説明

防爆形非接触給電装置

【課題】コストの高騰及び装置の大型化を招来する構造の複雑化を伴うことなくコイル収納部及び電気部品収納部を防爆構造として、危険区域内で使用することができるようにする。
【解決手段】正常運転時及び通電時に点火源となる虞のないピックアップコイル5及び鉄心6を収納するコイル収納部1は、ピックアップコイル5及び鉄心6を収納した後、一部に空間11を設けて樹脂1Aが充填することで安全増防爆構造とされる。正常運転時及び通電時に点火源となる虞のない端子台7を収納する端子収納部2は、一例として金属製の筐体であり、端子台7を端子箱8で包囲することで安全増防爆構造とされる。顕在的点火源であるコンデンサ等の電気部品を収納する電気部品収納部3は、耐圧防爆構造の容器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、危険区域内の電気機器に非接触状態で給電する防爆形非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の移動経路を走行する自走式車両として、移動経路に沿って配置されたレールから非接触で給電を受ける電気自走式車両がある。電気自走式車両は、例えば工場内での部品の運搬に使用される。
【0003】
電気自走式車両は、コイル及び電気部品を含む非接触給電装置を搭載し、高周波電流が供給されるレール内の給電線との間の電磁誘導によってコイルに生じた磁気エネルギをコンデンサ等の電気部品を介して電力に変換し、モータ等の動力源を駆動する(例えば、特許文献1参照。)。コイルは、レールに近接させて配置する必要があり、レールを跨ぐU字状断面の鉄心に巻き付けられてコイル収納部に収納される。コイル以外のコンデンサ等の電気部品は、電気部品収納部に収納される。
【特許文献1】特開2002−320347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気自走式車両で運搬した部品を供給する機械設備が引火性ガス雰囲気等の危険区域内に設置されている場合があるが、従来の非接触給電装置ではコイル収納部及び電気部品収納部を防爆構造としたものがなかった。
【0005】
この発明の目的は、コストの高騰及び装置の大型化を招来する構造の複雑化を伴うことなくコイル収納部及び電気部品収納部を防爆構造とすることができ、危険区域内で使用することができる防爆形非接触給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、この発明の防爆形非接触給電装置は、コイル収納部と電気部品収納部とを備えている。コイル収納部は、安全増防爆構造とされ、コイルを収納する。電気部品収納部は、耐圧防爆構造又は内圧防爆構造とされ、電気部品を収納する。
【0007】
防爆構造のうち耐圧防爆構造は、容器内に侵入したガスが爆発した場合にも容器が爆発圧力に耐えるとともに爆発による火炎が容器外部のガスに点火しないようにした構造であり、正常運転時に点火源となりうる電気機器を収納する容器に要求される。内圧防爆構造は、空気、窒素ガス又は炭酸ガス等の保護ガスによって容器の内部を陽圧とし、外部の雰囲気が容器内に侵入しないようにした構造である。安全増防爆構造は、正常運転時に点火源となる可能性のない電気機器の絶縁性能を向上させるとともに温度上昇による危険や外力による破損を防止するようにした構造であり、耐圧防爆構造や内圧防爆構造よりも簡易な構造である。
【0008】
この発明の構成では、点火源とならないコイルが安全増防爆構造の収納部に収納され、顕在的点火源となる電気部品が耐圧防爆構造又は内圧防爆構造の収納部に収納される。収納物が異なる2つの収納部のそれぞれは、収納物の危険度に応じた構造とされ、必要十分な安全性が維持される。
【0009】
この発明の構成において、安全増防爆構造の端子収納部をさらに備えてもよい。端子収納部は、コイルと電気部品との電気接続用の端子台を内蔵する。コイル収納部に収納されたコイルと電気部品収納部に収納された電気部品とを端子収納部に収納された端子台で電気的に接続する場合にも、構造の複雑化を伴うことがなく、コストの高騰及び装置の大型化を防止できる。
【0010】
また、コイル収納部、端子収納部、電気部品収納部を、この順に一体的に接続してもよく、端子収納部をコイル収納部と一体的に接続し、端子箱に電気部品収納部を収納してもよい。
【0011】
さらに、コイル収納部は、一部に空間を設けて樹脂を充填してもよい。コイルの電磁誘導を妨げることなく、コイルの絶縁性能を維持し、コイル収納部の内部でコイルを固定も兼ね、コイル収納部を安全増防爆構造とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、コイル収納部及び電気部品収納部を、それぞれの収納物の危険度に応じて必要十分な安全性を維持できる構造にすることで、コストの高騰及び装置の大型化を招来する構造の複雑化を伴うことなく防爆構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明の実施形態に係る防爆形非接触給電装置の概略の構成を示す図である。この発明の防爆形非接触給電装置10は、コイル収納部1、端子収納部2、電気部品収納部3によって構成されている。
【0014】
コイル収納部1は、一例として略U字状の断面を呈する樹脂製の容器である。コイル収納部1の断面の凹部にレール20が位置する。端子収納部2は、一例として金属製の筐体である。電気部品収納部3は、耐圧防爆構造の容器であり、各々独立した耐圧防爆構造である電気部品収納ボックス3Cと端子ボックス3Dとから構成されている。コイル収納部1は、端子収納部2に一体的に取り付けられる。端子収納部2と電気部品収納部3とは、ケーブル4で接続される。
【0015】
レール20は、例えば爆発性ガス雰囲気の工場内等の危険区域で、電気自走式車両が走行すべき所定の移動経路に沿って配置されている。
【0016】
電気部品収納部3は、コンデンサ等の顕在的点火源となる電気部品を収納する。このため、電気部品収納部3は、一般的な耐圧防爆構造の容器であり、壁面の一部に、ケーブル4が貫通する耐圧パッキンを含む耐圧防爆構造の引込器具3Aを備えている。電気部品収納部3は、電気部品をモータ等の負荷機器に接続するためのケーブルが貫通する別の引込金具3B(耐圧防爆構造)を備えている。
【0017】
図2は、この発明の防爆形非接触給電装置の要部の断面図である。コイル収納部1は、内部にピックアップコイル5及び鉄心6を収納している。ピックアップコイル5は、鉄心6に巻回されたこの発明のコイルであり、レール20内で高周波電流の供給を受ける給電線21との間の電磁誘導により、磁束を発生する。
【0018】
ピックアップコイル5及び鉄心6は、正常運転時及び通電時に火花やアークを発生せず、高温となることもないため、点火源となる虞がない。このため、コイル収納部1は、安全増防爆構造とすることができる。そこで、コイル収納部1の内部は、ピックアップコイル5及び鉄心6を収納した後、一部に空間11を設けて樹脂1Aが充填される。樹脂1Aは、ピックアップコイル5及び鉄心6の絶縁性能を向上させるとともに温度上昇による危険や外力による破損を防止する。
【0019】
また、コイル収納部1は、空間11を設けて樹脂を充填しているため、樹脂充填防爆構造とはならない。このため、コイル収納部1は、樹脂充填防爆構造の煩雑な規格要件を満足する必要はない。
【0020】
ピックアップコイル5は、樹脂製筐体のコイル収納部1内で樹脂1Aによって被覆されるため、給電線21との間の電磁誘導を妨げられることなく固定される。
【0021】
コイル収納部1は、必ずしも樹脂1Aの充填によって安全増防爆構造とする必要はない。ピックアップコイル5と給電線21との間の電磁誘導を妨げないことを条件に、コイル収納部1を任意の方法で安全増防爆構造とすることができる。また、コイル収納部1の樹脂成形時に鉄心6に巻回されたピックアップコイル5をインサートすることもできる。
【0022】
端子収納部2は、一例として金属製の筐体であり、端子台7及び端子箱8を収納する。コイル収納部1は、端子収納部2に取付ネジ12を介して固定される。コイル収納部1の内部と端子収納部2の内部とは連通孔13,14を介して連通している。連通孔13,14には、一端をピックアップコイル5に接続した配線15が貫通する。端子収納部2の壁面の一部には、耐圧パッキンを含む耐圧防爆構造の引込器具9が備えられている。なお、引込器具9は、必ずしも耐圧防爆構造である必要はなく、安全増防爆構造であってもよい。引込器具9の耐圧パッキンにケーブル4が貫通する。
【0023】
端子台7は、配線15とケーブル4とを電気的に接続する。端子箱8は、金属製平板で構成された筐体であり、端子台7を収納する。端子台7は、正常運転時及び通電時に火花やアークを発生せず、高温となることもないため、点火源となる虞がない。このため、端子収納部2は、安全増防爆構造とすることができる。そこで、端子収納部2は、端子台7を端子箱8で包囲した状態で収納する。端子箱8は、端子台7の絶縁性能を向上させるとともに温度上昇による危険や外力による破損を防止する。
【0024】
端子収納部2は、コイル収納部1の取付面と対向する面の反対側の面が開口しており、この開口を閉鎖する蓋体2Aを備えている。蓋体2Aは、錠締構造の固定ネジ31を介して端子箱8のフランジ部8Aとともに端子収納部2に固定される。
【0025】
以上の構成により、コイル収納部1及び電気部品収納部3を、それぞれの収納物の危険度に応じて必要十分な安全性を維持できる構造にすることで、コストの高騰及び装置の大型化を招来する構造の複雑化を伴うことなく防爆構造とすることができる。
【0026】
電気部品収納部3は、コンデンサ等の顕在的点火源となる電気部品を収納した場合にも所定の防爆性能を満足できることを条件に、例えば、内圧防爆構造等の任意の防爆構造とすることができる。また、端子収納部2を耐圧防爆構造とすることで、コンデンサ等の顕在的点火源となる電気部品を端子収納部2に収納することもできる。
【0027】
図3は、この発明の別の実施形態に係る防爆形非接触給電装置の断面図である。この実施形態に係る防爆形非接触給電装置110は、端子収納部2の底面に電気部品収納部301を一体的に装着して構成されている。電気部品収納部301は、耐圧防爆構造の容器であり、一例として、固定ネジ31でL字金具32を介して蓋体2A及び端子箱8とともに端子収納部2に固定される。これによって、防爆形非接触給電装置110では、コイル収納部1、端子収納部2、電気部品収納部301が、この順に一体的に接続されている。
【0028】
電気部品収納部301は、コンデンサ302等の電気部品を収納している。端子収納部2には、端子箱8が配置されている。端子箱8には、端子台7,305が収納されている。端子台7は、ピックアップコイル5に接続された配線15とコンデンサ302に接続された入力用配線311とを接続する。端子台305は、コンデンサ302に接続された出力用配線312と外部配線313とを接続する。
【0029】
電気部品収納部301の内部は、配線引込部材303を介して端子箱8の内部に連通している。配線引込部材303には、入力用配線311及び出力用配線312が貫通する。外部配線313は、耐圧防爆構造の引込器具304を介して端子収納部2の外部に露出する。なお、引込金具304は、引込器具9と同じく安全増防爆構造であってもよい。
【0030】
電気部品収納部301は、蓋体2Aの取付面と対向する面の反対側の面が開口しており、この開口を閉鎖する蓋体321を備えている。蓋体321は錠締構造の固定ネジ322により電気部品収納部301に固定される。
【0031】
この構成では、端子収納部2内の端子箱8内に、端子台7とともに端子台305を収納し、電気部品収納部301内に備えるべき端子箱を不要にすることができる。また、ピックアップコイル5とともに共振回路を構成するコンデンサ302をピックアップコイル5に近接して配置することができる。
【0032】
図4は、この発明のさらに別の実施形態に係る防爆形非接触給電装置の断面図である。この実施形態に係る防爆形非接触給電装置120は、端子収納部2の底面を閉塞する蓋体421の中央部を下方に延出させ、この延出部分に電気部品収納部401を配置して構成されている。電気部品収納部401は、耐圧防爆構造の容器であり、一例として、固定ネジ431で蓋体421に取り付けられたL字金具432を介して固定される。これによって、防爆形非接触給電装置120では、端子収納部2をコイル収納部1と一体的に接続し、端子箱8に電気部品収納部401を収納している。
【0033】
電気部品収納部401は、コンデンサ402等の電気部品を収納している。端子箱8は、端子台7及び407を収納している。端子台7は、ピックアップコイル5に接続された配線15とコンデンサ402に接続された入力用配線411とを接続する。端子台407は、ピックアップコイル5に接続された配線15及びコンデンサ402に接続された出力用配線412と外部配線413とを接続する。
【0034】
電気部品収納部401の内部は、配線引込部材403を介して端子箱8の内部に連通している。配線引込部材403には、入力用配線411及び出力用配線412が貫通する。外部配線413は、引込器具405を介して端子収納部2の外部に露出する。なお、引込器具405は、引込器具9と同じく安全増防爆構造であってもよい。
【0035】
電気部品収納部401は、蓋体421の内側面と対向する面の反対側の面が開口しており、この開口を閉鎖する蓋体441を備えている。蓋体441は固定ネジ442により電気部品収納部401に固定される。
【0036】
この構成でも、ピックアップコイル5とともに共振回路を構成するコンデンサ402をピックアップコイル5に近接して配置することができる。
【0037】
また、電気部品収納部401を錠締構造で閉鎖されている端子箱8に収納したことにより、固定ネジ442を錠締構造にする必要が無くなり、電気部品収納部401の構造が簡単になる。これにより、電気部品収納部401の軽量・コンパクト化、及びコストダウンを図ることができ、防爆形非接触給電装置自体の軽量・コンパクト化、及びコストダウンに繋がる。
【0038】
図5は、図3及び図4に示した防爆形非接触給電装置に用いられる配線引込部材の平面図及び断面図である。図3に示した配線引込部材303は、樹脂固定用金具であり、内部にガイド板331及び341を備えている。ガイド板331は、樹脂を素材として円盤状を呈する。ガイド板331には、中央部に注入用孔332が形成されており、注入用孔332の周囲に複数の配線用孔333が形成されている。ガイド板341は、樹脂を素材として円盤状を呈する。ガイド板341には、それぞれがガイド板331の配線用孔333に対向する複数の配線用孔342が形成されている。
【0039】
配線引込部材303は、所定のネジ孔に螺合した後、ナット340の螺合によって固定される。この状態で配線用孔333及び342を経由して配線を貫通させた後、注入用孔332から内部に樹脂350が充填される。
【0040】
配線引込部材303の内部には配線が貫通した後に樹脂が充填されるため、配線引込部材303の両側で防爆性能が維持される。
【0041】
図4に示した配線引込部材403も、配線引込部材303と同様に構成することができる。
【0042】
上記の実施形態はいずれも一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施形態に係る防爆形非接触給電装置の概略の構成を示す図である。
【図2】この発明の防爆形非接触給電装置の要部の断面図である。
【図3】この発明の別の実施形態に係る防爆形非接触給電装置の断面図である。
【図4】この発明のさらに別の実施形態に係る防爆形非接触給電装置の断面図である。
【図5】図3及び図4に示した防爆形非接触給電装置に用いられる配線引込部材の平面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 コイル収納部
2 端子収納部
3 電気部品収納部
3,3B,9 引込器具
5 ピックアップコイル(コイル)
7 端子台
8 端子箱
20 レール
21 給電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを収納するコイル収納部と、電気部品を収納する電気部品収納部と、を備え、
コイル収納部を安全増防爆構造とするとともに、電気部品収納部を耐圧防爆構造又は内圧防爆構造とした防爆形非接触給電装置。
【請求項2】
安全増防爆構造の端子収納部をさらに備え、前記端子収納部に前記コイルと前記電気部品とを電気的に接続する端子台を内蔵する端子箱を収納した請求項1に記載の防爆形非接触給電装置。
【請求項3】
前記コイル収納部、前記端子収納部、前記電気部品収納部を、この順に一体的に接続した請求項2に記載の防爆形非接触給電装置。
【請求項4】
前記端子収納部を前記コイル収納部と一体的に接続し、前記端子箱に前記電気部品収納部を収納した請求項2に記載の防爆形非接触給電装置。
【請求項5】
前記コイル収納部は、一部に空間を設けて樹脂を充填した請求項1乃至4の何れかに記載の防爆形非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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