
【0063】
基本溶液c:精製水とIPA、またはエタノールを1:1容量部の割合で混合後、泡立てない程度のスピードで撹拌して、混合溶液を得た。この混合溶液を少し早く撹拌しながら、該混合溶液の水面近くで、混合溶液1容量部に対して、四塩化チタン溶液(原液)(シグマアルドリッチジャパン株式会社、該商品100重量あたり四塩化チタンは99.995重量部含まれる)1/20容量部を少量ずつ、穏やかに、かつ連続的に添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合することにより、基本溶液cを調製した。この際、反応副産物として塩素ガスが発生する恐れがあるため、反応はドラフト中で行い、操作中は反応液の飛散による怪我等を防止するために防毒マスク、保護メガネ、及び安全手袋を装着することが望まれた。また、混合溶液を調製する際は、反応溶液の温度上昇が考えられたので、冷却装置、あるいは氷中で冷やしながら行った。このように調製した基本溶液cは調製後、約1ヵ月間保存した後、その上清を以下のように用いた。
【0064】
基本溶液d:精製水1容量部に対して、ケイ酸3号ソーダ(大阪硅曹株式会社、該商品100重量あたりケイ酸3号ソーダはNaOとして9〜10重量部、SiOとして28〜30重量部、それぞれ含まれる)1/2容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合することにより、基本溶液dを調製した。
【0065】
基本溶液e:精製水1容量部に対して、ケイ酸3号ソーダ37/1000容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合することにより、基本溶液eを調製した。
【0066】
基本溶液f:精製水1容量部に対して、基本溶液c 1/20容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合した後、さらにこの混合溶液に対して、前記基本溶液dを添加しながら、溶液のpHが10になるように調整することにより(前記混合溶液 1容量部に対して、最終的に前記基本溶液d 1/15容量部を添加)、基本溶液fを調製した。
【0067】
基本溶液g:IPA 1容量部に対して、1/5容量部の基本溶液cを添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合した。この混合溶液に対して、前記基本溶液b 1/6容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合し、さらに、得られた溶液のpHを前記基本溶液cを用いて1に調整し、基本溶液gを調製した。
【0068】
基本溶液h:IPA、前記基本溶液a、基本溶液g、及び基本溶液cをそれぞれ1:1:1:1容量部の割合で混合した。前記基本溶液f 1容量部に対して、この混合溶液1/5容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合し、さらに、得られた溶液のpHを前記基本溶液cを用いて1に調整した。このようにして基本溶液hを調製した。
【0069】
基本溶液i:前記基本溶液a、基本溶液b、及び基本溶液cをそれぞれ1:1:1容量部の割合で混合した。IPA 1容量部に対して、この混合溶液3/10容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合することにより、基本溶液iを調製した。
【0070】
基本溶液j:IPA 1容量部に対して、前記基本溶液h 3/10容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合した後、この混合溶液 1容量部に対して、さらに前記基本溶液fを添加しながら、溶液のpHを4に調整することにより(前記混合溶液 1容量部に対して、最終的に前記基本溶液f 39/65容量部を添加)、基本溶液jを調製した。
【0071】
基本溶液k:IPA 1容量部に対して、前記基本溶液a 1/10容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合して、混合溶液k−1を得た。この混合溶液k−1 1容量部に対して、前記基本溶液g 1/22容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合して、混合溶液k−2を得た。この混合溶液k−2 1容量部に対して、前記基本溶液c 1/23容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合して、混合溶液k−3を得た。この混合溶液k−3 1容量部に対して、前記基本溶液f 5/6容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合して、混合溶液k−4を得た。この混合溶液k−4に対して、精製水で50%の濃度に調製したIPAを同量(V)添加して、良く撹拌・混合した後(ここで得られた混合溶液をk−5)、前記基本溶液eを添加しながら、溶液のpHを4に調整するこることにより(前記混合溶液k−5 1容量部に対して、最終的に前記基本溶液e 33/110容量部を添加)、基本溶液kを調製した。
実施例1:ケイ酸チタニウム系化合物1の調製
前述の通り得られた基本溶液を次のように混合することにより、ケイ酸チタニウム系化合物1を得た。すなわち、前記基本溶液j 1容量部に対して、精製水1/10容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合して、混合溶液1−1を得た。この混合溶液1−1 1容量部に対して、前記基本溶液i 1/5容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合して、混合溶液1−2を得た。この混合溶液1−2 1容量部に対して、IPA 3/10容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合することにより、混合溶液1−3を調製した。調製後2〜3日間静置した後、混合溶液1−3のpHを、前記基本溶液c、及び基本溶液dあるいはeを用いて3.0〜3.6に調整した。
実施例2:ケイ酸チタニウム系化合物2の調製
前述の通り得られた基本溶液を次のように混合することにより、ケイ酸チタニウム系化合物2を得た。すなわち、前記基本溶液k 1容量部に対して、前記基本溶液j 167/1000容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合して、混合溶液2−1を得た。この混合溶液2−1 1容量部に対して、精製水223/1167容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合して、混合溶液2−2を得た。この混合溶液2−2に対して、IPA 3/20容量部を添加して、泡立てない程度のスピードで良く撹拌・混合することにより、混合溶液2−3を調製した。調製後2〜3日間静置した後、混合溶液2−3のpHを前記基本溶液c、及び基本溶液dあるいはeを用いて4.0〜5.0に調整した。
実施例3:防カビ試験
本実施例では、2種類のケイ酸チタニウム系化合物の、アスペルギルスに対する防カビ効果を調べた。
1.ケイ酸チタニウム系化合物の調製
1−1.ケイ酸チタニウム系化合物1
前述の実施例1と同様にして、ケイ酸チタニウム系化合物1を調製した。調製したケイ酸チタニウム系化合物1の溶液を滅菌精製水で、×1(原液)、×1/2、×1/4、×1/8になるよう4段階に希釈し、サンプル液とした。
1−2.ケイ酸チタニウム系化合物2
前述の実施例2と同様にして、ケイ酸チタニウム系化合物2を調製した。調製したケイ酸チタニウム系化合物2の溶液を滅菌精製水で、×1(原液)、×1/2、×1/4、×1/8になるよう4段階に希釈し、サンプル液とした。
2.アスペルギルス含有溶液の調製
本実施例では、2種類のアスペルギルス、すなわちアスペルギルス フラブス(Aspergillus flavus)及びアスペルギルス ニゲル(Aspergillus niger)を使用した。
【0072】
2種類のアスペルギルスをそれぞれ、ポテトデキストロース平板培地(栄研化学株式会社 E-MF21)に接種し、室温(25℃)にて一週間培養した。
【0073】
滅菌済みの0.01% Tween80 PBS溶液5mlを、前記培養後の培地に着生した胞子に直接注入し、静かにゆっくりとピペッティング操作を繰り返した。これを、胞子懸濁液とした。
【0074】
該胞子懸濁液に菌糸が含まれている場合は、更に該胞子懸濁液を滅菌済の試験管に移し、ピペッティング操作を繰り返し、更に滅菌済みの0.01% Tween80 PBS溶液2mlを加えて希釈した。次いで、この胞子懸濁液を、滅菌ガーゼが敷かれた滅菌漏斗を用いてろ過し、菌糸を除去した。
【0075】
その後、ヘモサイトメーター(血球計算盤)(富士理化工業株式会社)を用いて、得られた胞子懸濁液中の胞子及び菌糸を観察し、胞子懸濁液に胞子のみが含まれる場合は、その胞子数を数え、菌糸中の胞子が1〜2×10個/mlとなるように、滅菌済の0.01% Tween80 PBS溶液で希釈して、アスペルギルス含有溶液を調製した。菌糸が含まれている場合には、再度ろ過を行い、同様にしてアスペルギルス含有溶液を調製した。
3.ケイ酸チタニウム系化合物とアスペルギルスの接触
前述の12種のサンプル液それぞれに、調製したアスペルギルス含有溶液(1〜2×10個)を添加し、よく混合し、室温で2時間培養させた。培養後、それぞれの混合液に、×1(原液)、×1/2、×1/4になるよう滅菌精製水で希釈した。得られた希釈混合液100μlをポテトデキストロース平板培地に接種し、暗所(25℃、暗所)、室温にて一週間培養した。
【0076】
なお、ポジティブコントロールとして、75%エタノールを使用した。具体的には、75%エタノールを×1(原液)、×1/2、×1/4、×1/8になるよう4段階に希釈し、これを、前記サンプル液を用いた場合と同様にして、アスペルギル含有溶液と接触させ、ポテトデキストロース平板培地で培養した。
【0077】
また、ネガティブコントロールとして、滅菌精製水を使用した。具体的には、滅菌精製水を、前記サンプル液を用いた場合と同様にして、アスペルギル含有溶液と接触させ、ポテトデキストロース平板培地で培養した。
4.結果
結果を図1〜図4に示す。
【0078】
図1及び2はアスペルギルス フラブスに関する結果、図3及び4はアスペルギルス ニゲルに関する結果を示す。
【0079】
図1中、Aは75%エタノールの結果、Bはケイ酸チタニウム系化合物1の結果、Cはケイ酸チタニウム系化合物2の結果、Dは精製水の結果を示す。また、A〜C中、左上、右上、左下、右下の順で、75%エタノールまたはサンプル液の×1(原液)、×1/2、×1/4、×1/8の結果を示す。ネガティブコントロールにおいて、1×10cfu/mlである。
【0080】
また、図2は、前記図1の結果をグラフ化したものである。左から75%エタノールの結果、ケイ酸チタニウム系化合物1の結果、ケイ酸チタニウム系化合物2の結果を示し、また、それぞれにおいて左から×1(原液)、×1/2、×1/4、×1/8、ネガティブコントロールの結果を示す。
【0081】
また、グラフ中の縦軸はカビの胞子の生存数を示す。これらの値は、それぞれの希釈倍率で希釈されたケイ酸チタニウム系化合物とアスペルギルスとの混合液を、ポテトデキストロース平板培地で一週間培養した後に、各平板培地において形成されたコロニー数をカウントした結果である。なお、平板一枚当たり0〜100個のコロニーが形成された培地におけるコロニー数をカウントした。また、コロニー数がゼロの場合は、<1×10とカウントした。
【0082】
図1及び図2の結果から明らかなように、いずれのケイ酸チタニウム系化合物でも、優れた防カビ効果が得られていることが分かる。
【0083】
特に、ケイ酸チタニウム系化合物1では、×1(原液)及び×1/2のサンプル液において、75%エタノールと同等の優れた効果が得られた。また、ケイ酸チタニウム系化合物2でも、×1(原液)のサンプル液において、75%エタノールと同等の優れた効果が得られ、×1/2のサンプル液においても、アスペルギルスの増殖を有意に抑制できたことが分かる。
【0084】
また、図3中、Eは75%エタノールの結果、Fはケイ酸チタニウム系化合物1の結果、Gはケイ酸チタニウム系化合物2の結果、Hは精製水の結果を示す。また、E〜G中、左上、右上、左下、右下の順で、75%エタノールまたはサンプル液の×1(原液)、×1/2、×1/4、×1/8の結果を示す。ネガティブコントロールにおいて、1×10cfu/mlである。
【0085】
また、図4は、前記図3の結果をグラフ化したものである。左から75%エタノールの結果、ケイ酸チタニウム系化合物1の結果、ケイ酸チタニウム系化合物2の結果を示し、また、それぞれにおいて左から×1(原液)、×1/2、×1/4、×1/8、ネガティブコントロールの結果を示す。
【0086】
図3及び図4の結果から明らかなように、いずれのケイ酸チタニウム系化合物でも、優れた防カビ効果が得られていることが分かる。
【0087】
特に、ケイ酸チタニウム系化合物1では、×1(原液)及び×1/2のサンプル液において、アスペルギルスの増殖を顕著に抑制できたことが分かる。また、ケイ酸チタニウム系化合物2でも、×1(原液)のサンプル液において、アスペルギルスの増殖を顕著に抑制できており、また、×1/2のサンプル液においても、アスペルギルスの増殖を有意に抑制できたことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸チタニウム系化合物を有効成分とする防カビ剤。
【請求項2】
カビがアスペルギルス属に属するものである、請求項1に記載の防カビ剤。
【請求項3】
ケイ酸チタニウム系化合物を有効成分とする防カビ剤を対象物に適用することを特徴とする、防カビ方法。
【請求項4】
カビがアスペルギルス属に属するものである、請求項3に記載の防カビ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149023(P2012−149023A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10667(P2011−10667)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(511019476)株式会社アドテック (1)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】