説明

防湿容器

【課題】防湿効果に優れ、かつ、乾燥剤の塵埃による汚染が低減され、しかも廉価かつ簡易に製造することができる、防湿容器を提供すること。
【解決手段】筒形の容器本体と、該容器本体を密封し、開閉自在に嵌合する蓋とからなり、容器本体に乾燥剤を収容する防湿容器であって、容器本体は、その開口側に設置された収容室と、その底部に設置され、乾燥剤を収容した乾燥剤室とを備え、収容室は、乾燥剤室に向かって内径が狭まる傾斜面を有する環状突出部を備え、収容室と乾燥剤室とは、環状突出部の傾斜面にシールされた透湿防塵シートにより仕切られている、防湿容器。乾燥剤室はさらに、仕切り板によって区画されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥剤を備えた防湿容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬品や食品であって、湿気を厭うものを保存するための容器として、乾燥剤を収容した防湿容器が多数提案されている。これらは、容器の底部に乾燥剤を収容したもの(特許文献1〜7)と、蓋部に乾燥剤を収容したもの(特許文献7及び8)とに大別される。容器の底部に乾燥剤を収容すると、水分の捕捉を効率よく行なうことができる等の利点があるが、乾燥剤充填工程が煩雑になる、充填作業時に発生した乾燥剤の塵埃により容器内部が汚染される等の難点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭31−8087号公報
【特許文献2】実公昭46−27674号公報
【特許文献3】実公昭53−39134号公報
【特許文献4】特開2000−79973号公報
【特許文献5】特開2002−274576号公報
【特許文献6】特開2002−274577号公報
【特許文献7】特開2002−284249号公報
【特許文献8】特開2005−343502号公報
【特許文献9】特開2005−350112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、防湿効果に優れ、かつ、乾燥剤の塵埃による汚染が低減され、しかも廉価かつ簡易に製造することができる、防湿容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、容器本体内壁に設けられた環状突出部の傾斜面に防塵シートを接着して、容器底部に収容された乾燥剤を区画することにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、筒型の容器本体と、容器本体を密封し、開閉自在に嵌合する蓋と、容器本体に乾燥剤を収容する防湿容器であって、容器本体は、側壁内面に、斜め下方に向けて延出する傾斜面を有する環状突出部を備え、環状突出部の傾斜面に接着された透湿防塵シートにより、その開口側の収容室と、その底部側に存し、乾燥剤が収容される乾燥剤室とに仕切られている、防湿容器を提供する。
【0007】
本発明の防湿容器は、乾燥室を区画する仕切り板を更に備えていてもよく、仕切り板の上端部と透湿防塵シートとは接触していてもよい。
【0008】
透湿防塵シートの、傾斜面と接着している面と反対側の面には、乾燥剤室の内周に対応する位置にハーフカット線が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防湿容器によれば、被収納物品を乾燥剤の塵埃で汚染することなく保存することができる。また、比重の重い水蒸気が滞留する容器底部に乾燥剤を収容しているので、効率よく湿気(水蒸気)の捕捉を行なうことができる。しかも、本発明の防湿容器は、廉価かつ簡易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】防湿容器の一例を示す断面図
【図2】図1に示した防湿容器の開蓋状態を示す上面図
【図3】図1に示した防湿容器の斜視図
【図4】図1に示した防湿容器の製造工程を示す図
【図5】図4に続く製造工程を示す図
【図6】図5に続く製造工程を示す図
【図7】防湿容器の他の一例を示す断面図
【図8】図7に示した防湿容器の開蓋状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、防湿容器の一例を示す断面図であり、図2は、図1に示した防湿容器の開蓋状態を示す上面図であり、図3は、図1に示した防湿容器の斜視図である。
【0012】
容器本体1は、筒形であり、一端は底部13によって封止され、他の一端は開口している。筒形としては、円筒、角筒(四角柱、六角柱など)を例示できる。蓋2は、内環21と外環22とにより容器本体1の開口側端部を挟みこんで、容器の開口を密栓でき、開閉自在である。蓋2は、ヒンジ5を介して容器本体1に接続されている。容器本体1と、ヒンジ5と、蓋2とは、樹脂を原料とし、一体として成形される樹脂一体成形体とすることができる。
【0013】
容器本体1は、側壁内面に環状突出部11を有する。環状突出部11は、斜め下方(底部13方向)に向けて延出する傾斜面11aを有する。傾斜面11aには透湿防塵シート3が接着されている。容器本体1は該透湿防塵シートによって乾燥剤室Dと収容室Rとに仕切られている。なお、透湿防塵シート3の接着には適宜な接着剤を用いてもよいが、本発明においては接着剤による汚染を防止するために、ヒートシールなどの透湿防塵シート3の溶融及び硬化を利用した方法を用いることが好ましい。
【0014】
乾燥剤室Dの内径は、収容室Rの内径よりも小さい。傾斜面11aは乾燥剤室Dの内壁開口端と収容室Rの内壁とをつなぐ面(収容室Rの内壁に設置され、乾燥剤室Dに向かって内径が狭まるテーパー部)である。乾燥剤室Dには乾燥剤4が収容されている。透湿防塵シート3は、その周縁が環状突出部11の傾斜面11aに接着(シール)され、固定されている。従って、乾燥剤室Rは透湿防塵シート3により封止されており、乾燥剤4や乾燥剤の塵埃が収容室Rに移動することが抑止されている。
【0015】
容器本体1は、乾燥剤室Dの内部を区画する仕切り板12を更に備えていることが好ましい。仕切り板12は、例えば、容器本体1の底部13に対して垂直又は略垂直に設置することができる。仕切り板12を備えることにより、乾燥剤4が過度に移動することを予防することができる。乾燥剤4が過度に移動すると、摩擦や衝撃により乾燥剤の塵埃が発生する場合があるが、仕切り板12を備えることにより塵埃の発生を低減できる。仕切り板12は、乾燥剤4の動きを制限するが、乾燥剤4を固定するものではない。従って乾燥剤4は、防湿容器使用時の衝撃等により適度に移動することができる。つまり、水を補足した乾燥剤は、乾燥剤室D内部で収容室R側から底部側へと移動し、同時に、水をまだ補足していない底部側にあった乾燥剤が、収容室R側へと移動することができる。これにより、例えば、包装材で包装した乾燥剤を容器底部に配置した場合などに比して、乾燥剤4の乾燥能を満遍なく活用することができ、より効率的な乾燥を行なうことができる。
【0016】
仕切り板12は、上述の塵埃抑制効果に加えて、透湿防塵シート3の固定を補佐する機能を有する。防塵シート4と仕切り板12の天面が接触していると、収容室Rに物品を収容した際に、物品の重みで防塵シートが下垂することを防止できる。特に、乾燥剤室D内部の高さと、仕切り板12の高さが同一であれば、防塵シートを容器本体の底部と水平に保つことができ、好ましい。透湿防塵シート3と仕切り板12の天面とはシールされていることが好ましい。両者がシールされていると、乾燥剤4が仕切り板12をまたいで移動することを制限でき、塵埃の発生がさらに抑制される。
【0017】
図2等には乾燥剤D内部を4つに区画する十字型の仕切り板12を示したが、仕切り板12の形や数はこれに制限されない。
【0018】
環状突出部11及び傾斜面11aの断面形状等は特に制限されず、容器本体1の形状や、収容室Rと乾燥剤室Dの内径の比、透湿防塵シート3のシール作業の便宜等を考慮して、適宜選択することができる。
【0019】
透湿防塵シート3の上面(傾斜面11aと接着された面と反対側の面)には、ハーフカット線31が形成されていてもよい。この場合、ハーフカット線は、環状突出物11の傾斜面11aの内周部に対応する部分に形成される。すなわち、ハーフカット線31は、透湿防塵シート3の、傾斜面11aへの接着のために折り曲げる部分に形成される。これにより、透湿防塵シート3の傾斜面11aへの接着時にしわが発生することを予防できる。
【0020】
本発明の防湿容器は、防湿性を有する公知の樹脂を材料とすることができる。このような樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができるがこれらに制限されない。本発明の防湿容器は、通常、単層構造であるが、ガスバリア性等の機能を付与するために、機能層を積層した複層構造としてもよい。
【0021】
透湿防塵シート3としては、透湿性及び防塵性を具備し、一定の強度を有するシートをいずれも使用することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる、不織布、微多孔性フィルム、及び微多孔性シートを例示できる。このようなシートの市販の例としては、米国デュポン社製;『Tyvek(登録商標)』、積水化成品工業株式会社製;『セルポア』、徳山曹達株式会社製;『NFシート』、日東電工株式会社製;『ニトフロン(登録商標)』を挙げることができる。
【0022】
乾燥剤4としては、被収容物品を汚染侵食しない限りにおいて、公知乃至慣用の乾燥剤をいずれも使用することができ、特に制限されない。具体的には、例えば、酸化カルシウム、塩化カルシウム等の化学系乾燥剤や、酸化アルミニウム、ゼオライト、モレキュラーシーブ、シリカゲル等の物理系乾燥剤を挙げることができる。本発明においては、吸湿による乾燥剤の凝集や、摩擦等による塵埃の発生を回避する観点から、物理系乾燥剤を使用することが好ましい。これらの中で、温度変化に伴う乾燥効率の変化や、水の再放出をおこしにくいことから、モレキュラーシーブを使用する事が特に好ましい。
【0023】
本発明の防湿容器は、例えば、容器本体1の底部13側に設けられた乾燥剤室Dに、乾燥剤4を充填した後、容器本体1の形状及び大きさに合わせて裁断された透湿防塵シート3の周縁を環状突出部11の傾斜面11aに接着することにより製造できる。
【0024】
本発明の防湿容器の製造方法の一例を図4〜6を参照しつつ説明する。
【0025】
図4は乾燥剤室Dに乾燥剤を、充填ノズル6を使用して充填する様子を示す断面図である。乾燥剤は、容器本体に挿入され、環状突出部11に位置あわせされた充填ノズル6を通して、乾燥剤室Dに適量を充填される。充填完了後は充填ノズル6を撤去する。充填ノズル6を使用することにより、容器本体1の、収容室Rとなる部分の内面を乾燥剤及びその塵埃により汚染することなく、乾燥剤の充填を行なうことができる。
【0026】
図5は、透湿防塵シート3を容器内部の環状突出部11に搬送する様子を示す断面図であり、図6は、透湿防塵シート3をヒーターにより環状突出部11にシールする様子を示す断面図である。透湿防塵シート3は、エアー吸引により保持力を発現する吸着アーム7により環状突出部11まで搬送され、保持される。透湿防塵シート3は、吸着アーム7により保持された状態で、ヒーター8によりヒートシールされる。ヒーター8の外面は、環状突出部11の傾斜面11aの形状に沿う形状であり、ヒートシールが円滑かつ確実に行なえる。乾燥剤4を充填した乾燥剤室Dは透湿防塵シート3により密閉され、透湿防塵シート3により乾燥剤室Dと収容室Rとが仕切られる。この際、乾燥剤室Dが仕切り板12により区画されている場合には、透湿防塵シート3は、仕切り板12の天面にもシールすることができる。
【0027】
透湿防塵シート3のシールが完了した後は、蓋2で容器本体1開口を封止することにより収容室Rは乾燥状態に保たれる。
【0028】
上述のように本発明の防湿容器は、簡易に製造することができる。また、製造工程及び使用時に収容室内部が乾燥剤の塵埃により汚染されることなく、優れた防湿効果を発現する。
【0029】
図1〜6では、容器本体1と蓋2とが、ヒンジ5を介して接続したヒンジ容器を例示したが、容器本体1と蓋2とは別体であってもよい。この例を図7及び8に示す。
【0030】
図7は、容器本体1と蓋2とが別体である容器を採用した本発明の防湿容器の一例を示す断面図である。図8(a)は図7に示す防湿容器の容器本体1の上面図であり、図8(b)は図7に示す防湿容器の蓋2の内面側の平面図である。図7及び図8に示した例では、容器本体1と蓋2とは、互いに嵌合することにより内容物を密閉する構造を有するが、両者の係合構造は嵌合のみならず螺合であっても良い。また、図7及び8に示した容器本体1に対する乾燥剤の封入は、図4〜6と同様の工程によって行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の防湿容器は、湿気及び乾燥剤の塵埃により劣化しやすい物品を収容するための容器として広範に利用できる。例えば、血糖値検査や尿検査に使用するためのテストピースや、薬剤(錠剤等)を収容するための容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 容器本体
11 環状突出部
12 仕切り板
13 底部
2 蓋
21 内環
22 外環
3 透湿防塵シート
4 乾燥剤
5 ヒンジ
6 充填ノズル
7 吸着アーム
8 ヒーター
R 収容室
D 乾燥剤室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒型の容器本体と、前記容器本体を密封し、開閉自在に嵌合する蓋とからなり、前記容器本体内に乾燥剤を収容する防湿容器であって、
前記容器本体は、側壁内面に、斜め下方に向けて延出する傾斜面を備える環状突出部を有し、
前記容器本体は、前記環状突出部の前記傾斜面に接着された透湿防塵シートにより、その開口側の収容室と、その底部側に存し、前記乾燥剤が収容される乾燥剤室とに仕切られている、防湿容器。
【請求項2】
前記容器本体底部に前記乾燥剤室を垂直方向に区画する仕切り板を更に備える、請求項1に記載の防湿容器。
【請求項3】
前記仕切り板の上端部と前記透湿防塵シートとが接触している、請求項2に記載の防湿容器。
【請求項4】
前記環状突出部の傾斜面の内周部に対応する前記透湿防塵シート上面にハーフカット線が形成されている、請求項1に記載の防湿容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−46224(P2012−46224A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191185(P2010−191185)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】