説明

防水用レンズ、防水用レンズ組立体および撮影装置

【課題】レンズホルダに組み込む際のOリングの脱落が防止された防水用レンズおよびその防水用レンズがレンズホルダ内部に組み込まれた防水用レンズ組立体を提供する。
【解決手段】レンズ組立体1Aを構成する防水用レンズ11に、溝の底部からOリング装着側に向かって徐々に太径となる斜面を有する溝112を設ける。レンズ組立体は、その防水用レンズの外周の、溝112よりもOリング装着側とは反対側の外径が、その溝112よりもOリング装着側の最大外径よりも太径に形成され、レンズホルダ10が、防水用レンズ11Aの、溝112よりもOリング装着側とは反対側の外周を支持するとともに溝112に装着されたOリング17を圧縮した状態に保つ構造を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水用レンズ、および防水用レンズを備えた防水用レンズ組立体、さらにその防水用レンズ組立体を備えた撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車にカメラが配備されるようになってきている。自動車に配備されるカメラは監視用として用いられるものであったり、運転アシスト用に用いられるものであったりする。後者の方は、ナビゲーションシステムが普及し運転席に表示画面が設けられたことを利用して、その表示画面上にカメラで撮影した画像を表示しようというものである。
【0003】
この様な車載用のカメラにあっては、主に車外で用いられるので防水性が要求されるものが多く、特許文献1には、その要求に応えてカメラを大型化させずに充分な防水性を得る技術が提案されている。
【0004】
この特許文献1の技術を用いると、小型かつ優れた防水性を有するレンズ組立体が実現する。
【0005】
図1は、特許文献1の技術が適用された防水用レンズ組立体1の外観図であり、図2は、図1の防水用レンズ組立体1の構成を示す分解図である。
【0006】
図1には、防水用レンズ組立体1の外観が上から順に上面図、側面図、下面図でそれぞれ示されており、外から見えるものとしてレンズホルダ10と表面に露出するレンズ11と鏡胴に組み込むためのネジ部100とレンズ11で捉えた被写体光をこのレンズホルダ10の外部へと出射するレンズ14とが示されている。また図1には、本発明には直接関係しないが、図1のレンズ組立体1が鏡胴に嵌め込まれた後の防水性能を高めるためにレンズホルダ10の外周に嵌装されるOリング18も示されている。図2には、図1の防水用レンズ組立体1の構成が分解図の形で示されている。図2においては、図2の左側が被写体側であり、図2の右側が鏡胴側である。この例では、図1に示す表面に露出しているレンズ11が防水用レンズに相当するので以降の記載においてはそのレンズを防水用レンズ11と記載する。
【0007】
図2を参照して防水用レンズ組立体1の構成を説明する。
【0008】
図1の防水用レンズ組立体1には、前端面と後端面に開口を有する中空のレンズホルダ10が備えられている。そのレンズホルダ10の内部にレンズ11〜14と絞り15と遮光シート16とOリング17とが収容される。この例では、レンズ11〜14が第1群、第2群、第3群、第4群の4群構成になっており、4群構成の中の第1群のレンズが特許文献1にある様に防水用レンズ11として働く。なお、図2には、図1に示す防水用レンズ組立体11が鏡胴に組み込まれた後で防水性能を発揮するOリング18も示されている。
【0009】
図2を参照して防水用レンズ組立体1の組立の手順を簡単に説明する。
【0010】
図2の分解図に示す様に、まず第4群のレンズ14がレンズホルダ10に挿入され、その後絞り15が挿入される。この第4群のレンズ14の配置と絞り15との間の位置関係が得られるように光軸の調整が行なわれたら、次に第3群のレンズ13が装着され、その第3群のレンズ13の外周部に遮光シート16が添付される。そうしたらさらに第2群のレンズ12が光軸があうように挿入され、最後にOリング17が溝111に装着された第1群のレンズつまり防水用レンズ11が挿入されて図2の防水用レンズ組立体1が組み立てられる。こうして防水用レンズ組立体1が備えるレンズホルダ10内にレンズ11〜14、絞り15、遮光シート16、Oリング17が収容されたら、もう一つのOリング18がレンズホルダ10の外周に嵌装され鏡胴内部に組み込まれる。
【0011】
図3は、防水用レンズ11の溝111にOリング17が装着される前の状態と防水用レンズ11の溝111にOリング17が装着された後の状態を示す図である。
【0012】
図3の左側には、Oリング17が防水用レンズ11の溝111に装着される前の状態が示されており、中央にはOリング17が防水用レンズ11の溝111に装着された後の状態が示されている。図3の中央に示す状態の防水用レンズ11がレンズホルダ10内に組み込まれる。
【0013】
しかしながら、作業者が防水用レンズ11をレンズホルダ10に組み込もうとしているときに防水用レンズ11をOリング17が下向きになるように持ってしまうと、図3の右側に示す様にOリング17が防水用レンズ11から脱落してしまう。このようにレンズホルダ10に防水用レンズ11を組み込もうとしているときにOリング17が防水用レンズ11から脱落する事態が多発すると、組立作業の能率がとても悪くなる。
【0014】
また、これを防止するためにOリングを先に組み込んでおいて後から防水用レンズを挿入することが考えられるが、そうするとレンズホルダを組む込むときに防水用レンズの外周にOリングを嵌め込みながら装着することになり、組み立てるのが却って難しくなってしまう。
【特許文献1】特開2002−90603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑み、レンズホルダに組み込む際のOリングの脱落が防止された防水用レンズおよびその防水用レンズがレンズホルダ内部に組み込まれた防水用レンズ組立体およびその防水用レンズ組立体を備えた撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する本発明の防水用レンズは、防水用レンズにおいて、外周を取り巻く、Oリングが装着される溝であって、その溝の底部からOリング装着側に向かって徐々に太径となる斜面を有する溝が形成されてなることを特徴とする。
【0017】
上記本発明の防水用レンズによれば、上記溝の底部から上記Oリング装着側に向かって徐々に太径となる斜面を有する溝が形成される。このため、そのOリングが上記溝の斜面を下って溝の底部に一旦装着されると抜け難くなる。
【0018】
その結果、作業者がレンズホルダに当該防水用レンズを組み込もうとしてOリングが装着された防水用レンズをどのような姿勢にして持ったとしても、防水用レンズからOリングが脱落することがなくなり、組立作業がスムーズに能率良く行なわれるようになる。
【0019】
以上説明した様に、レンズホルダ内部に組み込む際のOリングの脱落が防止された防水用レンズが実現する。
【0020】
ここで、上記外周の、上記溝よりもOリング装着側とは反対側の外径が、その溝よりもOリング装着側の最大外径よりも太径に形成されてなることが好ましい。
【0021】
当該防水用レンズがレンズホルダに組み込まれて防水用レンズ組立体が構成されると、レンズホルダに、Oリング装着側とは反対側の外周を支持させつつOリングを圧縮させた状態に保たせることができ、Oリングにより好適な防水機能を果たさせることができる。
【0022】
つまり、上記防水用レンズがレンズホルダに組み込まれると、以下に示す本発明のレンズ組立体が構成される。
【0023】
すなわち、上記目的を達成する本発明のレンズ組立体は、外周を取り巻く、Oリングが装着される溝であって、その溝の底部からOリング装着側に向かって徐々に太径となる斜面を有する溝がされてなる防水用レンズと、
上記溝に装着されてなるOリングと、
上記防水用レンズと上記Oリングを収容してそのOリングにより防水性を保つレンズホルダとを備えたことを特徴とする。
【0024】
ここで上記防水用レンズは、さらに、上記外周の、上記溝よりもOリング装着側とは反対側の外径が、その溝よりもOリング装着側の最大外径よりも太径に形成されてなるものであって、
上記レンズホルダが、上記防水用レンズの、上記溝よりもOリング装着側とは反対側の外周を支持するとともに上記溝に装着されたOリングを圧縮した状態に保つものであることが好ましい。
【0025】
また上記目的を達成する本発明の撮影装置は、本発明の防水用レンズ組立体と撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【0026】
そうすると、本発明の防水用レンズ組立体を撮影装置に組み込むことでその撮影装置に所望の防水性能を発揮させることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上、説明したように、レンズホルダ内部に組み込む際のOリングの脱落が防止された防水用レンズ、その防水用レンズがレンズホルダの内部に組み込まれた防水用レンズ組立体、およびその防水用レンズ組立体を備えた撮影装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態である防水用レンズ組立体1Aを備えた撮影装置2が2箇所に組み込まれた自動車の構成を示す図である。図4には、運転席からは見えない位置の画像を運転席にある表示画面(不図示)上に映し出すために、左車輪の部分と後方との2箇所に撮影装置2が取り付けられた場合の例が示されている。この場合には、撮影装置2が車外に取り付けられるので双方とも防水性が必要となる。
【0030】
図5は、図4の自動車に組み込まれた撮影装置2の構成の一例を示す図である。
【0031】
図5に示す撮影装置2のハウジング20A内には、撮像素子2Aの露光面がレンズ組立体1Aの結像面にくるように、かつレンズ組立体1Aの光軸と撮像素子2Aの光軸とがあうように撮像素子2Aが実装された基板20Aとレンズ組立体1Aとが収容されている。
【0032】
図6は、図5の撮影装置に用いられる防水用レンズ組立体1Aを示す図である。また、図7は、従来の防水用レンズ組立体1を示す図である。
【0033】
図6(a)には、本発明の防水用レンズ組立体1Aの正面図(図1の上面図に対応する)が示されており、図6(b)には、6(a)の中央のE−E線で切断し切断した断面を側方から見た図が示されており、図6(c)には、図6(b)のB部拡大図が示されている。また、図7(a)〜図7(c)には、図6(a)〜図6(c)に対応する従来のレンズ組立体1の図がそれぞれ示されている。
【0034】
図6に示す本実施形態の防水用レンズ組立体1Aは、図7と図1〜図3に示す従来の防水用レンズ組立体1と同じ外観を持ち、内部の構成も防水用レンズ11Aを除いては同じ構成部材で構成されている。
【0035】
そこで、まず図7を参照してレンズ組立体1の従来の構成を説明し、その後図6を参照して本発明において従来のものにどのような改良が加えられたかを説明する。
【0036】
図7に示す従来の防水用レンズ組立体1には、外周を取り巻く、Oリング17が装着される溝111が形成されてなる防水用レンズ11と、その溝111に装着されてなるOリング17と、防水用レンズ11とOリング17を収容してそのOリング17により防水性を保つレンズホルダ10とが示されている。
【0037】
図7に示す防水用レンズ組立体1は、防水用レンズ11が外周に平坦な溝111が形成されてなるものであって、レンズホルダ10が、防水用レンズ11の、その溝111よりもOリング17が装着された側とは反対側の外周を支持するとともに溝111に装着されたOリング17を圧縮した状態に保つ構造を持つ。
【0038】
このような構成を持つ従来のレンズ組立体1にあっては、図7のA部拡大図に示すように防水用レンズ11の外周に平坦な溝111が設けられていたために組立を行っている最中に作業者がOリング17を装着した防水用レンズ11を下方に向けて持ってしまうと、Oリング17が防水用レンズ11から脱落してしまうという事態が発生していた。
【0039】
そこで、図6に示す本発明のレンズ組立体1Aにおいては、従来の防水用レンズ11に設けられていた平坦な溝111が、図6(b)、図6(c)に示す様に溝の底部からOリング17の装着される側に向かって徐々に太径となる斜面を有する溝112に変更されている。
【0040】
この変更により、本発明の防水用レンズ組立体1AにおいてはOリング17が溝111に装着されたときには図6(c)のA部拡大図に示す様にOリング17がその溝112の斜面を下って溝112の底部にまで入り込んだ状態になるので溝112からOリング17が抜け難くなる構造が実現する。この構造が実現すると、組立を行っている最中に作業者がOリング17を下方に向けて防水用レンズ11Aを持ったとしてもOリング17が溝112から脱落することが防止される。こうして防水用レンズ11AからのOリング17の脱落が防止されると組立作業の能率が良くなる。
【0041】
以上、説明したように、レンズホルダに組み込む際のOリングの脱落が防止された防水用レンズ、その防水用レンズがレンズホルダ内部に組み込まれた防水用レンズ組立体およびそのレンズ組立体を備えた撮影装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】防水用レンズ組立体1の例を示す外観図である。
【図2】図1の防水用レンズ組立体の内部構成を示す分解図である。
【図3】防水用レンズ11に第1のOリング17が装着されるときの状態と防水用レンズ11に第1のOリング17が装着された後の状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態である防水用レンズ組立体1Aを備えた撮影装置2が2箇所に組み込まれた自動車の構成を示す図である。
【図5】図4の自動車に組み込まれた撮影装置2の構成を示す図である。
【図6】図5の撮影装置に用いられる防水用レンズ組立体1Aを示す図である。
【図7】図6と対比される、従来の防水用レンズ組立体1を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 1A レンズ組立体
10 レンズホルダ
11 防水用レンズ(第1群)
111 溝(従来)
112 溝(本発明)
12 第2群
13 第3群
14 第4群
15 絞り
16 遮光シート
17 Oリング
18 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水用レンズにおいて、
外周を取り巻く、Oリングが装着される溝であって、該溝の底部からOリング装着側に向かって徐々に太径となる斜面を有する溝が形成されてなることを特徴とする防水用レンズ。
【請求項2】
前記外周の、前記溝よりもOリング装着側とは反対側の外径が、該溝よりもOリング装着側の最大外径よりも太径に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の防水用レンズ。
【請求項3】
外周を取り巻く、Oリングが装着される溝であって、該溝の底部からOリング装着側に向かって徐々に太径となる斜面を有する溝がされてなる防水用レンズと、
前記溝に装着されてなるOリングと、
前記防水用レンズと前記Oリングを収容して該Oリングにより防水性を保つレンズホルダとを備えたことを特徴とする防水用レンズ組立体。
【請求項4】
前記防水用レンズは、さらに、前記外周の、前記溝よりもOリング装着側とは反対側の外径が、該溝よりもOリング装着側の最大外径よりも太径に形成されてなるものであって、
前記レンズホルダが、前記防水用レンズの、前記溝よりもOリング装着側とは反対側の外周を支持するとともに前記溝に装着されたOリングを圧縮した状態に保つものであることを特徴とする請求項3記載の防水用レンズ組立体。
【請求項5】
請求項3記載の防水用レンズ組立体と撮像素子とを備えたことを特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−216706(P2008−216706A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55074(P2007−55074)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】