説明

防滑加工剤

【課題】 エチレン系不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体を使用しなくても、圧縮回復性に優れ、且つ完全ノンホルマリンタイプの防滑加工用合成樹脂エマルジョン組成物を提供すること。
【解決手段】 共役ジエン系化合物由来の構造単位と芳香族ビニル系化合物由来の構造単位とエチレン性不飽和カルボン酸系化合物由来の構造単位とを含有するポリマーと酸化防止剤とを含有する滑り止め材用組成物であって、前記ポリマーが動的粘弾性測定の損失角正接(tanδ)が最大となる温度が−10〜60℃であり、且つ損失角正接(tanδ)の最大値が0.3〜1.5であることを特徴とする滑り止め材用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防滑剤に用いられる合成樹脂エマルジョン組成物に関するもので、さらに詳細には、合成樹脂エマルジョンを、便座シート、マット、カーペットの裏面にフォーム加工することで、防滑性が向上し、且つそのフォーム層が圧縮回復性に優れるフォーム加工用途に好適な合成樹脂エマルジョン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、防滑加工剤は、合成ゴムのラテックスフォームが主流ではあるが、圧縮回復性には優れるものの、耐候性が著しく悪く、劣化が速いという問題点があった。その改善策として、アクリル系エマルジョンを用いたフォーム加工も行われてきた(例えば、特許文献1参照。)。しかし、アクリル系エマルジョンを使用した場合、ラテックスフォームに比べ、反発弾性(圧縮回復性)が不足するため、特にエチレン系不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体等の自己架橋基の導入が必須であった。しかし、上記自己架橋基の導入は、ホルマリンの発生を伴い、衛生上の問題がある。またホルマリンに対する規制は年々厳しくなるいっぽうであり、建築基準法の改正を受け、繊維業界においても、完全ノンホルマリン化が不可欠な要素になってきている。そういった背景があるため、前記方法では、エチレン系不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体の導入量を低減するか、或いは、ホルマリンキャッチャーを多量に添加すること等対策が必要であった。しかし、何れの場合も、完全ノンホルマリン化は不可能であり、圧縮回復性改善策と完全ノンホルマリン化の両方を満足するアクリル系エマルジョンは、見出されていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平06−181836
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、エチレン系不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体を使用しなくても、圧縮回復性に優れ、且つ完全ノンホルマリンタイプの防滑加工用合成樹脂エマルジョン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、共役ジエン系化合物由来の構造単位と芳香族ビニル系化合物由来の構造単位とエチレン性不飽和カルボン酸系化合物由来の構造単位とを含有するポリマーと酸化防止剤とを含有し、前記ポリマーが動的粘弾性測定の損失角正接(tanδ)が最大となる温度が−10〜60℃であり、且つ損失角正接(tanδ)の最大値が0.3〜1.5である樹脂を用いることで、弾性が大きく発現し、圧縮回復性が大きくなることを見出して、発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、共役ジエン系化合物由来の構造単位と芳香族ビニル系化合物由来の構造単位とエチレン性不飽和カルボン酸系化合物由来の構造単位とを含有するポリマーと酸化防止剤とを含有する滑り止め材用組成物であって、前記ポリマーが動的粘弾性測定の損失角正接(tanδ)が最大となる温度が−10〜60℃であり、且つ損失角正接(tanδ)の最大値が0.3〜1.5であることを特徴とする滑り止め材用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フォーム加工により防滑層を付与し、ホルマリンを遊離することなく、圧縮回復性に優れる便座シート、水廻りマット用途等に使用される滑り止め材用組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いる滑り止め材用組成物は、共役ジエン系化合物由来の構造単位と芳香族ビニル系化合物由来の構造単位とエチレン性不飽和カルボン酸系化合物由来の構造単位とを含有するポリマーと酸化防止剤とを含有し、前記ポリマーが動的粘弾性測定の損失角正接(tanδ)が最大となる温度が−10〜60℃であり、且つ損失角正接(tanδ)の最大値が0.3〜1.5であることを特徴とするエマルジョン樹脂組成物に発泡成分を加えたものである。前記ポリマーが動的粘弾性測定の損失角正接(tanδ)が最大となる温度が−10℃未満、または60℃超の場合は圧縮回復性が劣る点から好ましくない。更に、損失角正接(tanδ)の最大値が0.3未満の場合及び1.5超の場合は圧縮回復性のバラツキが生じ、部分的に回復性の劣る場所が混在する傾向が多くなる点から好ましくない。ポリマーが動的粘弾性測定の損失角正接(tanδ)が−10〜60℃であり、且つ損失角正接(tanδ)の最大値が0.3〜1.5であるためには、共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物との比率を50/50〜12/88重量%として、乳化重合して得ることができる。また、重合性単量体混合物と水を予め混合して得られる単量体乳化液を反応容器内に供給して乳化重合してもよい。
【0009】
前記ポリマー中に含有する共役ジエン系化合物由来の構造単位は共役ジエン系モノマーにより与えられ、その具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び2,4−ヘキサジエン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの共役ジエン系モノマーは、1種または2種以上の混合物として用いることができる。共役ジエン系モノマーの含有量は、全重合体単量体の10重量%以上であることが、防滑加工剤として用いた際に、充分な弾性が得られることから好ましく、また、全重合体単量体の70重量%以下であることが、防滑加工剤として用いた際に、充分な耐候性が得られることから好ましい。更に、全重合体単量体の10〜50重量%であることが特に好ましい。
【0010】
前記ポリマー中に含有する芳香族ビニル系化合物由来の構造単位は、芳香族ビニル系モノマーにより与えられ、その具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルスチレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの芳香族ビニル系モノマーは、1種または2種以上の混合物として用いることができる。
【0011】
前記ポリマー中に含有するエチレン性不飽和カルボン酸系化合物由来の構造単位は、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーにより与えられ、分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するものであれば特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。特に、電極の接着強度の面でイタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸化合物を併用ことが好ましい。エチレン性不飽和ジカルボン酸化合物の含有量は、
全重合性単量体の0.05以上であることが、エマルジョンの機械的安定性から好ましく、また合成樹脂エマルジョンの増粘を考慮し、10重量%以下であることが好ましい。更に、前記の範囲の中でも、0.1〜5重量%が好ましく、0.2〜2重量%が特に好ましい。
【0012】
また、前記ポリマーを構成する成分として、前記以外のエチレン性不飽和化合物を併用してもよい。前記以外のエチレン性不飽和化合物としては、前記モノマー類と共重合性のあるものであれば特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸のニトリル類;エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0013】
また、前記の単量体の他、架橋性反応基を含有するエチレン性不飽和単量体を使用することもでき、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
また、必要に応じてエチレン性不飽和基を2つ以上持つ多官能性単量体を使用することもでき、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
本発明に用いる酸化防止剤とは、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤からなる群から選ばれる1種以上の化合物である。この中でも圧縮回復性の点でフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤の使用が好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(ノルマルオクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−オルト−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0016】
アミン系酸化防止剤としては、2,2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル−ベンゾトリアゾール、4,4’−ビス−(2,2−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ビス(1,2,2,6、6−ペンタメチル−4−ピペリジルデカンジオナート等が挙げられる。イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。酸化防止剤としては、上記に限定されるわけではない。酸化防止剤の含有量は、前記ポリマー100重量部に対して、0.01〜5.0重量部であることが好ましく、、0.05〜3重量部が更に好ましく、0.1〜1重量部が特に好ましい。なお酸化防止剤の含有量は、0.01重量部未満であると圧縮回復性が得られにくく、5.0重量部を越えると重合速度が非常に遅くなり実用的ではない。この酸化防止剤の添加方法は、重合開始前に一括仕込みしてもよいし、又重合開始時に少量存在させ、重合途中で残りを添加しても良い。
【0017】
前記ラテックスの製造方法は特に制限されず、乳化重合法、懸濁重合法などによって製造することが出来る。例えば、「実験化学講座」第28巻、(発行元:丸善(株)、日本化学会編)に記載された方法、即ち、攪拌機及び加熱装置付きの密閉容器に水、分散剤や乳化剤、架橋剤等の添加剤、開始剤、及び原料となるモノマーを所定の組成になるように加え、攪拌してモノマー等を水に懸濁あるいは乳化させ、攪拌しながら温度を上昇させることによって、ジエン系ポリマーが水に分散したラテックスを得ることができる。乳化剤や分散剤、重合開始剤などはこれらの重合法において一般的に用いられるものであり、その使用量も一般に使用される量でよい。また重合に際しては、シード粒子を採用すること(シード重合)もできる。
【0018】
ラテックスの製造に使用する乳化剤は特に限定されないが、一般的に「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することも出来る。本発明で使用出来る反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有する「ラテムルS−180」(花王(株)製)、「エレミノールJS−2、RS−30」(三洋化成工業(株)製)等;硫酸基及びその塩を有する「アクアロンHS−10、HS−20」(第一工業製薬(株)製)、「アデカリアソープSE−10、SE−20」(旭電化工業(株)製)等;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」(第一工業製薬(株)製)等;非イオン性親水基を有する「アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50」(第一工業製薬(株)製)等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物が使用できる。
モノマーの重合の際に用いる重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類、過酸化水素等があり、これら過酸化物のみを用いてラジカル重合するか、或いは前記過酸化物と、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等のような還元剤とを併用したレドックス重合開始剤系によっても重合でき、また、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を使用することも可能であり、これらの1種または2種以上の混合物が使用できる。
【0019】
上記のモノマーの重合の際に用いる重合開始剤の内、有機過酸化物類としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物が使用できる。
【0020】
また、重合の際に用いる重合開始剤の内、還元性有機化合物としては、例えば、アスコルビン酸およびその塩、エリソルビン酸およびその塩、酒石酸およびその塩、クエン酸およびその塩、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩等が挙げられ、上記有機過酸化物類と併用して、これらの1種または2種以上の混合物が使用できる。
【0021】
本発明において、前記ポリマーの重合体の分子量を調整する必要がある場合は、分子量調整剤として連鎖移動能を有する化合物、例えば、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリセリン等のメルカプタン類、またはα−メチルスチレン・ダイマー等を添加してもよい。
【0022】
更にこれらの方法によって得られるラテックスに、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)水酸化物、アンモニア、無機アンモニウム化合物(NHClなど)、有機アミン化合物(エタノールアミン、ジエチルアミンなど)などが溶解している塩基性水溶液を加えてpH5〜13、好ましくは6〜12の範囲になるように調整することができる。なかでも、アンモニア及びアルカリ金属水酸化物を用いるpH調整は、集電体と活物質との結着性を向上させるため好ましい。
前記合成樹脂エマルジョン組成物に添加する発泡成分としては、発泡し泡安定性が良好なものであれば、何ら限定するものではないが、例を挙げれば、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸カリウム、ヒマシ油石ケン、スルホコハク酸ソーダ系活性剤等が挙げられ、好ましくは、ステアリン酸アンモニウムである。また、前記発泡成分の含有量は、発泡して、弾性が発現すれば、とくに限定されないが、合成樹脂エマルジョン組成物固形分100重量部当たり、3〜10重量部であることが好ましい。
【0023】
前記合成樹脂エマルジョン組成物に加えても良い添加剤としては、例えば、吸水剤、無機顔料、有機顔料等の着色剤、キレート剤、分散剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、圧縮回復剤、消泡剤、殺菌剤、防腐剤、湿潤剤、メラミン系を除く架橋剤、酸化亜鉛・硫黄・加硫促進剤等の加硫剤、タック防止剤、浸透剤、撥水・撥油剤・ブロッキング防止剤、難燃剤、充填剤、増粘剤等を挙げることができ、前記添加剤の選択、添加量、添加順序等は、合成樹脂エマルジョン100重量部に対して0.0001〜10重量部の範囲添加することが好ましいが、エマルジョンの製造条件、作業性、安定性、更に加工適性、塗布量等を考慮して、適宜に決定されれば良い。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、実施例及び表中における部及び%は特に断らない限り、重量基準である。実施例および比較例中の各種評価は、次のようにして行なった。
【0025】
(本発明及び比較例のラテックスを用いたフィルムの動的粘弾性特性の測定と結果)
前記各実施例及び比較例で得られた各フィルムの貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)及びtanδ(=E’’/E’)をRHEOMETRICS社製の固体粘弾性測定装置「RSA−2」を用いて測定した。それらの測定結果の各値を表1に掲げる。なお、前記フィルムは、ラテックスをガラス板上に流延し、40〜60℃にて5時間乾燥後、フィルムをガラス板から剥離し、120℃×20分加熱乾燥処理して、乾燥膜厚0.3mmのものを用いた。
【0026】
実施例1
撹拌機付きオートクレーブにイオン交換水100部、有効成分量としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(ニューコール271A、日本乳化剤製品)を0.5部、キレート剤としてクレワットTAA0.2部(帝国化学産業製品)、4,4‘−ビスー(2,2−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(酸化防止剤)0.4部を仕込み、窒素置換後内温を80℃に撹拌しながら昇温した。一方、別容器にイオン交換水20部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオペレックスG−15、花王製品)を0.5部、tert−ドデシルメルカプタンを0.4部と仕込み表1に示す組成の単量体100部を加えて撹拌しモノマー乳化液調整、窒素置換を行った。更にもう一方、イオン交換水10部に過硫酸アンモニウムを0.15部加え溶解後、開始剤容器に仕込み窒素置換した。これとは別に、イオン交換水2部に過硫酸アンモニウム0.1部を溶解し窒素置換後加圧状態としたボンベからオートクレーブ内温が80℃に到達した時点で加え、重合反応を開始した。次いで、モノマー乳化液及び開始剤液を約3時間要してオートクレーブ内に添加し、その後80℃で1時間保持し、重合率99.7%まで乳化重合を行った。その後、水蒸気蒸留による未反応単量体の除去、濃縮及び25重量%アンモニア水の添加によるpH調整を行い、更にステアリン酸アンモニウムのディスパージョン5部を加えて固形分48.5%の滑り止め材用組成物[A−1]を得た。フィルムのtanδが最大となる温度(℃)は58℃、tanδの最大値(tanδのmax値)は1.4であった。
を得た。
このエマルジョン組成物を家庭用ハンドミキサーにて、発泡倍率が3倍になる様泡立て、PETフィルム上に、乾燥時の厚みが1mmになる様塗布し、120℃で10分乾燥後、フォームを得た。このフォームを用いて、フェードメーターで、63℃×200時間耐候性試験を行った。また圧縮回復性については、フォームの5cm×5cmの面積に100g/cmAの荷重を1分間かけ、完全に復元するまでの時間を測定した。復元するまでの時間が5秒以内であれば合格、5秒以上のものは不合格とした。
【0027】
実施例2
撹拌機付きオートクレーブにイオン交換水125部、有効成分量としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(ニューコール271A、日本乳化剤製品)を0.5部、キレート剤としてクレワットTAA0.2部(帝国化学産業製品)、4,4‘−ビスー(2,2−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(酸化防止剤)0.4部、tert−ドデシルメルカプタンを0.4部、と仕込み表1に示す組成の単量体100部(ブタジエン以外の原料を仕込み後に窒素置換を実施した。)を仕込み、過硫酸アンモニウム0.15部を加えて撹拌しながら65℃〜80℃の温度範囲で7時間、重合率99.6%まで乳化重合を行った。その後、水蒸気蒸留による未反応単量体の除去、濃縮及び25重量%アンモニア水の添加によるpH調整を行い、更にステアリン酸アンモニウムのディスパージョン5部を加えて固形分48.3%の滑り止め材用組成物[A−2]を得た。フィルムのtanδが最大となる温度(℃)は14℃、tanδの最大値(tanδのmax値)は0.6であった。
【0028】
実施例3
モノマー使用量を表−1の実施例3とした以外は実施例2と同様にして固形分46.8%の滑り止め材用組成物[A−3]を得た。フィルムのtanδが最大となる温度(℃)は−6℃、tanδの最大値(tanδのmax値)は0.4であった。
【0029】
比較例1
撹拌機付きオートクレーブにイオン交換水100部、有効成分量としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(ニューコール271A、日本乳化剤製品)を0.5部、キレート剤としてクレワットTAA0.2部(帝国化学産業製品)、4,4‘−ビスー(2,2−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(酸化防止剤)0.4部を仕込み、窒素置換後内温を80℃に撹拌しながら昇温した。一方、別容器にイオン交換水20部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオペレックスG−15、花王製品)を0.5部、tert−ドデシルメルカプタンを0.4部と仕込み表2に示す組成の単量体100部を加えて撹拌しモノマー乳化液調整、窒素置換を行った。更にもう一方、イオン交換水10部に過硫酸アンモニウムを0.15部加え溶解後、開始剤容器に仕込み窒素置換した。これとは別に、イオン交換水2部に過硫酸アンモニウム0.1部を溶解し窒素置換後加圧状態としたボンベからオートクレーブ内温が80℃に到達した時点で加え、重合反応を開始した。次いで、モノマー乳化液及び開始剤液を約3時間要してオートクレーブ内に添加し、その後80℃で1時間保持し、重合率99.7%まで乳化重合を行った。その後、水蒸気蒸留による未反応単量体の除去、濃縮及び25重量%アンモニア水の添加によるpH調整を行い、更にステアリン酸アンモニウムのディスパージョン5部を加えて固形分48.5%の滑り止め材用組成物[B−1]を得た。フィルムのtanδが最大となる温度(℃)は62℃、tanδの最大値(tanδのmax値)は1.6であった。
このエマルジョン組成物を家庭用ハンドミキサーにて、発泡倍率が3倍になる様泡立て、PETフィルム上に、乾燥時の厚みが1mmになる様塗布し、120℃で10分乾燥後、フォームを得た。このフォームを用いて、フェードメーターで、63℃×200時間耐候性試験を行った。また圧縮回復性については、フォームの5cm×5cmの面積に100g/cmの荷重を1分間かけ、完全に復元するまでの時間を測定した。復元するまでの時間が5秒以内であれば合格、5秒以上のものは不合格とした。
【0030】
比較例2
撹拌機付きオートクレーブにイオン交換水125部、有効成分量としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(ニューコール271A、日本乳化剤製品)を0.5部、キレート剤としてクレワットTAA0.2部(帝国化学産業製品)、4,4‘−ビスー(2,2−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(酸化防止剤)0.4部、tert−ドデシルメルカプタンを0.4部、と仕込み表2に示す組成の単量体100部(ブタジエン以外の原料を仕込み後に窒素置換を実施した。)を仕込み、過硫酸アンモニウム0.15部を加えて撹拌しながら65℃〜80℃の温度範囲で7時間、重合率99.6%まで乳化重合を行った。その後、水蒸気蒸留による未反応単量体の除去、濃縮及び25重量%アンモニア水の添加によるpH調整を行い、更にステアリン酸アンモニウムのディスパージョン5部を加えて固形分48.3%の滑り止め材用組成物[[B−2]を得た。フィルムのtanδが最大となる温度(℃)は−15℃、tanδの最大値(tanδのmax値)は0.2であった。
【0031】
比較例3(酸化防止剤未添加)
撹拌機付きオートクレーブにイオン交換水125部、有効成分量としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(ニューコール271A、日本乳化剤製品)を0.5部、キレート剤としてクレワットTAA0.2部(帝国化学産業製品)、tert−ドデシルメルカプタンを0.4部、と仕込み表2に示す組成の単量体100部(ブタジエン以外の原料を仕込み後に窒素置換を実施した。)を仕込み、過硫酸アンモニウム0.15部を加えて撹拌しながら65℃〜80℃の温度範囲で7時間、重合率99.6%まで乳化重合を行った。その後、水蒸気蒸留による未反応単量体の除去、濃縮及び25重量%アンモニア水の添加によるpH調整を行い、更にステアリン酸アンモニウムのディスパージョン5部を加えて固形分48.3%の滑り止め材用組成物[[B−3]を得た。フィルムのtanδが最大となる温度(℃)は12℃、tanδの最大値(tanδのmax値)は0.5であった。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系化合物由来の構造単位と芳香族ビニル系化合物由来の構造単位とエチレン性不飽和カルボン酸系化合物由来の構造単位とを含有するポリマーと酸化防止剤とを含有する二次電池電極用バインダーであって、前記ポリマーが動的粘弾性測定の損失角正接(tanδ)が最大となる温度が−10〜60℃であり、且つ損失角正接(tanδ)の最大値が0.3〜1.5であることを特徴とする滑り止め材用組成物。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤からなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1記載の滑り止め材用組成物。
【請求項3】
前記酸化防止剤がアミン系化合物及び/又はフェノール系化合物である請求項2記載の滑り止め材用組成物。
【請求項4】
前記ポリマー中のエチレン性不飽和カルボン酸系化合物由来の構造単位中、エチレン性不飽和ジカルボン酸系化合物由来の構造単位含有量が、当該バインダー中の全てのポリマーに対し、0.05〜10.0重量%である請求項1記載の滑り止め材用組成物。
【請求項5】
前記共役ジエン系化合物が、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び2,4−ヘキサジエンからなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1〜4の何れか1つに記載の滑り止め材用組成物。
【請求項6】
更に、発泡成分を含有する請求項1〜5の何れか1つに記載の滑り止め材用組成物。
【請求項7】
共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とエチレン性不飽和ジカルボン酸系化合物とを含有する重合性単量体混合物を重合する滑り止め材用組成物の製造方法であって、重合性単量体混合物を重合する際に、アミン系及び/又はフェノール系化合物の酸化防止剤の存在下で重合性単量体混合物を重合することを特徴とする滑り止め材用組成物の製造方法。
【請求項8】
前記共役ジエン系化合物の含有量が全重合性単量体の25〜98重量%である請求項6記載の滑り止め材用組成物の製造方法。
【請求項9】
前記エチレン性不飽和ジカルボン酸化合物の含有量が全重合性単量体の0.05〜10重量%である請求項7記載の滑り止め材用組成物の製造方法。


【公開番号】特開2008−38073(P2008−38073A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216721(P2006−216721)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】