説明

防水構造を具えた機器

【課題】従来よりも防水効果を高めた機器を提供する。
【解決手段】防水構造を具えた機器は、一対のキャビネット半体10、11を突き合わせて内部に空間を形成したキャビネット1と、各キャビネット半体10、11の接合箇所に対向して形成された溝15、17と、両溝15、17間に配備される防水性のパッキング2を具え、該パッキング2は圧力を受けて容易に撓み変形可能な弾性体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部への液体の侵入を阻止する防水構造を具えた機器、具体的には防水構造を具えて、携帯電話機と電話回線間の通信を中継する基地局ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の防水構造を具えた通信機器の断面図である(例えば、特許文献1参照)。
キャビネット(1)は第1キャビネット半体(10)に第2キャビネット半体(12)が被さって構成され、内部に回路基板(図示せず)等が配備される空間(14)が形成される。両キャビネット半体(10)(11)は、夫々側部から外向きに延びたフランジ部(12)(13)を具え、両フランジ部(12)(13)が複数のネジ(6)によって接合される。
両フランジ部(12)(13)は板状であり、両フランジ部(12)(13)の接合部分の平面度により、該接合部分間に隙間が生じる場合がある。これでは、空間(14)が負圧となった場合に、キャビネット(1)の外側から、両フランジ部(12)(13)を通って空間(14)内に水が侵入する虞れがある。従って、両フランジ部(12)(13)を緊密に接合する防水構造として、一方のフランジ部(12)上にてネジ(6)の内側に防水用のパッキング(2)を設け、更にフランジ部(12)上にてパッキング(2)の内側に溝(15)を開設して、該溝(15)内に吸水体(16)を挿入している。
両フランジ部(12)(13)間に侵入した水は、喩え、ネジ(6)を通過して内側に侵入しても、パッキング(2)に阻止され、更に吸水体(16)に吸収されて、空間(14)にまで進むことを阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−326475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
両フランジ部(12)(13)を緊密に接合して防水効果を高めるには、ネジ(6)の数を増加させたり、パッキング(2)又は吸水体(16)をフランジ部(12)の全周に亘って設ける必要がある。従って、キャビネット(1)の小型化を阻害する要因となっていた。
また、ネジ(6)にて両フランジ部(12)(13)を緊密に締結し過ぎると、パッキング(2)に応力が掛かりすぎる。パッキング(2)は一般にゴム製であるから、時間が経過すると、ゴムの結晶化が生じ、結果としてゴムの弾性がなくなり、防水効果が劣化する虞れがある。
本発明の目的は、機器の小型化を達成しつつ、従来よりも防水効果を高めた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
防水構造を具えた機器は、一対のキャビネット半体(10)(11)を突き合わせて内部に空間を形成したキャビネット(1)と、各キャビネット半体(10)(11)の接合箇所に対向して形成された溝(15)(17)と、両溝(15)(17)間に配備される防水性のパッキング(2)を具え、該パッキング(2)は圧力を受けて容易に撓み変形可能な弾性体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、上記の構成により、小型で防水効果のある機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】基地局ユニットの使用状態を示す断面図である。
【図2】(a)、(b)は、図1のキャビネットのB部の拡大図である。
【図3】従来の防水構造を具えた通信機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施例を図を用いて、説明する。本例は、PHS(パーシナルハンディフォンシステム)等の携帯電話システムに於いて、携帯電話機と電話回線間の通信を中継する基地局ユニットの防水構造に関するが、これに限定されない。
基地局ユニット(4)は、図1に示すように、電柱(7)(7)間に架けられたワイヤ(70)に吊下げ金具(71)を用いて吊り下げられるキャビネット(1)を具える。該キャビネット(1)内は、仕切り板(41)によって仕切られて、電話回線ケーブル(44)に繋がるターミナル(45)が配備された入口室(42)と、該ターミナル(45)に電気的に繋がった回路基板(46)が設けられた回路室(43)とが形成されている。キャビネット(1)は、第1キャビネット半体(10)上に、第2キャビネット半体(11)を被せて構成される。
【0009】
図2(a)は、図1のキャビネット(1)のB部の拡大図である。各キャビネット半体(10)(11)からは、フランジ部(12)(13)が外向きに突出し、該フランジ部(12)(13)は従来と同様に、ネジ(図示せず)にて接合される。各キャビネット半体(10)(11)の接合箇所には、溝(15)(17)が互いに対向するように開設され、両溝(15)(17)に跨ってパッキング(2)が配備される。
パッキング(2)は圧力を受けて容易に撓み変形可能な弾性体であって、剛性を弱くすべく、パッキング(2)内部には空洞(20)(20)が設けられている。溝(15)(17)の周壁には、パッキング(2)が弾性変形して密着して嵌まる円弧状の突起(18)(18)及び逃げ(19)が形成されている。通常では、パッキング(2)は突起(18)(18)から僅かに離れ、逃げ(19)にも密着していない。即ち、パッキング(2)は押圧力を受けない状態で、溝(15)(17)の周壁の一部から離間している。
【0010】
図2(b)に示すように、キャビネット(1)内外の温度差等でキャビネット(1)内部が負圧になると、キャビネット(1)の外部から押圧力を受ける。この場合、フランジ部(12)(13)どうしが密着していても、例えば毛細現象による水の侵入力により、パッキング(2)が外側から内向きに押圧される。パッキング(2)は押圧力を受けて撓み変形して、突起(18)(18)に密接すると共に、逃げ(19)に入り込み、その結果、溝(15)(17)の周壁とパッキング(2)の接触面積が大きくなる。これによって、機器の小型化を達成しつつ、防水効果を高めることができる。尚、パッキング(2)のゴムとしての剛性が元々弱い場合は、空洞(20)(20)は設けなくとも良い。
また、キャビネット(1)の外部から押圧力を受けなければ、パッキング(2)は突起(18)(18)及び逃げ(19)から離れている。これにより、パッキング(2)とキャビネット(1)の接触力を極力低減させて、パッキング(2)を構成するゴムの結晶化を防ぐことができる。
本例の構成にあっては、キャビネット半体(10)(11)の接合箇所に対向して形成された溝(15)(17)には、圧力を受けて容易に撓み変形可能な弾性体であるパッキング(2)が配備されている。キャビネット(1)が外部から水圧を受けた場合は、キャビネット半体(10)(11)及びパッキング(2)が圧力を受けて、パッキング(2)が撓み変形する。撓み変形したパッキング(2)は溝(15)の周壁に変形して密接し、パッキング(2)と溝(15)の周壁との接触面積が大きくなるから、水の侵入を効果的に阻止することができる。これにより、機器の小型化を達成しつつ、従来よりも防水効果を高めることができる。
【0011】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
図2(a)、(b)では、空洞(20)(20)は複数図示されているが、1つでもよい。
【符号の説明】
【0012】
(1) キャビネット
(2) パッキング
(10) キャビネット半体
(11) キャビネット半体
(15) 溝
(17) 溝
(20) 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のキャビネット半体(10)(11)を突き合わせて内部に空間を形成したキャビネット(1)と、各キャビネット半体(10)(11)の接合箇所に対向して形成された溝(15)(17)と、両溝(15)(17)間に配備される防水性のパッキング(2)を具え、該パッキング(2)は圧力を受けて容易に撓み変形可能な弾性体であることを特徴とする防水構造を具えた機器。
【請求項2】
パッキング(2)は、内部に空洞(20)を形成した、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
パッキング(2)は、押圧力を受けない状態で、溝(15)(17)の周壁から離間している、請求項1又は2に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−14664(P2011−14664A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156487(P2009−156487)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】