説明

防カビ剤

【課題】ペイント、シーリング材などの表面に塗布または散布するだけで、内部まで浸透し、カビの菌糸まで発育を阻害することができ、毒ガスを発生することもなく、安全で廉価な塗布型防カビ剤を提供する。
【解決手段】有機系防腐剤が1から10重量部と、有機系防腐剤を常温で溶解することが可能であり、シーリング材、またはポリマーに浸透性がある溶媒からなる塗布型防カビ剤であり、好ましくはその溶媒がリモネン、シトラールなどのテルペン類で、さらに好ましくは前記防カビ剤が乳化物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプレーまたは塗布防カビ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌、防カビ性シーリング材として銀をリン酸カルシウムに担持する提案が特許文献1に記載されている。しかし、このような形の有効成分銀は抗菌性、防カビ性の発育阻止濃度が有機系防腐剤と比較して桁違いに大きく、実用的な防カビ性に不足する。
【0003】
しかし、カビは菌糸がシーリング材の内部まで発育するため、効果の優れた有機系防腐剤、例えばパラベン類、フェノキシエタノール、ピリチオン亜鉛塩などを高濃度で塗布しても、シーリング材表面のカビの発育を阻止することができるだけで、シーリング材内部まで発育したカビを除去することができず、完全な防カビ効果は得られなかった。
【0004】
ピリチオン亜鉛塩と他の有機系防腐剤をシーリング材に予め配合した提案が特許文献2に記載されているが、カビの生えるのは部分的であり、全面に使用することは経済的に不利であり、一般的で廉価なシーリング材で施工した後、必要な部分のみ防カビ処理することが経済的に有利である。また特許文献3にも有機系防腐剤をシーリング材に予め配合した提案がなされているが、その実施例防腐剤含有量はシーリング材100重量部に対して1重量部と多く、表面になるほど防腐剤濃度が大きくなるような経済的な配慮を実現することは不可能である。。
【0005】
特許文献4に記載されているような一般的に市販されている家庭用防カビ剤は漂白剤を兼ねた次亜塩素酸系防カビ剤であり、使用時に酸と触れると毒性の強い塩素ガスが発生し、危険であり、異臭も強く作業環境が悪くマスクとゴム手袋の使用を勧められている。また、作業後も異臭が残り、不快である。
【0006】
【特許文献1】特開平6−200238号公報
【特許文献2】特開平6−227912号公報
【特許文献3】特開2002−53753号公報
【特許文献4】特開2001−311094号公報
【発明の開示】
【発明の効果】
【0007】
本発明の防カビ剤は有機系防腐剤を有効成分として使用し、ペイント、シーリング材などに浸透しやすい溶媒を使用するため、ペイント、シーリング材などの表面に塗布または散布するだけで、内部まで浸透し、カビの菌糸まで発育を阻害することができる。また、表面から浸透させるため、有効成分は表面から濃度勾配ができた状態になり、有効成分の効率的な活用が図れると同時に、長期間のカビ効果を発揮することができる。また、有効成分および防腐剤は酸またはアルカリによって、有毒ガスを発生することもないものを選定でき、溶媒にリモネンを使用するとオレンジの香りが、シトラールを使用するとレモンの香りがし、快適である。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的はペイント、シーリング材などの表面に塗布または散布するだけで、内部まで浸透し、カビの菌糸まで発育を阻害することができ、毒ガスを発生することもなく、安全で廉価な防カビ剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の防カビ剤は有機系防腐剤が5から40重量部と、有機系防腐剤を常温で溶解することが可能であり、シーリング材、またはポリマーに浸透性がある溶媒からなる防カビ剤であり、好ましくはその溶媒がリモネン、シトラールなどのテルペン類で、さらに好ましくは前記防カビ剤が乳化物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の塗布型防カビ剤は有機系防腐剤が5から40重量部と、有機系防腐剤を常温で溶解することが可能であり、シーリング材、またはポリマーに浸透性がある溶媒からなる防カビ剤であり、好ましくはその溶媒がテルペン類を50容量%以上からなり、さらに好ましくはテルペン類が3-Carene、citral、p-Cymene、beta-Farmesene、d-Limonene、p-Menthane、beta-Myrcene、alpha-Pinene、beta-Pinene、alpha-Terpinene、gamma-Terpinene、Terpineoleneの少なくとも1種であるテルペン類で、より好ましくは前記防カビ剤が乳化物である。
より経済的に好ましくは有機系防腐剤が10重量部以上であり、さらに好ましくは20重量部以上である。
【0011】
本発明に使用する有機系防腐剤としては、防腐効果の優れた例えば安息香酸およびその塩類、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸およびその塩類、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、o-フェニルフェノールおよびそのNa塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール、クロラミンT、クロルキシレノール、クロルフェネシン、クロルヘキシジン、1,3-ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、臭化アルキルイソキノリニウム、チアントール、チモール、トリクロロカルバニリド、p-クロルフェノール、ハロカルバン、ヒノキチオール、ピリチオン亜鉛、ブチルカルバミン酸、ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアナイド、メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン、N,N"-メチレンビス[N'-(3-ヒドロキシメチル-2,5-ジオキソ-4-イミダゾリジニル)ウレア]、ヨウ化パラジメチルアミノスチリルヘプチルメチルチアゾリウムなどがある。これらの強力な防腐剤は例えば化粧品などの場合は1%以下での使用が認められている。また例えば化粧品などの場合は5%以下での使用が認められている安全性の高い塩化セチルピリジニウム、Methyl paraben、Ethyl paraben、Propyl praben、Butyl parabenなどのParaben類およびその塩類、Phenoxy ethanolなどの有機系防腐剤があり、好ましい。中でも疎水性の防腐剤が疎水性であるシーリング材、またはペイントなどのポリマーに浸透性が優れ好ましい。一方、上記防腐剤が安息香酸塩類などのように水に易溶性である場合は耐水性が不足し、乳化するためにも好ましくないため、用途により適宜選択すべきである。
【0012】
本発明に使用する溶媒は前記有機系防腐剤を常温で5重量部以上溶解する溶媒で、シーリング材、またはペイントなどのポリマーに浸透性があれば良い。(以下「本溶媒」と略記する。)例えばm-Borneol、d-Camphor、l-Camphor、3-Carene、Carene oxide、l-Carveol、l-Carveol oxide、l-Carvyl、Caryopylene oxide、1,4-Cineole、1,8-Cineole、Citronellal、l-Citronellol、p-Cymene、p-Cymene-8-ol、d-Dehydrocarveol、l-Dehydrocarveol、d-Dehydrocarvone、l-Dehydrocarvone、d-Dehydrocarvyl acetate、l-Dehydrocarvyl acetate、Dihydroterpineol、Dihydropinyl acetate、Elemene、Eugenol、beta-Farmesene、Isobornyl acetate、d-Limonene、l-Limonenen、d-Limonene-10-ol、d-Limonene-10-ol acetate、l-Limonene-10-ol、l-Limonene-10-ol acetate、d-Limonene oxide、l-Limonene oxide、Linalool oxide pylanoid、Longifobene、p-Menthane、1,8-Mentadiene-4-ol、alpha-2,8-Mentadiene-1-ol、d-1,7-Mentadiene-2-ol,d-1。8-Mentadiene-2-ol、l-Menthol、l-Menthone、l-Menthyl acetate、beta-Myrcene,Myrtenal、Myrtenol、Myrtenyl acetate、l-Perillyl alcohol、l-Perillyl acetate、l-Perillaldehyde、alpha-Pinene、beta-Pinene、alpha-Pinene oxide、Pinocarveol、Piperitenone、Piperitone、d-Puregone、d-Rose oxide、l-Rose oxide、Sobrerol、alpha-Terpinene、beta-Terpinene、gamma-Terpinene、alpha-Terpineol、beta-Terpineol、gamma-Terpineol、l-alpha-Terpineol、4-Terpineol、Terpineolene、alpha-Terpinyl acetate、Tetrahydromycenol、Verbenol、Verbenoneなどのテルペン類がある。
本発明の防カビ剤に使用されるシーリング材にはシリコーン樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、サルファイド樹脂系、SBRやブチルゴム系などがあり、またペイントにはニトロセルロース系、アルキド樹脂系、アミノアルキド樹脂系、ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、エステル樹脂系、塩化ゴム系、シリコン樹脂系、フッ素樹脂系などがあり、これらの樹脂に対し、適当な溶媒を選定すると良い。
【0013】
前記テルペン類の中では3-Carene、citral、p-Cymene、beta-Farmesene、d-Limonene、p-Menthane、beta-Myrcene、alpha-Pinene、beta-Pinene、alpha-Terpinene、beta-Terpinene、gamma-Terpinene、Terpineoleneなど、分子量が小さいテルペン類が前記有機系防腐剤の良溶媒であり、またシリコーン類からなる無極性のシーリング材、架橋されたペイントなどへの浸透性にも優れ、好ましい。一方、m-Borneo、l-Carveol、l-Carveol oxide、Caryopylene oxide、1,4-Cineole、1,8-Cineole、Citronellal、l-Citronellol、p-Cymene-8-ol、d-Dehydrocarveol、l-Dehydrocarveol、DihydroterpineolEugenol、d-Limonene-10-ol、l-Limonene-10、d-Limonene oxide、l-Limonene oxide、1,8-Mentadiene-4-ol、alpha-2,8-Mentadiene-1-ol、d-1,7-Mentadiene-2-ol,d-1。8-Mentadiene-2-ol、l-Menthol、beta-Myrcene,Myrtenal、Myrtenol、l-Perillyl alcohol、l-Perillaldehyde、alpha-Pinene oxide、d-Rose oxide、l-Rose oxide、Sobrerol、alpha-Terpineol、beta-Terpineol、gamma-Terpineol、l-alpha-Terpineol、4-Terpineol、Tetrahydromycenol、Verbenolなどは溶媒自体も防カビ性を持っているので好ましい。
【0014】
本発明防カビ剤に配合する前記有機系防腐剤と本溶媒の配合比率は防腐剤の防カビ性と本溶媒の溶解性により、左右されるが、有機系防腐剤1から10重量部に対し、本溶媒99から90重量部配合する。有機系防腐剤および本溶媒は数種を組み合わせて使用することもでき、カビの種類により有機系防腐剤の効果も異なるため、組み合わせて使用する方が好ましい。
【0015】
前記有機系防腐剤と本溶媒の混合溶解し本発明の防カビ剤の製造に際しては一般的な加温用ジャケット付き攪拌槽を使用することができる。また、さらに本発明の防カビ剤に水と適当な乳化剤(界面活性剤)を加え、ホモミキサーにより乳化し、本発明の乳化防カビ剤を製造することができる。乳化剤としては石けん、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ツイーン型非イオン乳化剤、エチレンオキサイド8から20付加高級アルコール、エチレンオキサイド8から20付加アルキルフェノール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどがある。本発明に使用する好ましい溶媒は分子量が小さいため、揮発性が大きく、製品保安上、また使用時の臭いが強いため、乳化防カビ剤として使用することが好ましい。乳化剤のHLBは水中油滴型エマルジョンを作成するため、HLBが11より大きいことが好ましく、より好ましくは20以上で、エマルジョンが相互に反発し安定するためにイオンタイプが好ましい。中でも硫酸塩タイプはHLB値が大きく好ましい。乳化を安定化するため、HLBの小さいものを繋ぎに併用しても良い。
【0016】
界面活性剤にはラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの殺菌作用を持つものがあり、乳化剤として、また、本発明防カビ剤の効果増強のため配合使用しても良い。また、着色剤、粘度保持剤などの助剤も悪影響のない範囲で使用しても良い。
【実施例】
【0017】
本発明防カビ剤の防カビ性は防カビ性のない市販シーリング材セメダイン(株)製シリコーンシーラント8060(商標名)を型枠に流し、硬化作成した厚さ約1mm、5cm角の正方形シート(以下「標準試験片」と言う。)に防カビ剤を標準試験片に鉛直方向に30cm離れたスプレーで約1ml塗布し、乾燥後塗布し、乾燥後1時間流水で水洗した後、塗布面を上にしてJISZ2911かび抵抗性試験に準じて5種混合菌(Aspergillus niger IFO 6341、Penicillium citrinum IFO 6352(青カビ)、Rhizopus oryzae FERM S-7、Cladosporium cladosporioides IFO 6348(黒カビ)、Chaetomium globosum IFO 6347 )を接種し4週間後目視による菌糸生育の測定をした。また、実際に使用されている浴場の目地に発生した黒色カビに塗布し、防カビ性を測定した。
【0018】
実施例1
d-Lymonen50重量部にEthyl Paraben20重量部(#1)および2.5重量部(#2)を徐々に添加しながら常温で防爆設備で攪拌溶解し、本発明の防カビ剤2点を作成した。同様にしてEthyl Paraben1重量部比較品(#3)として作成した。これらの防カビ剤を標準試験片に鉛直方向に30cm離れたスプレーで約1ml塗布し、乾燥後1時間流水で水洗し、カビ抵抗性試験を行った結果、4週間後#1および#2の試験片上に菌の発育は全く見られず、優れた防カビ性を示した。一方、#3の試験片には3分の1弱の面積に菌糸の発育が見られ、防カビ性能が不足した。
【0019】
実施例2
実施例1で製造した#1と#2の本発明防カビ剤20重量部、乳化剤ラウリル硫酸エステルNa10重量部、水70重量部をホモミキサーで常温攪拌分散し、本発明の乳化防カビ剤#11(#1使用)と#21(#2使用)を作成した。これらの防カビ剤を標準試験片に鉛直方向に30cm離れたスプレーで約1ml塗布し、乾燥後1時間流水で水洗し、カビ抵抗性試験を行った結果、4週間後#1および#2の試験片上に菌の発育は全く見られず、優れた防カビ性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系防腐剤が5から40重量部と、有機系防腐剤を常温で溶解することが可能であり、シーリング材、またはペイントなどのポリマーに浸透性がある溶媒からなる塗布型防カビ剤。
【請求項2】
請求項1の溶媒の50容量%以上がテルペン類である防カビ剤。
【請求項3】
請求項2のテルペン類が3-Carene、citral、p-Cymene、beta-Farmesene、d-Limonene、p-Menthane、beta-Myrcene、alpha-Pinene、beta-Pinene、alpha-Terpinene、beta-Terpinene、gamma-Terpinene、Terpineoleneの少なくとも1種である請求項2の防カビ剤。
【請求項4】
請求項1から3の防カビ剤が界面活性剤により乳化した防カビ剤。

【公開番号】特開2008−297236(P2008−297236A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144447(P2007−144447)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(503188092)有限会社サンサーラコーポレーション (14)
【Fターム(参考)】