説明

防草シート

【課題】雑草の発生、繁茂を効果的に抑制することのできる防草シートを提供する。
【解決手段】防草シート1は、無機繊維11を主体とする不織布に消石灰12を担持させたシートである。無機繊維11を主体とした不織布に消石灰12を担持させてなることにより、アルカリ性の成分が防草シートから防草シートの下部の土壌に浸透される。これにより、酸性〜弱酸性である土壌において特に顕著である雑草等の発生・繁茂を効果的に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防草シートに関する。
【背景技術】
【0002】
公園や道路周辺等の雑草の発生及び繁茂を抑制するために、地面から生える雑草の貫通の抑制、遮光による雑草の発芽及び成長の抑制、及び雑草の種子の着床の防止を主な機能とする防草シートが従来から用いられている。防草シートとしては、合成繊維を主成分とした不織布製のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−298154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような合成繊維からなる防草シートでは、雑草の発生や繁茂を抑制する効果が十分ではない場合があり、除草剤との併用が必要となる場合がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、雑草の発生、繁茂を効果的に抑制することのできる防草シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る防草シートは、無機繊維を主体とする不織布中に消石灰を担持させてなることを特徴とする。
【0007】
上記のように、無機繊維を主体とする不織布中に消石灰を担持させた防草シートを用いることにより、土壌面が遮光されるとともに、雨水等により溶出したアルカリ性の成分が防草シートから下部の土壌に浸透される。これにより、遮光による雑草の発芽及び成長の抑制に加え、酸性〜弱酸性である土壌において特に顕著である雑草等の発生・繁茂が効果的に抑制することができる。さらに、風などにより運ばれ防草シート上に着床した種子が発芽しても、本発明に係る防草シートにおいてはアルカリ性の成分により成長が抑制される。
【0008】
ここで、上記の防草シートは、顔料を更に含有する態様とすることができる。このように、防草シートに顔料を含有させることで、例えば、防草シート自体の色を、そのシートを使用した場所の周囲の色と似せて目立たない色や、鳥、虫、そして犬や猫に代表される動物等が好まない色に着色することができる。目立たない色に着色することで、鳥や動物が防草シートに興味を持つことを抑制し、その結果、啄ばんだり咥えたりすることにより防草シートを破損させる恐れを少なくすることができ、また、鳥、虫、動物等が好まない色に着色することで、これらの生物が防草シートに接近することを抑制し、その結果、排泄物等による防草シートの効果の低下等の弊害を抑制することができる。また、顔料の色によっては、景観等に配慮することもできる。
【0009】
また、上記の防草シートは、有機繊維を更に含有する態様とすることができる。このように、有機繊維を含有することにより防草シートの強度が高められ、雑草の発生、繁茂を効果的に抑制することができると共に、設置時の取り扱い性がよく、耐久性の高い防草シートが得られる。
【0010】
また、上記の防草シートは、バインダを更に含有する態様とすることができる。このように、バインダを含有した場合にも、防草シートの強度が高められ、雑草の発生、繁茂を効果的に抑制することができると共に、設置時の取り扱い性がよく、耐久性の高い防草シートが得られる。
【0011】
また、上記の防草シートは、凝集剤を更に含有する態様とすることができる。このように、凝集剤を含有することにより、防草シートの製造時に材料である各成分を効果的に凝集させることができるため、防草シートの強度を向上させることができる。
【0012】
なお、上記の作用を効果的に奏する構成としては、具体的に、60〜99.5重量%の無機繊維と、0.5〜3重量%の消石灰と、5重量%以下の顔料と、20重量%以下の有機繊維と、10重量%以下のバインダと、2重量%以下の凝集剤と、を含有する態様が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、雑草の発生、繁茂を効果的に抑制することのできる防草シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る防草シートの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る防草シートの構成を説明する図である。本実施形態に係る防草シート1は、無機繊維11を主体とする不織布中に消石灰12を担持させたシートである。また、本実施形態に係る防草シート1は、公園、道路の周辺、田畑の畦道等の雑草の繁茂を抑制しようとする土壌の表面に配置される。
【0017】
防草シート1に用いられる無機繊維11は、防草シート1の全重量に対して60〜99.5重量%の範囲で含有されることが好ましく、75%〜99.5重量%の範囲で含有されることが更に好ましい。無機繊維11の含有量が60重量%以下である場合には、例えば、難燃性向上効果等の無機繊維11を用いることによる効果が十分に奏されない。無機繊維11としては、例えばロックウール、ガラス繊維、セラミックファイバー、グラスウール等が用いられるが、ロックウールが特に好適に用いられる。また、無機繊維11として用いられるロックウールは、ケイ酸と酸化カルシウムを主成分とする高炉スラグや玄武岩、その他の天然岩石などを主原料として、キュポラや電気炉で1,500〜1,600℃の高温で溶融するか、または高炉から出たのち、同程度の高温に保温した溶融スラグを炉底から流出させ、遠心力などで吹き飛ばして繊維状にする公知の方法で製造される。なお、無機繊維11に用いられるロックウールとしては、農業用ロックウールのようにpHが調整されたものと比較して、高炉スラグを主原料としpHの調整等が行われない産業・工業製品用のロックウールがより好適に用いられる。このロックウールは、溶出pHが7〜8程度であり、防草シート1をアルカリ性とすることに有利に働く。また、ロックウールを無機繊維11として用いる場合、繊維径は3〜7μmであるものが好適に用いられる。
【0018】
本実施形態に係る防草シート1では、防草シート1のpHをさらに高める目的から消石灰12が更に含有される。消石灰12は、防草シート1の全重量に対して0.5〜3重量%の範囲で含有されることが好ましく、1〜2重量%の範囲で含有されることがさらに好ましい。上記の範囲で消石灰12を含有することにより、防草シート1のpHが9前後となるため、雑草の発生・繁茂が効果的に抑制される。なお、消石灰12の含有量が0.5重量%未満であると、pHが十分に高められていないことから、0.5〜3重量%の範囲と比較して、雑草の発生・繁茂の抑制効果が抑えられる可能性がある。一方、消石灰12の含有量が3重量%より大きい場合は、防草シート1のpHが10以上となるから、防草シート1の下部の土壌の環境を悪化させてしまう可能性がある。防草シート1に含有される消石灰12は、粒径が1mm以下のものであるものが好ましい。このように粒径が1mm以下の消石灰12を用いることにより、防草シート1中に消石灰12が効果的に分散され、消石灰12が含有されることによるpHを高める効果を防草シート1において均一に得ることができる。
【0019】
なお、本実施形態に係る防草シート1には、任意成分として、顔料、有機繊維、バインダ、凝集剤が含有されていてもよい。以下、これらの成分について説明する。
【0020】
防草シート1に顔料が含有される場合、防草シート1を任意の色に着色することができるため、例えば、鳥、虫、犬や猫に代表される動物等が好まない色の顔料を用いることにより、防草シート1を鳥害や虫害等から守ることができ、防草シート1による雑草の発生・繁茂を抑制する効果をより長期に得ることができる。防草シート1に顔料が含有される場合、その含有量は防草シート1の全重量に対して5重量%以下とすることが好ましい。顔料の含有量を5重量%以上とした場合、顔料が防草シート1から脱落しやすくなる可能性があり、顔料を含有することによる効果を十分に奏することができない可能性がある。顔料により着色する色は特に制限されないが、例えば鳥、虫、動物等が近寄る可能性を低くするために暗色系とすることができる。このように鳥、虫、動物等が接近する可能性が低くなるような暗色系とした場合には、鳥や動物等が啄ばんだり咥えたりすることによる防草シート1の破損を回避することができる。また、鳥、虫、動物等の接近を抑制することにより、これらの生物からの排泄物による防草シート1の劣化や効果の低下等の弊害を抑制することができる。さらに、暗色系とした場合には、防草シート1において外部からの光を吸収しやすいことから、防草シート1の下部の土壌に対する遮光効果を高めることができ、雑草の発生・繁茂を抑制する効果を高めることができる。防草シート1に用いられる顔料としては特に制限されないが、無機材料からなることが好ましく、また、暗色系とする場合にはカーボン系の顔料が好適に用いられる。カーボン系の顔料としては、例えばカーボンブラックが挙げられる。
【0021】
また、防草シート1には有機繊維が含有されていてもよい。防草シート1に有機繊維が含有されることにより、防草シート1の強度を増すことができるため、防草シート1の設置時の取り扱い性や耐久性を高めることができる。防草シート1に用いられる有機繊維としては、例えばポリエステル、ポリアミド等の合成繊維のほか、パルプ、麻、綿等の天然繊維を用いることもできる。また上記に示す繊維の中から複数種類を併用してもよい。防草シート1に有機繊維が含有される場合、防草シート1の全重量に対して20重量%以下であることが好ましい。有機繊維の含有量が20重量%より大きい場合であっても有機繊維による防草シート1の耐久性の向上に係る効果は大きくは高められない。さらに有機繊維の含有量が高まることにより防草シート1が燃えやすくなることから、防草シート1の用途を選択する必要が出てくる。防草シート1に有機繊維を含有される場合の有機繊維のモノフィラメントの繊維径は、3〜7μmであることが好ましい。また、有機繊維の平均繊維長は、3〜50mmであることが好ましく、5〜30mmがより好ましい。
【0022】
また、防草シート1には、必要に応じてバインダを含有することができる。防草シート1にバインダを含有させることで、バインダが防草シート1を構成する他の材料間に介在し、防草シート1が補強されるため、防草シート1の設置時の取り扱い性や耐久性を高めることができる。防草シート1に含有されるバインダとしては、水溶性の樹脂、または樹脂のエマルジョンが用いられる。代表的には、アクリル系、酢酸ビニル系、フェノール系の各樹脂、でんぷん等が挙げられる。このうち、熱可塑性のバインダを用いることが好ましく、アクリル系樹脂エマルジョンからなるバインダを用いることが特に好ましい。防草シート1にバインダが含有される場合、その含有量は防草シート1の全重量に対して10重量%以下とすることが好ましい。バインダの含有量を10重量%以上とした場合であっても、防草シート1の設置時の取り扱い性、強度、耐久性等の向上に係る効果は大きくは高められない。また、有機繊維の含有量が高まることにより防草シート1が燃えやすくなることから、防草シート1の用途を選択する必要がある。
【0023】
また、防草シート1には、必要に応じて凝集剤を含有することができる。凝集剤を含有することにより、後述の防草シート1の製造時において、防草シート1を構成する材料を好適に凝集させることができるため、製造後の防草シート1の強度が向上される。防草シート1に用いられる凝集剤としては、高分子凝集剤や硫酸アルミニウム等の種々のものを用いることができるが、高分子凝集剤を本実施形態に係る凝集剤として用いる場合にはアニオン性の凝集剤であることが好ましい。さらに、アニオン性の高分子凝集剤において好適に用いられるものとしては、ポリアクリルアミドが挙げられる。防草シート1に凝集剤が含有される場合、その含有量は防草シート1の全重量に対して2重量%以下とすることが好ましい。バインダの含有量を2重量%以上とした場合であっても、防草シート1に対する補強効果を大きく向上させることは難しく、また、防草シート1に係る費用が高価となってしまうので好ましくない。
【0024】
以上の構成を有する防草シート1の厚さは、好ましくは2〜10mmであり、更に好ましくは3〜5mmである。防草シート1の厚さが10mm以上であると、防草シート1が重量が増すために、防草シート1が自重により切断される可能性がある。さらに、重量が重くなるため、設置時の取り扱い性が低下する。また、防草シート1の厚さが2mm以下であると、防草シート1の構成材料の密度ムラが発生し、遮光性が低下するため、本実施形態の防草シート1による雑草の繁茂に対する抑制効果を十分に発揮することができない。さらに、防草シート1に被覆された土壌に生えた雑草が成長し防草シート1を貫通しやすくなる。
【0025】
また、防草シート1の密度は、300kg/m以下であることが好ましく、240kg/m程度であることがさらに好ましい。密度が300kg/mより大きい場合、防草シート1の重量が増し、防草シート1の重量により切断される可能性がある。
【0026】
なお、本発明の防草シート1を構成する材料の好適な組成としては、例えば、以下の例が挙げられる。
無機繊維(ロックウール):79重量%
有機繊維(ポリエステル):11重量%
バインダ(アクリル系樹脂エマルジョン):7重量%
消石灰:1重量%
顔料(カーボンブラック):1重量%
凝集剤(ポリアクリルアミド):1重量%
【0027】
次に、上記の防草シート1の製造方法について説明する。防草シート1の製造方法は、特に限定されないが、例えば、無機繊維及び消石灰と、必要に応じてさらに含有される種々の材料(顔料、有機繊維、バインダ、凝集剤等)を水中で混合した後、公知の抄紙機等を用いて抄造することにより防草シート1が得られる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく種々の変更を行うことができる。
【0029】
例えば、景観等を考慮して、防草シート1の一方の表面(土壌表面に配置した場合に露出される面)の上部に種子や苗を配置することにより、当該種子から発生した草や苗から生育した草によって防草シート1の表面を覆う構成としてもよい。また、防草シート1の一方の面に種子や苗を配置する構成に代えて、防草シート1内に種子等を含有させる構成としてもよい。なお、上記のように防草シート1を覆うために用いられる草(またはその種子)としては、無機繊維11や消石灰12によるアルカリ土壌の環境であっても生育能力が高い草であることが好ましく、例えば、イワダレソウ等が好適に用いられる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
(実施例の防草シート片の作成)
無機繊維(ロックウール、平均繊維径4.5μm)79重量%と、有機繊維として、ポリエステル(繊維径5μm、平均繊維長30mm)11重量%と、消石灰1重量%と、バインダ(アクリル系樹脂エマルジョン)7重量%と、顔料(カーボンブラック)1重量%と、凝集剤(ポリアクリルアミド)1重量%と、を水中に投入し、混合した。この混合液より厚さ4mm、密度240kg/mの防草シートを得た。さらに、これを長さ10m、幅1mに切断して、実施例に係る防草シート片を得た。
【0032】
(評価)
上記の実施例の防草シート片を用いて、生育試験を行った。具体的には、5月中旬から3ヶ月間、地面上にこの防草シート片を設置し、放置したが、雑草は生えなかった。
【符号の説明】
【0033】
1…防草シート、11…無機繊維、12…消石灰。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維を主体とする不織布中に消石灰を担持させてなることを特徴とする防草シート。
【請求項2】
顔料を更に含有することを特徴とする請求項1記載の防草シート。
【請求項3】
有機繊維を更に含有することを特徴とする請求項1又は2記載の防草シート。
【請求項4】
バインダを更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の防草シート。
【請求項5】
凝集剤を更に含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の防草シート。
【請求項6】
60〜99.5重量%の無機繊維と、0.5〜3重量%の消石灰と、5重量%以下の顔料と、20重量%以下の有機繊維と、10重量%以下のバインダと、2重量%以下の凝集剤と、を含有することを特徴とする防草シート。


【図1】
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【公開番号】特開2010−252630(P2010−252630A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102729(P2009−102729)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】