説明

防汚フィルタ

【課題】フィルタ表面に付着した油滴の液垂れ防止やシートがもつ油捕集性を強化することに着目し、高い防汚性、及び油捕集性を有し、しかも長期間使用することができる防汚フィルタの提供する。
【解決手段】油含有雰囲気を排気する排気口に取り付けられる防汚フィルタ10であって、該防汚フィルタは繊維で構成された層1、2、3を有してなり、排気口に取り付けられて捕集した油分が移行してくる側の端部に、その移行してくる油分が突き当たる方向に延びる線状の液遮断部7を有する防汚フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気扇やレンジフード等に取り付けられて使用される防汚フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
換気扇やレンジフードの吸入口には通常、グリスフィルタと呼ばれる金属製のフィルタが取り付けられている。それにより調理時に発生する油煙や埃等を捕集し、排煙用のファン等の内部部品などが直接汚れないようにする。このグリスフィルタは通常小さな開口部や凹凸を多数有し、掃除が面倒であり、その手間を軽減するため外側に更に不織布等の素材からなる使い捨ての防汚フィルタを取り付けて使用することが多い。この種の防汚フィルタの基本性能として防汚性及び油捕集性が挙げられる。防汚性はレンジフードのファンによって吸引される油煙等をフィルタにより通過させずグリスフィルタの汚れを防止する特性である。油捕集性とは、油煙等に含まれる油分をフィルタ内に捕集する特性であり、この捕集量ができれば多いものが望まれる。
【0003】
上記の防汚性及び油捕集性を従来のものに対して大幅に高め、油煙等の裏抜け防止性を向上したフィルタが特許文献1に開示されている。これは撥油性を有し繊維径が5μm以上35μm未満である繊維からなるシートを用いたフィルタであり、繊維の持つ撥油性等を利用して油煙等の裏抜けを防止する。また非撥油性のシートと組み合わせて捕集能力を向上させたり、空間形成層と呼ばれる目が粗く空気の抵抗が少ないシートと組み合わせたりすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2008/14820号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された防汚フィルタにより防汚性及び油捕集性は大幅に向上した。上記の防汚フィルタをはじめ本発明者らはさらにその性能を高めるべく研究開発及び使用実態に係る調査を進めたところ、この種のフィルタの交換時期は、フィルタに捕集された油分が飽和し油滴として垂れ落ちる、あるいはその手前の段階を見て判断されることが分かってきた。
【0006】
かかる点に鑑み、本発明は、高い防汚性及び油捕集性を有し、しかも捕集した油分の液垂れ防止性を有し長期間使用することができる防汚フィルタの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、油含有雰囲気を排気する排気口に取り付けられる防汚フィルタであって、該防汚フィルタは繊維で構成された層を有してなり、排気口に取り付けられて捕集した油分が移行してくる側の端部に、その移行してくる油分が突き当たる方向に延びる線状の液遮断部を有する防汚フィルタを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防汚フィルタは、高い防汚性と油捕集性とを発揮し、しかも捕集した油分が油滴として垂れ落ちることを抑え長期間使用することができるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明における実施形態(実施形態1)としての防汚フィルタを空気流入方向から模式的に示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1に示すII−II線断面の断面図である。
【図3】本発明における防汚フィルタをレンジフードに取り付ける状態を設置壁面の側方から見た側面図である。
【図4】本発明における実施形態(実施形態1)としての防汚フィルタを取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の防汚フィルタにおける油の捕集の様子を拡大して示す断面模式図である。
【図6】本発明における別の実施形態(実施形態2)としての防汚フィルタを取り付ける状態を模式的に示す分解斜視図である。
【図7】本発明におけるまた別の実施形態(実施形態3)としての防汚フィルタを取り付ける状態を模式的に示す分解斜視図である。
【図8】本発明におけるさらに別の実施形態(実施形態4)としての防汚フィルタを取り付ける状態を模式的に示す分解斜視図である。
【図9】本発明におけるさらにまた別の実施形態(実施形態5)としての防汚フィルタを取り付ける状態を模式的に示す分解斜視図である。
【図10】防汚フィルタに対する油の捕集性の試験状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてその好ましい実施形態を示し、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明における実施形態(実施形態1)としての防汚フィルタを空気流入方向から示した一部切欠斜視図である。図2は図1に示すII−II線断面の断面図である。
【0011】
本実施形態における防汚フィルタ10は、3層のシート材から構成され、3層のシート材はそれぞれシート状に成形され、四辺10a、10b、10c、10dでシール加工された端縁シール部8により接合される。これによりフィルタ10は一体化した積層シートとされている。その接合状態を断面で示したのが図2であり、線状シールにより3層が端縁シール部8で熱融着され一体化されている。積層シートにするための一体化は、端縁シール部8に制限されず、フィルタ全面を多数のポイントエンボスにより3層がポイントシール部(図示せず)で熱融着され一体化されていてもよく、端縁シール部8とポイントシール部を組み合わせてもよい。なお、点状のポイントシール部(図示せず)はシート全体に多数間欠的に施すことが好ましくその配設パターンとしては格子状であったり、直線が並列した縞状であったりしてもよく、フィルタの大きさや用途等に合わせ適宜定めることが好ましい。
【0012】
本実施形態のフィルタにおける上下方向Dxは取り付け上下方向をあらわし、fは上側であり、gは下側である。上側fにある上端縁10aを排気口の上側に配置し、下側gにある下端縁10bをその下側に配置する。本発明において上下とは、レンジフード等にフィルタを取り付ける際に、自由落下方向を「下」とし、その反対方向を「上」とする。図1に示した左右方向Dyは上記上下方向Dxに直交する方向をさす。
【0013】
一般的に防汚フィルタの汚れは、油煙等の立ち上る直上もしくはファン吸い込み口の吸引力が強い中心に油分が付着し、毛細管力により該中心を基点とし広がっていく。しかし、その左右方向もしくは四隅の部分にまではなかなか及ばず、通常、汚れの中心から油分は重力の影響を受け下方向に移行する。本実施形態の防汚フィルタ10によれば、下端部Qの線状の液遮断部7の作用によって、例えば油分の幅方向Dy左右方向への広がりが促され、効果的に役立たなかった領域を利用し、より多く油分を捕集することができる。
【0014】
また、本実施形態のフィルタ10は、図1のように、空気流入方向から繊維で構成された層からなる油捕集層1、繊維で構成された層からなる撥油層2、繊維で構成された層もしくは多孔質層状部材で構成された層からなる整流層3の3層のシート材から構成されている。図2に示すとおり油煙等を含む油含有雰囲気の濁流Wは本実施形態のフィルタ10を通過し、油煙等が清浄され、これを含まない清流Wとなってファン側に流れる。このとき、油捕集層1で捕集された油分は毛細管力により油捕集層1の厚み方向へ移行し内部に浸透していくが、撥油層2のもつ撥油性によりファン側への移行は防がれ裏抜けは極めて効率的に防止される。これを続けることにより油分がフィルタ10内に溜まり、後で図5に基づき説明するように、液遮断部の作用により捕集層で飽和状態となり表面に滴下しそうな油分の下方向gへの移行を妨げ、レンジ周りでの液垂れを防止ないし抑制する。その結果、従来のフィルタの使用限度を超えた使用時にもレンジ周りが油滴で汚れることを防ぐことができる。
【0015】
本実施形態における線状の液遮断部7は、通常のシール加工によって形成することができ、例えば前述の端縁シール部8と同様に熱融着により形成することができ、なかでも熱融着によりフィルム化することが好ましい。また、超音波によるシール加工や、接着剤やフッ素樹脂等により繊維空間を埋めたり、別材を貼り付けたりしても形成することができる。本発明において液遮断部は、他の部分に比べて油分の透過や移行を少なくとも一時的に遅くらせることができればよく、本発明の作用効果を損ねない範囲で油分の量や通過時間によって該液遮断部を越えて油分の移行があってもよい。なかでもシート内で油分の透過ないし移行が実質的になされないことが好ましい。フィルタに液遮断部を形成した場合、液遮断部における油分の移行性の程度は特に限定されないが、フィルタを水平に設置し、液遮断部7の近傍に油分をしみ込ませると油分が拡がろうとするが、その油分の移行を妨げる程度によって評価してもよい。あるいは、その遮断性をフィルタの厚み方向への液の透過の程度によって評価してもよい。液遮断部の油分の移行に対する液の遮断効果を更に高めるには、液遮断部7の幅や本数を増すことが好ましい。本実施形態においては、防汚フィルタの捕集した油分が移行してくる端部に、移行してくる油分が突き当たる方向に延びる線状の液遮断部7が形成されている。これにより、上述した特定の積層構造による高い油捕集性及び防汚性とともに、顕著な油垂れの防止性を発揮する。ここで「移行してくる油分が突き当たる方向」とは、油分の移行を少なくとも一時的に遮る方向のことをいい、油分の移行方向に対し直交することはもとより、液遮断部が蛇行していたり、曲折していたりするなど、必ずしも直交していなくても線状の液遮断部が油垂れの防止性を示す範囲において実質的に直交する形態を含む。なお、上記液遮断部の特徴において、実際的には油分がフィルタ表面に滴化したものが重力によりしたたり、表面を伝い液遮断部を越えて下方向に移行することも場合によりありうる。
【0016】
図3は本発明における防汚フィルタ10をレンジフードに取り付ける状態を設置壁面の側方から見た側面図である。本実施形態においてレンジフード6は壁面5(または天井部)に取り付けられており、防汚フィルタ10はグリスフィルタ61の外面に装着される。同図において、レンジフード6の内部構成部品(ファン等)の図示を省略し、また防汚フィルタ10の構造を概略的に示し、円内で拡大して断面構造として詳しく示した。防汚フィルタ10をグリスフィルタ61に取り付ける方法は特に限定されないが、両面テープや磁石などを用いて接着してもよいし、グリスフィルタの縁62a、62bを巻き込むようにしてフィルタ10の上下の端部10a、10bを折り込んでもよい。あるいは市販の専用枠などに設置してもよい。防汚フィルタ10を取り付ける表裏の向きは円内の一部拡大図に示すとおり空気流入方向である濁流W側から油捕集層1、撥油層2、そしてグリスフィルタ側が整流層3となる向きとされている。
【0017】
本実施形態において防汚フィルタ10が取り付けられる取り付け角度θは0°以上90°未満であることが好ましく、20°〜45°であることがより好ましい。ここでいう取り付け角度θとは、自由落下方向を示す鉛直線Lと防汚フィルタ10の取り付け線Lとがなす角度である。なお、上記角度θは、レンジフードにおいては通常それに取り付けられているグリスフィルタの構造で定まるものである。
【0018】
図4は、更に詳しくグリスフィルタ61に防汚フィルタ10を取り付ける状態を模式的に示す分解斜視図である。本実施形態ではグリスフィルタ61が2枚1組の第1グリスフィルタ61a、第2グリスフィルタ61bで構成され、そのグリスフィルタの枠部分62に囲まれた空気の流入が行われる開口領域64が設けられている。そして、グリスフィルタの枠部分62の上辺62a及び下辺62bを越えグリスフィルタ61の全面を覆うように防汚フィルタ10が装着されている。グリスフィルタ61には開口領域64内を仕切る格子状の桟部63が設けられ、これで仕切られる各区画に孔のあいた小開口部64aが複数設けられている。上記グリスフィルタ61(61a、61b)に防汚フィルタ10が取り付けられる。本実施形態において、グリスフィルタの枠部分62の上端縁62aに対応する位置は防汚フィルタ10上部基線41aとなっており、他方グリスフィルタ枠部分の下端縁62bに対応するのは防汚フィルタ10下部基線41bとなり、グリスフィルタ61の全体を覆うようにされている。防汚フィルタ10がグリスフィルタ枠部分よりも大きい場合は、縁部間隔tに示す部分を、グリスフィルタ61(61a、61b)の端縁をレンジフードの内側に巻き込んだ状態で装着してもよい。また、グリスフィルタ61を巻き込まず、グリスフィルタ61より延出する部分(縁部間隔t)を単に折り曲げたり、その外側にあるグリスフィルタ61固定用の縁部やレンジフードの框体部分に延出させて取り付けたりしてもよく、レンジフードの形状や構造、取り付けやすさ、見栄え等に合わせ装着することが好ましい。
【0019】
本実施形態のフィルタ10において線状の液遮断部7は下端部Qに配置されている。本発明において防汚フィルタ10の端部とはフィルタの端縁を含まず、端縁の近傍で線状の液遮断部7が配置されて効果的に油の垂れ落ち防止性を発揮する領域と定義される。上記に述べた高い油の捕集性と防汚性とを発揮し、しかも効果的な油の垂れ落ち防止性を同時に実現することを考慮すると液遮断部7は開口領域64の下端Sよりも下側に配置されることが好ましい。液遮断部7が開口領域下端Sより幅tだけ下方にあることが好ましい。各部位の具体的な寸法はレンジフードや換気扇の寸法によって適宜決めればよいが、汎用されているレンジフードを考慮すると、防汚フィルタ10の左右方向Dyの総幅を、20〜100cmとし、上下方向Dxの総幅を20〜50cmとすることが好ましい。なお、上記の寸法は汎用のレンジフードに適用する際の好ましい範囲として示しており、本実施形態のものをこれより大幅に大きいないし長尺の防汚フィルタとして、使用時に都度上記寸法に合うように裁断して用いてもよい。
【0020】
線状の液遮断部7の幅tは0.5〜20mmが好ましく、2〜10mmがより好ましい。グリスフィルタの枠の幅tは2〜30mmであることが一般的である。これに対して、前記の幅tは1〜20mmであることが好ましい。防汚フィルタ10の下方でグリスフィルタの下辺62bに対応する補助線41bから線状の液遮断部7までの距離をtとすると、tの好ましい範囲はt−t−tとして求められる。折り込まれる部分もしくはグリスフィルタの外方に延在させる部分の幅tは0〜40mmであることが好ましい。
【0021】
図5は本発明の防汚フィルタ10における油の捕集の様子を拡大して示す断面模式図である。同図中、太線の円は油捕集層1を構成する非撥油性の繊維1aであり、細線の円は撥油層2を構成する撥油性の繊維2aである。斜線が施された円は油滴91を示す。油分ないし埃等からなる油滴91は先ずレンジ側に位置する油捕集層1の非撥油性繊維1aに付着する。油捕集層1に付着した油滴91は、その数が増加すると徐々に油捕集層1の表面に濡れ広がったようになり、油液溜り92を形成する。油液溜り92は繊維の表面張力やレンジフード6のファンの吸引力によってファン側に向かって浸透していき、防汚フィルタ10の厚み方向にも移行し広がる。ただし、本実施形態においてはファン側に向かって移行する油分は油捕集層1が存在する領域を過ぎると撥油層2に達するため、それを構成する撥油性繊維2aの撥油性によって液溜92のそれ以上の浸透が妨げられる。その結果、油分のファン側への移行を効果的に遮断しその裏抜けを許さず、グリスフィルタ61やレンジフード6のファン等の内部部品に汚れのない状態を長期間維持することができる。そして、本実施形態においては、このように液垂れにつながりやすい油含有雰囲気の吸入側に液溜りができる積層シートにおいて前記線状液遮断部が作用し特に一層高い効果を発揮する。
【0022】
油煙等を含む濁流Wが油捕集層1・撥油層2を通過すると油捕集層1・撥油層2を構成する繊維の密度が高いため流れが遅くなり、更にグリスフィルタ61を仕切る枠部分62や桟部63等も抵抗となり流速が遅くなる原因であった。これに対し本実施形態において整流層3を配置する効果として、嵩高で空間形成能の高い整流層3が油捕集層1・撥油層2とグリスフィルタ61との間に存在することによりこの領域で気流を整え上述した油滴91から油液溜り92への成長の状態を好適化し、油捕集層1及び撥油層2の相互作用を一層効果的に引き出すことができる。この点により、本実施形態の整流層3は油捕集層1及び撥油層2に比べ充填率が低く通気性の高い疎な構造であることが好ましい。つまり本実施形態の防汚フィルタ10は、流体吸入の上流側が密(つまり繊維密度が高い)で、下流側(フィルタ取り付け部側)が疎(つまり繊維密度が低い)な層構造を持つフィルタであることが好ましい。また、油捕集層1及び撥油層2の支持体としての働きを有していることが、本発明のフィルタの取り扱い性が良好になる点から好ましい。
【0023】
次に、本発明の第2、3、4、5実施形態としての防汚フィルタについて、図6〜9を参照し、主として第1実施形態との相違点について説明する。第2実施形態の防汚フィルタ20においては、図6に示すように、上側1条及び下側1条の合計2条の線状の液遮断部7(7a、7b)が配設され、下側の液遮断部7aは実施形態1と同じ寸法及び形であり、またグリスフィルタの開口領域との位置関係も同じものとされている。したがって、液遮断部7を上側及び下側に配設することにより、上下どちらを上側に配置しても捕集油の垂れを防ぐ効果が発現でき、取り付け間違えを防止することができる。
【0024】
第3実施形態の防汚フィルタ30においては、図7に示すように、上端部R及び下端部Qに2本ずつの液遮断部7a、7bが開口領域64内に配設されている。図7で領域Aを拡大して示した拡大平面図を併せて示している。液遮断部7cと7sの離間距離である縦方向幅tは特に限定されないが、油垂れの防止性を考慮して例えば5〜50mmとすることが好ましい。なお、その他の寸法(幅t等の好ましい範囲は第1実施形態と同様である。なお、これらの寸法の関係は上端部Rについて等しくされ、防汚フィルタ30は点対称のものとして上端部Rと下端部Qとを入れ替え可能とされている。図7に示す様に遮断部を2本配設することで、Dx方向への浸透を遅らせることができ、油垂れを一層防止することができる。また、下端部Qに設けられた下端下側の液遮断部7sと下端上側の液遮断部7cからなる2条の液遮断部7aの間部分であるtに油染みが現れた時に交換すれば、油垂れを事前に防ぐことができ、交換時期を示すインジケーターの役割を補うこともできる。線状の液遮断部7a、7bの幅tは、第3実施形態では図7のように同じ幅で形成したが、一方が大きくてもよい。
【0025】
次に第4実施形態の防汚フィルタ40について説明すると、図8に示すように、上下方向Dxに延びる線状の液遮断部7cと横方向に延びる線状の液遮断部7dとが交差して液遮断部7が構成されている。図8に示す様にフィルタの不透過部により分割し配設することにより、各分割されたフィルタ部分に油分の移行を留めることができ、油分の移行をDx方向やDy方向に防ぐことができる。
【0026】
さらに第5実施形態の防汚フィルタ50においては、図9に示すように、左右方向Dyに延びる液遮断部7が上下方向Dxに複数本並列して、液遮断部7のいずれかが任意に開口領域内に配置されるよう配設されている。この様に上下方向Dxに複数本並列して液遮断部を配置することでDx方向に油分の透過や移行を遅らせることができる。
【0027】
本発明の防汚フィルタは、前記の第1〜5実施形態に制限されるものではない。例えば線状の液遮断部7の配設パターンや形状も上記に示したものだけではなく、液遮断部も直線だけではなく、曲線や所定の図形の連続等にしてもよいし、ジグザグに曲折した折れ線状のものでもよい。また、本発明の防汚フィルタは調理時に発生する油煙等を捕集するのに好適に用いられるものであるが、その他にエアコン用フィルタや排気用ダクトのフィルタ等の気体用フィルタとして有用である。また、浴室の排水溝用防汚フィルタ、浄水器用フィルタを始めとする各種の液体用のフィルタとしても用いることができる。さらに、本発明の防汚フィルタをレンジフード等に取り付ける場合にグリスフィルタに縁の部分を折り返して取り付けたり、その部分を折り返さずにマグネットにより取り付けてもよく、あるいはグリスフィルタを用いることなく本発明のフィルタを単独で用いてもよく、あるいは、余分な箇所は切りとって取り付けてもよい。また、線状の液遮断部は液垂れ防止性に係る要部において連続していればよく、例えば前記各実施形態と異なり防汚フィルタの横幅方向の全域にわたって連続してなくてもよい。なお、上記実施形態の防汚フィルタの積層構造及び捕集層、撥油層、及び整流層の材料や寸法等の各緒言は、国際公開第WO2008/14820号パンフレットに記載の事項を参照することができる。
【0028】
上記各実施形態の防汚フィルタは3層構造であり、調理等により生じる油分を含む雰囲気(油含有雰囲気)の流入方向側にあるのが非撥油性の繊維からなる油捕集層1である。次に油捕集層1よりグリスフィルタ側に位置する撥油性の繊維からなる撥油層2があり、さらにグリスフィルタ側に位置する整流層3は立体化した疎な空間を有する層からなる。
【0029】
上記3層構造からなるシートの材料は特に制限されないが、使い捨てのものとして適した比較的安価かつ環境適合性のある材料であることや、油捕集性能が高いことが好ましいことを考慮して、油捕集層1及び撥油層2を構成する繊維シートにはそれに適した繊維からなる不織布を用いることが好ましい。また本実施形態のフィルタには耐熱性が付与されていることが好ましく、不織布を構成する繊維はその融点が高く難燃性であることが好ましい。構成繊維として熱融着性を有する難燃性繊維を用いた場合は、厚みがあり通気による圧力損失を低減することが可能な不織布であるエアスルー不織布とすることができ、これを好適に用いることができる。
【0030】
油捕集層1又は撥油層2を構成するシート(以下、これらを総称して繊維シートという。)として用いられる不織布としては、従来知られている種々のタイプのものを特に制限なく用いることができる。例えばメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、繊維間を熱接着させるヒートボンド不織布のエアスルー不織布、エアレイド不織布、繊維を交絡させるスパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、樹脂等の塗工により繊維を接着するケミカルボンド不織布などが挙げられる。油捕集層1又は撥油層2に用いられる不織布は、液垂れ防止の観点から、下端部Qの線状の液遮断部7の延びる方向である左右方向Dyへの繊維の配向率の方が上下方向Dxの繊維の配向率に比べて高いことが好ましい。先に述べたとおり、不織布を構成する繊維はその融点が高いことが望ましい。したがって熱融着によらずシート化が可能な不織布を用いることが有利である。この観点から、例えば、ガラス繊維、炭素繊維などの不燃性繊維、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクラール、難燃ポリエステル、難燃アクリル、難燃レーヨン、難燃ポリプロピレン、難燃ポリエチレンなどの難燃性繊維を用いることが好ましい。あるいは、不燃物繊維及び/又は難燃性繊維を混綿することが好ましい。難燃性繊維とはLOI値が26以上の繊維のことである。
【0031】
フィルタの構成繊維が不燃性繊維や難燃性繊維でない場合、又は不燃性繊維や難燃性繊
維であっても防炎性が不十分である場合には、後加工工程でハロゲン系又はリン系の難燃
剤を繊維に施したり、ポリホウ酸の難燃剤を繊維に施したりしてもよい。あるいは難燃剤
を含んだ樹脂をバインダとして繊維表面に施して、その被膜を形成してもよい。
【0032】
フィルタの構成繊維が不燃性繊維や難燃性繊維でない場合には、該構成繊維として公知の繊維形成用合成樹脂からなる合成繊維、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン系材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系材料、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系材料、ポリアクリルニトリル系材料、レーヨン、各種ゴム等からなる繊維を用いることができる。また、ポリ塩化ビニル等のビニル系材料や、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン系等からなる繊維を用いることもできる。更に、これらの材料の変成物、アロイ又は混合物等からなる繊維を用いることもできる。
【0033】
繊維シートの構成繊維は、その繊維径が5μm以上35μm未満に設定されていることが好ましい。この繊維径は、従来の市販されている様な油捕集用フィルタを構成する繊維シートの構成繊維の繊維径よりも小さい範囲である。小径の繊維を用いることで、繊維間の空隙を小さくすることができ、その結果、油煙等の捕集効果を高めることが可能となる。ファンによる油煙等の吸引効率を低下させることなく、油煙等の捕集効果を一層高める観点から、フィルタの構成繊維のより好ましい繊維径は7μm以上25μm未満である。また、異なる繊維径を有する繊維を組み合わせて用いることにより、高い防汚性を発現することができ、例えば、繊維の一部に25μm以上35μm未満の比較的太い繊維径の繊維が含まれていても、それ以外が5μm以上25μm未満の繊維径の細い繊維で構成されていれば、一層高い捕集効果を発現でき好ましい。
【0034】
防汚フィルタの坪量は特に限定されないが、20〜150g/mが好ましく、20〜100g/mであることがより好ましい。またフィルタの厚みは特に限定されないが、0.5〜10mmが好ましく、1〜8mmであることがより好ましい。本発明においてシートないし層の厚みは特に断らない限り後述する実施例に記載の測定方法に基づく。
【0035】
撥油層2が撥油性を有するようにするためには、(イ)撥油剤を有していない繊維を用いて不織布を作製し、その後に撥油剤又は撥油剤を添加した樹脂を塗工する等、繊維の表面を撥油性処理する方法、(ロ)撥油性の繊維を用いて不織布を作製する方法がある。(イ)の場合、例えば繊維の表面にフッ素系撥油剤をコーティング処理して撥油性を付与すればよい。
【0036】
繊維の表面をフッ素系撥油剤でコーティング処理するためには、例えば繊維の表面にフッ素樹脂のエマルジョンを付与し、これを乾燥させればよい。これによって繊維の表面にフッ素樹脂を膜状に付着させることができる。乾燥後に熱処理を施すことで、繊維の表面に付着したフッ素樹脂の密着性を高めることができる。フッ素樹脂のエマルジョンを繊維の表面に付与するには、例えば該エマルジョンをディッピング(含浸)させたり、該エマルジョンをスプレー噴霧したり、該エマルジョンを泡立て処理したりすればよい。その他の方法として、希釈フッ素ガス、低温プラズマによるもの、グロー放電によるスパッタリングによって、繊維の表面をフッ素化し撥油性を付与することができる。
【0037】
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデン共重合体、及びポリイミド系変性フッ素樹脂、PPS系変性フッ素樹脂、エポキシ系変性フッ素樹脂、PES系変性フッ素樹脂、フェノール系変性フッ素樹脂、パーフルオロアルキルエチレン基を有するアクリレート重合体やメタクリレート共重合体等が挙げられる。また、フッ素樹脂のエマルジョンを用いることもできる。そのようなエマルジョンとしては、例えば旭硝子製のフッ素樹脂であるアサヒガード(登録商標)AG―7000を用いることができる。
【0038】
フッ素樹脂を付着させる量は、フッ素樹脂を付着させる前の繊維の重量に対して0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜2重量%とすることがより好ましい。上記下限以上とすることで、繊維の表面に十分な撥油性を付与することができる。また上記上限以下とすることで、過剰付着に起因するフィルタの通気性の低下が防止される。
【0039】
撥油層2の繊維自体を、撥油性を有する材料から構成する場合、該材料としては、上述した各種のフッ素樹脂を用いることができる。
【0040】
撥油性処理に使用する撥油剤として、フッ素系撥油剤以外に、一部の界面活性剤を用いることもできる。そのような界面活性剤は、これを不織布に塗工し乾燥させることによって、撥油性を発現させることができる。例えば、非イオン性界面活性剤であるアルキルグルコシド、両性界面活性剤であるラウラミドプロピルベタインを不織布に塗工し乾燥させることによって、繊維に撥油性を付与できる。また、フッ素を配合した油剤を表面に塗布した繊維のなかには、加熱することにより繊維表面が撥油性を示すものがあり、そのような繊維を本発明で使用することもできる。そのような繊維の例としては、宇部日東製の超撥油不織布用原綿、UCファイバー HR―PLE(商品名)が挙げられる。
【0041】
撥油性の繊維を用いて不織布を作製する場合に用いられる該繊維としては、フッ素が練り込まれた繊維、フッ素樹脂からなる繊維が挙げられる。そのような繊維の例としては、東レ製のフッ素繊維であるトヨフロン(登録商標)や、デュポン製のテフロン(登録商標)等が挙げられる。
【0042】
整流層3には、それに吸引力が作用しても十分な空間を確保できることが好ましい。この観点から、整流層3の充填率を0.3kPa荷重下で評価することとし、この荷重下での充填率が1〜7%が好ましく、1〜3%がより好ましい。この範囲であれば、防汚フィルタの実使用において吸引力が作用した状態でも流体の速度低下を十分に防止することが可能となり好ましい。
【0043】
整流層3の厚みは特に限定されないが、その厚みを1〜12mmとすることが好ましく、1〜5mmに設定することがより好ましい。こうすることで、上述した流体の流路長を十分に短くすることができる。
【0044】
整流層3は、嵩高な空間を形成し得る材料から構成されていることが好ましい。この観点から、繊維シート及び発泡体等の多孔質体から構成されていることが好ましい。繊維シートから構成されている場合、該繊維シートとしては不織布、織布、編み物地、ネット材料又はこれらの複合材料等を用いることができるが、経済性を考慮すると繊維シートとして不織布を用いることが好ましい。要求される上述の種々の特性を考慮すると、繊維シートとして不織布を用いる場合には、目が粗くかつ強度の高い不織布であるスパンボンド不織布を用いることが好ましい。繊維シートとして不織布を用いる場合、その坪量は10〜50g/m、特に10〜30g/mであることが、通気性を十分に高める点から好ましい。また、繊維シートとして不織布を用いる場合、該不織布として、立体的な二次加工が施されたものを用いることも好ましい。これによって、上述の充填率を容易に達成することが可能となる。立体的な二次加工としては、互いに噛み合い形状となっている一対のエンボスロール間で加熱下に又は非加熱下に不織布を凹凸賦形する加工であるスチールマッチエンボス加工が一例として挙げられる。また、凹凸賦形部材上に載置された不織布に、高圧水流等の高圧流体を吹き付けて、該凹凸賦形部材に対応した形状の凹凸を賦形する立体賦形方法も用いることができる。更に、特開2004−174234号公報の図2ないし図5に記載の装置を用いた立体賦形方法も用いることができる。
【0045】
整流層3として特に好ましく用いられる繊維シートは、スパンボンド不織布をスチールマッチエンボス加工によって立体賦形したものや、ネット材料にスチールマッチエンボス加工によって立体賦形したものである。これらのシートは、構成繊維の目が粗く、かつ充填率が低いという特徴を有している。また、このシートは破断強度が高く、かつ伸度が低いという特徴を有している。発泡体等の多孔質体を用いる場合、該多孔質体としてはポリウレタン製の発泡体が挙げられる。かかる発泡体も、構成繊維の目が粗く、かつ充填率が低いという特徴を有している。また、破断強度が高く、かつ伸度が低いという特徴を有している。そのような発泡体の具体例としては、三次元構造の骨格組織を有するポリウレタン製の発泡体であるブリジストン製のエバーライト(登録商標)SF HR―08やSF HR―13等が挙げられる。
【0046】
上記の実施形態では端縁シール部8により3層を一体化する例を示したが、そのほか繊維ウエブを積層させ、この状態で該繊維ウエブに向けて高圧水流を噴射することが挙げられる。すなわち広義にはスパンレース不織布とすることといえる。あるいは繊維ウエブを積層させ、この状態で該繊維ウエブに熱風を吹き付けて、繊維ウエブの繊維と、他面側に位置する繊維ウエブの繊維とを融着一体化させることが挙げられる。更に、あらかじめシート化した繊維集合体の繊維シートを積層させ、この状態で該繊維シートを熱により部分的融着させ、繊維シートとネットを融着一体化させ固定することによっても製造される。
【0047】
上記の各実施形態においては防汚フィルタについて油捕集層1、撥油層2、及び整流層を有するものとして示したが、別の態様として、整流層を設けず油捕集層1及び撥油層2のみで積層シートを構成したものであってもよく、あるいは油捕集層1又は撥油層2のみの単層のものであってもよい。この場合、薄肉化により多様なレンジフードへの使用も期待することができる。また、部材減少により廉価なものとしてニーズに応えることもできる。他方、上記の3層以外に他の層や部材を配設したものであってもよい。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0049】
[実施例1]
表1に示した構成を有する防汚フィルタ(試験体1)を製造した。油含有雰囲気の吸入方向からみて、油捕集層1、撥油層2、整流層3の3層からなる。それぞれの詳細は下記のとおりである。
・油捕集層(宇部日東化成製:商品名 HR−LE、繊度2.2dtex、繊維径17μm、坪量30g/m)、
・撥油層(宇部日東化成製:商品名 HR−PLE、繊度3.3dtex、繊維径21μm、坪量15g/m)、

整流層(宇部日東化成製:商品名 HR−LE、繊度6.6dtex、繊維径30μm、坪量15g/m
製品サイズはDy600mm×Dx460mmとした。この防汚フィルタ(試験体1)の上端及び下端及び、下端部QにFUJI IMPULSE CO、LTD製のオートシーラーにて6秒間加熱後冷却してシール加工を施し、上端及び下端に端縁シール部8、図7のように下端部Qにおいて上下2列の線状の液遮断部7を形成した。下端下側の液遮断部の位置は、フィルタの下端縁から下側の液遮断部の下端縁まで(つまり、t+t)を6cmとした。下端上側の液遮断部7の位置は、フィルタの下端縁から上側の液遮断部の下端縁まで(つまり、t+t+t+t)を7cmとした。グリスフィルタに縁の部分を折り返して取り付けた状態でその下端から上側の液遮断部までの距離tは3cmであった。
【0050】
[実施例2〜6、比較例1〜5]
下表1に示したとおり線状液遮断部7の列数、加工形態等についてそれぞれ変更を加えた以外は実施例1と同様にして本発明に用いる防汚フィルタの試験体2〜6(実施例2〜6)及び比較のための試験体c1(比較例1)を製作した。試験体5(実施例5)についてはエアスルー不織布(油捕集層)の下端に沿って直線状にコクヨS&T社製のペーパーボンド(商品名:ペーパーボンド)にて接着硬化して液遮断部を作製した。試験体6(実施例6)については、エアスルー不織布(油捕集層)の下端に沿って直線状に旭硝子社製のフッ素樹脂(商品名:アサヒガードAG−7000)を塗布し、115℃にて1時間乾燥し液遮断部を作製した。試験体c1(比較例1)は、オートシーラーでのシール加工を行わなかった。
【0051】
試験体c2〜c5(比較例2〜5)は、市販されているレンジフードフィルタ(いずれも単層の不織布性のもので、線状液遮断部はない。)をそれぞれ未加工で使用した。
【0052】
[厚みの測定方法]
積層フィルタの厚みの測定法としては積層フィルタ10に0.3kPaの荷重を加えた状態で、顕微鏡を用いて積層フィルタの側面を観測し、測定した。このとき厚みを目視で10点測定し、それらを平均した値を厚みとした。また、積層でない単層の場合には、MITUTOYO製の厚み計(商品名:ABSOLUTE)にて0.3kPaの荷重下で測定した値を厚みとした。
【0053】
[評価]
上記で製作した各フィルタ試験体について、油の捕集性、持続性を以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0054】
[油の捕集試験の方法]
財団法人ベターリビングが公表している優良住宅部品性能試験書における換気ユニット(台所ファン)フィルタの油捕集効率試験(BLT VU−08)を参考にして、試験手順を以下のようにして行った。図10にこの試験の実施形態を示す。6はレンジフード、11は定量ポンプ、12は水、13は寸胴、14はフライパン、15はガスレンジ、16は油煙、100はフィルタ試験体である。なお、各フィルタ試験体のレンジフードへの取り付けは図6に示した様に防汚フィルタの上端部10a及び下端部10bをグリスフィルタ枠部分の上端縁62a及び下端縁62bに対応する基線41a及び41bでそれぞれ折り込み、グリスフィルタへ端部を巻き込む様にして設置した。取り付け角度θは30°であった。
1. コンロの上にのせたフライパンに食用油12.5g入れて1分間加熱する。
2. 上方より、水滴を200g/25分で滴下し油煙を発生させる。
3. 発生した油煙を換気扇で排気する。
4. 排気する際にフィルタで油分を捕集する。
5. 1回の試験時間は、30分とする。
6. 後記[油垂れ性評価基準]に照らし合わせ△または×になった時点で試験を終了する。
7. フィルタの油捕集量は、以下の式(1)により算出する。評価について○の場合は1〜6の試験を繰り返し、累積評価を行う。
8. 評価について○の場合は1〜6の試験を繰り返し、累積した油捕集量を求める。
9. 上記で得られた累積した油の捕集量を1ヶ月当あたりの平均捕集量5.6g(アンケート調査に基づく。)で月割り計算して算出した。
なお、レンジフードの風量は「強」に設定し、使用したレンジフードファンは日立製作所製の型番HB−606M−BLを使用した。
【0055】
[数1]
油の捕集量(g)=(試験後フィルタ試験体重量―試験前フィルタ試験体重量) (1)
【0056】
[油垂れ性評価基準]
前記の油の捕集試験の条件において、各自の油分捕集の後にガスレンジに垂れ落ちた油滴の有無を目視にて確認して、下記の3段階で評価した。
○ 油が垂れず、グリスフィルタの下端でフィルタ試験体を折り込んだ部分にできたレンジフード本体との隙間(溝)を汚していなかった。
△ 油がフィルタ下端部に移行し上記レンジフード本体との隙間(溝)を汚していた。
× 油がフィルタ下端部に移行し、ガスレンジ周りに油滴が垂れた。
【0057】
[油の捕集率の試験方法]
前記の[油の捕集試験の方法]における準備および手順1.〜4.までを同様に行う。それ以降の手順を下記のように行う。
5.1回の試験時間は、30分とし、3回行って平均値を用いる。
6.フィルタの油捕集率は、以下の式(2)から算出し、3回の測定の平均値を用いる。
なお、レンジフードに到達した油量は、フライパンに入れた油量から試験後フライパンに残った油量、レンジ周りに飛び散った油量を差し引いて計算した。
【0058】
[数1]
油捕集率(%)=(油の捕集量(g)/レンジフードに到達した湯量)×100 (2)
【0059】
〔グリスフィルタの防汚性〕
前記の油の捕集率の試験後のレンジフードにおいて、フィルタを取り除きグリスフィルタの汚れ具合を目視して、下記の3段階で評価した。
○ グリスフィルタに油が付着していない。
△ グリスフィルタに油が若干付着している。
× グリスフィルタに油が多量に付着している。
【0060】
[表1]

【0061】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例のフィルタ試験体1〜6は、油の捕集性が高く、したがってグリスフィルタの防汚性もまた高く、かつ液垂れ防止性が極めて高いことが分かる。
【符号の説明】
【0062】
1 油捕集層
2 撥油層
3 整流層
5 壁
6 レンジフード
7 線状液遮断部
8 端縁シール部
61 グリスフィルタ
62 枠部分
63 桟部
64 開口領域
91 油滴
92 油液溜り
10、20,30,40,50 防汚フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油含有雰囲気を排気する排気口に取り付けられる防汚フィルタであって、該防汚フィルタは繊維で構成された層を有してなり、排気口に取り付けられて捕集した油分が移行してくる側の端部に、その移行してくる油分が突き当たる方向に延びる線状の液遮断部を有する防汚フィルタ。
【請求項2】
前記繊維で構成された層が撥油性を有する請求項1に記載の防汚フィルタ。
【請求項3】
前記油含有雰囲気が流入する方向からみて、前記繊維で構成された層からなる油捕集層及び撥油層、並びに整流層の順に配置された請求項1又は2に記載の防汚フィルタ。
【請求項4】
前記線状の液遮断部が前記フィルタの端部においてその端縁より0.5〜100mmの範囲内に設けられた請求項1〜3のいずれかに記載の防汚フィルタ。
【請求項5】
換気扇又はレンジフードに取り付けられる請求項1〜4いずれかに記載の防汚フィルタ。
【請求項6】
前記線状の液遮断部が排気口の開口領域外の位置に設置される請求項1〜5いずれかに記載の防汚フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−31149(P2011−31149A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178536(P2009−178536)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】