防火戸
【課題】ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに所定の認定コストを抑制でき、良好な視認性を確保することができる防火戸を提供する。
【解決手段】戸本体11の両面側において開口20を覆うように複数のガラス12が取り付けられる。金属製の遮蔽板13が、戸本体11の内部に収納され、上下方向に沿って移動することで、開口20から外れた位置に退避した退避位置から開口20を遮蔽するように複数のガラス12の間に配置される遮蔽位置に移動する。遮蔽板駆動手段15は、作動手段14が作動したときに、錘部25の落下に伴って遮蔽板13を退避位置から遮蔽位置へと移動させる。開口20及びガラス12の上下の長さ寸法は、戸本体11の上下の長さ寸法の半分以上となるように形成される。
【解決手段】戸本体11の両面側において開口20を覆うように複数のガラス12が取り付けられる。金属製の遮蔽板13が、戸本体11の内部に収納され、上下方向に沿って移動することで、開口20から外れた位置に退避した退避位置から開口20を遮蔽するように複数のガラス12の間に配置される遮蔽位置に移動する。遮蔽板駆動手段15は、作動手段14が作動したときに、錘部25の落下に伴って遮蔽板13を退避位置から遮蔽位置へと移動させる。開口20及びガラス12の上下の長さ寸法は、戸本体11の上下の長さ寸法の半分以上となるように形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎を遮蔽するための防火戸であって、ガラスが取り付けられた防火戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火炎を遮蔽するための防火戸に関し、見通しを良くすることや採光できるようにすること等を目的としてガラスが取り付けられた防火戸が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された防火戸は、外周が耐火鋼材で支持された耐熱板ガラスを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−287961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された防火戸のように、耐熱板ガラスを用いることで、防火戸においても見通しや採光の目的を達成することができる。しかしながら、耐熱板ガラスを用いた防火戸では、所定の認定を受けるために1時間程度の耐火試験を行う必要がありコストがかかる。また耐熱板ガラスを用いた防火戸の場合、耐熱板ガラスの取り扱いを専門に行う専門業者によって施工することが必要となる。このため、施工に際して、業者の選定に制約が多くなり、円滑な施工が難しく、更には施工費用の増大を招いてしまうという問題がある。従って、ガラスが取り付けられて見通しと採光とが確保された防火戸の構造を耐熱板ガラスを用いることなく実現することが望まれる。更に、このような防火戸の実現にあたっては、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮できることが必要となるとともに、耐火試験によらず、構造認定で対応できるような構造とすることで、所定の認定コストを低減することも望まれる。そして、戸本体に形成される開口とこの開口を覆うガラスとについては、見通しが良くてより良好な視認性が確保されるように、その寸法構成が設定されることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに所定の認定コストを抑制でき、良好な視認性を確保することができる防火戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1発明に係る防火戸は、火炎を遮蔽するための防火戸に関する。そして、第1発明に係る防火戸は、開口が形成された戸本体と、前記戸本体の両面側において前記開口を覆うように取り付けられたガラスと、金属の板状部材として形成されるとともに、前記戸本体の内部に収納されて、水平方向に沿って移動することで、前記開口から外れた位置に退避した退避位置から前記開口を遮蔽するように前記ガラスに対向するように配置される遮蔽位置に移動する遮蔽板と、火災の発生に応じて作動する作動手段と、前記作動手段が作動したときに、前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させる遮蔽板駆動手段と、を備え、前記開口及び当該開口を覆う前記ガラスは、その上下方向における長さ寸法が前記戸本体の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によると、戸本体に形成された両面側の開口を覆うようにガラスが取り付けられているため、見通しと採光とを確保することができる。また、戸本体内には金属製の遮蔽板が水平方向に移動可能に収納されている。そして、火災の発生に応じて作動する作動手段が作動したとき、遮蔽板駆動手段が作動して遮蔽板が、開口から外れた退避位置から開口を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。このため、火災発生時には、開口が金属製の遮蔽板で遮蔽され、火災の進展によってガラスが破損しても、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮することができる。そして、作動手段の作動に基づいて開口を遮蔽できるため、耐火ガラスを用いずに防火機能を実現でき、建築基準法の施行令が定める構造認定で済み、耐火試験が不要となる結果、所定の認定コストを抑制することができる。また、本発明によると、開口に取り付けるガラスは耐熱板ガラスでなくてよいため、見通しと採光とが確保された防火戸を耐熱板ガラスを用いることなく実現することができる。そして、耐熱板ガラスを用いなくてよいため、施工に際して業者の選定に制約が多くなることがなく、円滑な施工を実現でき、施工費用の増大を抑制することができる。また、耐熱板ガラスでない一般のガラスを用いることができるため、耐熱板ガラスを用いる場合に比して大幅なコストダウンを図ることもできる。更に、本発明によると、戸本体の開口及びこの開口を覆うガラスが、その上下方向における長さ寸法が戸本体の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成される。このため、ガラスが取り付けられた開口の面積を十分に広くして見通しが良くなるように設定することができ、耐熱板ガラスを用いた防火戸の場合と同等の良好な視認性を確保することができる。また、その開口及びガラスが、戸本体の半分以上の長さ寸法となるように形成されているため、少なくとも戸本体の中央より下側における視認性を確実に確保することができ、足元側の視認性を向上させることができる。
【0008】
従って、本発明によると、ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに所定の認定コストを抑制でき、良好な視認性を確保することができる防火戸を提供することができる。
【0009】
第2発明に係る防火戸は、第1発明の防火戸において、前記遮蔽板駆動手段は、重力によって落下する錘部及び当該錘部を前記遮蔽板に連結する連結部を有し、前記作動手段が作動したときに、前記錘部の落下に伴って前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させるものであることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、作動手段が作動したとき、遮蔽板駆動手段が作動して錘部が落下することで、錘部に連結された遮蔽板が、開口から外れた退避位置から開口を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。作動手段の作動に基づいて錘部が落下することで開口を遮蔽できるため、簡易な構造で防火機能を実現でき、構造の複雑化を抑制することができる。また、バネや傾斜レールを用いるものに比べて、錘部の配置の自由度が高くなるため、空間の有効利用を図ることができる。
【0011】
第3発明に係る防火戸は、第2発明の防火戸において、前記戸本体に前記ガラスが取り付けられることで構成された戸構造体の少なくとも片面側における一部は、当該戸構造体の内部を外部に対して開放可能なように開閉自在に形成された開閉部として設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、戸構造体には、その内部を開放可能なように開閉自在な開閉部が設けられる。このため、戸本体の内部に配置される遮蔽板や作動手段、遮蔽板駆動手段の設置作業やこれらの保守作業を行う場合に、戸本体を分解等することなく、開閉部を開閉することで、これらの作業を容易に行うことができる。
【0013】
第4発明に係る防火戸は、第3発明の防火戸において、前記開閉部は、前記ガラスを含
んでいることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、戸本体の開口を覆うガラスが開閉部の全部又は一部として戸構造体において開閉され、ガラス以外の部分のみで開閉部が構成されることがない。このため、開閉部が設けられることに伴う戸本体の強度への影響を極小化することができ又は無くすことができる。
【0015】
第5発明に係る防火戸は、第4発明の防火戸において、前記遮蔽板の上端部に対して回転自在に取り付けられた上端側ローラと、前記遮蔽板の下端部に対して回転自在に取り付けられた下端側ローラと、前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記上端側ローラが下方から当接して水平方向に転動自在に係合する上側ガイドレールと、前記戸本体において前記上側ガイドレールの下方で水平方向に延びるように配置されるとともに、前記下端側ローラが上方から当接して水平方向に転動自在に係合する下側ガイドレールと、を更に備えていることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、遮蔽板の上下端部にそれぞれ回転自在な上端側ローラ及び下端側ローラが取り付けられる。そして、これらのローラは、戸本体の上下方向に並んでそれぞれ水平方向に延びるように設けられた上側ガイドレール及び下側ガイドレールの間において、両レールに対して転動自在に係合するとともに反力を発生させた状態で支持される。これにより、遮蔽板は、上側及び下側の両ガイドレールの間において、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して開口を遮蔽することができる。尚、上端側ローラ及び下端側ローラは、それぞれ1つ設けられていてもよいが、より安定した姿勢を維持するためには、それぞれ複数設けられていることが望ましい。
【0017】
第6発明に係る防火戸は、第4発明の防火戸において、前記遮蔽板の上端部に対して回転自在に取り付けられた懸架用ローラと、前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記遮蔽板が懸架されるように前記懸架用ローラが上方から当接して水平方向に転動自在に係合する懸架用ガイドレールと、前記戸本体において前記懸架用ガイドレールの下方で水平方向に延びるように配置され、上下方向及び前記遮蔽板の移動方向である水平方向のいずれに対しても垂直な方向である前後方向における前記遮蔽板の下端部の変位量を規制するとともに当該遮蔽板の下端部の水平方向の移動をガイドするガイド部と、を更に備えていることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、戸本体には、遮蔽板の上端部に回転自在に設けられた懸架用ローラが転動自在に係合して懸架される懸架用ガイドレールと、遮蔽板の下端部の水平方向の移動のみを許容するようガイドするガイド部とが、上下方向に並んでそれぞれ水平方向に延びるように設けられる。このため、遮蔽板は、懸架用ガイドレール及びガイド部の間において、懸架されるとともに水平方向の移動方向がガイドされた状態で支持される。これにより、遮蔽板は、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して開口を遮蔽することができる。尚、懸架用ローラは、1つ設けられていてもよいが、より安定した姿勢を維持するためには、複数設けられていることが望ましい。
【0019】
第7発明に係る防火戸は、第4発明の防火戸において、前記遮蔽板の少なくとも片面側の中央部分に対して回転自在に取り付けられるとともに上下方向に並んで配置された一対の中央ローラと、前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記一対の中央ローラが上下方向の両側から当接して水平方向に転動自在に係合する中央ガイドレールと、を更に備えていることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、遮蔽板の中央部分に回転自在な一対の中央ローラが取り付けられる。そして、これらのローラは、戸本体において水平方向に延びるように設けられた中央ガイドレールに対して転動自在に係合するとともに上下方向の両側から対向して挟み込む力を発生させた状態で支持される。これにより、遮蔽板は、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して開口を遮蔽することができる。尚、一対の中央ローラは、1つ(即ち、1対のみ)設けられていてもよいが、より安定した姿勢を維持するためには、複数(即ち、複数対)設けられていることが望ましい。
【0021】
第8発明に係る防火戸は、第4発明乃至第7発明のいずれかの防火戸において、前記戸本体には、その内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体を支持する柱部材が設けられ、前記柱部材として、前記錘部が落下移動可能な空間が内側に形成された錘部内蔵柱部材が備えられていることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、戸本体内の強度メンバーとして上下方向に延びてパネル体を支持する柱部材が設けられ、この柱部材として、内部に錘部が落下移動可能な空間が形成された錘部内蔵柱部材が備えられている。このため、戸本体内において強度メンバーを配置するスペースと錘部が落下移動するスペースとを兼用させることができ、戸本体内のスペースを効率よく活用することができる。
【0023】
第9発明に係る防火戸は、第8発明の防火戸において、前記錘部内蔵柱部材は、内側の壁面が前記錘部の落下移動方向をガイドするように形成されていることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、錘部内蔵柱部材の内側の壁面によって錘部の落下移動方向がガイドされるため、錘部の落下移動時の揺れの発生が抑制され、遮蔽板駆動手段の作動をより速やかに円滑に行わせることができる。
【0025】
第10発明に係る防火戸は、第4発明乃至第9発明の防火戸において、前記作動手段は、前記遮蔽板側と前記戸本体側とを連結するとともに、所定の温度を超えることで溶断されて前記遮蔽板側と前記戸本体側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられていることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、作動手段が、所定の温度を超えると溶断されて遮蔽板側と戸本体側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられ、煙感知器やソレノイドなど電気的な駆動制御手段を介さずに遮蔽板駆動手段を作動させるように構成されている。よって、機械式であるため、作動の信頼性を更に向上させることができる。
【0027】
第11発明に係る防火戸は、第4発明乃至第10発明の防火戸において、前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記戸本体の内壁と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、遮蔽板には、遮蔽位置において開口の周囲で戸本体の内壁に向かって延びてこの内壁に近接する内壁近接部が設けられている。そして、遮蔽位置では、開口の両面側を連通する空間経路として、戸本体の内壁と内壁近接部との間を経由して開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路が形成される。このため、火災が発生して開口が遮蔽された状態でガラスが破損しても、火炎は、開口を通過するためには、戸本
体の内壁と内壁近接部との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路も通過しなければならないことになる。これにより、戸本体の内壁と内壁近接部との間の狭い空間と迂回経路とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0029】
第12発明に係る防火戸は、第11発明の防火戸において、前記内壁近接部は、屈曲形成された板状の部分として設けられていることを特徴とする。
【0030】
この発明によると、内壁近接部が屈曲形成された板状の部分として設けられるため、屈曲部の位置や個数を調整することで、戸本体の内壁と内壁近接部との間の狭い空間の経路をより長く確保するとともに長い迂回経路を確保することを簡易な構造で容易に実現することができる。これにより、更に効率よく火炎を遮蔽することができる。
【0031】
第13発明に係る防火戸は、第4発明乃至第12発明のいずれかの防火戸において、前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板と前記遮蔽板近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする。
【0032】
この発明によると、戸本体の内壁における開口の周囲には、遮蔽位置において遮蔽板に向かって延びて遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられている。そして、遮蔽位置では、開口の両面側を連通する空間経路として、遮蔽板と遮蔽板近接部との間を経由して開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路が形成される。このため、火災が発生して開口が遮蔽された状態でガラスが破損しても、火炎は、開口を通過するためには、遮蔽板と遮蔽板近接部との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路も通過しなければならないことになる。これにより、遮蔽板と遮蔽板近接部との間の狭い空間と迂回経路とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0033】
第14発明に係る防火戸は、第4発明乃至第10発明のいずれかの防火戸において、前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、前記内壁近接部における前記戸本体の内壁に最も接近した部分が、前記遮蔽板近接部における前記遮蔽板に最も近接した部分よりも、前記戸本体の内壁に近い側に位置し、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板近接部と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする。
【0034】
この発明によると、遮蔽板には内壁近接部が設けられ、戸本体の内壁における開口の周囲には遮蔽板近接部が設けられている。また、内壁近接部の最も戸本体内壁側が遮蔽板近接部の最も遮蔽板側よりも戸本体の内壁に近い側に位置するように、内壁近接部と遮蔽板近接部とが入り組んで構成されている。そして、遮蔽位置では、開口の両面側を連通する空間経路として、遮蔽板近接部と内壁近接部との間を経由して開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路が形成される。このため、火災が発生して開口が遮蔽された
状態でガラスが破損しても、火炎は、開口を通過するためには、入り組んで配置された遮蔽板近接部と内壁近接部との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路も通過しなければならないことになる。これにより、入り組んで配置された遮蔽板近接部と内壁近接部との間の狭い空間と迂回経路とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに所定の認定コストを抑制でき、良好な視認性を確保することができる防火戸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係る防火戸を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図2のB−B線矢視断面図である。
【図4】図2に示す防火戸における柱部材及びその近傍を拡大して示す断面図である。
【図5】図2のC−C線矢視断面図である。
【図6】図1に示す防火戸の図1とは異なる状態を示す正面図である。
【図7】図6のD−D線矢視断面図である。
【図8】図7のE−E線矢視断面図である。
【図9】図7に対応する断面図であって、火災によりガラスが破損した状態を示す断面図である。
【図10】図9のF−F線矢視断面図である。
【図11】図7のG−G線矢視断面図である
【図12】図2に示す防火戸における作動手段及びその近傍を拡大して示す断面図である。
【図13】図7に対応する断面図であって、開閉部が開放された状態を示す断面図である。
【図14】遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成に関する変形例を示す模式図である。
【図15】図14のH線矢視位置から見た一部拡大断面図である。
【図16】遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成に関する他の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、火炎を遮蔽するための防火戸として広く適用することができるものであり、自動ドア及び手動ドア(手動で開閉されるドア)のいずれの戸の形態に対しても適用することができる。また、開き戸、引き戸、折戸等、種々の形態の戸に対しても適用することができる。
【0038】
図1は、本発明の一実施の形態に係る防火戸1を示す正面図である。図1に示す防火戸1は、例えば、所定の部屋に対してその内側(室内側)と外側(室外側)とを仕切る戸として設けられる。そして、防火戸1は、例えば、引き戸式の自動ドアとして設けられ、図示しないドア駆動装置によって水平方向に移動するように駆動されることで開閉する。尚、防火戸1は、単独で1枚の自動ドアとして用いられてもよく、また、複数枚で構成される自動ドアにおける1枚の戸として用いられてもよい。また、防火戸1は、室内外を仕切る戸に限らず、通路の途中に配置されて所定の領域に対してその内側と外側とを仕切る戸として設けられてもよい。
【0039】
図2は図1のA−A線矢視断面図であり、図3は図2のB−B線矢視断面図である。図
1乃至図3に示すように、防火戸1は、戸本体11、複数のガラス12、遮蔽板13、作動手段14、遮蔽板駆動手段15、上端側ローラ21、下端側ローラ22、上側ガイドレール23、下側ガイドレール24、ヒンジ部30などを備えて構成されている。そして、戸本体11は、両面のパネル体16、柱部材17、横フレーム18などを備えて構成されている。この戸本体11は、図示しない建築構造物に対して支持され、上下方向に沿って配置された状態で水平方向において移動自在に支持されている。そして、前述のドア駆動装置が作動することで、戸本体11が水平方向に移動し、防火戸1の開閉動作が行われる。尚、図1では、防火戸1による閉動作が行われる際にその移動方向における先端側となる戸先側の方向について図中の矢印Pで示している。
【0040】
図1乃至図3に示すパネル体16は、水平方向よりも上下方向に長い縦長形状に形成されている。そして、パネル体16は、室外側に配置されるパネル体16aと室内側に配置されるパネル体16bとを有して構成され、鋼製の板材によって形成されている。尚、本実施形態では、複数枚の板材が互いに固定されることでパネル体16(16a、16b)が形成されている場合を例示しているが、この通りでなくてもよく、1枚の板材が折り曲げ加工されることでパネル体16が形成されていてもよい。
【0041】
また、パネル体16a及びパネル体16bには、その水平方向における一方の戸先側(図1における矢印Pで示す側)に偏った位置に、長辺方向が上下方向に延びる縦長の長方形の貫通孔として形成された開口20がそれぞれ設けられている。このように戸本体11に形成されたこれらの開口20が、防火戸1の窓を構成することになる。また、これらの開口20は、図1によく示すように、その上下方向における長さ寸法が戸本体11の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成されている。尚、本実施形態では、開口20の上下方向の長さ寸法が戸本体11の上下方向の長さ寸法の約80%程度の長さ寸法に設定されている場合を例示している。また、開口20の左右方向(即ち、パネル体16の幅方向と平行な水平方向)における長さ寸法は、戸本体11の左右方向における長さ寸法の約半分の長さ寸法以下、例えば3分の1や4分の1や5分の1、或いは10分の1などであればよいが、視認性を最大化するため、本実施例では、寸法が戸本体11の左右方向における長さ寸法の約半分の長さ寸法となるように形成されている。
【0042】
図1及び図2に示す柱部材(17、18)は、戸本体11内における水平方向の両側(左右両側)にそれぞれ配置された柱部材17と柱部材18とで構成されている。そして、柱部材(17、18)は、戸本体11の内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体16(16a、16b)を支持する部材(即ち、戸本体11における上下方向の強度メンバー)として設けられている。各柱部材(17、18)は、複数の鋼製の板材が折り曲げ加工されることで形成されるとともにパネル体16に固定されている。
【0043】
図4は、図2における柱部材17及びその近傍を拡大して示す断面図である。図4に示すように、柱部材(17、18)のうちの一方の柱部材17は、縦フレーム17aと錘部振れ止めフレーム17bとを備えて構成されている。縦フレーム17aは、それぞれ折り曲げ加工された一対の板部材として設けられ、戸本体11の内部でパネル体16a及びパネル体16bに対して固定されるとともに、戸本体11における上端側から下端側に亘って上下方向に長く延びるように配置されている。そして、縦フレーム17aは、パネル体16a及びパネル体16bに対して平行な一対の平面部分を有するように構成されている。尚、縦フレーム17aにおける一対の平面部分の間の空間は、後述する遮蔽板駆動手段15の錘部25が落下移動可能な空間を形成している。
【0044】
柱部材17の錘部振れ止めフレーム17bは、それぞれ折り曲げ加工された一対の板部材として設けられ、縦フレーム17aに対して固定されるとともに、縦フレーム17aよりも短い長さで上下方向に延びるよう配置されている。そして、錘部振れ止めフレーム1
7bは、その延長方向においてパネル体16a及びパネル体16bに対して直交する一対の平面部分を有するように構成されている。尚、錘部振れ止めフレーム17bは、後述の遮蔽板駆動手段15の錘部25が落下移動する範囲に対応して配置されている。これにより、錘部振れ止めフレーム17bにおける一対の平面部分の間に配置された錘部25が落下移動する際に、錘部25のパネル体16の幅方向に沿った水平方向における振れが防止されることになる。
【0045】
柱部材17は、上述した縦フレーム17a及び錘部振れ止めフレーム17bを備えることで、これらのフレーム(17a、17b)の内側の領域が略矩形断面の中空領域となるように形成されている。これにより、柱部材17は、遮蔽板駆動手段15の錘部25が落下移動可能な空間が内側に形成された本実施形態の錘部内蔵柱部材を構成している。尚、後述の錘部25の水平方向の断面形状は柱部材17のフレーム(17a、17b)の内壁の水平方向の断面形状に沿った形状となっており、これにより、錘部内蔵柱部材である柱部材17は、内側の壁面が錘部25の落下移動方向をガイドするように形成されている。
【0046】
図1及び図3に示す横フレーム19は、戸本体11の内部において水平方向に沿って配置され、柱部材(17、18)とともに両面のパネル体16(16a、16b)を支持する部材(即ち、戸本体11における水平方向の強度メンバー)として設けられている。そして、横フレーム19は、鋼製の板材が折り曲げ加工されることで形成され、戸本体11内の上下方向における複数個所に配置されるとともに、開口20の上側及び下側に配置されている。
【0047】
図1乃至図3に示す複数のガラス12は、複数の板ガラスとして設けられ、戸本体11の両面側において開口20を戸本体11の内部側から覆うように取り付けられている。そして、ガラス12は、パネル体16aに対して取り付けられるガラス12aと、パネル体16bに対して取り付けられるガラス12bとで構成されている。ガラス12aは、パネル体16aに形成された開口20を塞ぐように設けられ、戸本体11における戸先側に配置されている。このガラス12aは、その周縁部に沿って配置されるシール部材29aを介して開口20を密閉した状態で、戸本体11の内壁の一部として設けられたガラス取付部材28aによりパネル体16aに取り付けられている。尚、ガラス取付部材28aは、開口20の周囲で上下方向に延びる部分については他の部材と独立した部材として設けられ、開口20の周囲で水平方向に延びる部分についてはその一部が横フレーム19と部分的に共通した部材として設けられている。
【0048】
一方、ガラス12bは、パネル体16bの一部として設けられた枠部16cに形成された開口20を塞ぐように設けられ、戸本体11における戸先側に配置されている。尚、枠部16cは、パネル体16bにおいて開口20の周囲を区画するとともにパネル体16bの本体部分(パネル体16bにおける枠部16c以外の部分)に対して後述のヒンジ部30を介して揺動可能に設けられている。そして、ガラス12bは、その周縁部に沿って配置されるシール部材29bを介して枠部16cに形成された開口20を密閉した状態で、戸本体11の内壁の一部として設けられたガラス取付部材28bによりパネル体16bの枠部16cに取り付けられている。尚、ガラス12(12a、12b)は、開口20と同様に、その上下方向における長さ寸法が戸本体11の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成されている。
【0049】
図5は、図2のC−C線矢視断面図である。図1、図2、図4、図5に示すように、ヒンジ部30は、戸本体11の内部において一対設けられ、パネル体16bの内側に取り付けられている。各ヒンジ部30は、開口20の上端側及び下端側にそれぞれ配置されるとともに、開口20に対して戸先側に配置されている。そして、各ヒンジ部30は、円柱状に形成された軸部材30aと、この軸部材30aが遊嵌状態で挿入される孔が形成される
とともに軸部材30aに対してその周囲で回転自在な回転筒部材30bと、を備えて構成されている。軸部材30aは、一方の端部が横フレーム19に固定されている。一方、回転筒部材30bは、その側部において、ガラス取付部材28b及び枠部16cにおける戸先側に対して一体的に固定されている。
【0050】
上述のようにヒンジ部30が設けられることで、ガラス12b、ガラス取付部材28b及び枠部16cは、それらの戸先側の端部に位置する軸部材30aを中心として揺動可能に構成されている。これにより、戸本体11にガラス12が取り付けられることで構成された戸構造体の片面側であるパネル体16b側における一部は、この戸構造体の内部を外部に対して開放可能なように開閉自在に形成された開閉部38として設けられている。本実施形態では、この開閉部38は、上述のように、ガラス12b、ガラス取付部材28b、枠部16cを含んで構成されている。図1乃至図5では、この開閉部が閉じられた閉止状態を示している。この閉止状態では、開閉部におけるヒンジ部30側と反対側の端部は、戸本体11の内部の所定のフレーム部材に対して、例えばネジ31により固定されている。尚、本実施形態では、戸構造体の片面側の一部のみが開閉部として構成された防火戸1を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、防火戸1において、戸構造体の両面側の一部がそれぞれ開閉部として構成されていてもよい。
【0051】
図1及び図2に示す遮蔽板13は、鋼(本実施形態における金属)製で略四角形の板状部材として形成されるとともに、戸本体11の内部に収納されている。この遮蔽板13は、後述の遮蔽板駆動手段15と連結され、後述の作動手段14が作動することにより、戸本体11内において水平方向に沿って移動するように設けられている。遮蔽板13は、火災が発生しておらず作動手段14が作動していない状態では、図1及び図2に示すように、開口20から戸先側と反対側の側方に外れた位置に退避した退避位置に位置している。
【0052】
一方、火災が発生して作動手段14が作動すると、図6の防火戸1の正面図に示すように、遮蔽板13は、退避位置から水平方向に沿って移動して、開口20を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。図6のD−D線矢視断面図である図7、及び図7のE−E線矢視断面図である図8によく示すように、遮蔽板13は、上記の遮蔽位置では、開口20を遮蔽するように複数のガラス12(12a、12b)の間で各ガラス(12a、12b)に対向するように配置されることになる。この遮蔽位置では、遮蔽板13の戸先側の端部は、戸本体11の一部であるガラス取付部材28aに取り付けられて開口20よりも戸先側に配置された板ゴム部材32に当接しており、遮蔽板13の戸先側と戸本体11の内壁との間は封鎖されている。
【0053】
また、遮蔽板13には、図7及び図8によく示すように、その外周の縁部分に沿って設けられた内壁近接部33(33a、33b、33c)が設けられている。内壁近接部33aは、遮蔽板13の水平方向における戸先側(遮蔽位置から退避位置へと向かう方向における端部側)と反対側の縁部分に配置され、遮蔽板13の上下方向に沿って延びるように設けられている。内壁近接部33bは、遮蔽板13の上側の縁部分に配置され、遮蔽板13の水平方向に沿って延びるように設けられている。内壁近接部33cは、遮蔽板13の下側の縁部分に配置され、遮蔽板13の水平方向に沿って延びるように設けられている。これらの内壁近接部33(33a、33b、33c)は、屈曲形成された板状の部分として設けられている。尚、柱部材18における内壁近接部33aに対向する部分には、遮蔽板13が遮蔽位置にあるときに当接する板ゴム部材39が防振ゴムとして取り付けられている(図2参照)。これにより、防火戸1の開閉時における遮蔽板13の振動が抑制され、振動音の発生が防止されることになる。
【0054】
内壁近接部33(33a、33b、33c)は、図7及び図8に示すように、遮蔽板13が遮蔽位置に移動した状態で戸本体11の内部において開口20の周囲に沿って配置さ
れている。そして、この内壁近接部33(33a、33b、33c)は、戸本体11の内壁に向かって延びる部分を有しており、遮蔽板13が遮蔽位置に移動した状態で、隙間を介して戸本体11の内壁に近接するように構成されている。尚、内壁近接部33bにおいては、戸本体11の内壁においてパネル体16a側に近接するものとパネル体16b側に近接するものとが設けられている。
【0055】
一方、遮蔽板13に内壁近接部33が設けられているのに対して、戸本体11の内壁には、図7及び図8によく示すように、開口20の周囲に沿って配置された遮蔽板近接部34が設けられている。この遮蔽板近接部34としては、戸本体11の内壁において、上下方向に沿って延びるように配置された遮蔽板近接部34a及び遮蔽板近接部34bと、開口20の上側で水平方向に沿って延びるように配置された遮蔽板近接部34c及び遮蔽板近接部34dと、開口20の下側で水平方向に沿って延びるように配置された遮蔽板近接部34e及び遮蔽板近接部34fと、が設けられている。
【0056】
遮蔽板近接部34(34a、34b、34c、34d、34e、34f)は、図7及び図8に示すように、遮蔽板13が遮蔽位置に移動した状態で遮蔽板13に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して遮蔽板13に近接するように構成されている。そして、遮蔽版近接部34a及び遮蔽板近接部34bは、遮蔽位置にある遮蔽板13の戸先側と反対側の部分に対して対向するように配置され、遮蔽板近接部34aがパネル体16a側に設けられ、遮蔽板近接部34bがパネル体16b側に設けられている。また、遮蔽板近接部34aはガラス取付部材28aを構成する部材の一部として設けられ、遮蔽板近接部34bはガラス取付部材28bを構成する部材の一部として設けられている。遮蔽板近接部34c及び遮蔽板近接部34eは、パネル体16a側に設けられて、ガラス取付部材28a及び横フレーム19を構成する部材の一部として設けられている。遮蔽板近接部34d及び遮蔽板近接部34fは、パネル体16b側に設けられて、ガラス取付部材28bを構成する部材の一部として設けられている。
【0057】
図9は、火災が発生して遮蔽板13が遮蔽位置に移動して開口20を遮蔽するとともに、火災によってガラス12(12a、12b)が破損した状態を示す図6のD−D線矢視位置に対応する断面図である。また、図10は、図9のF−F線矢視断面図である。図9及び図10に示す状態では、開口20に取り付けられたガラス12(12a、12b)は破損し、パネル体16a及びパネル体16bに設けられた開口20は、大きく開放された状態になっている。しかしながら、遮蔽板13が遮蔽位置に移動することで、戸本体11の内部において開口20の両面側を連通する空間経路が、遮蔽板13の内壁近接部(33a、33b、33c)と戸本体11の内壁の遮蔽板近接部(34a、34b、34c、34d、34e、34f)との間を経由するとともに開口20の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路(L、M、N)として形成されることになる。
【0058】
図9中において矢印Lで示す迂回経路L、図10中において矢印M及び矢印Nでそれぞれ示す迂回経路M及び迂回経路Nは、防火戸1の内側から外側に向かう経路を示している。図9に示す迂回経路Lは、内壁近接部33aと遮蔽板近接部34bとの間を経由した後、更に遮蔽板近接部34aと遮蔽板13との間を経由する迂回経路として構成されることになる。また、図10に示す迂回経路Mは、パネル体16b側に近接する内壁近接部33bと遮蔽板近接部34dとの間を経由した後、更にパネル体36a側に近接する内壁近接部33bと遮蔽板近接部34cとの間を経由する迂回経路として構成されることになる。尚、パネル体16b側に近接する内壁近接部33bにおける戸本体11の内壁に最も近接する部分は、遮蔽板近接部34dにおける遮蔽板13に最も近接した部分よりも、戸本体11の内壁に近い側に位置している。また、図10に示す迂回経路Nは、内壁近接部33cと遮蔽板近接部34fとの間を経由した後、更に遮蔽板近接部34eと遮蔽板13との間を経由する迂回経路として構成されることになる。
【0059】
図11は、図7のG−G線矢視断面図である。図1、図6及び図11に示すように、遮蔽板13の上端部に対して、複数(本実施形態では2つ)の上端側ローラ21が取り付けられている。各上端側ローラ21は、遮蔽板13に対して回転自在に取り付けられた車輪として設けられている。また、遮蔽板13の下端部に対しても、複数(本実施形態では2つ)の下端側ローラ22が取り付けられている。各下端側ローラ22も、遮蔽板13に対して回転自在に取り付けられた車輪として設けられている。
【0060】
また、図8及び図11によく示すように、戸本体11においては、水平方向の強度メンバーである横フレーム19に対して取り付けられて、水平方向に延びるように配置された上側ガイドレール23と下側ガイドレール24とが設けられている。上側ガイドレール23は上側に配置された横フレーム19に固定され、下側ガイドレール24は下側に配置された横フレーム19に固定されて上側ガイドレール23の下方に配置されている。そして、上端側ローラ21は、その車輪の周方向に延びる溝部において、上側ガイドレール23に対して下方から当接して水平方向に転動自在に係合している。また、下端側ローラ22は、その車輪の周方向に伸びる溝部において、下側ガイドレール24に対して上方から当接して水平方向に転動自在に係合している。これにより、遮蔽板13は、上端側ローラ21及び下端側ローラ22の回転とともに、上側ガイドレール23と下側ガイドレール24との間で上下両側から支持された状態で水平方向に沿って移動可能に設けられている。
【0061】
図12は、図2における作動手段14及びその近傍を拡大して示す断面図である。図1、図2及び図12に示す作動手段14は、戸本体11の内部において開口20の上下方向における中途の位置に1つ配置され、遮蔽板13に対して一方の端部が取り付けられる遮蔽板側取付片14aと、戸本体11に対して一方の端部が取り付けられる戸本体側取付片14bとをそれぞれ備えている。そして、作動手段14は、これらの遮蔽板側取付片14a及び戸本体側取付片14bの他方の端部同士が、所定の温度の融点で溶融する合金によってろう付されて接合されることで構成されている。これにより、作動手段14は、遮蔽板13側と戸本体11側とを連結するとともに、所定の温度を超えることでろう付の部分で溶断されて遮蔽板13側と戸本体11側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられている。即ち、作動手段14は、火災の発生に応じて作動するものであり、火災が発生して所定の温度に達することで作動(溶断)し、遮蔽板13側と戸本体11側との連結を解除するように構成されている。尚、作動手段14の戸本体側取付片14bは、戸本体11に対しては、室内側に配置されたパネル体16b側において連結されるように取り付けられている。このため、室内側で発生した火災を迅速に検知できるように配置されている。
【0062】
遮蔽板駆動手段15は、図1に示すように、1つの錘部25と、1本の連結ワイヤ26と、1つの滑車27とを備えて構成されている。遮蔽板駆動手段15における錘部25は、例えば直方体状の鋼塊として形成されており、図1及び図4に示すように、錘部内蔵柱部材である柱部材17の内側に配置されている。そして、火災発生時には、錘部25は、後述のように、柱部材17の内側を重力によって落下して、図1に示す状態から図6に示す状態へと移動するように構成されている。また、図4によく示すように、錘部25の水平方向における両側面とその近傍の部分は、柱部材17(17a、17b)の内側の壁面に対して挟まれる位置で複数個所において摺接可能に配置されている。更に、錘部25の水平方向における両側面とその近傍の部分には、柱部材17(17a、17b)の内側の壁面に対して摺接する樹脂部材35が設けられている。
【0063】
また、図1及び図6に示す連結ワイヤ26は、鋼製のワイヤーロープとして設けられ、錘部25を遮蔽板13に連結する本実施形態の連結部を構成している。そして、連結ワイヤ26は、一方の端部が錘部25に取り付けられており、他方の端部が図7にて二点鎖線
で示すワイヤ取付部材36を介して遮蔽板13に取り付けられている。これにより、錘部25は、連結ワイヤ26を介して遮蔽板13に連結されている。また、図1、図6及び図7に示すように、滑車27は、戸本体11の内部において開口20の側方の戸先側に配置され、戸本体11に対して取り付けられている(尚、図7では、滑車27は破線で図示している)。この滑車27の車輪の溝部には、連結ワイヤ26が掛け回されている。
【0064】
遮蔽板駆動手段15においては、火災による温度上昇によって、作動手段14のろう付部分が溶断すると、戸本体11と遮蔽板13との連結が解除され、錘部25の連結ワイヤ26及び遮蔽板13を介した戸本体11への拘束状態も解除されることになる。これにより、錘部25が重力によって落下し、連結ワイヤ26が錘部25によって引っ張られるとともに滑車27の車輪が回転し、錘部25及び連結ワイヤ26の移動とともに遮蔽板13が水平方向に引っ張られることになる。このように、遮蔽板駆動手段15は、作動手段14が作動(溶断)したとき、錘部25の落下に伴って遮蔽板13を退避位置(図1乃至図3参照)から遮蔽位置(図6乃至図8参照)へと移動させるように構成されている。
【0065】
尚、防火戸1においては、図1及び図6に示すように、遮蔽位置へと移動した遮蔽板13を退避位置へと手動操作によって戻すためのワイヤーロープ37が設けられている。このワイヤーロープ37の一端側の端部は、戸本体11の内部において、遮蔽板13の戸先側と反対側の端部に対して遮蔽板13の上下方向における略中間位置で取り付けられている。そして、ワイヤーロープ37の他端側の端部は、戸本体11の戸先側と反対側の端部において外部に露出した状態で配置されている。この他端側の端部は、遮蔽板13が遮蔽位置にあるときは、例えば、戸本体11に設けられた小さなフック等に対して容易に外れるように緩く巻き掛けられている。火災の発生や動作の点検確認のために遮蔽板13が遮蔽位置に移動した後に、遮蔽板13を退避位置に戻す際には、作業者は、ワイヤーロープ37の他端側を引っ張ることで、図6に示す遮蔽位置の状態から図1に示す退避位置の状態へと、遮蔽板13の位置を戻すことができる。
【0066】
次に、上述した防火戸1の作動について説明する。防火戸1は、火災が発生していない通常時は、自動ドアとして図示しないドア駆動装置によって開閉操作が行われている。一方、例えば防火戸1の室内側で火災が発生したときには、防火戸1は閉鎖され、ドア駆動装置による制御が停止される。そして、火災による温度上昇によって、防火戸1の温度が上昇すると、作動手段14におけるろう付部分が溶断され、遮蔽板13と戸本体11との連結が解除され、遮蔽板駆動手段15が作動し、錘部25が重力によって落下する。これにより、遮蔽板13は、滑車27を介して連結ワイヤ26によって水平方向に引っ張られる。この遮蔽板駆動手段15の作動に伴い、遮蔽板13は、上側ガイドレール23及び下側ガイドレール24の間で、上端側ローラ21及び下端側ローラ22が転動しながら、水平方向に移動する。そして、遮蔽板13は、開口20を遮蔽するように複数のガラス12の間に配置される遮蔽位置へと移動することになる(図6乃至図8参照)。
【0067】
遮蔽板13が遮蔽位置へと移動した後、室内で発生した火災が消火されておらず火勢が強くなると、室内の温度が更に上昇し、図9及び図11に示すように、ガラス12が破損することになる。しかしながら、このようにガラス12が破損した状態でも、開口20は遮蔽板13によって遮蔽されていることになる。そして、この状態では、開口20の両面側を連通する空間経路は、前述した迂回経路L、迂回経路M及び迂回経路Nのみとなり、火炎の通過が阻まれることになる。
【0068】
ここで、防火戸1における開閉部38の作動について説明する。図13は、図7に対応する防火戸1の断面図であって、開閉部38が開放された状態を示す断面図である。開閉部38を開く場合には、作業者は、開閉部38におけるヒンジ部30と反対側で開閉部38の端部を戸本体11における開閉部38以外の部分に固定しているネジ31を緩めて取
り外す。これにより、開閉部38は、ヒンジ部30を中心とする回転方向に揺動可能となり、図13に示すように開いた状態にすることができる。これにより、戸本体11の内部がパネル体16b側において外部に対して開放された状態となる。また、ヒンジ部30は、遮蔽位置にある遮蔽板13の戸先側の端部よりも更に戸先側に配置されている。このため、防火戸1においては、遮蔽位置にある遮蔽板13を中心とした戸本体11内の領域での保守等の作業をより容易に行うことができるように構成されている。
【0069】
また、図13によく示すように、防火戸1においては、枠部16cにおけるヒンジ部30の近傍に配置された部分がそれに隣接するパネル体16bの縁部と当接することで、開閉部38の可動範囲である開き角度が略90°となるように設定されている。このため、防火戸1の戸先側に存在する壁面等の他の設備と開閉部38とが干渉してしまうことを抑制できるとともに、開閉部38の開き角度を十分に大きく確保して作業性の向上も図ることができるように構成されている。尚、ヒンジ部30の位置と防火戸1の戸先側の端部との距離に応じ、他の設備との干渉を抑制しつつ、開閉部38の開き角度を適宜90°よりも大きく設定することができる。
【0070】
以上説明した防火戸1によると、戸本体11に形成された両面側の開口20を覆うようにガラス12が取り付けられているため、見通しと採光とを確保することができる。また、戸本体11内には金属製の遮蔽板13が水平方向に移動可能に収納されている。そして、火災の発生に応じて作動する作動手段14が作動したとき、遮蔽板駆動手段15が作動して遮蔽板13が、開口20から外れた退避位置から開口20を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。このため、火災発生時には、開口20が金属製の遮蔽板13で遮蔽され、火災の進展によってガラス12が破損しても、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮することができる。そして、作動手段14の作動に基づいて開口20を遮蔽できるため、耐火ガラスを用いずに防火機能を実現でき、建築基準法の施行令が定める構造認定で済み、耐火試験が不要となる結果、所定の認定コストを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態によると、開口20に取り付けるガラス12は耐熱板ガラスでなくてよいため、見通しと採光とが確保された防火戸1を耐熱板ガラスを用いることなく実現することができる。そして、耐熱板ガラスを用いなくてよいため、施工に際して業者の選定に制約が多くなることがなく、円滑な施工を実現でき、施工費用の増大を抑制することができる。また、耐熱板ガラスでない一般のガラス12を用いることができるため、耐熱板ガラスを用いる場合に比して大幅なコストダウンを図ることもできる。
【0072】
更に、本実施形態によると、戸本体11の開口20及びこの開口20を覆うガラス12が、その上下方向における長さ寸法が戸本体11の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成される。このため、ガラス12が取り付けられた開口20の面積を十分に広くして見通しが良くなるように設定することができ、耐熱板ガラスを用いた防火戸の場合と同等の良好な視認性を確保することができる。また、その開口20及びガラス12が、戸本体11の半分以上の長さ寸法となるように形成されているため、少なくとも戸本体11の中央より下側における視認性を確実に確保することができ、足元側の視認性を向上させることができる。
【0073】
従って、本実施形態によると、ガラス12が取り付けられた防火戸1に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに所定の認定コストを抑制でき、良好な視認性を確保することができる。
【0074】
また、防火戸1によると、作動手段14が作動したとき、遮蔽板駆動手段15が作動して錘部25が落下することで、錘部25に連結された遮蔽板13が、開口20から外れた退避位置から開口20を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。作動手段14の作動に基づいて
錘部25が落下することで開口20を遮蔽できるため、簡易な構造で防火機能を実現でき、構造の複雑化を抑制することができる。また、バネや傾斜レールを用いるものに比べて、錘部の配置の自由度が高くなるため、空間の有効利用を図ることができる。
【0075】
また、防火戸1によると、戸本体11及びガラス12を備えて構成される戸構造体には、その内部を開放可能なように開閉自在な開閉部38が設けられる。このため、戸本体11の内部に配置される遮蔽板13や作動手段14、遮蔽板駆動手段15の設置作業やこれらの保守作業を行う場合に、戸本体11を分解等することなく、開閉部38を開閉することで、これらの作業を容易に行うことができる。
【0076】
また、防火戸1によると、戸本体11の開口20を覆うガラス12のうちのガラス12bが開閉部38として戸構造体において開閉され、ガラス12以外の部分のみで開閉部38が構成されることがない。このため、開閉部38が設けられることに伴う戸本体11の強度への影響を極小化することができる。
【0077】
また、防火戸1によると、遮蔽板13の上下端部にそれぞれ回転自在な上端側ローラ21及び下端側ローラ22が取り付けられる。そして、これらのローラ(21、22)は、戸本体11の上下方向に並んでそれぞれ水平方向に延びるように設けられた上側ガイドレール23及び下側ガイドレール24の間において、両レール(23、24)に対して転動自在に係合するとともに反力を発生させた状態で支持される。これにより、遮蔽板13は、上側及び下側の両ガイドレール(23、24)の間において、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して開口20を遮蔽することができる。尚、防火戸1においては、上端側ローラ21及び下端側ローラ22がそれぞれ複数設けられているため、より安定した姿勢を維持することができる。
【0078】
また、防火戸1によると、戸本体11内の強度メンバーとして上下方向に延びてパネル体16を支持する柱部材17が設けられ、この柱部材17として、内部に錘部25が落下移動可能な空間が形成された錘部内蔵柱部材17が備えられている。このため、戸本体11内において強度メンバーを配置するスペースと錘部25が落下移動するスペースとを兼用させることができ、戸本体11内のスペースを効率よく活用することができる。また、防火戸1によると、錘部内蔵柱部材17の内側の壁面によって錘部25の落下移動方向がガイドされるため、錘部25の落下移動時の揺れの発生が抑制され、遮蔽板駆動手段15の作動をより速やかに円滑に行わせることができる。
【0079】
また、防火戸1によると、作動手段14が、所定の温度を超えると溶断されて遮蔽板13側と戸本体11側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられ、煙感知器やソレノイドなど電気的な駆動制御手段を介さずに遮蔽板駆動手段15を作動させるように構成されている。よって、機械式であるため、作動の信頼性を更に向上させることができる。
【0080】
また、防火戸1によると、遮蔽板13には内壁近接部33(33a、33b、33c)が設けられ、戸本体11の内壁における開口20の周囲には遮蔽板近接部34(34a、34b、34c、34d、34e、34f)が設けられている。また、内壁近接部33bの最も戸本体11の内壁側が遮蔽板近接部34dの最も遮蔽板13側よりも戸本体11の内壁に近い側に位置するように、内壁近接部33bと遮蔽板近接部34dとが入り組んで構成されている。そして、遮蔽位置では、開口20の両面側を連通する空間経路として、内壁近接部33と遮蔽板近接部34との間を経由して開口20の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路(L、M、N)が形成される。このため、火災が発生して開口20が遮蔽された状態でガラス12が破損しても、火炎は、開口20を通過するためには、
内壁近接部33と遮蔽板近接部34との間の狭い空間や入り組んだ経路を通過するとともに迂回経路(L、M、N)も通過しなければならないことになる。これにより、内壁近接部33と遮蔽板近接部34との間の狭い空間や入り組んだ経路と迂回経路(L、M、N)とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0081】
また、防火戸1によると、内壁近接部33及び遮蔽板近接部34が屈曲形成された板状の部分として設けられるため、屈曲部の位置や個数を調整することで、戸本体11の内壁と内壁近接部33との間や遮蔽板13と遮蔽板近接部34との間の狭い空間の経路をより長く確保するとともに長い迂回経路を確保することを簡易な構造で容易に実現することができる。これにより、更に効率よく火炎を遮蔽することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0083】
(1)本実施形態では、引き戸式の自動ドアに対して適用される場合を例にとって説明したが、この通りでなくてよく、開き戸式や折戸式の防火戸として適用されてもよく、また、手動ドアに適用されてもよい。
【0084】
(2)戸本体における開口の位置や大きさについては、上記の実施形態で例示したものに限らず、種々変更して実施することができる。尚、本実施形態では、開口及びこの開口を覆うガラスについては、戸本体の片面側について1つの開口と1枚のガラスとが設けられる場合を例にとって説明したが、この通りでなくもよい。即ち、戸本体の片面側について、複数の開口が設けられているものや複数枚のガラスが取り付けられているものであってもよい。この場合、片面側の開口及び開口を覆うガラスについては、その上下方向における長さ寸法であって水平方向で重ならない部分について足し合わせた分の合計の長さ寸法が戸本体の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように構成されていればよい。また、左右方向についても同様に、その左右方向における長さ寸法であって左右方向で重ならない部分について足し合わせた分の合計の長さ寸法が戸本体の左右方向における長さ寸法の半分以下の長さ寸法となるように構成されていればよい。
【0085】
(3)戸本体における柱部材については、上記の実施形態で例示した構造に限らず、配置や形状を種々変更して実施することができる。また、作動手段については、温度ヒューズ以外の手段、例えば、煙感知器に連動して作動するソレノイドを用いてもよい。また、遮蔽板駆動手段については、錘部の配置や個数、連結部の構成を種々変更して実施することができる。また、内壁近接部及び遮蔽板近接部の配置や形状については、種々変更して実施することができる。
【0086】
(4)本実施形態では、遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成として、上端側ローラと下端側ローラと上側ガイドレールと下側ガイドレールとを備えるものを例にとって説明したが、この通りでなくもよく、種々変更して実施することができる。図14は、遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成に関する変形例を示す模式図である。図14に示す変形例に係る防火戸においては、上端側及び下端側ローラと上側及び下側ガイドレールとが備えられておらず、懸架用ローラ40と、懸架用ガイドレール41と、ガイド部42とが備えられている。尚、図14では、変形例に係る防火戸の正面図に対応する模式図を示すとともに、本実施形態と同様に構成される遮蔽板13及びガラス12、懸架用ローラ40、懸架用ガイドレール41、ガイド部42以外の要素については図示を省略している。
【0087】
懸架用ローラ40は、遮蔽板13の上端部において保持部材40aを介して回転自在に取り付けられた車輪として設けられている。そして、この懸架用ローラ40は、複数取り付けられている。懸架用ガイドレール41は、図示しない戸本体においてその内側にて水平方向に延びるように配置されている。そして、この懸架用ガイドレール41は、遮蔽板13が懸架されるように、懸架用ローラ40が上方から当接して水平方向に転動可能に係合するように構成されている。
【0088】
図15は、図14のH線矢視位置から見たガイド部42及びその近傍を拡大して示す一部拡大断面図である。図14及び図15に示すガイド部42は、戸本体において懸架用ガイドレール41の下方で水平方向に延びるように配置されている。このガイド部42には、上方に開口するとともに水平方向に延びるように形成された矩形断面の溝部42aが設けられている。この溝部42aに対しては、その内側に遮蔽板13の下端部43の下端側が遊嵌状態で配置される。これにより、ガイド部42は、上下方向及び遮蔽板13の移動方向である水平方向のいずれに対しても垂直な方向である前後方向(図15において両端矢印Iで示す方向)における遮蔽板13の下端部43の変位量を規制するとともに遮蔽板13の下端部43の水平方向の移動をガイドするように構成されている。このように構成されることで、遮蔽板13は、懸架用ローラ40が懸架用ガイドレール41上で転動するとともに、下端部43においてガイド部42によって誘導されながら、図示しない遮蔽板駆動手段の作動に伴って、退避位置から遮蔽位置へと水平方向に移動することになる。
【0089】
この変形例に係る防火戸によると、戸本体には、遮蔽板13の上端部に回転自在に設けられた懸架用ローラ40が転動自在に係合して懸架される懸架用ガイドレール41と、遮蔽板13の下端部43の水平方向の移動のみを許容するようガイドするガイド部42とが、上下方向に並んでそれぞれ水平方向に延びるように設けられる。このため、遮蔽板13は、懸架用ガイドレール41及びガイド部42の間において、懸架されるとともに水平方向の移動方向がガイドされた状態で支持される。これにより、遮蔽板13は、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して、戸本体に形成された開口を遮蔽することができる。尚、この変形例に係る防火戸においては、懸架用ローラ40が複数設けられており、より安定した姿勢を維持することができる。
【0090】
(5)図16は、遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成に関する他の変形例を示す模式図である。図16に示す変形例に係る防火戸においては、本実施形態のような上端側及び下端側ローラと上側及び下側ガイドレールとが備えられておらず、一対の中央ローラ44と、中央ガイドレール45とが備えられている。尚、図16では、変形例に係る防火戸の正面図に対応する模式図を示すとともに、本実施形態と同様に構成される遮蔽板13及びガラス12、一対の中央ローラ44、中央ガイドレール45以外の要素については図示を省略している。
【0091】
一対の中央ローラ44は、上側に配置された中央ローラ44aと下側に配置された中央ローラ44bとを備えて構成されており、これらの各中央ローラ(44a、44b)が遮蔽板13の片面側に対して回転自在に取り付けられるとともに上下方向に並んで配置されている。また、一対の中央ローラ44は、複数(この変形例では2つ)水平方向に並んで配置されている。尚、この変形例では、一対の中央ローラ44が遮蔽板13の片面側に配置されたものを例示しているが、この通りでなくてもよく、両面側にそれぞれ配置されていてもよい。
【0092】
中央ガイドレール45は、図示しない戸本体においてその内側にて水平方向に延びるように配置されている。この中央ガイドレール45は、戸本体の両面側にそれぞれ配置されるガラス12の間において水平方向に延びるように配置されている。そして、中央ガイド
レール45は、一対の中央ローラ44が上下方向の両側から当接して水平方向に転動自在に係合するように構成されている。即ち、対向して配置される中央ローラ44aと中央ローラ44bとが、上下方向の両側から転動自在に係合している。尚、この変形例では、ガラス12が1枚のものとして構成されている場合を例示しているが、この通りでなくてもよく、ガラス12が、中央ガイドレール45に対向する位置において複数枚のガラスに分離されたものとして構成されていてもよい。
【0093】
この変形例に係る防火戸によると、遮蔽板13の中央部分に回転自在な一対の中央ローラ44が取り付けられる。そして、これらのローラ44(44a、44b)は、戸本体において水平方向に延びるように設けられた中央ガイドレール45に対して転動自在に係合するとともに上下方向の両側から対向して挟み込む力を発生させた状態で支持される。これにより、遮蔽板13は、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して、戸本体に形成された開口を遮蔽することができる。尚、この変形例に係る防火戸においては、一対の中央ローラ44が複数設けられており、より安定した姿勢を維持することができる。
【0094】
上記実施例に係る防火戸によると、遮蔽板駆動手段15としては、錘を用いるものであるが、一端を遮蔽版13に、他端を戸本体11に固定したバネを用いてもよく、更にこの場合、バネ力が一定のものを用いても良い。また、錘の代わりに、遮蔽版13自体の自重を用いるように、傾斜したレールを用いても良い。この場合、上側ガイドレール23や下側ガイドレール24、或いは中央ガイドレール45の戸先側が、戸尻側に比べて僅かに、例えば数mm程度、鉛直下側に位置するように配置される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、火炎を遮蔽するための防火戸であって、ガラスが取り付けられた防火戸として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0096】
1 防火戸
11 戸本体
12、12a、12b ガラス
13 遮蔽板
14 作動手段
15 遮蔽板駆動手段
20 開口
25 錘部
26 連結ワイヤ(連結部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎を遮蔽するための防火戸であって、ガラスが取り付けられた防火戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火炎を遮蔽するための防火戸に関し、見通しを良くすることや採光できるようにすること等を目的としてガラスが取り付けられた防火戸が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された防火戸は、外周が耐火鋼材で支持された耐熱板ガラスを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−287961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された防火戸のように、耐熱板ガラスを用いることで、防火戸においても見通しや採光の目的を達成することができる。しかしながら、耐熱板ガラスを用いた防火戸では、所定の認定を受けるために1時間程度の耐火試験を行う必要がありコストがかかる。また耐熱板ガラスを用いた防火戸の場合、耐熱板ガラスの取り扱いを専門に行う専門業者によって施工することが必要となる。このため、施工に際して、業者の選定に制約が多くなり、円滑な施工が難しく、更には施工費用の増大を招いてしまうという問題がある。従って、ガラスが取り付けられて見通しと採光とが確保された防火戸の構造を耐熱板ガラスを用いることなく実現することが望まれる。更に、このような防火戸の実現にあたっては、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮できることが必要となるとともに、耐火試験によらず、構造認定で対応できるような構造とすることで、所定の認定コストを低減することも望まれる。そして、戸本体に形成される開口とこの開口を覆うガラスとについては、見通しが良くてより良好な視認性が確保されるように、その寸法構成が設定されることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに所定の認定コストを抑制でき、良好な視認性を確保することができる防火戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1発明に係る防火戸は、火炎を遮蔽するための防火戸に関する。そして、第1発明に係る防火戸は、開口が形成された戸本体と、前記戸本体の両面側において前記開口を覆うように取り付けられたガラスと、金属の板状部材として形成されるとともに、前記戸本体の内部に収納されて、水平方向に沿って移動することで、前記開口から外れた位置に退避した退避位置から前記開口を遮蔽するように前記ガラスに対向するように配置される遮蔽位置に移動する遮蔽板と、火災の発生に応じて作動する作動手段と、前記作動手段が作動したときに、前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させる遮蔽板駆動手段と、を備え、前記開口及び当該開口を覆う前記ガラスは、その上下方向における長さ寸法が前記戸本体の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によると、戸本体に形成された両面側の開口を覆うようにガラスが取り付けられているため、見通しと採光とを確保することができる。また、戸本体内には金属製の遮蔽板が水平方向に移動可能に収納されている。そして、火災の発生に応じて作動する作動手段が作動したとき、遮蔽板駆動手段が作動して遮蔽板が、開口から外れた退避位置から開口を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。このため、火災発生時には、開口が金属製の遮蔽板で遮蔽され、火災の進展によってガラスが破損しても、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮することができる。そして、作動手段の作動に基づいて開口を遮蔽できるため、耐火ガラスを用いずに防火機能を実現でき、建築基準法の施行令が定める構造認定で済み、耐火試験が不要となる結果、所定の認定コストを抑制することができる。また、本発明によると、開口に取り付けるガラスは耐熱板ガラスでなくてよいため、見通しと採光とが確保された防火戸を耐熱板ガラスを用いることなく実現することができる。そして、耐熱板ガラスを用いなくてよいため、施工に際して業者の選定に制約が多くなることがなく、円滑な施工を実現でき、施工費用の増大を抑制することができる。また、耐熱板ガラスでない一般のガラスを用いることができるため、耐熱板ガラスを用いる場合に比して大幅なコストダウンを図ることもできる。更に、本発明によると、戸本体の開口及びこの開口を覆うガラスが、その上下方向における長さ寸法が戸本体の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成される。このため、ガラスが取り付けられた開口の面積を十分に広くして見通しが良くなるように設定することができ、耐熱板ガラスを用いた防火戸の場合と同等の良好な視認性を確保することができる。また、その開口及びガラスが、戸本体の半分以上の長さ寸法となるように形成されているため、少なくとも戸本体の中央より下側における視認性を確実に確保することができ、足元側の視認性を向上させることができる。
【0008】
従って、本発明によると、ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに所定の認定コストを抑制でき、良好な視認性を確保することができる防火戸を提供することができる。
【0009】
第2発明に係る防火戸は、第1発明の防火戸において、前記遮蔽板駆動手段は、重力によって落下する錘部及び当該錘部を前記遮蔽板に連結する連結部を有し、前記作動手段が作動したときに、前記錘部の落下に伴って前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させるものであることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、作動手段が作動したとき、遮蔽板駆動手段が作動して錘部が落下することで、錘部に連結された遮蔽板が、開口から外れた退避位置から開口を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。作動手段の作動に基づいて錘部が落下することで開口を遮蔽できるため、簡易な構造で防火機能を実現でき、構造の複雑化を抑制することができる。また、バネや傾斜レールを用いるものに比べて、錘部の配置の自由度が高くなるため、空間の有効利用を図ることができる。
【0011】
第3発明に係る防火戸は、第2発明の防火戸において、前記戸本体に前記ガラスが取り付けられることで構成された戸構造体の少なくとも片面側における一部は、当該戸構造体の内部を外部に対して開放可能なように開閉自在に形成された開閉部として設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、戸構造体には、その内部を開放可能なように開閉自在な開閉部が設けられる。このため、戸本体の内部に配置される遮蔽板や作動手段、遮蔽板駆動手段の設置作業やこれらの保守作業を行う場合に、戸本体を分解等することなく、開閉部を開閉することで、これらの作業を容易に行うことができる。
【0013】
第4発明に係る防火戸は、第3発明の防火戸において、前記開閉部は、前記ガラスを含
んでいることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、戸本体の開口を覆うガラスが開閉部の全部又は一部として戸構造体において開閉され、ガラス以外の部分のみで開閉部が構成されることがない。このため、開閉部が設けられることに伴う戸本体の強度への影響を極小化することができ又は無くすことができる。
【0015】
第5発明に係る防火戸は、第4発明の防火戸において、前記遮蔽板の上端部に対して回転自在に取り付けられた上端側ローラと、前記遮蔽板の下端部に対して回転自在に取り付けられた下端側ローラと、前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記上端側ローラが下方から当接して水平方向に転動自在に係合する上側ガイドレールと、前記戸本体において前記上側ガイドレールの下方で水平方向に延びるように配置されるとともに、前記下端側ローラが上方から当接して水平方向に転動自在に係合する下側ガイドレールと、を更に備えていることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、遮蔽板の上下端部にそれぞれ回転自在な上端側ローラ及び下端側ローラが取り付けられる。そして、これらのローラは、戸本体の上下方向に並んでそれぞれ水平方向に延びるように設けられた上側ガイドレール及び下側ガイドレールの間において、両レールに対して転動自在に係合するとともに反力を発生させた状態で支持される。これにより、遮蔽板は、上側及び下側の両ガイドレールの間において、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して開口を遮蔽することができる。尚、上端側ローラ及び下端側ローラは、それぞれ1つ設けられていてもよいが、より安定した姿勢を維持するためには、それぞれ複数設けられていることが望ましい。
【0017】
第6発明に係る防火戸は、第4発明の防火戸において、前記遮蔽板の上端部に対して回転自在に取り付けられた懸架用ローラと、前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記遮蔽板が懸架されるように前記懸架用ローラが上方から当接して水平方向に転動自在に係合する懸架用ガイドレールと、前記戸本体において前記懸架用ガイドレールの下方で水平方向に延びるように配置され、上下方向及び前記遮蔽板の移動方向である水平方向のいずれに対しても垂直な方向である前後方向における前記遮蔽板の下端部の変位量を規制するとともに当該遮蔽板の下端部の水平方向の移動をガイドするガイド部と、を更に備えていることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、戸本体には、遮蔽板の上端部に回転自在に設けられた懸架用ローラが転動自在に係合して懸架される懸架用ガイドレールと、遮蔽板の下端部の水平方向の移動のみを許容するようガイドするガイド部とが、上下方向に並んでそれぞれ水平方向に延びるように設けられる。このため、遮蔽板は、懸架用ガイドレール及びガイド部の間において、懸架されるとともに水平方向の移動方向がガイドされた状態で支持される。これにより、遮蔽板は、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して開口を遮蔽することができる。尚、懸架用ローラは、1つ設けられていてもよいが、より安定した姿勢を維持するためには、複数設けられていることが望ましい。
【0019】
第7発明に係る防火戸は、第4発明の防火戸において、前記遮蔽板の少なくとも片面側の中央部分に対して回転自在に取り付けられるとともに上下方向に並んで配置された一対の中央ローラと、前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記一対の中央ローラが上下方向の両側から当接して水平方向に転動自在に係合する中央ガイドレールと、を更に備えていることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、遮蔽板の中央部分に回転自在な一対の中央ローラが取り付けられる。そして、これらのローラは、戸本体において水平方向に延びるように設けられた中央ガイドレールに対して転動自在に係合するとともに上下方向の両側から対向して挟み込む力を発生させた状態で支持される。これにより、遮蔽板は、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して開口を遮蔽することができる。尚、一対の中央ローラは、1つ(即ち、1対のみ)設けられていてもよいが、より安定した姿勢を維持するためには、複数(即ち、複数対)設けられていることが望ましい。
【0021】
第8発明に係る防火戸は、第4発明乃至第7発明のいずれかの防火戸において、前記戸本体には、その内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体を支持する柱部材が設けられ、前記柱部材として、前記錘部が落下移動可能な空間が内側に形成された錘部内蔵柱部材が備えられていることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、戸本体内の強度メンバーとして上下方向に延びてパネル体を支持する柱部材が設けられ、この柱部材として、内部に錘部が落下移動可能な空間が形成された錘部内蔵柱部材が備えられている。このため、戸本体内において強度メンバーを配置するスペースと錘部が落下移動するスペースとを兼用させることができ、戸本体内のスペースを効率よく活用することができる。
【0023】
第9発明に係る防火戸は、第8発明の防火戸において、前記錘部内蔵柱部材は、内側の壁面が前記錘部の落下移動方向をガイドするように形成されていることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、錘部内蔵柱部材の内側の壁面によって錘部の落下移動方向がガイドされるため、錘部の落下移動時の揺れの発生が抑制され、遮蔽板駆動手段の作動をより速やかに円滑に行わせることができる。
【0025】
第10発明に係る防火戸は、第4発明乃至第9発明の防火戸において、前記作動手段は、前記遮蔽板側と前記戸本体側とを連結するとともに、所定の温度を超えることで溶断されて前記遮蔽板側と前記戸本体側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられていることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、作動手段が、所定の温度を超えると溶断されて遮蔽板側と戸本体側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられ、煙感知器やソレノイドなど電気的な駆動制御手段を介さずに遮蔽板駆動手段を作動させるように構成されている。よって、機械式であるため、作動の信頼性を更に向上させることができる。
【0027】
第11発明に係る防火戸は、第4発明乃至第10発明の防火戸において、前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記戸本体の内壁と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、遮蔽板には、遮蔽位置において開口の周囲で戸本体の内壁に向かって延びてこの内壁に近接する内壁近接部が設けられている。そして、遮蔽位置では、開口の両面側を連通する空間経路として、戸本体の内壁と内壁近接部との間を経由して開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路が形成される。このため、火災が発生して開口が遮蔽された状態でガラスが破損しても、火炎は、開口を通過するためには、戸本
体の内壁と内壁近接部との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路も通過しなければならないことになる。これにより、戸本体の内壁と内壁近接部との間の狭い空間と迂回経路とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0029】
第12発明に係る防火戸は、第11発明の防火戸において、前記内壁近接部は、屈曲形成された板状の部分として設けられていることを特徴とする。
【0030】
この発明によると、内壁近接部が屈曲形成された板状の部分として設けられるため、屈曲部の位置や個数を調整することで、戸本体の内壁と内壁近接部との間の狭い空間の経路をより長く確保するとともに長い迂回経路を確保することを簡易な構造で容易に実現することができる。これにより、更に効率よく火炎を遮蔽することができる。
【0031】
第13発明に係る防火戸は、第4発明乃至第12発明のいずれかの防火戸において、前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板と前記遮蔽板近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする。
【0032】
この発明によると、戸本体の内壁における開口の周囲には、遮蔽位置において遮蔽板に向かって延びて遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられている。そして、遮蔽位置では、開口の両面側を連通する空間経路として、遮蔽板と遮蔽板近接部との間を経由して開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路が形成される。このため、火災が発生して開口が遮蔽された状態でガラスが破損しても、火炎は、開口を通過するためには、遮蔽板と遮蔽板近接部との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路も通過しなければならないことになる。これにより、遮蔽板と遮蔽板近接部との間の狭い空間と迂回経路とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0033】
第14発明に係る防火戸は、第4発明乃至第10発明のいずれかの防火戸において、前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、前記内壁近接部における前記戸本体の内壁に最も接近した部分が、前記遮蔽板近接部における前記遮蔽板に最も近接した部分よりも、前記戸本体の内壁に近い側に位置し、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板近接部と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする。
【0034】
この発明によると、遮蔽板には内壁近接部が設けられ、戸本体の内壁における開口の周囲には遮蔽板近接部が設けられている。また、内壁近接部の最も戸本体内壁側が遮蔽板近接部の最も遮蔽板側よりも戸本体の内壁に近い側に位置するように、内壁近接部と遮蔽板近接部とが入り組んで構成されている。そして、遮蔽位置では、開口の両面側を連通する空間経路として、遮蔽板近接部と内壁近接部との間を経由して開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路が形成される。このため、火災が発生して開口が遮蔽された
状態でガラスが破損しても、火炎は、開口を通過するためには、入り組んで配置された遮蔽板近接部と内壁近接部との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路も通過しなければならないことになる。これにより、入り組んで配置された遮蔽板近接部と内壁近接部との間の狭い空間と迂回経路とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに所定の認定コストを抑制でき、良好な視認性を確保することができる防火戸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係る防火戸を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図2のB−B線矢視断面図である。
【図4】図2に示す防火戸における柱部材及びその近傍を拡大して示す断面図である。
【図5】図2のC−C線矢視断面図である。
【図6】図1に示す防火戸の図1とは異なる状態を示す正面図である。
【図7】図6のD−D線矢視断面図である。
【図8】図7のE−E線矢視断面図である。
【図9】図7に対応する断面図であって、火災によりガラスが破損した状態を示す断面図である。
【図10】図9のF−F線矢視断面図である。
【図11】図7のG−G線矢視断面図である
【図12】図2に示す防火戸における作動手段及びその近傍を拡大して示す断面図である。
【図13】図7に対応する断面図であって、開閉部が開放された状態を示す断面図である。
【図14】遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成に関する変形例を示す模式図である。
【図15】図14のH線矢視位置から見た一部拡大断面図である。
【図16】遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成に関する他の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、火炎を遮蔽するための防火戸として広く適用することができるものであり、自動ドア及び手動ドア(手動で開閉されるドア)のいずれの戸の形態に対しても適用することができる。また、開き戸、引き戸、折戸等、種々の形態の戸に対しても適用することができる。
【0038】
図1は、本発明の一実施の形態に係る防火戸1を示す正面図である。図1に示す防火戸1は、例えば、所定の部屋に対してその内側(室内側)と外側(室外側)とを仕切る戸として設けられる。そして、防火戸1は、例えば、引き戸式の自動ドアとして設けられ、図示しないドア駆動装置によって水平方向に移動するように駆動されることで開閉する。尚、防火戸1は、単独で1枚の自動ドアとして用いられてもよく、また、複数枚で構成される自動ドアにおける1枚の戸として用いられてもよい。また、防火戸1は、室内外を仕切る戸に限らず、通路の途中に配置されて所定の領域に対してその内側と外側とを仕切る戸として設けられてもよい。
【0039】
図2は図1のA−A線矢視断面図であり、図3は図2のB−B線矢視断面図である。図
1乃至図3に示すように、防火戸1は、戸本体11、複数のガラス12、遮蔽板13、作動手段14、遮蔽板駆動手段15、上端側ローラ21、下端側ローラ22、上側ガイドレール23、下側ガイドレール24、ヒンジ部30などを備えて構成されている。そして、戸本体11は、両面のパネル体16、柱部材17、横フレーム18などを備えて構成されている。この戸本体11は、図示しない建築構造物に対して支持され、上下方向に沿って配置された状態で水平方向において移動自在に支持されている。そして、前述のドア駆動装置が作動することで、戸本体11が水平方向に移動し、防火戸1の開閉動作が行われる。尚、図1では、防火戸1による閉動作が行われる際にその移動方向における先端側となる戸先側の方向について図中の矢印Pで示している。
【0040】
図1乃至図3に示すパネル体16は、水平方向よりも上下方向に長い縦長形状に形成されている。そして、パネル体16は、室外側に配置されるパネル体16aと室内側に配置されるパネル体16bとを有して構成され、鋼製の板材によって形成されている。尚、本実施形態では、複数枚の板材が互いに固定されることでパネル体16(16a、16b)が形成されている場合を例示しているが、この通りでなくてもよく、1枚の板材が折り曲げ加工されることでパネル体16が形成されていてもよい。
【0041】
また、パネル体16a及びパネル体16bには、その水平方向における一方の戸先側(図1における矢印Pで示す側)に偏った位置に、長辺方向が上下方向に延びる縦長の長方形の貫通孔として形成された開口20がそれぞれ設けられている。このように戸本体11に形成されたこれらの開口20が、防火戸1の窓を構成することになる。また、これらの開口20は、図1によく示すように、その上下方向における長さ寸法が戸本体11の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成されている。尚、本実施形態では、開口20の上下方向の長さ寸法が戸本体11の上下方向の長さ寸法の約80%程度の長さ寸法に設定されている場合を例示している。また、開口20の左右方向(即ち、パネル体16の幅方向と平行な水平方向)における長さ寸法は、戸本体11の左右方向における長さ寸法の約半分の長さ寸法以下、例えば3分の1や4分の1や5分の1、或いは10分の1などであればよいが、視認性を最大化するため、本実施例では、寸法が戸本体11の左右方向における長さ寸法の約半分の長さ寸法となるように形成されている。
【0042】
図1及び図2に示す柱部材(17、18)は、戸本体11内における水平方向の両側(左右両側)にそれぞれ配置された柱部材17と柱部材18とで構成されている。そして、柱部材(17、18)は、戸本体11の内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体16(16a、16b)を支持する部材(即ち、戸本体11における上下方向の強度メンバー)として設けられている。各柱部材(17、18)は、複数の鋼製の板材が折り曲げ加工されることで形成されるとともにパネル体16に固定されている。
【0043】
図4は、図2における柱部材17及びその近傍を拡大して示す断面図である。図4に示すように、柱部材(17、18)のうちの一方の柱部材17は、縦フレーム17aと錘部振れ止めフレーム17bとを備えて構成されている。縦フレーム17aは、それぞれ折り曲げ加工された一対の板部材として設けられ、戸本体11の内部でパネル体16a及びパネル体16bに対して固定されるとともに、戸本体11における上端側から下端側に亘って上下方向に長く延びるように配置されている。そして、縦フレーム17aは、パネル体16a及びパネル体16bに対して平行な一対の平面部分を有するように構成されている。尚、縦フレーム17aにおける一対の平面部分の間の空間は、後述する遮蔽板駆動手段15の錘部25が落下移動可能な空間を形成している。
【0044】
柱部材17の錘部振れ止めフレーム17bは、それぞれ折り曲げ加工された一対の板部材として設けられ、縦フレーム17aに対して固定されるとともに、縦フレーム17aよりも短い長さで上下方向に延びるよう配置されている。そして、錘部振れ止めフレーム1
7bは、その延長方向においてパネル体16a及びパネル体16bに対して直交する一対の平面部分を有するように構成されている。尚、錘部振れ止めフレーム17bは、後述の遮蔽板駆動手段15の錘部25が落下移動する範囲に対応して配置されている。これにより、錘部振れ止めフレーム17bにおける一対の平面部分の間に配置された錘部25が落下移動する際に、錘部25のパネル体16の幅方向に沿った水平方向における振れが防止されることになる。
【0045】
柱部材17は、上述した縦フレーム17a及び錘部振れ止めフレーム17bを備えることで、これらのフレーム(17a、17b)の内側の領域が略矩形断面の中空領域となるように形成されている。これにより、柱部材17は、遮蔽板駆動手段15の錘部25が落下移動可能な空間が内側に形成された本実施形態の錘部内蔵柱部材を構成している。尚、後述の錘部25の水平方向の断面形状は柱部材17のフレーム(17a、17b)の内壁の水平方向の断面形状に沿った形状となっており、これにより、錘部内蔵柱部材である柱部材17は、内側の壁面が錘部25の落下移動方向をガイドするように形成されている。
【0046】
図1及び図3に示す横フレーム19は、戸本体11の内部において水平方向に沿って配置され、柱部材(17、18)とともに両面のパネル体16(16a、16b)を支持する部材(即ち、戸本体11における水平方向の強度メンバー)として設けられている。そして、横フレーム19は、鋼製の板材が折り曲げ加工されることで形成され、戸本体11内の上下方向における複数個所に配置されるとともに、開口20の上側及び下側に配置されている。
【0047】
図1乃至図3に示す複数のガラス12は、複数の板ガラスとして設けられ、戸本体11の両面側において開口20を戸本体11の内部側から覆うように取り付けられている。そして、ガラス12は、パネル体16aに対して取り付けられるガラス12aと、パネル体16bに対して取り付けられるガラス12bとで構成されている。ガラス12aは、パネル体16aに形成された開口20を塞ぐように設けられ、戸本体11における戸先側に配置されている。このガラス12aは、その周縁部に沿って配置されるシール部材29aを介して開口20を密閉した状態で、戸本体11の内壁の一部として設けられたガラス取付部材28aによりパネル体16aに取り付けられている。尚、ガラス取付部材28aは、開口20の周囲で上下方向に延びる部分については他の部材と独立した部材として設けられ、開口20の周囲で水平方向に延びる部分についてはその一部が横フレーム19と部分的に共通した部材として設けられている。
【0048】
一方、ガラス12bは、パネル体16bの一部として設けられた枠部16cに形成された開口20を塞ぐように設けられ、戸本体11における戸先側に配置されている。尚、枠部16cは、パネル体16bにおいて開口20の周囲を区画するとともにパネル体16bの本体部分(パネル体16bにおける枠部16c以外の部分)に対して後述のヒンジ部30を介して揺動可能に設けられている。そして、ガラス12bは、その周縁部に沿って配置されるシール部材29bを介して枠部16cに形成された開口20を密閉した状態で、戸本体11の内壁の一部として設けられたガラス取付部材28bによりパネル体16bの枠部16cに取り付けられている。尚、ガラス12(12a、12b)は、開口20と同様に、その上下方向における長さ寸法が戸本体11の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成されている。
【0049】
図5は、図2のC−C線矢視断面図である。図1、図2、図4、図5に示すように、ヒンジ部30は、戸本体11の内部において一対設けられ、パネル体16bの内側に取り付けられている。各ヒンジ部30は、開口20の上端側及び下端側にそれぞれ配置されるとともに、開口20に対して戸先側に配置されている。そして、各ヒンジ部30は、円柱状に形成された軸部材30aと、この軸部材30aが遊嵌状態で挿入される孔が形成される
とともに軸部材30aに対してその周囲で回転自在な回転筒部材30bと、を備えて構成されている。軸部材30aは、一方の端部が横フレーム19に固定されている。一方、回転筒部材30bは、その側部において、ガラス取付部材28b及び枠部16cにおける戸先側に対して一体的に固定されている。
【0050】
上述のようにヒンジ部30が設けられることで、ガラス12b、ガラス取付部材28b及び枠部16cは、それらの戸先側の端部に位置する軸部材30aを中心として揺動可能に構成されている。これにより、戸本体11にガラス12が取り付けられることで構成された戸構造体の片面側であるパネル体16b側における一部は、この戸構造体の内部を外部に対して開放可能なように開閉自在に形成された開閉部38として設けられている。本実施形態では、この開閉部38は、上述のように、ガラス12b、ガラス取付部材28b、枠部16cを含んで構成されている。図1乃至図5では、この開閉部が閉じられた閉止状態を示している。この閉止状態では、開閉部におけるヒンジ部30側と反対側の端部は、戸本体11の内部の所定のフレーム部材に対して、例えばネジ31により固定されている。尚、本実施形態では、戸構造体の片面側の一部のみが開閉部として構成された防火戸1を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、防火戸1において、戸構造体の両面側の一部がそれぞれ開閉部として構成されていてもよい。
【0051】
図1及び図2に示す遮蔽板13は、鋼(本実施形態における金属)製で略四角形の板状部材として形成されるとともに、戸本体11の内部に収納されている。この遮蔽板13は、後述の遮蔽板駆動手段15と連結され、後述の作動手段14が作動することにより、戸本体11内において水平方向に沿って移動するように設けられている。遮蔽板13は、火災が発生しておらず作動手段14が作動していない状態では、図1及び図2に示すように、開口20から戸先側と反対側の側方に外れた位置に退避した退避位置に位置している。
【0052】
一方、火災が発生して作動手段14が作動すると、図6の防火戸1の正面図に示すように、遮蔽板13は、退避位置から水平方向に沿って移動して、開口20を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。図6のD−D線矢視断面図である図7、及び図7のE−E線矢視断面図である図8によく示すように、遮蔽板13は、上記の遮蔽位置では、開口20を遮蔽するように複数のガラス12(12a、12b)の間で各ガラス(12a、12b)に対向するように配置されることになる。この遮蔽位置では、遮蔽板13の戸先側の端部は、戸本体11の一部であるガラス取付部材28aに取り付けられて開口20よりも戸先側に配置された板ゴム部材32に当接しており、遮蔽板13の戸先側と戸本体11の内壁との間は封鎖されている。
【0053】
また、遮蔽板13には、図7及び図8によく示すように、その外周の縁部分に沿って設けられた内壁近接部33(33a、33b、33c)が設けられている。内壁近接部33aは、遮蔽板13の水平方向における戸先側(遮蔽位置から退避位置へと向かう方向における端部側)と反対側の縁部分に配置され、遮蔽板13の上下方向に沿って延びるように設けられている。内壁近接部33bは、遮蔽板13の上側の縁部分に配置され、遮蔽板13の水平方向に沿って延びるように設けられている。内壁近接部33cは、遮蔽板13の下側の縁部分に配置され、遮蔽板13の水平方向に沿って延びるように設けられている。これらの内壁近接部33(33a、33b、33c)は、屈曲形成された板状の部分として設けられている。尚、柱部材18における内壁近接部33aに対向する部分には、遮蔽板13が遮蔽位置にあるときに当接する板ゴム部材39が防振ゴムとして取り付けられている(図2参照)。これにより、防火戸1の開閉時における遮蔽板13の振動が抑制され、振動音の発生が防止されることになる。
【0054】
内壁近接部33(33a、33b、33c)は、図7及び図8に示すように、遮蔽板13が遮蔽位置に移動した状態で戸本体11の内部において開口20の周囲に沿って配置さ
れている。そして、この内壁近接部33(33a、33b、33c)は、戸本体11の内壁に向かって延びる部分を有しており、遮蔽板13が遮蔽位置に移動した状態で、隙間を介して戸本体11の内壁に近接するように構成されている。尚、内壁近接部33bにおいては、戸本体11の内壁においてパネル体16a側に近接するものとパネル体16b側に近接するものとが設けられている。
【0055】
一方、遮蔽板13に内壁近接部33が設けられているのに対して、戸本体11の内壁には、図7及び図8によく示すように、開口20の周囲に沿って配置された遮蔽板近接部34が設けられている。この遮蔽板近接部34としては、戸本体11の内壁において、上下方向に沿って延びるように配置された遮蔽板近接部34a及び遮蔽板近接部34bと、開口20の上側で水平方向に沿って延びるように配置された遮蔽板近接部34c及び遮蔽板近接部34dと、開口20の下側で水平方向に沿って延びるように配置された遮蔽板近接部34e及び遮蔽板近接部34fと、が設けられている。
【0056】
遮蔽板近接部34(34a、34b、34c、34d、34e、34f)は、図7及び図8に示すように、遮蔽板13が遮蔽位置に移動した状態で遮蔽板13に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して遮蔽板13に近接するように構成されている。そして、遮蔽版近接部34a及び遮蔽板近接部34bは、遮蔽位置にある遮蔽板13の戸先側と反対側の部分に対して対向するように配置され、遮蔽板近接部34aがパネル体16a側に設けられ、遮蔽板近接部34bがパネル体16b側に設けられている。また、遮蔽板近接部34aはガラス取付部材28aを構成する部材の一部として設けられ、遮蔽板近接部34bはガラス取付部材28bを構成する部材の一部として設けられている。遮蔽板近接部34c及び遮蔽板近接部34eは、パネル体16a側に設けられて、ガラス取付部材28a及び横フレーム19を構成する部材の一部として設けられている。遮蔽板近接部34d及び遮蔽板近接部34fは、パネル体16b側に設けられて、ガラス取付部材28bを構成する部材の一部として設けられている。
【0057】
図9は、火災が発生して遮蔽板13が遮蔽位置に移動して開口20を遮蔽するとともに、火災によってガラス12(12a、12b)が破損した状態を示す図6のD−D線矢視位置に対応する断面図である。また、図10は、図9のF−F線矢視断面図である。図9及び図10に示す状態では、開口20に取り付けられたガラス12(12a、12b)は破損し、パネル体16a及びパネル体16bに設けられた開口20は、大きく開放された状態になっている。しかしながら、遮蔽板13が遮蔽位置に移動することで、戸本体11の内部において開口20の両面側を連通する空間経路が、遮蔽板13の内壁近接部(33a、33b、33c)と戸本体11の内壁の遮蔽板近接部(34a、34b、34c、34d、34e、34f)との間を経由するとともに開口20の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路(L、M、N)として形成されることになる。
【0058】
図9中において矢印Lで示す迂回経路L、図10中において矢印M及び矢印Nでそれぞれ示す迂回経路M及び迂回経路Nは、防火戸1の内側から外側に向かう経路を示している。図9に示す迂回経路Lは、内壁近接部33aと遮蔽板近接部34bとの間を経由した後、更に遮蔽板近接部34aと遮蔽板13との間を経由する迂回経路として構成されることになる。また、図10に示す迂回経路Mは、パネル体16b側に近接する内壁近接部33bと遮蔽板近接部34dとの間を経由した後、更にパネル体36a側に近接する内壁近接部33bと遮蔽板近接部34cとの間を経由する迂回経路として構成されることになる。尚、パネル体16b側に近接する内壁近接部33bにおける戸本体11の内壁に最も近接する部分は、遮蔽板近接部34dにおける遮蔽板13に最も近接した部分よりも、戸本体11の内壁に近い側に位置している。また、図10に示す迂回経路Nは、内壁近接部33cと遮蔽板近接部34fとの間を経由した後、更に遮蔽板近接部34eと遮蔽板13との間を経由する迂回経路として構成されることになる。
【0059】
図11は、図7のG−G線矢視断面図である。図1、図6及び図11に示すように、遮蔽板13の上端部に対して、複数(本実施形態では2つ)の上端側ローラ21が取り付けられている。各上端側ローラ21は、遮蔽板13に対して回転自在に取り付けられた車輪として設けられている。また、遮蔽板13の下端部に対しても、複数(本実施形態では2つ)の下端側ローラ22が取り付けられている。各下端側ローラ22も、遮蔽板13に対して回転自在に取り付けられた車輪として設けられている。
【0060】
また、図8及び図11によく示すように、戸本体11においては、水平方向の強度メンバーである横フレーム19に対して取り付けられて、水平方向に延びるように配置された上側ガイドレール23と下側ガイドレール24とが設けられている。上側ガイドレール23は上側に配置された横フレーム19に固定され、下側ガイドレール24は下側に配置された横フレーム19に固定されて上側ガイドレール23の下方に配置されている。そして、上端側ローラ21は、その車輪の周方向に延びる溝部において、上側ガイドレール23に対して下方から当接して水平方向に転動自在に係合している。また、下端側ローラ22は、その車輪の周方向に伸びる溝部において、下側ガイドレール24に対して上方から当接して水平方向に転動自在に係合している。これにより、遮蔽板13は、上端側ローラ21及び下端側ローラ22の回転とともに、上側ガイドレール23と下側ガイドレール24との間で上下両側から支持された状態で水平方向に沿って移動可能に設けられている。
【0061】
図12は、図2における作動手段14及びその近傍を拡大して示す断面図である。図1、図2及び図12に示す作動手段14は、戸本体11の内部において開口20の上下方向における中途の位置に1つ配置され、遮蔽板13に対して一方の端部が取り付けられる遮蔽板側取付片14aと、戸本体11に対して一方の端部が取り付けられる戸本体側取付片14bとをそれぞれ備えている。そして、作動手段14は、これらの遮蔽板側取付片14a及び戸本体側取付片14bの他方の端部同士が、所定の温度の融点で溶融する合金によってろう付されて接合されることで構成されている。これにより、作動手段14は、遮蔽板13側と戸本体11側とを連結するとともに、所定の温度を超えることでろう付の部分で溶断されて遮蔽板13側と戸本体11側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられている。即ち、作動手段14は、火災の発生に応じて作動するものであり、火災が発生して所定の温度に達することで作動(溶断)し、遮蔽板13側と戸本体11側との連結を解除するように構成されている。尚、作動手段14の戸本体側取付片14bは、戸本体11に対しては、室内側に配置されたパネル体16b側において連結されるように取り付けられている。このため、室内側で発生した火災を迅速に検知できるように配置されている。
【0062】
遮蔽板駆動手段15は、図1に示すように、1つの錘部25と、1本の連結ワイヤ26と、1つの滑車27とを備えて構成されている。遮蔽板駆動手段15における錘部25は、例えば直方体状の鋼塊として形成されており、図1及び図4に示すように、錘部内蔵柱部材である柱部材17の内側に配置されている。そして、火災発生時には、錘部25は、後述のように、柱部材17の内側を重力によって落下して、図1に示す状態から図6に示す状態へと移動するように構成されている。また、図4によく示すように、錘部25の水平方向における両側面とその近傍の部分は、柱部材17(17a、17b)の内側の壁面に対して挟まれる位置で複数個所において摺接可能に配置されている。更に、錘部25の水平方向における両側面とその近傍の部分には、柱部材17(17a、17b)の内側の壁面に対して摺接する樹脂部材35が設けられている。
【0063】
また、図1及び図6に示す連結ワイヤ26は、鋼製のワイヤーロープとして設けられ、錘部25を遮蔽板13に連結する本実施形態の連結部を構成している。そして、連結ワイヤ26は、一方の端部が錘部25に取り付けられており、他方の端部が図7にて二点鎖線
で示すワイヤ取付部材36を介して遮蔽板13に取り付けられている。これにより、錘部25は、連結ワイヤ26を介して遮蔽板13に連結されている。また、図1、図6及び図7に示すように、滑車27は、戸本体11の内部において開口20の側方の戸先側に配置され、戸本体11に対して取り付けられている(尚、図7では、滑車27は破線で図示している)。この滑車27の車輪の溝部には、連結ワイヤ26が掛け回されている。
【0064】
遮蔽板駆動手段15においては、火災による温度上昇によって、作動手段14のろう付部分が溶断すると、戸本体11と遮蔽板13との連結が解除され、錘部25の連結ワイヤ26及び遮蔽板13を介した戸本体11への拘束状態も解除されることになる。これにより、錘部25が重力によって落下し、連結ワイヤ26が錘部25によって引っ張られるとともに滑車27の車輪が回転し、錘部25及び連結ワイヤ26の移動とともに遮蔽板13が水平方向に引っ張られることになる。このように、遮蔽板駆動手段15は、作動手段14が作動(溶断)したとき、錘部25の落下に伴って遮蔽板13を退避位置(図1乃至図3参照)から遮蔽位置(図6乃至図8参照)へと移動させるように構成されている。
【0065】
尚、防火戸1においては、図1及び図6に示すように、遮蔽位置へと移動した遮蔽板13を退避位置へと手動操作によって戻すためのワイヤーロープ37が設けられている。このワイヤーロープ37の一端側の端部は、戸本体11の内部において、遮蔽板13の戸先側と反対側の端部に対して遮蔽板13の上下方向における略中間位置で取り付けられている。そして、ワイヤーロープ37の他端側の端部は、戸本体11の戸先側と反対側の端部において外部に露出した状態で配置されている。この他端側の端部は、遮蔽板13が遮蔽位置にあるときは、例えば、戸本体11に設けられた小さなフック等に対して容易に外れるように緩く巻き掛けられている。火災の発生や動作の点検確認のために遮蔽板13が遮蔽位置に移動した後に、遮蔽板13を退避位置に戻す際には、作業者は、ワイヤーロープ37の他端側を引っ張ることで、図6に示す遮蔽位置の状態から図1に示す退避位置の状態へと、遮蔽板13の位置を戻すことができる。
【0066】
次に、上述した防火戸1の作動について説明する。防火戸1は、火災が発生していない通常時は、自動ドアとして図示しないドア駆動装置によって開閉操作が行われている。一方、例えば防火戸1の室内側で火災が発生したときには、防火戸1は閉鎖され、ドア駆動装置による制御が停止される。そして、火災による温度上昇によって、防火戸1の温度が上昇すると、作動手段14におけるろう付部分が溶断され、遮蔽板13と戸本体11との連結が解除され、遮蔽板駆動手段15が作動し、錘部25が重力によって落下する。これにより、遮蔽板13は、滑車27を介して連結ワイヤ26によって水平方向に引っ張られる。この遮蔽板駆動手段15の作動に伴い、遮蔽板13は、上側ガイドレール23及び下側ガイドレール24の間で、上端側ローラ21及び下端側ローラ22が転動しながら、水平方向に移動する。そして、遮蔽板13は、開口20を遮蔽するように複数のガラス12の間に配置される遮蔽位置へと移動することになる(図6乃至図8参照)。
【0067】
遮蔽板13が遮蔽位置へと移動した後、室内で発生した火災が消火されておらず火勢が強くなると、室内の温度が更に上昇し、図9及び図11に示すように、ガラス12が破損することになる。しかしながら、このようにガラス12が破損した状態でも、開口20は遮蔽板13によって遮蔽されていることになる。そして、この状態では、開口20の両面側を連通する空間経路は、前述した迂回経路L、迂回経路M及び迂回経路Nのみとなり、火炎の通過が阻まれることになる。
【0068】
ここで、防火戸1における開閉部38の作動について説明する。図13は、図7に対応する防火戸1の断面図であって、開閉部38が開放された状態を示す断面図である。開閉部38を開く場合には、作業者は、開閉部38におけるヒンジ部30と反対側で開閉部38の端部を戸本体11における開閉部38以外の部分に固定しているネジ31を緩めて取
り外す。これにより、開閉部38は、ヒンジ部30を中心とする回転方向に揺動可能となり、図13に示すように開いた状態にすることができる。これにより、戸本体11の内部がパネル体16b側において外部に対して開放された状態となる。また、ヒンジ部30は、遮蔽位置にある遮蔽板13の戸先側の端部よりも更に戸先側に配置されている。このため、防火戸1においては、遮蔽位置にある遮蔽板13を中心とした戸本体11内の領域での保守等の作業をより容易に行うことができるように構成されている。
【0069】
また、図13によく示すように、防火戸1においては、枠部16cにおけるヒンジ部30の近傍に配置された部分がそれに隣接するパネル体16bの縁部と当接することで、開閉部38の可動範囲である開き角度が略90°となるように設定されている。このため、防火戸1の戸先側に存在する壁面等の他の設備と開閉部38とが干渉してしまうことを抑制できるとともに、開閉部38の開き角度を十分に大きく確保して作業性の向上も図ることができるように構成されている。尚、ヒンジ部30の位置と防火戸1の戸先側の端部との距離に応じ、他の設備との干渉を抑制しつつ、開閉部38の開き角度を適宜90°よりも大きく設定することができる。
【0070】
以上説明した防火戸1によると、戸本体11に形成された両面側の開口20を覆うようにガラス12が取り付けられているため、見通しと採光とを確保することができる。また、戸本体11内には金属製の遮蔽板13が水平方向に移動可能に収納されている。そして、火災の発生に応じて作動する作動手段14が作動したとき、遮蔽板駆動手段15が作動して遮蔽板13が、開口20から外れた退避位置から開口20を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。このため、火災発生時には、開口20が金属製の遮蔽板13で遮蔽され、火災の進展によってガラス12が破損しても、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮することができる。そして、作動手段14の作動に基づいて開口20を遮蔽できるため、耐火ガラスを用いずに防火機能を実現でき、建築基準法の施行令が定める構造認定で済み、耐火試験が不要となる結果、所定の認定コストを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態によると、開口20に取り付けるガラス12は耐熱板ガラスでなくてよいため、見通しと採光とが確保された防火戸1を耐熱板ガラスを用いることなく実現することができる。そして、耐熱板ガラスを用いなくてよいため、施工に際して業者の選定に制約が多くなることがなく、円滑な施工を実現でき、施工費用の増大を抑制することができる。また、耐熱板ガラスでない一般のガラス12を用いることができるため、耐熱板ガラスを用いる場合に比して大幅なコストダウンを図ることもできる。
【0072】
更に、本実施形態によると、戸本体11の開口20及びこの開口20を覆うガラス12が、その上下方向における長さ寸法が戸本体11の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成される。このため、ガラス12が取り付けられた開口20の面積を十分に広くして見通しが良くなるように設定することができ、耐熱板ガラスを用いた防火戸の場合と同等の良好な視認性を確保することができる。また、その開口20及びガラス12が、戸本体11の半分以上の長さ寸法となるように形成されているため、少なくとも戸本体11の中央より下側における視認性を確実に確保することができ、足元側の視認性を向上させることができる。
【0073】
従って、本実施形態によると、ガラス12が取り付けられた防火戸1に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに所定の認定コストを抑制でき、良好な視認性を確保することができる。
【0074】
また、防火戸1によると、作動手段14が作動したとき、遮蔽板駆動手段15が作動して錘部25が落下することで、錘部25に連結された遮蔽板13が、開口20から外れた退避位置から開口20を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。作動手段14の作動に基づいて
錘部25が落下することで開口20を遮蔽できるため、簡易な構造で防火機能を実現でき、構造の複雑化を抑制することができる。また、バネや傾斜レールを用いるものに比べて、錘部の配置の自由度が高くなるため、空間の有効利用を図ることができる。
【0075】
また、防火戸1によると、戸本体11及びガラス12を備えて構成される戸構造体には、その内部を開放可能なように開閉自在な開閉部38が設けられる。このため、戸本体11の内部に配置される遮蔽板13や作動手段14、遮蔽板駆動手段15の設置作業やこれらの保守作業を行う場合に、戸本体11を分解等することなく、開閉部38を開閉することで、これらの作業を容易に行うことができる。
【0076】
また、防火戸1によると、戸本体11の開口20を覆うガラス12のうちのガラス12bが開閉部38として戸構造体において開閉され、ガラス12以外の部分のみで開閉部38が構成されることがない。このため、開閉部38が設けられることに伴う戸本体11の強度への影響を極小化することができる。
【0077】
また、防火戸1によると、遮蔽板13の上下端部にそれぞれ回転自在な上端側ローラ21及び下端側ローラ22が取り付けられる。そして、これらのローラ(21、22)は、戸本体11の上下方向に並んでそれぞれ水平方向に延びるように設けられた上側ガイドレール23及び下側ガイドレール24の間において、両レール(23、24)に対して転動自在に係合するとともに反力を発生させた状態で支持される。これにより、遮蔽板13は、上側及び下側の両ガイドレール(23、24)の間において、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して開口20を遮蔽することができる。尚、防火戸1においては、上端側ローラ21及び下端側ローラ22がそれぞれ複数設けられているため、より安定した姿勢を維持することができる。
【0078】
また、防火戸1によると、戸本体11内の強度メンバーとして上下方向に延びてパネル体16を支持する柱部材17が設けられ、この柱部材17として、内部に錘部25が落下移動可能な空間が形成された錘部内蔵柱部材17が備えられている。このため、戸本体11内において強度メンバーを配置するスペースと錘部25が落下移動するスペースとを兼用させることができ、戸本体11内のスペースを効率よく活用することができる。また、防火戸1によると、錘部内蔵柱部材17の内側の壁面によって錘部25の落下移動方向がガイドされるため、錘部25の落下移動時の揺れの発生が抑制され、遮蔽板駆動手段15の作動をより速やかに円滑に行わせることができる。
【0079】
また、防火戸1によると、作動手段14が、所定の温度を超えると溶断されて遮蔽板13側と戸本体11側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられ、煙感知器やソレノイドなど電気的な駆動制御手段を介さずに遮蔽板駆動手段15を作動させるように構成されている。よって、機械式であるため、作動の信頼性を更に向上させることができる。
【0080】
また、防火戸1によると、遮蔽板13には内壁近接部33(33a、33b、33c)が設けられ、戸本体11の内壁における開口20の周囲には遮蔽板近接部34(34a、34b、34c、34d、34e、34f)が設けられている。また、内壁近接部33bの最も戸本体11の内壁側が遮蔽板近接部34dの最も遮蔽板13側よりも戸本体11の内壁に近い側に位置するように、内壁近接部33bと遮蔽板近接部34dとが入り組んで構成されている。そして、遮蔽位置では、開口20の両面側を連通する空間経路として、内壁近接部33と遮蔽板近接部34との間を経由して開口20の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路(L、M、N)が形成される。このため、火災が発生して開口20が遮蔽された状態でガラス12が破損しても、火炎は、開口20を通過するためには、
内壁近接部33と遮蔽板近接部34との間の狭い空間や入り組んだ経路を通過するとともに迂回経路(L、M、N)も通過しなければならないことになる。これにより、内壁近接部33と遮蔽板近接部34との間の狭い空間や入り組んだ経路と迂回経路(L、M、N)とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0081】
また、防火戸1によると、内壁近接部33及び遮蔽板近接部34が屈曲形成された板状の部分として設けられるため、屈曲部の位置や個数を調整することで、戸本体11の内壁と内壁近接部33との間や遮蔽板13と遮蔽板近接部34との間の狭い空間の経路をより長く確保するとともに長い迂回経路を確保することを簡易な構造で容易に実現することができる。これにより、更に効率よく火炎を遮蔽することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0083】
(1)本実施形態では、引き戸式の自動ドアに対して適用される場合を例にとって説明したが、この通りでなくてよく、開き戸式や折戸式の防火戸として適用されてもよく、また、手動ドアに適用されてもよい。
【0084】
(2)戸本体における開口の位置や大きさについては、上記の実施形態で例示したものに限らず、種々変更して実施することができる。尚、本実施形態では、開口及びこの開口を覆うガラスについては、戸本体の片面側について1つの開口と1枚のガラスとが設けられる場合を例にとって説明したが、この通りでなくもよい。即ち、戸本体の片面側について、複数の開口が設けられているものや複数枚のガラスが取り付けられているものであってもよい。この場合、片面側の開口及び開口を覆うガラスについては、その上下方向における長さ寸法であって水平方向で重ならない部分について足し合わせた分の合計の長さ寸法が戸本体の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように構成されていればよい。また、左右方向についても同様に、その左右方向における長さ寸法であって左右方向で重ならない部分について足し合わせた分の合計の長さ寸法が戸本体の左右方向における長さ寸法の半分以下の長さ寸法となるように構成されていればよい。
【0085】
(3)戸本体における柱部材については、上記の実施形態で例示した構造に限らず、配置や形状を種々変更して実施することができる。また、作動手段については、温度ヒューズ以外の手段、例えば、煙感知器に連動して作動するソレノイドを用いてもよい。また、遮蔽板駆動手段については、錘部の配置や個数、連結部の構成を種々変更して実施することができる。また、内壁近接部及び遮蔽板近接部の配置や形状については、種々変更して実施することができる。
【0086】
(4)本実施形態では、遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成として、上端側ローラと下端側ローラと上側ガイドレールと下側ガイドレールとを備えるものを例にとって説明したが、この通りでなくもよく、種々変更して実施することができる。図14は、遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成に関する変形例を示す模式図である。図14に示す変形例に係る防火戸においては、上端側及び下端側ローラと上側及び下側ガイドレールとが備えられておらず、懸架用ローラ40と、懸架用ガイドレール41と、ガイド部42とが備えられている。尚、図14では、変形例に係る防火戸の正面図に対応する模式図を示すとともに、本実施形態と同様に構成される遮蔽板13及びガラス12、懸架用ローラ40、懸架用ガイドレール41、ガイド部42以外の要素については図示を省略している。
【0087】
懸架用ローラ40は、遮蔽板13の上端部において保持部材40aを介して回転自在に取り付けられた車輪として設けられている。そして、この懸架用ローラ40は、複数取り付けられている。懸架用ガイドレール41は、図示しない戸本体においてその内側にて水平方向に延びるように配置されている。そして、この懸架用ガイドレール41は、遮蔽板13が懸架されるように、懸架用ローラ40が上方から当接して水平方向に転動可能に係合するように構成されている。
【0088】
図15は、図14のH線矢視位置から見たガイド部42及びその近傍を拡大して示す一部拡大断面図である。図14及び図15に示すガイド部42は、戸本体において懸架用ガイドレール41の下方で水平方向に延びるように配置されている。このガイド部42には、上方に開口するとともに水平方向に延びるように形成された矩形断面の溝部42aが設けられている。この溝部42aに対しては、その内側に遮蔽板13の下端部43の下端側が遊嵌状態で配置される。これにより、ガイド部42は、上下方向及び遮蔽板13の移動方向である水平方向のいずれに対しても垂直な方向である前後方向(図15において両端矢印Iで示す方向)における遮蔽板13の下端部43の変位量を規制するとともに遮蔽板13の下端部43の水平方向の移動をガイドするように構成されている。このように構成されることで、遮蔽板13は、懸架用ローラ40が懸架用ガイドレール41上で転動するとともに、下端部43においてガイド部42によって誘導されながら、図示しない遮蔽板駆動手段の作動に伴って、退避位置から遮蔽位置へと水平方向に移動することになる。
【0089】
この変形例に係る防火戸によると、戸本体には、遮蔽板13の上端部に回転自在に設けられた懸架用ローラ40が転動自在に係合して懸架される懸架用ガイドレール41と、遮蔽板13の下端部43の水平方向の移動のみを許容するようガイドするガイド部42とが、上下方向に並んでそれぞれ水平方向に延びるように設けられる。このため、遮蔽板13は、懸架用ガイドレール41及びガイド部42の間において、懸架されるとともに水平方向の移動方向がガイドされた状態で支持される。これにより、遮蔽板13は、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して、戸本体に形成された開口を遮蔽することができる。尚、この変形例に係る防火戸においては、懸架用ローラ40が複数設けられており、より安定した姿勢を維持することができる。
【0090】
(5)図16は、遮蔽板を戸本体に対して水平方向に移動自在に支持する構成に関する他の変形例を示す模式図である。図16に示す変形例に係る防火戸においては、本実施形態のような上端側及び下端側ローラと上側及び下側ガイドレールとが備えられておらず、一対の中央ローラ44と、中央ガイドレール45とが備えられている。尚、図16では、変形例に係る防火戸の正面図に対応する模式図を示すとともに、本実施形態と同様に構成される遮蔽板13及びガラス12、一対の中央ローラ44、中央ガイドレール45以外の要素については図示を省略している。
【0091】
一対の中央ローラ44は、上側に配置された中央ローラ44aと下側に配置された中央ローラ44bとを備えて構成されており、これらの各中央ローラ(44a、44b)が遮蔽板13の片面側に対して回転自在に取り付けられるとともに上下方向に並んで配置されている。また、一対の中央ローラ44は、複数(この変形例では2つ)水平方向に並んで配置されている。尚、この変形例では、一対の中央ローラ44が遮蔽板13の片面側に配置されたものを例示しているが、この通りでなくてもよく、両面側にそれぞれ配置されていてもよい。
【0092】
中央ガイドレール45は、図示しない戸本体においてその内側にて水平方向に延びるように配置されている。この中央ガイドレール45は、戸本体の両面側にそれぞれ配置されるガラス12の間において水平方向に延びるように配置されている。そして、中央ガイド
レール45は、一対の中央ローラ44が上下方向の両側から当接して水平方向に転動自在に係合するように構成されている。即ち、対向して配置される中央ローラ44aと中央ローラ44bとが、上下方向の両側から転動自在に係合している。尚、この変形例では、ガラス12が1枚のものとして構成されている場合を例示しているが、この通りでなくてもよく、ガラス12が、中央ガイドレール45に対向する位置において複数枚のガラスに分離されたものとして構成されていてもよい。
【0093】
この変形例に係る防火戸によると、遮蔽板13の中央部分に回転自在な一対の中央ローラ44が取り付けられる。そして、これらのローラ44(44a、44b)は、戸本体において水平方向に延びるように設けられた中央ガイドレール45に対して転動自在に係合するとともに上下方向の両側から対向して挟み込む力を発生させた状態で支持される。これにより、遮蔽板13は、上下方向に延びた姿勢が崩れて傾くことなく、安定した姿勢で滑らかに水平方向に移動することができ、遮蔽位置にスムーズに移動して、戸本体に形成された開口を遮蔽することができる。尚、この変形例に係る防火戸においては、一対の中央ローラ44が複数設けられており、より安定した姿勢を維持することができる。
【0094】
上記実施例に係る防火戸によると、遮蔽板駆動手段15としては、錘を用いるものであるが、一端を遮蔽版13に、他端を戸本体11に固定したバネを用いてもよく、更にこの場合、バネ力が一定のものを用いても良い。また、錘の代わりに、遮蔽版13自体の自重を用いるように、傾斜したレールを用いても良い。この場合、上側ガイドレール23や下側ガイドレール24、或いは中央ガイドレール45の戸先側が、戸尻側に比べて僅かに、例えば数mm程度、鉛直下側に位置するように配置される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、火炎を遮蔽するための防火戸であって、ガラスが取り付けられた防火戸として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0096】
1 防火戸
11 戸本体
12、12a、12b ガラス
13 遮蔽板
14 作動手段
15 遮蔽板駆動手段
20 開口
25 錘部
26 連結ワイヤ(連結部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎を遮蔽するための防火戸であって、
開口が形成された戸本体と、
前記戸本体の両面側において前記開口を覆うように取り付けられたガラスと、
金属の板状部材として形成されるとともに、前記戸本体の内部に収納されて、水平方向に沿って移動することで、前記開口から外れた位置に退避した退避位置から前記開口を遮蔽するように前記ガラスに対向するように配置される遮蔽位置に移動する遮蔽板と、
火災の発生に応じて作動する作動手段と、
前記作動手段が作動したときに、前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させる遮蔽板駆動手段と、
を備え、
前記開口及び当該開口を覆う前記ガラスは、その上下方向における長さ寸法が前記戸本体の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成されていることを特徴とする、防火戸。
【請求項2】
請求項1に記載の防火戸であって、
前記遮蔽版駆動手段は、重力によって落下する錘部及び当該錘部を前記遮蔽板に連結する連結部を有し、前記作動手段が作動したときに、前記錘部の落下に伴って前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させるものであることを特徴とする、防火戸。
【請求項3】
請求項2に記載の防火戸であって、
前記戸本体に前記ガラスが取り付けられることで構成された戸構造体の少なくとも片面側における一部は、当該戸構造体の内部を外部に対して開放可能なように開閉自在に形成された開閉部として設けられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項4】
請求項3に記載の防火戸であって、
前記開閉部は、前記ガラスを含んでいることを特徴とする、防火戸。
【請求項5】
請求項4に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板の上端部に対して回転自在に取り付けられた上端側ローラと、
前記遮蔽板の下端部に対して回転自在に取り付けられた下端側ローラと、
前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記上端側ローラが下方から当接して水平方向に転動自在に係合する上側ガイドレールと、
前記戸本体において前記上側ガイドレールの下方で水平方向に延びるように配置されるとともに、前記下端側ローラが上方から当接して水平方向に転動自在に係合する下側ガイドレールと、
を更に備えていることを特徴とする、防火戸。
【請求項6】
請求項4に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板の上端部に対して回転自在に取り付けられた懸架用ローラと、
前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記遮蔽板が懸架されるように前記懸架用ローラが上方から当接して水平方向に転動自在に係合する懸架用ガイドレールと、
前記戸本体において前記懸架用ガイドレールの下方で水平方向に延びるように配置され、上下方向及び前記遮蔽板の移動方向である水平方向のいずれに対しても垂直な方向である前後方向における前記遮蔽板の下端部の変位量を規制するとともに当該遮蔽板の下端部の水平方向の移動をガイドするガイド部と、
を更に備えていることを特徴とする、防火戸。
【請求項7】
請求項4に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板の少なくとも片面側の中央部分に対して回転自在に取り付けられるとともに上下方向に並んで配置された一対の中央ローラと、
前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記一対の中央ローラが上下方向の両側から当接して水平方向に転動自在に係合する中央ガイドレールと、
を更に備えていることを特徴とする、防火戸。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記戸本体には、その内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体を支持する柱部材が設けられ、
前記柱部材として、前記錘部が落下移動可能な空間が内側に形成された錘部内蔵柱部材が備えられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項9】
請求項8に記載の防火戸であって、
前記錘部内蔵柱部材は、内側の壁面が前記錘部の落下移動方向をガイドするように形成されていることを特徴とする、防火戸。
【請求項10】
請求項4乃至請求項9のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記作動手段は、前記遮蔽板側と前記戸本体側とを連結するとともに、所定の温度を超えることで溶断されて前記遮蔽板側と前記戸本体側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項11】
請求項4乃至請求項10のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、
前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記戸本体の内壁と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする、防火戸。
【請求項12】
請求項11に記載の防火戸であって、
前記内壁近接部は、屈曲形成された板状の部分として設けられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項13】
請求項4乃至請求項12のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、
前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板と前記遮蔽板近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする、防火戸。
【請求項14】
請求項4乃至請求項10のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、
前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、
前記内壁近接部における前記戸本体の内壁に最も接近した部分が、前記遮蔽板近接部における前記遮蔽板に最も近接した部分よりも、前記戸本体の内壁に近い側に位置し、
前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板近接部と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする、防火戸。
【請求項1】
火炎を遮蔽するための防火戸であって、
開口が形成された戸本体と、
前記戸本体の両面側において前記開口を覆うように取り付けられたガラスと、
金属の板状部材として形成されるとともに、前記戸本体の内部に収納されて、水平方向に沿って移動することで、前記開口から外れた位置に退避した退避位置から前記開口を遮蔽するように前記ガラスに対向するように配置される遮蔽位置に移動する遮蔽板と、
火災の発生に応じて作動する作動手段と、
前記作動手段が作動したときに、前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させる遮蔽板駆動手段と、
を備え、
前記開口及び当該開口を覆う前記ガラスは、その上下方向における長さ寸法が前記戸本体の上下方向における長さ寸法の半分以上の長さ寸法となるように形成されていることを特徴とする、防火戸。
【請求項2】
請求項1に記載の防火戸であって、
前記遮蔽版駆動手段は、重力によって落下する錘部及び当該錘部を前記遮蔽板に連結する連結部を有し、前記作動手段が作動したときに、前記錘部の落下に伴って前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させるものであることを特徴とする、防火戸。
【請求項3】
請求項2に記載の防火戸であって、
前記戸本体に前記ガラスが取り付けられることで構成された戸構造体の少なくとも片面側における一部は、当該戸構造体の内部を外部に対して開放可能なように開閉自在に形成された開閉部として設けられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項4】
請求項3に記載の防火戸であって、
前記開閉部は、前記ガラスを含んでいることを特徴とする、防火戸。
【請求項5】
請求項4に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板の上端部に対して回転自在に取り付けられた上端側ローラと、
前記遮蔽板の下端部に対して回転自在に取り付けられた下端側ローラと、
前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記上端側ローラが下方から当接して水平方向に転動自在に係合する上側ガイドレールと、
前記戸本体において前記上側ガイドレールの下方で水平方向に延びるように配置されるとともに、前記下端側ローラが上方から当接して水平方向に転動自在に係合する下側ガイドレールと、
を更に備えていることを特徴とする、防火戸。
【請求項6】
請求項4に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板の上端部に対して回転自在に取り付けられた懸架用ローラと、
前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記遮蔽板が懸架されるように前記懸架用ローラが上方から当接して水平方向に転動自在に係合する懸架用ガイドレールと、
前記戸本体において前記懸架用ガイドレールの下方で水平方向に延びるように配置され、上下方向及び前記遮蔽板の移動方向である水平方向のいずれに対しても垂直な方向である前後方向における前記遮蔽板の下端部の変位量を規制するとともに当該遮蔽板の下端部の水平方向の移動をガイドするガイド部と、
を更に備えていることを特徴とする、防火戸。
【請求項7】
請求項4に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板の少なくとも片面側の中央部分に対して回転自在に取り付けられるとともに上下方向に並んで配置された一対の中央ローラと、
前記戸本体において水平方向に延びるように配置されるとともに、前記一対の中央ローラが上下方向の両側から当接して水平方向に転動自在に係合する中央ガイドレールと、
を更に備えていることを特徴とする、防火戸。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記戸本体には、その内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体を支持する柱部材が設けられ、
前記柱部材として、前記錘部が落下移動可能な空間が内側に形成された錘部内蔵柱部材が備えられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項9】
請求項8に記載の防火戸であって、
前記錘部内蔵柱部材は、内側の壁面が前記錘部の落下移動方向をガイドするように形成されていることを特徴とする、防火戸。
【請求項10】
請求項4乃至請求項9のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記作動手段は、前記遮蔽板側と前記戸本体側とを連結するとともに、所定の温度を超えることで溶断されて前記遮蔽板側と前記戸本体側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項11】
請求項4乃至請求項10のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、
前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記戸本体の内壁と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする、防火戸。
【請求項12】
請求項11に記載の防火戸であって、
前記内壁近接部は、屈曲形成された板状の部分として設けられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項13】
請求項4乃至請求項12のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、
前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板と前記遮蔽板近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする、防火戸。
【請求項14】
請求項4乃至請求項10のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、
前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、
前記内壁近接部における前記戸本体の内壁に最も接近した部分が、前記遮蔽板近接部における前記遮蔽板に最も近接した部分よりも、前記戸本体の内壁に近い側に位置し、
前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板近接部と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする、防火戸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−281173(P2010−281173A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137225(P2009−137225)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】
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