説明

防水生地の接合方法及び防水生地を使用した服

【課題】 長期に使用しても防水生地の接合部において防水性が維持できる高い耐久性を有する服及び防水生地の接合方法を提供する。
【解決手段】 発泡ゴム製のベース層10を備えると共に表層に非発泡樹脂被膜層13を備えた防水生地3の端部3a同士を接合する方法であって、防水生地3の端面3b同士を対向させて両端面3bを接着剤20を介して接合し、且つ、該接合部A両側の非発泡樹脂被膜層13同士を橋渡しするように接合部Aにウレタン樹脂をコーティングしてウレタン樹脂層30を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水生地の接合方法と、ウェーダーやタイツ、ウエットスーツ等の服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防水服は、裁断した防水生地の端部同士を接合して作られる。この防水生地としては、発泡ゴム製のベース層を備えると共に外層には例えばウレタン樹脂層を備えたものが使用されており、接合部の防水性を確保するために、防水生地の端面同士を対向させてその両端面間に接着剤を介在させ、その接着剤により両端面を接合させている。
【特許文献1】特開2001−207309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、接合部は生地の端面同士を接合する形態であるため、その接合部において十分な防水性を確保するようにするためには高度な技術とその管理が必要となり、必ずしも製造が容易であるとは言えない。接合部における両端面同士の接着力にばらつきが生じると、長期に使用した場合において接着力の弱い箇所で剥離が生じたりして接合部における防水性が確保できなくなる。なお、この接合部における防水性を確保するために、従来、内外面共にジャージ貼り(ニット)の防水生地を使用したものにおいてその接合部内面側にホットメルトテープを貼り付ける方法もあった。このホットメルトテープ貼り付け方法の場合、ホットメルトテープの溶けた樹脂がジャージのメッシュ内にしみ込むだけであるので時間経過と共にジャージからホットメルトテープが剥がれるという問題があった。
【0004】
それゆえに本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされ、長期に使用しても防水生地の接合部において防水性が維持できる高い耐久性を有する服及び防水生地の接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、本発明に係る防水生地の接合方法は、発泡ゴム製のベース層を備えると共に表層に非発泡樹脂被膜層を備えた防水生地の端部同士を接合する方法であって、防水生地の端面同士を対向させて両端面を接着剤を介して接合し、且つ、該接合部両側の非発泡樹脂被膜層同士を橋渡しするように接合部にウレタン樹脂をコーティングすることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る防水生地を使用した服は、発泡ゴム製のベース層を備えると共に表層に非発泡樹脂被膜層を備えた防水生地が使用され、該防水生地の端面同士が対向すると共に両端面が接着剤を介して接合された接合部を有している服であって、接合部両側の非発泡樹脂被膜層同士を橋渡しするように接合部にウレタン樹脂がコーティングされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、コーティングされたウレタン樹脂の層が接合部両側の非発泡樹脂被膜層同士を橋渡しして両非発泡樹脂被膜層を連結一体化するので、接着剤による両端面の接着力と、コーティングされたウレタン樹脂による連結力とにより、接合部における接合状態が強固なものとなり、長期に使用しても接合部における防水性が維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る防水生地を使用した服の一実施形態について図面を参酌しつつ説明する。図1に示すように本実施形態の服はウェーダーであり、ズボン部1と該ズボン部1の両脚先端に一体的に装着されたブーツ部2とを備えている。該ズボン部1は防水生地3から構成されており、所定形状に裁断された複数の防水生地3を接合、縫製等することによって形成されている。
【0009】
該防水生地3について説明すると、該防水生地3は、図3に示すように、発泡ゴム製のベース層10と、該ベース層10の一方の面に接着剤を介して貼着されたニット層11と、ベース層10の他方の面に形成されたゴム被膜層12と、該ゴム被膜層12の外側に形成された非発泡樹脂被膜層13とを備えた多層構造のものである。
【0010】
ベース層10は、防水生地3の防水性を確保すると共に伸縮性も備えていて防水生地3の基材となっているものであり、例えば、発泡のクロロプレンゴムからなる。
【0011】
ニット層11は、防水生地3の一方の表層を構成していてウェーダーの外面を構成する層である。
【0012】
ゴム被膜層12は、ベース層10と非発泡樹脂被膜層13との接着性を良好にするためのプライマーとして機能するものであって、例えば、非発泡のクロロプレンゴムを主成分とし、シリカ、イソシアネート、種々の添加剤、溶剤からなるコーティング液を、例えばグラビアコーティングによってベース層10にコーティングすることにより形成される。なお、グラビアコーティングを行う際、ニット層11が貼着された長尺状のベース層10が使用され、この長尺状のベース層10としては所定長さの枚葉のものをつなぎ合わせたものが使用できる。また、グラビアコーティングによってゴム被膜層12が形成される際にその表面には凹凸が形成されると共に、ゴム被膜層12に残存する未架橋の加硫剤がゴム被膜層12のゴムとベース層10のゴムとの架橋に寄与してゴム被膜層12はベース層10上に強固に形成される。なお、シリカは、直径0.8〜1.2μmのものが使用され、その混入量は、非発泡樹脂被膜層13とベース層10との接着性を良好にする等の観点から、全体の2〜5重量%に設定されている。
【0013】
該ゴム被膜層12の外側に形成された非発泡樹脂被膜層13は、防水生地3の他方の表層を構成していてウェーダーの内面を構成する層である。なお、非発泡樹脂被膜層13は、後述するようなコーティングによって形成されるものの他、非発泡樹脂シートを接着等により貼着し形成されるものであってもよい。非発泡樹脂としては種々のものを使用できるが、以下、ウレタン樹脂を使用したものを例に説明する。
【0014】
非発泡樹脂被膜層13は、ウレタン樹脂を主成分とするが、滑りが良く肌触りを良好にするためにパール粉末が混入されている。なお、パール粉末としては、直径10〜60μmの球形のもの(角の無いもの)(例えば、商品名「パール粉末ME100」、日本光研工業(株)製)を使用でき、その混入量は、全体の1〜10重量%である。この非発泡樹脂被膜層13は、ウレタン樹脂を主成分とし、上記のようなパール粉末、顔料、ケイ素、イソシアネート、溶剤からなるコーティング液を、例えばグラビアコーティングによって前記ゴム被膜層12の外側にコーティングすることにより形成される。なお、グラビアコーティングの際に、未重合のイソシアネートがウレタン樹脂とゴム被膜層12のゴムとの架橋に寄与して非発泡樹脂被膜層13がゴム被膜層12上に強固に形成される。
【0015】
このような構成の防水生地3を所定の型紙に合わせて裁断して使用するのであるが、その場合、図2のように、複数の防水生地3の端部3a同士を段差が生じないように接合する。即ち、防水生地3の端面3b同士を対向させて両端面3bを接着剤20にて接合する。その際、防水生地3の表裏を合わせるようにして端面3b同士を対向させる。また、使用する接着剤20には防水生地3のベース層10がゴムであるのでそれに適したゴム系の接着剤を使用する。そして、その接合部Aの外面側と内面側のうち、非発泡樹脂被膜層13が形成されている側である内面側において、接合部Aを覆うようにしてウレタン樹脂を所定幅コーティングする。このウレタン樹脂層30は、接合部A両側の非発泡樹脂被膜層13を接合部Aを介して左右に橋渡しするように所定幅に形成されていると共に接合部Aに沿ってその全長に亘って帯状に形成されている。このウレタン樹脂のコーティングとしては塗布や噴き付け等の種々のコーティング手法を適用できる。なお、図示しないが接合部Aにおいては、ベース層10を貫通することなくニット層11側からすくい縫いもなされる。
【0016】
このように接合部Aの内面側がウレタン樹脂層30によって覆われてそのウレタン樹脂層30によって接合部A両側の非発泡樹脂被膜層13同士(防水生地3の端部3aの非発泡樹脂被膜層13同士)が連結一体化される。即ち、接合部Aにおいて分離されていた防水生地3の両非発泡樹脂被膜層13がウレタン樹脂層30によって連結一体化され、いわば非発泡樹脂被膜層13に連続性が得られることになる。従って、防水生地3の端面3b同士を接合している接着剤20による接着力にウレタン樹脂層30による連結力が加わることとなり、防水生地3の端部3a同士が強固に接合され、長期に亘って使用した場合でも接合部Aが剥離して防水性が失われるというようなことが防止され、高い耐久性が得られる。また、ウレタン樹脂をコーティングすることで接合部Aの防水性が増すため、端面3b同士を接着剤20で接合するあたって高い接合精度が要求されることがなくなるという利点もあり、ウレタン樹脂のコーティングの工程が増えるけれども、結果としては製造が容易になる。特に、上述のように非発泡樹脂被膜層13としてウレタン樹脂が使用される場合には、コーティングされるウレタン樹脂と同種の樹脂であるのでウレタン樹脂層30と非発泡樹脂被膜層13の間に高い密着性が得られやすい。また、コーティングの際に、ウレタン樹脂を主成分としたコーティング液に含まれる溶剤の働きによって両側の非発泡樹脂被膜層13が強固に連結一体化される。
【0017】
なお、本実施形態では、ベース層10の片側に非発泡樹脂被膜層13が形成されている場合を例に説明したが、両側に非発泡樹脂被膜層13が形成されているものであってもよく、その場合、接合部Aの内外のうちの片方にウレタン樹脂をコーティングしても、両方にウレタン樹脂をコーティングしてもよい。
【0018】
また、上記説明では、ベース層10やゴム被膜層12にクロロプレンゴムを使用した場合を説明したが、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム等を使用することもできる。
【0019】
また更に、ウェーダーの他、タイツ、ウェットスーツ、ドライスーツ等の種々の防水服に適用可能であり、更には、一部のみに防水生地3が使用されて防水領域を部分的に有した服にも適用できる。服以外にも防水生地3の端部同士を接合することによって形成されるもの全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における服の全体斜視図。
【図2】同服の要部断面図。
【図3】同服に使用されている防水生地の断面図。
【符号の説明】
【0021】
1…ズボン部、2…ブーツ部、3…防水生地、3a…端部、3b…端面、10…ベース層、11…ニット層、12…ゴム被膜層、13…非発泡樹脂被膜層、20…接着剤、30…ウレタン樹脂層、A…接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ゴム製のベース層を備えると共に表層に非発泡樹脂被膜層を備えた防水生地の端部同士を接合する方法であって、防水生地の端面同士を対向させて両端面を接着剤を介して接合し、且つ、該接合部両側の非発泡樹脂被膜層同士を橋渡しするように接合部にウレタン樹脂をコーティングすることを特徴とする防水生地の接合方法。
【請求項2】
発泡ゴム製のベース層を備えると共に表層に非発泡樹脂被膜層を備えた防水生地が使用され、該防水生地の端面同士が対向すると共に両端面が接着剤を介して接合された接合部を有している服であって、接合部両側の非発泡樹脂被膜層同士を橋渡しするように接合部にウレタン樹脂がコーティングされていることを特徴とする防水生地を使用した服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−274470(P2008−274470A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118485(P2007−118485)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】