説明

防草構造および防草工法

【課題】無機質多孔資材を用いることにより、環境に配慮するとともに、敷設が容易な防草構造を提供する。
【解決手段】直径が数ミクロンから数ミリメートルの焼成灰等の無機質材料を微粉末にし、この微粉末に、水、セメント、安定剤等を加えて攪拌造粒することにより造粒固化して製造された無機質多孔資材20であって、粒状あるいは塊状に形成され、数ミリメートルから数センチメートルの直径を有する無機質多孔資材20を、畑土壌10の表面もしくは所定深さの位置に所定の厚さで敷設することにより、この無機質多孔資材20により水分を吸収して雑草等の防除あるいは抑制を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路法面、中央分離帯、路肩、植え桝、植栽帯、河川堤防法面など、植物(雑草)の成長制御を必要とするあらゆる緑地を対象とし、無機質多孔資材を敷設することにより雑草を防除もしくは制限する防草構造および防草工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の雑草防除技術は、除草剤や植物生育抑制剤などの化学合成物質や刈り取りによる防除であった。あるいは、防草を行いたい地面にシート状の材料(防草シート)は敷設する防除であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−180787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、除草剤等を用いると環境に影響与える可能性があり、また、刈り取りでは労力が膨大になり、さらに、防草シートは劣化等が起るため張替え等の作業が必要になるという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、環境に配慮するとともに、敷設が容易な防草構造および防草工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る防草構造は、無機質材料の微粉末を造粒固化した無機質多孔資材を、土壌(例えば、実施形態における畑土壌10)の表面もしくは表面から所定深さの位置に所定の厚さで敷設する。
【0007】
このような本発明に係る防草構造において、無機質材料は、焼却灰、貝殻、瓦、コンクリート、大谷石や軽石などの天然の岩石であることが好ましい。また、微粉末の直径は、数ミクロンから数ミリメートルの範囲であることが好ましい。また、造粒固化は、無機質材料をセメント、酢酸ビニルなどを主原料とした固化剤、漆喰などを用いて成形固化されることが好ましい。さらに、無機質多孔資材は、粒状あるいは塊状の形状を有し、直径が数ミリメートルから数センチメートルであることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る防草工法においては、土壌表面に、無機質材料の微粉末を造粒固化した無機質多孔資材からなる層を任意の厚さで敷設し、土壌の表面での雑草の生育を阻止する。
【0009】
もう一つの本発明に係る防草工法においては、土壌表面から所定深さの位置に、無機質材料の微粉末を造粒固化した無機質多孔資材からなる層を任意の厚さで敷設し、土壌の表面での雑草の生育を制限する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る防草構造および防草工法を以上のように構成すると、敷設作業が簡単であり、また、除草剤や生育抑制剤あるいは草刈り機を用いずとも、雑草の防除あるいは抑制が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る防草構造は、粒子直径が数ミクロンから数ミリメートルの微粒子をランダムな割合で含む粉体をセメントなどで造粒固化して無機質多孔資材(一般的な名称としてアークサンドとも称する)とし、この無機質多孔資材を土壌表面あるいは土壌中に任意の厚さで敷設し、雑草の発生と生育を防ぐようにしたものである。
【0012】
上記の粒状物質(無機質多孔資材)の原材料は無機質粉末であることから、造粒固化すると粒子間に極めて微小な空隙が形成され、その結果として粒状あるいは塊状に造粒されたものが多孔質で吸水性に富む性質を有することになる。一方、水は植物の成長に必須であり、生育に十分な量の水が土壌中に存在したとしても、その水が他の物質に奪い取られ、植物が吸収することができなければ、植物は生育できないことになる。つまり、土壌表面あるいは土壌中に植物よりも吸水力の大きな物質、すなわち、上述の無機質多孔資材を敷設することにより、植物の水分吸収を制御し、結果的に防草が可能となる。
【0013】
図1(b)に示すように、通常の土壌も団粒構造を有しているが、耐圧縮性が小さく、自重等により土壌粒子1′における粒子間の間隙が崩壊してしまう。そのため、この土壌粒子1′の吸水力は低下するため、水2は、これらの土壌粒子1′の間に溜まり、雑草等の種子3は発芽するために必要な水分を得ることができる。一方、図1(a)に示すように、無機質多孔資材1は、上述のようにセメント等により造粒固化されているため、耐圧縮性に優れており、自重等での変形が小さく、且つ、粒子間の間隙が微小であるため毛細作用による吸水力が大きくなるため、水2はこの無機質多孔資材1に吸収されて種子3が吸収することができなくなり、発芽若しくは生育を防ぐことができる。
【0014】
ここで、本発明に係る無機質多孔資材の製造方法について説明する。まず、焼却灰等の無機質材料を不溶化剤と還元剤を加えて、焼成炉で約1000度で焼成処理を行い、重金属類の揮発分離・不溶化、ダイオキシン類の無害化を行う。次に、焼成後、焼成物を冷却し、粉砕機で粒子の直径が数ミクロンから数ミリメートルの範囲の微粉末に粉砕する。そして、この粉砕物に、水、セメント、安定剤を加えて攪拌造粒することにより、粉砕物を造粒固化して無機質多孔資材が製造される。この攪拌造粒とは、円筒状の容器の中の対象物(上記粉砕物、水、セメント、安定剤)を混合・攪拌させ、雪だるま状に粒を形成していくことである。なお、無機質材料としては、焼却灰以外にも、貝殻、瓦、コンクリート、大谷石や軽石などの天然の岩石を用いることができる。また、造粒固化においてはセメント以外に、酢酸ビニルなどを主原料とした固化剤、漆喰などを用いることができる。また、このようにして製造された無機質多孔資材の形状は、粒状あるいは塊状で、その直径は数ミリメートルから数センチメートルとなる。
【0015】
このような無機質多孔資材を用いた防草構造もしくは工法としては、この無機質多孔資材を単独で用いる場合と、自然土舗装材や再生紙と組み合わせる場合の二つのタイプに大別される。
【0016】
無機質多孔資材を単独で用いる場合としては、植栽の周囲や植え桝などのように、雑草の発生を完全に抑える場所に適用するときである。施工は次の手順で行う。まず、施工面の排水性を確保し、予め植生調査を行い大型の多年生雑草が生育している場合には、除草剤などを用いて根絶処理を行う。そして、この施工面に無機質多孔資材を任意の厚さ(通常は5cm〜20cm)に敷設する。
【0017】
一方、無機質多孔資材を自然土舗装材や再生紙と組み合わせる場合には、雑草の防除ではなく、雑草の生育抑制を狙うものである。具体的には、任意の深さの土壌中に自然土舗装材や再生紙を敷設することにより、植物の根の空間を狭めると共に、土壌水分を無機質多孔資材で吸収し、植物による土壌水分の利用を制御して、両者の協力作用によって植物の成長を抑制しようとするものである。
【0018】
それでは、無機質多孔資材(アークサンド)を土壌の表面に敷設した防草構造の効果について行った実験結果を説明する。まず、図2に示すように、畑土壌10の上に無機質多孔資材20を敷設し、その表面に雑草種子30を播種したときの、無機質多孔資材20の覆土厚の関係についての実験結果を図3に示す。なお、この実験において、畑土壌10および無機質多孔資材20を収容するポットのサイズは200平方cmとし、覆土厚を0cm(畑土壌のみ)、1cm、3cm、5cmとした。また、雑草種子30としては、ヒメシバ、カラスノエンドウ、エゾノギシギシ、および、メマツヨイグサを用いた。さらに、本実施例に係る無機質多孔資材20の効果と比較するために、砕石および再生砕石によりは畑土壌を覆った場合についても実験を行った。
【0019】
図3の表1−1〜表1−3に示すとおり、本実施例に係る防草構造において、畑土壌10の表面に無機質多孔資材20が敷設された後は、その無機質多孔資材20の表面に雑草種子30が落下したとしても、発芽しにくくなるか、若しくは、成長しにくくなるため、十分な防草効果を得ることができる。
【0020】
次に、図4に示すように、畑土壌10の上に無機質多孔資材20を敷設し、その下に雑草種子30を播種したときの、無機質多孔資材20の覆土厚の関係についての実験結果を図5に示す。なお、この実験においてもポットサイズは200平方cmとし、覆土厚を1cm、3cm、5cmとした。また、比較対象として、無機質多孔資材20を敷設しない畑土壌10において、雑草種子30を上述の無機質多孔資材20の厚さに応じた位置に播種した場合と、無機質多孔資材20の代わりに砕石および再生砕石を畑土壌10の上に敷設した場合についても実験を行った。実験に使用した雑草種子30は、上述の実験と同様に、ヒメシバ、カラスノエンドウ、エゾノギシギシ、および、メマツヨイグサを用いた。
【0021】
図5の表2−1〜表2−3に示すとおり、本実施例に係る防草構造において、無機質多孔資材20が敷設される前に、その畑土壌10の中に雑草種子30が混ざっていたとしても、発芽しにくくなるか、若しくは、成長しにくくなるため、十分な防草効果を得ることができる。
【0022】
次に、図6〜図8を参照して、無機質多孔資材(アークサンド)を土壌の表面から所定深さの位置に敷設した防草構造の効果について行った実験結果を説明する。この実験では、内径16cmで深さ20cmのサイズのポットを用い、このポットに図6の(A)〜(F)で示すような防草構造を設定し、表面にヒメシバ、ケンタッキーブルーグラスの種子をまき、50日間でのこれら植物の成長結果を測定した。なお、構造(A)〜(F)のそれぞれについて3回の反復実験を行った。
【0023】
防草構造としては、構造(A)は防草構造を設けず通常の土壌のみの構造であり、構造(B)は土壌表面から2.5cmの位置に厚さ5cmの無機質多孔資材(アークサンド)の層を設けた構造であり、構造(C)は土壌表面から5cmの位置に厚さ5cmの無機質多孔資材(アークサンド)の層を設けた構造であり、構造(D)は土壌表面から10cmの位置に厚さ5cmの無機質多孔資材(アークサンド)の層を設けた構造であり、構造(E)は土壌表面から5cmの位置に表面に薄い固化層を有した厚さ5cmの無機質多孔資材(アークサンド)の層を設けた構造であり、構造(F)は土壌表面から5cmの位置に厚さ5cmの固化層を設けた構造である。
【0024】
なお、固化層は、水や空気は通すが植物の根は通し難い分離層からなり、漆喰、各種の自然土舗装材、土壌固化剤、セメント、アスファルト、高分子ポリマー、除草剤を含浸させた布類、及び厚紙等、もしくは、これらの組み合わせ、又はこれらと砂もしくは施工現場の現地土壌との混合物からなる。
【0025】
この実験結果を、図7の表および図8のグラフに示しており、防草構造を設けない構造(A)の場合に比較して、各防草構造(B)〜(F)それぞれ防草効果、すなわち、雑草の成長を抑制して、草丈が高くなることを抑える効果があることが分かる。
【0026】
以上説明したように、本発明に係る無機質多孔資材を用いた防草構造および工法によると、敷設作業が簡単であり、また、除草剤や生育抑制剤あるいは草刈り機を用いずとも、雑草の防除あるいは抑制が可能となる。つまり、本発明は除草剤の代替技術ということであり、環境に配慮した植生管理に大きく貢献するものと期待される。なお、このような無機質多孔資材を用いることにより、吸水性が極めて高いことから、防草効果だけでなく、降雨の一時的貯留効果、蒸発時の気化熱による冷却効果も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】無機質多孔資材による防草効果を説明するための説明図であって、(a)はこの無機質多孔資材を示すものであり、(b)は、通常の土壌を示すものである。
【図2】無機質多孔資材の上に雑草種子を播種したときの覆土厚の効果を示すための実験の説明図である。
【図3】上記実験の結果を示す表である。
【図4】無機質多孔資材の下に雑草種子を播種したときの覆土厚の効果を示すための実験の説明図である。
【図5】上記実験の結果を示す表である。
【図6】土壌表面から所定深さ位置に無機質多孔資材の層を所定厚さで設けた防草構造の構成例を示す説明図である。
【図7】図6の防草構造において土壌表面にメヒシバ、ケンタッキーブルーグラスの種子を播いて成長を測定した実験結果を示す表である。
【図8】図7の実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
10 畑土壌(土壌)
20 無機質多孔資材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質材料の微粉末を造粒固化した無機質多孔資材を、土壌の表面もしくは表面から所定深さの位置に所定の厚さで敷設したことを特徴とする防草構造。
【請求項2】
前記無機質材料は、焼却灰、貝殻、瓦、コンクリート、大谷石や軽石などの天然の岩石であることを特徴とする請求項1に記載の防草構造。
【請求項3】
前記微粉末の直径は、数ミクロンから数ミリメートルの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の防草構造。
【請求項4】
前記造粒固化は、前記無機質材料をセメント、酢酸ビニルなどを主原料とした固化剤、漆喰などを用いて成形固化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の防草構造。
【請求項5】
前記無機質多孔資材は、粒状あるいは塊状の形状を有し、直径が数ミリメートルから数センチメートルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の防草構造。
【請求項6】
土壌表面に、無機質材料の微粉末を造粒固化した無機質多孔資材からなる層を任意の厚さで敷設し、土壌の表面での雑草の生育を阻止することを特徴とする防草工法。
【請求項7】
土壌表面から所定深さの位置に、無機質材料の微粉末を造粒固化した無機質多孔資材からなる層を任意の厚さで敷設し、土壌の表面での雑草の生育を制限することを特徴とする防草工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−133706(P2008−133706A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19201(P2007−19201)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(505068365)初雁興業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】