説明

防汚塗料

【課題】塗膜の耐クラック性と長期の防汚性を有する防汚塗料を提供する。
【解決手段】樹脂側鎖に式
【化1】


(式中、Xは
【化2】


で表される基、nは0もしくは1、Yは炭化水素、Mは2価金属、Aは一塩基酸の有機酸残基を表す。)で表される基を少なくとも1つ有するアクリル樹脂であり、上記有機酸残基の5〜100モル%が環状有機酸由来のものである樹脂を含み、上記環状有機酸は、酸価120〜190であるナフテン酸である防汚塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なる金属含有樹脂組成物を用いた防汚塗料に関するものであり、更に詳しくは側鎖末端部に特定の基を有する加水分解型樹脂からなる金属含有樹脂組成物をビヒクルとして含む防汚塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶、漁網、その他の水中構造物には、フジツボ、イガイ、藻類等の海洋生物が付着しやすく、それによって、船舶等では効率のよい運行が妨げられ燃料の浪費を招く等、また漁網等では目詰まりが起こったり、耐用年数が短くなる等の問題が生じる。これら水中構造物に対する生物の付着を防止するために、通常、その表面に防汚塗料を塗布することが行われている。従来から使用されている代表的な防汚塗料には、海水に不溶性のビニル系樹脂やアルキド樹脂等にロジンを配合したマトリックス型防汚塗料がある。しかしこの塗料は海水中にロジンと共に防汚剤が溶出するので、長期間安定した防汚性が期待できず、また、塗膜に残った不溶解性樹脂部分がスケルトン構造を形成するので、特に船舶に適用した場合、海水と塗布面の抵抗が増大し、速度低下等を招くという欠点を有している。
【0003】
近年、防汚塗料のうちでも、長期にわたって防汚性が発揮できる等の優れた利点から加水分解型防汚塗料が広く用いられており、その1つとして金属含有樹脂組成物を含む塗料が開発されてきた。本出願人の特開昭62−101653号公報、特開昭63−128008号公報、特開昭63−128084号公報および特開平08−73536号公報等には、ペンダント酸基が一塩基有機酸と共に金属原子と塩を形成している金属含有樹脂とその製法とが開示されている。この樹脂を防汚塗料に使用すると、樹脂が海水中で徐々に加水分解され、防汚性のある金属イオンを放出し、同時に樹脂自身が水溶化して徐々に溶けだし、自己研磨型効果を発揮する。しかしこれらの防汚塗料においても、より長期の防汚性ではやや難点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、塗膜の耐クラック性と長期の防汚性を有する防汚塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、樹脂側鎖に式
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Xは
【0008】
【化2】

【0009】
で表される基、nは0もしくは1、Yは炭化水素、Mは2価金属、Aは一塩基酸の有機酸残基を表す。)で表される基を少なくとも1つ有するアクリル樹脂であり、上記有機酸残基の5〜100モル%が環状有機酸由来のものである樹脂を含み、上記環状有機酸は、酸価120〜190であるナフテン酸であることを特徴とする防汚塗料である。加えて、上記2価金属が銅または亜鉛であることが好ましい。更に、上記アクリル樹脂が全ビヒクル成分中に固体分換算で30〜100重量%含まれていることが好ましい。
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。本発明の新規な防汚塗料に使用するアクリル樹脂は、上記式で表される基を樹脂側鎖に少なくとも1つ有するアクリル樹脂であり、例えば下記のいずれかの方法により容易に製造できる。即ち、(1)重合性の不飽和有機酸単量体を他の重合性不飽和単量体と共重合させて得た樹脂に、少なくとも当量の金属化合物と一塩基有機酸を反応させるか、または一塩基有機酸の金属エステルを用いエステル交換させる方法、または(2)不飽和有機酸単量体と金属化合物と一塩基有機酸とを反応させ、金属含有重合性不飽和単量体を合成し、次いでこれを他の重合性不飽和単量体と共重合する方法等である。上記(1)において、重合性の不飽和有機酸単量体を他の重合性不飽和単量体と共重合させて得た樹脂は、酸価100〜250mgKOH/gであることが好ましい。100未満であると、側鎖に結合させる金属エステルの量が少なくなり、防汚性に劣ることがあり、250を超えると、溶出速度が速すぎて、長期の防汚効果が望めない。
【0011】
上記方法で使用される重合性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のエステル部の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のエステル部の炭素数が1〜20の水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸環状炭化水素エステル;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、重合度2〜10のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル;及び、炭素数1〜3のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等のほか、(メタ)アクリルアミド;スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルトルエン、アクリロニトリル等のビニル化合物;並びに、クロトン酸エステル類;マレイン酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類等の不飽和二塩基酸のジエステルを挙げることができる。上記アクリル酸エステル類のエステル部分は炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルである。これらの単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
また上記方法で使用される不飽和有機酸単量体としては、カルボキシル基を1つ以上有するものが挙げられ、このようなものとしては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸;マレイン酸およびこのモノアルキルエステル、イタコン酸およびこのモノアルキルエステル等の不飽和二塩基酸及びこのモノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのマレイン酸付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのフタル酸付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのコハク酸付加物等の不飽和一塩基酸ヒドロキシアルキルエステルの二塩基酸付加物が挙げられる。
【0013】
上記(1)において共重合させて得た樹脂の数平均分子量は2000〜100000、特に3000〜40000の範囲にあることが好ましい。これは造膜性と作業性および溶出速度の間のバランスを保つために必要である。
【0014】
上記アクリル樹脂と金属エステルを形成する金属は金属元素、即ち長期周期律表中3A〜7A,8,1B〜7B族元素から選ぶことができる。中でも、銅、亜鉛が好ましい。上記金属は、上記アクリル樹脂固形分中、0.3〜20重量%含有されていることが好ましい。0.3重量%未満では、金属エステル部が加水分解しても樹脂中の溶出が極めて遅く、20重量%を超えると、溶出速度が速すぎて、何れも好ましくない。より好ましくは、0.5〜15重量%である。上記金属化合物としては特に限定されず、例えば、金属酸化物、水酸化物、塩化物、硫化物、塩基性炭酸塩等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
【0015】
本発明の上記アクリル樹脂の側鎖部に導入される一塩基酸の有機酸残基のうち、5〜100モル%が環状有機酸である。好ましくは15〜100モル%であり、より好ましくは25〜100モル%である。5モル%未満であれば、長期の防汚性と塗膜の耐クラック性の両立が達成できない。
【0016】
上記一塩基環状有機酸残基を導入するために使用する一塩基環状有機酸の酸価は、120〜190であることが好ましい。この範囲内である場合には、本発明におけるアクリル樹脂の加水分解が適度に行われ、防汚効果を長期に保つことができる。より好ましくは、140〜185である。
【0017】
上記一塩基環状有機酸としては特に限定されず、例えば、ナフテン酸等のシクロアルキル基を有するもののほか、三環式樹脂酸等の樹脂酸及びこれらの塩を挙げることができる。上記三環式樹脂酸としては特に限定されず、例えば、ジテルペン系炭化水素骨格を有する一塩基酸等を挙げることができ、このようなものとしては、例えば、アビエタン、ピマラン、イソピマラン、ラブダン各骨格を有する化合物があり、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添アビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、サンダラコピマル酸等を挙げることができる。これらのうち、加水分解が適度に行われるので長期防汚性に優れるほか、塗膜の耐クラック性、入手容易性にも優れることから、アビエチン酸、水添アビエチン酸及びこれらの塩が好ましい。上記一塩基環状有機酸としては、高度に精製されたものである必要はなく、例えば、松脂、松の樹脂酸等を使用することもでき、このようなものとしては、例えば、ロジン類、水添ロジン類、不均化ロジン類等を挙げることができる。ここでいうロジン類とは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等である。ロジン類、水添ロジン類及び不均化ロジン類は、廉価で入手しやすく、取り扱い性に優れ、長期防汚性を発揮する点で好ましい。上記一塩基環状有機酸は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明で使用できる一塩基有機酸のうち、上記一塩基環状有機酸以外のものとしては、例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、クロル酢酸、フルオロ酢酸、吉草酸等の炭素数1〜20のものを挙げることができる。上記反応は、従来公知の方法により行うことができるが、加熱・攪拌等は金属エステルの分解温度以下で行うことが望ましい。
【0019】
上記式におけるYとしては、炭化水素であれば特に限定されず、例えば、不飽和有機酸単量体にフタル酸、コハク酸、マレイン酸等の二塩基酸を付加した場合における残基を挙げることができる。上記Yは、上述のように不飽和一塩基酸ヒドロキシアルキルエステルに二塩基酸を付加し、これを共重合して樹脂を得ることにより導入することができ、または、樹脂を製造する際に又は製造した後に上記二塩基酸を存在させて導入することもできる。この場合、n=1となる。
【0020】
このようにして得た加水分解型金属含有アクリル樹脂は、防汚剤を含む慣用の添加剤を添加して防汚塗料に調製することができる。この防汚塗料は自己研磨性を有する防汚塗料である。
【0021】
本発明の防汚塗料には、上記アクリル樹脂を防汚塗料中の全ビヒクル成分中に固形分換算で30〜100重量%含有するのが好ましい。含有量が30重量%未満では、優れた長期防汚性と塗膜の耐クラック性の両立が保てず好ましくない。
【0022】
上記防汚塗料には、上記アクリル樹脂に、例えば、防汚剤、可塑剤、塗膜消耗調整剤、顔料、溶剤等の慣用の添加剤を添加することができる。上記防汚剤としては、公知のものを使用することができ、例えば無機化合物、金属を含む有機化合物、金属を含まない有機化合物を使用することができ、例えば、亜酸化銅、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート、ジンクジメチルカーバーメート、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、ジンクエチレンビスジチオカーバーメート、ロダン銅、4,5,−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾロン、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N‘−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩および銅塩、テトラメチルチウラムジサルファイド、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、3−ヨード−2−プロピルブチルカーバーメート、ジヨードメチルパラトリスルホン、フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、トリフェニルボロンピリジン塩を挙げることができる。上記防汚剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記防汚剤の使用量は、塗料固形分中、0.1〜80重量%が好ましい。0.1重量%未満では防汚効果を期待することができず、80重量%を越えると塗膜にクラック、剥離等の欠陥が生じることがある。好ましくは1〜60重量%である。
【0024】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル系可塑剤;トリクレンジリン酸、トリクロロエチルリン酸等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ系可塑剤;ジオクチルすずラウリレート、ジブチルすずラウリレート等の有機すず系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等を挙げることができる。
【0025】
上記塗膜消耗調整剤としては、例えば、塩化パラフィン、ポリビニルエーテル、ポリプロピレンセバケート、部分水添ターフェニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリエーテルポリオール、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、シリコンオイル、ワックス、ワセリン、流動パラフィン、ロジン、ナフテン酸、脂肪酸およびこれらの2価金属塩等を挙げることができる。
【0026】
上記顔料としては、例えば、沈降性バリウム、タルク、クレー、白亜、シリカホワイト、アルミナホワイト、ベントナイト等の体質顔料;酸化チタン、酸化ジルコン、塩基性硫酸鉛、酸化すず、カーボンブラック、黒鉛、ベンガラ、クロムイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドン等の着色顔料等を挙げることができる。
【0027】
上記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロペンタン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ホワイトスピリット等の炭化水素類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;n−ブタノール、プロピルアルコール等のアルコールを挙げることができる。
【0028】
上記のほか、その他の添加剤としては特に限定されず、例えば、フタル酸モノブチル、コハク酸モノオクチル等の一塩基有機酸、樟脳、ひまし油等;水結合剤、タレ止め剤;色分かれ防止剤;沈降防止剤;消泡剤等を挙げることができる。
【0029】
本発明の防汚塗料は、例えば、本発明に係る上記アクリル樹脂組成物に、防汚剤、可塑剤、塗膜消耗調整剤、顔料、溶剤等の慣用の添加剤を添加し、ボールミル、ペブルミル、ロールミル、サンドグラインドミル等の混合機を用いて混合することにより、調製することができる。上記防汚塗料は、常法に従って被塗物の表面に塗布した後、常温下または加熱下で溶剤を揮散除去することによって乾燥塗膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明により長期防汚性に優れており、且つ長期の海水浸漬にも拘わらず優れた塗膜状態を維持することが可能な防汚塗料組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。部は重量部を表す。
【実施例】
【0032】
ワニス製造例1
攪拌機、冷却器、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシロール64部、n−ブタノール16部を加え100℃に保った。この溶液中にアクリル酸エチル7.3部、メタクリル酸2−エチルヘキシル22.1部、メタクリル酸シクロヘキシル15部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(NKエステルM−90G、新中村化学社製)30部、アクリル酸25.6部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下した。滴下終了後30分間保温した。その後、キシロール16部、n−ブタノール4部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間30分保温した。得られた樹脂溶液中の固形分が50.5%、粘度20ポイズ、数平均分子量7000のワニスAを得た。得られた樹脂は、酸価(固形分。以下同じ。)が200であった。
【0033】
ワニス製造例2
ワニス製造例1と同様の反応容器中に、キシロール50部、n−ブタノール50部を加え115℃に保った。この溶液中にアクリル酸エチル58.3部、アクリル酸シクロヘキシル25部、アクリル酸16.7部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後2時間保温した。得られた樹脂溶液中の固形分が51.0%、粘度3.2ポイズ、数平均分子量4000のワニスBを得た。得られた樹脂は、酸価が130であった。
【0034】
ワニス製造例3
ワニス製造例1と同様の反応容器中に、キシロール40部、n−ブタノール40部を加え100℃に保った。この溶液中にアクリル酸エチル48.2部、メタクリル酸2−エチルヘキシル15部、NKエステルM−90G 17.5部、アクリル酸19.3部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2部の混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間100℃で保温した。その後、キシロール10部、n−ブタノール10部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2部の混合液を30分間に渡わたり等速滴下し、滴下終了後1時間30分保温した。得られた樹脂溶液中の固形分が50.0%、粘度12ポイズ、数平均分子量7000のワニスCを得た。得られた樹脂は、酸価が150であった。
【0035】
ワニス製造例4
ワニス製造例1と同様の反応容器中に、キシロール64部、n−ブタノール16部を加え90℃に保った。この溶液中にアクリル酸エチル21.9部、メタクリル酸イソブチル30部、NKエステルM−90G 22.5部、アクリル酸25.6部、アゾビスイソブチロニトリル2部の混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。その後、キシロール16部、n−ブタノール4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部の混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後2時間保温した。得られた樹脂液中の固形分が49.8%、粘度7.5ポイズ、数平均分子量8000のワニスDを得た。得られた樹脂は、酸価が200であった。
【0036】
ワニス製造例5
ワニス製造例1と同様の反応容器中に、キシロール64部、n−ブタノール16部を加え115℃に保った。この溶液中に、メタクリル酸メチル20部、アクリル酸エチル28.3部、メタクリル酸2−エチルヘキシル25部、NKエステルM−90G
10部、アクリル酸16.7部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3部の混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。その後、キシロール16部、n−ブタノール4部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2部の混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間30分保温した。得られた樹脂溶液中の固形分が51.5%、粘度6.7ポイズ、数平均分子量5000のワニスEを得た。得られた樹脂は、酸価が130であった。
【0037】
ワニス製造例6
ワニス製造例1と同様の反応容器中に、キシロール64部、n−ブタノール16部を加え100℃に保った。この溶液中に、アクリル酸エチル80.7部、アクリル酸19.3部、アゾビスイソブチロニトリル2部の混合液を4時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。その後、キシロール16部、n−ブタノール4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部の混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後2時間保温した。得られた樹脂溶液中の固形分は50.2%、粘度4.5ポイズ、数平均分子量6000のワニスFを得た。得られた樹脂は、酸価が150であった。
【0038】
ワニス製造例7
攪拌機、窒素導入管、還流冷却器、デカンター、温度制御装置を備えた4つ口フラスコ中にワニスA100部、酢酸銅37.1部、WWロジン(酸価160)62.5部、キシロール140部を加えてリフラックス温度まで昇温し、流出する酢酸、水、溶剤の混合溶液を除去し、同量のキシレンを補充しながら反応を14時間継続した。反応の終点は流出溶剤中の酢酸を定量して決定した。冷却後、ブタノールとキシレンを加え、固形分が36.5%のワニス1を得た。
【0039】
ワニス製造例8
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスB100部、酢酸亜鉛25.4部、水添ロジン(酸価160)40.6部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が50.4%のワニス2を得た。
【0040】
ワニス製造例9
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスC100部、酢酸銅27.8部、不均化ロジン(酸価160)46.9部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が36.8%のワニス3を得た。
【0041】
ワニス製造例10
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスD100部、酢酸亜鉛39.1部、アビエチン酸(酸価160)53.5部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が37.7%のワニス4を得た。
【0042】
ワニス製造例11
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスE100部、酢酸銅24.1部、不均化ロジン(酸価160)40.6部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が44.4%のワニス5を得た。
【0043】
ワニス製造例12
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスF100部、酢酸銅27.8部、水添ロジン(酸価160)46.9部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が52.6%のワニス6を得た。
【0044】
ワニス製造例13
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスA100部、酢酸銅37.1部、水添ロジン(酸価160)62.5部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が40.2%のワニス7を得た。
【0045】
ワニス製造例14
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスC100部、酢酸銅27.8部、ナフテン酸(NA−165、酸価165、大和油脂工業社製)45.5部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が35.0%のワニス8を得た。
【0046】
ワニス製造例15
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスA100部、酢酸銅37.1部、バーサティック酸30.3部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が34.7%のワニス9を得た。
【0047】
ワニス製造例16
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスB100部、酢酸亜鉛25.4部、ナフテン酸(NA−200、酸価200、大和油脂工業社製)32.5部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が42.1%のワニス10を得た。
【0048】
ワニス製造例17
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスD100部、酢酸亜鉛39.1部、オレイン酸50.3部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が39.0%のワニス11を得た。
【0049】
ワニス製造例18
ワニス製造例7と同様の反応容器中に、ワニスE100部、酢酸銅24.1部、バーサティック酸19.7部を用いることのほかは、ワニス製造例7と同様に反応を行い、固形分が39.8%のワニス12を得た。
【0050】
実施例1〜18、比較例1〜4
ワニス製造例7〜18で得られたワニス1〜12および表1で示すその他の成分を使用して、高速ディスパーにて混合することで、塗料組成物を調製し、下記評価方法に従って長期防汚性および塗膜状態を評価した。評価結果を表2に記載した。なお、表1中に記載の防汚剤は下記の化合物である。
防汚剤1:ジンクジメチルジチオカーバメート防汚剤2:マンガニーズエチレンビスジチオカーバーメート防汚剤3:2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン防汚剤4:2,4,5,6テトラクロロイソフタロニトリル防汚剤5:N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素防汚剤6:4,5−ジクロロ−2−nオクチル−3(2H)イソチアゾロン防汚剤7:N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド防汚剤8:N,N‘ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド防汚剤9:2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド防汚剤10:2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン防汚剤11:3−ヨード−2−プロペニルブチルカーバメート防汚剤12:ジヨードメチルパラトリルスルホン防汚剤13:ジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート防汚剤14:フェニル(ビスピリジン)ビスマスジクロライド防汚材15:2−(4−チアゾイル)ベンズイミダゾール防汚剤16:ピリジントリフェニルボラン防汚剤17:ジンクエチレンビスジチオカーバメート防汚剤18:ステアリルアミン−トリフェニルボロン防汚剤19:ラウリルアミン−トリフェニルボロン
【0051】
【表1】

【0052】
(評価)
塗膜状態
上記塗料組成物を、予め防錆塗料を塗布してあるブラスト板に乾燥膜厚300μmになるように塗布し、2昼夜室内に放置し乾燥させて試験板を得た。上記試験板を直径750mm長さ1200mmの円筒側面に取り付け、海水中で周速15ノットで6ヶ月間連続回転させた。6ヶ月経過後の試験板の塗膜状態を目視で観察し塗膜状態を評価した。結果を表2に示す。
【0053】
長期防汚性
上記により塗膜状態を観察した後の試験板を岡山県玉野市にある日本ペイント社臨海研究所設置の実験用筏で生物付着試験を行い防汚性を評価した。結果を表2に示す。表2中の月数は筏浸漬期間を示し、数値は付着性物の塗膜面積に占める割合を示す。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例1〜14の塗料は長期防汚性および優れた塗膜状態を示した。比較例1〜4の塗料は塗膜状態と長期防汚性の両立ができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂側鎖に式
【化1】

(式中、Xは
【化2】

で表される基、nは0もしくは1、Yは炭化水素、Mは2価金属、Aは一塩基酸の有機酸残基を表す。)で表される基を少なくとも1つ有するアクリル樹脂であり、
前記有機酸残基の5〜100モル%が環状有機酸由来のものである樹脂を含み、
前記環状有機酸は、酸価120〜190であるナフテン酸である
ことを特徴とする防汚塗料。
【請求項2】
前記2価金属が、銅または亜鉛であることを特徴とする請求項1記載の防汚塗料。
【請求項3】
前記アクリル樹脂が全ビヒクル成分中に固体分換算で30〜100重量%含まれていることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の防汚塗料。
【請求項4】
アクリル樹脂は、重合性の不飽和有機酸単量体を他の重合性不飽和単量体と共重合させて得た樹脂に、少なくとも当量の金属化合物と一塩基有機酸を反応させるか、または一塩基有機酸の金属エステルを用いエステル交換させる方法により得られたものである請求項1、2又は3記載の防汚塗料。
【請求項5】
重合性の不飽和有機酸単量体を他の重合性不飽和単量体と共重合させて得た樹脂は、酸価100〜250mgKOH/gである請求項4記載の防汚塗料。

【公開番号】特開2007−231290(P2007−231290A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112958(P2007−112958)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【分割の表示】特願2000−334417(P2000−334417)の分割
【原出願日】平成12年11月1日(2000.11.1)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】