説明

防水仕様液体用紙複合容器

【課題】風呂場等の水分過多の場所においても使用可能な防水仕様の液体用紙容器を提供すること。
【解決手段】紙を基材とし少なくとも最内層と最外層に熱可塑性合成樹脂層を備えた複合シート(1)の一方の端縁(11)をもう一方の端縁(12)に重ね合わせて上下が開放され側部が貼り合わせられた胴部材(10)が形成され、胴部材の側部貼り合わせ部(14)は複合シートの一方の端縁の紙端面と、もう一方の端縁の紙端面とが内外面ともに内容物収納側や外界側と露出しないスカイブヘミンング方式により貼り合わされて形成され、胴部材の天面と底面の開放部を紙を基材とする複合シートをインサートインジェクション方により加工した天蓋(20)と底蓋(30)とで密閉して筒状容器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用紙複合容器に関するものであり、特には、風呂場等の水分過多の場所においても使用が可能な防水仕様液体用紙複合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙を基材とし、内層及び外層をヒートシール性に優れたポリオレフィン系樹脂とする、例えば、〔容器外側〕ポリエチレン/板紙/エチレン・メタアクリル酸共重合体/アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム/ポリエチレン〔容器内側〕構成のような複合シートからなる紙製容器が、ジュース、清酒、液体洗剤等を充填する容器として広く使用されている。
【0003】
そして、清酒等浸透性が強く流通期間の長い内容物については、容器内側に紙端面が露出していると、そこから内容物が紙基材層に浸透し、容器の強度低下等をもたらすため、あらかじめ複合シート胴部接合部分の一方を先端から所定の長さだけ、複合シートの厚みの半分を、紙層から外側を削除(スカイブ)し、削り取った残りの部分を削除面が内側となるように折り返し(ヘミング)、紙端面の保護を行っている.以下この加工をスカイブヘミング加工と呼ぶ。
【0004】
スカイブヘミング加工された複合シートの胴部の接合は、折り返された内層表面部分から外層表面部分にわたってガスバーナ等によるフレーム処理を行い、さらにこれに対応するもう一方の端部の内層表面にも同様のフレーム処理を行って、それぞれのポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂表面を酸化して極性基を導入してから両者を圧着して接合する方法が一般的である。
【0005】
しかしながら、スカイブヘミング加工をして紙端面の保護(160)を行っているのは内容物の接する接液側のみで、外界と広く接するサイドシール部の端縁は紙端面の保護は行われていない(図6参照)(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このため、通常の使用方法では問題にならないが、例えば、風呂場等の水分過多の場所等で使用する場合には、特に外界と接する紙端面から水分等が浸透して、水、蒸気等に耐えられず容器形状が崩れてきたりする。
【0007】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】実開平4−124909号。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、液体用紙複合容器に関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、風呂場等の水分過多の場所においても使用可能な防水仕様の液体用紙複合容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1の発明は、紙を基材とし、少なくとも最内層と最外層に熱可塑性合成樹脂層を備えた複合シートの一方の端縁をもう一方の端縁に重ね合わせるなどして上下が開放され、側部が貼り合わせられた胴部材が形成され、前記胴部材の側部貼り合わせ部は、複合シートの一方の端縁の紙端面と、もう一方の端縁の紙端面とが、内面外面ともに内
容物収納側や外界側と露出しない方法により貼り合わされて形成され、前記胴部材の天面と底面の開放部を、紙を基材とする複合シートをインサートインジェクション法により加工した天蓋と底蓋とで密封して筒状容器としたことを特徴とする、防水仕様液体用紙複合容器である。
【0010】
このように請求項1記載の発明によれば、紙を基材とし、少なくとも最内層と最外層に熱可塑性合成樹脂層を備えた複合シートの一方の端縁をもう一方の端縁に重ね合わせるなどして上下が開放され、側部が貼り合わせられた胴部材が形成され、前記胴部材の側部貼り合わせ部は、複合シートの一方の端縁の紙端面と、もう一方の端縁の紙端面とが、内面外面ともに内容物収納側や外界側と露出しない方法により貼り合わされて形成され、前記胴部材の天面と底面の開放部を、紙を基材とする複合シートをインサートインジェクション法により加工した天蓋と底蓋とで密封して筒状容器としたので、内容物収納側も外界側も紙端面が露出していないため、液状物などが接する内面からも、外界と接する外面からも紙端面を通して内容液や外界の蒸気や水分等が浸透することがなく容器が変形することがない。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記胴部材の側部貼り合わせ部は、複合シートの一方の端縁を先端から所定長さで複合シートの厚さの半分を削除し、削除せずに残った部分を削除面が内側になるように折り返し、第1折り返し部を形成させ、もう一方の端縁の、前記一方の端縁の削除面とは反対側の面を先端から所定長さで、複合シートの厚さの半分を削除し、削除せずに残った部分を削除面が内側になるように折り返し、第2折り返し部を形成させ、一方の端縁に形成された第1折り返し部と、もう一方の端縁に形成された第2折り返し部とを互いの面が接するように折り曲げて重ね合わせ、熱融着により接合した、スカイブヘミング方式によって端面処理が施されて貼り合わせられていることを特徴とする、防水仕様液体用紙複合容器である。
【0012】
このように請求項2記載の発明によれば、胴部材の側部貼り合わせ部は、複合シートの一方の端縁を先端から所定長さで複合シートの厚さの半分を削除し、削除せずに残った部分を削除面が内側になるように折り返し、第1折り返し部を形成させ、もう一方の端縁の、前記一方の端縁の削除面とは反対側の面を先端から所定長さで、複合シートの厚さの半分を削除し、削除せずに残った部分を削除面が内側になるように折り返し、第2折り返し部を形成させ、一方の端縁に形成された第1折り返し部と、もう一方の端縁に形成された第2折り返し部とを互いの面が接するように折り曲げて重ね合わせ、熱融着により接合した、スカイブヘミング方式によって端面処理が施されて貼り合わせられているので、胴部材の側部貼り合わせ部の端面処理を正確に、かつ、比較的簡単に行うことができる。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記胴部材の横断面形状は、角部分が面取りされた正方形、長方形あるいは円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする、防水仕様液体用紙複合容器である。
【0014】
このように請求項3記載の発明によれば、胴部材の横断面形状は、角部分が面取りされた正方形、長方形あるいは円形、楕円形のいずれであるので、バラエティに富んだ筒状容器とするとができる。
【0015】
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の発明において、前記天蓋には注出口部が具備されていることを特徴とする、防水仕様液体用紙複合容器である。
【0016】
このように請求項4記載の発明によれば、天蓋には注出口部が具備されているので、内容物である液状物を容易に注ぎ出すことができる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明の防水仕様液体用紙複合容器は、外面側防水機能を持たせたので、水分過多環境下での使用、保管が可能になる。具体的には、風呂場、流し、降雨時の屋外での使用、保管が可能になる。商品例としては、シャンプー、ハンドソープ、入浴剤、食器洗い洗剤等のほか、従来と同様に飲料等にも使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の本発明の防水仕様液体用紙複合容器(100)は、例えば、図1〜図4に示すように、紙を基材とし、少なくとも最内層(2)と最外層(3)に熱可塑性合成樹脂層を備えた複合シート(1)の一方の端縁(11)をもう一方の端縁(12)に重ね合わせるなどして上下が開放され、側部が貼り合わせられた胴部材(10)が形成され、この胴部材の上下の開放部(13)を複合シート(1)をインサートインジェクション法により加工した天蓋(20)と底蓋(30)とで密封して筒状容器としたものである。
【0019】
そして、胴部材(10)の側部貼り合わせ部(14)は、複合シート(1)の一方の端縁(11)の紙端面と、もう一方の端縁(12)の紙端面とが、内面外面ともに内容物側(A)や外界側(B)に露出しない方法により貼り合わせられている。
【0020】
つぎに、胴部材の側部貼り合わせ部(14)の内面外面ともに内容物側や外界側に露出しない貼り合わせ方法について説明する。
【0021】
例えば図2に示すように、先ず、複合シート(1)の一方の端縁(11)を先端から所定長さで、複合シートの厚さの半分を削除し、削除せずに残った部分(112)を削除面(111)が内側になるように折り返して第1折り返し部(113)を形成させる(図2(a)、(b)、(c))。
【0022】
もう一方の端縁(12)の、一方の端縁(11)の削除面(111)とは反対側の面を先端から所定長さで、複合シートの厚さの半分を削除し、削除せずに残った部分(122)を削除面(121)が内側になるように折り返して第2折り返し部(123)を形成させる(図2(a)、(b)、(c))。
【0023】
一方の端縁に形成された第1折り返し部(113)と、もう一方の端縁に形成された第2折り返し部(123)とを互いの折り返し面が接するように重ね合わせて、熱融着により接合したスカイブヘミング方式により端面処理が施されて貼り合わせられている胴部貼り合わせ部(14)である(図2(d))。
【0024】
複合シート(1)に使用される紙は、ミルクカートン原紙、ノーコートアイボリー等が好ましく使用でき、収容する内容液の重量、あるいは求められる強度等により紙の坪量は100〜500g/m2 程度まで自由に選択できる。
【0025】
この紙を基材とし、熱可塑性合成樹脂をラミネートすることにより複合シートを作製し、この複合シート(1)を上述の方法により筒状の胴部材(10)とし、上下の開放部(13)を天蓋(20)と底蓋(30)で熱融着等の方法により密封し、筒状の包装容器が成形できる。容器形態は図3(a)、(b)、(c)、(d)に示すような正方形、長方形、円形、楕円形のほか、多角形状等考えられる。
【0026】
ラミネートする熱可塑性樹脂は、耐水性、耐熱水性、バリア性、ヒートシール性等の要求性能により適宜選択できる。
【0027】
例えば、耐水性、耐熱水性を要求される場合には、胴部材として〔容器外側〕ポリプロピレン/ミルクカートン原紙/未延伸ポリプロピレン〔容器内側〕、〔容器外側〕ポリプロピレン/ミルクカートン原紙/耐熱性線状低密度ポリエチレン〔容器内側〕等の構成が例示できる。
【0028】
さらに必要機能として耐熱水性と同時にバリア性を要求される場合には、胴部材として、〔容器外側〕ポリプロピレン/ミルクカートン原紙/ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に無機化合物の薄膜を蒸着した蒸着フィルム/ナイロン/未延伸ポリプロピレン〔容器内側〕、〔容器外側〕ポリプロピレン/ミルクカートン原紙/ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に無機化合物の薄膜を蒸着した蒸着フィルム/ナイロン/耐熱性線状低密度ポリエチレン〔容器内側〕等の構成が例示できる。
【0029】
天蓋(20)および底蓋(30)は、上記構成の複合シートを所定の大きさに裁断した天蓋複合シート(5)又は底蓋複合シート(6)を前もって挿入配置した金型内に熱溶融した複合シートの最内層樹脂、最外層樹脂と同様の熱可塑性樹脂(7)を射出するインサートインジェクション法により作製することができる(図4参照)。
【0030】
なお、天蓋(20)および底蓋(30)には、周縁に底部材(10)の端縁が嵌入される断面形状がU字状又は逆U字状の嵌入溝(21、31)が垂直方向に形成されている。
【0031】
さらに、天蓋(20)には、内容液を注出するための注出口部(22)が具備されている。図4において、注出口部(22)はキャップ付き形状であるが、用途に応じてポンプ等の取り付けも可能である。
【0032】
つぎに、この容器の成形、充填工程の一例を述べる(図5参照)。
先ず、紙を基材とし、最内層と最外層に熱可塑性合成樹脂を備えた複合シート原反を準備する。
この複合シート原反を所定の寸法に裁断して、両端縁をスカイブヘミング加工する。
スカイブヘミング加工した複合シートの両端縁を重ね合わせるようにして貼り合わせ胴部貼り合わせ部を形成して胴部材(10)を形成する。
【0033】
別に上記複合シートから所定寸法の天蓋複合シートと底蓋複合シートを作製し、インサートインジェクション法により天蓋(20)と底蓋(30)を作製しておく。なお、天蓋(20)にはあらかじめ注出口部(22)が取り付けられている。
【0034】
胴部材(10)の下部に底蓋を嵌め込み、加熱圧着して密封し底部を完全に閉塞する。
【0035】
胴部材(10)の上部開口側から内容液(40)を所定量充填し、内容液充填後、上部開口に天蓋を嵌め込み、底部と同様に加熱圧着して密封し天部を完全に閉塞して作業が完了する。必要に応じて内容液は加熱されている。加熱された内溶液を充填した場合には当然ながら冷却工程が必要になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の防水使用液体用紙複合容器の一実施例を示す、説明図である。
【図2】(a)〜(d)は、スカイブヘミング方式により端面処理が施されて貼り合わされている胴部材の側部貼り合わせ部の一実施例を示す、要部説明図である。
【図3】(a)〜(d)は、胴部材の横断面の一実施例を示す、平面説明図である。
【図4】本発明の防水使用液体用紙複合容器の一実施例を示す、断面説明図である。
【図5】本発明の防水使用液体用紙複合容器の成形、充填工程の一例を示す、フローチャートである。
【図6】従来の胴部材の側部貼り合わせ部の端面処理方式の一例を示す、斜視説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1‥‥複合シート
2‥‥最内層
3‥‥最外層
5‥‥天蓋複合シート
6‥‥底蓋複合シート
7‥‥熱可塑性樹脂層
10‥‥胴部材
100‥‥防水使用液体用紙複合容器
11‥‥一方の端縁
111‥‥一方の端縁の削除面
112‥‥一方の端縁の削除せずに残った部分
113‥‥第1折り返し部
12‥‥もう一方の端縁
121‥‥もう一方の端縁の削除面
122‥‥もう一方の端縁の削除せずに残った部分
123‥‥第2折り返し部
13‥‥開放部
14‥‥側部貼り合わせ部
160‥‥従来の紙端面保護
20‥‥天蓋
21‥‥嵌入溝
22‥‥注出口部
30‥‥底蓋
31‥‥嵌入溝
40‥‥内容液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を基材とし、少なくとも最内層と最外層に熱可塑性合成樹脂層を備えた複合シートの一方の端縁をもう一方の端縁に重ね合わせるなどして上下が開放され、側部が貼り合せられた胴部材が形成され、
前記胴部材の側部貼り合わせ部は、複合シートの一方の端縁の紙端面と、もう一方の端縁の紙端面とが、内面外面ともに内容物収納側や外界側と露出しない方法により貼り合わされて形成され、
前記胴部材の天面と底面の開放部を、紙を基材とする複合シートをインサートインジェクション法により加工した天蓋と底蓋とで密封して筒状容器としたことを特徴とする、防水仕様液体用紙複合容器。
【請求項2】
前記胴部材の側部貼り合わせ部は、複合シートの一方の端縁を先端から所定長さで複合シートの厚さの半分を削除し、削除せずに残った部分を削除面が内側になるように折り返し、第1折り返し部を形成させ、
もう一方の端縁の、前記一方の端縁の削除面とは反対側の面を先端から所定長さで、複合シートの厚さの半分を削除し、削除せずに残った部分を削除面が内側になるように折り返し、第2折り返し部を形成させ、
一方の端縁に形成された第1折り返し部と、もう一方の端縁に形成された第2折り返し部とを互いの折り返し面が接するように折り曲げて重ね合わせ、熱融着により接合した、スカイブヘミング方式によって端面処理が施されて貼り合わせられていることを特徴とする、請求項1記載の防水仕様液体用紙複合容器。
【請求項3】
前記胴部材横断面形状は、角部分が面取りされた正方形、長方形あるいは円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする、請求項1又は2記載の防水仕様液体用紙複合容器。
【請求項4】
前記天蓋には注出口部が具備されていることを特徴とする、請求項1、2又は3記載の防水仕様液体用紙複合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−24313(P2008−24313A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195303(P2006−195303)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)